説明

検知体位置検出システム

【課題】 検知体を検出空間内に導入した後に、検知体を取り除くことなく、キャリブレーションを行うことができる検知体位置検出システムを提供する。
【解決手段】 位置検出用磁界を発生する磁界発生部3と、共振磁界を発生する共振回路21と共振回路21の経路を接続または切断する外部信号型スイッチとを有する検知体5と、外部信号型スイッチの接続または切断を制御するスイッチ制御部7と、位置検出用磁界および共振磁界の少なくとも一方の磁界強度を検出する位置検出用磁界検出部9と、位置検出用磁界検出部9の検出信号に基づき、検知体5の位置および向きを算出する位置算出部11と、が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知体位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁界検出型の位置検出装置として、検知体内に配置されたLC共振回路に、磁界を供給することにより共振状態を作り出し、共振により新たに発生する磁界を複数の磁界センサによって取得し、取得した情報から検知体の位置や向きを検出するものが提案されている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)。
【0003】
上述の特許文献1に記載された技術の場合、センサが検出する磁界強度には、LC共振回路に向けて発生させた磁界であって、意図せずセンサに到達した磁界(環境磁界)の磁界強度と、LC共振回路が発生させた磁界であって、期待通りセンサに到達した磁界(共振磁界)の磁界強度の両方が含まれている。
【0004】
このように意図せずセンサに到達した環境磁界の磁界強度を除くため、検知体の位置を測定する前に、検知体の位置を検出することができる検出空間からLC共振回路を取り除いた状態で環境磁界の磁界強度を測定(キャリブレーション)している。その後、検出空間内にLC共振回路を導入した状態で、環境磁界および共振磁界の磁界強度を測定し、先のキャリブレーション時に測定した環境磁界の磁界強度との差分を取ることにより、環境磁界の磁界強度を除き、共振磁界の磁界強度を求めている。
このようにすることで、LC共振回路の作る共振磁界のみを取り出すことができ、検知体の位置を正確に算出することができた。
【特許文献1】特開2006−26391号公報
【非特許文献1】徳永、枦、薮上、河野、豊田、小澤、岡崎、新井著「LC共振型磁気マーカを用いた高精度位置検出システム」日本応用磁気学会誌、2005年、Vol.29、No.2、p.153−156
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の位置検出方法では、キャリブレーションを行った後に、検出空間内に検知体を導入した状態のまま、再びキャリブレーションができないという問題があった。
つまり、最初のキャリブレーション時に測定した環境磁界の磁界強度と、検知体の位置検出の際に使用される環境磁界の磁界強度との間に差が発生し、算出される検知体の位置に誤差が発生する場合があり、この誤差を解消するために再びキャリブレーションを行うことがある。このような場合に、上述の位置検出方法では、検出空間内に検知体を導入した状態のまま、環境磁界の強度のみを検出するキャリブレーションを行うことができないという問題があった。
【0006】
上述のように再びキャリブレーションを行う必要がある場合としては、検知体を検出空間内に導入した後に、環境磁界が予期せず変化する場合が挙げられる。具体的には、位置検出装置の温度ドリフトによる環境磁界の経時的変化や、位置検出装置自体の機構的なズレによる環境磁界の変化などが挙げられる。
【0007】
また、検知体を検出空間から回収して、再びキャリブレーションを行うことができる場合であっても、検知体の導入や回収をする際に、位置検出装置により算出された位置情報が用いられることが多い。すると、再びキャリブレーションを行う前の誤差を含んだ位置情報に基づいて検知体を回収することになるため、検知体の回収の際に問題が発生する可能性があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、検知体を検出空間内に導入した後に、検知体を取り除くことなく、キャリブレーションを行うことができる検知体位置検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明は、所定周波数の交番信号を生成する位置検出用信号発生部と、前記交番信号に基づいて位置検出用磁界を発生する位置検出用磁界発生部とを有する磁界発生部と、共振回路を形成するコイルおよびキャパシタと、外部からの信号に基づき前記共振回路の経路を接続または切断する外部信号型スイッチとを有し、前記位置検出用磁界を受けた前記共振回路に流れた電流により共振を起こして共振磁界を発生する検知体と、前記外部信号型スイッチの接続または切断を制御する切り替え信号を生成する切り替え信号生成部と、生成された切り替え信号を物理エネルギに変換して前記外部信号型スイッチへ送信する切り替え信号送信部と、を有するスイッチ制御部と、前記位置検出用磁界および共振磁界の磁界強度を検出する位置検出用磁界検出部と、該位置検出用磁界検出部の検出信号に基づき、前記検知体の位置および向きを算出する位置算出部と、前記位置検出用磁界検出部の検出信号を記憶するメモリと、前記位置検出用磁界検出部の検出信号を、前記位置検出用磁界のみを検出した検出信号と、前記位置検出用磁界および前記共振磁界を検出した検出信号と、に分けて前記メモリに記憶させる位置検出制御部と、が設けられた検知体位置検出システムを提供する。
【0010】
本発明によれば、共振回路における外部信号型スイッチの接続または切断を制御することで、共振回路に位置検出用磁界が印加された状態において、共振磁界の発生が制御される。つまり、共振回路に誘起される共振電流を制御することにより、共振回路からの共振磁界の発生が制御される。
【0011】
外部信号型スイッチは、検知体外部のスイッチ制御部から送信された物理エネルギにより、共振回路の経路を接続または切断する。そのため、共振回路からの共振磁界の発生は、外部から制御される。そして、共振回路を接続または切断する切り替え操作前の位置検出用磁界検出部により取得された磁界強度と、切り替え操作後に取得された磁界強度との差分に基づき、上記共振磁界のみの磁界強度が算出される。
