説明

検査装置付クレーン

【課題】 荷役搬送効率を低下させることなく検査条件を良好に保つことが可能な、検査装置付クレーンを提供することを目的とする。
【解決手段】 コンテナクレーンのコンテナCの搬送経路W上に、この搬送経路Wを横切る方向に移動可能な台車21(位置調整装置)を設ける。この台車21上に、コンテナCを検査する検査装置22を設ける。台車21に、検査装置22の上方に張り出す上部フレーム26cと、サブフレーム26bの下方に張り出す下部フレーム26dとを設ける。上部フレーム26cの検査装置22よりも上方位置に、台車21の移動方向に沿ったコンテナCと検査装置22との相対位置を検出する上側位置検出器36aを設ける。上側位置検出器36aの検出結果に基づいて、検査装置22とコンテナCとが検査に適した位置関係となるように台車21の動作を制御する制御装置37を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置付クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンテナの内部に不審物が隠されて密輸入されることが多くなってきている。そのため、コンテナの輸出入に際しては、特に港湾等のコンテナターミナルにおいて、コンテナ内部を検査して不審物等を速やかに発見・摘発することが、ますます重要となってきている。特に、検査労力の低減を図る、あるいは積み荷の状態を維持するという観点から、コンテナを開封することなく、外側から非破壊にて検査できる方法が望まれている。
【0003】
コンテナ内部の不審物を非破壊にて検査する検査装置としては、例えば後記の特許文献1に記載されているような、ストラドル検査システムがある。このストラドル検査システムは、透過放射線源と放射線を検出する検出器とを、互いの間にコンテナを通過させることができるだけの間隔をおいてストラドルクレーンに設置し、このストラドルクレーンを自走させて透過放射線源と検出器との間でコンテナを相対的に移動させることによってコンテナの放射線透過像を得て、この放射線透過像に基づいて不審物等の有無を検査するものである。
【0004】
【特許文献1】特表2000−514183号公報(図1及び図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このストラドル検査システムは主に蔵置されているコンテナを検査対象としており、例えば蔵置されずに直接船積みされる場合には、荷役搬送効率の低下を生じさせるという課題があった。さらに、検査装置では、ストラドルクレーンとコンテナとの位置関係によって検査装置とコンテナとの位置関係が変わってしまうので、検査条件が検査の都度変わってしまう。このため、検査精度が一定でなく、検査結果の分析には手間がかかっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、荷役搬送効率を低下させることなく検査条件を良好に保つことが可能な、検査装置付クレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の検査装置付クレーンは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる検査装置付クレーンは、荷役対象物を検査する検査装置を有するクレーンであって、装置本体と、前記荷役対象物を保持する保持部と、該保持部を搬送経路に沿って移動させる保持部駆動装置と、前記搬送経路に対する前記検査装置の位置を調整する位置調整装置と、前記検査装置と前記荷役対象物との相対位置を検出する位置検出器と、該検出器の検出結果に基づいて、前記検査装置と前記荷役対象物とが検査に適した位置関係となるように前記位置調整装置の動作を制御する制御装置とを有していることを特徴とする。
【0008】
このように構成される検査装置付クレーンでは、位置検出器の検出結果に基づいて、位置調整装置及び制御装置によって、搬送経路に対する検査装置の位置が調整されて、検査装置と荷役対象物とが検査に適した位置関係とされる。
ここで、本発明にかかる検査装置付コンテナクレーンは、コンテナ内の非破壊検査用途の他にも、例えば外観検査やラベル等の読み取りなどの用途に用いることができる。
