説明

極端紫外光生成装置

【課題】ターゲットの位置安定性を改善する。
【解決手段】極端紫外光生成装置は、レーザ装置から出力されるレーザ光をターゲット物質に照射してターゲット物質をプラズマ化することにより極端紫外光を生成する。この装置は、(i)電気伝導性を有する構造部材を含み、レーザ光を導入する貫通孔が形成されたチャンバ2と、(ii)液体ターゲット物質の帯電ターゲットを生成し、チャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて帯電ターゲットを供給するターゲット生成器26であって、帯電ターゲットが通過する貫通孔が形成された電極と、電極を保持する電気絶縁部材と、少なくとも電気絶縁部材とプラズマ生成領域25との間に配置され、帯電ターゲットが通過する貫通孔が形成された遮蔽部材とを含み、遮蔽部材が電気伝導性を有してチャンバ2の構造部材に電気的に接続されているターゲット生成器26とを備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外(EUV)光を生成するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成する極端紫外光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflective optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
極端紫外光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma:レーザ励起プラズマ)式の装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)式の装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7067832号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成装置は、レーザ装置から出力されるレーザ光をターゲット物質に照射してターゲット物質をプラズマ化することにより極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、(i)電気伝導性を有する構造部材を含み、レーザ光を導入する貫通孔が形成されたチャンバと、(ii)液体ターゲット物質の帯電ターゲットを生成し、チャンバ内部のプラズマ生成領域に向けて帯電ターゲットを供給するターゲット生成器であって、帯電ターゲットが通過する貫通孔が形成された電極と、電極を保持する電気絶縁部材と、少なくとも電気絶縁部材とプラズマ生成領域との間に配置され、帯電ターゲットが通過する貫通孔が形成された遮蔽部材とを含み、遮蔽部材が電気伝導性を有してチャンバの構造部材に電気的に接続されているターゲット生成器とを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、例示的なLPP式のEUV光生成装置の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る極端紫外光生成装置の構成を示す一部断面図である。
【図3A】図3Aは、図2に示すターゲット生成器及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示すターゲット生成器の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】図4は、第2の実施形態に係る極端紫外光生成装置のターゲット生成器及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図5】図5は、第1又は第2の実施形態におけるパルス電圧生成器の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】図6は、第3の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット生成器及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図7】図7は、図6に示すターゲット生成器の第1の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】図8は、図6に示すターゲット生成器の第2の動作例を説明するためのタイミングチャートである。
【図9A】図9Aは、碍子構造を有する電気絶縁部材を用いるターゲット生成器の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに示すターゲット生成器の一部の底面図である。
【図9C】図9Cは、図9Aに示す電気絶縁部材の碍子構造のバリエーションを示す断面図である。
【図10】図10は、第4の実施形態に係る極端紫外光生成装置のターゲット生成器及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図11】図11は、第5の実施形態に係る極端紫外光生成装置の構成の一部を示す一部断面図である。
【図12】図12は、第6の実施形態に係る極端紫外光生成装置の構成の一部を示す一部断面図である。
【図13】図13は、第7の実施形態に係る極端紫外光生成装置のターゲット生成器の一部及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図14】図14は、第7の実施形態の第1の変形例に係る極端紫外光生成装置のターゲット生成器の一部を示す断面図である。
【図15】図15は、第7の実施形態の第2の変形例に係る極端紫外光生成装置のターゲット生成器の一部及びその周辺部を示す一部断面図である。
【図16A】図16Aは、第8の実施形態に係る極端紫外光生成装置の構成の一部を示す一部断面図である。
【図16B】図16Bは、図16Aに示すターゲット生成器の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図17】図17は、帯電ターゲットの検出に用いられるターゲットセンサの構成例を示す図である。
【図18】図18は、偏向電極によるターゲットの方向制御を説明するための図である。
【実施形態】
【0007】
<内容>
1.概要
2.用語の説明
3.極端紫外光生成装置の全体説明
3.1 構成
3.2 動作
4.静電引出し型のターゲット生成器が搭載されたチャンバ
4.1 構成
4.2 動作
5.静電引出し型のターゲット生成器
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用
6.ターゲット生成器の第2の実施形態
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用
7.パルス電圧生成器の動作タイミングチャート
8.ターゲット生成器の第3の実施形態
8.1 構成
8.2 動作
9.電気絶縁部材の構造
10.遮蔽容器に封入されたターゲット生成器
10.1 構成
10.2 動作
10.3 作用
11.ターゲット軌道近傍の部材が基準電位に接続された実施形態
12.ターゲット回収器に電極が設置された実施形態
13.遮蔽部材に加熱手段が追加された実施形態
14.コンティニュアスジェット方式のターゲット生成器
14.1 構成
14.2 動作
14.3 作用
15.補足説明
15.1 磁気回路による帯電ターゲットの検出
15.2 偏向電極によるターゲットの方向制御
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
1.概要
露光装置等の光源として用いられるLPP式のEUV光生成装置は、所定の位置において安定してEUV光を生成することが求められる。EUV光が生成される位置は、ターゲットが供給される位置と、ターゲットにレーザ光が照射される位置とによって定まる。従って、ターゲット生成器から出力されるターゲットの位置安定性が重要となる。ターゲットの供給位置を制御するために、ターゲットを帯電させて、電場又は磁場によって帯電ターゲットの軌道を制御することも行われている。
【0010】
しかしながら、帯電ターゲットにレーザ光が照射されるとターゲットがプラズマ化し、プラズマから荷電粒子(イオンや電子)を含むデブリが飛散して、チャンバ内の電気絶縁性を有する構造物に荷電粒子が付着して帯電する場合がある。これによって、帯電ターゲットの軌道上の電位分布(電場)が変化し、帯電ターゲットが供給される位置が不安定になることがある。幾つかの実施形態においては、ターゲット生成器の電気絶縁部材を荷電粒子から遮蔽する導電性遮蔽部材が、チャンバの導電性構造部材に電気的に接続されてもよい。従って、帯電ターゲットの軌道上における電位分布の変化を抑制することができてもよい。その結果、帯電ターゲットの安定性が改善されてもよい。