【0012】
例えば、メモリには切り替え操作前に取得された位置検出用磁界のみの磁界強度に係る検出信号が記憶され、切り替え操作後に取得された位置検出用磁界および共振磁界の磁界強度との差分を求める際に、切り替え操作前に取得された磁界強度に係る検出信号はメモリから読み出され、上記共振磁界のみの磁界強度が算出される。切り替え操作前に取得された磁界強度が、上記共振磁界の磁界強度を含まない場合には、切り替え操作前に取得された磁界強度は、メモリのキャリブレーション領域に記憶される。一方、切り替え操作前に取得された磁界強度が、上記共振磁界の磁界強度をも含む場合には、切り替え操作前に取得された磁界強度は、メモリの計測値領域に記憶される。
ただし、必ずしも過去のキャリブレーションデータ(キャリブレーション領域に記憶された磁界強度)を消す必要はなく、メモリに記録として残しても構わない。
【0013】
位置検出用磁界検出部により取得された磁界強度に、上記共振磁界の磁界強度が含まれるか否かは、切り替え信号生成部から出力された切り替え信号に基づいて、位置検出制御部が判断する。また、位置検出制御部は、キャリブレーション領域に記憶される磁界強度に係る検出信号が、常に最新のデータになるようにキャリブレーション領域の過去の検出信号の上に最新の検出信号を上書き保存する。
【0014】
上記発明においては、前記外部信号型スイッチが、磁界に変換された切り替え信号を受けて前記共振回路の経路を接続または切断することが望ましい。
本発明によれば、外部信号型スイッチは、検知体外部のスイッチ制御部から送信された磁界により、共振回路の経路を接続または切断する。磁界以外の物理エネルギ、例えば光や音により外部信号型スイッチの接続または切断を制御する方法と比較して、外部信号型スイッチが確実に制御される。
【0015】
本発明は、所定周波数の交番信号を生成する位置検出用信号発生部と、前記交番信号に基づいて位置検出用磁界を発生する位置検出用磁界発生部とを有する磁界発生部と、共振回路を形成するコイルおよびキャパシタと、内部の信号に基づき前記共振回路の経路を接続または切断する内部信号型スイッチとを有し、前記位置検出用磁界を受けた前記共振回路に流れた電流により共振を起こして共振磁界を発生する検知体と、該検知体内部に設けられ、前記内部信号型スイッチの接続または切断を制御する切り替え信号を生成する切り替え信号生成部を有するスイッチ制御部と、前記位置検出用磁界の磁界強度を検出する位置検出用磁界検出部と、該位置検出用磁界検出部の検出信号に基づき、前記検知体の位置および向きを算出する位置算出部と、前記検出信号のレベル変化を検出し、前記切り替え信号を抽出する切り替え信号抽出部と、前記位置検出用磁界検出部の検出信号に基づき、前記検知体の位置および向きを算出する位置算出部と、前記位置検出用磁界検出部の検出信号を記憶するメモリと、前記位置検出用磁界検出部の検出信号を、前記位置検出用磁界のみを検出した検出信号と、前記位置検出用磁界および前記共振磁界を検出した検出信号と、に分けて前記メモリに記憶させる位置検出制御部と、が設けられた検知体位置検出システムを提供する。
【0016】
本発明によれば、共振回路における内部信号型スイッチの接続または切断を制御することで、共振回路に位置検出用磁界が印加された状態において、共振磁界の発生が制御される。つまり、共振回路に誘起される共振電流を制御することにより、共振回路からの共振磁界の発生が制御される。
【0017】
内部信号型スイッチは、検知体内部のスイッチ制御部から出力された切り替え信号に基づき、共振回路の経路を接続または切断する。そのため、共振回路からの共振磁界の発生は、検知体の内部で自律的に制御される。そして、共振回路を接続または切断する切り替え操作前の位置検出用磁界検出部により取得された磁界強度と、切り替え操作後に取得された磁界強度との差分に基づき、上記共振磁界のみの磁界強度が算出される。
【0018】
位置検出用磁界検出部により取得された磁界強度に、上記共振磁界の磁界強度が含まれるか否かは、切り替え信号抽出部により抽出された切り替え信号に基づいて、位置検出制御部が判断する。つまり、位置検出用磁界検出部の出力レベルは共振回路の切断により変化するため、切り替え信号抽出部により共振回路の切断が検出される。
このように、検知体内部に切り替えの主導権を持たせるとともに、検知体外部において、同期を取るように構成した場合でも、検知体位置検出システムは成立する。
【0019】
上記発明においては、前記位置検出制御部が、前記位置検出用信号発生部を制御することが望ましい。
本発明によれば、位置検出用磁界発生部から発生される位置検出用磁界の磁界強度や周波数などが位置検出制御部により制御される。そのため、位置検出用磁界の磁界強度などを制御しない場合と比較して、位置検出用磁界検出部に検出できる共振磁界を、検出体の共振回路から確実に発生させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の検知体位置検出システムによれば、共振回路における外部信号型スイッチの接続または切断を制御することで、共振回路に位置検出用磁界が印加された状態において、共振磁界の発生が制御されるため、検知体を検出空間内に導入した後に、検知体を取り除くことなく、キャリブレーションを行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の位置検出システムに係る第1の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
位置検出システム(検知体位置検出システム)1は、図1に示すように、検知体5の位置を検出するための交番磁界を発生させる磁界発生部(検出用磁界発生部)3と、位置検出用磁界を受けて共振磁界を発生する検知体5と、検知体5からの共振磁界の発生を制御するスイッチ制御部7と、位置検出用磁界、または、位置検出用磁界および共振磁界の磁界強度を検出する位置検出用磁界検出部9と、位置検出用磁界検出部9の検出信号に基づき、検知体5の位置および向きを算出する位置算出部11と、検出信号を記憶するメモリ13と、後述する位置検出用信号発生部17や位置算出部11やメモリ13などを制御する位置検出制御部15と、を備えている。
