説明

構真柱の杭への接合構造及び埋設用管体並びにそれらの施工方法

【課題】埋設用管体と構真柱一体型杭との係合解除を容易に行うことが可能であり、構真柱が接合された杭を高精度に設置することが可能な構真柱の杭への接合構造及び埋設用管体並びにそれらの施工方法提供する。
【解決手段】構真柱一体型杭1は、建て込んだ下部鋼管杭2の上端に接合される鋼管からなる補助管5と、補助管5内周面に設けられて、平面視で補助管5内を複数の区画に区切る補強板6と、補強板6の上端に接合されて上方に延びる構真柱4と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構真柱の杭への接合構造及び埋設用管体並びにそれらの施工方法に係り、特に鋼管杭を用いて高精度に設置対応が可能な構真柱一体型杭及び埋設用管体並びにそれらの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地階を有する建物の構築を行う場合、工期短縮及び低コスト化のために、逆打ち工法が採用されている。逆打工法は、建物の柱を立設すべき地面の所定位置に予め基礎杭を打ち、この基礎杭の上に建込んだ構真柱の上部での地上施工と同時に、根切およびコンクリート打設を地下階上層から地下階下層へ向かって行うものである。
従来、この種の発明として、特許文献1に記載された「逆打工法用仮設対応支柱の施工方法」に係る発明がある。
【0003】
図8は特許文献1に示す逆打工法用仮設対応支柱の施工方法に用いられる仮設対応支柱付き杭及び埋設用管体用鋼管を示す斜視図である。
仮設対応支柱付き杭41は、図8に示すように、既製PC杭42の頭に仮設支柱用のH鋼43を直列に溶接接合したものであり、PC杭42の上端外周面には突起44が形成されている。また、埋設用管体用鋼管45は、PC杭42の外径よりも大きい内径で形成され、その下端部には下端面から上方へ垂直に切り欠き、更に円周方向へ沿って横に切り欠いた鈎形の案内掛止溝46が形成されている。
【0004】
そして、予め地盤に杭穴を掘削しておき、仮設対応支柱付杭41を杭穴に建て込み、然る後に埋設用管体用鋼管45をH鋼43に覆せ、埋設用管体用鋼管45の案内掛止溝46とPC杭42の上端外周面の突起44とを係合させ、埋設用管体を打ち込み乃至回転させて、既製PC杭42の打ち込み位置やレベルを調整している。
【特許文献1】特開平6−049855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された逆打工法用仮設対応支柱の施工方法においては、既製杭の杭頭に仮設支柱用のH鋼43を直接溶接する構成としているため、板厚が薄く杭頭にH鋼43を直接溶接することができない鋼管杭についてはこれを用いることができないという問題点がある。
また、埋設用管体用鋼管45をPC杭42の上端まで覆せているとともに、PC杭42の上端外周面には突起44が形成されているため、埋設用管体を打ち込み又は回転させてPC杭42の打ち込み位置やレベルの調整を行う際に、孔壁に対する抵抗が生じてしまうという問題点がある。
【0006】
また、埋設用管体用鋼管45を切り欠いて形成した案内掛止溝46とPC杭42の上端外周面の突起44とを係合させているため、PC杭42を所定の位置に設置完了後に、埋設用管体用鋼管45の案内掛止溝46からPC杭42の上端外周面に形成されている突起44を取り外す際には、埋設用管体をPC杭42に対して回転させて取り外す必要がある。この場合、埋設用管体用鋼管45の案内掛止溝46とPC杭42の突起44との係合を解除することは容易ではなく、埋設用管体の回転によって、PC杭42の供回り又は鉛直方向のずれが生じてしまい、PC杭42の設置精度が落ちるという問題点がある。特に、構真柱としてH鋼43を用いた場合においては、H鋼43には弱軸方向と強軸方向とがあるため、事前に決定した方向で精度良く設置する必要があるが、特許文献1に記載された逆打工法用仮設対応支柱の施工方法では、H鋼43の弱軸方向と強軸方向とを精度良く設置することができないという問題点がある。
【0007】
さらに、予め地盤に杭穴を掘削しておき、仮設対応支柱付杭41を杭穴に建て込む構成としているため、仮設対応支柱付杭41の杭長が長い場合や、地盤の崩壊が激しい場合においては、仮設対応支柱付杭41の建て込み及び鉛直性の確保が困難であるという問題点がある。