【0011】
2.用語の説明
本願において使用される幾つかの用語を以下に説明する。「チャンバ」は、LPP式のEUV光生成装置において、プラズマの生成が行われる空間を外部から隔絶するための容器である。「ターゲット生成器」は、EUV光を生成するために用いられるターゲットを生成してチャンバ内に出力する装置である。ターゲットは、ドロップレットの形態であってよい。「EUV集光ミラー」は、プラズマから放射されるEUV光を反射集光してチャンバ外に出力するためのミラーである。「デブリ」は、チャンバ内に出力されたターゲットのうちプラズマ化されなかった中性粒子及びプラズマから放出される荷電粒子を含み、EUV集光ミラー等の光学素子を汚染又は損傷する原因となる物質である。
【0012】
3.極端紫外光生成装置の全体説明
3.1 構成
図1に、例示的なLPP式のEUV光生成装置(極端紫外光生成装置)1の概略構成を示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザシステム3と共に用いてもよい。以下においては、EUV光生成装置1及びレーザシステム3を含むシステムを、EUV光生成システム(極端紫外光生成システム)11と称する。図1に示し、かつ、以下に詳細に説明するように、EUV光生成装置1は、チャンバ2を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。また、EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置(例えば、ターゲット生成器26)をさらに含んでもよい。ターゲット供給装置は、例えば、チャンバ2の壁を貫通するように取り付けられていてもよい。ターゲット供給装置から供給されるターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0013】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔には、ウインドウ21が設けられていてもよく、ウインドウ21をレーザシステム3から出力されて進行方向制御装置34を経たレーザ光32が透過してもよい。チャンバ2の内部には、例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1の焦点及び第2の焦点を有する。EUV集光ミラー23の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点が、プラズマ発生位置又はその近傍(プラズマ生成領域25)に位置し、その第2の焦点が、外部装置(例えば、露光装置6)の仕様によって規定される所定の集光位置(中間集光点(IF)292)に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には、レーザ光33が通過することができる貫通孔24が設けられていてもよい。
【0014】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御システム5を含んでもよい。また、EUV光生成装置1は、ターゲットセンサ4を含んでもよい。ターゲットセンサ4は、ターゲットの存在、軌道、位置の内の少なくとも1つを検出してもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有していてもよい。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部と露光装置6の内部とを連通する接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャ(aperture)が形成された壁291を設けてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されてもよい。
【0016】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するターゲット回収器28等を含んでもよい。レーザ光進行方向制御装置34は、レーザ光の進行方向を制御するために、レーザ光の進行方向を規定する光学素子と、この光学素子の位置または姿勢を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0017】
3.2 動作
図1を参照すると、レーザシステム3から出力されたレーザ光31は、レーザ光進行方向制御装置34を経て、レーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射してもよい。レーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内に進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、レーザ光33として少なくとも1つのターゲット27に照射されてもよい。レーザ光集光ミラー22は、レーザ光の集光位置を規定する光学素子と、この光学素子の位置または姿勢を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0018】
ターゲット生成器26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力してもよい。ターゲット27には、レーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスが照射されてもよい。レーザ光が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光251が放射されてもよい。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって反射され集光されてもよい。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光252は、中間集光点292を通って露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのターゲット27に、レーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0019】
EUV光生成制御システム5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括してもよい。EUV光生成制御システム5は、ターゲットセンサ4によって撮像されたターゲット27のイメージデータ等を処理してもよい。また、EUV光生成制御システム5は、例えば、ターゲット27を出力するタイミングの制御及びターゲット27の出力方向の制御の内の少なくとも1つを行ってもよい。さらに、EUV光生成制御システム5は、例えば、レーザシステム3によるレーザ発振タイミングの制御、進行方向制御装置34によるレーザ光32の進行方向の制御、及び、レーザ光集光ミラー22によるレーザ光33の集光位置の制御の内の少なくとも1つを行ってもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御を追加することもできる。
【0020】
4.静電引出し型のターゲット生成器が搭載されたチャンバ
4.1 構成
図2は、第1の実施形態に係るEUV光生成装置の構成を示す一部断面図である。図2に示すように、チャンバ2の内部には、レーザ光集光光学系22aと、EUV集光ミラー23と、ターゲット回収器28と、EUV集光ミラーホルダ41と、プレート42及び43と、レーザダンパ44と、レーザダンパ支持部材45とが設けられてもよい。
【0021】
チャンバ2は、電気伝導率が高い材料(例えば、金属材料)からなり電気伝導性を有する構造部材(導電性構造部材)を含んでいてもよい。さらに、チャンバ2は、電気絶縁性を有する構造部材(絶縁性構造部材)を含んでもよい。その場合には、例えば、チャンバ2の外壁が導電性構造部材で構成され、外壁の内側に絶縁性構造部材が配置されるようにしてもよい。チャンバ2には、プレート42が固定され、プレート42には、プレート43が固定されてもよい。EUV集光ミラー23は、EUV集光ミラーホルダ41を介してプレート42に固定されてもよい。
【0022】
レーザ光集光光学系22aは、軸外放物面ミラー221と、平面ミラー222と、それらのミラーのホルダとを含んでもよい。軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222は、それぞれのホルダを介してプレート43に固定されてもよい。軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222の設置位置及び角度は、レーザ光がプラズマ生成領域25に集光するように調節されてもよい。レーザダンパ44は、レーザダンパ支持部材45を介してチャンバ2に固定され、レーザ光の光路上に設置されてもよい。ターゲット回収器28は、プラズマ生成領域25のターゲット進行方向下流側(図中下側)において、ターゲットの軌道上に設置されてもよい。