【0022】
磁界発生部3には、交番信号を生成する位置検出用信号発生部17と、交番信号に基づいて位置検出用磁界を発生する位置検出用磁界発生部19とが設けられている。
位置検出用信号発生部17により生成される交番信号は、例えば交流電流であって、その周波数は、後述する検知体5の共振回路21の共振周波数と略一致する周波数であることが好ましい。また、位置検出用信号発生部には、位置検出制御部から制御信号が入力され、例えば交番信号の周波数や振幅値などが制御されている。
【0023】
位置検出用磁界発生部19は、供給された交番信号に基づいて、交番磁界である位置検出用磁界を発生するものであり、例えばコイルにより構成されたものを例示できる。また、位置検出用磁界発生部19は、検知体5の検出空間Sの全域にわたって位置検出用磁界を形成するように配置されている。本実施形態においては、位置検出用磁界発生部19が1つ配置された例に適用して説明するが、位置検出用磁界発生部19が検出空間Sの周囲に複数配置されていてもよく、特に限定するものではない。
【0024】
図2は、図1の検知体の構成の概略を説明する図である。
検知体5としては、被験者等の体内に投入され医療行為を行なうカプセル医療装置などを例示することができる。
検知体5には、図2に示すように、位置検出用磁界を受けて共振磁界を発生する共振回路21が供えられ、共振回路21には直列共振回路を構成するコイル23およびキャパシタ25と、共振回路21の経路を接続および切断する外部信号型スイッチ27とが設けられている。
共振回路21は、コイル23およびキャパシタ25により定まる共振周波数と略一致する周波数を有する位置検出用磁界を受けて、共振磁界を発生するものである。
【0025】
外部信号型スイッチ27は、後述する切り替え信号送信部31により形成された切り替え磁界により共振回路21を接続(ON)または切断(OFF)するものであって、例えば磁気リードスイッチが例示される。外部信号型スイッチ27は、切り替え磁界の磁界強度がスイッチ毎に規定される値を超えた場合にOFFするように構成されている。
【0026】
スイッチ制御部7は、図1に示すように、外部信号型スイッチ27(図2参照。)のONまたはOFFを制御する切り替え信号を生成する切り替え信号生成部29と、切り替え信号に基づいて切り替え磁界を発生させる切り替え信号送信部31とが設けられている。
切り替え信号生成部29により生成される切り替え信号は、HighおよびLowの2種類である。切り替え信号がHighの時には外部信号型スイッチ27はOFFされ、Lowの時には外部信号型スイッチ27はONされる。切り替え信号は、上述のように切り替え信号送信部31に出力されるとともに、位置検出制御部15にも出力されて検知体5の位置の算出等にも用いられる。
【0027】
図3は、図1の切り替え信号送信部の構成の概略を説明する図である。
切り替え信号送信部31は、切り替え信号に基づいて切り替え磁界を発生させるものであって、図3に示すように、送信コイル33およびアンプ35から構成された閉回路を備えるものである。送信コイル33には、切り替え信号に基づいてアンプ35から電流が流れるように構成されている。また、切り替え信号送信部31は、検出空間Sの全域にわたって切り替え磁界が形成されるように配置されている。本実施形態においては、切り替え信号送信部31が1つ配置された例に適用して説明するが、検出空間Sの周囲に複数配置されていてもよく、特に限定するものではない。
【0028】
位置検出用磁界検出部9は、図1に示すように、複数の検出コイル37から構成され、各検出コイル37は位置検出制御部15と電気的に接続されている。検出コイル37はそれぞれ位置検出用磁界のみ(キャリブレーション時)の磁界強度、または、位置検出用磁界および共振磁界(位置測定時)の磁界強度を受けて、磁界強度に応じた検出信号を出力する。
【0029】
位置算出部11は、キャリブレーション時の位置検出用磁界検出部9の検出信号と、位置測定時の位置検出用磁界検出部9の検出信号と、に基づいて検知体5の位置および向きを算出するものである。
なお、キャリブレーション時の位置検出用磁界検出部9の検出信号および位置測定時の位置検出用磁界検出部9の検出信号は、位置検出制御部15を介して位置算出部11に入力されている。
【0030】
メモリ13には、キャリブレーション時の位置検出用磁界検出部9の検出信号を記憶するキャリブレーション領域(図示せず)と、位置測定時の位置検出用磁界検出部9の検出信号を記憶する計測値領域(図示せず)とが形成されている。
なお、キャリブレーション時の位置検出用磁界検出部9の検出信号および位置測定時の位置検出用磁界検出部9の検出信号は、位置検出制御部15の指示に従い、キャリブレーション領域または計測値領域に記憶される。
【0031】
位置検出制御部15は、位置検出用信号発生部が生成する交番信号の周波数や振幅値を制御する制御信号を生成するものである。また、切り替え信号生成部29により生成される切り替え信号に基づいて、位置検出用磁界検出部9の検出信号が、キャリブレーション時または位置測定時の検出信号かを判別するものである。
【0032】
次に、上記の構成からなる位置検出システム1におけるキャリブレーション方法および位置検出方法について説明する。
【0033】
まず、図1に示すように、位置検出システム1の検出空間Sの内部に検知体5を導入する前に、キャリブレーションが行われる。
具体的には、交番信号が位置検出用信号発生部17から位置検出用磁界発生部19に入力され、位置検出用磁界発生部19から位置検出用磁界が発生される。発生された位置検出用磁界は、位置検出用磁界検出部9に検出され位置検出用磁界の磁界強度に応じた検出信号が出力される。検出信号は、位置検出制御部15を介して、メモリ13のキャリブレーション領域に記憶される。
【0034】
その後、検出空間Sに検知体5を導入し、検知体5の位置検出が行われる。
検知体5の位置検出時には、Lowの切り替え信号が切り替え信号生成部29から切り替え信号送信部31に入力される。切り替え信号がLowのときには、切り替え信号送信部31から切り替え磁界は発生されない。
同時に切り替え信号は位置検出制御部15にも入力される。これにより、検知体5の位置検出が行われていることが位置検出制御部15に認知される。
