説明

極細繊維不織布およびその製造方法

【課題】柔軟性、拭取り性、集塵性に優れ、低コストで生産可能な分割型複合紡繊維不織布の製造方法、およびそれにより得られた極細繊維不織布を提供する。
【解決手段】相異なる2種類の樹脂を複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から吐出させて、延伸することにより所定の繊度とした分割複合繊維型長繊維を捕集ベルト上に堆積させて不織布とし、さらに伸長力を加えることによって得られる繊度0.01〜2.0d(デニール)の極細繊維不織布であり、構成繊維の繊度が均一であるように極細繊維不織布を製造し、目的の不織布を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の非相溶性の樹脂からなる極細繊維不織布に関する。さらに詳しくは、拭き取り性あるいは保水性あるいは撥水性に優れかつ柔軟性に優れ、低コストで生産可能な分割型複合繊維不織布、およびそれを用いたワイパー、吸収性物品、衛生材料、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は衣類、使い捨てオムツ、個人用衛生用品、産業資材など多様に利用される。これらの分野での利用において、優れた柔軟性、触感、拭取り性などの要求性能を得るために、従来から極細繊維不織布が適用されている。
【0003】
極細繊維不織布を得るための1つの方法として、2種類の互いに非相溶性の樹脂を用いて、分割型複合繊維を製造し、これに対して複合繊維に物理的な力をかけていわゆる割繊を行い極細繊維とし、この極細繊維を得た後、水流交絡処理やニードルパンチ処理により、割繊させると同時に交絡させて、極細繊維不織布を得る方法が公知技術として知られている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。しかしながら、これらの方法はニードル又は高圧水流による衝撃を分割型複合繊維の全ての部分に与えることができず、割繊の程度が低いものしか得られない。すなわち、部分的に割繊されない分割型複合繊維が比較的多く不織布中に残り、極細繊維の量が少ないため、柔軟性に欠けるという欠点があった。更にニードル又は高圧水流の衝撃によって、分割型複合繊維が相互に三次元的に絡み合い、得られる不織布が高密度化して、柔軟性に欠けるという欠点があった。
【0004】
また、別の方法として、いわゆる伸長処理により極細繊維不織布を得る方法も知られている。たとえば、特許文献4に記載されている伸長処理は、一定の周速度で回転する供給ロールと、この供給ロールよりも速い周速度で回転する延伸ロールとの間に不織布シートを導入し、供給ロールと延伸ロールの間で不織布シートを伸長する方法である。当該方法は、生産工程が簡便である点で好ましい。該明細書によれば、1+0.001E<ST<1+0.01E(E:不織布シートの最大伸度(%)、ST:不織布シートの伸長比)を満たす伸長処理を施すと三次元交絡に起因する柔軟性の低下を招く恐れが少なく、柔軟性に富む不織布を得ることができると記載されている。しかしながら、前記条件では、不織布にかかる伸長による力が不均一になり、分割型複合繊維が部分的に割繊した不織布しか得られない場合があった。更に別の場合には、不織布シートが部分的あるいは全体的に破断することがあった。
分割方式の極細繊維不織布を得る場合、2種類の非相溶性の樹脂からなる複合繊維等を用いると容易に分割された繊維が得られるため好ましいことが知られている。その場合、出来た製品はそれらの樹脂の混繊となり、例えば、繊維表面が親油性を示すポリオレフィン系樹脂と比較的親水性を示すポリエステル系樹脂の分割型複合繊維を得た場合は親水性と親油性を有するため拭取り性が向上するために好ましいと期待される。
【0005】
この点、特開2004−100084(特許文献5)には、分割型複合繊維を構成する少なくとも1種に親水化剤が練りこまれていると同時に、その外周面に親水性付与油剤が付着されており、この不織布がその構成繊維間において分割が生じないような伸長力を受けない条件下に成形されている親水性不織布が記載されている。当該発明においては、親水化剤と親水性付与剤を分割型複合繊維を構成する少なくとも1種類の樹脂について行われていることにより、親水性を持続させるというものであるが、結局のところ、極細繊維不織布ではないため、保水性という機能面では期待する効果を得られない。
【特許文献1】特開昭58−169557号公報
【特許文献2】特開昭60−71752号公報
【特許文献3】特開昭60−71753号公報
【特許文献4】特開平9−310259号公報
