説明

検査用接触子及び検査用治具

【課題】基板の微細化及び複雑化に対応でき、検査時には強い押圧力を且つ非検査時には弱い押圧力を提供できる微細な接触子及び検査用治具の提供。
【解決手段】複数の検査点を有する被検査物と、電気的特性を検査する検査装置とを電気的に接続する検査用治具であって、検査装置と接続される電極部を複数備える電極体と、電極部と検査点を接続する検査用接触子と、検査用接触子は、両端に開口部を有し、先端開口部が電極部の表面と当接する導電性の筒状部材と、筒状部材の後端開口部から突出されるとともに該筒状部材内部に配置され、先端が検査点に接触する導電性の棒状部材と、筒状部材と棒状部材を電気的に接続する固定部とを備え、筒状部材は、筒状部材の壁部に長軸方向に伸縮する螺旋状の切欠が形成される第一切欠部と、第二切欠部を有し、第一切欠部又は第二切欠部のいずれかが、棒状部材が検査点に当接して検査が実施される際に、収縮の限界に達している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の検査対象部上に予め設定される検査点とこの検査を実施する検査装置とを電気的に接続する検査用治具及び検査用治具に使用される検査用接触子に関する。
【背景技術】
【0002】
検査用接触子が取り付けられる検査用治具は、この検査用接触子を経由して、被検査物が有する検査対象部に、検査装置から電流或いは電気信号を所定検査位置に供給するとともに、検査対象部から電気信号を検出することによって、検査対象部の電気的特性の検出、動作試験の実施等をする。
【0003】
被検査物としては、例えば、プリント配線基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板や、半導体ウェハや半導体チップやCSP(Chip size package)などの半導体装置が該当する。
【0004】
本明細書では、これらの上記の被検査物を総称して「被検査物」とし、被検査物に形成される検査対象部を「検査部」と称する。尚、検査部には、この検査部の電気的特性を実際に検査するための検査点が設定され、この検査点に接触子を圧接させることにより、検査部と導通状態となる。
【0005】
このような検査用治具は、接触子の一端が配線(検査部)上の検査点に圧接され、その他端が基板検査装置と電気的に接続される電極部に圧接される。そして、この検査用治具を介して、基板検査装置から配線の電気的特性を測定するための電流や電圧を供給するとともに、配線から検出される電気的信号を基板検査装置へ送信することになる。
【0006】
このような検査用治具は、例えば、特許文献1に開示される治具を例示することができる。特許文献1の検査用治具では、導電性可動体(接触子)にコイルばねが取り付けられている。このような検査用治具では、接触子がホルダに装着される際に、コイルばねが収縮することによって、導電部に押し付けられることになり、導電部と接触子との良好な接触状態を提供している。
【0007】
また、接触子は、検査点の表面に形成される酸化膜等の絶縁層を打ち破って、検査点と導通接触するために、接触子が検査点と接触してからコイルばねが所定量(所定長さ)収縮して、所定の押圧力を得ることができるように調整されている。
【0008】
特に、近年、基板は検査点が数多く設定されるため、これら検査点に対応すべく接触子も数多くホルダに装着される。このため、上記の説明の如く、接触子数が増加すると、収縮するコイルばねも増加することになり、ホルダには大きな力が負荷されることになる。大きな力が負荷されたホルダは、このコイルばねの力により全体が撓んでしまう問題点を有していた。