【0035】
なお、この切り替え信号がLowのときに切り替え信号送信部31を含む回路は切断されない。
通常、切り替え信号送信部31は、図3に示すように、送信コイル33とアンプ35とから構成され、アンプ35の低い出力インピーダンスにより閉回路を形成する。位置検出用の各磁界が送信コイル33を通過すれば、位置検出用の各磁界を打ち消す成分が発生する。例えば、切り替え信号により上記閉回路が形成されたり、されなかったりすれば、位置検出用磁界の環境が変わってしまう。
しかしながら、送信コイル33とアンプ35とからなる回路は切断されないため、位置検出用磁界の環境は変化しない。
【0036】
検知体5の共振回路21は、図2に示すように、外部信号型スイッチ27が接続しているため、位置検出用磁界を受けて、共振磁界を発生する。つまり、磁界発生部3から発生された共振回路21の共振周波数と略同一の周波数を有する交番磁界を受けて、共振回路21には共振電流が発生する。この共振電流により、共振回路21のコイル23から共振磁界が発生する。
【0037】
磁界発生部3から発生された位置検出用磁界と、共振回路21から発生された共振磁界は、位置検出用磁界検出部9の検出コイル37を通過することにより検出される。検出コイル37は、通過した磁界の磁界強度に応じた検出信号を位置検出制御部15に出力する。
位置検出制御部15は、この位置測定時に検出された検出信号を位置算出部11に出力するとともに、メモリ13からキャリブレーション時に検出された検出信号も位置算出部11に出力する。
位置算出部11は、入力された両検出信号に基づいて、共振磁界の磁界強度のみに係る検出信号を抽出する。抽出された検出信号は、検知体5の位置および向きの算出に用いられる。
【0038】
ここで、本実施形態の特徴である、検知体が作動範囲に導入された後のキャリブレーション方法を説明する。
検知体5の位置検出時に、再びキャリブレーションを行う必要性が発生した場合には、図1に示すように、スイッチ制御部7の切り替え信号生成部29からHighの切り替え信号が出力される。なお、Highの切り替え信号は同時に位置検出制御部15にも出力され、位置検出制御部15に再びキャリブレーションが行われたことが認識される。
【0039】
切り替え信号が入力された切り替え信号送信部31では、図3に示すように、アンプ35から送信コイル33に電流が供給され、送信コイル33から切り替え磁界が発生される。
切り替え磁界を受けた外部信号型スイッチは切断され、共振回路21も切断される。切断された共振回路21には共振電流が流れないため、位置検出用磁界が印加されても共振回路21から共振磁界は発生されない。
【0040】
図4は、図1の位置検出用磁界検出部からの検出信号の変化を示す模式図である。なお、図4における縦軸は電圧変化を表し、横軸は時間の経過を表すものである。
位置検出用磁界検出部9の検出コイル37には、磁界発生部3から発生された位置検出用磁界のみが通過し、位置検出用磁界の磁界強度に係る検出信号が出力される。図4には、キャリブレーション時(FC)における検出信号と、位置検出時(FD)における検出信号とが示されている。つまり、位置検出時(FD)においては、位置検出用磁界と共振磁界とが干渉して検出信号である電圧の振幅が小さくなり、キャリブレーション時(FC)においては、上述の干渉がなくなり検出信号である電圧の振幅が大きくなることが示されている。
【0041】
検出コイル37の検出信号は、位置検出制御部15を介してメモリ13のキャリブレーション領域に記憶される。このとき、前回のキャリブレーションにより取得された検出信号の上に、今回取得された検出信号が上書き記憶される。以後の検知体5の位置および向きの算出には、上書き記憶された検出信号が用いられる。
その後、Lowの切り替え信号が、再び切り替え信号生成部29から切り替え信号送信部31に入力され、検知体5の位置検出が行われる。
【0042】
上記の構成によれば、共振回路21における外部信号型スイッチ27の接続または切断を制御することで、共振回路21に位置検出用磁界が印加された状態において、共振磁界の発生が制御される。つまり、共振回路21に誘起される共振電流を制御することにより、共振回路21からの共振磁界の発生が制御される。そのため、検知体5を検出空間Sの内部に導入した後に、検知体5を取り除くことなく、キャリブレーションを行うことができる。
【0043】
外部信号型スイッチ27は、検知体5外部のスイッチ制御部7により発生された切り替え磁界により、共振回路21の経路を接続または切断する。そのため、共振回路21からの共振磁界の発生を、検知体5の外部から制御することができる。そのため、共振回路21を接続または切断する切り替え操作前の位置検出用磁界検出部9により取得された磁界強度と、切り替え操作後に取得された磁界強度との差分に基づき、上記共振磁界のみの磁界強度を算出することができ、検知体5の位置および向きを算出することができる。
【0044】
位置検出用磁界検出部9により取得された磁界強度に、上記共振磁界の磁界強度が含まれるか否かは、切り替え信号生成部29から出力された切り替え信号に基づいて、位置検出制御部15が判断できる。そのため、上記共振磁界のみの磁界強度を算出することができ、検知体5の位置および向きを算出することができる。
【0045】
外部信号型スイッチ27の切り替えタイミングは、切り替え信号生成部29により生成されているので、いつ、どちらに切り替えているかは容易に分かる。このため、切り替え信号がHigh(切り替え磁界が印加される)の時には、検出信号をキャリブレーション電圧としてとらえ、Lowの時には、検出信号を測定電圧として、両信号の差分を取れば、共振回路21の発生する磁界のみを取得することができる。そのため、検知体5の導入後でもキャリブレーションが可能となる。
【0046】
位置検出用磁界発生部19から発生される位置検出用磁界の磁界強度や周波数などが位置検出制御部15により制御されるため、位置検出用磁界の磁界強度などを制御しない場合と比較して、位置検出用磁界検出部9に検出できる共振磁界を、検知体5の共振回路21から確実に発生させることができる。
【0047】
上述の実施形態においては、外部信号型スイッチ27は切り替え磁界が有するエネルギに直接反応するものに適用して説明したが、その他のエネルギに反応するものでもよい。例えば、光や音などが有するエネルギに反応するスイッチであってもよく、特に限定するものではない。
