説明

検査装置

【課題】検査対象物のX線透過画像にモアレ縞が発生する場合において、モアレ縞を消滅させる。
【解決手段】画像処理合成装置14は、X線源11と輝度倍増管12とカメラ13とから成る構成により得られた、被検体1のX線画像を取得し、モアレ縞が発生しているか否かをチェックする。モアレ縞発生の場合には、回転機構制御部15によって輝度倍増管12とカメラ13とを回転軸C2回りで同期回転させる(所定角度分回転)。そして、再び被検体1のX線画像を取得し、モアレ縞が発生しているか否かをチェックする。これをモアレ縞が発生していないX線画像が得られるまで繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の異常発生部位を検査する検査装置に係り、特にX線透過装置による検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば以下の特許文献1〜4等に記載の従来技術が知られている。
特許文献1には、被検物体表面の面位置情報を得るためにモアレ縞を用いる構成が開示されている。
【0003】
特許文献2には、可視光方式とX線方式とを組み合わせたはんだ付け検査装置が開示されている。
特許文献3には、散乱線除去用グリッドを用いるX線撮影装置において、グリッドの高・低吸収率部が平行に伸びていく方向とX線検出器の空間的サンプリング方向(画素配列方向)との角度を調整して、X線検出器によって得られる画像にモアレ縞が現れないようにすることが開示されている。
【0004】
特許文献4には、X線を用いた半導体基板上の構造の検査装置に関して、検査対象として基板の中に形成された機械的微細構造も対象となることが開示されている。
ここで、通常の外観検査装置(ex.金属顕微鏡、コンフォーカル顕微鏡等)では、図3(a)、(b)に示すようなSi活性層下のSiO2残渣の有無、あるいは、図4(a)、(b)に示すような構造体内部における異常突起をとらえることは困難である。
【0005】
尚、図3(a)や図4(a)に示す構成は、繰り返し周期をもつ開口パターンが存在する。すなわち、図3(a)では、各櫛歯状電極の間に空間(開口部)が存在しており、櫛歯状電極→開口部→櫛歯状電極→開口部→・・・というように開口部が所定のパターンで繰り返される開口パターンを有する。図4(a)の構成も同様に、各バックプレート間に開口部が存在しており、開口部が所定のパターンで繰り返される開口パターンを有する。
【0006】
図3や図4に示すような異常発生部位をSEM (Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)を用いて詳細観察する場合、構造体の接合継手、あるいは、下地のSiを破壊する必要がある。また、SEM観察において治具固定や試料調整に多大な時間を要する。
【0007】
この為、X線透過装置により半導体デバイスの上記図3、図4等に示す異常発生部位を検出することが考えられる。
【特許文献1】特開平9−210629号公報
【特許文献2】特開平7−294450号公報
【特許文献3】特開2003−38483号公報
【特許文献4】特開2001−305077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の通り、図3や図4に示す例の半導体デバイスには、繰り返し周期をもつ開口パターンがあるため、X線透過画像には図5に示すようなモアレ縞が発生する場合がある。
【0009】
非破壊検査法として、X線透過装置により上記半導体デバイス等の異常発生部位を検出する際、モアレ縞の生成により異常発生部位が判別し難い場合がある(モアレ縞周期は被検体パターン像の配列周期と検出器での画素配列周期との差に等しい)。
【0010】
本発明の課題は、検査対象物が、その異常発生部位検出の為にX線透過装置が必要なものであり且つ繰り返し周期をもつ開口パターンがあるためにX線透過画像にモアレ縞が発生する可能性があるものである場合において、モアレ縞を消滅させる為の構成を設けたことで異常発生部位を精度良く検出できる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の検査装置は、被検体に対してX線を照射するX線源と、被検体を透過して得られる透過X線像を光学像として出力する輝度倍増管と、該輝度倍増管からの光学像を撮像するための検出器と、該検出器から出力される前記被検体の透過X線像の光学像を入力して、該光学像の画像処理を行う画像処理合成部からなる検査装置であって、前記輝度倍増管と検出器とを同一の回転軸回りで回転させる回転機構と、該回転機構を制御して前記輝度倍増管と検出器とを同期回転させる回転機構制御部を有し、前記画像処理合成部は、前記入力する光学像に基づいてモアレ縞の有無を判定し、モアレ縞無しと判定されるまで、前記回転機構制御部により前記輝度倍増管と検出器とを所定角度分回転させて再び前記透過X線像の光学像を入力して前記モアレ縞の有無を判定する処理を繰り返し実行する。