【特許文献5】特開2004−100084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を克服し、柔軟性、拭取り性、集塵性に優れ、低コストで生産可能な極細繊維不織布の製造方法、およびそれにより得られた極細繊維不織布、並びにそれを用いたワイパー、衛生材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、溶融した複数の非相溶性樹脂を分割型複合繊維用の複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から吐出させて、空気により冷却と同時に延伸して紡出させた長繊維を捕集ベルト上に堆積させ、熱エンボス加工したあとを捕集、結合したあと伸長力を加えることによって、柔軟性、拭取り性、集塵性に優れ、更に低コストで生産可能な不織布を得ることが可能となることを見出し本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、相異なる2種類の樹脂を複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から吐出させて、延伸することにより所定の繊度とした分割複合繊維型長繊維を捕集ベルト上に堆積させて不織布とし、さらに伸長力を加えることによって得られる繊度0.01〜2.0d(デニール)の極細繊維不織布であり、構成繊維の繊度が均一であることを特徴とする極細繊維不織布を提供する。
【0009】
また、本発明の極細繊維不織布の繊維は、極細繊維のフィラメント横断面を形成するセグメント数の標準偏差が6以下であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に用いられる相異なる少なくとも2種の樹脂が、ポリオレフィン系重合体とポリエステル系重合体であることは、本発明の好ましい態様の1つである。
【0011】
さらに、本発明に用いられるポリオレフィン系重合体が、ポリプロピレン系重合体であり、前記ポリエステル系重合体がポリ乳酸系重合体であることは、本発明の最も好ましい態様の1つである。
【0012】
本発明に用いられる複合繊維不織布の繊維が、相異なる少なくとも2種の樹脂からなる複合繊維であって、伸長力が加えられて製造されていることは本発明の好ましい態様の1つである。
【0013】
本発明に用いられる伸長力は、本発明で用いられる複合繊維不織布を0.1m〜100mm(ミリメートル)の距離で隔てた地点で固定し、固定間において均一に延伸することより加えられることを特徴とする。
【0014】
本発明は、相異なる少なくとも2種の樹脂からなり少なくとも1つの樹脂は親水性の化合物を含有するものである繊度が0.01〜2.0d(デニール)の繊維からなる不織布を提供する。
【0015】
本発明の極細繊維不織布が製造される場合においては、本発明にの伸長力がギア延伸加工により加えられることを特徴とする。
【0016】
本発明に用いられるギア延伸加工がギア深さ(H)mmとギアピッチ(W)mmであらわされる延伸倍率とL−1096に記載のストリップ法に準じた試験において得られた最大伸度(E)%との関係が下記数式を満たすことは、好ましい態様の1つである。
【0017】
【数2】

【0018】
本発明は、本発明の極細繊維不織布を含むワイパーを提供する。
【0019】
本発明は、本発明の極細繊維不織布を含む衛生材料を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法により、分割型複合繊維を高度にかつ均一に割繊させることができるため、柔軟性、拭取り性、集塵性に優れ、低コストで生産可能な極細繊維不織布が得られる。また、ポリオレフィン系繊維の持つ撥水性、耐アルコール性、またはポリエステル系繊維の持つ親水性等のみを所望した場合には、本発明を用いれば、それぞれに期待される性質が発現されるように、たとえば、分割型繊維の組み合わせを工夫することにより希望の性質を持つ製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る分割型複合繊維フィラメントの横断面の一例を示した模式図である。
【図2】本発明に係る分割型複合繊維を割繊するための均一延伸加工の一実施態様を示す概略図である。
【図3】実施例で得られたギア延伸を施した分割型複合繊維不織布の分割率および標準偏差の測定個所を示す概略図である。
【図4】比較例で得られたギア延伸を施した分割型複合繊維不織布の分割率および標準偏差の測定個所を示す概略図である。
【図5】実施例で得られた本発明の極細繊維不織布の電子顕微鏡写真の図である。
【図6】本発明に係る極細繊維不織布の繊維横断面を示す電子顕微鏡写真の図である。
【図7】比較例で得られた極細繊維不織布の電子顕微鏡写真の図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
(用語の説明)
本発明でいう「繊度のばらつき」とは標準偏差で定義される。
【0024】
標準偏差は、電子顕微鏡にて試験回数30回の観察された分割複合繊維断面のセグメント数のばらつきを次の式で評価した。標準偏差が大きいほど、分割性が不均一であることを示す。
【0025】
【数3】

【0026】
Sn:標準偏差
n:試験回数(30回)
Xi:観察されたセグメント数
Xave:観察されたセグメント数の試験回数30回分の平均値
本発明でいう「分割型複合繊維」とは、放射状または平行あるいは並列に断面構造を形成するようにされた複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から吐出させて複合長繊維を言う。
【0027】
(樹脂)
本発明の分割型複合繊維の材料として用いられる樹脂は、相異なる2種類以上の樹脂を組合せて用いられ、分割型複合繊維にしたときに、機械的衝撃等で容易に割繊可能な樹脂の組合せを意味する。