【0048】
なお、実際には、検出空間Sの内部にコイルを形成する銅や、検知体5を構成する磁性体が存在する可能性もあり、完全な環境磁界を測定したことにはならないが、共振現象を使った磁界放射を捕らえているため、磁界強度が高く実用上のS/Nは十分に保たれる。そのため、検知体5を検出空間Sから取り除くことなく、キャリブレーションを行ったこととすることができる。
【0049】
なお、上述の実施形態においては、本発明を検知体の位置および向きを検出するのみの位置検出システムに適用して説明したが、さらに磁界により検知体の姿勢制御を行う位置検出誘導システムに適用することもできる。
例えば、特許文献1に記載されているように、検知体の内部に永久磁石等を搭載し、外部から磁界を印加することで、検知体の姿勢を制御するようにしてもよい。
【0050】
このような構成とした場合、共振回路のONまたはOFFを制御する切り替え磁界として、検知体の姿勢を制御する磁界よりも周波数の高い磁界を用いることが望ましい。このような磁界を用いることで、姿勢制御用の磁界により、共振回路が誤ってONまたはOFFされることが防止される。また、検知体は、切り替え磁界のように周波数の高い磁界の変化には追従できないため、検知体の姿勢が切り替え磁界により乱されない。
具体的には、周波数の高い切り替え信号を検出する回路を追加して、この回路の出力で外部信号型スイッチを駆動するようにすればよい。そのほかにも、切り替え磁界の発生パターンを決めて、それ以外の磁界には反応しない回路を付加してもよい。
【0051】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図5から図10を参照して説明する。
本実施形態の位置検出システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、共振磁界の制御方法が異なっている。よって、本実施形態においては、図5から図10を用いて共振磁界の制御方法のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
【0052】
位置検出システム(検知体位置検出システム)101は、図5に示すように、検知体105の位置を検出する交番磁界を発生させる磁界発生部3と、位置検出用磁界を受けて共振磁界を発生する検知体105と、位置検出用磁界、または、位置検出用磁界および共振磁界の磁界強度を検出する位置検出用磁界検出部9と、位置検出用磁界検出部9の検出信号に基づき、検知体105の位置および向きを算出する位置算出部11と、検出信号のレベル変化を検出し、検出信号から切り替え信号を抽出する切り替え信号抽出部112と、検出信号を記憶するメモリ13と、位置算出部11やメモリ13などを制御する位置検出制御部115と、を備えている。
【0053】
図6は、図5の検知体の構成の概略を説明する図である。
検知体105としては、被験者等の体内に投入され医療行為を行なうカプセル医療装置などを例示することができる。
検知体105には、図6に示すように、位置検出用磁界を受けて共振磁界を発生する共振回路121が供えられ、共振回路121には直列共振回路を構成するコイル23およびキャパシタ25と、共振回路121の経路を接続および切断する内部信号型スイッチ127と、内部信号型スイッチ127を切り替える切り替え信号生成部(スイッチ制御部)129が設けられている。
【0054】
共振回路121は、コイル23およびキャパシタ25により定まる共振周波数と略一致する周波数を有する位置検出用磁界を受けて、共振磁界を発生するものである。
切り替え信号生成部129は、独自のタイミングでHighおよびLowの切り替え信号を交互に出力するものであり、内部信号型スイッチ127は、切り替え信号に基づいて接続または切断される。
【0055】
図7は、図5の切り替え信号抽出部により抽出された切り替え信号を説明する図である。
切り替え信号抽出部112は、位置検出用磁界検出部9から出力される検出信号の振幅の変化(レベルの変化)に基づいて、図7に示すように、切り替え信号生成部129から出力された切り替え信号を抽出するものである。つまり、切り替え信号抽出部112は、位置検出用磁界検出部9の検出信号の振幅が大きい部分と、振幅が小さい部分とを抽出し、位置検出制御部115は振幅が大きい部分ではキャリブレーションが行われ、振幅が小さい部分では検知体105の位置検出が行われていると判断している。
【0056】
次に、本実施形態における位置検出システム101の特徴である、検知体が作動範囲に導入された後のキャリブレーション方法を説明する。なお、本実施形態におけるキャリブレーション方法および位置検出方法については、第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0057】
検知体105は起動されると、図6に示すように、切り替え信号生成部129から所定のタイミングで、Highの切り替え信号およびLowの切り替え信号が交互にされる。これらの切り替え信号は内部信号型スイッチ127に入力され、共振回路121をONまたはOFFする。OFFされた共振回路からは、位置検出用磁界が印加されても共振磁界は発生されない。
【0058】
位置検出用磁界検出部9の検出コイル37には、磁界発生部3から発生された位置検出用磁界のみが通過する状態と、位置検出用磁界および共振磁界が通過する状態と、が交互に繰り返される。検出コイル37からは、そのときに通過する磁界の状態に合わせて2つ異なる検出信号が交互に出力される(図4参照。)。
【0059】
両検出信号は、切り替え信号抽出部112と、位置検出制御部115とに入力される。
切り替え信号抽出部112は、図7に示すように、入力された検出信号の振幅の変化から切り替え信号を抽出し、抽出した切り替え信号を位置検出制御部115に出力する。
位置検出制御部115は、切り替え信号に基づいて、入力された検出信号が、キャリブレーション時に検出されたものか、位置検出時に検出されたものかを判別する。そして、キャリブレーション時に検出された検出信号は、メモリ13のキャリブレーション領域に記憶させ、位置検出時に検出された検出信号は、計測値領域に記憶させる。