【0009】
また、このクレーンは、コンテナクレーンとされていてもよい。
このように構成されるクレーンでは、コンテナターミナルと船舶との間でコンテナのやり取りをする際に、検査装置によるコンテナの検査を行うことができる。すなわち、コンテナターミナルへの受入時の最初の段階でコンテナの検査を行って不審なコンテナを早期に発見したり、またはコンテナターミナルからの出荷時の最終段階でコンテナの検査を行って出荷時のコンテナの内容を保証することができる。
【0010】
また、この検査装置付クレーンの検査装置は、放射線の強度を検出するディテクタと、同一の前記ディテクタに対して間に前記検査対象物の進入する検査領域を挟んでそれぞれ異なる位置から前記放射線を照射する複数の放射線源と、該各放射線源が発する前記各放射線にそれぞれ異なる変調を付与する変調装置と、前記ディテクタの出力に基づいて該ディテクタに入射した放射線に付与された変調を識別して、該放射線がどの前記放射線源から照射されたものであるかを判別する判別装置とを有していてもよい。
【0011】
この検査装置は、検査対象物の放射線透過像に基づいて検査対象物の内部の検査を行う、いわゆる非破壊検査装置であるが、従来の非破壊検査装置と異なり、複数の放射線源によって、それぞれ異なる位置から、同一のディテクタに対して検査対象物越しに放射線が照射される。言い換えれば、一つのディテクタに、検査対象物を異なる方向から透過した放射線がそれぞれ入射する。
これら放射線は、変調装置によってそれぞれ放射線源ごとに異なる変調を付与されている。変調装置としては、例えば、放射線源が発する放射線を変調し、ディテクタに到達する放射線をその放射線源に特定の周期のパルス状放射線に変換するチョッパ等が用いられる。
【0012】
このように変調された放射線がディテクタに入射した際のディテクタの出力には、入射した放射線に付与されている変調が反映される。例えば、変調装置として前記のチョッパを用いた場合、ディテクタの出力には、チョッパによる変調と同じ周期で出力が変動する周波数成分が含まれる。
このディテクタの出力に基づいて、ディテクタに入射した放射線に付与された変調が判別装置によって識別され、この変調の情報に基づいて、ディテクタに入射した放射線がどの放射線源から照射されたものであるかが判別される。判別装置としては、例えばディテクタの出力からチョッパによる変調と同じ周期の信号を取り出すロックインアンプ等が用いられる。
【0013】
このように、この検査装置では、一つのディテクタで、複数の放射線源から照射された放射線を、たとえ照射位置が重複していたとしても、それぞれ放射線源ごとに個別に判別することができる。
これにより、この検査装置では、放射線源を複数設けて、検査領域を大きく設定したり、複数方向から検査対象物を検査する構成としながら、高価なディテクタの設置数を従来の非破壊検査装置に比べて少なく済ませたり、ディテクタとして従来の非破壊検査装置で用いるディテクタよりもさらに小型のものを用いることができ、設備コストが低くて済む。
また、ディテクタとしてより小型のものを用いることで、ディテクタの自重による歪みも小さくなってディテクタの検出精度が高くなるので、より高精度な非破壊検査を行うことができる。
さらに、検査装置自体も従来よりも小型となるので、クレーンにおける設置場所の選択肢が多くなり、様々な運用が可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる検査装置付クレーンによれば、検査装置による荷役対象物の検査が常に一定の条件下で行われるので、常に良好な検査結果を得ることができる。
そして、このように検査条件が一定に保たれるので、異なる荷役対象物の検査結果について比較が容易となり、検査結果の評価の自動化または半自動化が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第一実施形態]
以下に、本発明の第一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態では、図1に示すように、本発明を、港湾部に設置されたコンテナターミナルTの岸壁Qに接岸したコンテナ船Sと岸壁Q上のシャーシVとの間で荷役作業を行うコンテナクレーン1に適用した例を示す。