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、埋設用管体と構真柱一体型杭との係合解除を容易に行うことが可能であり、構真柱が接合された杭を高精度に設置することが可能な構真柱の杭への接合構造及び埋設用管体並びにそれらの施工方法提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のうち請求項1に係る構真柱の杭への接合構造は、建て込んだ鋼管杭の上端に接合される鋼管からなる補助管と、前記補助管内周面に設けられて、平面視で前記補助管内を複数の区画に区切る補強板と、前記補強板の上端に接合されて上方に延びる構真柱と、を備えることを特徴とする。
また、本発明のうち請求項2に係る構真柱の杭への接合構造は、建て込んだ鋼管杭の頭部内周面に設けられて、平面視で前記鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板と、前記補強板の上端に接合されて上方に延びる構真柱と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のうち請求項3に係る構真柱の杭への接合構造は、前記補強板に対し、側方向に突出したずれ止め用の凸部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明のうち請求項4に係る鋼管杭への構真柱の施工方法は、鋼管杭の頭部内周面に、平面視で前記鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板を予め接合しておき、
現場にて、前記補強板の上端に、上方に延びる前記構真柱の下端を接合することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のうち請求項5に係る鋼管杭への構真柱の施工方法は、上方に延びる構真柱の下端に、平面視で鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板の上端を予め接合しておき、
現場にて、前記鋼管杭の頭部内周面に、前記補強板を接合することを特徴とする。
また、本発明のうち請求項6に係る鋼管杭への構真柱の施工方法は、鋼管からなる補助管内周面に、平面視で前記補助管内を複数の区画に区切る補強板を接合し、前記補強板の上端に、前記補強板の上方に延びる構真柱の下端を接合して予め一体としておき、
現場にて、前記鋼管杭の上端に前記補助管の下端を接合することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のうち請求項7に係る埋設用管体は、請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の接合構造を有する杭と着脱自在に連結され、前記杭を打ち込み又は回転させる埋設用管体であって、
前記埋設用管体は、前記構真柱に被さる筒状の埋設用管体本体と、
前記埋設用管体本体の内周面に回転可能に保持され、前記埋設用管体本体内を上下に延びて前記埋設用管体本体の下方に突出する鋼管杭吊りロッドと、該鋼管杭吊りロッドの下端部に設けられて、側方に張り出した掛止部と、を備えたロック機構と、
前記埋設用管体本体の内周面に固定され、前記埋設用管体本体の下端から下方に突出する回転トルク伝達用部材と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のうち請求項8に係る埋設用管体は、請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の接合構造を有する杭と着脱自在に連結され、前記杭を打ち込み又は回転させる埋設用管体であって、
前記埋設用管体は、前記構真柱に被さる筒状の埋設用管体本体と、
前記埋設用管体本体の内周面に固定され、前記埋設用管体本体の下方に延び、その先端部が側方に張り出して、前記補強板に掛止可能な、略L字状の掛止板と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のうち請求項9に係る埋設用管体は、請求項8又は9記載の埋設用管体において、前記埋設用管体本体の側面には、確認孔が設けられていることを特徴とする。
さらに、本発明のうち請求項10に係る杭の施工方法は、中掘り工法により杭を沈設し、根固め球根を築造した後、
前記杭を引き上げ、請求項6に記載した施工方法により構真柱を前記杭に接合し、