【0012】
また、例えば、前記X線源から被検体に照射されるX線は、該被検体に対して斜めに照射され、該X線が被検体を透過してなる透過X線も前記輝度倍増管に対して斜めに照射される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の検査装置によれば、検査対象物が、その異常発生部位検出の為にX線透過装置が必要なものであり且つ繰り返し周期をもつ開口パターンがあるためにX線透過画像にモアレ縞が発生する可能性があるものである場合において、モアレ縞を消滅させる為の構成を設けたことで異常発生部位を精度良く検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本例の光学検査装置では、立体形状データに基づいて検査部位の位置座標、高さを取得する機能を備えることで半導体デバイスの異常発生部位を検出するとともに、モアレ縞を生成させない機構を設けることで、異常発生部位を精度良く検査できる。
【0015】
図1に、本例の光学検査装置1の構成例を示す。
図示の光学検査装置10は、まず、立体形状データを測定することで被検体1の外観形状・寸法等(位置、高さ等)を求める機構として、レーザ照射器2と光学像モニタ3、及び形状計測制御部4がある。レーザ照射器2から出力されるレーザ光は、被検体1によって反射され、この反射光が光学像モニタ3に入射する。これによって光学像モニタ3で取得した画像に基づいて、形状計測制御部4は被検物の立体形状データを計測する。
【0016】
一方、被検体1のX線画像を計測する構成は、X線源11と、被検体1を透過して得られる透過X線像を光学像として出力する輝度倍増管12と、輝度倍増管12からの光学像を撮像するための検出器(カメラ13)とから成る。更に、このカメラ13で得られた画像データを画像処理(合成等)して被検体1の断層面画像等を生成する画像処理合成装置14を有する。
【0017】
また、被検体1をX軸方向、Y軸方向に移動可能な不図示のXYステージと、このXYステージと共に被検体1を第1の回転軸C1の回りで回転させる回転ステージ5を有する。また、上記輝度倍増管12、カメラ13は、それぞれ回転ステージ16,17上に搭載され、回転ステージ16,17が回転することで輝度倍増管12、カメラ13も回転する。これら回転ステージ16,17は、上記回転軸C1から所定角度θズレた図示の回転軸C2を中心にして回転する。これによって、上記輝度倍増管12、カメラ13も、回転軸C2を中心にして回転する。尚、これら回転ステージ5、16,17をそれぞれ回転させる不図示の回転機構が存在する。
【0018】
回転機構制御部15は、上記不図示の回転機構を駆動制御して回転ステージ5、16,17を回転させるが、回転ステージ16,17は同期回転制御する。つまり、回転ステージ16を回転させる際には回転ステージ17も一緒に回転させる。つまり、回転機構制御部15は、従来のように回転ステージ5を上記回転軸C1回りで回転させる制御を行うだけでなく、上記輝度倍増管12とカメラ13とを上記回転軸C2回りで同期回転させる制御も行う。
【0019】
上記構成において、回転機構制御部15の制御によって回転ステージ5を回転させて任意の位置で静止させる毎に、光学画像及びX線画像を撮影する。つまり、被検体1を様々な角度から撮影する。そして、これら撮影画像に基づいて立体形状画像を生成する。これは、光学画像に関しては形状計測制御部4が生成し、X線画像に関しては画像処理合成装置14が生成する。尚、立体形状画像生成処理については、既存手法であるし本手法には直接関係しないので、特に説明しない。
【0020】
また、形状計測制御部4は、生成した立体形状データ(光学画像)を画像処理合成装置14に送り、画像処理合成装置14は、この立体形状データ(光学画像)により自己が生成した立体形状データ(X線画像)を検証するが(マッチング等)、これも既存手法であるし本手法には直接関係しないので、特に説明しない。
【0021】
本手法の特徴は、第1に上記輝度倍増管12とカメラ13とを上記回転軸C2回りで同期回転させる構成を設けた点であり、第2に図1に示すようにX線を被検体1及び輝度倍増管に対して斜めに照射する構成とした点である。第2の特徴については後述する。以下、第1の特徴について説明する。
【0022】
図2に上記図1の光学検査装置1による処理フローチャート図を示す。