【0016】
コンテナクレーン1のクレーン本体2は、連結部材13によって相互に連結されるとともに各々の下部側に車輪が設けられた前脚11と後脚12との上部に、コンテナ船Sの上側に突出するブーム14が備えられた構成となっている。
前脚11及び後脚12は、それぞれ一対の柱状部材を図示せぬ梁部によって連結してなる略梯子状の構造体とされており、前脚11と後脚12とは、それぞれの柱状部材同士を連結部材13によって接続されている。ここで、連結部材13のうち、前脚11と後脚12との間に略水平にして設けられる連結部材13を、連結部材13aとする。
【0017】
ブーム14には、コンテナCが固定される吊具15(保持部)が吊り下げられるとともにブーム14上を移動可能とされたトロリ16(保持部駆動装置)と、吊具15を巻上及び巻下するための巻上装置17(保持部駆動装置)とが備えられており、これらによってコンテナCを吊り下げ、巻上・巻下、及び移動させることで、コンテナ船Sと、コンテナクレーン1の下側で待機しているシャーシVとの間で、コンテナCの受け渡しを行うようになっている。
【0018】
このコンテナクレーン1では、コンテナ船SからシャーシVへのコンテナCの積込作業は、以下のようにして行われる。
まず、コンテナ船S上のコンテナCを吊具15によって保持し、この状態で巻上装置17によって吊具15を巻き上げることによってコンテナCを所定の高さまで略垂直に持ち上げる。次に、トロリ16をブーム14に沿って移動させて、吊具15ごとコンテナCを目的のシャーシVの直上位置まで移動させる。そして、巻上装置17によって吊具15を巻下することによってコンテナCをシャーシVに向けて略垂直に降下させ、シャーシV上にコンテナCを降ろす。
一方、シャーシVからコンテナ船SへのコンテナCの積込作業は、上記手順とは逆の手順で行われる。
【0019】
すなわち、このコンテナクレーン1では、図1に実線で示すように、コンテナCの搬送経路Wは、前脚11、後脚12、及び連結部材13aによって囲まれる領域を通るように設定されている。
なお、このコンテナクレーン1では、コンテナCは、その長手方向が連結部材13aの長手方向に略直交するようにして搬送されるようになっている。
【0020】
クレーン本体2において、連結部材13a上には、連結部材13aの長手方向に沿って移動可能な台車21(位置調整装置)が設けられている。
また、この台車21上には、コンテナクレーン1によって荷役されるコンテナCを検査する検査装置22が設けられている。すなわち、検査装置22は、台車21を移動させることによって、連結部材13aの長手方向における位置を調整して、搬送経路Wの垂直部分に対する検査装置22の位置を調整することが可能とされている。
【0021】
台車21は、図2(図1において丸で囲った部分の拡大図)に示すように、連結部材13a間にまたがって設けられるフレーム26に、図示せぬ駆動装置によって回転駆動される車輪27が取り付けられたものであって、駆動装置によって車輪27を回転駆動することで、連結部材13aに沿って移動することができるようになっている。
【0022】
本実施形態では、フレーム26は、一対の連結部材13a上にそれぞれ各連結部材13aの長手方向に沿って設けられる主フレーム26aと、これら主フレーム26a間にまたがってかつ互いに離間して設けられる一対のサブフレーム26bとを有しており、これら主フレーム26aとサブフレーム26bとによって囲われる領域内に、コンテナC及び吊具5を通過させることができるようになっている。
また、サブフレーム26bのうちの一方には、検査装置22の上方に張り出す上部フレーム26cと、検査装置22の下方に張り出す下部フレーム26dとが設けられている。
【0023】
検査装置22は、一方のサブフレーム26bに設けられてγ線やX線等の放射線を発する放射線源31と、他方のサブフレーム26bに放射線源31に対して対向するようにして設けられるディテクタ32とを有しており、これら放射線源31とディテクタ32との間の領域が、検査装置22の検査領域Aとされている。
