植込み型医療用内部人工器官
植込み型医療用内部人工器官、ならびに関連したシステムおよび方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は概して、植込み型医療用内部人工器官、および関連したシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植込み型医療用内部人工器官は、身体の管腔内に配置できる。植込み型医療用内部人工器官の例には、バルーン拡張型ステントや自己拡張型ステントなどのステントが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ゾル・ゲル・コーティングを使用して、例えば、植込み型医療用内部人工器官の侵食時間を調節し、選択される時間で選択される身体部位に薬剤を搬送することができるような、改良された植込み型医療用内部人工器官を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1態様では、本発明は、マグネシウムを含有する植込み型医療用内部人工器官本体と、この植込み型医療用内部人工器官本体によって支持されるゾル・ゲル・コーティングとを含む植込み型医療用内部人工器官に関する。
【0005】
別の態様では、本発明は、植込み型医療用内部人工器官本体と、この植込み型医療用内部人工器官本体によって支持される、マグネシウムを含有するゾル・ゲル・コーティングとを含む植込み型医療用内部人工器官に関する。
【0006】
さらなる態様では、本発明は、植込み型医療用内部人工器官を作製する方法に関する。この方法は、植込み型医療用内部人工器官本体の表面の一部を酸化させる工程と、植込み型医療用内部人工器官を形成するように、ゾル・ゲル・コーティングを植込み型医療用内部人工器官本体の表面の酸化された部分の上に配設する工程とを含む。
【0007】
各実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含んでよい。
ゾル・ゲル・コーティングは、マグネシウムを含有してよい。
ゾル・ゲル・コーティングは、複数の層を含んでよい。
【0008】
ゾル・ゲル・コーティングは、少なくとも1つの治療薬を含んでよい。
治療薬は、カプセル化されてよい。
ゾル・ゲル・コーティングは、タンパク質、キレート剤、pH緩衝剤、および抗体から選択される少なくとも1つの化学種を含んでよい。この1つまたは複数の化学種は、カプセル化されてよい。
【0009】
植込み型医療用内部人工器官は、ゾル・ゲル・コーティングと植込み型医療用内部人工器官本体との間に層をさらに含んでよい。追加の層は、酸化物を含んでよい。この酸化物は、マグネシウムを含有してよい。この酸化物は、多孔質であってよい。この追加の層は、植込み型医療用内部人工器官本体上に配設されてよい。この追加の層は、ステント本体のいくつかの部分だけによって支持されてよい。ゾル・ゲル・コーティングは、この追加の層の上に配設されてよい。
【0010】
植込み型医療用内部人工器官は、管形状であってよい。
植込み型医療用内部人工器官は、バルーン拡張型ステントや自己拡張型ステントなどのステントであってよい。
【0011】
この方法は、植込み型医療用内部人工器官本体の表面を酸化させる工程の前に、酸化されてはならない植込み型医療用内部人工器官本体の部分をマスキングする工程をさらに含んでよい。
【0012】
本発明の各実施形態は、以下の利点の1つまたは複数を有し得る。
本体の表面に隣接する酸化物層を生成するためのステント本体の陽極酸化部分は、ゾル・ゲル・コーティングが本体の表面上に堆積することを可能にし得る。マグネシウム含有材料から形成されるステントなどのある種のステントの表面に直接施される一部のゾル・ゲル・コーティングは、ステント本体と化学反応を起こし、ステント本体の植込み前の侵食をもたらす。しかしながら、施されるゾル・ゲル・コーティングは概して、ステント本体の一部を陽極酸化することによって生成される酸化物層と反応しない。したがって、1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティングは、植込みの前にステントを侵食することなくステント本体の表面に施すことができる。
【0013】
ゾル・ゲル・コーティングの組成を変化させて身体の管腔内のステントの平均侵食時間を制御することができる。例えば、身体の管腔中で短い侵食時間を有するゾル・ゲル・コーティングをステント本体に施すことによって、ゾル・ゲル・コーティングの侵食後のステント本体のコーティングした部分の管腔環境への露出が比較的早く生じ、身体の管腔中におけるステントの平均侵食時間が比較的短くなる。身体の管腔中で長い侵食時間を有するゾル・ゲル・コーティングを施すことによって、ゾル・ゲル・コーティングの侵食後のステント本体のコーティングした部分の管腔環境への露出が比較的遅く生じ、身体の管腔中におけるステントの平均侵食時間が比較的長くなる。したがって、ステント本体に施されるゾル・ゲル・コーティングの組成を選択することによって、身体の管腔中におけるステントの平均侵食時間を変化させることができる。
【0014】
1つまたは複数のカプセル化した薬剤は、身体の管腔内の部位への調節された薬剤の搬送のために、1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティング内に収容することができる。例えば、ゾル・ゲル・コーティングは、カプセル化したpH緩衝剤、酵素、抗体、タンパク質、キレート剤、および他の化学種を含むことができる。これらカプセル化した薬剤は、身体の管腔内でゾル・ゲル・コーティングの侵食が生じる際に放出される。ゾル・ゲル・コーティングの適当な組成を選択する(それによって身体の管腔内におけるコーティングのある特定の侵食速度を決定する)ことによって、身体の管腔中でのカプセル化した薬剤に関するおおよその放出時間が選択できる。
【0015】
複数のゾル・ゲル・コーティングを使用して、異なった時間で異なったカプセル化した薬剤を放出することができる。例えば、コーティング積層中の最も外側のゾル・ゲル・コーティングは、ステントが植込まれると管腔環境に直接露出されて、ステント本体のより近くに配置されて、最も外側のゾル・ゲル・コーティングが侵食された後にのみ管腔環境に露出される内側ゾル・ゲル・コーティングの前に侵食されることになる。カプセル化した薬剤を異なったゾル・ゲル・コーティング中に含めることによって、各ゾル・ゲル・コーティングの順次的な侵食が身体の管腔中で生じる際に、カプセル化した薬剤について異なった平均放出時間が選択できる。
【0016】
ゾル・ゲル・コーティングをステントの表面に複数のパターンをなすように施して、身体の管腔内における侵食中に生成されるステントの断片の形状を調節することができる。例えば、身体の管腔中のステント本体のコーティングした部分の平均侵食時間を増大させるために、ゾル・ゲル・コーティングは、リング、ドット、ハッチ・パターン、および他のパターンなどのパターンでステント本体の表面に施してよい。組成および厚さの一方または両方が異なるゾル・ゲル・コーティングを、ステント本体の異なった部分に施して、そこに施した1つまたは複数のゾル・ゲル層の特性に従って異なった平均侵食時間を有するステントのコーティングした領域を生成することができる。
【0017】
本発明の他の特色および利点は、明細書、図面および特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】ゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の側面図。
【図1B】図1Aに示すステントの断面図。
【図2A】複数の同心のゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の側面図。
【図2B】図2Aに示すステントの断面図。
【図3A】ゾル・ゲル・コーティングを複数のステント表面上に有するステントの実施形態の側面図。
【図3B】図3Aに示すステントの断面図。
【図4A】複数の非同心のゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の側面図。
【図4B】図4Aに示すステントの断面図。
【図5A】ステントの選択した部分に施されたゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の側面図。
【図5B】図5Aに示すステントの断面図。
【図6】ドット状形状のパターンに形成されたゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の平面図。
【図7】クロス・ハッチ・パターンに形成されたゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の平面図。
【図8】ゾル・ゲル・コーティング、およびステント本体を貫通して延びる複数の穴を有するステントの実施形態の斜視図。
【図9】ゾル・ゲル・コーティングを有するコイル状ステントの実施形態の斜視図。
【図10】ゾル・ゲル・コーティングを有するコイル状ステントの別の実施形態の斜視図。
【図11】ゾル・ゲル・コーティングを有するステントのさらなる実施形態の斜視図。
【図12】ゾル・ゲル・コーティングを有する編み込まれたステントの実施形態の斜視図。
【図13】使用中の内部人工器官搬送システムの実施形態の側面図。
【図14】使用中の内部人工器官搬送システムの実施形態の側面図。
【図15】使用中の内部人工器官搬送システムの実施形態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な図面における同じ参照符号は、同じ要素を示す。
本開示は、ゾル・ゲル・コーティングを有するステント(例えば、バルーン拡張型ステント、自己拡張型ステント)などの植込み型医療用内部人工器官に関する。ゾル・ゲル・コーティングを使用して、例えば、植込み型医療用内部人工器官の侵食時間を調節し、選択される時間で選択される身体部位に薬剤を搬送することができる。
【0020】
図1Aおよび図1Bは、ステント10の側面図および断面図をそれぞれ示す。図1Bに示す断面図は、図1Aに示す切断線1B−1Bに沿っている。ステント10は、縦軸18に平行な方向に測定される長さL、および軸18に対して直交する半径方向に測定される厚さtbを有する管状のステント本体12を有する。中間層14は、ステント本体12上に配設され、軸18に対して直交する半径方向に測定される厚さtoを有する。ゾル・ゲル・コーティング16は、中間層14上に配設される。ゾル・ゲル・コーティング16は、軸18に対して直交する半径方向に測定される厚さtcを有する。本明細書で述べるように、ゾル・ゲル材料は、液体(ゾル)中の固体粒子の懸濁液からゲルへ転移を起こす材料である。
【0021】
ステント本体12は、マグネシウム含有材料で形成される。例えば、特定の実施形態では、ステント本体12は、マグネシウムから形成できる。他の特定の実施形態では、ステント本体12は、マグネシウム含有合金材料から形成できる。一般に、多くの様々なマグネシウム含有材料が、ステント本体12を形成するために使用できる。例えば、ステント本体12は、AZ91、AZ91D、AZ91E、AZ92、ZE41、QE22、WE43A、およびEZ33などのマグネシウム合金材料から形成できる。ステント本体12は、マグネシウム、ならびに1つまたは複数の以下の材料、すなわち、アルミニウム、セリウム、銅、ランタン、リチウム、マンガン、ネオジム、銀、トリウム、イットリウム、亜鉛、およびジルコニウムを含む合金から形成できる。
【0022】
ステント本体12の長さLは概して、所望される通りに選択できる。いくつかの実施形態では、Lは、ステント10についてのある特定の目的の用途に従って、例えば、ステント10が植込まれることになる身体の管腔の生理学的特性に従って選択できる。特定の実施形態では、Lは、約5mm以上(例えば、約10mm以上、約20mm以上、約30mm以上、約40mm以上)であり得る。いくつかの実施形態では、Lは、約250mm以下(例えば、約200mm以下、約150mm以下、約100mm以下)であり得る。
【0023】
ステント本体12の厚さtbは概して、所望される通りに選択できる。いくつかの実施形態では、tbは、約0.05mm以上(例えば、約0.1mm以上、約0.2mm以上、約0.5mm以上、約1mm以上)であり得る。特定の実施形態では、tbは、約5mm以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下)であり得る。
【0024】
中間層14は、身体の管腔の環境とステント本体12の材料の間の障壁として機能可能な材料として形成される。つまり、ステント本体12は典型的には、身体の管腔中の環境に露出されると侵食される材料で形成されるが、中間層14は、ステント本体12の材料と身体の管腔の環境との間の接触を初めに防ぐことによって身体の管腔内のステント10の平均侵食時間を増大させることができる。適宜、中間層14は、身体の管腔中の環境に露出されると経時的に侵食される材料で形成されてよく、それによってステント本体12の材料を身体の管腔の環境に露出し、ステント本体12の侵食をもたらす。
【0025】
加えてまたは代替として、中間層14は、ゾル・ゲル・コーティング16に対して密着層を提供することができる。ゾル・ゲル・コーティング16を形成するために使用される特定の前駆体物質は、ステント本体12を形成する材料と反応することができ、そのことは、ステント10の使用前にステント本体12の望ましくない侵食という結果になり得る。中間層14は、層14が、コーティング16の前駆体物質および/またはコーティング16自体に対して比較的不活性である材料で形成できるため、そのような望ましくない侵食を低減する(例えば、防ぐ)ことができる。したがって、ステント本体12によって支持される中間層14をまず形成することによって、たとえステント本体12がゾル・ゲル層16を形成するために使用できる特定の前駆体物質と接触すると、侵食を通常受け得る材料(例えば、マグネシウム材料)で形成されるとしても、ゾル・ゲル・コーティング16は、ステント本体12によって支持される層として備えることができる。
【0026】
中間層14は、ステント本体12の材料の酸化物(例えば、酸化マグネシウム)を含む。例えば、層14は、層14がステント本体12と一体であるように、ステント本体12を形成する材料の部分の1つまたは複数を酸化させることによって形成できる。いくつかの実施形態では、これには、陽極酸化法を含み得る。そのような方法の例は、以下の通りである。電解酸化法を使用してステント本体12の一部を陽極酸化する。例えば、ステント本体12を2つの電極と共に電解質溶液中に配置し、電極間に電位を印加して、電解質溶液中に電流の流れを引き起こす。
【0027】
電解質溶液は、任意の適切な材料を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、電解質溶液は、1つまたは複数の水酸化物材料(例えば、NaOH)を含んでよい。特定の実施形態では、電解質溶液は、1つまたは複数の酸化物材料(例えば、NaAlO2)を含んでよい。さらに、電解質溶液は、マグネシウム、ならびに/または鉄ケイ酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、タングステン酸塩(tungstenate)、ルテニウム酸塩、イリジウム酸塩(iridate)、白金酸塩、および鉄酸塩などの他の材料を含んでもよい。
【0028】
特定の実施形態では、約10V〜約600V(例えば、約50V〜約500V、約100V〜約400V、約150V〜約300V)の範囲の電圧が、 ステント本体12の一部を陽極酸化するために使用され得る。概して、電極間に印加される電圧は、時間的に一定であってよく、または、時間で変化してよい。例えば、いくつかの実施形態では、直流電圧が、電解質溶液中の電極間に印加され得る。特定の実施形態では、時間で変化する電圧(例えば、交流電圧、パルス電圧)が、電極間に印加され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、電圧は、約10秒以上(例えば、約30秒以上、約1分以上、約10分以上、約20分以上、約30分以上、約45分以上、約60分以上)の間、電極間に印加され得る。特定の実施形態では、電圧は、約12時間以下(例えば、約6時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下)の間、電極間に印加され得る。
【0030】