【0023】
チャンバ2には、ウインドウ21と、静電引出し型のターゲット生成器26とが取り付けられてもよい。ターゲット生成器26の詳細については後で説明する。ターゲット物質としては、導電性を有する液体金属等が用いられてもよいが、各実施形態においては、融点が232℃であるスズ(Sn)が用いられる場合を一例として説明する。
【0024】
チャンバ2の外部には、ビームデリバリーシステム34aと、EUV光生成制御システム5とが設けられてもよい。ビームデリバリーシステム34aは、高反射ミラー341及び342と、それらのミラーのホルダ(図示せず)と、ホルダが配置される筐体(図示せず)とを含んでもよい。EUV光生成制御システム5は、EUV光生成制御装置51と、ターゲット制御装置52と、圧力調節器53と、不活性ガスボンベ54と、パルス電圧生成器55とを含んでもよい。
【0025】
4.2 動作
ターゲット生成器26は、帯電ターゲットを生成し、チャンバ2内部のプラズマ生成領域25に帯電ターゲットを供給してもよい。また、レーザシステム3から出力されるレーザ光は、ビームデリバリーシステム34aの高反射ミラー341及び342によって反射されて、ウインドウ21を介してレーザ光集光光学系22aに入射してもよい。レーザ光集光光学系22aに入射したレーザ光は、軸外放物面ミラー221及び平面ミラー222によって集光ビームとして反射されてもよい。
【0026】
EUV光生成制御装置51は、ターゲット制御装置52にターゲット出力信号を出力し、レーザシステム3にレーザ光出力信号を出力してもよい。これにより、ターゲット生成器26から出力されたターゲットがプラズマ生成領域25に到達すると、レーザ光の集光ビームがターゲットに照射され、ターゲットがプラズマ化して、EUV光が放射される。放射されたEUV光は、EUV集光ミラー23によってIF(中間集光点)292に集光されて、露光装置に入射してもよい。なお、レーザシステム3から出力されるレーザ光は、パルスレーザ光であってもよい。
【0027】
5.静電引出し型のターゲット生成器
5.1 構成
図3Aは、図2に示すターゲット生成器及びその周辺部を示す一部断面図である。図3Bは、図3Aに示すターゲット生成器の一部を拡大して示す拡大断面図である。図3Aに示すように、ターゲット生成器26は、リザーバ(ターゲット貯蔵部)61と、ノズル(ターゲット放出部)62と、電極63と、ヒータ64と、電気絶縁部材65と、引出電極66と、遮蔽板67とを含んでもよい。リザーバ61及びノズル62は、一体的に形成されてもよいし、別個に形成されてもよい。
【0028】
リザーバ61は、合成石英又はアルミナ等の電気絶縁体であってもよい。リザーバ61は、溶融したスズ(液体ターゲット物質)を貯蔵してノズル62に供給してもよい。ヒータ64は、リザーバ61の周りに取り付けられて、ターゲット物質であるスズが溶融状態を維持するようリザーバ61を加熱してもよい。また、ヒータ64は、リザーバ61の温度を検出するための図示しない温度センサ、ヒータ64に加熱用の電流を供給するヒータ電源、及び、温度センサによって検出された温度に基づいてヒータ電源を制御する温度制御器と共に用いられてもよい。
【0029】
ノズル62は、チャンバ内のプラズマ生成領域に向けて液体ターゲット物質をターゲットとして放出してもよい。図3Bに示すように、ノズル62には、リザーバ61に貯蔵された液体ターゲット物質を放出するための貫通孔(オリフィス)が形成されていてもよい。また、ノズル62は、液体ターゲット物質に電界を集中させるために、出口側の面から突き出た先端部を有してもよい。
【0030】
ノズル62には、引出電極66及び遮蔽板67を保持する電気絶縁部材65が取り付けられてもよい。電気絶縁部材65は、ノズル62と引出電極66との間を電気的に絶縁すると共に、引出電極66と遮蔽板67と間を電気的に絶縁してもよい。引出電極66は、ノズル62のオリフィスから液体ターゲット物質を引き出すために、ノズル62の出口側の面に対向して配置されてもよい。電気絶縁部材65、引出電極66、及び、遮蔽板67の各々には、帯電ターゲット27を通過させるために一部に貫通孔が形成されていてもよい。
【0031】
圧力調節器53は、必要に応じて、不活性ガスボンベ54から供給される不活性ガスの圧力を利用して、液体ターゲット物質をノズル62の先端まで押し出すようにしてもよい。ターゲット制御装置52は、EUV光生成制御装置51(図2)から与えられるタイミングでターゲット27が生成されるように、圧力調節器53及びパルス電圧生成器55を制御してもよい。
【0032】
パルス電圧生成器55の一方の出力端子に接続された配線は、リザーバ61に設けられた気密端子(フィードスルー)を介して、液体ターゲット物質に接触している電極63に接続されていてもよい。また、パルス電圧生成器55の他方の出力端子に接続された配線は、引出電極66に接続されていてもよい。パルス電圧生成器55は、ターゲット制御装置52の制御の下で、液体ターゲット物質を引き出してターゲットを生成するための電圧信号を生成してもよい。これにより、液体ターゲット物質と基準電位との間に与える電圧信号V1、及び/又は、引出電極66と基準電位との間に与える電圧信号V2が生成されてもよい。
【0033】
例えば、パルス電圧生成器55は、基準電位(0V)よりも高い電位P1を生成し、基準電位と電位P1との間でパルス状に変化する電圧信号を生成してもよい。その場合には、生成された電圧信号が電極63を介して液体ターゲット物質と基準電位との間に印加されると共に、基準電位が引出電極66に与えられてもよい。
【0034】
あるいは、パルス電圧生成器55は、基準電位(0V)よりも高い電位P1と、電位P1よりも高い電位P2とを生成し、電位P1と電位P2との間でパルス状に変化する電圧信号を生成してもよい。その場合には、生成された電圧信号が電極63を介して液体ターゲット物質と基準電位との間に印加されると共に、電位P1が引出電極66に与えられてもよい。
【0035】
これにより、液体ターゲット物質の電位が電圧信号V1に従って変化し、引出電極66の電位が電圧信号V2に従って一定電位に維持されてもよい。このため、液体ターゲット物質と引出電極66との間に、電圧(V2−V1)が印加されてもよい。あるいは、リザーバ61又はノズル62が電気伝導性を有する材料で形成されている場合には、パルス電圧生成器55は、リザーバ61又はノズル62と引出電極66と間に電圧(V2−V1)を印加してもよい。
【0036】
遮蔽板67は、少なくとも電気絶縁部材65とプラズマ生成領域25との間に配置されてもよい。遮蔽板67は、ターゲット27が通過する貫通孔が形成された遮蔽部材であってもよい。遮蔽板67は、プラズマ生成領域25において生成されるプラズマから放出される荷電粒子から電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物を遮蔽してもよい。
【0037】
ここで、遮蔽板67は、電気伝導性を有する材料(例えば、金属材料)を含むことにより電気伝導性を有してもよく、ワイヤ等の導電性接続部材によって、チャンバ2の導電性構造部材(例えば、外壁)に電気的に接続されていてもよい。チャンバ2の導電性構造部材は、パルス電圧生成器55の基準電位(0V)に電気的に接続されてもよく、さらに、接地されるようにしてもよい。また、遮蔽板67には、遮蔽板67を冷却する熱媒体を循環させるための配管68が設置されてもよい。その場合には、配管68が図示しないチラーに接続されて、熱媒体が冷却されながら配管68内を循環するようにするとよい。
【0038】
5.2 動作
ターゲット生成器26は、オンデマンドでターゲットを生成する装置であってよい。ターゲットはドロップレットであってもよい。ヒータ64によって、スズ(Sn)が溶融する温度232℃以上の温度にリザーバ61が加熱されてもよい。これにより、リザーバ61の中に溶融したスズ(液体ターゲット物質)が貯蔵されていてもよい。
【0039】
また、ターゲット制御装置52が、パルス電圧生成器55にターゲット生成信号を出力してもよい。パルス電圧生成器55は、ターゲット生成信号に従って、電圧信号を液体ターゲット物質と引出電極66との間に与えてもよい。これによって、液体ターゲット物質と引出電極66との間に静電気力が発生してもよく、ノズル62の先端部から液体ターゲット物質が引き出されて、帯電ターゲットが生成されてもよい。ターゲット生成器から出力されたターゲットがプラズマ生成領域25に到達すると、レーザ光の集光ビームがターゲットに照射されてもよい。これにより、ターゲットがプラズマ化して、EUV光が放射され、イオンや電子を含む荷電粒子とが生成されてもよい。それらの荷電粒子の一部は、遮蔽板67に到達してもよい。
