説明

構造化粒子の製造方法

【課題】構造化粒子を含有する複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】乾燥前駆体粉末、前駆体液、液の前駆体蒸気および/又は前駆体ガス状の第一前駆体を提供する工程、高強度場ゾーンを有するプラズマを用意する工程、およびプラズマの高強度場ゾーンに前記第一前駆体を通す工程、を含み、前記第一前駆体がプラズマの高強度場ゾーンを通るときに、前記第一前駆体の少なくとも一部が分解され、第二前駆体を有するエアロゾルがプラズマの高強度場ゾーンの下流で用意されそして分解した第一材料が第二前駆体上に凝縮されて構造化粒子を形成する、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省より与えられた契約番号DE−AC52−06NA25396に基づき政府支援により行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、粒子の製造方法に関し、詳細には、構造化粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノ粒子の開発および製造は、少なくとも過去10年間、バルク材と原子又は分子構造体とのギャップを埋める性質を示すことが多いナノ粒子の特性について研究が行われてきた。例えば、ナノ粒子は粒子のサイズに依存する特性を示し得て、そして特性、例えば、溶融温度、熱および/又は電気伝導度、物理的硬度等は同じ化学組成を有するバルク材と比べたとき非常に異なり得る。
【0004】
金属ナノ粒子を製造するために用いられる方法としては、機械的磨砕、スパッタリング、有機金属化合物の熱分解、有機金属化合物のマイクロ波プラズマ分解等が挙げられる。乾燥前駆体粉末のプラズマ分解はナノ粒子を製造するための効果的な方法であることが証明された。それは、乾燥前駆体粉末が、材料の取り扱いを簡略化することができ、比較的狭い粒度範囲のものを得ることができ、そして好ましい製造速度が達成できるからでる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コア−シェル構造のナノ粒子を製造するための従来の方法は、粒度分布が大きく且つ製造速度が低い方法に限られていた。従って、従来技術の不都合を有しない構造化粒子、そして場合によっては構造ナノ粒子の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
構造化粒子を含有する複合材料の製造方法が開示される。本発明の方法は、第一材料を含有する第一前駆体およびプラズマ領域を発生させる働きをするプラズマトーチを用意する工程を含む。乾燥前駆体粉末、前駆体液、液の前駆体蒸気および/又は前駆体ガス状で存在し得る第一前駆体を、プラズマトーチによって発生されるプラズマの高強度場ゾーンに通して第一前駆体の少なくとも一部が分解する。第一前駆体が乾燥前駆体粉末、前駆体液および/又は液の前駆体蒸気を含む場合、それは第一ガス中に懸濁され得て、プラズマの高強度場ゾーンを通る前に第一エアロゾルを製造し得る。第一前駆体が前駆体ガスを含有する場合、前駆体ガスはプラズマの高強度場ゾーンを通る前に第一ガスと混合されてもされなくてもよい。
【0007】
第二前駆体を乾燥前駆体粉末状で有する第二エアロゾルは、第二エアロゾルガス中に懸濁され得て、そしてプラズマ発生ゾーンの後に又は下流に導入され得る。この配置は、第二エアロゾルが、プラズマを発生させる高強度の電気および/又は磁場領域(RF、マイクロ波、DC等)を通過しないことを確実にする。しかしながら、第二エアロゾルは、プラズマの「残照」領域に注入され得る。ある場合には、第二前駆体の乾燥前駆体粉末は、それが分解した後に第一前駆体によって、そして場合によってはまた第一エアロゾルガスおよび/又はプラズマガスからの原子によって少なくとも部分的に被覆されている粒子を含有する。加えて、第一前駆体材料はシェル材料を含有し得てそして第二前駆体はコア材料を含有し得て、そして構造化粒子は構造ナノ粒子であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、構造化粒子の製造方法を説明するフローダイヤグラムである。