一方、ホルダにかかる力を低減させようとすると、コイルばねの弾性力を低下させることが検討されるが、所定長さ収縮した場合にコイルばねが所望の押圧力を提供することができなくなり、接触子と検査点が十分な押圧力で導通接触することができない問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-215160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基板の微細化及び複雑化に対応することができるとともに、検査時には強い押圧力を提供し且つ非検査時には弱い押圧力を提供することのできる微細な接触子及びこの接触子を用いた検査用治具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、被検査対象となる複数の検査点を有する被検査物と、該検査点間の電気的特性を検査する検査装置とを電気的に接続する検査用治具であって、前記検査装置と電気的に接続される電極部を複数備える電極体と、前記電極部と前記検査点を電気的に接続する検査用接触子と、前記検査用接触子を保持する保持体を備え、前記検査用接触子は、両端に開口部を有し、先端開口部が前記電極部の表面と当接する導電性の筒状部材と、前記筒状部材の後端開口部から突出されるとともに該筒状部材内部に配置され、先端が前記検査点に接触する導電性の棒状部材と、前記筒状部材と前記棒状部材を電気的に接続する固定部とを備え、前記保持体は、前記先端開口部を前記電極体へ案内する第一案内孔を有する第一板状部材と、前記棒状部材の先端を前記検査点へ案内する第二案内孔を有する第二板状部材を備え、前記筒状部材は、前記電極部の表面と接触する先端開口部を有するとともに前記棒状部材の後端部が内部に収容される上筒部と、前記上筒部と同一径に形成されるとともに該上筒部と連通連結され、前記筒状部材の壁部に長軸方向に伸縮する螺旋状の切欠が形成される第一切欠部と、前記第一切欠部と同一径に形成されるとともに該第一切欠部と連通連結される中筒部と、前記中筒部と同一径に形成されるとともに該中筒部と連通連結され、前記筒状部材の壁部に長軸方向に伸縮する螺旋状の切欠が形成される第二切欠部と、前記第二切欠部と同一径に形成されるとともに該第二切欠部と連通連結され、前記固定部を備える下筒部を有し、前記第一切欠部又は前記第二切欠部のいずれかが、前記棒状部材が前記検査点に当接して検査が実施される際に、収縮の限界に達していることを特徴とする検査用治具を提供する。
請求項2記載の発明は、前記第一切欠部と前記第二切欠部は、螺旋のピッチが相違することを特徴とする請求項1記載の検査用治具を提供する。
請求項3記載の発明は、前記第一切欠部の切欠き幅は、前記第二切欠部の切欠き幅と相違していることを特徴とする請求項1又は2記載の検査用治具を提供する。
請求項4記載の発明は、被検査対象となる被検査物の複数の検査点と、該検査点間の電気的特性を検査する検査装置と電気的に接続される検査用治具の電極体に複数備えられた電極部とを電気的に接続する検査用接触子であって、前記検査用接触子は、先端開口部が前記電極部と当接する電極端となる外側筒体と、前記外側筒体の後端開口部から突出されるとともに該外側筒体内部に電気的に接続されて同軸に配置され、先端開口部が前記検査点に圧接される検査端となる導電性の内側筒体とを備え、前記外側筒体は、前記電極端となる先端開口部を有する外側上筒部と、前記外側上筒部と同一径で、先端開口部が該外側上筒部の後端開口部と連通連結されるとともに、周縁に長軸方向に形成される螺旋状の切欠を備える筒状の第一切欠部と、前記第一切欠部と同一径で、該第一切欠部の後端開口部と連通連結される外側下筒部を有し、前記内側筒体は、前記検査端となる先端開口部を有する内側下筒部と、前記内側下筒部と同一径で、先端開口部が該内側下筒部の後端開口部と連通連結されるとともに、周縁に長軸方向に形成される螺旋状の切欠を備える筒状の第二切欠部と、前記第二切欠部と同一径で、該第二切欠部の後端開口部と連通連結されるとともに、前記外側筒体の内部に配置される内側上筒部とを有し、前記外側筒体と前記内側筒体は、前記外側下筒部と前記内側上筒部を電気的に接続するとともに固定する固定部を有し、前記第一切欠部と前記第二切欠部は、螺旋のピッチが相違することを特徴とする検査用接触子を提供する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び4記載の発明によれば、螺旋状の切欠部を2ヶ所備えた導電性の筒状部材の内部に導電性の棒状部材が同軸に配置されかつ電気的に接続されて固定されているので、これらの筒状部材と棒状部材は一つの検査用接触子として機能することになる。筒状部材に設けられた切欠部は、筒状部材に一体的に形成されており、長軸方向に収縮する弾性部として機能する。すなわち、この検査用接触子は、筒状部材と棒状部材と固定部のみから形成されていることになる。このため、コイルスプリングを用いる検査用接触子よりも部品点数を低減し、検査用接触子を簡素に形成することができる。