その構真柱に請求項7乃至9のうちいずれか1項記載の埋設用管体を被せ、その埋設用管体を介して圧入又は回転圧入することにより、当該杭を前記根固め球根付近まで沈設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願請求項1又は2に記載された構真柱の杭への接合構造によれば、前記補助管又は鋼管杭内周面に設けられて、平面視で前記補助管又は鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板と、前記補強板の上端に接合されて上方に延びる構真柱と、を備える構成により、鋼管杭に構真柱を接合することが可能となる。
また、本願請求項3に記載された構真柱の杭への接合構造によれば、請求項1又は2記載の構真柱の杭への接合構造において、前記補強板に、側方向に突出したずれ止め用の凸部が設けられている構成により、杭の杭頭部にコンクリートを充填して杭を本設利用する場合において、コンクリート柱からの軸力を、ずれ止め用凸部を介して、補強板、鋼管杭へと確実に伝達することが可能となる。
【0015】
また、本願請求項4に記載された鋼管杭への構真柱の施工方法によれば、鋼管杭の頭部内周面に、平面視で前記鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板を予め接合しておき、現場にて、前記補強板の上端に、上方に延びる前記構真柱の下端を接合する構成により、現場での最終的な溶接時における溶接量を減らすことが可能となる。
また、本願請求項5に記載された鋼管杭への構真柱の施工方法によれば、上方に延びる構真柱の下端に、平面視で鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板の上端を予め接合しておき、現場にて、前記鋼管杭の頭部内周面に、前記補強板を接合する構成により、現場での最終的な溶接時における補強板と鋼管杭との位置合わせを簡単に行うことが可能となる。
【0016】
また、本願請求項6に記載された鋼管杭への構真柱の施工方法によれば、鋼管からなる補助管内周面に、平面視で前記補助管内を複数の区画に区切る補強板を接合し、前記補強板の上端に、前記補強板の上方に延びる構真柱の下端を接合して予め一体としておき、現場にて、前記鋼管杭の上端に前記補助管の下端を接合する構成により、現場での最終的な溶接時における溶接量を減らすことができるとともに、鋼管杭と補助管との位置合わせを簡単に行うことが可能となる。
【0017】
また、本願請求項7に記載された埋設用管体によれば、前記埋設用管体本体の内周面に回転可能に保持され、前記埋設用管体本体内を上下に延びて前記埋設用管体本体の下方に突出する鋼管杭吊りロッドと、該鋼管杭吊りロッドの下端部に設けられて、側方に張り出した掛止部と、を備えたロック機構と、前記埋設用管体本体の内周面に固定され、前記埋設用管体本体の下端から下方に突出する回転トルク伝達用部材と、を備える構成により、構真柱が接合された杭の設置完了後に埋設用管体と構真柱が接合された杭とを容易に取り外すことが可能となるとともに、構真柱が接合された杭を事前に決定した方向で精度良く設置することが可能となる。また、ロック機構及び回転トルク伝達用部材は埋設用管体本体の内周面側に設けられているため構真柱が接合された杭の沈設時において孔壁に対する抵抗を小さくすることが可能となる。
【0018】
また、本願請求項8に記載された埋設用管体によれば、前記埋設用管体本体の内周面に固定され、前記埋設用管体本体の下方に延び、その先端部が側方に張り出した、略L字状の掛止板と、を備える構成により、構真柱が接合された杭の設置完了後に埋設用管体と構真柱一体型杭とを容易に取り外すことが可能となるとともに、構真柱が接合された杭を事前に決定した方向で精度良く設置することが可能となる。また、係止板は埋設用管体本体の内周面側に設けられているため、構真柱が接合された杭の沈設時において孔壁に対する抵抗を小さくすることが可能となる。
【0019】
また、本願請求項9に記載された埋設用管体によれば、前記埋設用管体本体の側面には、確認孔が設けられている構成により、特に構真柱としてH鋼を用いる場合において、埋設用管体の外側からH鋼の方向を確認することが可能となり、H鋼を事前に決定した方向で精度良く設置することが可能となる。
さらに、本願請求項10に記載された杭の施工方法によれば、中掘り工法と請求項6に記載した鋼管杭への構真柱の施工方法とを組み合わせて杭の施工を行う構成により、施工に用いられる杭の杭長が長い場合や、崩落性の激しい地盤において施工を行う場合においても、構真柱が接合された杭を精度よく設置することが可能となるとともに、工期を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る構真柱の杭への接合構造を有する杭(以下、構真柱一体型杭という)及びその施工方法を図面を参照して説明する。