ステント本体12中のマグネシウムを酸化マグネシウムに転換する電気化学反応が、電解質溶液中で生じる。概して、この電気化学反応は、電解質溶液に露出されるステント本体12の表面で生じる。特定の実施形態では、ステント本体12の表面は、電解質溶液に全て完全に露出され、それにより酸化物層が、露出した表面それぞれに形成される。いくつかの実施形態では、ステント本体12の表面の一部を(例えば、マスキング剤を用いて)マスキングして、電解質溶液に対するマスキングされた部分の露出を防ぐ。その結果、中間層14は、マスキングされたステント本体12の部分には形成されない。
【0031】
軸18に対して直交する半径方向に沿って測定される中間層14中の酸化マグネシウムの濃度は、概して均一でない。代わりに、ステント本体12の材料と電解質溶液との間の接触に応じて酸化マグネシウムを形成するため、より高い濃度の酸化マグネシウムは、層14の内面13寄りよりも層14の外面15寄りに形成される。その結果、酸化マグネシウム濃度の勾配が、酸化マグネシウムの濃度が層14にわたって内面13から外面15へ半径方向に増大する状態で中間層14中に形成される。
【0032】
陽極酸化法は、中間層14中に細孔を生成できる。中間層14に生成された細孔の分布は、酸化マグネシウムの濃度の勾配に類似する勾配に従う。すなわち、層14中の細孔の密度は概して、内面13から外面15へ半径方向に増大する。外面15の領域では、細孔の密度は、相対的に大きいものであり得る。
【0033】
中間層14に対するゾル・ゲル・コーティング16の密着強度は、中間層14における、特に外面15の領域における特定の細孔密度を選択することによって制御できる。表面15の領域におけるより大きい細孔密度により、ゾル・ゲル・コーティング16が密着できるより大きい有効表面積を与えることができ、これにより層14と層16との間の密着性を全体的に強化する。
【0034】
中間層14の厚さtoは、電解質溶液の組成および陽極酸化工程中に電極間に印加される電圧を調整することによって選択することもできる。いくつかの実施形態では、電解質溶液および印加電圧は、toが、約1μm以上(例えば、約2μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約50μm以上)であるように調整され得る。特定の実施形態では、toは、約5mm以下(例えば、約3mm以下、約1mm以下、約750μm以下、約500μm以下、約250μm以下、約150μm以下、約100μm以下)であり得る。
【0035】
ゾル・ゲル・コーティング16は、所望される通りに用意できる。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、中間層14に施される。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16の厚さtcは、約1μm以上(例えば、約2μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約50μm以上)であり得る。特定の実施形態では、tcは、約5mm以下(例えば、約3mm以下、約1mm以下、約750μm以下、約500μm以下、約250μm以下、約150μm以下、約100μm以下)であり得る。
【0036】
ゾル・ゲル・コーティング16は、様々な材料から形成できる。ゾル・ゲル・コーティング16は、1つまたは複数の生体侵食性材料、例えば、身体の管腔の環境に露出されると侵食される材料から形成される。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、マグネシウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、チタン、イリジウム、タングステン、タンタル、ニオブ、およびジルコニウムなどの生体侵食性金属材料の1つまたは複数を含んでよい。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16は、酸化マグネシウム材料を含んでよい。これら材料は、酢酸マグネシウム、マグネシウム・エトキシド(magnesium ethoxide)、マグネシウム・メトキシド(magnesium methoxide)、および他のマグネシウム・アルコキシド(magnesium alkoxide)などのゾル・ゲル前駆体物質から得ることができる。別の例として、ゾル・ゲル・コーティング16は、平均的な配合のMgxZn1−xOによる混合したマグネシウム・亜鉛酸化物材料を含んでよい。これら材料は、酢酸マグネシウムや酢酸亜鉛などのゾル・ゲル前駆体から得ることができる。さらに別の例として、ゾル・ゲル・コーティング16は、平均的な配合のMgxAlyO、MgxTiyO、およびMgxZryOのいずれか1つによる混合した酸化物材料を含んでよい。これら材料は、Mg、Al、TiおよびZrの酢酸塩および/またはアルコキシドを含み得るゾル・ゲル前駆体から得ることができる。さらなる例として、ゾル・ゲル・コーティング16は、ナノコンポジット膜に形成され得るアルギン酸マグネシウム・ケイ酸アルミニウム材料(alginate−magnesium aluminum silicate)などの複合材料を含んでよい。
【0037】
特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、ポリビニル・アルコール(PVA)、ポリエチレン・グリコール(PEG)、および他のポリマー材料などのポリマー材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、ポリマーと金属を共に含むハイブリッド材料から形成されてよい。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16は、MgO、CaO、SiO2、P2O5、およびPVAを含む生体侵食性材料から形成されてよい。別の例として、ゾル・ゲル・コーティング16は、ナノ多孔性コーティング層を形成するために、PEGと組み合わせたMgOxおよびTiOxの混合物から形成されてよい。
【0038】
ステント10の選択した部分に施されたゾル・ゲル・コーティング16は、ゾル・ゲル法によって形成される。例えば、いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル法を適用して1つまたは複数のゾル・ゲル層を、中間層14を含むステント10の部分に堆積させる。ゾル・ゲル前駆体は、ゾル・ゲル層16の所望の組成に従って選択される。例えば、マグネシウムを含むゾル・ゲル層を製造するためには、マグネシウム系前駆体が使用される。金属酸化物に適した前駆体は、金属アルコキシドおよび金属酢酸塩を含む。例えば、マグネシウムについての前駆体は、マグネシウム・メトキシド、マグネシウム・エトキシド、マグネシウム・イソプロポキシド(magnesium isopropoxide)、酢酸マグネシウム、および他のマグネシウム・アルコキシドを含む。2つ以上の材料(例えば、MgOおよびTiO)を含むゾル・ゲル・コーティング16を製造するためには、複数の異なるゾル・ゲル前駆体が使用され得る。
【0039】
続いて、ゾル・ゲル・コーティング16を堆積させるために行われ得る工程を、MgOから形成されるコーティング16に関して述べることにする。しかしながら、これら工程は、上記開示したゾル・ゲル材料のいずれかから形成されるコーティングを堆積させるために行われ得る。第1に、ゾル・ゲル前駆体(例えば、マグネシウム・アルコキシド)が、メタノールまたはエタノールなどのアルコール中に溶解される。第2に、(例えば、塩酸、酢酸、硝酸などの酸性物質1つまたは複数、および/または塩基性物質1つまたは複数から形成される)触媒材料を用いて、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)を形成するように、前駆体の加水分解に触媒作用を及ぼす。第3に、この水酸化物は、酸化物(例えば、酸化マグネシウム)をゾル・ゲル・コーティング16として発生させるために、(例えば、熱硬化または別の種類の脱水工程によって)脱水される。
【0040】
第1の工程と第2の工程との間、または第2の工程と第3の工程との間に、溶液中のゾル・ゲル前駆体は、ステント10に接触する。様々な方法を使用して接触を行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステント10は、ディップ・コーティングによってゾル・ゲル前駆体の溶液を用いてコーティングできる。特定の実施形態では、ステント10は、スプレー・コーティング、ブラシ・コーティング、および/またはスピン・コーティングなどの方法を用いてコーティングできる。いくつかの実施形態では、ステント10は、ピン・プリンティング(pin printing)などの接触印刷法を用いてゾル・ゲル前駆体の溶液でコーティングできる。例えば、接触印刷法を用いてゾル・ゲル前駆体の溶液を複雑なパターンでステント10に施すことができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16の組成および/または厚さtcは、身体の管腔中のステント10の平均侵食時間を制御するように選択される。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16の厚さtcが大きくなるほど、ゾル・ゲル・コーティング16の平均侵食時間は大きくなり、したがってステント10の平均侵食時間は大きくなる。対照的に、ゾル・ゲル・コーティング16の厚さtcが小さくなるほど、ゾル・ゲル・コーティング16とステント10の両方の平均侵食時間は小さくなる。別の例として、身体の管腔中で比較的長い平均侵食時間を有するステント10を製造するために、ゾル・ゲル・コーティング16は、比較的小さい侵食速度を有する1つまたは複数の材料から形成されてよい。比較的小さい侵食速度を有する適当な材料の例には、TiOx、TaOxおよびWO3が含まれる。身体の管腔中で比較的小さい平均侵食時間を有するステント10を製造するために、ゾル・ゲル・コーティング16は、比較的大きい侵食速度を有する1つまたは複数の材料から形成されてよい。比較的大きい侵食速度を有する適当な材料の例には、MgOx、FeOxおよびZnOxなどの材料が含まれる。
【0042】
特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、様々な種類のカプセル化した薬剤の1つまたは複数を含んでよい。そのような実施形態では、(1つまたは複数の)カプセル化剤は、例えば、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、多糖類、ポリエステル、ポリエチレン・グリコール、およびポリ酸無水物などのマトリックス材料に配設されてよい。カプセル化剤の例には、薬物類(drugs)、pH緩衝剤、酵素、抗体、タンパク質、キレート剤、および他の化学種が含まれ得る。これら様々な種類の薬剤それぞれは、ステント10が植込まれている身体の管腔中または他の身体部位中で特定の機能を果たすために使用され得る。例えば、1つまたは複数のカプセル化したpH緩衝剤(例えば、イオン交換樹脂材料)は、ステント10が植込まれている身体の管腔中の特定の範囲内でpHを維持するためにゾル・ゲル・コーティング16に含まれてよい。適当なpH緩衝剤の例には、医薬品グレードのアンバーライト(Amberite)IRP−64およびIRP−88などのイオン交換樹脂が含まれる。ステント10が管腔中で侵食を受ける際、周囲環境のpHは、マグネシウムなどの材料を含む化学反応によって増大する。ゾル・ゲル・コーティング16内の1つまたは複数のカプセル化したpH緩衝剤は、侵食が生じる際に放出される。このpH緩衝剤は、マグネシウム反応によるpHの増大を防ぎ、管腔の環境中のpHを特定の範囲内で維持する。
【0043】
別の例として、ゾル・ゲル・コーティング16内の1つまたは複数のカプセル化したキレート剤を使用して、身体の管腔内のステント10の平均侵食時間を制御できる。例えば、ステント10が侵食を受ける際に、カプセル化したキレート剤(例えば、ポリフィリン)が、ゾル・ゲル・コーティング16から放出される。このキレート剤は、侵食されたマグネシウムをキレート化し、マグネシウムの断片がステント10から脱離する速度を減少させる。ゾル・ゲル・コーティング16内のキレート剤の種類および量を制御することによって、身体の管腔内のステント10の侵食速度(したがって、ステント10の平均侵食時間)は、制御できる。適当なキレート剤の例には、ポリフィリン、EDTA、アンバーライト樹脂(Amberlite resin)、および改質したプルロニック(Pluronic)が含まれる。
【0044】
さらなる例として、薬物類、酵素、タンパク質、および抗体などの様々な種類のカプセル化した治療薬が、ゾル・ゲル・コーティング16に含まれてよい。ステント10の侵食が身体の管腔内で生じる際に、治療薬は、管腔を囲んでいる環境へ放出され、そこで治療薬は、特定の治療の機能を果たすことができる。
【0045】
ゾル・ゲル・コーティング16に含まれ得る治療薬は、医薬的活性化合物、脂質などのキャリア・ベクター(carrier vector)のあるなしに関わらない核酸、標的配列のあるなしに関わらない、凝縮剤(例えば、ヒストン)、ウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、およびa−ウイルス)、ポリマー、抗生物質、ヒアルロン酸、遺伝子治療薬(gene therapies)、タンパク質、細胞、幹細胞など、またはそれらの組合せを含む。治療薬の具体的な例には、例えば、医薬的活性化合物、タンパク質、細胞、幹細胞、オリゴヌクレオチド、リボザイム、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、DNA凝縮剤、遺伝子/ベクター系(例えば、核酸の取り込みおよび発現を可能にする任意の媒体)、核酸(例えば、組換え核酸;裸のDNA、cDNA、RNA;非感染性ベクター中またはウイルス・ベクター中のゲノムDNA、cDNAまたはRNAであって、結合ペプチド標的配列をさらに有し得るゲノムDNA、cDNAまたはRNA;アンチセンス核酸(RNAまたはDNA);および、遺伝子配列を含み、膜輸送配列(「MTS:membrane translocating sequences」)および単純ヘルペス・ウイルス−1(「VP22」)などの輸送タンパク質(ferry protein)をコードするDNAキメラを含む)、ならびに、所望の用途に応じていくつかの種類から選択される、ウイルス性の、リポソーム、およびカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマー、および中性ポリマーが含まれる。ウイルス・ベクターまたはウイルス源由来のベクターの非限定的な例には、アデノウイルス・ベクター、単純ヘルペス・ベクター、パピローマ・ベクター、アデノ関連ベクター、レトロウイルス・ベクターなどが含まれる。生物活性溶質の非限定的な例には、抗血栓薬、例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、およびPPACK(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン(dextrophenylalanine proline arginine chloromethylketone));プロブコールおよびレチノイン酸などの抗酸化薬;血管形成剤および因子ならびに抗血管形成剤および因子;平滑筋細胞増殖抑制薬、例えば、ラパマイシン、アンギオペプチン、および平滑筋細胞の増殖を抑制できるモノクローナル抗体;抗炎症薬、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデゾニド、エストロゲン、スルファサラジン、アセチル・サリチル酸、およびメサラミン;カルシウム流入阻害剤、例えば、ベラパミル、ジルチアゼムおよびニフェジピン;抗腫瘍薬/抗増殖薬/抗有糸分裂薬、例えば、パクリタクセル、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、およびチミジン・キナーゼ阻害剤;抗菌剤、例えば、トリクロサン、デファロスポリン(dephalosporin)、アミノグリコシド、およびニトロフラントイン;麻酔薬、例えば、リドカイン、ブプルバカイン(buplvacaine)、およびロピバカイン;一酸化窒素(NO)ドナー、例えば、リシドミン(lisidomine)、モルシドミン、L−アルギン、NO−タンパク質付加体、NO−炭水化物付加体、ポリマーまたはオリゴマーNO付加体;抗凝集剤、例えば、D−Phe−Pro−Argクロロメチル・ケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤(platelet receptor antagonist)、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、エノキサパリン、ヒルジン、ワラフィン・ナトリウム(Warafin sodium)、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板抑制薬、およびチック抗血小板因子(tick antiplatelet factor);血管細胞増殖促進剤、例えば、増殖因子、増殖因子受容体拮抗薬、転写活性化因子、および翻訳促進剤;血管細胞増殖阻害薬、例えば、増殖因子阻害薬、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害薬、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素とからなる2官能性分子、抗体と細胞毒素とからなる2官能性分子;コレステロール低下剤;血管拡張剤;内因性血管作用機構(endogenous vascoactive mechanism)に干渉する薬剤;細胞死を防ぐサバイバル遺伝子、例えば、抗アポトーシスBcl−2ファミリー因子およびAktキナーゼ;ならびにそれらの組合せが含まれる。