【図2A】図2Aは、乾燥前駆体粉末を用いて構造化粒子を製造するために用いられる装置の略図である。
【図2B】図2Bは、液の前駆体蒸気を用いて構造化粒子を製造するために用いられる装置の略図である。
【図2C】図2Cは、前駆体ガスを用いて構造化粒子を製造するために用いられる装置の略図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施態様により製造されたコア−シェル構造化粒子の略図である。
【図3B】図3Bは、本発明の実施態様により製造された付加的外殻を有するコア−シェル構造化粒子の略図である。
【図3C】図3Cは、本発明の1つの実施態様により製造された構造化粒子の略図である。
【図3D】図3Dは、本発明の1つの実施態様により製造された構造化粒子の略図である。
【図3E】図3Eは、本発明の1つの実施態様により製造された構造化粒子の略図である。
【図3F】図3Fは、本発明の1つの実施態様により製造された構造化粒子の略図である。
【図4】図4は、LiTi12/炭素のコア−シェルナノ粒子の透過電子顕微鏡法(TEM)画像である。
【図5】図5は、炭素で被覆されたLiTi12の高分解能透過電子顕微鏡法(HR−TEM)画像である。
【図6】図6は、SnO/炭素コア−シェルナノ粒子のTEM画像である。
【図7】図7は、SnO/炭素コア−シェルナノ粒子のHR−TEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、構造化粒子を含有する複合粒子の製造方法を含んでいる。本発明における構造化粒子は、電気活性材料、触媒材料、水素吸蔵材等として用いられ得る。従って、本発明は材料の製造方法としての実用性を有している。
【0010】
本発明の方法は、第一材料を含有する乾燥前駆体粉末、前駆体液、液の前駆体蒸気および/又は前駆体ガスを用意する工程を含む。当然のことながら、第一材料は、構造化粒子のためのシェル又は被覆材料のための前駆体であり得る。乾燥前駆体粉末および/又は前駆体液は、第一ガス中に懸濁されて第一前駆体を含有する第一エアロゾルを製造し得る。第一前駆体が液の前駆体蒸気および/又は前駆体ガスを含む場合、前駆体蒸気および/又は前駆体ガスはプラズマトーチに入る前に第一ガスと混合されてもよくされなくてもよい。本発明の目的のために、エアロゾルは微細な固形粒子および/又は液滴のガス状懸濁物と定義される。
【0011】
また、本発明の方法は、ガス又は液体の流入からプラズマを発生させる高強度場(電気および/又は磁気)ゾーンを有するプラズマを提供する工程を含む。高強度場ゾーンは、高周波、マイクロ波エネルギー又は直流放電を用いて発生させられ得る高電磁エネルギーの領域である。第一前駆体は、プラズマの高強度場ゾーンを通過させられ得て、その際に第一材料の少なくとも一部の分解が起る。第一前駆体が乾燥前駆体粉末および/又は液を含む場合には、分解は第一材料の蒸発を含み得る。しかしながら、第一前駆体が液の前駆体蒸気および/又は前駆体ガスを含む場合は、前記分解は前駆体蒸気および/又は前駆体ガスのより小さい分子および/又は原子への分解を含み得る。
【0012】
高強度場ゾーンから下流に、第二エアロゾルガス中に懸濁された第二前駆体を有する第二エアロゾルが導入される。この配置は、第二エアロゾルが、プラズマを発生させる高電場気および/又は磁場領域(RF、マイクロ波、DC等)を通過しないことを確実にする。しかしながら、第二エアロゾルは、プラズマの「残照」領域、高強度場ゾーンに直接に隣接したプラズマトーチの領域に注入され得る、すなわち、高強度場ゾーンと残照との間には他の領域はない。残照は、ガス又は液からプラズマを発生させるのに十分な高強度場はないが、高温(>100℃)を有し得て、且つガスに加えて、高エネルギー帯電した種、化学ラジカル、液および固体を含有し得る。当然のことながら、残照領域は、自由電子とイオンおよび化学ラジカル種を含有することによって、実際は最もよくプラズマ領域と分類され得る。これらのプラズマ種(例えば、高エネルギー帯電した種)は、流れ又は拡散によって高強度場領域から最初に入るが、いくつかのラジカル、イオンおよび電子が高エネルギー帯電した種から残照領域内でなお生成され得る。