まず、被検体1をXYステージ上に配置し、レーザ照射器2より扇状レーザビームを照射し被検体1の画像を光学像モニタ3で取得する。尚、ビーム走査は形状計測の対象部分全体について行う。形状計測制御部4は、光学像モニタ3で取得した画像に基づいて被検物1の立体形状データを計測(生成)する(ステップS1)。そして、この立体形状データに基づいて検査部位の位置座標、高さ等を求める(ステップS2)。尚、形状計測制御部4には被検体1の形状や部品配置等のデータを予め記憶する装置(メモリ等)もあり、立体形状データと併用することで、被検体の画像処理、形状や位置を把握できる。これも既存技術であり、特に説明しない。
【0023】
また、画像処理合成装置14は、上記X線源11と輝度倍増管12とカメラ13とから成る構成により得られた、被検体1のX線画像を取得し(ステップS3)、これに基づいて断層面の高さ等求めて設定し(ステップS4)、この断層面の高さ等を利用して取得した複数のX線画像を合成して立体形状データ(X線画像)を生成する(ステップS5)。
【0024】
尚、上記断層面の高さとは、例えば図3の例では、Si活性層、SiO層、Si支持層の各層の厚さ等を意味するが、この例に限るものではない。尚、これら立体形状データ(光学画像、X線画像)生成に係わる処理は、上記の通り既存技術であり、特に詳細には説明しない。
【0025】
ここで、図2には示していないが、画像処理合成装置14は、この合成画像をチェックしてステップS8のモアレ縞が発生しているか否かを判定する処理を行う。そして、もし、モアレ縞が発生していた場合には、ステップS6〜S8の処理を実行する。
【0026】
すなわち、画像処理合成装置14は回転機構制御部15に指示を出して、回転機構制御部15により上記輝度倍増管12とカメラ13とを上記回転軸C2回りで同期回転させる(ステップS6)。この同期回転は、例えば予め決められている所定角度分(角度θ1とする)回転させるものである。その後、上記と同様にして回転ステージ5を上記回転軸C1回りで回転させながら複数のX線画像を取得し、これら複数のX線画像を合成して(ステップS7)この合成画像について上記ステップS8の判定を行う。ステップS8の判定がYESであれば(モアレ縞が発生している場合)、更に上記回転軸C2回りでの同期回転を実行させて上記合成画像を生成してステップS8の判定を行う。これは、ステップS8の判定がNOとなるまで繰り返し行う。そして、ステップS8の判定がNOとなったら、すなわちモアレ縞が発生していないならば(モアレ縞が消滅したならば)、上記立体形状データ(X線画像)に基づいて被検体1の断層画像を生成する(ステップS9)。この処理も既存技術であるので、特に説明しない。
【0027】
尚、ステップS8の判定は、上記合成画像に対して判定する例に限らない。上記X線源11と輝度倍増管12とカメラ13とから成る構成により得られた被検体1の各X線画像毎に対して、ステップS8の判定を行うようにしてもよい。
【0028】
上記のように、画像処理合成装置14は、X線源11と輝度倍増管12とカメラ13とから成る構成により得られた、被検体1のX線画像を取得し、モアレ縞が発生しているか否かをチェックする。モアレ縞発生の場合には、回転機構制御部15によって輝度倍増管12とカメラ13とを回転軸C2回りで同期回転させる(所定角度分回転)。そして、再び被検体1のX線画像を取得し、モアレ縞が発生しているか否かをチェックする。これをモアレ縞が発生していないX線画像が得られるまで繰り返す。
【0029】
上述してあるように、図3や図4に示す半導体デバイスのような被検体1の場合には、繰り返し周期をもつ開口パターンがあるため、X線透過画像には図5に示すようなモアレ縞が発生する場合がある。これに対して、上記光学検査装置1では、上記輝度倍増管12とカメラ13とを上記回転軸C2回りで同期回転させることで、検出器側(輝度倍増管12やカメラ13)での画素配列と被検体開口パターンとの相対的位置関係を変化させることができる。よって、上記のように上記輝度倍増管12とカメラ13とを上記回転軸C2回りで上記所定角度θ1ずつ回転させながらモアレ縞が発生していないかをチェックすることで、いずれどこかの位置(角度)でモアレ縞が消滅することになる。モアレ縞が消滅する原理については、上記特許文献3等に記載されているので、ここではこれ以上は説明しない。
【0030】
上記のようにX線透過装置にモアレ縞を生成させない機構を設けることで、異常発生部位を精度良く検出できる。