【0046】
いくつかの実施形態では、ステント10は、複数のゾル・ゲル・コーティング(例えば、2つのゾル・ゲル・コーティング、3つのゾル・ゲル・コーティング、4つのゾル・ゲル・コーティング、5つのゾル・ゲル・コーティング、6つのゾル・ゲル・コーティング、7つのゾル・ゲル・コーティング、8つのゾル・ゲル・コーティング、9つのゾル・ゲル・コーティング、10のゾル・ゲル・コーティング)を含むことができる。例えば、図2Aおよび図2Bは、3つのゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cを有するステント100の側面図および断面図をそれぞれ示す。図2Bに示す断面図は、図2Aに示す切断線2B−2Bに沿っている。ステント100は、上記開示した方法を用いて形成される。典型的には、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、連続して施される。概して、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、同様のもしくは異なるゾル・ゲル法を用いて用意されてよい。
【0047】
ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、ゾル・ゲル・コーティング16に関連する上述の特性のいずれかを有してよい。例えば、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、上述のように変化し得る厚さを有する。各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの厚さは、同じまたは異なっていてよい。加えて、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、前述の材料のいずれかを含んでよい。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cのいくつかは、同じ組成を有してよい。他の各実施形態では、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組成は、異なっていてよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、軸18に対して直交する半径方向に測定されるゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組み合わせた厚さは、1μm以上(例えば、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、8μm以上、10μm以上)である。特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組み合わせた厚さは、25μm以下(例えば、22μm以下、20μm以下、18μm以下、16μm以下、14μm以下、12μm以下)である。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組み合わせた厚さは、1μm〜25μm(例えば、1μm〜20μm、1μm〜10μm、2μm〜20μm、3μm〜18μm、5μm〜18μm、5μm〜14μm)である。
【0049】
ステント100上の複数のゾル・ゲル・コーティングは、身体の管腔中のステント100の平均侵食時間について追加の制御を実現できる。加えて、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組成は、身体の管腔内で各コーティングがある特定の侵食速度を有するように選択されてよい。したがって、ステント100に施されるゾル・ゲル・コーティングの数、および/または施される各ゾル・ゲル・コーティングの厚さ、および/または施される各ゾル・ゲル・コーティングの組成を調整することによって、身体の管腔中のステント100の平均侵食時間は、調整できる。
【0050】
各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、カプセル化した治療薬、pH緩衝剤、キレート剤、および他の化学種を含んでよい。各コーティング中のカプセル化した化学種は、同じまたは異なっていてよい。いくつかの実施形態では、異なった化学種は、ステント100の侵食が身体の管腔内で生じる際に化学種の順次的な放出を実現するように、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cに含まれてよい。例えば、第1の薬剤は、ゾル・ゲル・コーティング16cに含まれてよい。第1の薬剤は、ゾル・ゲル・コーティング16cが身体の管腔中で侵食される際に放出される。ゾル・ゲル・コーティング16b内に含まれる第2の薬剤は、第1の薬剤が放出された後に、ゾル・ゲル・コーティング16cの侵食に続いて、ゾル・ゲル・コーティング16bが侵食され始める際に放出される。ゾル・ゲル・コーティング16bの侵食が完了した後、ゾル・ゲル・コーティング16a内に含まれる第3の薬剤が、ゾル・ゲル・コーティング16aが侵食され始める際に放出される。このようにして、身体の管腔内における複数の化学種の順次的な放出が実現できる。
【0051】
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングは、2つ以上のステントの表面に施されてよい。例えば、ステントは、2つの異なる(例えば、内側および外側の)中間層を含んでよい。1例として、図3Aおよび図3Bは、中間層14a,14bと、これらの層14a,14bにそれぞれ形成されたゾル・ゲル・コーティング16a,16bとを含むステント200の側面図および断面図をそれぞれ示す。図3Bに示す断面図は、図3Aに示す切断線3B−3Bに沿っている。各ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの寸法および組成は、例えば前述のゾル・ゲル・コーティング16の寸法および組成と類似していてよい。各ゾル・ゲル・コーティング16a,16bは、軸18に対して直交する半径方向に測定される厚さを有し、この厚さは、所望される通りに変更できる。特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの厚さは、同じであり得る。他の各実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの厚さは、異なっていてよい。
【0052】
特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの組成は同じであってよく、一方、他の各実施形態では、これらコーティングの組成は異なっていてよい。ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの特性(例えば、寸法および/または組成)が異なる場合は、コーティングは、順次的なやり方でステント200に施されてよい。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16bが施されることになるステント200の部分は、パターン付きスクリーンを用いてマスキングされてよい。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16aが、ステント200のマスクされていない領域に施されてよい。その後、このパターン付きスクリーンは、除去されてよく、ゾル・ゲル・コーティング16aが施されたステント200の部分は、(ゾル・ゲル・コーティング16bが施されることになるステント200の部分をマスキングするために使用されたパターン付きスクリーンと同じまたはそれとは異なっていてよい)第2のパターン付きスクリーンを用いてマスキングされてよく、露出したステント200のコーティングされていない領域を残す。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16bが、ステント200に施されてよい。第2のパターン付きスクリーンの除去後、ステント200は、ゾル・ゲル・コーティング16aを有する部分と、ゾル・ゲル・コーティング16bを有する部分とを備える。
【0053】
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの特性(例えば、寸法および/または組成)が異なる場合は、コーティングは、高分解能スプレー技術および/または直接接触印刷法などの選択的方法によって施されてよい。例えば、まず、ゾル・ゲル・コーティング16aが、コーティング16bが施されることになるステント200の部分を避けながら、直接接触印刷を用いてステント200に施されてよい。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16bが、コーティング16aが施されたステント200の部分を避けながら、ステント200に施されてよい。この順次的なコーティング工程の結果として、ステント200は、ゾル・ゲル・コーティング16aを有する部分と、ゾル・ゲル・コーティング16bを有する部分とを備える。
【0054】
いくつかの実施形態では、複数のゾル・ゲル・コーティング材料(例えば、2つのゾル・ゲル・コーティング材料、3つのゾル・ゲル・コーティング材料、4つのゾル・ゲル・コーティング材料、5つのゾル・ゲル・コーティング材料、6つのゾル・ゲル・コーティング材料、7つのゾル・ゲル・コーティング材料、8つのゾル・ゲル・コーティング材料、9つのゾル・ゲル・コーティング材料、10のゾル・ゲル・コーティング材料)が、同じ中間層の異なる領域上に配設されてよい。例えば、図4Aおよび図4Bは、層14の異なる領域上に配設される2つのゾル・ゲル・コーティング16a,16bを含むステント300の側面図および断面図をそれぞれ示す。図4Bに示す断面図は、図4Aに示す切断線4B−4Bに沿っている。2つのゾル・ゲル・コーティングは、軸18に平行な方向に測定される長さLa,Lbをそれぞれ有する。各ゾル・ゲル・コーティング16a,16bは、ゾル・ゲル・コーティング16に関連する前述の特性のいずれかを有してよい。
【0055】
ゾル・ゲル・コーティング16a,16bは、2つの工程でステント300に施すことができる。第1の工程において、ゾル・ゲル・コーティング16bが施されることになる中間層14の一部が、ゾル・ゲル・コーティング16aの前駆体に対するこれら部分の露出を防ぐために、(例えば、パターン付きスクリーンを用いて)マスキングされてよい。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16aが、中間層14のマスクされていない部分に施されてよい。第2の工程において、第1の工程からのパターン付きスクリーンは、除去され、(第1の工程からのパターン付きスクリーンとは異なった、またはそれと同じ)パターン付きスクリーンが、ゾル・ゲル・コーティング16aが施されたステント300の一部を覆って配置される。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16bが、中間層14のマスクされていない部分に施されてよい。最終的に、ゾル・ゲル・コーティング16aを覆っているパターン付きスクリーンは、除去されてよい。代替としてまたは加えて、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bは、直接接触印刷および/または高分解能スプレーなどの選択的に施す方法を用いてステント300の一部に施されてよい。
【0056】
長さLa,Lbは概して、所望される通りに選択できる。いくつかの実施形態では、La,Lbの一方または両方は、約1μm以上(例えば、約5μm以上、約10μm以上、約50μm以上、約100μm以上)であってよい。特定の実施形態では、La,Lbの一方または両方は、約15mm以下(例えば、約10mm以下、約5mm以下、約1mm以下)であってよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの組成は、ゾル・ゲル・コーティング16aを有するステント300の部分が、ゾル・ゲル・コーティング16bを有する部分よりも身体の管腔内でより急速に侵食されるように選択される。ゾル・ゲル・コーティングの組成を選択することによって、ステント300の平均侵食時間と、侵食パターン(例えば、侵食中に生成されたステント300の断片の形状)とは共に、制御できる。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16aを有するステント300の部分が、ゾル・ゲル・コーティング16bを有する部分よりもより急速に侵食される場合は、侵食中に、ステント300は、それぞれ長さLb以下であるより小さい管の小片に分解することになり、それぞれのより小さい管の小片は、さらに侵食されることになる。
【0058】
概して、様々な種類の複数のゾル・ゲル・コーティング材料の多様な組合せが使用され得る。
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングは、ステントの選択した部分にだけ施され得る。図5Aおよび図5Bは、ステント400の選択した部分(中間材料領域14)に施されるゾル・ゲル・コーティング16を含むステント400の側面図および断面図をそれぞれ示す。図5Bに示す断面図は、図5Aに示す切断線5B−5Bに沿っている。ゾル・ゲル・コーティング16の寸法および組成は、例えば、他の各実施形態に関連する前述のそれらパラメータの値と類似していてよい。中間層14は、ステント400の選択した部分に形成される。
【0059】
ステント400は、4つの工程で形成できる。第1の工程において、マスキング剤が、ゾル・ゲル・コーティング16が施されないステント本体12の選択した部分に施される。第2の工程において、ステント本体12のマスクされていない部分を陽極酸化して中間層14を生成する。第3の工程において、ゾル・ゲル・コーティング16は、(例えば、陽極酸化工程中に形成される中間層14上の)ステント400の露出した部分に施される。第4の工程において、マスキング剤を除去して、ステント本体12の改質されていない部分を露出する。
【0060】
特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングは、複雑なパターンをステントの表面上に形成するように、ステントに施され得る。上述のように、ゾル・ゲル・コーティングにパターンを付けることによって、身体の管腔中で侵食中に生成されるステントの断片の形状についての制御が、実現できる。図6および図7は、パターン付きのゾル・ゲル・コーティング16を有するステントの2つの実施形態を示す。図6では、ゾル・ゲル・コーティング16は、1連のドット状形状をステント500の表面上に形成する。図7では、ゾル・ゲル・コーティング16は、ゾル・ゲル・コーティング16がハッチ・パターンをステント600の表面上に形成するように施される。図6および図7に示す各実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16のパターンによって形の異なるステントの断片が、身体の管腔中のステントの侵食中に生成される。
【0061】