このとき、前回のキャリブレーションにより取得された検出信号の上に、今回取得された検出信号が上書き記憶される。以後の検知体105の位置および向きの算出には、上書き記憶された検出信号が用いられる。
【0060】
上記の構成によれば、共振回路121における内部信号型スイッチ127の接続または切断を制御することで、共振回路121に位置検出用磁界が印加された状態において、共振磁界の発生が制御される。つまり、共振回路121に誘起される共振電流を制御することにより、共振回路121からの共振磁界の発生が制御される。そのため、検知体105を検出空間Sの内部に導入した後に、検知体105を取り除くことなく、キャリブレーションを行うことができる。
【0061】
内部信号型スイッチ127は、検知体105の内部の切り替え信号生成部129から出力された切り替え信号に基づき、共振回路121の経路を接続または切断する。そのため、共振回路121からの共振磁界の発生を、検知体105の内部で自律的に制御することができる。そして、共振回路121を接続または切断する切り替え操作前の位置検出用磁界検出部9により取得された磁界強度と、切り替え操作後に取得された磁界強度との差分に基づき、上記共振磁界のみの磁界強度を算出することができ、検知体105の位置および向きを算出することができる。
【0062】
位置検出用磁界検出部9により取得された磁界強度に、上記共振磁界の磁界強度が含まれるか否かは、切り替え信号抽出部112により抽出された切り替え信号に基づいて、位置検出制御部115が判断することができる。つまり、位置検出用磁界検出部9の検出信号の振幅は共振回路121の切断により変化するため、切り替え信号抽出部112により共振回路121の切断が検出される。
このように、検知体105の内部に切り替えの主導権を持たせるとともに、検知体105の外部において、同期を取るように構成した場合でも、検知体105の位置検出システムは成立する。
【0063】
なお、位置検出用磁界検出部9に検出された共振磁界の検出信号の出力(振幅等)が大きければ、常に内部信号型スイッチ127の切り替えタイミングを検出してもよいし、出力が非常に微小なレベル(振幅が小さいなど)のため連続的な制御により同期(切り替えタイミングの追従)が不完全となる場合には、最初の一度だけ、または、間欠的に同期をとる構成としてもよい。例えば、検知体105を検出空間Sに導入する際に、同期を確立させる方法が例示される。
【0064】
図8は、図5の位置検出制御部の別の実施例に係る構成を説明する図である。
または、位置検出制御部にも、切り替え信号生成部129と同じ時間間隔で発振する回路を設け、一度または任意の時点で、図8に示すような、PLL(Phase Locked Loop)140を形成させてもよい。なお、PLL140としては、一般的なものを用いることができ、特に限定するものではない。
PLL140は、タイミング抽出部141と、分周部142と、位相比較部143と、チャージポンプ部144と、LPF(Low Pass Filter)145と、電圧保持部146と、VCO(電圧制御発振器)147と、ロック検出部149とを備えている。
PLL140において、LPF145の出力を一時的に保持、もしくは、同じ電圧を持つ電圧現に切り替える構成とすることで、本実施形態に適用させることができる。
【0065】
図9は、図8のPLLの部分の構成を説明する図である。図10は、図9の構成とは別の構成を説明する図である。
また、PLL140の内部発振器がVCO147であり、この出力に対してタイミング抽出部141の信号と位相比較をかけることで、VCO147を同期させられるが、図9および図10に示すように、一度ロックがかかった後にLPF145とVCO147との間を切断することにより、ロックしていたときの電圧を保持することができる。
【0066】
なお、検知体105が外部との通信機能を有する場合には、切り替えの信号をその通信信号に重畳して送信させれば、直接的に切り替えタイミングを知ることもできる。
【0067】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図11および図12を参照して説明する。
本実施形態の位置検出システムの基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、キャリブレーションと位置計測との判別方法が異なっている。よって、本実施形態においては、図11および図12を用いてキャリブレーションと位置計測との判別方法のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図11は、本実施形態における位置検出システムの概略を説明するブロック図である。
なお、第2の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
位置検出システム(検知体位置検出システム)201は、図11に示すように、カプセル内視鏡である検知体205と、検知体205により撮像された画像を処理する体外装置206と、検知体205の位置を算出する位置検出装置208とを備えている。
【0069】
検知体205には、検知体205の外部の映像を撮像する撮像部210と、撮像領域を照明する照明部214と、撮像された撮像データを変換処理する検知体側信号処理部216と、変換処理された撮像データを無線信号として体外装置206に送信する送信部218および検知体側アンテナ220と、撮像データの垂直同期信号にあたるタイミングで切り替え信号を生成する切り替え信号生成部(スイッチ制御部)229と、共振回路121と、撮像部210、照明部214、検知体側信号処理部216、送信部218および切り替え信号生成部229を制御する撮像制御部222と、が備えられている。
【0070】
体外装置206には、検知体205から送信された無線信号を受信するとともに、復調処理する体外装置側アンテナ224および受信部226と、復調された信号から撮像データを抜き出す体外装置側信号処理部228と、復号された信号から同期信号を抜き出す同期処理部230と、が備えられている。
【0071】