【0040】
5.3 作用
本実施形態によれば、ターゲット生成器26に設けられた遮蔽板67によって、プラズマから放出されたイオンや電子等の荷電粒子が電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物に到達するのを抑制することができてもよい。このため、電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物が荷電粒子によって帯電するのを抑制できてよい。また、遮蔽板67は基準電位に接続されているので、荷電粒子によって帯電しなくてよい。これにより、ターゲットの軌道上における電位分布(電場)の変化が抑制されてもよい。その結果、帯電ターゲットの位置安定性が改善されてもよい。
【0041】
6.ターゲット生成器の第2の実施形態
6.1 構成
図4は、第2の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット生成器及びその周辺部を示す一部断面図である。図4に示す第2の実施形態は、図3A及び図3Bに示す第1の実施形態に対して、以下の点が異なっていてもよい。ターゲット生成器26において、遮蔽板67が削除され、ターゲットが通過する貫通孔が形成された加速電極69及び遮蔽カバー81が追加されてもよい。加速電極69は、ワイヤ等の導電性接続部材によって、チャンバ2の導電性構造部材又はパルス電圧生成器55の基準電位(0V)に接続されてもよい。
【0042】
また、チャンバ2の内部において、遮蔽カバー81がチャンバ2の外壁に取り付けられていてもよい。遮蔽カバー81は、少なくとも電気絶縁部材65とプラズマ生成領域25との間に配置され、ターゲット27が通過する貫通孔が形成された遮蔽部材であってよい。遮蔽カバー81は、プラズマ生成領域25において生成されるプラズマから放出される荷電粒子から電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物を遮蔽してもよい。
【0043】
ここで、遮蔽カバー81は、電気伝導性を有する材料(例えば、金属材料)を含むことにより電気伝導性を有してもよく、ワイヤ等の導電性接続部材によって、又は、直接的に、チャンバ2の導電性構造部材(例えば、外壁)に電気的に接続されていてもよい。チャンバ2の導電性構造部材は、パルス電圧生成器55の基準電位(0V)に電気的に接続されていてもよく、さらに、接地されるようにしてもよい。遮蔽カバー81は、チャンバ2の内部において、少なくともリザーバ61、ノズル62、電気絶縁部材65、及び、引出電極66をカバーしてもよく、さらに、加速電極69をカバーするようにしてもよい。また、遮蔽カバー81には、遮蔽カバー81を冷却する熱媒体を循環させるための配管82が設けられていてもよい。その場合には、配管82がチラー83に接続されて、熱媒体が冷却されながら配管82内を循環するようにするとよい。
【0044】
リザーバ61は、電気絶縁性を有するフランジ84を介してチャンバ2に設置されてもよい。その場合には、リザーバ61は、モリブデン(Mo)金属等の電気伝導性を有する材料を含んでもよい。その他の点に関しては、第1の実施形態と同様であってよい。
【0045】
6.2 動作
引出電極66によって引き出されたターゲットは、加速電極69に基準電位(0V)を印加することよって、さらに加速されてもよい。加速されたターゲットは、加速電極69の貫通孔を通過して、遮蔽カバー81の貫通孔を通過してもよい。
【0046】
6.3 作用
本実施形態によれば、チャンバ2内に設けられた遮蔽カバー81によって、プラズマから放出されたイオンや電子等の荷電粒子が電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物に到達するのを抑制することができてもよい。遮蔽カバー81は基準電位に接続されているので、ターゲットの軌道上における電位分布(電場)の変化が抑制されてもよい。その結果、帯電ターゲットの位置安定性が改善されてもよい。
【0047】
さらに、遮蔽カバー81は、チャンバ2の内部において、ターゲット生成器26の主要な構成要素をカバーしてもよく、それらの構成要素の周囲に設置されている電気絶縁性を有する部材も荷電粒子から遮蔽されてもよい。遮蔽カバー81は、荷電粒子が回り込んでターゲット生成器26の電気絶縁部材65に付着することも抑制できてもよい。その結果、第1の実施形態と比較して、帯電ターゲットの軌道上における電位分布の変化をさらに抑制することが可能であってよい。
【0048】
7.パルス電圧生成器の動作タイミングチャート
図5は、第1又は第2の実施形態におけるパルス電圧生成器の動作例を説明するためのタイミングチャートである。図4を参照すると、パルス電圧生成器55は、液体ターゲット物質と基準電位との間に与える電圧信号V1、引出電極66と基準電位との間に与える電圧信号V2、及び、加速電極69が存在する場合には加速電極69と基準電位との間に与える電圧信号を、例えば、以下のように生成してもよい。
【0049】
パルス電圧生成器55は、電圧信号V2を、基準電位(0V)よりも高い電位P1(例えば、10kV)に維持してもよい。また、パルス電圧生成器55は、初期状態において、電圧信号V1を電位P1に保持しておいてもよい。帯電ターゲットを引き出す際に、パルス電圧生成器55は、電圧信号V1を、電位P1よりも高い電位P2(例えば、20kV)に上昇させてもよい。ただし、電圧(P2−P1)は、帯電ターゲットを引き出すための閾値以上であってよい。これによって、液体ターゲット物質と引出電極66との間の電圧(V1−V2)が閾値以上の正の値(P2−P1)となり、正に帯電したターゲットがノズル62から引き出されてもよい。
【0050】
帯電ターゲットが引出電極66の貫通孔を通過した後に、パルス電圧生成器55は、電圧信号V1を再び電位P1に戻してもよい。さらに、加速電極69と基準電位との間に与える電圧信号を、チャンバ2の電位と同一の基準電位(0V)に維持することによって、帯電ターゲットが加速されてもよい。ここで、電位P1及びP2は、次の関係を満たす。
0(チャンバの電位)<P1<P2
【0051】
この例においては、ターゲットを正に帯電させる場合について説明したが、この例に限定されることなく、ターゲットを負に帯電させてもよい。その場合には、電位P1及びP2は、次の関係を満たしてもよい。
P1<P2<0(チャンバの電位)
ただし、ノズル62の先端部が突出している場合には、ターゲットが負に帯電していると、ノズル62の先端部と引出電極66との間で放電が発生し易くなる。このため、ターゲットを正に帯電させることが好ましい。
【0052】
8.ターゲット生成器の第3の実施形態
8.1 構成
図6は、第3の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット生成器及びその周辺部を示す一部断面図である。図6に示す第3の実施形態は、図4に示す第2の実施形態に対して、以下の点が異なっていてもよい。即ち、液体ターゲット物質にDC(直流)電圧が印加され、引出電極66に電圧信号が印加されてもよい。そのために、液体ターゲット物質にDC電圧を印加するDC高圧電源95と、引出電極66に電圧信号を印加するパルス電圧生成器96とが設けられてもよい。
【0053】
リザーバ61は、導電性を有するモリブデン(Mo)等の金属材料で作製され、電気絶縁性を有するフランジ84を介してチャンバ2に設置されてもよい。また、DC高圧電源95は、リザーバ61を介して液体ターゲット物質にDC電圧を印加してもよい。その他の点に関しては、第2の実施形態と同様であってよい。加速電極69は、ワイヤ等の導電性接続部材によって、基準電位(0V)に接続されてもよい。
【0054】
8.2 動作
図7は、図6に示すターゲット生成器の第1の動作例を説明するためのタイミングチャートである。図6に示すDC高圧電源95及びパルス電圧生成器96は、液体ターゲット物質と基準電位との間に与える電圧信号V1、引出電極66と基準電位との間に与える電圧信号V2、及び、加速電極69と基準電位との間に与える電圧信号を、例えば、以下のように制御してもよい。
【0055】
