説明

植物繊維系断熱ボード

【課題】断熱性を確保しつつ強度を持たせた植物繊維系断熱ボードを提供すること。
【解決手段】植物繊維系断熱ボード10は、植物繊維系コア材12と、植物繊維体14とを含んで構成されている。植物繊維系コア材12は、薄肉の壁部12Aと、この薄肉の壁部12Aにより区画され植物繊維系断熱ボード10の厚さ方向に貫通する複数の孔12Bとを備えて植物繊維系断熱ボード10の全域に位置するように設けられている。植物繊維体14は、コア材12の周囲および複数の孔12Bの内部に取着され圧縮された植物繊維から構成されている。植物繊維として、パルプ繊維(再生パルプ繊維を含む)、木材繊維、麻繊維、竹繊維などの従来公知のさまざまな植物繊維が使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物繊維系(パルプ繊維(再生パルプ繊維を含む)、木材繊維、麻繊維、竹繊維など)断熱ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の断熱材に使用されている材料は、主に石油を原料とする発泡樹脂系および鉱物繊維系の断熱材である。発泡樹脂系の断熱材の施工方法は、吹付け工法、充填工法、押出ボード成形等の施工法である。鉱物繊維系の断熱材の施工方法は、主にボード状にした施工方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−127872
【特許文献2】特開2007−230228
【特許文献3】特開2000−160713
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、石油を原料とする発泡樹脂系および鉱物繊維系の断熱材では下記の不具合が生じる。
発泡樹脂系断熱材の施工時のフロンガス使用による地球環境破壊の問題
発泡樹脂系断熱材の火災時の有害ガス発生の問題
鉱物繊維系断熱材の粉塵(ハウスダスト等)発生の懸念に関する問題
発泡樹脂系および鉱物繊維系断熱材の製造時CO2排出量の増大による環境破壊問題
【0005】
上述の問題を解決するためパルプ繊維(新聞残紙等をリサイクルし綿状、繊維状にして再生した再生パルプ繊維断熱材を含む)などの植物繊維を用いることが考えられる。
しかしながら、植物繊維の主な適用分野は、建築物の断熱材としての用途が主流であった。
また、植物繊維の主な施工方法は、吹付け工法、吹込み工法、充填工法の3種類であった。
また、吹付け工法、吹込み工法、充填工法による植物繊維断熱材は、強度をほとんど有さないものである。
そこで、本発明者は、植物繊維の断熱材としての適用範囲を拡大する為に、断熱性を確保しつつ強度を確保した植物繊維系断熱ボードを発明することにより、より広範囲な市場への適用を目指す。
【0006】
断熱性を確保しつつ強度を確保した植物繊維系断熱ボードを発明することにより、断熱材としての適用範囲を拡大し、建築分野以外の新たな分野への断熱工法の提案を可能にした。例えば、輸送用冷凍コンテナ、事務所ビル用不燃区画、クリーンルーム、家電製品、自動車などの断熱材として応用が考えられる。
したがって、本発明の目的は、建物の省エネと火災安全の問題を考慮して、植物繊維を用いて、次世代の断熱工法を実現することを目指したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明の植物繊維系断熱ボードは、植物繊維系コア材と、植物繊維体とを含んで構成され、前記コア材は、薄肉の壁部と、この薄肉の壁部により区画され前記植物繊維系断熱ボードの厚さ方向に貫通する複数の孔とを備えて前記植物繊維系断熱ボードの全域に位置するように設けられ、前記植物繊維体は、前記コア材の周囲および前記複数の孔の内部に取着され圧縮された植物繊維から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の植物繊維系断熱ボードによれば、植物繊維のみではなく、心材としてのコア材を備えているので、断熱性を確保しつつ強度を確保する上で有利となる。
また、植物繊維がコア材に取着され、植物繊維が剥がれにくい構造となるので、取り扱い性の向上を図る上で有利となる。
したがって、本発明の植物繊維系断熱ボードは取り扱い性に優れ強度が確保されているので、植物繊維系の断熱材としての適用範囲を拡大し、建築分野以外の新たな分野への断熱工法への応用が可能となり、次の効果が奏される。
