説明

植物繊維強化ポリ乳酸箸の製造方法

【課題】耐熱性に優れ、ガラス繊維の使用量が無い、あるいは非常に少ないことで廃棄後もガラス繊維の飛散の可能性が低いポリ乳酸製の箸を提供すること。
【解決手段】 木や竹を0.01−5mm程度に切断破砕処理して植物繊維粉末混合強化材を作り、基体が、ポリ乳酸を主材として重量比で30−94%程度含有したものに、植物繊維粉末混合強化材を5−69%添加し、またタルクや雲母粉末、ガラス繊維などの無機フィラーを補助強化材として重量比で1−50%程度含有させたものを主な組成とし、場合によっては着色料を添加して、箸を作るための混合材料を作る。これによって得た混合材料を、湿度を取り除いた熱風で乾燥した後、加熱混練装置内で、脱気乾燥しながら加熱混練し、ノズルからそのまま箸金型内に注入することによって、植物繊維強化ポリ乳酸箸を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物繊維及び無機フィラーで強化したポリ乳酸を原料とした箸の製造方法に関する。具体的には、本発明は、耐熱性の強い、ポリ乳酸の添加剤配合に関する。また、本発明は、かかる添加剤を含有するポリ乳酸箸を樹脂劣化させずに安定的に生産する製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、石油系プラスチックの代替品として環境に優しいプラスチックとして社会に認知されている。しかし、耐熱温度が65℃と低く曲がり強度も弱いため、箸を作る材料として使うには、お湯の中の物をつまむ際曲がってしまって、不十分である。これを補うために、ガラス繊維を強化材として配合し、耐熱温度と曲がり強度を実用物性まで高めて、商品化している。しかしこのガラス繊維は、廃棄後ポリ乳酸が分解していくと、樹脂内から開放されて飛散する恐れがある。
【0003】
このような添加物による、ポリ乳酸の機能性向上について、下記の特許文献のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−117768号公報
【0005】
この特許文献1には、ポリ乳酸強化の方法として、天然由来の有機充填剤が、紙粉、木粉、竹粉、竹繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維から選ばれる少なくとも1種以上を含むものであることとしている。またそれによる効果として、成形性、表面外観性、耐衝撃性および耐久性としている。
【0006】
天然由来の有機充填剤が生産効率上、ポリ乳酸の結晶性の問題を補填するという事は言えるかもしれない。
【0007】
しかし、箸を作った場合、お湯の中に箸を入れて物をつまむという行為の上では、その耐熱性向上の必要があり、天然由来の有機充填剤を配合しただけでは、解決にはなっていない。