さらに、この検査用接触子は、検査時には強い押圧力を提供し且つ非検査時には弱い押圧力を提供することのできる微細な接触子及びこの接触子を用いた検査用治具を提供する。
請求項2記載の発明によれば、第一切欠部と第二切欠部の螺旋ピッチが相違することで、検査時と非検査時の押圧力の差を簡便に生じさせることができる。
請求項3記載の発明によれば、第一切欠部と第二切欠部の切欠き幅が相違することで、検査時と非検査時の押圧力の差を簡便に生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる検査用治具を示す概略構成図である。
【図2】本発明にかかる検査用接触子の概略断面図である。
【図3】本発明にかかる検査用接触子の筒状部材の概略断面図である。
【図4】本発明にかかる検査用接触子の棒状部材の概略断面図である。
【図5】本発明にかかる検査用接触子が装着される状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明にかかる検査用治具の検査時の動作状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明に係る検査用治具の第一実施形態を示す概略構成図である。本発明に係る検査用治具1は、複数の接触子2、これら接触子2を多針状に保持する保持体3、この保持体3を支持するとともに各接触子2と接触して導通状態となる電極部41を有する電極体4、電極部41から電気的に接続されて延設される導線部5を備える。
尚、図1では、複数の接触子2として三本の接触子が示されるとともに夫々に対応する三本の導線部5が示されているが、これらは三本に限定されるものではなく、検査対象に設定される検査点に応じて決められる。
【0015】
本発明は、導電性の筒状部材に形成された切欠部が弾性部として機能することを利用し、少なくとも二箇所に設けた切欠部の弾性特性を変化させることによって、検査に必要な接触圧と電極部41と常時接触するための圧接力を供給することのできることを特徴としている。
本発明のように検査用接触子を構成することで、基板の微細化及び複雑化に対応することができるとともに、部品点数を低減して簡素化することができ、さらに、検査時においては検査点に大きな接触圧を提供するとともに、非検査時においては保持体に小さな接触圧を提供することができる。
【0016】
本発明の検査用治具に用いられる検査用接触子2について説明する。図2は、本発明に係る検査用接触子2の概略断面図である。
検査用接触子2は、一端が検査点に導通接触するとともに、他端が後述する電極部41に導通接触することにより、検査点と電極部を電気的に接続する。
【0017】
この検査用接触子2は、筒状部材21と棒状部材22を有してなる(図2参照)。
筒状部材21は、両端に開口部21a、21bを有し、一方の先端開口部21aが電極部41の表面と当接する。この筒状部材21は、導電性の素材で形成され、例えば、銅、ニッケル又はこれらの合金により形成することができる。
【0018】
図3は、本発明に係る筒状部材の概略断面図である。
この筒状部材21は、図3で示される如く、上筒部21c、第一切欠部21d、中筒部21e、第二切欠部21fと下筒部21gを有している。
上筒部21cは、電極部21の表面と接触する先端開口部21aを有するとともに、後述する棒状部材22の後端部22aを内部に収容する。この上筒部21cは、筒状部材21の一部であり、筒状部材21と外径と内径ともに等しい形状を有している。
【0019】