この検査装置22は、サブフレーム26b間の検査領域Aに進入したコンテナCに対して放射線源31から放射線を照射して、コンテナCを透過した放射線をディテクタ32によって検出し、ディテクタ32によって検出された放射線の強度の情報とその検出位置の情報とに基づいてコンテナCの内部全体を非破壊にて検査するものである。
これら放射線源31及びディテクタ32とは、台車21を移動させることによって、互いの位置関係を保ったままで連結部材13aの長手方向に沿って移動可能とされている。
ここで、この検査装置付クレーン1には、必要に応じて、検査装置22の周囲に放射線遮蔽用の防護壁が設けられる。
【0024】
放射線源31としては、一般的な放射線源、例えば、Co60(コバルト60)等の放射性同位元素(RI)を利用した放射線源や、X線発生装置が用いられる。
また、ディテクタ32としては、放射線を用いた非破壊検査に一般的に用いられる放射線検出装置が用いられる。
本実施形態では、ディテクタ32は、上部フレーム26c及び下部フレーム26dが設けられている側のサブフレーム26bに設けられており、このサブフレーム26bの長手方向に沿った帯状の検出領域を有している。
【0025】
本実施形態では、放射線源31として、Co60を利用した放射線源が用いられている。
また、ディテクタ32としては、放射線検出器を複数配列してなる検出器アレイが用いられている。放射線検出器は、例えば、入射した放射線を可視光に変換するシンチレータとこのシンチレータが発生させた可視光を検出して電気信号に変換する光電子倍増管との対によって構成されるものである。検出器アレイは、この放射線検出器の配置される領域が検出領域であって、どの放射線検出器から出力が得られたかに基づいて検出領域における放射線の入射位置が求められ、また放射線検出器の出力の大きさに基づいて入射した放射線の強度が求められる。
【0026】
また、上部フレーム26cには、検査装置22よりも上方位置に、上側位置検出器36aが設けられている。上側位置検出器36aは、連結部材13aの長手方向におけるコンテナCと検査装置22との相対位置を検出するものである。
同様に、下部フレーム26dには、検査装置22よりも下方位置に、下側位置検出器36bが設けられている。下側位置検出器36bは、連結部材13aの長手方向におけるコンテナCと検査装置22との相対位置を検出するものである。
【0027】
また、コンテナクレーン1には、これら上側位置検出器36a,下側位置検出器36bによるコンテナCの位置情報、トロリ16の制御信号、及び巻上装置17の制御信号に基づいて、検査装置22とコンテナCとが検査に適した位置関係となるように台車21の動作を制御する制御装置37が設けられている。
【0028】
このように構成されるコンテナクレーン1を用いたコンテナCの非破壊検査は、コンテナCを搬送経路Wに沿って搬送する過程で、コンテナCの搬送と並行して行われる。
具体的には、台車21の位置を調整して、サブフレーム26b間の検査領域Aを搬送経路W上に位置させ、この状態でコンテナCを搬送して検査領域Aを通過させることで、コンテナCの搬送方向前方側から搬送方向後方までの各部が、放射線源31とディテクタ32との間の検査領域Aに順次曝されてゆく。
検査装置22は、このコンテナクレーン1の動作と連動して動作させられて、コンテナCの下端から上端までにわたって、検査装置22によるコンテナC内部の非破壊検査を行う。
なお、検査装置22による検査が行われている間は、コンテナCは、スキューやスウェーを抑えられて、検査装置22に対する姿勢を一定にした状態で搬送される。
【0029】
ここで、トロリ16は、コンテナCの受け渡しを行うシャーシVの直上に位置するように、ブーム14上での位置が調整される。すなわち、トロリ16に設けられた吊具15によるコンテナCの昇降位置(搬送経路Wの垂直部分の位置)は、必ずしも一定ではない。
そこで、このコンテナクレーン1では、コンテナCの位置に応じて、検査装置22の位置の調整が行われて、検査装置22とコンテナCとが検査に適した位置関係となった状態で検査が行われる。
【0030】
以下、コンテナクレーン1による検査装置22の位置調整の流れについて具体的に説明する。
まず、コンテナCが検査領域Aを下方に向けて通過する場合(コンテナ船SからシャーシVへの積込時)の位置調整の流れについて説明する。