【0028】
具体的には、ポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂やエラストマーが用いられる。これらのなかでもポリエステル類からとポリオレフィン類から選ばれる樹脂の組合せが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン系重合体としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系エラストマー等のαーオレフィンとの共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン系エラストマーを挙げる事ができる。
【0030】
本発明に用いられるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート系共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート系共重合体、ポリグリコール酸、グリコール酸共重合体、ポリ乳酸、乳酸共重合体などを例示することができる。
【0031】
本発明に用いられるポリアミド系樹脂としては、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6−ナイロン、1,1−ナイロン、1,2−ナイロン、4−ナイロン、4,6−ナイロン及びこれらを主体とする共重合体等を例示することができる。
【0032】
(繊維)
相異なる2種類以上の樹脂からなる分割型複合繊維の具体例としては、図1(a)〜図1(d)に示したような横断面を持つものが好ましい。これらは、2種類の樹脂部が共にフィラメントの表面に露出しており、かつフィラメントの断面内において、一方の樹脂部が他方の樹脂部により割繊可能な形に仕切られているものである。図1の横断面の例は代表的な例であって、本発明の目的から逸脱しなければ、上記以外の横断面の分割型複合繊維を、紡糸用口金を適宜選択することにより製造することが出来る。
【0033】
本発明の分割型複合繊維が2種類の非相溶性の樹脂からなる場合、樹脂部Aと樹脂部Bとの比率は等量が好ましいが、これに特定されるものではなく、A対B(重量比)は、好ましくは90〜10対10〜90であり、更に好ましくは70〜30対30〜70である。
【0034】
本発明において分割型複合繊維に使用される樹脂は、用途において適宜選択される。特に、紙オムツ、ワイパー等へ利用される場合は、毛羽立ちの発生を抑える必要がある。そのために、繊維表面の少なくとも一部分を長さ方向に連続して形成する樹脂部のポリマーとする。用いられるポリオレフィン系重合体としては、ポリプロピレン系重合体が好ましい。また、2種類の相異なる樹脂からなる分割型複合繊維の場合、その製造に用いられる分割型複合繊維紡糸用口金には流路が2つあるので、2種類の樹脂の融点差が大きいとき、口金内の温度分布が不均一となり、低融点樹脂の熱分解が懸念される。さらには冷却過程での結晶化の遅れによるフィラメント間の融着等も懸念され、成形が困難となることがある。2種類の樹脂の融点差は、通常0〜200℃で行われ、0〜100℃が好ましく、0〜50℃のとき最も好ましい。それゆえ、一方の樹脂にポリプロピレン系重合体を用いる場合、他方の樹脂としてはポリプロピレン系重合体と融点が近いポリ乳酸系重合体が好ましい。
【0035】
(ポリプロピレン系重合体)
本発明において好ましく用いられるポリプロピレン系重合体は、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンを主成分とし、少なくとも一種の他のα−オレフィンを含む共重合体である。他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンを挙げることができる。これらの単独重合体または共重合体は、1種単独でもしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
ポリプロピレン系重合体のMFRは、通常1〜1000g/10分、好ましくは5〜200g/10分、更には10〜120g/10分のものが好ましい。ここで、ポリプロピレン系重合体のMFRはASTM D1238に基づいて、230℃、荷重2.16kgで測定されるものである。また、ポリプロピレン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは、通常1.5〜5.0、さらには、紡糸性が良好で、かつ繊維強度が特に優れる複合繊維が得られる点で、1.5〜3.0が好ましい。本発明において、良好な紡糸性とは、紡糸ノズルからの吐き出し時および延伸中に糸切れを生じず、フィラメントの融着が生じないことをいう。本発明において、MwおよびMnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、公知の方法で測定することができる。
【0037】
(ポリ乳酸系重合体)