【0013】
第二前駆体は、第二材料を含む乾燥前駆体粉末状で存在し得る。ある場合には、第二材料は、第一前駆体が分解した後に第一前駆体からの第一材料、そして時には第一エアロゾルガスおよび/又はプラズマガスからの原子によって少なくとも部分的に被覆されている粒子を含有する。このようにして、望ましい構造、形状、サイズおよび/又は特性を持って前に製造された粒子状の第二材料が、新規な構造化粒子を製造するために様々な材料によって少なくとも部分的に被覆され得る。本発明の目的のために、用語の「構造化粒子」とは、望ましい製造時の形状、サイズ、材料の混合、材料の混合物のサイズおよび/又は構造を有する粒子として定義される。
【0014】
実例のためそして説明の目的のみのために、外殻によって包含された内核を有するコア−シェル粒子は、1つ以上の付加的外殻/被覆部を有するコア−シェル粒子であるが、構造化粒子の1つの例である。別の方法では、望ましい第一材料/第二材料の物理的構造が得られるように、コアの表面上の離れた複数の位置にコアに付着している第二材料を有する第一材料のコアを有する粒子は、構造化粒子の1つの例である。
【0015】
上述のように、構造化粒子は、第一材料の外殻に封入された第二材料の内核、又は第一材料で部分的に被覆された第二材料のコアを有し得る。加えて、本明細書に開示されている方法を用いて製造される構造化粒子は、後の粒子製造工程で前駆体として用いられ得る。例えば、本明細書に開示されているように製造されたコア−シェル粒子は、それに適用された被覆膜の付加的な1つ以上の層を持つ第二前駆体として用いられ得る。付加的な1つ以上の層は、最初の第二材料、最初の第二材料と新規な第三材料との混合物、新規な第三材料、第四材料およびそれらの組み合わせ等からなり得る。
【0016】
当然のことながら、コア−シェル粒子ではない構造化粒子にとっても同じである、すなわち、様々な構造化粒子が「設計」され、そしてすでに構造化粒子であるかあるいはなくあり得て、高強度場ゾーンのプラズマ下流に入った別の前駆体材料上に、プラズマの高強度場ゾーンを通った前駆体材料を堆積させることによって製造される。そのような構造化粒子は、第一および/又は第二材料が、それぞれ触媒である第二および/又は第一材料の支持体である触媒粒子であり得る。従って、本明細書に開示される製造方法は、構造化粒子を製造するために第一前駆体が高強度場ゾーンを通りそして第二前駆体が高強度場ゾーンを迂回する限り、一般的に制限のない材料の配列と物理的構造の選択を持つ粒子を提供し得る。
【0017】
前記粒子は、ミクロンサイズの粒子、サブミクロンサイズの粒子および/又はナノメートルサイズの粒子であり得る。本発明の目的のために、ミクロンサイズの粒子は1〜1000μmの平均径を有し、サブミクロンサイズの粒子は200〜1000μmの平均径を有し、そしてナノメートルサイズの粒子はナノ粒子として知られているが1〜200nmの平均径を有する。
【0018】
ある場合には、新しい粒子が第一前駆体からの原子、そして時にはまた第一ガスおよび/又はプラズマガスからの原子の再構成によって高強度場ゾーン内で生成され得る。従って、第一ガスは、高強度場ゾーンから任意の新しい粒子をプラズマ残照領域中に運び得る。前記残照領域は、高強度場ゾーンの下流の空間の容量である。この領域は、ガス又は液からプラズマを発生させるのに十分高い場はないが、高温(>100℃)、そしてプラズマとしてなお分類される物質の状態を有し得る(すなわち、自由電子およびイオンを含有している)。高強度場がない場合、全ての種は残照領域内で急速に冷却することに留意しなければならない。加えて、急速冷却はプラズマの非プラズマ、すなわちガス、液および/又は固体の混合物への変化をもたらし、そして新しい粒子の構造に影響を及ぼし得る。残照領域が存在すると、粒子は室温付近の温度を有する領域に受け取られ、そこでは第一前駆体の原子成分から高強度場ゾーンおよび残照領域で生成された高度に変化した粒子、そしていくつかのガス中のプラズマキャリアガスおよび/又は第一ガスが系から典型的にはフィルターで除去され得る。
【0019】