トロリ16によってコンテナCをシャーシVの直上に位置させる過程で、制御装置37は、トロリ16の制御信号に基づいて、ブーム14に沿った方向でのコンテナCの位置を概略的に検出し、この位置情報に基づいて台車21の位置を制御して、検査装置22とコンテナCとが検査に適した位置関係となるようにする。
【0031】
巻上装置17によってコンテナCを降下させる過程では、コンテナCが上側位置検出装置36aに対向する位置に達した時点で(コンテナCが検査領域Aに達する前の時点で)、上側位置検出装置36aによって、ブーム14の長手方向に沿った方向における上側位置検出装置36aとコンテナCとの間の距離が検出される。
制御装置37は、この上側位置検出装置36aの測定値に基づいて、検査装置22の最終的な位置調整を行う。
具体的には、制御装置37は、上側位置検出装置36aの測定値に基づいて、現時点でのブーム14の長手方向に沿った方向におけるディテクタ32とコンテナCとの間の距離Dを求め、この距離Dが検査に適した距離Dでない場合には、台車21を動作させて、この距離Dが適切な距離Dとなるよう、検査装置22をブーム14の長手方向に沿った方向に移動させる。
【0032】
コンテナCが検査領域Aを上方に向けて通過する場合(シャーシVからコンテナ船Sへの積込時)には、まず、コンテナCが検査領域Aを下方に向けて通過する場合と同様にして、トロリ16の制御信号に基づいて制御装置37による台車21の制御が行われて、検査装置22の位置が調整される。
【0033】
そして、巻上装置17によってコンテナCを上昇させる過程では、コンテナCが下側位置検出装置36bに対向する位置に達した時点で(コンテナCが検査領域Aに達する前の時点で)、下側位置検出装置36bによって、ブーム14の長手方向に沿った方向における下側位置検出装置36bとコンテナCとの間の距離の検出が行われる。
制御装置37は、この下側位置検出装置36bの測定値に基づいて、現時点でのブーム14の長手方向に沿った方向におけるディテクタ32とコンテナCとの間の距離Dを求め、この距離Dが検査に適した距離Dでない場合には、台車21を動作させて、この距離Dが適切な距離Dとなるよう、検査装置22をブーム14の長手方向に沿った方向に移動させる。
【0034】
このように、このコンテナクレーン1では、上側位置検出装置36aまたは下側位置検出装置36bの検出結果に基づいて、台車21及び制御装置37によって、搬送経路Wに対する検査装置22の位置が調整されて、検査装置22とコンテナCとが検査に適した位置関係とされる。
このため、このコンテナクレーン1によれば、検査装置22によるコンテナCの検査が常に一定の条件下で行われることとなり、常に良好な検査結果を得ることができる。
そして、このように検査条件が一定に保たれる(例えば得られる放射線透過像の大きさや撮影角度等が一定となる)ので、異なるコンテナCの検査結果について比較が容易となり、検査結果の評価の自動化または半自動化が容易となる。
【0035】
そして、このように、このコンテナクレーン1では、荷役作業の途中でコンテナCの非破壊検査を行うことができるので、荷役搬送効率を低下させることなく、コンテナCの検査を行うことができる。また、コンテナターミナルTへの受入時の最初の段階でコンテナCの検査を行って不審なコンテナCを早期に発見したり、またはコンテナターミナルTからの出荷時の最終段階でコンテナCの検査を行って出荷時のコンテナCの内容を保証することができる。
【0036】
また、このコンテナクレーン1では、検査装置22の検査領域Aを、コンテナクレーン1によるコンテナCの搬送経路W上に設定しているので、コンテナターミナルTにおいて検査のために使用するスペースを減らすことができる。
さらに、このコンテナクレーン1では、検査装置22が地上から離間した位置に設けられているので、検査装置22の周囲に不用意に人が近づきにくい。このため、検査装置22周辺への人の立ち入りも管理しやすく、検査装置22の安全管理が容易である。
また、このように検査装置22を地上から離間させて設けることで、コンテナターミナルTにおいて検査装置22の下方の空間を活用することができる。
【0037】