図1は本発明の第一の実施形態に係る構真柱一体型杭の斜視図である。図2は構真柱一体型杭を構成する上部鋼管杭の水平方向断面図である。図3は本発明の第一の実施形態に係る埋設用管体の斜視図である。図4は本発明の第一の実施形態に係る構真柱一体型杭と埋設用管体とが係合した状態を示す斜視図である。
【0021】
構真柱一体型杭1は、図1に示すように、下部鋼管杭2と、上部鋼管杭3と、構真柱4と、を備えている。
下部鋼管杭2は、上下方向(図1における上下方向)に延びる円筒状の既製の鋼管杭である。
上部鋼管杭3は、補助管5と、補強板6と、回転補助部材7と、ずれ止め用凸部8と、を備えている。
補助管5は、下部鋼管杭2と同一の外径を有し、上下方向の長さが下部鋼管杭2に対して短く形成された円筒部材であり、補助管5の下端は下部鋼管杭2の上端と溶接により接合されている。ここで、補助管5の上下方向の長さは適宜設定することが可能であるが、施工時において埋設用管体11をクレーンにより持ち上げて、構真柱一体型杭1の上部から被せる必要があるため、その便宜を考慮して1mから3mに設定することが好ましい。
【0022】
補強板6は、図2に示すように、補助管5の内周面において、補助管5内の略中心部を挟んで所定間隔で対峙して並行に架け渡された2枚の略方形の板材と、その2枚の板材と直交して交差し、補助管5の内の略中心部を通るように架け渡された1枚の略方形の板材とから形成されている。そして、補強板6は、平面視でキの字型形状に形成され、補助管5内を平面視で複数の区画に区切っている。なお、補強板6は、各板材の上下方向に延びる各端辺を補助管5の内周面に溶接により接合されている。ここで、補強板6の形状は、平面視で井の字型形状等、適宜変更することが可能である。
【0023】
回転補助部材7は、略直方体状に形成された金属部材であり、補助管5の内周面上端部において、補助管5内の中心を挟んで対向する位置に2つ備えられている。
ずれ止め用凸部8は、棒状に形成された金属部材であり、補強板6の各側面において、その長さ方向が各側面の幅方向に延びるように固定され、上下方向に2段ずつ設けられている。
【0024】
構真柱4は、既製のH鋼であり、補強板6の上端において、構真柱4のH型の下端面全体がキの字型に形成された補強板6の上端面と重なるように同軸状に接合されている。なお、構真柱4は、既製の鋼管であっても構わない。
このように、構真柱一体型杭1においては、補強板6を介することによって構真柱4と鋼管杭とを接合することが可能となり、構真柱一体型杭1に鋼管杭を用いることが可能となる。
【0025】
また、補強板6の各側面にずれ止め用凸部8を設ける構成により、構真柱一体型杭1の杭頭部にコンクリートを充填して、構真柱一体型杭1を本設利用する場合において、コンクリート柱からの軸力を、ずれ止め用凸部8を介して、補強板6、下部鋼管杭2へと確実に伝達することが可能となる。
ここで、本実施形態においては、下部鋼管杭2に、補強板6を設けた上部鋼管杭3を介して構真柱4を接合する構成となっているが、上部鋼管杭3を用いずに、下部鋼管杭2の頭部に補強板6を上部鋼管杭3の場合と同様に設け、補強板6と構真柱4とを接合するように構成しても構わない。
【0026】
埋設用管体11は、図3に示すように、埋設用管体本体12と、ロック機構13と、回転トルク伝達用部材14と、を備えている。
埋設用管体本体12は、下部鋼管杭2と同一の外径を有する円筒体であり、図4に示すように、埋設用管体11と構真柱一体型杭1とが連結される際において、構真柱4の上部から被さるように構成されている。そして、埋設用管体本体12の側面上部には、周方向に延びる略方形の確認孔15及び確認孔15の上部に並行に設けられた確認孔15と同一形状の操作孔16が、埋設用管体本体12内の中心を挟んで対向する位置に2組形成されている。
【0027】
ロック機構13は、埋設用管体本体12内に、埋設用管体本体12内の中心を挟んで対抗する位置に2組設けられ、各ロック機構13は、保持部17と、鋼管杭吊りロッド18と、掛止部19と、操作部20と、から構成されている。
保持部17は、埋設用管体本体12の内周面に、その上部から下部にかけて上下方向一直線上に複数(本実施形態においては3つ)設けられている。
【0028】
鋼管杭吊りロッド18は、円柱状の棒状体として形成されており、埋設用管体本体12内において保持部17により回転可能に保持され、埋設用管体本体12内を上下に延びて埋設用管体本体12の下方に突出している。この場合において、鋼管杭吊りロッド18の長さは、埋設用管体11と構真柱一体型杭1との連結時において、鋼板杭吊りロッド18の下端部に設けられた掛止部19の上端が、補強板6の下端よりも下方となる長さに形成されている。