第一切欠部21dは、上筒部21cと同一径に形成されるとともに上筒部21cと連通連結され、長軸方向に伸縮する螺旋状の切欠が筒状部材21の壁部に形成されてなる。この第一切欠部21dは、筒状部材21の壁面に形成されるため、筒状部材21と外径と内径ともに等しい形状となる。
【0020】
中筒部21eは、第一切欠部21dと同一径に形成されるとともに、第一切欠部21dと連通連結される。この中筒部21eは、筒状部材21の一部であり、筒状部材21と外径と内径ともに等しい形状を有している。
【0021】
第二切欠部21fは、中筒部21eと同一径に形成されるとともに中筒部21eと連通連結され、長軸方向に伸縮する螺旋状の切欠が筒状部材21の壁部に形成されてなる。この第二切欠部21fは、筒状部材21の壁面に形成されるため、筒状部材21と外径と内径ともに等しい形状となる。
【0022】
下筒部21gは、第二切欠部21fと同一径に形成されるとともに第二切欠部21fと連通連結される。下筒部21gは、後述する棒状部材22と筒状部材21を固定し且つ電気的に接続するための固定部23を備えている。この下筒部21gは、筒状部材21の一部であり、筒状部材21と外径と内径ともに等しい形状を有している。なお、この下筒部21gは、後端開口部21bを有している。
【0023】
筒状部材21は、上記の説明の如く、上筒部21c、上筒部21c、第一切欠部21d、中筒部21e、第二切欠部21fと下筒部21gを有して形成されており、各部が筒状部材21を構成することになる。
【0024】
第一切欠部21dは、棒状部材22が検査点に当接して検査が実施される際(検査時)に、収縮の限界に達している。これは、第一切欠部21dに形成された切欠による空間が、第一切欠部21dの収縮により、この切欠(の空間)が無くなっている状態となり、第一切欠部21dが収縮の限界に達していることになる。収縮の限界に達している第一切欠部21dは、これ以上収縮が生じないため、上筒部21c、中筒部21eや下筒部21gと同様に機能することとなる。
【0025】
上記の説明の如く、検査時において、第一切欠部21dは収縮の限界に達しているが、第二切欠部21fは、収縮の限界に達していない。これは、棒状部材22が検査点に当接した場合に、第二切欠部21fに収縮量の余裕を持たせることにより、検査点(バンプ)の高さばらつきを第二切欠部21fの収縮により吸収することができるからである。
【0026】
棒状部材22が検査点に当接してない場合(非検査時)には、検査用接触子2は後述する保持体3の保持された状態であるため、第一切欠部21dと第二切欠部21fが収縮している状態となる。このとき、第一切欠部21dは収縮の限界近くまで収縮している状態で、第二切欠部21fはわずかに収縮している状態となる。
つまり、非検査時には、第一切欠部21dが大きく収縮し、第二切欠部21fが僅かに収縮している。検査時には、第一切欠部21dが収縮せず(収縮限界に到達のため)、第二切欠部21fのみが収縮することになる。
【0027】
第一切欠部21dと第二切欠部21fは、上記の如く、検査時と非検査時において機能が相違するが、この機能差を有するために、螺旋のピッチが相違するように形成される。筒状部材の一実施形態の概略断面図を示す図3では、第一切欠部21dの螺旋ピッチd1と第二切欠部21fの螺旋ピッチd2が相違して形成されている。
この図3では、第一切欠部21dの螺旋ピッチd1が短く、第二切欠部21fの螺旋ピッチが長くなるように相対的に形成されている。なお、図3では、第一切欠部21dを形成する壁面の幅と、第二切欠部21fを形成する壁面の幅は同じ長さで形成されている。なお、これらの螺旋の幅は特に限定されるものではなく、第一切欠部21dと第二切欠部21fの機能を奏することができれば任意に調整可能である。
【0028】