ここで、上記実施形態では、検査装置22を連結部材13a上で移動可能な台車21上に配置して、台車21を略水平方向に移動させることで、搬送経路Wの垂直部分で搬送されるコンテナCに対する位置調整を行う例を示したが、検査装置22の設置位置及び移動方向は、これに限られることなく、他の配置としてもよい。
例えば、検査装置22を、ブーム14に対して昇降可能な昇降装置に設置して、昇降装置を昇降させることで、搬送経路Wの水平部分で搬送されるコンテナCに対する位置調整を行う構成としてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、本発明を、コンテナ内の非破壊検査用途に適用した例を示したが、これに限られることなく、例えば外観検査やラベル等の読み取りなどの用途に用いてもよい。この場合には、検査装置22の代わりに、撮像装置が用いられる。
【0039】
また、上記実施の形態では、本発明を、コンテナクレーンに適用した例を示したが、これに限られることなく、ヤードクレーン等、コンテナターミナルT内で用いられる他のクレーンに適用してもよい。
【0040】
[第二実施形態]
以下に、本発明の第二実施形態について、図3を用いて説明する。
本実施形態で示すコンテナクレーンは、第一実施形態で示したコンテナクレーン1において、検査装置22の代わりに、検査装置52を設置したことを主たる特徴とするものである。なお、以下では、第一実施形態で示したコンテナクレーン1の構成部材と同様または同一の部材については同じ符号を用いて示し、詳細な説明を省略する。
【0041】
検査装置52は、検査装置22と同じく、放射線源31とディテクタ32とが、互いの間に、検査対象物であるコンテナCの進入する検査領域Aを挟んで配置されたものであって、それぞれ異なる位置に配置された複数の放射線源31から同一のディテクタに対して放射線が照射される構成とされている。
本実施形態では、台車21を構成するサブフレーム26bのうちの一方に、放射線源31a及び放射線源31bが設置されており、放射線源31aは、この一方のサブフレーム26bの一端側に設置されており、放射線源31bは、この一方のサブフレーム26bの他端側に設置されている。そして、他方のサブフレーム26b(図3では図示せず)には、一つのディテクタ32が、検出領域を一方のサブフレーム26b側に向けた状態にして設置されている。
以下、この検査装置52において、放射線源31a,31bの配列方向(サブフレーム26bの長手方向)を幅方向とし、連結部材13a(図3では図示せず)に沿った方向(一方のサブフレーム26bから他方のサブフレーム26bに向かう方向)を奥行き方向とする。
【0042】
放射線源31a,31bは、図3に二点鎖線で示すように、それぞれ検査領域Aに向けて、略水平面上で略扇形に広がるように放射線を照射する構成とされている。すなわち、この検査装置52では、これら放射線源31a,31bが、同一のディテクタ32に対して、それぞれ異なる位置から放射線を照射する構成とされている。また、これら放射線源31a,31bによる放射線の照射範囲は、前記奥行き方向も含めて検査領域A全体をカバーするように設定されているので、各放射線源31a,31bの放射線の照射領域は重複している。
【0043】
各放射線源31a,31bは、それぞれ検査領域Aの端部の正面位置よりも前記幅方向の外側の位置に配置されていて、ディテクタ32には、コンテナCの放射線透過像が、前記幅方向において検査領域Aよりも小さい領域に投影されるようになっている。
ディテクタ32は、放射線検出器を前記幅方向に複数配列してなる検出器アレイとされており、その検出領域は、前記幅方向に沿った帯状をなしている。また、ディテクタ32の前記幅方向の寸法は、検査領域Aの前記幅方向の寸法よりも短く設定されている。
【0044】
また、この検査装置52には、各放射線源31a,31bが発する各放射線にそれぞれ異なる変調を付与する変調装置56と、ディテクタ32の出力に基づいてディテクタ32に入射した放射線に付与された変調を識別して、この放射線がどの放射線源31から照射されたものであるかを判別する判別装置57とが設けられている。
【0045】
変調装置56は、放射線源31aの発する放射線に変調を付与する変調装置56aと、放射線源31bの発する放射線に変調を付与する変調装置56bとを有している。