他の例では、新しい粒子は、第一前駆体からの材料によって被覆されている第二前駆体からの材料によって高強度場ゾーンの下流で生成され得る。例えば、分解した第一前駆体からの原子の堆積によって少なくとも部分的に被覆された第二前駆体からの材料は、任意的に第一材料によって少なくとも部分的に被覆されることが望ましい粒子を含み得る。
【0020】
プラズマは、非酸化性プラズマであり得て、そしてある場合には連結管内でマイクロ波エネルギーを集中させて発生されるプラズマを用いた低出力の大気圧又は大気圧に近い圧のプラズマである。第一ガスおよび第二ガスは、事例的にヘリウム、アルゴンおよびそれらの組み合わせを含む不活性ガスであり得る。加えて、第一ガスは活性ガス、すなわち、少なくとも第一前駆体の一部を含有するガス、例えばAr+エチレンなど、であり得る。
【0021】
本発明の方法は、プラズマの高強度場ゾーンに、第一ガスに加えて不活性ガスでもあるプラズマガスを通すことをさらに含み得る。ある場合には、第二材料は、リチウム合金材料、すなわちリチウムと合金し得る材料であり、そしてスズ、シリコン、アルミニウム、チタン、ゲルマニウム、それらの組み合わせ等のような元素を含有し得る。他の例では第二材料はリチウム化合物である。第一材料は、炭素、窒素、酸素、それらの組み合わせ等から選択される元素を含有し得て、事例的には炭素、炭化物、窒化物、酸化物等を含有する。また、当然のことながら、本発明の方法は、第一前駆体および/又は第二前駆体材料で製造されているコアおよび/又は被覆膜を有する多層コアおよび/又は多層被覆膜を有する構造化粒子の形成法を提供する。
【0022】
本発明の少なくとも一つの実施態様は、1000μm未満の平均外径を有する構造化粒子の製造方法を提供する。ある場合には、1000nm未満の平均外径を有する構造化粒子が製造され得て、一方他の場合には、500nm未満の平均外径を有する構造化粒子が製造され得る。さらに他の場合には、200nm未満の平均外径を有する構造化粒子が製造され得て、一方さらに他の場合には、100nm未満の平均外径を有する粒子が製造され得る。なおさらに他の場合には、50nm未満の平均外径を有する構造化粒子が製造される。コア−シェル構造のナノ粒子の平均壁厚は、1μm未満であり得て、500nm未満であり得て、100nm未満であり得て、50nm未満であり得て、そしてある場合には20nm未満であり得る。
【0023】
次に、類似の数字が類似の要素と一致している図面を参照すると、図1は、構造化粒子を含有する複合材料を製造するための実施態様を参照番号10で示す。プロセス10は、工程100で粉末、液、液の蒸気および/又はガス状で第一前駆体を用意する工程、および工程110でプラズマトーチに第一前駆体を通す工程を含む。工程110でプラズマトーチに第一前駆体を通すと、第一前駆体の一部として含有される第一材料の少なくとも一部の分解が起る。ある場合には、第一前駆体は複数の材料、例えば第一材料と1つ以上の追加の材料とを含有し得る。加えて、乾燥前駆体粉末状で第二材料を含有する第二前駆体は工程115で用意され得る。次いで、分解した第一前駆体からの材料を含有する蒸気が、工程120で構造化粒子を形成するために第二前駆体からの第二材料上に堆積させることが可能となる。
【0024】
図2Aを参照すると、乾燥前駆体を用いて構造化粒子を製造するための装置の略図が参照番号30で概略的に示されている。この図に示されるように、第一ガス300は、注入管302を通って第一前駆体306を含む第一前駆体容器304の中に入る。第一前駆体306は、1種以上の材料、例えば、乾燥前駆体粉末を含有し得る。また、第一前駆体は、製造される構造化粒子内に組み込まれない成分を含み得るが、全工程である程度役立つために存在し得る。
【0025】
十分な流速で第一ガス300が第一前駆体容器304へ流れると、第一前駆体306の懸濁をもたらして第一エアロゾルを製造し得る。その際、第一前駆体は、少なくともその一部が石英プラズマトーチ340に入っている出口管330を通過又は通って流れる。ある場合には、出口管330は、通常、導波管360の中間で終わるセラミック部332を有する。導波管360はマイクロ波エネルギーをプラズマトーチ340に結合させるために用いられる。また、プラズマトーチ340内を通るプラズマガス350は含有され得るが、そこを通る第一エアロゾルを有する出口管330のセラミック部332の外側である。