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の説明から、石油を使わない事により環境によく、耐熱性に優れ、ガラス繊維の使用量が無い、あるいは非常に少ないことで廃棄後もガラス繊維の飛散の可能性が低いポリ乳酸製の箸を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の植物繊維強化ポリ乳酸箸の製造方法は、木や竹を0.01−5mm程度に切断破砕処理してから、水分を取り除き、植物繊維粉末混合物の形態に加工処理する、ここで言う植物繊維粉末混合物とは、本来長さのある繊維のみを取り出せれば理想的ではあるが、高コストになるため、繊維に粉末が混じっていても繊維と粉末の比率を特に重視しないで使用できるものとする。ポリ乳酸を主材として、この植物繊維粉末混合物にした強化材と、タルクや雲母粉末、ガラス繊維などの無機フィラーを補助強化材として、場合によっては着色料を添加して、箸を作るための混合材料を作る。その混合材料を湿度を取り除いた熱風で乾燥した後、加熱混練装置内で、脱気乾燥しながら加熱混練する。次に、加熱混練装置に連接したノズルからそのまま箸金型内に注入する。最後に、上記成形完了した箸のバリ取り、ゲートカット処理を行い、場合によっては、塗装、絵柄を加えることを特徴とする植物繊維強化ポリ乳酸箸の製造方法を提供する事を要旨としたものである。
【0010】
この発明によれば、従来はガラス繊維によってポリ乳酸製箸の耐熱性を上げていたものが、植物繊維と少量の無機フィラーによって可能となり、ポリ乳酸箸が廃棄後に、風化劣化して飛散させるガラス繊維の量を無くしたり、あるいは非常に少量に出来る。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたようにこの発明の、植物繊維強化ポリ乳酸箸の製造方法は、木や竹を0.01−5mm程度に切断破砕処理してから、水分を取り除き、植物繊維粉末混合物の形態に加工処理した植物繊維粉末混合強化材を作り、基体が、ポリ乳酸を主材として重量比で30−94%程度含有したものに、植物繊維粉末混合強化材を5−69%添加し、またタルクや雲母粉末、ガラス繊維などの無機フィラーを補助強化材として重量比で1−50%程度含有させたものを主な組成とし、場合によっては着色料を添加して、箸を作るための混合材料を作る。その混合材料を湿度を取り除いた熱風で乾燥した後、加熱混練装置内で、脱気乾燥しながら加熱混練する。次に、加熱混練装置に連接したノズルからそのまま箸金型内に注入する。最後に、上記成形完了した箸のバリ取り、ゲートカット処理を行い、場合によっては、塗装、絵柄を加え製造する。この発明によれば、従来はガラス繊維によってポリ乳酸製箸の耐熱性を上げていたものが、植物繊維と少量の無機フィラーによって可能となり、ポリ乳酸箸が廃棄後に、風化劣化して飛散させるガラス繊維の量を無くしたり、あるいは非常に少量に出来る。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の植物繊維強化ポリ乳酸箸の製造方法の実施形態を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施例について説明する。図1はこの発明の植物繊維強化ポリ乳酸箸の製造方法の1実施形態を示す工程図で、図中1は竹や木、2は植物繊維粉末混合、3はタルクや雲母粉末、ガラス繊維などの無機フィラー、4はポリ乳酸、5は、材料を混合させるタンブラー,6は、溶かして混合させ、生産機械となる加熱混練装置,7は、樹脂劣化を防ぐ乾燥機,8は、箸を作るための鋳型になる金型、9は、植物繊維強化ポリ乳酸箸の製品を示す。
【0014】
木や竹1を0.01−5mm程度に切断破砕処理してから、水分を取り除き、植物繊維粉末混合物2の形態に加工処理する。
【0015】
ポリ乳酸4を主材として重量比で60%、木や竹1などから取れる植物繊維粉末混合物2を強化材として20%、雲母粉末による無機フィラー3を補助強化材として重量比で20%、これらをタンブラー5と呼ばれる攪拌機に入れ混合する。
【0016】
攪拌後の材料を、湿度を取り除いた熱風乾燥内7で2時間程度乾燥した後、加熱混練装置内6で、脱気乾燥7しながら加熱混練する、この場合射出成形機6が良適である。
【0017】
次に、加熱混練装置6に連接したノズルからそのまま箸金型内8に注入する。あるいは、線状体にして押し出してペレット化し、再度、射出成形機6にて箸金型内8に注入する。
【0018】
成形完了した箸9の金型8あわせ面がバリとなってはみ出す場合はバリを取り、材料の通り道である入り口部分をゲートカット処理できれいにして植物繊維強化ポリ乳酸箸9は出来上がる。
【0019】
またこの製造方法は、ナイフ、フォーク、スプーンにも応用できるものとする。

【符号の説明】
【0020】
1…木や竹
2…植物繊維粉末混合物
3…無機フィラー
4…ポリ乳酸
5…タンブラー
6…加熱混練装置
7…乾燥機
8…金型
9…箸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体が、ポリ乳酸を主材として重量比で30−94%程度含有し、木や竹などから取れる植物繊維粉末混合物を強化材として5−69%、タルクや雲母粉末、ガラス繊維などの無機フィラーを補助強化材として重量比で1−50%程度含有させたものを主な組成とすることを特徴とする植物繊維強化ポリ乳酸箸。
【請求項2】
ポリ乳酸を材料として木や竹の植物繊維を強化材として、無機フィラーを補助強化材として配合する、耐熱性の強い、箸を生産するための製造方法であって、以下の(a)〜(d)の一連の工程を有することを特徴とする植物繊維強化ポリ乳酸箸の製造方法
(a).木や竹を0.01−5mm程度に切断破砕処理してから、水分を取り除き、植物繊維粉末混合物の形態に加工処理する。
(b).次に、植物繊維粉末混合物にした原料を請求項1の割合で、場合によっては着色料を添加して、湿度を取り除いた熱風で乾燥した後、加熱混練装置内で、脱気乾燥しながら加熱混練する。
(c).次に、加熱混練装置に連接したノズルからそのまま箸金型内に注入する。
(d).最後に、上記成形完了した箸のバリ取り、ゲートカット処理を行い、場合によっては、塗装、絵柄を加える。




【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−284300(P2010−284300A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139893(P2009−139893)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(599109847)有限会社 内田プラスチック (4)
【Fターム(参考)】