DC高圧電源95は、電圧信号V1を、基準電位(0V)に対して、基準電位(0V)よりも高い電位P2(例えば、10kV)に維持し、電圧(P2−0V)としてもよい。また、パルス電圧生成器96は、初期状態において、電圧信号V2を、基準電位(0V)に対して、基準電位(0V)よりも高く電位P2以下である電位P1に保持して、電圧(P1−0V)としてもよい。帯電ターゲットを引き出す際に、パルス電圧生成器96は、電圧信号V2を、基準電位(0V)に低下させてもよい。このとき、電圧(P2−P1)は、帯電ターゲットを引き出すための閾値電圧よりも小さく、電圧(P2−0V)は、帯電ターゲットを引き出すための閾値電圧以上であるとよい。これによって、液体ターゲット物質と引出電極66との間の電圧(V1−V2)が、電圧(P2−P1)から電圧(P2−0V)となり、正に帯電したターゲットがノズル62から引き出されてもよい。
【0056】
帯電ターゲットが引出電極66の貫通孔を通過した後は、パルス電圧生成器96は、引出電極66の電圧信号V2を、再び、基準電位(0V)に対して電位P1だけ高い電圧(P1−0V)に戻してもよい。さらに、加速電極69と基準電位との間に与える電圧信号を、チャンバ2の電位と同一の基準電位(0V)に維持してもよい。その結果、帯電ターゲットが加速されてもよい。
【0057】
図8は、図6に示すターゲット生成器の第2の動作例を説明するためのタイミングチャートである。図6に示すDC高圧電源95及びパルス電圧生成器96は、液体ターゲット物質と基準電位との間に与える電圧信号V1、引出電極66と基準電位との間に与える電圧信号V2、及び、加速電極69と基準電位との間に与える電圧信号を、例えば、以下のように制御してもよい。
【0058】
DC高圧電源95は、電圧信号V1を、基準電位(0V)に対して、基準電位(0V)よりも高い電位P2(例えば、10kV)に維持して、電圧(P2−0V)としてもよい。また、パルス電圧生成器96は、初期状態において、電圧信号V2を、基準電位(0V)に対して、電位P2に保持し、電圧(P2−0V)としてもよい。帯電ターゲットを引き出す際に、パルス電圧生成器96は、電圧信号V2を、基準電位(0V)に対して、基準電位(0V)以上で電位P2よりも低い電位P1に低下させ、電圧(P1−0V)としてもよい。ただし、電圧(P2−P1)は、帯電ターゲットを引き出すための閾値以上であるものとしてもよい。これによって、液体ターゲット物質と引出電極66との間の電圧(V1−V2)が電圧(P2−P2)から(P2−P1)となり、正に帯電したターゲットがノズル62から引き出されてもよい。
【0059】
帯電ターゲットが引出電極66の貫通孔を通過した後は、パルス電圧生成器96は、電圧信号V2を、再び、電位P2に戻してもよい。さらに、加速電極69と基準電位との間に与える電圧信号を、チャンバ2の電位と同一の基準電位(0V)に維持してもよい。その結果、帯電ターゲットが加速されてもよい。
【0060】
9.電気絶縁部材の構造
以上の実施形態及び他の実施形態において、電気絶縁部材の構造として碍子構造を採用してもよい。
図9Aは、碍子構造を有する電気絶縁部材を用いるターゲット生成器の一部を拡大して示す拡大断面図である。図9Bは、図9Aに示すターゲット生成器の一部の底面図である。図9Aに示すように、ノズル62には、電気絶縁部材65aを介して引出電極66が取り付けられ、さらに、電気絶縁部材65bを介して加速電極69が取り付けられてもよい。
【0061】
電気絶縁部材65a及び65bは、アルミナセラミックス等の電気絶縁材料で作製され、側面に複数の襞が設けられた円筒形状を有してもよい。これにより、ノズル62と引出電極66との間の絶縁耐圧、及び、引出電極66と加速電極69との間の絶縁耐圧を高めることができてもよい。電気絶縁部材65a及び65bにおける襞の数は、図9Cに示すように2つ又は3つでもよいし、それ以外でもよい。また、引出電極66及び加速電極69に接続される配線は、絶縁耐圧を高めるために、テフロン被覆線97としてもよい(「テフロン」は登録商標)。
【0062】
図9Bに示すように、加速電極69は、ターゲットが通過する貫通孔が形成された円盤状の電極本体69aと、電極本体69aを支持する複数の支柱(ポール)69bとを含んでもよい。電極本体69a及び支柱69bは、モリブデン(Mo)等の金属材料で作製されてもよい。引出電極66の構造は、加速電極69の構造と同様でもよい。
【0063】
10.遮蔽容器に封入されたターゲット生成器
10.1 構成
図10は、第4の実施形態に係るEUV光生成装置のターゲット生成器及びその周辺部を示す一部断面図である。図10に示す第4の実施形態は、図4に示す第2の実施形態に対して、以下の点が異なっていてもよい。ターゲット生成器26の主要な構成要素が、遮蔽カバー85と、遮蔽カバー85に取り付けられた蓋86とによって構成される遮蔽容器に封入されていてもよい。
【0064】
遮蔽カバー85は、少なくとも電気絶縁部材65とプラズマ生成領域25との間に配置され、ターゲット27が通過する貫通孔が形成された遮蔽部材であってよい。遮蔽カバー85は、プラズマ生成領域25において生成されるプラズマから放出される荷電粒子から電気絶縁部材65等の電気的な絶縁物を遮蔽してよい。
【0065】
ここで、遮蔽カバー85は、電気伝導性を有する材料(例えば、金属材料)を含むことにより電気伝導性を有し、ワイヤ等の導電性接続部材によって、又は、直接的に、チャンバ2の導電性構造部材(例えば、外壁)に電気的に接続されていてもよい。チャンバ2の導電性構造部材は、パルス電圧生成器55の基準電位(0V)に電気的に接続されており、さらに、接地されるようにしてもよい。
【0066】
遮蔽容器は、少なくともリザーバ61、ノズル62、電気絶縁部材65、及び、引出電極66をカバーしており、さらに、加速電極69、ターゲットセンサ70、偏向電極71、及び、温度センサ72をカバーするようにしてもよい。また、遮蔽容器には、遮蔽カバー85を冷却する熱媒体を循環させるための配管87が設けられていてもよい。その場合には、配管87が継ぎ手88を介してチラー89に接続されて、配管87内を熱媒体が冷却されながら循環するようにするとよい。なお、配管87は、遮蔽カバー85の外側に設けられていてもよい。
【0067】
リザーバ61は、モリブデン(Mo)金属等の電気伝導体、シリコンカーバイト(SiC)等の半導体、又は、合成石英やアルミナ等の電気絶縁体で構成されてもよい。ノズル62も、同様に、モリブデン(Mo)金属等の電気伝導体、シリコンカーバイト(SiC)等の半導体、又は、合成石英やアルミナ等の電気絶縁体で構成されてもよい。
【0068】
リザーバ61は、蓋86を介して遮蔽カバー85に取り付けられていてもよい。蓋86の材料としては、例えば、ムライト等の電気絶縁材料を用いることができる。また、加速電極69のターゲット進行方向下流側(図中下側)に、ターゲットの通過を検出するためのターゲットセンサ70が配置されてもよい。さらに、ターゲットセンサ70の下流側に、ターゲットを偏向するための偏向電極71が配置されてもよい。その場合に、ターゲットセンサ70及び/又は偏向電極71は、電気絶縁部材65によって保持されるとよい。
【0069】
引出電極66の配線、ターゲットセンサ70の配線、及び、偏向電極71の配線は、蓋86に設けられた中継端子90aを介して、パルス電圧生成器55、ターゲット検出回路56、偏向電極電圧生成器57にそれぞれ接続されてもよい。加速電極69の配線は、遮蔽カバー85に電気的に接続されてもよいし、図示しない配線及び中継端子を介して、パルス電圧生成器55の基準電位(0V)に接続されてもよい。
【0070】
また、液体ターゲット物質に電圧信号を与える電極63の配線は、蓋86に設けられた中継端子90bを介して、パルス電圧生成器55に接続されてもよい。加熱用のヒータ64の配線及び温度センサ72の配線は、蓋86に設けられた中継端子90cを介して、ヒータ電源58及び温度制御器59にそれぞれ接続されてもよい。ターゲット制御装置52は、ターゲット検出回路56から出力されるターゲット通過信号を受信し、これに基づいて、圧力調節器53、パルス電圧生成器55、及び、偏向電極電圧生成器57を制御してもよい。その他の点に関しては、第2の実施形態と同様であってよい。
【0071】
10.2 動作
ヒータ電源58がヒータ64に電流を流すことによって、リザーバ61が加熱されてもよい。温度制御器59は、温度センサ72から出力される検出信号を受信し、ヒータ電源58がヒータ64に流す電流値を制御してもよい。リザーバ61の温度は、スズ(Sn)の融点(232℃)以上に制御されてもよい。
【0072】
ターゲット制御装置52は、パルス電圧生成器55にターゲット生成信号を出力してもよい。これにより、ノズル62から帯電ターゲットが出力されてもよい。ノズル62から出力された帯電ターゲットは、引出電極66の貫通孔及び加速電極69の貫通孔を通過してもよい。さらに、帯電ターゲットがターゲットセンサ70を通過すると、そのタイミングに同期して、ターゲットセンサ70に電流が流れてもよい。ターゲット検出回路56は、この電流を増幅してターゲット通過信号を生成してもよく、ターゲット制御装置52にターゲット通過信号を出力してもよい。ターゲット制御装置52は、ターゲットの出力時刻と、ターゲットの速度と、ノズル62からターゲットセンサ70までの距離と、ターゲットセンサ70のターゲット軌道に対する傾斜角度とが既知である場合には、ターゲット通過信号のタイミングに基づいて、ターゲットセンサ70の検出部におけるターゲットの通過位置を算出してもよい。ターゲット制御装置52は、このような演算を行うことにより、ターゲットの位置を検出するようにしてもよい。