植物繊維断熱材の施工にはフロンガスを使用しない(ノンフロン工法)。
防燃処理を施した植物繊維断熱材は、不燃材料または難燃材料としての性能を有し火災時に有害ガスが発生しない。
植物繊維の中でも再生パルプ繊維は、新聞紙等の古紙を再び繊維状、綿状にしたものを主原料とし、地球資源の有限を考慮した高環境対応型の断熱材料である(リサイクル材料)。
鉱物繊維系のような粉塵の発生が少ない。
すなわち、環境問題と火災安全を考慮した技術革新性の高い付加価値を有する植物繊維系断熱ボードを用いた様々な断熱工法が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の植物繊維系断熱ボードの斜視図である。
【図2】コア材の斜視図である。
【図3】コア材の斜視図である。
【図4】各種パネルの性能を比較した図である。
【図5】第2の実施の形態の植物繊維系断熱ボードの斜視図である。
【図6】第2の実施の形態の植物繊維系断熱ボードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、植物繊維系断熱ボード(パルプ繊維製断熱ボード)10は、植物繊維系コア材12と、植物繊維体14とを含んで構成されている。
図2、図3に示すように、植物繊維系コア材12は、薄肉の壁部12Aと、この薄肉の壁部12Aにより区画され植物繊維系断熱ボード10の厚さ方向に貫通する複数の孔12Bとを備えて植物繊維系断熱ボード10の全域に位置するように設けられている。
コア材12は、図2に示すように、孔12Bの断面が矩形のハニカムコアであってもよく、また、図3に示すように、孔12Bの断面が六角形のハニカムコアであってもよい。
コア材12(壁部12A)を構成する材料は、植物繊維、中でも紙(パルプ繊維製及びその他紙類全般)、金属、プラスチック、発泡材等の素材が使用可能である。
孔12Bの断面形状は、丸、三角、四角、六角他、多角形であってもよい。
また、コア材12は、ルーバーが格子状に組まれたものであってよい。
本実施の形態では、市販品であるパルプ繊維製のダンボール製ハニカムコア(新日本フエザーコア株式会社)を用いている。
コア材12のセルサイズ(1つの孔12Bを形成する壁部12Aの大きさ)は5mmから300mm、コア材12の厚さは5mmから1000mmとする。
【0011】
植物繊維体14は、コア材12の周囲および複数の孔12Bの内部に取着され圧縮された植物繊維から構成されている。
植物繊維体14を構成する植物繊維の密度は、25〜100Kg/mである。
植物繊維の密度が上記の範囲に満たないと、植物繊維体14の充填が悪くなる不具合があり、上記の範囲を超えると、断熱性能が低下する不具合がある。
また、断熱性をより重視すると、前記密度は、30〜50Kg/mが好ましい。
植物繊維として、パルプ繊維(再生パルプ繊維を含む)、木材繊維、麻繊維、竹繊維などの従来公知のさまざまな植物繊維が使用可能である。
本実施の形態では、植物繊維として再生パルプ繊維を使用しており、このような再生パルプ繊維として市販品が使用可能であり、例えば、王子製袋株式会社製の商品名「ダンパックS-15」が使用可能である。
なお、植物繊維系断熱ボード10は、所望の形状になるように、外周部をカットして使用してもよい。
【0012】
本実施の形態の植物繊維系断熱ボード10によれば、植物繊維14のみではなく、心材としてのコア材12を備えているので、図4に示すように、断熱性を確保しつつ強度を確保する上で有利となる。
また、植物繊維系断熱ボード10は防音パネルとしても使用可能である。
【0013】
(第2の実施の形態)
次に、本発明方法の第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様な箇所は省略し、異なった箇所のみを説明する。
第2の実施の形態では、図5、図6に示すように、植物繊維系断熱ボード20は、ボード本体22と、枠体部24とを備えている。
ボード本体22は、第1の実施の形態のように植物繊維系コア材12と植物繊維体14とで構成されている。
この場合、植物繊維系コア材12をダンボール製にすると、植物繊維系コア材12の強度が増すので、壁部12A間の間隔を大きくすることができ、植物繊維体14の充填が容易になされ、製造上有利となる。
枠体部24は、ボード本体22の周囲に沿って枠状に延在して設けられている。
枠体部24は、ボード本体22の周囲に植物繊維が取着され圧縮されて構成されている。