【0029】
掛止部19は、略直方体状の平板として形成されており、鋼管吊りロッド18の下端部に、鋼管吊りロッド18の側方に張り出すように接合されている。そして、係止部19は、鋼管吊りロッド18の回転と一緒に回転可能に構成されており、埋設用管体11と構真柱一体型杭1とが連結され、埋設用管体11を杭穴から引き抜く際に、掛止部19の上端により補強板6の下端を掛止する構成となっている。
【0030】
操作部20は、鋼管吊りロッド18の上方に、上下方向に延びる鋼管吊りロッド18に対して直交する方向に接合され、操作孔16を通じて埋設用管体本体12の外部へと延びている。そして、操作部20は、埋設用管体11と構真柱一体型杭1との連結時において、埋設用管体本体12の外部から操作部20を水平方向に回転操作することで、掛止部19を回転させてその上端による補強板6の下端の掛止及び解除を行うことを可能にしている。
【0031】
回転トルク伝達用部材14は、円柱状の棒状体として形成されており、埋設用管体本体12の内周面下端部に、回転トルク伝達用部材14の下端部が埋設用管体本体12の下方に突出するように並行に2本ずつ固定されており、埋設用管体本体12内の中心を挟んで対抗する位置に2組設けられている。そして、回転トルク伝達用部材14は、埋設用管体11と構真柱一体型杭1との連結時において、並行に設けられた2本の回転トルク伝達用部材14のうち、一方が補強板6の側面と当接し、他方が回転補助部材7の側面と当接することにより、埋設用管体11の回転トルクを構真柱一体型杭1へと伝達可能に構成されている。
【0032】
次に、本願の第一の実施形態に係る構真柱一体型杭の施工方法を図面を参照して説明する。図5は、構真柱一体型杭の施工方法を示す説明図である。
まず、下杭25に予め逃げ芯26を設置しておき、下杭25の杭芯をセットする(図5(a))。
そして、中掘り工法により、下杭25を、その鉛直精度を確認しつつトランジットで回転させながら埋設を行う(図5(b))。
次に、下杭25の上部に中杭27を建込み、継手部を溶接する(図5(c))。この場合において、下杭25と中杭27とから下部鋼管杭2が構成される。ここで、本実施形態においては、下杭25と中杭27とにより下部鋼管杭2を形成しているが、杭を埋設する深度等に応じて適宜変更し、下杭25のみにより、又は下杭25と複数の中杭27とにより下部鋼管杭2を構成することが可能である。
【0033】
そして、下部鋼管杭2を、鉛直精度を確認しながら、トランジットにより回転させながら埋設を行う(図5(d))。
さらに、回転させながら埋設を行った下部鋼管杭2の上部に埋設用管体11を建込む(図5(e))。
そして、埋設用管体11の沈設を行い、下部鋼管杭2の先端ビットが所定の深度に到達した後、下部鋼管杭2の先端ビットを拡大させてセメントミルク(W/C=60%)を注入しながら根固め球根を築造する(図5(f))。
そして、ロッド28を洗い水を注入しながら引き上げる(図5(g))。
さらに、埋設用管体11を引き上げることにより、下部鋼管杭2を中杭27の上端までを引き上げる(図5(h))。
【0034】
そして、上部鋼管杭3に構真柱4を予め工場において接合して一体に加工しておき、下部鋼管杭2の上部に構真柱4が接合された上部鋼管杭3を同軸状に建込み、継手部を溶接により接合して、構真柱一体型杭1を形成する(図5(i))。この場合において、構真柱4が接合された上部鋼管杭3は予め工場において加工されており、現場においては上部鋼管杭3の下端と下部鋼管杭2の上端との溶接のみを行えばよいため、現場での最終的な溶接時における溶接量を減らすことができるとともに、構真柱4が接合された上部鋼管杭3と下部鋼管杭2との位置合わせを簡単に行うことが可能となる。ここで、本実施形態においては、下部鋼管杭2の上部に構真柱4が接合された上部鋼管杭3を接合する構成となっているが、上部鋼管杭3を用いずに、予め下部鋼管杭2の頭部に補強板6を上部鋼管杭3の場合と同様に設けておき、図5(i)の時点において、補強板6の上部に構真柱4を同軸状に建て込み、継手部を溶接により接合するように構成しても構わない。そして、かかる構成によっても、現場での最終的な溶接時における溶接量を減らすことが可能となる。また、上部鋼管杭3を用いずに、予め構真柱4に補強板6を接合して一体としておき、図5(i)の時点において、下部鋼管杭2に構真柱4に接合された補強板6を挿入して構真柱4を補強板6の上部に同軸状に建て込み、補強板6と下部鋼管杭2との継手部を溶接により接合する構成としても構わない。そして、かかる構成によれば現場での最終的な溶接時における溶接量を減らすとともに、構真柱4と下部鋼管杭2との位置合わせを簡単に行うことが可能となる。