【0026】
プラズマトーチ340上の導波管360を用いてマイクロ波エネルギーを集中させると、プラズマはプラズマトーチ340内に位置する高強度場ゾーン342で発生され得る。第一エアロゾルがプラズマトーチ340の高強度場ゾーン342を通ると、高強度場ゾーン342の温度は第一前駆体306の少なくとも一部の分解が起るほどである。分解した第一前駆体306はプラズマトーチ340の高強度場ゾーン342を出て煙突領域370中に入る。高強度場ゾーン342を出ると、分解した第一前駆体306の原子は固形に凝縮し得る。
【0027】
第二ガス310が、提供され得てそして注入管312を通って第二前駆体316を含む第二前駆体容器314に入る。十分な流速で第二ガス310が第二前駆体容器314に流れると、第二ガス310内での第二前駆体の懸濁をもたらし第二エアロゾルを製造する。第二前駆体316は粒子状の1種以上の材料を含有し得る。また、第一前駆体306と同様に、第二前駆体316は、生成される任意の構造のナノ粒子のコアおよび/又はシェル内に組み込まれない成分を含有し得るが、全工程である程度役立つために存在し得る。
【0028】
第二エアロゾルは、生成した後には出口管318を通過するか通って位置320で高強度場ゾーン342の下流の装置30に入る。ある場合には、第二エアロゾルは残照領域344内の装置に入る。位置320で装置30に入った後、分解した第一前駆体の原子がその上に固形に凝縮しそしてそれによって構造化粒子を形成するときに第二前駆体は被覆され得る。構造化粒子は、粒子フィルター390、煙突領域370の内壁および/又は粒子トラップ(図示せず)から集められ得る。
【0029】
前駆体液を用いて構造化粒子を製造するための装置の略図が要素図2Bに示され、類似の数字は上記の類似の要素を参照すること。この実施態様において、第一ガス300は、エアロゾルを用意するために液303の液滴303が第一ガス中に包含されるような十分な速度で、前駆体液容器301に保持される前駆体303を通過又は通って泡立ち得る。また、当然のことながら、液303は、第一ガスが液303を通過後も第一ガス300中に存在し得る。加えて、第一ガス300は、蒸気の液303から第一ガス300の供給源への逆拡散を防止するために用いられ得る容器290を任意に通過し得る。
【0030】
容器301を通過した後、液303の液滴および/又は蒸気を有する第一ガス300は、容器304を通りそしてプラズマトーチ340中に入り得る。当然のことながら、容器304は乾燥前駆体粉末306を含んでも含まなくてよく、そして液303の液滴および/又は蒸気を有する第一ガス300は、容器304を使用することなくプラズマトーチ340中に直接的に通るか又は入り得る(図2Bには図示せず)。
【0031】
図2Cを参照すると、第一前駆体は、プラズマトーチ340に入る活性ガス305として用意され得る。ある場合には、活性ガス305は第一ガス300と混合され得るが、しかしこれは必須ではない。加えて、活性ガス305は、ある場合には前駆体材料を欠くかそうでない、又は容器304を使用することなくプラズマトーチ中に直接的に入る容器304を通り得る。
【0032】
図3A〜3Fは、装置30を用いて製造され得る構造化粒子を概略的に示している。例えば、図3Aは、第二材料から製造された内核212および第一材料から製造された外殻214を有するコア/シェル構造化粒子210を示す。図3Bは、第二材料から製造された内核222、第二材料から製造された第一外殻224および第三材料から製造された第二外殻226を有するコア/シェル構造化粒子220を示す。図3Cは、第一材料から製造されたコア232およびコア232の離れた位置に付着している第二材料234を有する構造化粒子230を示し、一方図3Dは、第三材料から製造されたシェル236を製造するために被覆されている構造化粒子230を示す。そして最後に、図3Eは、第一材料から製造されたコア242およびコア242の離れた位置に付着している第二材料244と第三材料246を有する構造化粒子240を示している。当然のことながら、第二材料244と第三材料246とは互いに重なるかそうでない位置を有し得て、あるいは別の方法では、第三材料246は、図3Dに外殻236によって示されるように、完全な外殻を形成することなく、図3Fに示されるように第二材料244を覆い得る。