第一切欠部21dと第二切欠部21fは、上記の説明の如く、検査時と非検査時での収縮できる収縮量(収縮長さ)の違いにより、その機能が相違するように形成されている。つまり、非検査時での収縮量は、第一切欠部21dと第二切欠部21fが影響を受けるが、検査時での収縮量は、第一切欠部21dが収縮限界であるため、第二切欠部21fのみが影響を受けることになる。このため、第二切欠部21fの切欠き幅が第一切欠部21dの切欠き幅よりも広く形成される。このように形成されることにより、非検査時では第一切欠部21dと第二切欠部21fが収縮し、検査時では第二切欠部21fのみが更に収縮できることになる。
【0029】
上記の説明では、棒状部材22が検査点に当接して検査が実施される際に、第一切欠部21dの収縮の限界に達する場合を説明したが、第一切欠部21dの代わりに第二切欠部21fが収縮の限界に達していて構わない。本発明では、第一切欠部21d又は第二切欠部21fのいずれかが収縮の限界に達していれば良い。
【0030】
本発明の筒状部材21は、上記の如く、上筒部21c、第一切欠部21d、中筒部21e、第二切欠部21fと下筒部21gを有しているが、このような筒状部材21を製造するために下記の製造方法を採用することができる。
【0031】
(1)まず、筒状部材の中空部を形成する芯線(図示せず)を用意する。なお、この芯線には筒状部材の内径を規定する所望の太さの導電性を有する芯線(例えば、直径30μm,ステンレス鋼(SUS))を用いる。
【0032】
(2)次いで、芯線(ステンレス線)にフォトレジスト被膜を塗布し、この芯線の周面を覆う。該フォトレジストの所望の部分を露光・現像・加熱処理して螺旋状のマスクを形成する。このとき、例えば、芯線を中心軸に沿って回転させ、レーザにより露光して螺旋状のマスクを形成されるようにすることができる。本発明の筒状部材を形成するためには、第一及び第二切欠部を形成するための二箇所のマスクが所定の位置に形成されることになる。
【0033】
(3)次いで、この芯線にニッケルめっきを実施する。このとき、芯線が導電性であるため、フォトレジストマスクが形成されていない箇所は、ニッケルめっきされる。
【0034】
(4)次いで、フォトレジストマスクを除去して、芯線を引き抜き、所望の長さの筒状部材を形成する。芯線を完全に引き抜いた後に筒体を切断してもよいことは、言うまでもない。
【0035】
図4は、本発明にかかる棒状部材を示す概略断面図である。
棒状部材22は、先端22が検査点に接触する導電性の部材である。棒状部材22は、細長い形状を有しており、例えば、円柱形状や円筒形状に形成される。この棒状部材22は、筒状部材21の後端開口部21bから突出されるとともに、筒状部材21内部に配置される。
棒状部材22の先端部22aは、筒状部材21の内部に配置されるが、筒状部材21の上筒部21c内に配置されることが好ましい。棒状部材22の先端部22aが上筒部21c内部に配置されることになるので、第一切欠部21dや第二切欠部21fの部分を貫通していることになり、これら切欠部が伸縮するガイドとして機能することになる。棒状部材22の先端部22aは、後述する電極体4と当接しないように調整される。
【0036】
棒状部材22の後端部22bは、検査点に直接的に当接する。この後端部22bの形状は特に限定されるものではなく、王冠形状、先鋭形状や三角錐形状などの形状を選択することができる。棒状部材22の後端部22bは、筒状部材21の後端開口部21bから突出されるが、この後端部22bの突出長さは、少なくとも後述する保持体3の第二板状部材32の厚みよりも長く設けられる。
棒状部材22は、導電性の素材にて形成されるが、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)やこれらの合金を採用することができる。
【0037】
固定部23は、筒状部材21と棒状部材22を電気的に接続する。固定部23は、筒状部材21の下筒部21gに形成され、棒状部材22の後端部22bへ設けられる。
この固定部23は、例えば、かしめ、レーザ溶接、アーク溶接や接着剤などの方法を例示することができ、筒状部材21と棒状部材22を電気的に接続することができ、且つ、筒状部材21と棒状部材22の形状を大きく変形させることのない固定方法であれば採用することができる。
【0038】
検査用治具1は、検査用接触子2を保持する保持体3を備えてなる。