【0035】
次に、構真柱一体型杭1の上部に埋設用管体11を建込み、埋設用管体を介して圧入又は回転圧入を行い、構真柱一体型杭1を根固め球根付近まで再度沈設する(図5(j))。ここで、構真柱一体型杭1と埋設用管体11との連結は、まず、埋設用管体11を、上部鋼管杭3のH鋼4に被せるように、上部鋼管杭3の上部に同軸状に建込む。この場合において、埋設用管体11の下方に突出した鋼管吊りロッド18を上部鋼管杭3の補助管5の内部に補強板6の間から挿入する。そして、埋設用管体本体12の上方外部から操作部20を手動により水平方向に回転操作することで、鋼管吊りロッド18の下端部に設けられた掛止部19を回転させ、係止部19を補強板6の下方に回動させる。これにより、埋設用管体11を引き抜くことによって、掛止部19の上端が補強板6の下端を掛止し、埋設用管体11と構真柱一体型杭1とを一緒に引き抜くことが可能となる。また、構真柱一体型杭1の沈設時においては、埋設用管体11に2組設けられた回転トルク伝達用部材14が、補強板6の側面及び回転補助部材7の側面と当接することにより、埋設用管体11の回転トルクを構真柱一体型杭1へと伝達することが可能となっている。この場合において、構真柱一体型杭1と埋設用管体11とは外径が同一に構成されているとともに、構真柱一体型杭1と埋設用管体11との連結に用いるロック機構13及び補強板6は、それぞれ埋設用管体本体12又は補助管5の内部に設けられているため、構真柱一体型杭1の沈設時における構真柱一体型杭1及び埋設用管体11の孔壁に対する抵抗を小さくすることが可能となる。
【0036】
さらに、構真柱一体型杭1を所定の位置に設置して、レベル止めを行う(図5(k))。この場合において、埋設用管体本体12に設けられた確認孔15により、埋設用管体11の上方外側からH鋼4の方向を確認することが可能となっているため、構真柱一体型杭1を事前に決定した方向で精度良く設置することが可能となる。
【0037】
そして、4時間程度保持した後、埋設用管体11を構真柱一体型杭1から取り外して回収する(図5(l))。ここで、構真柱一体型杭1と埋設用管体11との連結を解除するには、まず、埋設用管体本体12の上方外部から操作部20を手動により水平方向に回転操作させることで、鋼管吊りロッド18の下部に設けられた掛止部19を回転させ、掛止部19による補強板6の掛止を解除する。この場合において、操作部20は、埋設用管体本体12の側面上部に設けられた操作孔16より操作することが可能であるため、構真柱一体型杭1の設置完了後に埋設用管体11と構真柱一体型杭1とを容易に取り外すことが可能となる。また、操作部20の回転操作のみにより、埋設用管体11を回転させることなく構真柱一体型杭1と埋設用管体11との連結を解除することが可能であるため、埋設用管体11を取り外す際における構真柱一体型杭1の共回りを回避することが可能となり、構真柱一体型杭1を事前に決定した方向で精度良く設置することが可能となる。
【0038】
次に、本発明の第二の実施形態に係る構真柱一体型杭の施工方法について図面を参照して説明する。第二の実施形態の構真柱一体型杭の施工方法は、図5に示す第一の実施形態の構真柱一体型杭の施工方法と基本構成は同様であるが、埋設用管体11の代わりに図6に示す埋設用管体31を用いている。なお、本実施形態に係る構真柱一体型杭1においては、回転補助部材7は備えられていない。
【0039】
図6は本発明の第二の実施形態に係る埋設用管体の斜視図である。図7は本発明の第二の実施形態に係る構真柱一体型杭と埋設用管体とが係合した状態を示す斜視図である。
埋設用管体31は、図6に示すように、埋設用管体本体32と、掛止板33と、を備えている。
埋設用管体本体32は、下部鋼管杭2と同一の外径を有する円筒体であり、図7に示すように、埋設用管体31と構真柱一体型杭1とが連結される際において、構真柱4の上部から被さるように構成されている。そして、埋設用管体本体32の側面上部には、周方向に延びる略方形の確認孔34が埋設用管体本体32内の中心を挟んで対向する位置に2組形成されている。
【0040】