【0033】
理論に縛られことなく、構造化粒子を形成するメカニズムは、核形成プロセスによってコアおよび/又は被覆膜の少なくとも一部を形成するために分解した第一前駆体材料からの原子の凝縮に起因すると仮定される。凝縮した第一前駆体材料原子は、類似の核の上に集まりそして第二前駆体材料を少なくとも部分的に被覆するおよび/又はそれに付着する。残照領域344中では、構造化粒子は、第一材料と第二材料とが互いにサイズ等の最終構造を有して、その最終の構造に「凍結」される。当然のことながら、構造化粒子は、第二前駆体材料として用いられ得てそして同じ工程を用いて少なくとも部分的に被覆されそしてその際に多層および/又は傾斜層構造化粒子を製造し得る。
【0034】
様々な前駆体粉末材料が構造化粒子を製造するために用いられ得る。例えば、リチウムと合金化可能な材料が第二材料として用いられ得て、そして炭素、窒素、酸素、リン、硫黄などを含む化合物が第一材料として用いられ得る。別の方法では、リチウム化合物が第二材料として用いられ得る。ある場合には、第二エアロゾル中に存在する第二材料粒子は、装置30に入った後には溶融又は蒸気化せずそして高強度場ゾーン342を出る第一材料粒の原子を凝縮することにより被覆される。
【実施例】
【0035】
本明細書に開示された製造法に追加の内容を提供するために、以下に2つの実施例を提供する。
【0036】
実施例1
チタン酸リチウム(LiTi12)のコアおよび炭素のシェルを有するコア/シェルナノ粒子を、図2に示す装置および上記の製造法を用いて製造した。特に、アントラセンおよび/又はエチレンの第一前駆体を提供し、そして1.47標準L/分(SLPM)の流速でアルゴンの第一ガスを用いてプラズマトーチを通した。また、加えて、2.89SLPMの流速のアルゴンのプラズマガスを用意した。第二前駆体として、38μm未満の平均径を有するLiTi12の粒子が、1.83SLPMの流速を有するアルゴンの第二ガスを用いて高強度場ゾーンとプラズマ装置の残照領域との間の位置に用意された。900ワットのマイクロ波エネルギー源および+10トールの全圧がプラズマトーチ内でプラズマを発生させるために用いられ、そしてある場合には、アントラセンおよび/又はエチレンおよびLiTi12がプラズマ工程の間、超音波振動に供された。
【0037】
上記のように、アントラセンおよび/又はエチレンは、少なくとも部分的に分解されそしてLiTi12の粒子上に凝縮できるようにされたと想定される。LiTi12/炭素コア−シェルナノ粒子の透過電子顕微鏡法(TEM)画像が図4に示され、そして炭素シェルがLiTi12コアの周りに連続的であることを示す高分解能透過顕微鏡法(HR−TEM)画像が図5に示されている。
【0038】
実施例2
複数の酸化スズ(SnO)/炭素コア−シェルナノ粒子を図2に示す装置を用いて製造した。特に、アントラセンの第一前駆体を1.47SLPMの流速を有するアルゴンの第一ガスを用いてプラズマの高強度場ゾーンに用意した。加えて、アルゴンのプラズマガスを2.89SLPMの流速を用いて用意した。SnOの第二前駆体を1.83SLPMの流速を有するアルゴンの第二ガスを用いて残照の底端部/高強度場ゾーン領域の頂部に用意した。プラズマトーチ内でプラズマを発生させるために、900ワットのマイクロ波エネルギーと全圧+10トールを用い、そしてある場合には、プラズマ工程の間、アントラセンおよびSnOを入れた1つ又は両方のビーカーに超音波振動を供した。SnO/炭素コア−シェルナノ粒子のTEM画像を図6に示し、そして内部のSnOコア上の外部炭素シェルを示すHR−TEM画像を図7に示す。
【0039】