本発明において好ましく用いられるポリ乳酸系重合体としては、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸の共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸の共重合体から選ばれるいずれかの重合体あるいはそれらのブレンド物が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。また、ポリ乳酸系重合体には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で結晶核剤が添加されていてもよい。結晶核剤としては、ポリブチレンサクシネートのような核剤効果のある生分解ポリマー、タルク、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、酸化チタン等を例示することができる。
ポリ乳酸系重合体の融点としては、100℃以上が好ましく、更に好ましくは150℃から180℃である。また、紡糸性が良好である複合繊維が得られる点で、ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量(Mw)は100,000〜200,000g/molであるものが好ましい。
【0038】
(親水剤)
本発明の分割型複合繊維において、少なくとも一方の樹脂部に含有させる成分としては、その樹脂部を形成する樹脂が撥水性樹脂である場合、例えば脂肪酸グリセライド、アルコキシ化アルキルフェノール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、アルキルポリオキシエチレンアルコール、脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコク酸塩、特殊アニオン等の界面活性剤の群、ポリエチレングリコール、ビニルアルコールとエチレン重合体との共重合体、及びポリエーテルブロックアミド共重合体のような化合物群から適宜に選択したものを単独で、あるいは混合物として使用することが出来る。
【0039】
例えば、2種類の非相溶性の樹脂であるポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂からなる分割型複合繊維の場合、ポリオレフィン系樹脂への親水性付与を目的として添加する好ましい成分の例としては、
一般式:R−(CHCHO)−OH
(式中、Rは炭素数22〜40の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、nは2〜10の整数である。)
が挙げられる。
これらを添加する量としては、一つの樹脂部中に好ましくは0.5〜10重量%であり、更には2〜7重量%が好ましい。
【0040】
(添加剤)
本発明に用いられる非相溶性の樹脂には、本発明の目的を達成する範囲内で他の機能性を付与する添加剤を配合することが可能であり、用途に合わせて適宜選択し配合することができる。添加剤としては、例えば、従来公知の耐熱安定剤、耐候安定剤、各種安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。
【0041】
安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の老化防止剤;テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’−オキザミドビス[エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、Irganox 1010(ヒンダードフェノール系酸化防止剤:商品名)等のフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステルなどを挙げることができる。また、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0042】
また、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン等の充填剤を含有させてもよい。
【0043】
ポリプロピレン系重合体およびポリ乳酸系重合体と、他の必要に応じて用いられる任意成分とは、公知の方法を利用して混合することができる。
【0044】
(製造方法)
本発明の複数の相異なる樹脂からなる極細繊維不織布を得るための製造法としては、生産性が良く、高強度のものが得られる点で、スパンボンド法が好ましい。
【0045】
本発明の極細繊維不織布の製造方法として、スパンボンド法を例にとって説明する。分割型複合繊維を構成する2種類の非相溶性樹脂の各溶融物を図1(a)〜図1(d)に例示されるように、放射状または平行あるいは並列に断面構造を形成するようにされた複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から吐出させて、延伸することにより所定の繊度とした長繊維を、そのまま移動する捕集ベルト上に捕集して所定の厚さに堆積させる。次いで、熱エンボスロールにより熱融着して熱エンボス加工を行なう。熱エンボスロールによる熱融着の場合、エンボスロールのエンボス面積率は適宜決められるが、通常5〜30%が好ましい。
【0046】