【0073】
ターゲットセンサ70の下流側(図中下側)には、帯電ターゲットの軌道を偏向するための2対の偏向電極71が配置されていてもよい。ターゲットを偏向することが必要な場合には、ターゲット制御装置52が、各対の偏向電極71に与える電位差を制御する制御信号を偏向電極電圧生成器57に出力してもよい。ターゲットの偏向は、EUV光生成制御装置51からの制御信号、及び/又は、ターゲットの位置を検出して得られた信号に基づいて行われてもよい。なお、EUV光生成制御装置51とターゲット制御装置52との間では、種々の信号を送受信してもよい。
【0074】
2対の偏向電極71の間を通過したターゲットは、遮蔽カバー85の貫通孔を通過してもよい。ターゲットがプラズマ生成領域25に到達すると、レーザ光がターゲットに照射され、ターゲットがプラズマ化して、EUV光が放射されてもよい。プラズマからの輻射熱や、イオン及び電子等の荷電粒子に曝される遮蔽カバー85は、温度が上昇しないように、チラー89によって冷却された熱媒体が配管87を循環することによって冷却されてもよい。
【0075】
10.3 作用
本実施形態によれば、液体ターゲット物質を貯蔵するリザーバ61及びターゲットを放出するノズル62の周囲における電気的な絶縁物が、遮蔽容器によってカバーされてもよい。従って、遮蔽容器によって、電気的な絶縁物がイオンや電子等の荷電粒子に曝されることを抑制できてもよい。また、遮蔽容器の遮蔽カバー85は、基準電位に接続されているので、ターゲットの軌道上における電位分布(電場)の変化が抑制されてもよい。その結果、帯電ターゲットの位置安定性が改善されてもよい。
【0076】
11.ターゲット軌道近傍の部材が基準電位に接続された実施形態
図11は、第5の実施形態に係るEUV光生成装置の構成の一部を示す一部断面図である。図11に示す第5の実施形態においては、ターゲット軌道近傍の部材が、チャンバ2の電位と同一の基準電位(0V)に接続されてもよい。即ち、プラズマから飛散する荷電粒子から遮蔽することが困難な部材については、その部材を基準電位に接続することによって、その部材に付着した荷電粒子の電荷をチャンバ2等に放出するようにしてもよい。その他の点に関しては、他の実施形態と同様であってよい。
【0077】
図11に示すように、チャンバ2の内部には、レーザ光集光光学系22aと、EUV集光ミラー23と、ターゲット回収器28と、EUV集光ミラーホルダ41と、プレート42及び43と、レーザダンパ44と、レーザダンパ支持部材45とが設けられていてもよい。
【0078】
EUV集光ミラー23は、レーザ光をターゲットに照射することによって発生したプラズマから放射されるEUV光を反射して集光してもよい。ターゲット回収器28は、プラズマ化しなかったターゲットを回収してもよ。レーザダンパ44は、プラズマ生成領域25を通過したレーザ光を吸収してもよい。ここで、EUV集光ミラー23の基板、ターゲット回収器28、及び、レーザダンパ44の材料としては、金属材料又は電気伝導性を有するセラミック材料が望ましい。
【0079】
EUV集光ミラー23は、EUV集光ミラーホルダ41を介してプレート42に固定されてもよい。ターゲット回収器28は、プラズマ生成領域25のターゲット進行方向下流側(図中下側)において、ターゲットの軌道上に設置されてもよい。レーザダンパ44は、レーザダンパ支持部材45を介してチャンバ2に固定されてもよく、レーザ光の光路上に設置されてもよい。ここで、EUV集光ミラー23の基板、ターゲット回収器28、及び/又は、レーザダンパ44が、導電性ワイヤ等の接続部材を介して、チャンバ2の導電性構造部材(例えば、外壁)に電気的に接続されていてもよい。
【0080】
プラズマから放出された荷電粒子の一部は、ターゲット軌道の近傍に設置されているEUV集光ミラー23、ターゲット回収器28、及び/又は、レーザダンパ44に到達してもよい。しかしながら、EUV集光ミラー23、ターゲット回収器28、及び/又は、レーザダンパ44が基準電位に接続されているので、これらの部材が帯電するのを抑制できてもよい。そのため、ターゲットの軌道上における電場の変化が抑制され得る。その結果、帯電ターゲットの位置安定性が改善されてもよい。
【0081】
本実施形態においては、導電性ワイヤ等の接続部材によって、EUV集光ミラー23、ターゲット回収器28、及び/又は、レーザダンパ44が、チャンバ2の導電性構造部材に電気的に接続されていてもよい。しかしながら、これに限定されることなく、EUV集光ミラー23、ターゲット回収器28、及び/又は、レーザダンパ44は、電気伝導性の高い部材に接触するようにチャンバ2に固定されてもよい。例えば、EUV集光ミラーホルダ41及びプレート42を金属材料で構成することにより、EUV集光ミラー23が、EUV集光ミラーホルダ41及びプレート42を介して、チャンバ2の導電性構造部材に電気的に接続されてもよい。
【0082】
12.ターゲット回収器に電極が設置された実施形態
図12は、第6の実施形態に係る極端紫外光生成装置の構成の一部を示す一部断面図である。図12に示す第6の実施形態においては、ターゲット回収器28が、電気絶縁性を有する支持部材281と、電気伝導性を有する遮蔽板282と、受け電極283とを含んでもよい。受け電極283は、遮蔽板282及び接続端子284を介して、パルス電圧生成器55に接続されてもよい。
【0083】
パルス電圧生成器55は、液体ターゲット物質と基準電位との間に与える電圧信号V1を、基準電位(0V)と所定の電位P1(例えば、10kV)との間で変化させてもよい。また、パルス電圧生成器55は、引出電極66と基準電位との間に与える電圧信号V2を基準電位(0V)に維持し、受け電極283と基準電位との間に与える電圧信号V3を所定の電位P3(例えば、−10kV)に維持してもよい。ここで、電位P1及びP3は、次の関係を満たす。
P3<0(チャンバの電位)<P1
【0084】
例えば、筒形状を有するターゲット回収器28の中央部に、チャンバ2の電位よりも低い電位P3に維持された受け電極283を配置してもよい。受け電極283は、先端が尖った円錐形状を有してもよい。また、受け電極283は、支持部材281及び遮蔽板282を介して、チャンバ2に固定されてもよい。その場合には、支持部材281によって、受け電極283がチャンバ2から絶縁される。さらに、電気伝導性を有する遮蔽板282によって、プラズマから放射されるイオンや電子等の荷電粒子から支持部材281が保護される。なお、遮蔽板282も、チャンバ2の電位よりも低い電位P3に維持されてもよい。
【0085】
本実施形態によれば、静電気力によって、帯電ターゲットをターゲット回収器28に引き付けることができる。また、遮蔽板282が、支持部材281をイオンや電子等の荷電粒子から遮蔽するので、ターゲット軌道上における電場の変化を抑制することができる。
【0086】
この例においては、ターゲットを正に帯電させる場合について説明したが、この例に限定されることなく、ターゲットを負に帯電させてもよい。その場合には、電位P1及びP3は、次の関係を満たす。
P1<0(チャンバの電位)<P3
【0087】
13.遮蔽部材に加熱手段が追加された実施形態
図13は、第7の実施形態に係る極端紫外光生成装置のターゲット生成器の一部及びその周辺部を示す一部断面図である。図13に示す第7の実施形態においては、遮蔽部材(例えば、遮蔽板67)に加熱手段としてヒータ91が配置されてよく、ヒータ91に電力を供給するためにヒータ電源92が設けられてもよい。その他の点に関しては、他の実施形態と同様であってよい。なお、本実施形態においても、遮蔽板67は、チャンバの導電性構造部材(基準電位)に電気的に接続されていてもよい。
【0088】
図13に示すようなターゲット生成器において、引出電極66と遮蔽板67との間に付着したターゲット物質が、冷却されて固体の付着物となる場合がある。そのような場合には、付着物が、遮蔽板67の貫通孔を塞いで、ノズル62から出力されたターゲットを遮ってしまい、ターゲットがプラズマ生成領域25に向けて出力されなくなる可能性が高い。そこで、第7の実施形態においては、遮蔽板67にヒータ91を配置して、固体の付着物(ターゲット物質)を融点以上の温度に加熱することにより、ターゲット物質を溶融して落下させてもよい。
【0089】