多様な種類のステントが、ゾル・ゲル・コーティングで形成できる。例えば、冠状動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管ステント、消化管ステント、泌尿器ステント、および神経学的ステント(neurology stent)などの様々な身体の管腔で用いるステントが、ゾル・ゲル・コーティングをそれぞれ含むことができる。さらに、本明細書で説明するステントのいずれかは、例えば、自己拡張型ステントであってよい。
【0062】
ステントがゾル・ゲル・コーティングを有する管状のステント本体を含んでいるいくつかの実施形態を説明してきたが、ゾル・ゲル・コーティングを有する他のステントの形状および配置が、形成されてもよい。例えば、図8は、ステントの外面からステントの内面まで延在する複数の穴を含む管状のステント本体を有するステント700の実施形態を示す。ゾル・ゲル・コーティングは、ステント700の内面および外面の一方または両方に配設されてよい。図9および図10は、コイル状ステント750,800の2つの実施形態を示す。ステント750,800は、その上に1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティングを配設し、(例えば、巻回することによって)コイル状配置に処理したステント材料から形成されてよい。図11は、網状配置で結ばれている複数の薄い部分を含むステント850の実施形態を示す。ステント850は、例えば、前述のような1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティングを有する管状のステントを形成し、次いでステント850の網状配置を形成するために(例えば、レーザ切断によって)管状のステントの一部を除去することによって製造できる。図12は、織り合わされたワイヤから形成されたステント本体を含むステント900の実施形態を示す。ステント900は、ステント材料をワイヤの形状に形成し、1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティングを1つまたは複数のワイヤ表面に形成することによって製造できる。次いで、このワイヤは、ステント900を製造するために織り込まれる。特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングしたワイヤを織り合わせて、金網型構造を有するステント本体を形成する。他の各実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングしたワイヤを他のゾル・ゲル・コーティングしたワイヤのセグメントの上下に織り込んで、メッシュ状構造を有するステント本体を形成することができる。各ステント700,750,800,850,900は、前述の組成のいずれかを有するゾル・ゲル・コーティングを含んでよい。
【0063】
本明細書で説明するステントは、例えば、様々な手法を用いて身体の管腔内へ搬送できる。1例として、図13〜図15は、自己拡張型ステント3200を身体の管腔2400(例えば、ヒトの動脈)内へ搬送することを目的とするシステム1000を示す。システム1000は、カテーテル1200と、カテーテル1200を包囲するシース1400とを含む。ステント3200は、カテーテル1200とシース1400との間に配置される。システム1000は、身体の管腔2400内へ挿入するように寸法決めされた先端部1600と、被験者の身体の外にある基端部1800とを含む。基端部1800は、少なくとも1つのポート5000と、医師による操作用の管腔とを有する。ブラント・エンド(blunted end)2200を有するガイド・ワイヤ2000は、例えば、透視検査法を位置決め補助器具として用いて、例えば、大腿動脈を切開し、ガイド・ワイヤ2000を管腔2400(例えば、粥腫で狭窄した動脈)の狭窄部位2600へ向けることによって身体の管腔2400に挿入される。ガイド・ワイヤ2000が身体の管腔2400の狭窄部位2600に到達した後、カテーテル1200、ステント3200およびシース1400は、ガイド・ワイヤ2000の基端部に沿って配置される。カテーテル1200、ステント3200およびシース1400は、ガイド・ワイヤ2000に沿って先端方向へ動かされ、管腔2400内に配置され、それによりステント3200は、管腔2400の狭窄部位2600に隣接する。シース1400が基端方向へ動かされると、ステント3200は、拡張し、狭窄部位2600に係合することが可能になる。シース1400、カテーテル1200およびガイド・ワイヤ2000は、ステント3200を狭窄部位2600に係合させた状態で、身体の管腔2400から除去される。
【0064】
いくつかの実施形態を開示したが、他の実施形態もあり得る。
1例として、ステント本体がマグネシウム材料で作製されている各実施形態を説明したが、特定の実施形態では、ステント本体は、例えば、鉄、ビスマス、白金や金やパラジウムなどの貴金属、ならびにタンタルやタングステンやモリブデンやレニウムなどの耐熱金属などの他の材料で作製されてよい。いくつかの実施形態では、ステント本体は、2つ以上の金属を含有する合金で形成できる。合金の例には、(例えば、鉄および/またはビスマスを含有する)マグネシウム合金、鉄合金(例えば、低炭素鋼(AISI 1018〜1025)、中炭素鋼(AISI 1030〜1055)、高炭素鋼(1060〜1095)、ステンレス鋼(例えば、316Lステンレス鋼)、貴金属および/または耐熱金属と混ぜて合金にされたステンレス鋼)、ニチノール(ニッケル・チタン合金)、ならびに他のニッケル基合金(例えば、Niと、Pt、AuおよびTaの1つまたは複数からなる合金)、エルジロイ(Elgiloy)、L605合金、Ti−6A1−4V、Co−28Cr−6Mo、および2成分のビスマス・鉄合金が含まれる。いくつかの実施形態では、ステント本体は、1つまたは複数の金属を含有する形状記憶材料から形成できる。そのような材料の例は、鉄・マンガン(Fe−Mn)である。金属含有形状記憶材料は、例えば、シェッツキー、エル.マクドナルド(Schetsky,L.McDonald)、「Shape Memory Alloys」、Encyclopedia of Chemical Technology(3rd Ed.)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1982、vol.20、pp.726−736に開示されている。
【0065】
別の例として、ステント本体上に配設される中間層がマグネシウム含有酸化物で作製されている各実施形態を説明したが、いくつかの実施形態では、ステント本体上に配設される中間層は、異なった材料で作製され得る。しかしながら、ステント本体上に配設される中間層は、ステント本体を形成する材料の酸化物の1つまたは複数で形成される。ステント本体上に配設される中間層を形成できる材料の例には、鉄および/またはビスマスの酸化物、白金、金およびパラジウムなどの貴金属の酸化物、ならびにタンタル、タングステン、モリブデンおよびレニウムなどの耐熱金属の酸化物が含まれる。特定の実施形態では、ステント本体が2つ以上の金属を含有する合金で形成される場合は、中間層は、合金の構成物質の1つまたは複数の酸化物を含んでよい。例えば、ステント本体が(例えば、鉄および/またはビスマスを含有する)マグネシウム合金から形成される場合は、中間層は、マグネシウムおよび/または鉄および/またはビスマスの酸化物から形成されてよい。別の例として、ステント本体が、鉄の合金(例えば、低炭素鋼(AISI 1018〜1025)、中炭素鋼(AISI 1030〜1055)、高炭素鋼(1060〜1095)、ステンレス鋼(例えば、316Lステンレス鋼)、貴金属および/または耐熱金属と混ぜて合金にされたステンレス鋼)で形成される場合は、中間層は、鉄の酸化物および/または他の鋼成分の酸化物から形成されてよい。ステント本体が、ニチノール(ニッケル・チタン合金)または他のニッケル基合金(例えば、Niと、Pt、AuおよびTaの1つまたは複数からなる合金)などのニッケル基合金から形成される場合は、中間層は、Niの酸化物、ならびにTi、Pt、AuおよびTaの1つまたは複数の酸化物から形成されてよい。ステント本体が、鉄・マンガンなどの形状記憶材料で形成される場合は、中間層は、鉄の酸化物および/またはマンガンの酸化物から形成されてよい。中間層は、形状記憶材料の成分のいずれかの酸化物を含んでよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、ステント本体は、ポリマー材料から形成されてよく、ゾル・ゲル・コーティングは、中間層を介在することなくステント本体上に配設されてよい。ポリマー材料(例えば、生体適合性ポリマー材料)の例には、ポリ乳酸、ポリビニル酸、ポリグリコール酸、ポリグリコリド・ラクチド(polyglycolide lactide)、ポリリン酸塩、ポリホスホネート(polyphosphonate)、ポリフォスフォエステル(polyphosphoester)、ポリカプロミド(polycapromide)、およびチロシンから誘導されたポリカーボネートが含まれる。ポリマー材料のさらなる例は、米国特許第6,719,934号に開示されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。特定の実施形態では、ステント本体は、形状記憶ポリマー材料であるポリマー材料で形成され得る。形状記憶ポリマー材料の例には、(三菱(Mitsubishi)から市販の)形状記憶ポリウレタン、ポリノルボルネン(例えば、Norsorex(商標)(三菱(Mitsubishi))、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(例えば、結晶性ポリエチレン)、ポリイソプロペン(polyisopropene)(例えば、トランス・ポリイソプレン)、スチレン・ブタジエン・コポリマー、およびゴム類が含まれる。形状記憶ポリマー材料は、例えば、ネモサイエンス・ゲーエムベーハー社(MnemoScience GmbH)[ドイツ、アーヘンD−52074(D−52074 Aachen)、パウエル通り19(Pauwelsstrasse 19)所在]から市販されている。
【0067】
追加の例として、(例えば、図3Aおよび図3Bに示すように)異なったゾル・ゲル・コーティングが異なった中間層の上に配設されている各実施形態を説明したが、特定の実施形態では、同じゾル・ゲル・コーティング材料は、異なった中間層の上に配設することができる。
【0068】
他の各実施形態は、特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
この開示は概して、植込み型医療用内部人工器官、および関連したシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植込み型医療用内部人工器官は、身体の管腔内に配置できる。植込み型医療用内部人工器官の例には、バルーン拡張型ステントや自己拡張型ステントなどのステントが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ゾル・ゲル・コーティングを使用して、例えば、植込み型医療用内部人工器官の侵食時間を調節し、選択される時間で選択される身体部位に薬剤を搬送することができるような、改良された植込み型医療用内部人工器官を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1態様では、本発明は、マグネシウムを含有する植込み型医療用内部人工器官本体と、この植込み型医療用内部人工器官本体によって支持されるゾル・ゲル・コーティングとを含む植込み型医療用内部人工器官に関する。
【0005】
別の態様では、本発明は、植込み型医療用内部人工器官本体と、この植込み型医療用内部人工器官本体によって支持される、マグネシウムを含有するゾル・ゲル・コーティングとを含む植込み型医療用内部人工器官に関する。
【0006】
さらなる態様では、本発明は、植込み型医療用内部人工器官を作製する方法に関する。この方法は、植込み型医療用内部人工器官本体の表面の一部を酸化させる工程と、植込み型医療用内部人工器官を形成するように、ゾル・ゲル・コーティングを植込み型医療用内部人工器官本体の表面の酸化された部分の上に配設する工程とを含む。
【0007】
各実施形態は、以下の特徴の1つまたは複数を含んでよい。
ゾル・ゲル・コーティングは、マグネシウムを含有してよい。
ゾル・ゲル・コーティングは、複数の層を含んでよい。
【0008】
ゾル・ゲル・コーティングは、少なくとも1つの治療薬を含んでよい。
治療薬は、カプセル化されてよい。
ゾル・ゲル・コーティングは、タンパク質、キレート剤、pH緩衝剤、および抗体から選択される少なくとも1つの化学種を含んでよい。この1つまたは複数の化学種は、カプセル化されてよい。
【0009】
植込み型医療用内部人工器官は、ゾル・ゲル・コーティングと植込み型医療用内部人工器官本体との間に層をさらに含んでよい。追加の層は、酸化物を含んでよい。この酸化物は、マグネシウムを含有してよい。この酸化物は、多孔質であってよい。この追加の層は、植込み型医療用内部人工器官本体上に配設されてよい。この追加の層は、ステント本体のいくつかの部分だけによって支持されてよい。ゾル・ゲル・コーティングは、この追加の層の上に配設されてよい。
【0010】
植込み型医療用内部人工器官は、管形状であってよい。
植込み型医療用内部人工器官は、バルーン拡張型ステントや自己拡張型ステントなどのステントであってよい。
【0011】
この方法は、植込み型医療用内部人工器官本体の表面を酸化させる工程の前に、酸化されてはならない植込み型医療用内部人工器官本体の部分をマスキングする工程をさらに含んでよい。
【0012】
本発明の各実施形態は、以下の利点の1つまたは複数を有し得る。
本体の表面に隣接する酸化物層を生成するためのステント本体の陽極酸化部分は、ゾル・ゲル・コーティングが本体の表面上に堆積することを可能にし得る。マグネシウム含有材料から形成されるステントなどのある種のステントの表面に直接施される一部のゾル・ゲル・コーティングは、ステント本体と化学反応を起こし、ステント本体の植込み前の侵食をもたらす。しかしながら、施されるゾル・ゲル・コーティングは概して、ステント本体の一部を陽極酸化することによって生成される酸化物層と反応しない。したがって、1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティングは、植込みの前にステントを侵食することなくステント本体の表面に施すことができる。
【0013】
ゾル・ゲル・コーティングの組成を変化させて身体の管腔内のステントの平均侵食時間を制御することができる。例えば、身体の管腔中で短い侵食時間を有するゾル・ゲル・コーティングをステント本体に施すことによって、ゾル・ゲル・コーティングの侵食後のステント本体のコーティングした部分の管腔環境への露出が比較的早く生じ、身体の管腔中におけるステントの平均侵食時間が比較的短くなる。身体の管腔中で長い侵食時間を有するゾル・ゲル・コーティングを施すことによって、ゾル・ゲル・コーティングの侵食後のステント本体のコーティングした部分の管腔環境への露出が比較的遅く生じ、身体の管腔中におけるステントの平均侵食時間が比較的長くなる。したがって、ステント本体に施されるゾル・ゲル・コーティングの組成を選択することによって、身体の管腔中におけるステントの平均侵食時間を変化させることができる。
【0014】
1つまたは複数のカプセル化した薬剤は、身体の管腔内の部位への調節された薬剤の搬送のために、1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティング内に収容することができる。例えば、ゾル・ゲル・コーティングは、カプセル化したpH緩衝剤、酵素、抗体、タンパク質、キレート剤、および他の化学種を含むことができる。これらカプセル化した薬剤は、身体の管腔内でゾル・ゲル・コーティングの侵食が生じる際に放出される。ゾル・ゲル・コーティングの適当な組成を選択する(それによって身体の管腔内におけるコーティングのある特定の侵食速度を決定する)ことによって、身体の管腔中でのカプセル化した薬剤に関するおおよその放出時間が選択できる。
【0015】
複数のゾル・ゲル・コーティングを使用して、異なった時間で異なったカプセル化した薬剤を放出することができる。例えば、コーティング積層中の最も外側のゾル・ゲル・コーティングは、ステントが植込まれると管腔環境に直接露出されて、ステント本体のより近くに配置されて、最も外側のゾル・ゲル・コーティングが侵食された後にのみ管腔環境に露出される内側ゾル・ゲル・コーティングの前に侵食されることになる。カプセル化した薬剤を異なったゾル・ゲル・コーティング中に含めることによって、各ゾル・ゲル・コーティングの順次的な侵食が身体の管腔中で生じる際に、カプセル化した薬剤について異なった平均放出時間が選択できる。