本実施形態では、これら変調装置56a,56bとしては、チョッパが用いられている。チョッパは、放射線源31が発する放射線を検査領域Aの手前側で変調し、ディテクタに到達する放射線をその放射線源に特定の周期のパルス状放射線に変換するものである。
変調装置56aは、放射線源31aの発する放射線を、周期f1のパルス状放射線に変換する構成とされており、変調装置56bは、放射線源31bの発する放射線を、周期f2(但しf2≠f1)のパルス状放射線に変換する構成とされている。
【0046】
判別装置57は、ディテクタ32の出力から放射線源31aに特定の周期f1で繰り返される成分を取り出すロックインアンプ57aと、ディテクタ32の出力から放射線源31bに特定の周期f2で繰り返される成分を取り出すロックインアンプ57bと、これらロックインアンプ57a,57bのそれぞれが取り出した成分に基づいて、放射線源31aが発した放射線による放射線透過像と、放射線源31bが発した放射線による放射線透過像とをそれぞれ形成する演算装置57cとを有している。
【0047】
このように構成されるコンテナクレーンを用いたコンテナCの非破壊検査は、第一実施形態で示したコンテナクレーン1を用いたコンテナCの検査と同じく、コンテナCをコンテナクレーンの搬送経路に沿って搬送する過程で、コンテナCの搬送と並行して行われる。
具体的には、コンテナCを搬送して、搬送経路上の検査領域Aを通過させることで、コンテナCの搬送方向前方側から搬送方向後方までの各部が、放射線源31とディテクタ32との間に順次曝されてゆく。検査装置52は、このコンテナクレーンの動作と連動して動作させられて、コンテナCの下端から上端までにわたって、検査装置52によるコンテナC内部の非破壊検査が行われる。
【0048】
以下、本実施形態にかかる検査装置52によるコンテナCの非破壊検査について、詳細に説明する。
この検査装置52では、放射線源31a,31bによって、それぞれ異なる位置から、同一のディテクタ32に対してコンテナC越しに放射線が照射される。言い換えれば、一つのディテクタ32に、コンテナCを異なる方向から透過した放射線がそれぞれ入射する。
【0049】
これら放射線は、変調装置56a,56bによってそれぞれ放射線源ごとに異なる変調を付与されている。
このように変調された放射線がディテクタ32に入射した際のディテクタ32の出力には、入射した放射線に付与されている変調が反映される。
この検査装置52では、ディテクタ32の出力に基づいて、ディテクタ32に入射した放射線に付与された変調が判別装置57によって識別され、この変調の情報に基づいて、ディテクタ32に入射した放射線がどの放射線源から照射されたものであるかが判別される。
【0050】
具体的には、ディテクタ32の出力から、ロックインアンプ57aによって周期f1で繰り返される信号が抽出され、この抽出信号に基づいて、演算装置57cが放射線源31aの発した放射線によるコンテナCの放射線透過像を形成する。
同様にして、ロックインアンプ57bによって周期f2で繰り返される信号が抽出され、この抽出信号に基づいて、演算装置57cが放射線源31bの発した放射線によるコンテナCの放射線透過像を形成する。
【0051】
このように、この検査装置52では、一つのディテクタ32で、各放射線源31a,31bから照射された放射線、しかも照射位置が重複している放射線を、それぞれ放射線源ごとに個別に判別することができる。
これにより、この検査装置52では、放射線源31を二つ設けて、検査領域Aを大きく設定しながら、ディテクタ32の設置数を一台に抑えることができ、従来の非破壊検査装置に比べて高価なディテクタ32の設置数を少なく済ませることができる。
【0052】
さらに、各放射線源31a,31bは、それぞれ検査領域Aの端部の正面位置よりも前記幅方向の外側の位置に配置されていて、ディテクタ32には、コンテナCの放射線透過像が、前記幅方向において検査領域Aよりも小さい領域に投影されるようになっている。
このため、ディテクタ32の全長をコンテナCの幅よりも短くすることができ、設備コストが少なくて済む。
また、このようにディテクタ32としてより小型のものを用いることで、ディテクタ32の自重による歪みも小さくなってディテクタ32の検出精度が高くなり、より鮮明な放射線透過像を得ることができるので、より高精度な検査が可能となる。