分割型複合繊維の紡糸後の繊度は、通常6デニール以下であることが好ましい。6デニール以下であれば、例えば延伸加工などによる割繊処理後の繊度を細くすることができ、拭取り性や柔軟性に優れるため好ましい。また、本発明の分割型複合繊維不織布の目付量は、3〜200g/mが好ましく、より好ましくは10〜150g/mである。
【0047】
さらに得られた分割型複合繊維不織布は、伸長力を加えることにより割繊をすることができる。伸長力は、複合繊維不織布をある一定の距離を隔てた2地点において固定し、その固定感において均一に延伸する加工されるように加えられる。このように伸長力を加えることによって、複合繊維不織布はより高度かつ均一に割繊される。固定間の距離は、通常0.1〜100mm、好ましくは(0.1)〜(50)mm、さらに好ましくは(0.1)〜(10)mmである。均一に延伸できるかどうかは、固定間の距離によって成否が左右され、固定間の距離が短すぎると延伸が不十分な場合があり、遠すぎると不織布に内包されている目付のばらつきが無視できなくなり、場所による均一性が問題となる場合がある。均一に延伸加工することにより、加工後において分割型複合繊維不織布の分割性のばらつきを示す標準偏差の値を小さくすることができる。標準偏差は好ましくは6以下であり、更には5以下であることが好ましい。
本発明において用いられる伸長力は、不織布全体に均一に延伸の伸長力をかけて延伸加工することが特徴の1つである。不織布全体に均一に延伸の伸長力をかける方法としては、本発明の目的から逸脱しないかぎり、各種の延伸加工方法を用いることができ、例えば、図2に示すようなギア延伸装置によるギア延伸加工をあげることができる。また、凸状の多数の突起を有するロールと、その突起が収まる大きさの多数の窪みを有するロールとの間を通す延伸加工をあげることができる。
本発明において、分割型複合繊維の割繊後の分割率は30%以上であることが望ましい。特に60%以上であると、柔軟性、拭取り性、集塵性の点から好ましい。分割型複合繊維の分割状態及び分割率は、ギア延伸装置を通す際のライン速度、ギアの深度、ギアピッチ等の条件を変えて延伸加工を行うことにより分割率を調整することができる。
【0048】
(極細繊維不織布)
本発明の方法により製造された極細繊維不織布の繊度は、通常0.01〜2.0d(デニール)であり、好ましくは0.01〜1.2d(デニール)である。
【0049】
十分な柔軟性、拭取り性、集塵性を得るためのギア延伸条件としてはギア深さ(H)mmとギアピッチ(W)mmであらわされる延伸倍率とL−1096に記載のストリップ法に準じた試験において最大伸度(E)%との関係が下記数式を満たすことが好ましく、所望の強度、リントフリー性との関係より延伸条件は変化する。
【数4】

【0050】
また、本発明における延伸加工によって発現した割繊繊維は相互に実質的に三次元交絡することはない。この理由は、複合連続単糸に単に伸長力が加えられるだけであり、複合連続単糸を無作為な方向に運動させるような力が加わらないからである。
【0051】
例えば、不織シートに高圧液体流を施し、複合連続単糸に衝撃を与えて分割割繊させる方法があるが、この方法の場合、高圧液体流によって複合連続単糸が無作為な方向に運動し、複合連続単糸や割繊繊維は相互に実質的に三次元交絡するのである。
従って、本発明に係る方法によって得られた不織布は、割繊繊維の相互間が実質的に三次元交絡されておらず、そのため交絡に起因する不織布の柔軟性の低下を防止しうるのである。なお、ここでいう実質的に三次元交絡するとは、ニードルパンチや高圧柱状流で処理した場合に生じる緊密な交絡を言うのであり、繊維の屈曲等による絡み合いは実質的に交絡しているとは言わない。
【0052】
また、本発明においては、相異なる2種の樹脂の1つの樹脂には親水性の化合物を含有させることができる。親水性化合物が含有される分割後の繊維は、その繊度は、通常0.01〜2.0デニール、好ましくは0.01〜1.2デニールである。かかる繊度の時に保水性かつ柔軟性が向上するのである。
【0053】
本発明の極細繊維不織布は、複合繊維紡糸時の2種類の樹脂の組み合わせの違いにより、種々の性質を持たせることができる。たとえば、ポリオレフィンとポリエステルの組み合わせにより得られる極細繊維不織布は、柔軟性があり、水も油も両方に対する拭き取り性能が良好である。また、同じポリオレフィンとポリエステルの組み合わせであっても、ポリエステルに比べ疎水性の高いポリオレフィンに親水剤を入れると柔軟性のほかに保水性のある極細繊維不織布が得られる。さらに、異種のポリオレフィン同士のものを用いた極細繊維不織布の場合は、柔軟性の他に撥水性も持ち合わせている。
【0054】
本発明の極細繊維不織布は、用途に応じて、他の繊維との混繊不織布としても差し支えない。
【0055】
また、得られた分割型複合繊維不織布は、所望される性能に応じて、他の不織布やフィルム等に積層し、分割型複合繊維不織布を少なくとも1層有する不織布積層体とすることができる。これによりさらに多くの用途へ応用することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により示すが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例、比較例で得られた不織布の分割率および標準偏差、風合い、保油率、繊度、拭取り性、引張強度、リントフリー性に関する測定および評価は次の方法によって行った。