本発明は特定の流速、組成又は構造に制約されない。加えて、上記の実施例が異なる全組成を有しそしてプラズマ高強度場ゾーンでのみ一緒になりそして混ざる各ガスフローを有する二重ガスフロー系を有する方法を開示しているとしても、他のガス、ガス流速および/又はプラズマ系が本発明の範囲内に含まれる。実施例のためそして説明の目的のためにのみ、第一ガスとプラズマガスが同じである1つのフローガス系を有する直流(DC)放電プラズマを用いる方法が、開示された本発明の方法の範囲内である。この方法は、プラズマを通って流れるガスの全ておよび第一前駆体が高強度場ゾーンに達する前に十分混合されていることをもたらし、上記の実施例に記載されているように第一ガスとプラズマガスとが互いに高強度場ゾーンの中心で混ざる2つのガスフロー系と反対である。加えて、パルス電流源によって提供されそして断続的高強度場ゾーンを有する断続的プラズマが本発明の範囲内に含まれる。従って、高強度場ゾーンの用語は断続的高強度場ゾーンおよび/又はプラズマ発生ゾーンを含む。
【0040】
前述の図面、詳解および記述は本発明の特定の実施態様を説明するものであるが、それらはその実施への限定を意図するものではない。本発明の多くの修正および変形は、本明細書に示される教示を考慮すれば当業者にとって直ちに明らかであろう。本発明の範囲を規定するのは、全ての均等を含めて以下の特許請求の範囲である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化粒子を含有する複合材料の製造方法であって、
乾燥前駆体粉末、前駆体液、液の前駆体蒸気、前駆体ガスおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される第一前駆体である、第一材料を含有する第一前駆体を用意する工程、
第一ガスを用意する工程、
高強度場ゾーンと高強度場ゾーンの下流である残照領域とを有するプラズマを用意する工程、
第一ガスおよび第一前駆体をプラズマの高強度場ゾーンを通す工程、
プラズマの高強度場ゾーン内で第一前駆体中の第一材料の少なくとも一部を分解する工程、
乾燥前駆体粉末であり、第二材料を含有する第二前駆体を用意する工程、
第二前駆体を第二ガス中に懸濁させてエアロゾルを製造する工程、
残照領域中にエアロゾルを通し、その際にエアロゾルに高強度場ゾーンを迂回させる工程、
分解した第一材料をプラズマの高強度場ゾーンから除く工程、および
分解した第一材料の少なくとも一部をエアロゾル中の第二材料上に凝縮させて、構造化粒子を製造する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第一前駆体が複数の材料を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第一ガス中に前記第一前駆体を懸濁させて、プラズマの高強度場ゾーンを通る第一エアロゾルを製造する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第一材料の少なくとも一部を分解する工程が、前記第一材料の少なくとも一部を蒸発させる工程である請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記構造化粒子が、ミクロンサイズの粒子、サブミクロンサイズの粒子およびナノメートルサイズの粒子からなる群から選択される平均外径サイズを有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記構造化粒子が、コア−シェル構造のナノ粒子である請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記構造化粒子が、第一材料によって部分的に被覆された第二材料で製造されたコアを有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第一材料が、金属、炭素、窒素、酸素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される元素を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第二材料が、複数のナノ粒子状である請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第二材料が、リチウム化