ここで、各開口パターン部からの透過X線は各々モアレ縞を生成するが、隣接する開口パターン部からのX線が作るモアレ縞がちょうど一周期ずれて重なるように開口パターンが配列されていると、モアレ縞が消滅することはない。つまり、上記特許文献3の図1に示すような、X線を被写体及び輝度倍増管(FPD)に対して垂直方向に照射する構成では、撮影対象が上記開口パターンを有する場合には、カメラ等を回転制御しても、モアレ縞が消滅しない場合もあり得る。
【0031】
例えば被検体1の表面に対して垂直の方向(回転軸C1)を基準軸とした場合、上記特許文献1の装置では被検体に対するX線照射方向及び検出器(FPD等)の回転軸は、基準軸と同一であった。つまり、X線は、被検体の上面に対して垂直に照射され、またその透過X線も検出器の検出面に対して垂直に入射することになる。この構成では、上記のようにモアレ縞が消滅しない場合もあり得る。
【0032】
これに対して、本例では図1に示すように、X線源11から被検体1の表面に照射するX線は、回転軸C1に対して所定角度(θ2とする)で入射する。つまり、被検体1の表面に対して垂直ではなく斜めに照射されるようになっている。また、上記の通り、回転軸C2は回転軸C1に対して所定角度θズレた軸であり、被検体1からの透過X線は回転軸C2に対してほぼ「θ2+θ」の角度で輝度倍増管12の表面(検出面)に入射することになる。つまり、X線は被検体1に斜めに入射して透過後に更に輝度倍増管12にも斜めに入射することになる。図1の構成例では、被検体1に対しては角度θ2、輝度倍増管12に対しては角度「θ2+θ」であるので、輝度倍増管12に対する角度の方が大きい。
【0033】
このように、X線を被検体1及び輝度倍増管12に対して斜めに照射する構成とすることにより、被検体1が上記の開口パターンを有する場合でも、隣接する開口パターン部からのX線が作るモアレ縞がちょうど一周期ずれて重なるような状態にはならず、輝度倍増管等を回転制御することで、モアレ縞が消滅する。尚、当該“斜め”の角度については特に言及しない。結果的にモアレ縞が消滅すればよいのであり、モアレ縞が消滅するように適宜角度を調整すればよい。
【0034】
以上説明したように、X線透過装置にモアレ縞を生成させない機構を設けることで、通常の外観検査装置では困難な異常発生部位の検出が可能となる。また、本検査装置は非破壊検査であり、SEM観察時のような治具固定や試料調整が不要となるため、検査時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本例の光学検査装置の構成例である。
【図2】図1の光学検査装置による処理フローチャート図である。
【図3】(a)、(b)は検査対象物の一例を示す図(その1)である。
【図4】(a)、(b)は検査対象物の一例を示す図(その2)である。
【図5】モアレ縞の一例である。
【符号の説明】
【0036】
1 被検体
2 レーザ照射器
3 光学像モニタ
4 形状計測制御部
5 回転ステージ
11 X線源
12 輝度倍増管
13 カメラ
14 画像処理合成装置
15 回転機構制御部
16 回転ステージ
17 回転ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対してX線を照射するX線源と、被検体を透過して得られる透過X線像を光学像として出力する輝度倍増管と、該輝度倍増管からの光学像を撮像するための検出器と、該検出器から出力される前記被検体の透過X線像の光学像を入力して、該光学像の画像処理を行う画像処理合成部からなる検査装置であって、
前記輝度倍増管と検出器とを同一の回転軸回りで回転させる回転機構と、該回転機構を制御して前記輝度倍増管と検出器とを同期回転させる回転機構制御部を有し、
前記画像処理合成部は、前記入力する光学像に基づいてモアレ縞の有無を判定し、モアレ縞無しと判定されるまで、前記回転機構制御部により前記輝度倍増管と検出器とを所定角度分回転させて再び前記透過X線像の光学像を入力して前記モアレ縞の有無を判定する処理を繰り返し実行することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記X線源から被検体に照射されるX線は、該被検体に対して斜めに照射され、該X線が被検体を透過してなる透過X線も前記輝度倍増管に対して斜めに照射されることを特徴とする請求項1記載の検査装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−122064(P2010−122064A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295967(P2008−295967)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】