【0057】
(1)割繊率および標準偏差
得られた分割型複合繊維不織布をエポキシ樹脂に包埋し、次いでミクロトームで切断して試料片を得る。これを電子顕微鏡で観察し、得られた断面像より分割率を以下の式で算出した。これを繊維30本分観察し、その平均値を該分割型複合繊維不織布の割繊率とした。
【0058】
割繊率[%]={(総セグメント数−観察された分割繊維断面のセグメント数)/総セグメント数}×100
ここで、総セグメント数とは、分割型複合繊維のフィラメント横断面を形成するセグメントの総和のことである。例えば、図1(a)〜(d)のようなフィラメント横断面を有する分割型複合繊維の場合は、総セグメント数は8である。
【0059】
また、分割率及びその均一性を評価するために各実験で得られた分割型不織布の3箇所について分割率を測定した。ギア延伸処理した分割型複合繊維不織布については、図6に示す3箇所(図中A,B,C)について測定した。分割引張延伸処理した分割型複合繊維不織布については、ギア延伸したものと対応がとれるように、延伸方向に図6と同じ間隔の3箇所(A,B,C)について測定した。
【0060】
標準偏差は、電子顕微鏡にて試験回数30回の観察された分割複合繊維断面のセグメント数のばらつきを次の式で評価した。標準偏差が大きいほど、分割性が不均一であることを示す。
【0061】
【数5】

【0062】
Sn:標準偏差
n:試験回数(30回)
Xi:観察されたセグメント数
Xave:観察されたセグメント数の試験回数30回分の平均値
(2)風合い
評価者10人により手触りの評価を行った。以下の基準で評価結果を示す。
【0063】
◎:手触りが良いと感じた人が、10人のうち10人の場合、
○:手触りが良いと感じた人が、10人のうち9〜7人の場合、
△:手触りが良いと感じた人が、10人のうち6〜3人の場合、
×:手触りが良いと感じた人が、10人のうち2人以下の場合。
【0064】
(3)保油率
得られた分割型複合繊維不織布を50mm×200mmの大きさに切断し、試験片を得る。この試験片重量Wを量り、油(株式会社イエローハット製、MAGMAX SL 5W−40(AAA))中に3秒間浸漬する。次いで、30秒間大気中に保持して付着した油分を滴下させ除去したのち、試験片重量Wを量り、次式より保油率を算出した。これを試験回数3回繰り返し、その平均値で評価した。
【0065】
保油率[%]={(W−W)/W}×100
(4)繊度
得られた分割型複合繊維不織布をエポキシ樹脂に包埋し、次いでミクロトームで切断して試料片を得る。次いで、電子顕微鏡で観察し、得られた断面像から未分割フィラメント10本を選び、その断面積を算出し、それらの平均値より未分割フィラメントの繊度を求め、分割率をもちいて次の式により分割型複合繊維の繊度を算出した。
【0066】
分割型複合繊維の繊度=未分割フィラメント繊度/(総セグメント数×分割率/100)
(5)拭取り性(拭取り率)
平滑な金属製パレット内に、油(株式会社イエローハット製、MAGMAX SL 5W−40(AAA))0.5gと蒸留水1.0gを垂らし、100mm×50mmのサイズに切断した試験片で軽く拭取り、金属製パレット内の油分と水分の合計残量wを測定し、拭取り性を次式より算出し、これを3回繰り返し平均値で評価した。拭取り性の数値が大きいほど、拭取り性に優れることを示す。
【0067】
拭取り率[%]={(1.5−w)/1.5}×100
(6)引張強度
JIS L1906Lに準拠して、流れ方向(MD)に25cm、横方向(CD)に2.5cmの不織布試験片を3枚採取し、チャック間200mm、引張速度200mm/minの条件で引張試験を行い、3枚の試験片について引張荷重を測定し、それらの平均値を引張強度とした。
【0068】
(7)リントフリー性(脱落量)
市販の両面テープ(ニチバン株式会社製、ナイスタックNWBB15)を15mm×200mmに切断し、テープ重量W[g]を量る。そして、このテープを不織布上に貼り、その上に重量1.25kg、サイズ300mm×95mmの重りを置く。60秒間保持した後に、テープを剥がし、テープ重量W’[g]を量り、脱落量を次式より算出し、これを3回繰り返し平均値で評価した。脱落量が多いほど、リントフリー性に欠くことを示す。
【0069】
脱落量[g]=W’−W
(実施例1)
2種類の非相溶性の樹脂として、第一の樹脂に重量平均分子量Mw=133400のポリ乳酸(三井化学(株)製、商品名LACEA、融点165℃)を用い、第二の樹脂にMFR=60g/10分のポリプロピレン(Mw/Mn=2.7)を用い、それぞれ別個に押出機で溶融し、総セグメント数が16である図1(a)のような断面形状となる分割型複合繊維紡糸用口金を用いて、第一の樹脂と第二の樹脂の重量比が50/50である分割型複合繊維を捕集ベルト上に堆積させ、次いで、これをエンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率18%、エンボス温度100℃)して目付量が40g/m、構成繊維の繊度(未分割フィラメント繊度)0.88d、L−1096に記載のストリップ法に準じた試験において最大伸度70%の分割型複合繊維不織布を作製した。