保持体3は、絶縁素材にて形成される。保持体3は、筒状部材21の先端開口部21aを、後述する電極体4の電極部41へ案内する第一案内孔31hを有する第一板状部材31を有している。保持体3は、棒状部材22の後端部22bを、検査点へ案内する第二案内孔32hを有する第二板状部材32を備えている。
【0039】
第一板状部材31の第一案内孔31hは、第一板状部材31の厚み方向に同一の直径を有する貫通孔として形成されてなり、この貫通孔の外径は筒状部材21の上筒部21cの外径よりも僅かに大きな径を有するように形成される。この第一案内孔31hによって、筒状部材21の先端開口部21aが電極体4に設けられる所定の電極部41へ案内される。
【0040】
第一板状部材31の厚みは、上筒部21cの長さよりも短く形成されることが好ましい。これは、伸縮する第一切欠部21dと第一板状部材31が接触して磨耗が生じないようにするためである。
【0041】
第二板状部材32は、第一板状部材31と所定間隔を有して配置されるとともに、検査用接触子2の棒状部材22の後端部22bを検査点へ案内するための第二案内孔32hを有している。第二板状部材32の厚みは、検査時において、棒状部材22の後端部22bが検査点に当接することができる十分な長さに調整される。
【0042】
第二案内孔32hは、第二板状部材32の厚み方向に貫通する同一の直径を有して形成され、棒状部材22の外径より大きく且つ筒状部材21の外径より小さい外径を有して形成される。このように第二案内孔32hを形成することにより、検査用接触子2を保持体3に挿入したときに、検査用接触子2の筒状部材21の後端部21bが第二板状部材32の表面と電極体4とで挟持されて、検査用接触子2の棒状部材22の後端部22bを第二板状部材32から突出させた状態となる。
【0043】
第二板状部材32は、電極部41から所定間隔Lを有して配置されることになるが、この所定間隔Lは、無負荷状態の筒状部材21の長軸方向の長さよりも短くなるように設定される。この所定間隔Lと筒状部材21の自然長の長さの差分が、第一切欠部21dと第二切欠部21fの収縮量となる。なお、この所定間隔Lにより、第一切欠部21dは収縮の限界手間程度に収縮している状態になるよう設定され、第二切欠部21fは僅かに収縮している状態となるように設定される。なお、検査用接触子2の棒状部材22が検査点に当接した場合には、筒状部材21が所定間隔Lよりも更に短い長さになる。このとき、第一切欠部21dは収縮の限界に達し、第二切欠部21fが収縮するようになる。
【0044】
このように形成することで、検査用接触子2を保持体3に装着する際に、筒状部材21の第一切欠部21dと第二切欠部21fが収縮して付勢状態となり、筒状部材21が電極部41と第二板状部材32を夫々押圧した状態で装着されることになる。
【0045】
図5では、第二案内孔32hは、同一の直径を有する貫通孔として示されているが、同軸上に配置される異なる二つの外径を有した二つの孔(上孔と下孔、図示せず)による貫通孔とすることもできる。この場合、上孔は、筒状部材21の外径より僅かに大きい直径を有して第二板状部材32の電極部側に配置され、下孔は、筒状部材21の外径よりも小さく棒状部材22の外径よりも僅かに大きい直径を有する下孔を有して第二板状部材32の検査点側に配置される。
このように上孔と下孔を形成することにより、検査用接触子2を第一案内孔31hから挿入し、保持体3に装着させたときに、筒状部材21の他端開口部21bの外径と下孔の径の相違により、筒状部材21を係止し、棒状部材22のみを第二案内孔32hから突出するように配置することもできる。
【0046】
図5で示される実施形態では、第一板状部材31と第二板状部材32は所定間隔を有して配置されているが、第一板状部材31と第二板状部材32の間に第三板状部材33(図示せず)を設けることもできる。この第三板状部材は、一又は二以上の板状部材を積層して、この間隔による空間に配置することができる。この場合、例えば、第三板状部材は、第一板状部材31と同じ板状部材を複数積層することにより形成することもできる。尚、第三板状部材に形成される貫通孔は、検査用接触子2の筒状部材21が貫通する大きさを有していれば、その断面形状は特に限定されない。