【0016】
ゾル・ゲル・コーティングをステントの表面に複数のパターンをなすように施して、身体の管腔内における侵食中に生成されるステントの断片の形状を調節することができる。例えば、身体の管腔中のステント本体のコーティングした部分の平均侵食時間を増大させるために、ゾル・ゲル・コーティングは、リング、ドット、ハッチ・パターン、および他のパターンなどのパターンでステント本体の表面に施してよい。組成および厚さの一方または両方が異なるゾル・ゲル・コーティングを、ステント本体の異なった部分に施して、そこに施した1つまたは複数のゾル・ゲル層の特性に従って異なった平均侵食時間を有するステントのコーティングした領域を生成することができる。
【0017】
本発明の他の特色および利点は、明細書、図面および特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】ゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の側面図。
【図1B】図1Aに示すステントの断面図。
【図2A】複数の同心のゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の側面図。
【図2B】図2Aに示すステントの断面図。
【図3A】ゾル・ゲル・コーティングを複数のステント表面上に有するステントの実施形態の側面図。
【図3B】図3Aに示すステントの断面図。
【図4A】複数の非同心のゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の側面図。
【図4B】図4Aに示すステントの断面図。
【図5A】ステントの選択した部分に施されたゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の側面図。
【図5B】図5Aに示すステントの断面図。
【図6】ドット状形状のパターンに形成されたゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の平面図。
【図7】クロス・ハッチ・パターンに形成されたゾル・ゲル・コーティングを有するステントの実施形態の平面図。
【図8】ゾル・ゲル・コーティング、およびステント本体を貫通して延びる複数の穴を有するステントの実施形態の斜視図。
【図9】ゾル・ゲル・コーティングを有するコイル状ステントの実施形態の斜視図。
【図10】ゾル・ゲル・コーティングを有するコイル状ステントの別の実施形態の斜視図。
【図11】ゾル・ゲル・コーティングを有するステントのさらなる実施形態の斜視図。
【図12】ゾル・ゲル・コーティングを有する編み込まれたステントの実施形態の斜視図。
【図13】使用中の内部人工器官搬送システムの実施形態の側面図。
【図14】使用中の内部人工器官搬送システムの実施形態の側面図。
【図15】使用中の内部人工器官搬送システムの実施形態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な図面における同じ参照符号は、同じ要素を示す。
本開示は、ゾル・ゲル・コーティングを有するステント(例えば、バルーン拡張型ステント、自己拡張型ステント)などの植込み型医療用内部人工器官に関する。ゾル・ゲル・コーティングを使用して、例えば、植込み型医療用内部人工器官の侵食時間を調節し、選択される時間で選択される身体部位に薬剤を搬送することができる。
【0020】
図1Aおよび図1Bは、ステント10の側面図および断面図をそれぞれ示す。図1Bに示す断面図は、図1Aに示す切断線1B−1Bに沿っている。ステント10は、縦軸18に平行な方向に測定される長さL、および軸18に対して直交する半径方向に測定される厚さtbを有する管状のステント本体12を有する。中間層14は、ステント本体12上に配設され、軸18に対して直交する半径方向に測定される厚さtoを有する。ゾル・ゲル・コーティング16は、中間層14上に配設される。ゾル・ゲル・コーティング16は、軸18に対して直交する半径方向に測定される厚さtcを有する。本明細書で述べるように、ゾル・ゲル材料は、液体(ゾル)中の固体粒子の懸濁液からゲルへ転移を起こす材料である。
【0021】
ステント本体12は、マグネシウム含有材料で形成される。例えば、特定の実施形態では、ステント本体12は、マグネシウムから形成できる。他の特定の実施形態では、ステント本体12は、マグネシウム含有合金材料から形成できる。一般に、多くの様々なマグネシウム含有材料が、ステント本体12を形成するために使用できる。例えば、ステント本体12は、AZ91、AZ91D、AZ91E、AZ92、ZE41、QE22、WE43A、およびEZ33などのマグネシウム合金材料から形成できる。ステント本体12は、マグネシウム、ならびに1つまたは複数の以下の材料、すなわち、アルミニウム、セリウム、銅、ランタン、リチウム、マンガン、ネオジム、銀、トリウム、イットリウム、亜鉛、およびジルコニウムを含む合金から形成できる。
【0022】
ステント本体12の長さLは概して、所望される通りに選択できる。いくつかの実施形態では、Lは、ステント10についてのある特定の目的の用途に従って、例えば、ステント10が植込まれることになる身体の管腔の生理学的特性に従って選択できる。特定の実施形態では、Lは、約5mm以上(例えば、約10mm以上、約20mm以上、約30mm以上、約40mm以上)であり得る。いくつかの実施形態では、Lは、約250mm以下(例えば、約200mm以下、約150mm以下、約100mm以下)であり得る。
【0023】
ステント本体12の厚さtbは概して、所望される通りに選択できる。いくつかの実施形態では、tbは、約0.05mm以上(例えば、約0.1mm以上、約0.2mm以上、約0.5mm以上、約1mm以上)であり得る。特定の実施形態では、tbは、約5mm以下(例えば、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下)であり得る。
【0024】
中間層14は、身体の管腔の環境とステント本体12の材料の間の障壁として機能可能な材料として形成される。つまり、ステント本体12は典型的には、身体の管腔中の環境に露出されると侵食される材料で形成されるが、中間層14は、ステント本体12の材料と身体の管腔の環境との間の接触を初めに防ぐことによって身体の管腔内のステント10の平均侵食時間を増大させることができる。適宜、中間層14は、身体の管腔中の環境に露出されると経時的に侵食される材料で形成されてよく、それによってステント本体12の材料を身体の管腔の環境に露出し、ステント本体12の侵食をもたらす。
【0025】
加えてまたは代替として、中間層14は、ゾル・ゲル・コーティング16に対して密着層を提供することができる。ゾル・ゲル・コーティング16を形成するために使用される特定の前駆体物質は、ステント本体12を形成する材料と反応することができ、そのことは、ステント10の使用前にステント本体12の望ましくない侵食という結果になり得る。中間層14は、層14が、コーティング16の前駆体物質および/またはコーティング16自体に対して比較的不活性である材料で形成できるため、そのような望ましくない侵食を低減する(例えば、防ぐ)ことができる。したがって、ステント本体12によって支持される中間層14をまず形成することによって、たとえステント本体12がゾル・ゲル層16を形成するために使用できる特定の前駆体物質と接触すると、侵食を通常受け得る材料(例えば、マグネシウム材料)で形成されるとしても、ゾル・ゲル・コーティング16は、ステント本体12によって支持される層として備えることができる。
【0026】
中間層14は、ステント本体12の材料の酸化物(例えば、酸化マグネシウム)を含む。例えば、層14は、層14がステント本体12と一体であるように、ステント本体12を形成する材料の部分の1つまたは複数を酸化させることによって形成できる。いくつかの実施形態では、これには、陽極酸化法を含み得る。そのような方法の例は、以下の通りである。電解酸化法を使用してステント本体12の一部を陽極酸化する。例えば、ステント本体12を2つの電極と共に電解質溶液中に配置し、電極間に電位を印加して、電解質溶液中に電流の流れを引き起こす。
【0027】
電解質溶液は、任意の適切な材料を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、電解質溶液は、1つまたは複数の水酸化物材料(例えば、NaOH)を含んでよい。特定の実施形態では、電解質溶液は、1つまたは複数の酸化物材料(例えば、NaAlO2)を含んでよい。さらに、電解質溶液は、マグネシウム、ならびに/または鉄ケイ酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩、ニオブ酸塩、タンタル酸塩、タングステン酸塩(tungstenate)、ルテニウム酸塩、イリジウム酸塩(iridate)、白金酸塩、および鉄酸塩などの他の材料を含んでもよい。
【0028】
特定の実施形態では、約10V〜約600V(例えば、約50V〜約500V、約100V〜約400V、約150V〜約300V)の範囲の電圧が、 ステント本体12の一部を陽極酸化するために使用され得る。概して、電極間に印加される電圧は、時間的に一定であってよく、または、時間で変化してよい。例えば、いくつかの実施形態では、直流電圧が、電解質溶液中の電極間に印加され得る。特定の実施形態では、時間で変化する電圧(例えば、交流電圧、パルス電圧)が、電極間に印加され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、電圧は、約10秒以上(例えば、約30秒以上、約1分以上、約10分以上、約20分以上、約30分以上、約45分以上、約60分以上)の間、電極間に印加され得る。特定の実施形態では、電圧は、約12時間以下(例えば、約6時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下)の間、電極間に印加され得る。
【0030】
ステント本体12中のマグネシウムを酸化マグネシウムに転換する電気化学反応が、電解質溶液中で生じる。概して、この電気化学反応は、電解質溶液に露出されるステント本体12の表面で生じる。特定の実施形態では、ステント本体12の表面は、電解質溶液に全て完全に露出され、それにより酸化物層が、露出した表面それぞれに形成される。いくつかの実施形態では、ステント本体12の表面の一部を(例えば、マスキング剤を用いて)マスキングして、電解質溶液に対するマスキングされた部分の露出を防ぐ。その結果、中間層14は、マスキングされたステント本体12の部分には形成されない。
【0031】
軸18に対して直交する半径方向に沿って測定される中間層14中の酸化マグネシウムの濃度は、概して均一でない。代わりに、ステント本体12の材料と電解質溶液との間の接触に応じて酸化マグネシウムを形成するため、より高い濃度の酸化マグネシウムは、層14の内面13寄りよりも層14の外面15寄りに形成される。その結果、酸化マグネシウム濃度の勾配が、酸化マグネシウムの濃度が層14にわたって内面13から外面15へ半径方向に増大する状態で中間層14中に形成される。
【0032】
陽極酸化法は、中間層14中に細孔を生成できる。中間層14に生成された細孔の分布は、酸化マグネシウムの濃度の勾配に類似する勾配に従う。すなわち、層14中の細孔の密度は概して、内面13から外面15へ半径方向に増大する。外面15の領域では、細孔の密度は、相対的に大きいものであり得る。
【0033】
中間層14に対するゾル・ゲル・コーティング16の密着強度は、中間層14における、特に外面15の領域における特定の細孔密度を選択することによって制御できる。表面15の領域におけるより大きい細孔密度により、ゾル・ゲル・コーティング16が密着できるより大きい有効表面積を与えることができ、これにより層14と層16との間の密着性を全体的に強化する。
【0034】
中間層14の厚さtoは、電解質溶液の組成および陽極酸化工程中に電極間に印加される電圧を調整することによって選択することもできる。いくつかの実施形態では、電解質溶液および印加電圧は、toが、約1μm以上(例えば、約2μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約50μm以上)であるように調整され得る。特定の実施形態では、toは、約5mm以下(例えば、約3mm以下、約1mm以下、約750μm以下、約500μm以下、約250μm以下、約150μm以下、約100μm以下)であり得る。
【0035】
ゾル・ゲル・コーティング16は、所望される通りに用意できる。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、中間層14に施される。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16の厚さtcは、約1μm以上(例えば、約2μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約50μm以上)であり得る。特定の実施形態では、tcは、約5mm以下(例えば、約3mm以下、約1mm以下、約750μm以下、約500μm以下、約250μm以下、約150μm以下、約100μm以下)であり得る。
【0036】
ゾル・ゲル・コーティング16は、様々な材料から形成できる。ゾル・ゲル・コーティング16は、1つまたは複数の生体侵食性材料、例えば、身体の管腔の環境に露出されると侵食される材料から形成される。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、マグネシウム、亜鉛、鉄、アルミニウム、チタン、イリジウム、タングステン、タンタル、ニオブ、およびジルコニウムなどの生体侵食性金属材料の1つまたは複数を含んでよい。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16は、酸化マグネシウム材料を含んでよい。これら材料は、酢酸マグネシウム、マグネシウム・エトキシド(magnesium ethoxide)、マグネシウム・メトキシド(magnesium methoxide)、および他のマグネシウム・アルコキシド(magnesium alkoxide)などのゾル・ゲル前駆体物質から得ることができる。別の例として、ゾル・ゲル・コーティング16は、平均的な配合のMgxZn1−xOによる混合したマグネシウム・亜鉛酸化物材料を含んでよい。これら材料は、酢酸マグネシウムや酢酸亜鉛などのゾル・ゲル前駆体から得ることができる。さらに別の例として、ゾル・ゲル・コーティング16は、平均的な配合のMgxAlyO、MgxTiyO、およびMgxZryOのいずれか1つによる混合した酸化物材料を含んでよい。これら材料は、Mg、Al、TiおよびZrの酢酸塩および/またはアルコキシドを含み得るゾル・ゲル前駆体から得ることができる。さらなる例として、ゾル・ゲル・コーティング16は、ナノコンポジット膜に形成され得るアルギン酸マグネシウム・ケイ酸アルミニウム材料(alginate−magnesium aluminum silicate)などの複合材料を含んでよい。
【0037】
特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、ポリビニル・アルコール(PVA)、ポリエチレン・グリコール(PEG)、および他のポリマー材料などのポリマー材料を含んでよい。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、ポリマーと金属を共に含むハイブリッド材料から形成されてよい。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16は、MgO、CaO、SiO2、P2O5、およびPVAを含む生体侵食性材料から形成されてよい。別の例として、ゾル・ゲル・コーティング16は、ナノ多孔性コーティング層を形成するために、PEGと組み合わせたMgOxおよびTiOxの混合物から形成されてよい。
【0038】
ステント10の選択した部分に施されたゾル・ゲル・コーティング16は、ゾル・ゲル法によって形成される。例えば、いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル法を適用して1つまたは複数のゾル・ゲル層を、中間層14を含むステント10の部分に堆積させる。ゾル・ゲル前駆体は、ゾル・ゲル層16の所望の組成に従って選択される。例えば、マグネシウムを含むゾル・ゲル層を製造するためには、マグネシウム系前駆体が使用される。金属酸化物に適した前駆体は、金属アルコキシドおよび金属酢酸塩を含む。例えば、マグネシウムについての前駆体は、マグネシウム・メトキシド、マグネシウム・エトキシド、マグネシウム・イソプロポキシド(magnesium isopropoxide)、酢酸マグネシウム、および他のマグネシウム・アルコキシドを含む。2つ以上の材料(例えば、MgOおよびTiO)を含むゾル・ゲル・コーティング16を製造するためには、複数の異なるゾル・ゲル前駆体が使用され得る。