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第二材料が、リチウム合金材料である請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記構造化粒子を第二前駆体内の第二材料として用い、そして分解した第一材料を第二エアロゾル中の構造化粒子上に凝縮させて、さらなる構造化粒子を製造する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記構造化粒子を第二前駆体内の第二材料として用い、そして第一前駆体の一部であって且つプラズマの高強度場ゾーンで分解した第三材料をエアロゾル中の構造化粒子上に凝縮させて、さらなる構造化粒子を製造する工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記さらなる構造化粒子を第二前駆体内の第二材料として用い、そして第一前駆体の一部であって且つプラズマの高強度場ゾーンで分解した第四材料を第二エアロゾル中のさらなる構造化粒子上に凝縮させてまたさらなる構造化粒子を製造する工程をさらに含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第一エアロゾルがプラズマの高強度場ゾーン内で終了する管を通る請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
前記プラズマの高強度場ゾーンを通るプラズマガスを供給する工程をさらに含む、請求項13に記載の製造方法。
【請求項17】
前記プラズマが、非酸化性のプラズマである請求項1に記載の製造方法。
【請求項18】
前記プラズマが、連結器内で集中させたエネルギーを用いる低出力大気圧又は近大気圧プラズマである請求項1に記載の製造方法。
【請求項19】
前記構造ナノ粒子が、1000μm未満の平均外径を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項20】
前記構造ナノ粒子が、500μm未満の平均外径を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項21】
構造化粒子を含有する複合材料の製造方法であって、
粉末、液、液の蒸気、ガスおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される第一前駆体である、第一材料を含有する第一前駆体を用意する工程、
第一ガスを用意する工程、
プラズマトーチを用意する工程、
プラズマトーチ内で終了する管を用意する工程、
前記管の外側のプラズマトーチを通るプラズマガスを用意する工程、
前記プラズマガスを用いて、高強度場ゾーンを有するプラズマを発生させる工程、
前記第一前駆体と前記第一ガスとを前記管を通し、前記第一前駆体と前記第一ガスとが前記管を出てそしてプラズマの高強度場ゾーン中に入る工程、
前記プラズマの高強度場ゾーン内で前記第一前駆体の少なくとも一部を分解する工程、
ナノ粒子状の第二材料を含有する第二前駆体を用意する工程、
第二前駆体を第二ガス中に懸濁させてエアロゾルを製造する工程、
前記エアロゾルを、前記プラズマの高強度場ゾーンから下流の前記プラズマトーチ中に通す工程、
蒸発した前記第一前駆体を、プラズマの高強度場ゾーンに通す工程、および
蒸発した前記第一前駆体を第二前駆体のナノ粒子上に凝縮させて、構造化粒子を形成するする工程、
を含む、前記方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−284646(P2010−284646A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−132396(P2010−132396)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(510051163)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ニューメキシコ (3)
【出願人】(510051174)ロスアラモス ナショナル ラブ (2)
【Fターム(参考)】