【0047】
電極体4は、検査装置と電気的に接続される電極部41を複数備えている。この電極体4が備える電極部41は、各検査用接触子2に対応するように配置されている。この電極部41は、筒状部材21の一端開口部21aと圧接されて導通状態となる。
【0048】
電極部41は、細い導線にて形成されており、図5ではその導線の切断面と電極体4の表面とが面一となるように配置されている。この導線の切断面が電極部41となり、棒状部材22の後端部22bと圧接されることになる。
以上が、本発明の第一実施形態の検査用治具1の構成の説明である。
【0049】
検査用治具1を組み立てるために、検査用接触子2を保持体3に装着する場合を説明する。
保持体3を検査用治具1に取付ける際には、まず、保持体3に検査用接触子2を挿入する。保持体3に検査用接触子2を挿入する場合には、検査用接触子2の棒状部材22の後端部22bを第一案内孔31hに通す。次に、第二案内孔32hにこの後端部22bを通して挿入し、第二案内孔32hから貫通させる。
【0050】
保持体3に挿入された検査用接触子2は、筒状部材21の他端開口部21bにより保持体3に係止されることになる。筒状部材21の先端開口部21aと棒状部材22の後端部22bは、第一案内孔31hと第二案内孔32hから夫々外側に突出するように配置されることになる。
【0051】
保持体3に検査用接触子2が挿入されると、筒状部材21の先端開口部21aが所定の電極部41へ押し当たるように、第一板状部材31を電極体4へ当接させる。このとき、筒状部材21は電極部41に圧接されるため、夫々の第一切欠部21dと第二切欠部21fが収縮して付勢状態となる。このとき、第一切欠部21dは、収縮の限界に近い段階まで収縮した状態にあり、第二切欠部21fは僅かに収縮しているに過ぎない状態となっている。
このようにして、検査用接触子2を有する検査用治具1が完成することになる。
【0052】
次に、検査用治具1を検査に用いる場合(検査時)を説明する。
図6は、検査用接触子を用いた検査用治具の検査時の状態を示す概略断面図である。
検査を行う際には、検査用治具1を検査装置(図示せず)に装着し、導線5が検査装置の制御手段と電気的に接続されることになる。
検査装置は、例えば、被検査物8を載置する載置台をxyz軸方向に夫々移動させる移動手段を備えており、被検査物8の複数の検査点81に、所定の検査用接触子2の棒状部材22の後端部22bが圧接されるように、載置台をxyz軸方向に移動させて検査を行う。
【0053】
検査装置が、所定の検査点81に所望の検査用接触子2の後端部22bを当接することができるように、載置台の位置決めが行われると、各検査点81に各検査用接触子2の後端部22bが導通接触するように移動される。
このとき、所定の検査点81に所望の後端部22bが当接すると、まず、他端部22bが圧接されることになるので、筒状部材21の第一切欠部21dと第二切欠部21fが収縮することになる。この場合、収縮量限界直前の第一切欠部21dは収縮限界となり、第二切欠部21fが収縮するようになる。
このため、非検査時には、第一切欠部21dと第二切欠部21fが作用し、検査時には第二切欠部21fが作用することになる。つまり、非検査時には、保持体3の第二板状部材32に係る荷重は、第一切欠部21dと第二切欠部21fから生じるため、検査時の荷重よりも小さな荷重とすることができる。検査時には強い押圧力を提供し且つ非検査時には弱い押圧力を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・検査用治具
2・・・検査用接触子
21・・筒状部材
22・・棒状部材
23・・固定部
3・・・保持体
31・・第一板状部材
31h・第一案内孔
32・・第二板状部材
32h・第二案内孔
4・・・電極体
41・・電極部
5・・・導線
8・・・被検査物