位置検出装置208には、体外装置から同期信号が入力される切り替え信号抽出部212と、位置検出磁界、または、位置検出磁界および共振磁界を検出する位置検出用磁界検出部9と、検出信号を記憶するメモリ13と、検知体の位置および向きを算出する位置算出部11と、位置検出用信号発生部17や位置算出部11やメモリ13などを制御する位置検出制御部215と、交番信号を生成する位置検出用信号発生部17と、交番信号に基づいて位置検出用磁界を発生する位置検出用磁界発生部19と、が備えられている。
【0072】
次に、本実施形態における位置検出システム201の特徴である、検知体が作動範囲に導入された後のキャリブレーション方法を説明する。なお、本実施形態におけるキャリブレーション方法および位置検出方法については、第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0073】
検知体205は起動されると、図11に示すように、撮像制御部222が作るタイミングに従って、照明部214により撮像領域が照明され、撮像部210により映像が撮像される。撮像された撮像データは、検知体側信号処理部216において送信部218から送信可能なデータ形式に変換される。例えば、データ圧縮や、誤り訂正符号付加や、変調などの変換処理が行われる。
一方、切り替え信号生成部229は、撮像制御部222が作るタイミングに従って、切り替え信号を生成し、共振回路121をONまたはOFFさせる。
ここで、撮像制御部が作るタイミングとしては、映像の垂直同期信号のタイミングを例示することができる。
【0074】
送信部218から送信された無線信号は体外装置側アンテナ224により受信され、受信部226により復調処理される。復調された信号は、同期処理部230と体外装置側信号処理部228に入力される。同期処理部230では、復調された信号から同期信号(本実施形態においては映像の垂直同期信号)が抜き出され、同期信号は体外装置側信号処理部228と切り替え信号抽出部212に入力される。体外装置側信号処理部228では、同期信号に基づいて、復号された信号から撮像データが抜き出される。
【0075】
切り替え信号抽出部212では、入力された同期信号から切り替え信号を抽出し、切り替え信号を位置検出制御部215に入力する。位置検出制御部215では、入力された切り替え信号に基づいて、キャリブレーションと検知体205の位置検出との切り替わりを検出する。
【0076】
なお、位置検出制御部215におけるキャリブレーションと、検知体205の位置検出との区別は、切り替わり前後における位置検出用磁界検出部9の検出信号の差分により判別される。つまり、図4に示すように、検知体205の位置検出時における位置検出用磁界検出部9の検出信号の振幅値が、キャリブレーション時における検出信号の振幅値より小さい場合には、検知体205の位置検出時における差分値は負の値となり、キャリブレーション時における差分値は正の値となる。この違いにより、キャリブレーションと、検知体205の位置検出との区別が可能となる。
【0077】
また、撮像データの変復調による時間ずれにより、検知体の位置検出との間に時間差が発生する。そのため、その時間差を規定値として織り込み、同期を取ることが望ましい。
【0078】
図12は、図11の位置検出システムの変形例の概略を説明するブロック図である。
なお、上述の実施形態のように、撮像データの垂直同期信号によって、キャリブレーションと、検知体205の検出との切り替えを検出してもよいし、図12に示すように、検知体の切り替え信号生成部により生成された切り替え信号を、撮像データに重畳して送信し、この切り替え信号によって切り替えを検出してもよく、特に限定するものではない。
【0079】
以下に、切り替え信号を撮像データに重畳して送信する変形例を、図12を参照しながら説明する。
なお、第3の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
位置検出システム(検知体位置検出システム)301は、図12に示すように、カプセル内視鏡である検知体305と、検知体305により撮像された画像を処理する体外装置306と、検知体305の位置を算出する位置検出装置308とを備えている。
【0081】
検知体305には、撮像部210と、照明部214と、検知体側信号処理部216と、変換処理された撮像データと、切り替え信号とを重畳させるデータ合成部317と、重畳された信号を無線信号として体外装置306に送信する送信部218および検知体側アンテナ220と、切り替え信号生成部229と、共振回路121と、撮像部210、照明部214、検知体側信号処理部216、送信部218および切り替え信号生成部229を制御する撮像制御部222と、が備えられている。
【0082】
体外装置306には、検知体から送信された無線信号を受信するとともに、復調処理する体外装置側アンテナ224および受信部226と、復調された信号から撮像データを抜き出す体外装置側信号処理部228と、復号された信号から切り替え信号を抜き出す同期処理部330と、が備えられている。
【0083】
位置検出装置308には、位置検出用磁界検出部9と、メモリ13と、位置算出部11と、位置検出用信号発生部17や位置算出部11やメモリ13などを制御する位置検出制御部315と、位置検出用信号発生部17と、位置検出用磁界発生部19と、が備えられている。
【0084】
次に、本実施形態における位置検出システム301の特徴である、検知体が作動範囲に導入された後のキャリブレーション方法を説明する。なお、本実施形態におけるキャリブレーション方法および位置検出方法については、第1の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0085】
検知体305は起動されると、第2の実施形態と同様に、撮像部により撮像が行われ、撮像データは送信可能なデータ形式に変換される。
一方、切り替え信号生成部229は、撮像制御部222が作るタイミングに従って、切り替え信号を生成し、共振回路121をONまたはOFFさせるとともに、切り替え信号をデータ合成部317に入力させる。
【0086】
データ合成部317は、変換された撮像データに切り替え信号を重畳させた信号を生成し、生成された信号は、送信部218から無線信号として送信される。合成方法としては、データフォーマットとしてその並び方が規定されている。
【0087】