【0070】
次いで得られた不織布を図2に示すギア延伸機(ギアピッチ5mm、不織布ウェブ固定点間距離2.5mm)に通して横方向延伸倍率56%で延伸処理し、繊度0.34dの極細繊維不織布を作製した。得られた不織布について、分割率、その標準偏差、風合い、引張強度、リントフリー性、拭取り率、保油率を測定して評価した。評価した結果を表1に示す。
【0071】
(実施例2)
実施例1で得られた不織布をギアピッチ2.5mmのギア延伸機に通して横方向延伸倍率160%(ギア深さ3.0mm)で延伸処理し、繊度0.25dの極細繊維不織布を作製した。得られた不織布について、評価した結果を表1に示す。
【0072】
(比較例1)
実施例1と同様にして分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布を引張試験機を用いて、チャック間100mm(不織布ウェブ固定点間距離)、横方向(CD)2.5cmの幅で流れ方向(MD)に延伸倍率56%で延伸処理し、分割型複合繊維繊度0.50dの分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布について評価した結果を表1に示す。
【0073】
(比較例2)
実施例1と同様にして分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布を引張試験機を用いて、チャック間100mm(不織布ウェブ固定点間距離)、横方向(CD)2.5cmの幅で流れ方向(MD)に延伸倍率160%で延伸処理としたところ、延伸途中で不織布が破断したため評価できなかった。
【0074】
【表1】

(実験例3)
2種類の非相溶性の樹脂組合せにおいて、第一の樹脂を重量平均分子量Mw:133400のポリ乳酸(三井化学(株)、商品名:LACEA、融点165℃)とし、第二の樹脂をMFR60g/10分のポリプロピレン(Mw/Mn=2.7)にアルキルポリオキシエチレンアルコール(CHCH(CHCH13CHCH(OCHCH2.5OH)を2.5重量%練り込み添加したものとし、それぞれ別個に押出機で溶融し、総セグメント数が16である図1(a)のような断面形状となる分割型複合繊維紡糸用口金を用い第一樹脂と第二樹脂の重量比が50/50である分割型複合繊維を捕集ベルト上に堆積させ、次いで、これをエンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率18%、エンボス温度100℃)して目付量が40g/m2、構成繊維の繊度0.75dの分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布について、分割率(紡糸直後に測定)、吸水性、剛軟性、風合い、引張強度、リントフリー性を測定して評価した。結果を表2に示す。
【0075】
(実験例4)
実験例1で得られた不織布をギアピッチ2.5mmのギア延伸機にて、ギア深度1.5mm、延伸倍率56%で延伸加工し、繊度0.4dの分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布について、評価した結果を表2に示す。
【0076】
(実験例5)
実験例1で得られた不織布をギアピッチ2.5mmのギア延伸機にて、ギア深度2.5mm、延伸倍率124%で延伸処理し、繊度0.32dの分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布について、評価した結果を表2に示す。
【0077】
(実験例6)
実験例1で得られた不織布をギアピッチ2.5mmのギア延伸機にて、ギア深度3.0mm、延伸倍率160%で延伸処理し、繊度0.27デニールの分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布について、評価した結果を表2に示す。
【0078】
(実験例7)
2種類の非相溶性の樹脂組合せにおいて、第一の樹脂を重量平均分子量Mw:133400のポリ乳酸(三井化学(株)、商品名:LACEA、融点165℃)とし、第二の樹脂をMFR60g/10分のポリプロピレン(Mw/Mn=2.7)のみとし、それぞれ別個に押出機で溶融し、総セグメント数が16である図1(a)のような断面形状となる分割型複合繊維紡糸用口金を用いて、第一の樹脂と第二の樹脂の重量比が50/50である分割型複合繊維を捕集ベルト上に堆積させ、次いで、これをエンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率18%、エンボス温度100℃)して目付量が40g/m2、構成繊維の繊度0.88dの分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布を引張試験機にて実験例2と同様にして延伸倍率56%で延伸処理し、繊度0.64dの分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布について、評価した結果を表2に示す。
【0079】
(実験例8)