そのために、ターゲット制御装置52の制御の下で、ヒータ電源92がヒータ91に電力を供給するようにしてもよい。例えば、ターゲット制御装置52は、EUV光生成制御装置51(図2)からターゲット出力信号が出力されているにも拘らずターゲットセンサ4(図1)でターゲットが検出されない場合に、ヒータ91に電力を供給するようにヒータ電源92を制御してもよい(メンテナンスモード)。
【0090】
図14は、第7の実施形態の第1の変形例に係る極端紫外光生成装置のターゲット生成器の一部を示す断面図である。図13に示す第7の実施形態においては、遮蔽板67の下面(ターゲット進行方向下流側)にヒータ91が配置されているが、図14に示す第1の変形例においては、遮蔽板67の上面(ターゲット進行方向上流側)にヒータ91が配置されてもよい。第1の変形例によれば、遮蔽板67が、プラズマからの輻射熱やプラズマから放出される荷電粒子からヒータ91を遮蔽することができてもよい。これにより、ヒータ91の寿命を長期化すると共に、ヒータ91における電位分布の変化を抑制することができてもよい。その他の点に関しては、第7の実施形態と同様であってよい。
【0091】
図15は、第7の実施形態の第2の変形例に係る極端紫外光生成装置のターゲット生成器の一部及びその周辺部を示す一部断面図である。図15に示す第2の変形例においては、遮蔽部材(例えば、遮蔽板67)に加熱手段として配置されている配管93に熱媒質を循環させて、固体の付着物(ターゲット物質)を融点以上の温度に加熱することにより、ターゲット物質を溶融して落下させてもよい。
【0092】
そのために、配管93には、熱媒質を加熱して配管93に循環させる熱媒質循環装置94が接続されていてもよい。熱媒質循環装置94は、ターゲット制御装置52の制御の下で、遮蔽板67を加熱する際に熱媒質を加熱して配管93に循環させてよく、遮蔽板67を冷却する際に熱媒質を冷却して配管93に循環させるようにしてもよい。その場合には、配管93が、加熱手段と冷却手段とを兼ねてもよい。その他の点に関しては、他の実施形態と同様であってよい。
【0093】
14.コンティニュアスジェット方式のターゲット生成器
14.1 構成
図16Aは、第8の実施形態に係るEUV光生成装置の構成の一部を示す一部断面図である。図16Bは、図16Aに示すターゲット生成器の一部を拡大して示す拡大断面図である。コンティニュアスジェット方式のターゲット生成器26aは、以下の点において静電引出し型のターゲット生成器26(図2等)と異なってもよい。
【0094】
図16A及び図16Bに示すように、ターゲット生成器26aのノズル62の先端部の近傍に、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)等を含む圧電素子を用いたアクチュエータ73が設置されていてもよい。アクチュエータ73は、駆動信号に従って、所定周期の振動をノズル62に加えてもよい。また、ノズル62のターゲット進行方向下流側(図中下側)に、ターゲットが通過するための貫通孔が形成された帯電電極75が設置されていてもよい。帯電電極75は、液体ターゲット物質のジェットの先端部がターゲットとして分離するときにターゲットを帯電させてもよい。アクチュエータ駆動回路77は、アクチュエータ73に駆動信号を供給してよく、帯電電極電源78は、帯電電極75に正又は負の電圧を印加してよい。
【0095】
ターゲット生成器26aは、リザーバ61と、ノズル62と、アクチュエータ73と、電気絶縁部材74と、帯電電極75と、遮蔽板76とを含んでもよい。ノズル62に取り付けられた電気絶縁部材74は、帯電電極75及び遮蔽板76を保持してもよい。帯電電極75及び遮蔽板76の各々は、ターゲットを通過させるために一部に貫通孔が形成されていてもよい。遮蔽板76は、電気伝導性を有する材料を含み、導電性ワイヤ等の接続部材によって、チャンバの導電性構造部材に電気的に接続されてもよい。その他の点に関しては、他の実施形態と同様であってよい。
【0096】
14.2 動作
ターゲット生成器26aに所定の圧力の不活性ガスを供給することによって、ノズル62から液体ターゲット物質のジェットが放出されてもよい。アクチュエータ73がノズル62を振動させると、液体ターゲット物質のジェットの先端部が周期的に分断されてターゲットが生成されてもよい。帯電電極75は、液体ターゲット物質のジェットがターゲットに変化する位置に配置されていてもよい。帯電電極75がターゲットに電界を作用させることによって、ターゲットが帯電してもよい。ここで、帯電電極75の電位を液体ターゲット物質の電位よりも高い電位に維持する場合には、ターゲットが負に帯電してもよい。一方、帯電電極75の電位を液体ターゲット物質の電位よりも低い電位に維持する場合には、ターゲットが正に帯電してもよい。帯電ターゲットは、遮蔽板76を通過して、プラズマ生成領域25に到達してもよい。
【0097】
14.3 作用
本実施形態によれば、ターゲット生成器26aに設けられた遮蔽板76によって、プラズマから放出されたイオンや電子等の荷電粒子が電気絶縁部材74等の電気的な絶縁物に到達するのを抑制することができてもよい。遮蔽板76は基準電位に接続されているので、ターゲットの軌道上における電場の変化が抑制されてもよい。その結果、帯電ターゲットの位置安定性が改善されてもよい。
【0098】
15.補足説明
15.1 磁気回路による帯電ターゲットの検出
図17は、帯電ターゲットの検出に用いられるターゲットセンサの構成例を示す図である。図17に示すように、閉ループを有する磁気回路を形成する磁気コア101にコイル102が巻き付けられ、コイル102の両端が電流計103に接続されている。電流計103は、2つの入力端子間に接続された抵抗104と、抵抗104の両端の電圧を計測する電圧計105とによって等価的に表される。ここで、帯電したターゲット27が磁気回路の閉ループ内を通過すると、アンペールの右ねじの法則に従って、磁気回路に磁場が発生し、ファラデーの電磁誘導の法則に従って、この磁場によりコイル102に起電力が発生して、コイル102に電流が流れる。この電流は、電流計103によって計測され、電流の流れるタイミングを検出することができる。
【0099】
磁気コア101の材料は、強磁性体であればよい。例えば、フェライト磁石、ネオジューム磁石、サマリュームコバルト磁石、又は、軟鉄等を用いることができる。ここで、磁気回路が小さくなるほど、コイル102に流れる電流が大きくなる。また、帯電ターゲットの電荷量が大きくなるほど、コイル102に流れる電流が大きくなる。
【0100】
ターゲット27が通過するタイミングを高精度に検出するためには、磁気コア101の大きさとして、幅Wが0.6mm程度で、長さLが0.85mm程度であることが望ましい。また、ターゲットの電荷量を大きくするために、静電引出し型のターゲット発生器を用いることが望ましい。
【0101】
図17に示す例においては、磁気コア101が長方形の形状を有しているが、この例に限定されることなく、磁気コア101は、円形、多角形、又は、楕円形等の形状を有してもよい。即ち、磁気回路が閉ループを有するように磁気コア101が構成されていればよい。そして、帯電ターゲットの軌道が磁気回路の閉ループと交差するように、磁気コア101を配置すればよい。このとき、磁気回路の閉ループと帯電ターゲットの軌道とが交差する角度を90度以外の角度とすると、帯電ターゲットの通過タイミングは、閉ループに対する帯電ターゲットの通過位置に相関する。即ち、ターゲット通過信号のタイミングに基づいて帯電ターゲットの通過位置を算出することができる。帯電ターゲットの通過位置は、帯電ターゲットの出力時刻と、帯電ターゲットの速度と、ノズル62からターゲットセンサ70までの距離と、ターゲットセンサ70の帯電ターゲット軌道に対する傾斜角度とを予め計測しておくことにより、簡単な計算から求めることができる。
【0102】
15.2 偏向電極によるターゲットの方向制御
図18は、偏向電極によるターゲットの方向制御を説明するための図である。ここでは、Z軸方向に移動している帯電ターゲットの移動方向を、偏向電極として一対の対向する平板電極を用いて、X軸方向の電界によって偏向させる場合について説明する。
【0103】
電荷Qを有するターゲットは、電界Eによって、次式で表されるクーロン力Fを電界方向に受ける。
F=QE
ここで、電界Eは、平板電極71aに与えられる電位Paと平板電極71bに与えられる電位Pbとの間の電位差(Pa−Pb)と、それらの電極間のギャップ長Gとによって、次式で表される。
E=(Pa−Pb)/G
【0104】
帯電したターゲットが初速度Vで電界中に入射すると、進行方向に直交する方向にクーロン力Fを受けることによって、帯電ターゲットの進行方向が偏向する。ターゲットは、Z軸方向速度成分Vz(Vz=V)でZ軸方向に移動しながら、クーロン力FによってX軸方向に加速される。
F=ma (m:ターゲットの質量、a:加速度)