送信部218から送信された無線信号は体外装置側アンテナ224により受信され、受信部226により復調処理される。復調された信号は、同期処理部330と体外装置側信号処理部228に入力される。同期処理部330では、復調された信号から切り替え信号が抜き出され、切り替え信号は体外装置側信号処理部228に入力される。体外装置側信号処理部228では、切り替え信号に基づいて、復号された信号から撮像データが抜き出される。また、体外装置側信号処理部228から切り替え信号が位置検出制御部315に入力される。
【0088】
位置検出制御部315では、入力された切り替え信号に基づいて、キャリブレーションと検知体305の位置検出との切り替わりを検出する。
本変形例においては、第3の実施形態と異なり、切り替え信号に基づいてキャリブレーションと、検知体305の位置検出との区別がなされるため、切り替わり前後における位置検出用磁界検出部9の検出信号の差分による判別はされない。
【0089】
また、本変形例においても、第3の実施形態と同様に、撮像データの変復調による時間ずれにより、検知体の位置検出との間に時間差が発生する。そのため、その時間差を規定値として織り込み、同期を取ることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
【図2】図1の検知体の構成の概略を説明する図である。
【図3】図1の切り替え信号送信部の構成の概略を説明する図である。
【図4】図1の位置検出用磁界検出部からの検出信号の変化を示す模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る位置検出装置の概略を説明する模式図である。
【図6】図5の検知体の構成の概略を説明する図である。
【図7】図5の切り替え信号抽出部により抽出された切り替え信号を説明する図である。
【図8】図5の位置検出制御部の別の実施例に係る構成を説明する図である。
【図9】図8のPLLの部分の構成を説明する図である。
【図10】図9の構成とは別の構成を説明する図である。
【図11】本発明の第3の実施形態における位置検出システムの概略を説明するブロック図である。
【図12】図11の位置検出システムの変形例の概略を説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0091】
1,101,201,301 位置検出システム(検知体位置検出システム)
3 磁界発生部(検出用磁界発生部)
5,105,205,305 検知体
7 スイッチ制御部
9 位置検出用磁界検出部
11 位置算出部
13 メモリ
15,115,215 位置検出制御部
17 位置検出用信号発生部
19 位置検出用磁界発生部
21,121 共振回路
23 コイル
27 外部信号型スイッチ
29,229 切り替え信号生成部
31 切り替え信号送信部
112 切り替え信号抽出部
127 内部信号型スイッチ
129 切り替え信号生成部(スイッチ制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の交番信号を生成する位置検出用信号発生部と、前記交番信号に基づいて位置検出用磁界を発生する位置検出用磁界発生部とを有する磁界発生部と、
共振回路を形成するコイルおよびキャパシタと、外部からの信号に基づき前記共振回路の経路を接続または切断する外部信号型スイッチとを有し、前記位置検出用磁界を受けた前記共振回路に流れた電流により共振を起こして共振磁界を発生する検知体と、
前記外部信号型スイッチの接続または切断を制御する切り替え信号を生成する切り替え信号生成部と、生成された切り替え信号を物理エネルギに変換して前記外部信号型スイッチへ送信する切り替え信号送信部と、を有するスイッチ制御部と、
前記位置検出用磁界および共振磁界の磁界強度を検出する位置検出用磁界検出部と、
該位置検出用磁界検出部の検出信号に基づき、前記検知体の位置および向きを算出する位置算出部と、
前記位置検出用磁界検出部の検出信号を記憶するメモリと、
前記位置検出用磁界検出部の検出信号を、前記位置検出用磁界のみを検出した検出信号と、前記位置検出用磁界および前記共振磁界を検出した検出信号と、に分けて前記メモリに記憶させる位置検出制御部と、
が設けられた検知体位置検出システム。
【請求項2】
前記外部信号型スイッチが、磁界に変換された切り替え信号を受けて前記共振回路の経路を接続または切断する請求項1記載の検知体位置検出システム。
【請求項3】
所定周波数の交番信号を生成する位置検出用信号発生部と、前記交番信号に基づいて位置検出用磁界を発生する位置検出用磁界発生部とを有する磁界発生部と、
共振回路を形成するコイルおよびキャパシタと、内部の信号に基づき前記共振回路の経路を接続または切断する内部信号型スイッチとを有し、前記位置検出用磁界を受けた前記共振回路に流れた電流により共振を起こして共振磁界を発生する検知体と、
該検知体内部に設けられ、前記内部信号型スイッチの接続または切断を制御する切り替え信号を生成する切り替え信号生成部を有するスイッチ制御部と、
前記位置検出用磁界の磁界強度を検出する位置検出用磁界検出部と、
該位置検出用磁界検出部の検出信号に基づき、前記検知体の位置および向きを算出する位置算出部と、
前記検出信号のレベル変化を検出し、前記切り替え信号を抽出する切り替え信号抽出部と、
前記位置検出用磁界検出部の検出信号に基づき、前記検知体の位置および向きを算出する位置算出部と、
前記位置検出用磁界検出部の検出信号を記憶するメモリと、
前記位置検出用磁界検出部の検出信号を、前記位置検出用磁界のみを検出した検出信号と、前記位置検出用磁界および前記共振磁界を検出した検出信号と、に分けて前記メモリに記憶させる位置検出制御部と、
が設けられた検知体位置検出システム。
【請求項4】
前記位置検出制御部が、前記位置検出用信号発生部を制御する請求項1から4のいずれかに記載の検知体位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−79913(P2008−79913A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264614(P2006−264614)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】