81・・検査点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象となる複数の検査点を有する被検査物と、該検査点間の電気的特性を検査する検査装置とを電気的に接続する検査用治具であって、
前記検査装置と電気的に接続される電極部を複数備える電極体と、
前記電極部と前記検査点を電気的に接続する検査用接触子と、
前記検査用接触子を保持する保持体を備え、
前記検査用接触子は、
両端に開口部を有し、先端開口部が前記電極部の表面と当接する導電性の筒状部材と、
前記筒状部材の後端開口部から突出されるとともに該筒状部材内部に配置され、先端が前記検査点に接触する導電性の棒状部材と、
前記筒状部材と前記棒状部材を電気的に接続する固定部とを備え、
前記保持体は、
前記先端開口部を前記電極体へ案内する第一案内孔を有する第一板状部材と、
前記棒状部材の先端を前記検査点へ案内する第二案内孔を有する第二板状部材を備え、
前記筒状部材は、
前記電極部の表面と接触する先端開口部を有するとともに前記棒状部材の後端部が内部に収容される上筒部と、
前記上筒部と同一径に形成されるとともに該上筒部と連通連結され、前記筒状部材の壁部に長軸方向に伸縮する螺旋状の切欠が形成される第一切欠部と、
前記第一切欠部と同一径に形成されるとともに該第一切欠部と連通連結される中筒部と、
前記中筒部と同一径に形成されるとともに該中筒部と連通連結され、前記筒状部材の壁部に長軸方向に伸縮する螺旋状の切欠が形成される第二切欠部と、
前記第二切欠部と同一径に形成されるとともに該第二切欠部と連通連結され、前記固定部を備える下筒部を有し、
前記第一切欠部又は前記第二切欠部のいずれかが、前記棒状部材が前記検査点に当接して検査が実施される際に、収縮の限界に達していることを特徴とする検査用治具。
【請求項2】
前記第一切欠部と前記第二切欠部は、螺旋のピッチが相違することを特徴とする請求項1記載の検査用治具。
【請求項3】
前記第一切欠部の切欠き幅は、前記第二切欠部の切欠き幅と相違していることを特徴とする請求項1又は2記載の検査用治具。
【請求項4】
被検査対象となる被検査物の複数の検査点と、該検査点間の電気的特性を検査する検査装置と電気的に接続される検査用治具の電極体に複数備えられた電極部とを電気的に接続する検査用接触子であって、
前記検査用接触子は、
先端開口部が前記電極部と当接する電極端となる外側筒体と、
前記外側筒体の後端開口部から突出されるとともに該外側筒体内部に電気的に接続されて同軸に配置され、先端開口部が前記検査点に圧接される検査端となる導電性の内側筒体とを備え、
前記外側筒体は、
前記電極端となる先端開口部を有する外側上筒部と、
前記外側上筒部と同一径で、先端開口部が該外側上筒部の後端開口部と連通連結されるとともに、周縁に長軸方向に形成される螺旋状の切欠を備える筒状の第一切欠部と、
前記第一切欠部と同一径で、該第一切欠部の後端開口部と連通連結される外側下筒部を有し、
前記内側筒体は、
前記検査端となる先端開口部を有する内側下筒部と、
前記内側下筒部と同一径で、先端開口部が該内側下筒部の後端開口部と連通連結されるとともに、周縁に長軸方向に形成される螺旋状の切欠を備える筒状の第二切欠部と、
前記第二切欠部と同一径で、該第二切欠部の後端開口部と連通連結されるとともに、前記外側筒体の内部に配置される内側上筒部とを有し、
前記外側筒体と前記内側筒体は、前記外側下筒部と前記内側上筒部を電気的に接続するとともに固定する固定部を有し、
前記第一切欠部と前記第二切欠部は、螺旋のピッチが相違することを特徴とする検査用接触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24716(P2013−24716A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159519(P2011−159519)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(392019709)日本電産リード株式会社 (160)
【Fターム(参考)】