このクーロン力は、電界中を移動している間中受け続ける。
【0105】
ターゲットが電界から脱出するときの速度Vは、Z軸方向速度成分VzとX軸方向速度成分Vxとによって、次式で表される。
V=(Vz+Vx1/2
電界から脱出したターゲットは、速度Vで移動して、レーザ光が照射されるレーザ光軸上の位置に到達する。同様に、Y軸方向に関しても、Y軸方向に一対の対向する平板電極を配置することによって、ターゲットの方向を制御することが可能である。
【0106】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0107】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0108】
1…EUV光生成装置、11…EUV光生成システム、2…チャンバ、21…ウインドウ、22…レーザ光集光ミラー、221…軸外放物面ミラー、222…平面ミラー、22a…レーザ光集光光学系、23…EUV集光ミラー、24…貫通孔、25…プラズマ生成領域、251、252…EUV光、26、26a…ターゲット生成器、27…ターゲット、28…ターゲット回収器、281…支持部材、282…遮蔽板、283…受け電極、284…接続端子、29…接続部、291…壁、292…中間集光点(IF)、3…レーザシステム、31〜33…レーザ光、34…レーザ光進行方向制御装置、341、342…高反射ミラー、34a…ビームデリバリーシステム、4…ターゲットセンサ、41…EUV集光ミラーホルダ、42、43…プレート、44…レーザダンパ、45…レーザダンパ支持部材、5…EUV光生成制御システム、51…EUV光生成制御装置、52…ターゲット制御装置、53…圧力調節器、54…不活性ガスボンベ、55…パルス電圧生成器、56…ターゲット検出回路、57…偏向電極電圧生成器、58…ヒータ電源、59…温度制御器、6…露光装置、61…リザーバ、62…ノズル、63…電極、64…ヒータ、65、65a、65b…電気絶縁部材、66…引出電極、67…遮蔽板、68…配管、69…加速電極、69a…電極本体、69b…支柱、70…ターゲットセンサ、71…偏向電極、71a、71b…平板電極、72…温度センサ、73…アクチュエータ、74…電気絶縁部材、75…帯電電極、76…遮蔽板、77…アクチュエータ駆動回路、78…帯電電極電源、81…遮蔽カバー、82…配管、83…チラー、84…フランジ、85…遮蔽カバー、86…蓋、87…配管、88…継ぎ手、89…チラー、90a、90b、90c…中継端子、91…ヒータ、92…ヒータ電源、93…配管、94…熱媒質循環装置、95…DC高圧電源、96…パルス電圧生成器、97…テフロン被覆線、101…磁気コア、102…コイル、103…電流計、104…抵抗、105…電圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ装置から出力されるレーザ光をターゲット物質に照射してターゲット物質をプラズマ化することにより極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、
電気伝導性を有する構造部材を含み、レーザ光を導入する貫通孔が形成されたチャンバと、
液体ターゲット物質の帯電ターゲットを生成し、前記チャンバ内部のプラズマ生成領域に向けて帯電ターゲットを供給するターゲット生成器であって、帯電ターゲットが通過する貫通孔が形成された電極と、前記電極を保持する電気絶縁部材と、少なくとも前記電気絶縁部材とプラズマ生成領域との間に配置され、帯電ターゲットが通過する貫通孔が形成された遮蔽部材とを含み、前記遮蔽部材が電気伝導性を有して前記チャンバの構造部材に電気的に接続されている、前記ターゲット生成器と、
を備える極端紫外光生成装置。
【請求項2】
基準電位以上の第1の電位と該第1の電位よりも高い第2の電位との間で変化する電圧信号を生成して、前記チャンバの構造部材に基準電位を与え、前記電極に第1の電位を与え、前記液体ターゲット物質に電圧信号を印加するパルス電圧生成器をさらに備える、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項3】
基準電位と該基準電位よりも高い第1の電位との間で変化する電圧信号を生成して、前記チャンバの構造部材に基準電位を与え、前記電極に電圧信号を印加し、前記液体ターゲット物質に第1の電位以上の第2の電位を与えるパルス電圧生成器をさらに備える、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項4】
基準電位以上の第1の電位と該第1の電位よりも高い第2の電位との間で変化する電圧信号を生成して、前記チャンバの構造部材に基準電位を与え、前記電極に電圧信号を印加し、前記液体ターゲット物質に第2の電位を与えるパルス電圧生成器をさらに備える、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項5】
レーザ装置から出力されるレーザ光をターゲット物質に照射してターゲット物質をプラズマ化することにより極端紫外光を生成する極端紫外光生成装置であって、
電気伝導性を有する構造部材を含み、レーザ光を導入する貫通孔が形成されたチャンバと、
液体ターゲット物質のターゲットを生成し、前記チャンバ内部のプラズマ生成領域に向けてターゲットを供給するターゲット生成器であって、帯電ターゲットが通過する貫通孔が形成された電極と、前記電極を保持する電気絶縁部材と、少なくとも前記電気絶縁部材とプラズマ生成領域との間に配置され、ターゲットが通過する貫通孔が形成された遮蔽部材とを含み、前記遮蔽部材が電気伝導性を有して前記チャンバの構造部材に電気的に接続されている、前記ターゲット生成器と、
前記チャンバの構造部材及び前記液体ターゲット物質に基準電位を与え、前記電極に正の電位と負の電位との内の一方を与える電源と、
を備える極端紫外光生成装置。
【請求項6】
前記電気絶縁部材によって保持された前記遮蔽部材を前記チャンバの構造部材に電気的に接続する接続部材をさらに備える、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項7】
前記ターゲット生成器が、
少なくとも液体ターゲット物質を内部に貯蔵するターゲット貯蔵部と、
前記ターゲット貯蔵部に貯蔵された液体ターゲット物質を放出するための貫通孔が形成されたターゲット放出部と、
をさらに含み、
前記遮蔽部材が、前記チャンバの構造部材に取り付けられ、前記チャンバ内部において、少なくとも前記ターゲット貯蔵部、前記ターゲット放出部、前記電極、及び、前記電気絶縁部材をカバーする、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項8】
前記遮蔽部材と、前記遮蔽部材に取り付けられた蓋とが、少なくとも前記ターゲット貯蔵部、前記ターゲット放出部、前記電極、及び、前記電気絶縁部材をカバーする容器を構成する、請求項7記載の極端紫外光生成装置。
【請求項9】
レーザ光をターゲット物質に照射することによって発生したプラズマから放射される極端紫外光を反射して集光する集光ミラーをさらに備え、前記集光ミラーが、電気伝導性を有して前記チャンバの構造部材に電気的に接続されている、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項10】
プラズマ化しなかったターゲット物質を回収するターゲット回収器をさらに備え、前記ターゲット回収器が、電気伝導性を有して前記チャンバの構造部材に電気的に接続されている、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項11】
プラズマ化しなかったターゲット物質を回収するターゲット回収器をさらに備え、前記ターゲット回収器が、受け電極と、電気絶縁性を有し、前記受け電極を支持する支持部材とを含み、前記パルス電圧生成器が、前記チャンバの電位よりも低い電位を前記受け電極に与える、請求項1記載の極端紫外光生成装置。
【請求項12】
プラズマ生成領域を通過したレーザ光を吸収するレーザダンパをさらに備え、前記レーザダンパが、電気伝導性を有して前記チャンバの構造部材に電気的に接続されている、請求項1記載の極端紫外光生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−212654(P2012−212654A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282189(P2011−282189)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計)/EUV光源高信頼化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】