さらに、検査装置52自体も従来よりも小型となるので、クレーンにおける設置場所の選択肢が多くなり、様々な運用が可能である。
【0053】
また、この検査装置52では、検査領域Aには、異なる二方向から放射線が照射されるので、コンテナCの異なる二方向からの放射線透過像が得られる。すなわち、この検査装置52では、ディテクタ32の設置数を一台としながら、コンテナCを異なる二方向から検査して、コンテナCの前記奥行き方向の情報も得ることができる。
これにより、この検査装置52では、設置コストを抑えたままで、一方向からのみの検査では見落としていた異常も発見することが可能となり、より高精度な検査を行うことが可能となる。
【0054】
ここで、上記第二実施形態では、ディテクタ32を、入射した放射線を可視光に変換するシンチレータと、このシンチレータが発生させた可視光を検出して電気信号に変換する光電子倍増管とを有し、この光電子倍増管の出力に基づいて放射線強度を検出する構成としたが、これに限られることなく、ディテクタ32の構成として、他の構成を採用してもよい。例えば、ディテクタ32は、シンチレータの代わりに半導体検出素子、例えばSi(シリコン)放射線検出素子やCdTe(テルル化カドミウム)放射線検出素子等も適用可能である。また、ディテクタ32で得られた信号を検出する方法についても、ロックインアンプを用いた方法に限られることなく、例えばフォトンカウンタをロックインモードで使用することにより放射線の強度を検出する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一実施形態にかかるコンテナクレーンの構成を示す側面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】本発明の第二実施形態にかかるコンテナクレーンの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 コンテナクレーン
2 クレーン本体
15 吊具(保持部)
16 トロリ(保持部駆動装置)
17 巻上装置(保持部駆動装置)
21 台車(位置調整装置)
22,52 検査装置
31a,31b 放射線源
32 ディテクタ
36a 上側位置検出器
36b 下側位置検出器
37 制御装置
56 変調装置
57 判別装置
A 検査領域
W 搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役対象物を検査する検査装置を有するクレーンであって、
装置本体と、
前記荷役対象物を保持する保持部と、
該保持部を搬送経路に沿って移動させる保持部駆動装置と、
前記搬送経路に対する前記検査装置の位置を調整する位置調整装置と、
前記検査装置と前記荷役対象物との相対位置を検出する位置検出器と、
該検出器の検出結果に基づいて、前記検査装置と前記荷役対象物とが検査に適した位置関係となるように前記位置調整装置の動作を制御する制御装置とを有していることを特徴とするクレーン。
【請求項2】
前記クレーンがコンテナクレーンとされていることを特徴とする請求項1記載のクレーン。
【請求項3】
前記検査装置は、放射線の強度を検出するディテクタと、
同一の前記ディテクタに対して間に前記検査対象物の進入する検査領域を挟んでそれぞれ異なる位置から前記放射線を照射する複数の放射線源と、
該各放射線源が発する前記各放射線にそれぞれ異なる変調を付与する変調装置と、
前記ディテクタの出力に基づいて該ディテクタに入射した放射線に付与された変調を識別して、該放射線がどの前記放射線源から照射されたものであるかを判別する判別装置とを有していることを特徴とする請求項1または2に記載のクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−62765(P2006−62765A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243900(P2004−243900)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】