2種類の非相溶性の樹脂組合せにおいて、第一の樹脂を重量平均分子量Mw:133400のポリ乳酸(三井化学(株)、商品名:LACEA、融点165℃)とし、第二の樹脂をMFR60g/10分のポリプロピレン(Mw/Mn=2.7)のみとし、それぞれ別個に押出機で溶融し、総セグメント数が16である図1(a)のような断面形状となる分割型複合繊維紡糸用口金を用いて、第一の樹脂と第二の樹脂の重量比が50/50である分割型複合繊維を捕集ベルト上に堆積させ、次いで、これをエンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率18%、エンボス温度100℃)して目付量が40g/m2、構成繊維の繊度0.88dの分割型複合繊維不織布を作製した。得られた不織布について、分割率、吸水性、風合いを測定して評価した。結果を表2に示す。
【0080】
(実験例9)
重量平均分子量Mw:133400のポリ乳酸(三井化学(株)、商品名:LACEA、融点165℃)のみを用いて、溶融紡糸を行い、モノコンポーネントの繊維を捕集ベルト上に堆積させ、次いで、これをエンボスロールで加熱加圧処理(エンボス面積率18%、エンボス温度130℃)して目付量が40g/m2、構成繊維の繊度2.76dの不織布を作製した。得られた不織布について、吸水性、剛軟性、風合い、引張強度を測定して評価した。結果を表2に示す。
【0081】
(実験例10)
アルキルポリオキシエチレンアルコール(CHCH(CHCH13CHCH(OCHCH2)2.5OH)を1.5重量%練り込み添加したMFR60g/10分のポリプロピレン(Mw/Mn=2.7)を使用して、メルトブロー法にて溶融紡糸を行い、モノコンポーネントの繊維を捕集ベルト上に堆積して目付量が40g/m2、構成繊維の繊度0.03dの不織布を作製した。得られた不織布について、吸水性、剛軟性、風合い、引張強度、リントフリー性を測定して評価した。結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の極細繊維不織布は、医療用及び工業用ワイパー、マスク、手術衣、包装布、フィルター、吸収性物品、使い捨てオムツやナプキンなどの衛生材料の表面材、ベッドシーツ、枕カバー等の寝具類、寝袋や寝具の中入れ綿、カーペットや人口皮革用基布、園芸や苗床の肥料吸収材、建築構造体補強繊維、液体輸送膜、電池用セパレーター等に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相異なる2種類の樹脂を複合紡糸ノズルを有する紡糸口金から吐出させて、延伸することにより所定の繊度とした分割複合繊維型長繊維を捕集ベルト上に堆積させて不織布とし、さらに伸長力を加えることによって得られる繊度0.01〜2.0d(デニール)の極細繊維不織布であり、構成繊維の繊度が均一であることを特徴とする極細繊維不織布。
【請求項2】
前記繊度のばらつきが極細繊維のフィラメント横断面を形成するセグメント数の標準偏差が6以下である請求項1記載の極細繊維不織布。
【請求項3】
相異なる少なくとも2種の樹脂が、ポリオレフィン系重合体とポリエステル系重合体である請求項1または2記載の極細繊維不織布。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系重合体が、ポリプロピレン系重合体であり、前記ポリエステル系重合体がポリ乳酸系重合体である請求項3記載の極細繊維不織布。
【請求項5】
前記繊維が、相異なる少なくとも2種の樹脂からなる複合繊維に伸長力が加えられて製造されたものである請求項1に記載の不織布。
【請求項6】
前記伸長力が、複合繊維不織布を0.1m〜100mm(ミリメートル)の距離で隔てた地点で固定し、固定間において均一に延伸することより加えられる請求項1記載の極細繊維不織布。
【請求項7】
相異なる少なくとも2種の樹脂からなり少なくとも1つの樹脂は親水性の化合物を含有するものである繊度が0.01〜2.0d(デニール)の繊維からなる請求項1〜4記載の不織布。
【請求項8】
前記伸長力が、ギア延伸加工により加えられる請求項1記載の極細繊維不織布
【請求項9】
前記ギア延伸加工がギア深さ(H)mmとギアピッチ(W)mmであらわされる延伸倍率とL−1096に記載のストリップ法に準じた試験において得られた最大伸度(E)%との関係が下記数式を満たす請求項1記載の極細繊維不織布。
【数1】

【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の分割型複合繊維不織布を含むワイパー。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の分割型複合繊維不織布を含む衛生材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/042824
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515135(P2005−515135)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015929
【国際出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】