【0039】
続いて、ゾル・ゲル・コーティング16を堆積させるために行われ得る工程を、MgOから形成されるコーティング16に関して述べることにする。しかしながら、これら工程は、上記開示したゾル・ゲル材料のいずれかから形成されるコーティングを堆積させるために行われ得る。第1に、ゾル・ゲル前駆体(例えば、マグネシウム・アルコキシド)が、メタノールまたはエタノールなどのアルコール中に溶解される。第2に、(例えば、塩酸、酢酸、硝酸などの酸性物質1つまたは複数、および/または塩基性物質1つまたは複数から形成される)触媒材料を用いて、水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)を形成するように、前駆体の加水分解に触媒作用を及ぼす。第3に、この水酸化物は、酸化物(例えば、酸化マグネシウム)をゾル・ゲル・コーティング16として発生させるために、(例えば、熱硬化または別の種類の脱水工程によって)脱水される。
【0040】
第1の工程と第2の工程との間、または第2の工程と第3の工程との間に、溶液中のゾル・ゲル前駆体は、ステント10に接触する。様々な方法を使用して接触を行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ステント10は、ディップ・コーティングによってゾル・ゲル前駆体の溶液を用いてコーティングできる。特定の実施形態では、ステント10は、スプレー・コーティング、ブラシ・コーティング、および/またはスピン・コーティングなどの方法を用いてコーティングできる。いくつかの実施形態では、ステント10は、ピン・プリンティング(pin printing)などの接触印刷法を用いてゾル・ゲル前駆体の溶液でコーティングできる。例えば、接触印刷法を用いてゾル・ゲル前駆体の溶液を複雑なパターンでステント10に施すことができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16の組成および/または厚さtcは、身体の管腔中のステント10の平均侵食時間を制御するように選択される。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16の厚さtcが大きくなるほど、ゾル・ゲル・コーティング16の平均侵食時間は大きくなり、したがってステント10の平均侵食時間は大きくなる。対照的に、ゾル・ゲル・コーティング16の厚さtcが小さくなるほど、ゾル・ゲル・コーティング16とステント10の両方の平均侵食時間は小さくなる。別の例として、身体の管腔中で比較的長い平均侵食時間を有するステント10を製造するために、ゾル・ゲル・コーティング16は、比較的小さい侵食速度を有する1つまたは複数の材料から形成されてよい。比較的小さい侵食速度を有する適当な材料の例には、TiOx、TaOxおよびWO3が含まれる。身体の管腔中で比較的小さい平均侵食時間を有するステント10を製造するために、ゾル・ゲル・コーティング16は、比較的大きい侵食速度を有する1つまたは複数の材料から形成されてよい。比較的大きい侵食速度を有する適当な材料の例には、MgOx、FeOxおよびZnOxなどの材料が含まれる。
【0042】
特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16は、様々な種類のカプセル化した薬剤の1つまたは複数を含んでよい。そのような実施形態では、(1つまたは複数の)カプセル化剤は、例えば、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、多糖類、ポリエステル、ポリエチレン・グリコール、およびポリ酸無水物などのマトリックス材料に配設されてよい。カプセル化剤の例には、薬物類(drugs)、pH緩衝剤、酵素、抗体、タンパク質、キレート剤、および他の化学種が含まれ得る。これら様々な種類の薬剤それぞれは、ステント10が植込まれている身体の管腔中または他の身体部位中で特定の機能を果たすために使用され得る。例えば、1つまたは複数のカプセル化したpH緩衝剤(例えば、イオン交換樹脂材料)は、ステント10が植込まれている身体の管腔中の特定の範囲内でpHを維持するためにゾル・ゲル・コーティング16に含まれてよい。適当なpH緩衝剤の例には、医薬品グレードのアンバーライト(Amberite)IRP−64およびIRP−88などのイオン交換樹脂が含まれる。ステント10が管腔中で侵食を受ける際、周囲環境のpHは、マグネシウムなどの材料を含む化学反応によって増大する。ゾル・ゲル・コーティング16内の1つまたは複数のカプセル化したpH緩衝剤は、侵食が生じる際に放出される。このpH緩衝剤は、マグネシウム反応によるpHの増大を防ぎ、管腔の環境中のpHを特定の範囲内で維持する。
【0043】
別の例として、ゾル・ゲル・コーティング16内の1つまたは複数のカプセル化したキレート剤を使用して、身体の管腔内のステント10の平均侵食時間を制御できる。例えば、ステント10が侵食を受ける際に、カプセル化したキレート剤(例えば、ポリフィリン)が、ゾル・ゲル・コーティング16から放出される。このキレート剤は、侵食されたマグネシウムをキレート化し、マグネシウムの断片がステント10から脱離する速度を減少させる。ゾル・ゲル・コーティング16内のキレート剤の種類および量を制御することによって、身体の管腔内のステント10の侵食速度(したがって、ステント10の平均侵食時間)は、制御できる。適当なキレート剤の例には、ポリフィリン、EDTA、アンバーライト樹脂(Amberlite resin)、および改質したプルロニック(Pluronic)が含まれる。
【0044】
さらなる例として、薬物類、酵素、タンパク質、および抗体などの様々な種類のカプセル化した治療薬が、ゾル・ゲル・コーティング16に含まれてよい。ステント10の侵食が身体の管腔内で生じる際に、治療薬は、管腔を囲んでいる環境へ放出され、そこで治療薬は、特定の治療の機能を果たすことができる。
【0045】
ゾル・ゲル・コーティング16に含まれ得る治療薬は、医薬的活性化合物、脂質などのキャリア・ベクター(carrier vector)のあるなしに関わらない核酸、標的配列のあるなしに関わらない、凝縮剤(例えば、ヒストン)、ウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、およびa−ウイルス)、ポリマー、抗生物質、ヒアルロン酸、遺伝子治療薬(gene therapies)、タンパク質、細胞、幹細胞など、またはそれらの組合せを含む。治療薬の具体的な例には、例えば、医薬的活性化合物、タンパク質、細胞、幹細胞、オリゴヌクレオチド、リボザイム、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、DNA凝縮剤、遺伝子/ベクター系(例えば、核酸の取り込みおよび発現を可能にする任意の媒体)、核酸(例えば、組換え核酸;裸のDNA、cDNA、RNA;非感染性ベクター中またはウイルス・ベクター中のゲノムDNA、cDNAまたはRNAであって、結合ペプチド標的配列をさらに有し得るゲノムDNA、cDNAまたはRNA;アンチセンス核酸(RNAまたはDNA);および、遺伝子配列を含み、膜輸送配列(「MTS:membrane translocating sequences」)および単純ヘルペス・ウイルス−1(「VP22」)などの輸送タンパク質(ferry protein)をコードするDNAキメラを含む)、ならびに、所望の用途に応じていくつかの種類から選択される、ウイルス性の、リポソーム、およびカチオン性ポリマーおよびアニオン性ポリマー、および中性ポリマーが含まれる。ウイルス・ベクターまたはウイルス源由来のベクターの非限定的な例には、アデノウイルス・ベクター、単純ヘルペス・ベクター、パピローマ・ベクター、アデノ関連ベクター、レトロウイルス・ベクターなどが含まれる。生物活性溶質の非限定的な例には、抗血栓薬、例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、およびPPACK(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン(dextrophenylalanine proline arginine chloromethylketone));プロブコールおよびレチノイン酸などの抗酸化薬;血管形成剤および因子ならびに抗血管形成剤および因子;平滑筋細胞増殖抑制薬、例えば、ラパマイシン、アンギオペプチン、および平滑筋細胞の増殖を抑制できるモノクローナル抗体;抗炎症薬、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデゾニド、エストロゲン、スルファサラジン、アセチル・サリチル酸、およびメサラミン;カルシウム流入阻害剤、例えば、ベラパミル、ジルチアゼムおよびニフェジピン;抗腫瘍薬/抗増殖薬/抗有糸分裂薬、例えば、パクリタクセル、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロスポリン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、およびチミジン・キナーゼ阻害剤;抗菌剤、例えば、トリクロサン、デファロスポリン(dephalosporin)、アミノグリコシド、およびニトロフラントイン;麻酔薬、例えば、リドカイン、ブプルバカイン(buplvacaine)、およびロピバカイン;一酸化窒素(NO)ドナー、例えば、リシドミン(lisidomine)、モルシドミン、L−アルギン、NO−タンパク質付加体、NO−炭水化物付加体、ポリマーまたはオリゴマーNO付加体;抗凝集剤、例えば、D−Phe−Pro−Argクロロメチル・ケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤(platelet receptor antagonist)、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、エノキサパリン、ヒルジン、ワラフィン・ナトリウム(Warafin sodium)、ジクマロール、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板抑制薬、およびチック抗血小板因子(tick antiplatelet factor);血管細胞増殖促進剤、例えば、増殖因子、増殖因子受容体拮抗薬、転写活性化因子、および翻訳促進剤;血管細胞増殖阻害薬、例えば、増殖因子阻害薬、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害薬、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素とからなる2官能性分子、抗体と細胞毒素とからなる2官能性分子;コレステロール低下剤;血管拡張剤;内因性血管作用機構(endogenous vascoactive mechanism)に干渉する薬剤;細胞死を防ぐサバイバル遺伝子、例えば、抗アポトーシスBcl−2ファミリー因子およびAktキナーゼ;ならびにそれらの組合せが含まれる。
【0046】
いくつかの実施形態では、ステント10は、複数のゾル・ゲル・コーティング(例えば、2つのゾル・ゲル・コーティング、3つのゾル・ゲル・コーティング、4つのゾル・ゲル・コーティング、5つのゾル・ゲル・コーティング、6つのゾル・ゲル・コーティング、7つのゾル・ゲル・コーティング、8つのゾル・ゲル・コーティング、9つのゾル・ゲル・コーティング、10のゾル・ゲル・コーティング)を含むことができる。例えば、図2Aおよび図2Bは、3つのゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cを有するステント100の側面図および断面図をそれぞれ示す。図2Bに示す断面図は、図2Aに示す切断線2B−2Bに沿っている。ステント100は、上記開示した方法を用いて形成される。典型的には、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、連続して施される。概して、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、同様のもしくは異なるゾル・ゲル法を用いて用意されてよい。
【0047】
ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、ゾル・ゲル・コーティング16に関連する上述の特性のいずれかを有してよい。例えば、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、上述のように変化し得る厚さを有する。各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの厚さは、同じまたは異なっていてよい。加えて、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、前述の材料のいずれかを含んでよい。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cのいくつかは、同じ組成を有してよい。他の各実施形態では、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組成は、異なっていてよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、軸18に対して直交する半径方向に測定されるゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組み合わせた厚さは、1μm以上(例えば、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、8μm以上、10μm以上)である。特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組み合わせた厚さは、25μm以下(例えば、22μm以下、20μm以下、18μm以下、16μm以下、14μm以下、12μm以下)である。いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組み合わせた厚さは、1μm〜25μm(例えば、1μm〜20μm、1μm〜10μm、2μm〜20μm、3μm〜18μm、5μm〜18μm、5μm〜14μm)である。
【0049】
ステント100上の複数のゾル・ゲル・コーティングは、身体の管腔中のステント100の平均侵食時間について追加の制御を実現できる。加えて、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cの組成は、身体の管腔内で各コーティングがある特定の侵食速度を有するように選択されてよい。したがって、ステント100に施されるゾル・ゲル・コーティングの数、および/または施される各ゾル・ゲル・コーティングの厚さ、および/または施される各ゾル・ゲル・コーティングの組成を調整することによって、身体の管腔中のステント100の平均侵食時間は、調整できる。
【0050】
各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cは、カプセル化した治療薬、pH緩衝剤、キレート剤、および他の化学種を含んでよい。各コーティング中のカプセル化した化学種は、同じまたは異なっていてよい。いくつかの実施形態では、異なった化学種は、ステント100の侵食が身体の管腔内で生じる際に化学種の順次的な放出を実現するように、各ゾル・ゲル・コーティング16a,16b,16cに含まれてよい。例えば、第1の薬剤は、ゾル・ゲル・コーティング16cに含まれてよい。第1の薬剤は、ゾル・ゲル・コーティング16cが身体の管腔中で侵食される際に放出される。ゾル・ゲル・コーティング16b内に含まれる第2の薬剤は、第1の薬剤が放出された後に、ゾル・ゲル・コーティング16cの侵食に続いて、ゾル・ゲル・コーティング16bが侵食され始める際に放出される。ゾル・ゲル・コーティング16bの侵食が完了した後、ゾル・ゲル・コーティング16a内に含まれる第3の薬剤が、ゾル・ゲル・コーティング16aが侵食され始める際に放出される。このようにして、身体の管腔内における複数の化学種の順次的な放出が実現できる。