掛止板33は、埋設用管体本体32の内周面下端部に接合され、埋設用管体本体32の下端から下方へ延びる回転力付与部35と、回転力付与部35の下端部において側方に張り出すように埋設用管体本体32の周方向に延びる掛止部36と、から略L字状の板状体として形成されている。そして、掛止板33は、埋設用管体本体32の内周面において、埋設用管体本体32内の中心を挟んで対抗する位置に2組、両係止板33の掛止部36の延びる方向が埋設用管体31の回転方向において同一方向となるように設けられている。この場合において、回転力付与部35の上下方向の長さは、埋設用管体31と構真柱一体型杭1とが連結される際において、回転力付与部35の下端部から側方に張り出した掛止部36の上端が、補強板6の下端を掛止することが可能な長さに形成されている。
【0041】
構真柱一体型杭1と埋設用管体31との連結は、まず、埋設用管体31を、上部鋼管杭3のH鋼4に被せるように、上部鋼管杭3の上部に同軸状に建込む。この場合において、埋設用管体31の下方に突出した掛止板33を上部鋼管杭3の補助管5の内部に補強板6の間から挿入する。そして、埋設用管体本体32を回転させることで、回転力付与部35の下端部に設けられ掛止部36を補強板6の下方へと入り込ませる。これにより、埋設用管体31を引き抜くことによって、掛止部36の上端が補強板6の下端を掛止し、埋設用管体31と構真柱一体型杭1とを一緒に引き抜くことが可能となる。また、構真柱一体型杭1の沈設時においては、掛止板33の回転力付与部35が、補強板6の側面と当接することにより、埋設用管体31の回転トルクを構真柱一体型杭1へと伝達するようになっている。この場合において、構真柱一体型杭1と埋設用管体31とは外径が同一に構成されているとともに、構真柱一体型杭1と埋設用管体11との連結に用いる掛止板33及び補強板6は、それぞれ埋設用管体本体32又は補助管5の内部に設けられているため、構真柱一体型杭1の沈設時における構真柱付き交換杭1及び埋設用管体31の孔壁に対する抵抗を小さくすることが可能となる。
【0042】
そして、構真柱一体型杭1と埋設用管体31との連結を解除するには、埋設用管体本体32を連結時と逆方向に回転させることで、掛止部36による補強板6の下端部の掛止を解除することができる。この場合において、掛止板33は埋設用管体本体32を切り欠いて形成されたものではないため、埋設用管体本体32の回転時において掛止板33が構真柱一体型杭1に干渉することは少なく、埋設用管体31を取り外す際における構真柱一体型杭1の共回りを回避することが可能となり、構真柱一体型杭1を事前に決定した方向で精度良く設置することが可能となる。
【0043】
そして、本願の第一及び第二の実施形態に係る構真柱一体型杭の施工方法によれば、中掘り工法と構真柱一体型杭の施工方法とを組み合わせて行うことにより、施工に用いられる杭の杭長が長い場合や、崩落性の激しい地盤において施工を行う場合においても、構真柱一体型杭1を精度よく設置することが可能となるとともに、工期を短縮することが可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、種々の変更を行うことができる。
例えば、上記第一の実施形態においては、上部鋼管杭3の補助管5において、必ずしも回転補助部材7を備える必要は無く、埋設用管体11の回転トルク伝達用部材14と上部鋼管杭3の補強板6とだけにより、埋設用管体11の回転トルクを構真柱一体型杭1に伝達する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る構真柱一体型杭の斜視図である。
【図2】構真柱一体型杭を構成する上部鋼管杭の水平方向断面図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係る埋設用管体の斜視図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る構真柱一体型杭と埋設用管体とが係合した状態を示す斜視図である。
【図5】構真柱一体型杭の施工方法を示す説明図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る埋設用管体の斜視図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る構真柱一体型杭と埋設用管体とが係合した状態を示す斜視図である。
【図8】特許文献1に示す逆打工法用仮設対応支柱の施工方法に用いられる仮設対応支柱付き杭及び埋設用管体用鋼管を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 構真柱一体型杭
2 下部鋼管杭
3 上部鋼管杭
4 構真柱
5 補助管
6 補強板
7 回転補助部材
8 ずれ止め用凸部
11 埋設用管体
12 埋設用管体本体
13 ロック機構
14 回転トルク伝達用部材