図5に示すように、植物繊維体14を構成する植物繊維と、枠体部24を構成する植物繊維とは、同一の植物繊維であってもよい。
図6に示すように、植物繊維体14を構成する植物繊維と、枠体部24を構成する植物繊維とは、異なった植物繊維であってもよい。この場合には、例えば、枠体部24を構成する材料は、ダンボール、植物繊維製の不織布、植物繊維性のネットなどが使用可能である。
【0014】
なお、第1、第2の実施の形態を含む本発明においては、植物繊維系断熱ボード10、20の意匠性を高めるため、植物繊維系断熱ボード10、20の厚さ方向の少なくとも一方の面に、可撓性および通気性を有する薄肉の面材が取着されていてもよい。
このような面材として、合成樹脂製繊維やガラス繊維など、従来公知の様々な材料からなる不織布やネットが使用可能である。
面材を植物繊維系断熱ボード10、20の厚さ方向の両面に配置する場合、両面に配置する面材は、同一の材質のものであってもよく、異なった材質のものでもよい。
また、用途に応じ、植物繊維系断熱ボード10、20に防燃処理を施すなど任意である。
また、第1、第2の実施の形態では、植物繊維系断熱ボード10、20が植物繊維としてパルプ繊維(再生パルプ繊維を含む)を用いた場合、言い換えると、植物繊維系断熱ボード10、20がパルプ繊維製断熱ボードである場合について説明した。
しかしながら、本発明は、木材繊維、麻繊維、竹繊維などその他の植物繊維を用いた植物繊維系断熱ボードに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0015】
10、20……植物繊維系断熱ボード、12……植物繊維系コア材、12A……壁部、12B……孔、22……ボード本体、24……枠体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維系断熱ボードであって、
植物繊維系コア材と、植物繊維体とを含んで構成され、
前記コア材は、薄肉の壁部と、この薄肉の壁部により区画され前記植物繊維系断熱ボードの厚さ方向に貫通する複数の孔とを備えて前記植物繊維系断熱ボードの全域に位置するように設けられ、
前記植物繊維体は、前記コア材の周囲および前記複数の孔の内部に取着され圧縮された植物繊維から構成されている、
ことを特徴とする植物繊維系断熱ボード。
【請求項2】
前記植物繊維系コア材と前記植物繊維体とでボード本体が構成され、
前記ボード本体の周囲に沿って延在する枠状の枠体部が設けられ、
前記枠体部は、前記ボード本体の周囲に植物繊維が取着され圧縮されて構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の植物繊維系断熱ボード。
【請求項3】
前記植物繊維系コア材はダンボール製である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の植物繊維系断熱ボード。
【請求項4】
前記植物繊維体を構成する植物繊維と、前記枠体部を構成する植物繊維とは、同一の植物繊維である、
ことを特徴とする請求項2記載の植物繊維系断熱ボード。
【請求項5】
前記植物繊維体を構成する植物繊維と、前記枠体部を構成する植物繊維とは、異なった植物繊維である、
ことを特徴とする請求項2記載の植物繊維系断熱ボード。
【請求項6】
前記植物繊維系断熱ボードの厚さ方向の少なくとも一方の面に、可撓性および通気性を有する薄肉の面材が取着されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の植物繊維系断熱ボード。
【請求項7】
前記植物繊維体を構成する植物繊維の密度は、25〜100Kg/mである、
ことを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載の植物繊維系断熱ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218764(P2011−218764A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96607(P2010−96607)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【出願人】(591033261)王子製袋株式会社 (9)
【出願人】(503354631)新日本フエザーコア株式会社 (8)
【Fターム(参考)】