【0051】
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングは、2つ以上のステントの表面に施されてよい。例えば、ステントは、2つの異なる(例えば、内側および外側の)中間層を含んでよい。1例として、図3Aおよび図3Bは、中間層14a,14bと、これらの層14a,14bにそれぞれ形成されたゾル・ゲル・コーティング16a,16bとを含むステント200の側面図および断面図をそれぞれ示す。図3Bに示す断面図は、図3Aに示す切断線3B−3Bに沿っている。各ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの寸法および組成は、例えば前述のゾル・ゲル・コーティング16の寸法および組成と類似していてよい。各ゾル・ゲル・コーティング16a,16bは、軸18に対して直交する半径方向に測定される厚さを有し、この厚さは、所望される通りに変更できる。特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの厚さは、同じであり得る。他の各実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの厚さは、異なっていてよい。
【0052】
特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの組成は同じであってよく、一方、他の各実施形態では、これらコーティングの組成は異なっていてよい。ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの特性(例えば、寸法および/または組成)が異なる場合は、コーティングは、順次的なやり方でステント200に施されてよい。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16bが施されることになるステント200の部分は、パターン付きスクリーンを用いてマスキングされてよい。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16aが、ステント200のマスクされていない領域に施されてよい。その後、このパターン付きスクリーンは、除去されてよく、ゾル・ゲル・コーティング16aが施されたステント200の部分は、(ゾル・ゲル・コーティング16bが施されることになるステント200の部分をマスキングするために使用されたパターン付きスクリーンと同じまたはそれとは異なっていてよい)第2のパターン付きスクリーンを用いてマスキングされてよく、露出したステント200のコーティングされていない領域を残す。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16bが、ステント200に施されてよい。第2のパターン付きスクリーンの除去後、ステント200は、ゾル・ゲル・コーティング16aを有する部分と、ゾル・ゲル・コーティング16bを有する部分とを備える。
【0053】
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの特性(例えば、寸法および/または組成)が異なる場合は、コーティングは、高分解能スプレー技術および/または直接接触印刷法などの選択的方法によって施されてよい。例えば、まず、ゾル・ゲル・コーティング16aが、コーティング16bが施されることになるステント200の部分を避けながら、直接接触印刷を用いてステント200に施されてよい。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16bが、コーティング16aが施されたステント200の部分を避けながら、ステント200に施されてよい。この順次的なコーティング工程の結果として、ステント200は、ゾル・ゲル・コーティング16aを有する部分と、ゾル・ゲル・コーティング16bを有する部分とを備える。
【0054】
いくつかの実施形態では、複数のゾル・ゲル・コーティング材料(例えば、2つのゾル・ゲル・コーティング材料、3つのゾル・ゲル・コーティング材料、4つのゾル・ゲル・コーティング材料、5つのゾル・ゲル・コーティング材料、6つのゾル・ゲル・コーティング材料、7つのゾル・ゲル・コーティング材料、8つのゾル・ゲル・コーティング材料、9つのゾル・ゲル・コーティング材料、10のゾル・ゲル・コーティング材料)が、同じ中間層の異なる領域上に配設されてよい。例えば、図4Aおよび図4Bは、層14の異なる領域上に配設される2つのゾル・ゲル・コーティング16a,16bを含むステント300の側面図および断面図をそれぞれ示す。図4Bに示す断面図は、図4Aに示す切断線4B−4Bに沿っている。2つのゾル・ゲル・コーティングは、軸18に平行な方向に測定される長さLa,Lbをそれぞれ有する。各ゾル・ゲル・コーティング16a,16bは、ゾル・ゲル・コーティング16に関連する前述の特性のいずれかを有してよい。
【0055】
ゾル・ゲル・コーティング16a,16bは、2つの工程でステント300に施すことができる。第1の工程において、ゾル・ゲル・コーティング16bが施されることになる中間層14の一部が、ゾル・ゲル・コーティング16aの前駆体に対するこれら部分の露出を防ぐために、(例えば、パターン付きスクリーンを用いて)マスキングされてよい。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16aが、中間層14のマスクされていない部分に施されてよい。第2の工程において、第1の工程からのパターン付きスクリーンは、除去され、(第1の工程からのパターン付きスクリーンとは異なった、またはそれと同じ)パターン付きスクリーンが、ゾル・ゲル・コーティング16aが施されたステント300の一部を覆って配置される。次いで、ゾル・ゲル・コーティング16bが、中間層14のマスクされていない部分に施されてよい。最終的に、ゾル・ゲル・コーティング16aを覆っているパターン付きスクリーンは、除去されてよい。代替としてまたは加えて、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bは、直接接触印刷および/または高分解能スプレーなどの選択的に施す方法を用いてステント300の一部に施されてよい。
【0056】
長さLa,Lbは概して、所望される通りに選択できる。いくつかの実施形態では、La,Lbの一方または両方は、約1μm以上(例えば、約5μm以上、約10μm以上、約50μm以上、約100μm以上)であってよい。特定の実施形態では、La,Lbの一方または両方は、約15mm以下(例えば、約10mm以下、約5mm以下、約1mm以下)であってよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16a,16bの組成は、ゾル・ゲル・コーティング16aを有するステント300の部分が、ゾル・ゲル・コーティング16bを有する部分よりも身体の管腔内でより急速に侵食されるように選択される。ゾル・ゲル・コーティングの組成を選択することによって、ステント300の平均侵食時間と、侵食パターン(例えば、侵食中に生成されたステント300の断片の形状)とは共に、制御できる。例えば、ゾル・ゲル・コーティング16aを有するステント300の部分が、ゾル・ゲル・コーティング16bを有する部分よりもより急速に侵食される場合は、侵食中に、ステント300は、それぞれ長さLb以下であるより小さい管の小片に分解することになり、それぞれのより小さい管の小片は、さらに侵食されることになる。
【0058】
概して、様々な種類の複数のゾル・ゲル・コーティング材料の多様な組合せが使用され得る。
いくつかの実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングは、ステントの選択した部分にだけ施され得る。図5Aおよび図5Bは、ステント400の選択した部分(中間材料領域14)に施されるゾル・ゲル・コーティング16を含むステント400の側面図および断面図をそれぞれ示す。図5Bに示す断面図は、図5Aに示す切断線5B−5Bに沿っている。ゾル・ゲル・コーティング16の寸法および組成は、例えば、他の各実施形態に関連する前述のそれらパラメータの値と類似していてよい。中間層14は、ステント400の選択した部分に形成される。
【0059】
ステント400は、4つの工程で形成できる。第1の工程において、マスキング剤が、ゾル・ゲル・コーティング16が施されないステント本体12の選択した部分に施される。第2の工程において、ステント本体12のマスクされていない部分を陽極酸化して中間層14を生成する。第3の工程において、ゾル・ゲル・コーティング16は、(例えば、陽極酸化工程中に形成される中間層14上の)ステント400の露出した部分に施される。第4の工程において、マスキング剤を除去して、ステント本体12の改質されていない部分を露出する。
【0060】
特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングは、複雑なパターンをステントの表面上に形成するように、ステントに施され得る。上述のように、ゾル・ゲル・コーティングにパターンを付けることによって、身体の管腔中で侵食中に生成されるステントの断片の形状についての制御が、実現できる。図6および図7は、パターン付きのゾル・ゲル・コーティング16を有するステントの2つの実施形態を示す。図6では、ゾル・ゲル・コーティング16は、1連のドット状形状をステント500の表面上に形成する。図7では、ゾル・ゲル・コーティング16は、ゾル・ゲル・コーティング16がハッチ・パターンをステント600の表面上に形成するように施される。図6および図7に示す各実施形態では、ゾル・ゲル・コーティング16のパターンによって形の異なるステントの断片が、身体の管腔中のステントの侵食中に生成される。
【0061】
多様な種類のステントが、ゾル・ゲル・コーティングで形成できる。例えば、冠状動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管ステント、消化管ステント、泌尿器ステント、および神経学的ステント(neurology stent)などの様々な身体の管腔で用いるステントが、ゾル・ゲル・コーティングをそれぞれ含むことができる。さらに、本明細書で説明するステントのいずれかは、例えば、自己拡張型ステントであってよい。
【0062】
ステントがゾル・ゲル・コーティングを有する管状のステント本体を含んでいるいくつかの実施形態を説明してきたが、ゾル・ゲル・コーティングを有する他のステントの形状および配置が、形成されてもよい。例えば、図8は、ステントの外面からステントの内面まで延在する複数の穴を含む管状のステント本体を有するステント700の実施形態を示す。ゾル・ゲル・コーティングは、ステント700の内面および外面の一方または両方に配設されてよい。図9および図10は、コイル状ステント750,800の2つの実施形態を示す。ステント750,800は、その上に1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティングを配設し、(例えば、巻回することによって)コイル状配置に処理したステント材料から形成されてよい。図11は、網状配置で結ばれている複数の薄い部分を含むステント850の実施形態を示す。ステント850は、例えば、前述のような1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティングを有する管状のステントを形成し、次いでステント850の網状配置を形成するために(例えば、レーザ切断によって)管状のステントの一部を除去することによって製造できる。図12は、織り合わされたワイヤから形成されたステント本体を含むステント900の実施形態を示す。ステント900は、ステント材料をワイヤの形状に形成し、1つまたは複数のゾル・ゲル・コーティングを1つまたは複数のワイヤ表面に形成することによって製造できる。次いで、このワイヤは、ステント900を製造するために織り込まれる。特定の実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングしたワイヤを織り合わせて、金網型構造を有するステント本体を形成する。他の各実施形態では、ゾル・ゲル・コーティングしたワイヤを他のゾル・ゲル・コーティングしたワイヤのセグメントの上下に織り込んで、メッシュ状構造を有するステント本体を形成することができる。各ステント700,750,800,850,900は、前述の組成のいずれかを有するゾル・ゲル・コーティングを含んでよい。
【0063】
本明細書で説明するステントは、例えば、様々な手法を用いて身体の管腔内へ搬送できる。1例として、図13〜図15は、自己拡張型ステント3200を身体の管腔2400(例えば、ヒトの動脈)内へ搬送することを目的とするシステム1000を示す。システム1000は、カテーテル1200と、カテーテル1200を包囲するシース1400とを含む。ステント3200は、カテーテル1200とシース1400との間に配置される。システム1000は、身体の管腔2400内へ挿入するように寸法決めされた先端部1600と、被験者の身体の外にある基端部1800とを含む。基端部1800は、少なくとも1つのポート5000と、医師による操作用の管腔とを有する。ブラント・エンド(blunted end)2200を有するガイド・ワイヤ2000は、例えば、透視検査法を位置決め補助器具として用いて、例えば、大腿動脈を切開し、ガイド・ワイヤ2000を管腔2400(例えば、粥腫で狭窄した動脈)の狭窄部位2600へ向けることによって身体の管腔2400に挿入される。ガイド・ワイヤ2000が身体の管腔2400の狭窄部位2600に到達した後、カテーテル1200、ステント3200およびシース1400は、ガイド・ワイヤ2000の基端部に沿って配置される。カテーテル1200、ステント3200およびシース1400は、ガイド・ワイヤ2000に沿って先端方向へ動かされ、管腔2400内に配置され、それによりステント3200は、管腔2400の狭窄部位2600に隣接する。シース1400が基端方向へ動かされると、ステント3200は、拡張し、狭窄部位2600に係合することが可能になる。シース1400、カテーテル1200およびガイド・ワイヤ2000は、ステント3200を狭窄部位2600に係合させた状態で、身体の管腔2400から除去される。
【0064】
いくつかの実施形態を開示したが、他の実施形態もあり得る。
1例として、ステント本体がマグネシウム材料で作製されている各実施形態を説明したが、特定の実施形態では、ステント本体は、例えば、鉄、ビスマス、白金や金やパラジウムなどの貴金属、ならびにタンタルやタングステンやモリブデンやレニウムなどの耐熱金属などの他の材料で作製されてよい。いくつかの実施形態では、ステント本体は、2つ以上の金属を含有する合金で形成できる。合金の例には、(例えば、鉄および/またはビスマスを含有する)マグネシウム合金、鉄合金(例えば、低炭素鋼(AISI 1018〜1025)、中炭素鋼(AISI 1030〜1055)、高炭素鋼(1060〜1095)、ステンレス鋼(例えば、316Lステンレス鋼)、貴金属および/または耐熱金属と混ぜて合金にされたステンレス鋼)、ニチノール(ニッケル・チタン合金)、ならびに他のニッケル基合金(例えば、Niと、Pt、AuおよびTaの1つまたは複数からなる合金)、エルジロイ(Elgiloy)、L605合金、Ti−6A1−4V、Co−28Cr−6Mo、および2成分のビスマス・鉄合金が含まれる。いくつかの実施形態では、ステント本体は、1つまたは複数の金属を含有する形状記憶材料から形成できる。そのような材料の例は、鉄・マンガン(Fe−Mn)である。金属含有形状記憶材料は、例えば、シェッツキー、エル.マクドナルド(Schetsky,L.McDonald)、「Shape Memory Alloys」、Encyclopedia of Chemical Technology(3rd Ed.)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1982、vol.20、pp.726−736に開示されている。
【0065】