15 確認孔
16 操作孔
17 保持部
18 鋼管杭吊りロッド
19 掛止部
20 操作部
25 下杭
26 逃げ芯
27 中杭
28 ロッド
31 埋設用管体
32 埋設用管体本体
33 掛止板
34 確認孔
35 回転力付与部
36 掛止部
41 仮設対応支柱付き
42 既製PC杭
43 H鋼
44 突起
45 埋設用管体用鋼管
46 案内掛止溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建て込んだ鋼管杭の上端に接合される鋼管からなる補助管と、前記補助管内周面に設けられて、平面視で前記補助管内を複数の区画に区切る補強板と、前記補強板の上端に接合されて上方に延びる構真柱と、を備えることを特徴とする構真柱の杭への接合構造。
【請求項2】
建て込んだ鋼管杭の頭部内周面に設けられて、平面視で前記鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板と、前記補強板の上端に接合されて上方に延びる構真柱と、を備えることを特徴とする構真柱の杭への接合構造。
【請求項3】
前記補強板に対し、側方向に突出したずれ止め用の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の構真柱の杭への接合構造。
【請求項4】
鋼管杭の頭部内周面に、平面視で前記鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板を予め接合しておき、
現場にて、前記補強板の上端に、上方に延びる前記構真柱の下端を接合することを特徴とする鋼管杭への構真柱の施工方法。
【請求項5】
上方に延びる構真柱の下端に、平面視で鋼管杭内を複数の区画に区切る補強板の上端を予め接合しておき、
現場にて、前記鋼管杭の頭部内周面に、前記補強板を接合することを特徴とする鋼管杭への構真柱の施工方法。
【請求項6】
鋼管からなる補助管内周面に、平面視で前記補助管内を複数の区画に区切る補強板を接合し、前記補強板の上端に、前記補強板の上方に延びる構真柱の下端を接合して予め一体としておき、
現場にて、前記鋼管杭の上端に前記補助管の下端を接合することを特徴とする鋼管杭への構真柱の施工方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の接合構造を有する杭と着脱自在に連結され、前記杭を打ち込み又は回転させる埋設用管体であって、
前記埋設用管体は、前記構真柱に被さる筒状の埋設用管体本体と、
前記埋設用管体本体の内周面に回転可能に保持され、前記埋設用管体本体内を上下に延びて前記埋設用管体本体の下方に突出する鋼管杭吊りロッドと、該鋼管杭吊りロッドの下端部に設けられて、側方に張り出した掛止部と、を備えたロック機構と、
前記埋設用管体本体の内周面に固定され、前記埋設用管体本体の下端から下方に突出する回転トルク伝達用部材と、を備えることを特徴とする埋設用管体。
【請求項8】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の接合構造を有する杭と着脱自在に連結され、前記杭を打ち込み又は回転させる埋設用管体であって、
前記埋設用管体は、前記構真柱に被さる筒状の埋設用管体本体と、
前記埋設用管体本体の内周面に固定され、前記埋設用管体本体の下方に延び、その先端部が側方に張り出して、前記補強板に掛止可能な、略L字状の掛止板と、を備えることを特徴とする埋設用管体。
【請求項9】
前記埋設用管体本体の側面には、確認孔が設けられていることを特徴とする請求項8又は9記載の埋設用管体。
【請求項10】
中掘り工法により杭を沈設し、根固め球根を築造した後、
前記杭を引き上げ、請求項6に記載した施工方法により構真柱を前記杭に接合し、
その構真柱に請求項7乃至9のうちいずれか1項記載の埋設用管体を被せ、その埋設用管体を介して圧入又は回転圧入することにより、当該杭を前記根固め球根付近まで沈設することを特徴とする杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−31970(P2007−31970A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213095(P2005−213095)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(592195126)ノザキ建工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】