別の例として、ステント本体上に配設される中間層がマグネシウム含有酸化物で作製されている各実施形態を説明したが、いくつかの実施形態では、ステント本体上に配設される中間層は、異なった材料で作製され得る。しかしながら、ステント本体上に配設される中間層は、ステント本体を形成する材料の酸化物の1つまたは複数で形成される。ステント本体上に配設される中間層を形成できる材料の例には、鉄および/またはビスマスの酸化物、白金、金およびパラジウムなどの貴金属の酸化物、ならびにタンタル、タングステン、モリブデンおよびレニウムなどの耐熱金属の酸化物が含まれる。特定の実施形態では、ステント本体が2つ以上の金属を含有する合金で形成される場合は、中間層は、合金の構成物質の1つまたは複数の酸化物を含んでよい。例えば、ステント本体が(例えば、鉄および/またはビスマスを含有する)マグネシウム合金から形成される場合は、中間層は、マグネシウムおよび/または鉄および/またはビスマスの酸化物から形成されてよい。別の例として、ステント本体が、鉄の合金(例えば、低炭素鋼(AISI 1018〜1025)、中炭素鋼(AISI 1030〜1055)、高炭素鋼(1060〜1095)、ステンレス鋼(例えば、316Lステンレス鋼)、貴金属および/または耐熱金属と混ぜて合金にされたステンレス鋼)で形成される場合は、中間層は、鉄の酸化物および/または他の鋼成分の酸化物から形成されてよい。ステント本体が、ニチノール(ニッケル・チタン合金)または他のニッケル基合金(例えば、Niと、Pt、AuおよびTaの1つまたは複数からなる合金)などのニッケル基合金から形成される場合は、中間層は、Niの酸化物、ならびにTi、Pt、AuおよびTaの1つまたは複数の酸化物から形成されてよい。ステント本体が、鉄・マンガンなどの形状記憶材料で形成される場合は、中間層は、鉄の酸化物および/またはマンガンの酸化物から形成されてよい。中間層は、形状記憶材料の成分のいずれかの酸化物を含んでよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、ステント本体は、ポリマー材料から形成されてよく、ゾル・ゲル・コーティングは、中間層を介在することなくステント本体上に配設されてよい。ポリマー材料(例えば、生体適合性ポリマー材料)の例には、ポリ乳酸、ポリビニル酸、ポリグリコール酸、ポリグリコリド・ラクチド(polyglycolide lactide)、ポリリン酸塩、ポリホスホネート(polyphosphonate)、ポリフォスフォエステル(polyphosphoester)、ポリカプロミド(polycapromide)、およびチロシンから誘導されたポリカーボネートが含まれる。ポリマー材料のさらなる例は、米国特許第6,719,934号に開示されており、同特許文献に開示された内容は本願においても開示されたものとする。特定の実施形態では、ステント本体は、形状記憶ポリマー材料であるポリマー材料で形成され得る。形状記憶ポリマー材料の例には、(三菱(Mitsubishi)から市販の)形状記憶ポリウレタン、ポリノルボルネン(例えば、Norsorex(商標)(三菱(Mitsubishi))、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(例えば、結晶性ポリエチレン)、ポリイソプロペン(polyisopropene)(例えば、トランス・ポリイソプレン)、スチレン・ブタジエン・コポリマー、およびゴム類が含まれる。形状記憶ポリマー材料は、例えば、ネモサイエンス・ゲーエムベーハー社(MnemoScience GmbH)[ドイツ、アーヘンD−52074(D−52074 Aachen)、パウエル通り19(Pauwelsstrasse 19)所在]から市販されている。
【0067】
追加の例として、(例えば、図3Aおよび図3Bに示すように)異なったゾル・ゲル・コーティングが異なった中間層の上に配設されている各実施形態を説明したが、特定の実施形態では、同じゾル・ゲル・コーティング材料は、異なった中間層の上に配設することができる。
【0068】
他の各実施形態は、特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムからなる植込み型医療用内部人工器官本体と、
該植込み型医療用内部人工器官本体によって支持されるゾル・ゲル・コーティングとからなる植込み型医療用内部人工器官。
【請求項2】
前記ゾル・ゲル・コーティングがマグネシウムからなる、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項3】
前記ゾル・ゲル・コーティングが複数の層からなる、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項4】
前記ゾル・ゲル・コーティングが少なくとも1つの治療薬からなる、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項5】
前記治療薬がカプセル化されている、請求項4に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項6】
前記ゾル・ゲル・コーティングが、タンパク質、キレート剤、pH緩衝剤、および抗体からなる群から選択される少なくとも1つの化学種からなる、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項7】
前記少なくとも1つの化学種がカプセル化されている、請求項6に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項8】
前記ゾル・ゲル・コーティングと前記植込み型医療用内部人工器官本体との間に層をさらに含む、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項9】
前記層が酸化物からなる、請求項8に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項10】
前記酸化物がマグネシウムからなる、請求項9に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項11】
前記酸化物が多孔質である、請求項9に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項12】
前記層が、前記植込み型医療用内部人工器官本体上に配設される、請求項8に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項13】
前記層が、ステント本体のいくつかの部分のみによって支持される、請求項8に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項14】
前記ゾル・ゲル・コーティングが、前記層の上に配設される、請求項8に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項15】
前記植込み型医療用内部人工器官が管形状である、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項16】
前記植込み型医療用内部人工器官がステントである、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項17】
前記植込み型医療用内部人工器官がバルーン拡張型ステントである、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項18】
前記植込み型医療用内部人工器官が自己拡張型ステントである、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項19】
植込み型医療用内部人工器官本体と、
該植込み型医療用内部人工器官本体によって支持される、マグネシウムからなるゾル・ゲル・コーティングとからなる植込み型医療用内部人工器官。
【請求項20】
前記植込み型医療用内部人工器官本体と前記ゾル・ゲル・コーティングとの間で支持される層をさらに含む、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項21】
前記層が酸化物からなる、請求項20に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項22】
前記酸化物がマグネシウムからなる、請求項21に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項23】
前記植込み型医療用内部人工器官本体がマグネシウムからなる、請求項22に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項24】
前記ゾル・ゲル・コーティングが、前記層の上に配設される、請求項20に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項25】
前記植込み型医療用内部人工器官が管形状である、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項26】
前記植込み型医療用内部人工器官がステントである、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項27】
前記植込み型医療用内部人工器官がバルーン拡張型ステントである、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項28】
前記植込み型医療用内部人工器官が自己拡張型ステントである、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項29】
植込み型医療用内部人工器官本体の表面の一部を酸化させる工程と、
該植込み型医療用内部人工器官を形成するように、ゾル・ゲル・コーティングを該植込み型医療用内部人工器官本体の表面の酸化された部分の上に配設する工程とからなる植込み型医療用内部人工器官を作製する方法。
【請求項30】
前記植込み型医療用内部人工器官本体の表面を酸化させる工程の前に、酸化されてはならない前記植込み型医療用内部人工器官本体の部分をマスキングする工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項1】
マグネシウムからなる植込み型医療用内部人工器官本体と、
該植込み型医療用内部人工器官本体によって支持されるゾル・ゲル・コーティングとからなる植込み型医療用内部人工器官。
【請求項2】
前記ゾル・ゲル・コーティングがマグネシウムからなる、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項3】
前記ゾル・ゲル・コーティングが複数の層からなる、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項4】
前記ゾル・ゲル・コーティングが少なくとも1つの治療薬からなる、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項5】
前記治療薬がカプセル化されている、請求項4に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項6】
前記ゾル・ゲル・コーティングが、タンパク質、キレート剤、pH緩衝剤、および抗体からなる群から選択される少なくとも1つの化学種からなる、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項7】
前記少なくとも1つの化学種がカプセル化されている、請求項6に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項8】
前記ゾル・ゲル・コーティングと前記植込み型医療用内部人工器官本体との間に層をさらに含む、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項9】
前記層が酸化物からなる、請求項8に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項10】
前記酸化物がマグネシウムからなる、請求項9に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項11】
前記酸化物が多孔質である、請求項9に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項12】
前記層が、前記植込み型医療用内部人工器官本体上に配設される、請求項8に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項13】
前記層が、ステント本体のいくつかの部分のみによって支持される、請求項8に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項14】
前記ゾル・ゲル・コーティングが、前記層の上に配設される、請求項8に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項15】
前記植込み型医療用内部人工器官が管形状である、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項16】
前記植込み型医療用内部人工器官がステントである、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項17】
前記植込み型医療用内部人工器官がバルーン拡張型ステントである、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項18】
前記植込み型医療用内部人工器官が自己拡張型ステントである、請求項1に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項19】
植込み型医療用内部人工器官本体と、
該植込み型医療用内部人工器官本体によって支持される、マグネシウムからなるゾル・ゲル・コーティングとからなる植込み型医療用内部人工器官。
【請求項20】
前記植込み型医療用内部人工器官本体と前記ゾル・ゲル・コーティングとの間で支持される層をさらに含む、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項21】
前記層が酸化物からなる、請求項20に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項22】
前記酸化物がマグネシウムからなる、請求項21に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項23】
前記植込み型医療用内部人工器官本体がマグネシウムからなる、請求項22に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項24】
前記ゾル・ゲル・コーティングが、前記層の上に配設される、請求項20に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項25】
前記植込み型医療用内部人工器官が管形状である、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項26】
前記植込み型医療用内部人工器官がステントである、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項27】
前記植込み型医療用内部人工器官がバルーン拡張型ステントである、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項28】
前記植込み型医療用内部人工器官が自己拡張型ステントである、請求項19に記載の植込み型医療用内部人工器官。
【請求項29】
植込み型医療用内部人工器官本体の表面の一部を酸化させる工程と、
該植込み型医療用内部人工器官を形成するように、ゾル・ゲル・コーティングを該植込み型医療用内部人工器官本体の表面の酸化された部分の上に配設する工程とからなる植込み型医療用内部人工器官を作製する方法。
【請求項30】
前記植込み型医療用内部人工器官本体の表面を酸化させる工程の前に、酸化されてはならない前記植込み型医療用内部人工器官本体の部分をマスキングする工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2010−516403(P2010−516403A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547376(P2009−547376)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/051607
【国際公開番号】WO2008/091835
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/051607
【国際公開番号】WO2008/091835
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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