構造壁を備えるマイクロチャネル装置、化学プロセス、ホルムアルデヒドの製造方法
直列反応又は直並列反応を制御するための方法を開示する。バルク流路に隣接してメソ多孔質構造を有する新規マイクロチャネル装置を開示する。また、メタノールからホルムアルデヒドを合成する方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列反応又は直並列反応の実施方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
序論
メタノールからホルムアルデヒドへの選択的酸化のために、Fe−Mo−Ox触媒が商業的に使用されている。この反応は、シェル内に循環熱伝導流体を有する多管反応器内で実施される。その反応温度は、350〜450℃である。しかしながら、この反応は発熱的であるため、触媒床中にホットスポットが生じる。このような「ホットスポット」は、「モリブデン青」としてMoの昇華を促進させ、次の触媒の失活をもたらす。その結果として、Fe−Mo酸化物触媒は、6〜12ヶ月ごとに交換する必要がある。
【0003】
マイクロチャネル内で化学プロセスを実施することが熱伝導及び物質移動の向上に有益であることは、よく知られていることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
本発明は、直列反応又は直並列反応の実施方法を提供する。さらに、本発明は、新規なマイクロチャネル装置及びマイクロチャネル装置内で反応を実施する方法も提供する。また、本発明は、ホルムアルデヒドの改善製造方法及びホルムアルデヒドを製造するのに有用な触媒も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、第1反応体をマイクロチャネルに通し、該マイクロチャネルに第2反応体を複数の工程で通すことを含む直列反応又は直並列反応の実施方法であって、該第1反応体及び第2反応体は、各工程で反応し;該第1反応体に基づく、該方法からの一次生成物の収率は少なくとも90%であり、しかも、各工程の終了時に、該第2反応体は完全には消費されていないが、ただし0.01〜10モル%の範囲で存在する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該第2反応体は、連続工程供給量の非線形減少プロフィールに従って段階分けされる。いくつかの実施形態では、該方法は多相反応を含む;例えば、3相(気体−液体−固体)反応(例えばNi触媒による脂肪酸の水素化)。別の好ましい多相反応では、該第1反応体は液体を含み、該液体は、入口を介して該マイクロチャネルに供給され、該第2反応体は、開口部を介してマイクロチャネルに供給されるガスを含み、しかも、該第1反応体と該第2反応体とは、マイクロチャネルの壁部に装填された固体触媒部で反応する。この方法の別の好ましい実施形態では、2種以上の反応体を主マイクロチャネルを介して供給し、これらの反応体のうちの1種以上を該マイクロチャネルに開口部を介して複数の段階で供給する。好ましい実施形態では、該第1反応体はメタノールであり、該第2反応体は酸素である(この方法でホルムアルデヒドが合成され得る)。好ましいホルムアルデヒド合成方法では、このメタノールと酸素とがメソ多孔質マトリックス上に配置されたチタニアの上に配置された酸化バナジウムと酸化モリブデンとの混合物を含む触媒により反応する。この方法の別の実施形態では、触媒はメソ多孔質マトリックス上に配置されており、該メソ多孔質マトリックスは、該マイクロチャネルの全長に沿った壁部内に配置される(好ましくは、マイクロチャネル内には、メソ多孔質マトリックス上の触媒に隣接してバルク流路が存在する;好ましくは、該壁部の壁は先細になっている)。いくつかの実施形態では、該第2反応体の一部を第1反応体と一緒にしてからマイクロチャネルに入れる。
【0006】
第2の態様では、本発明は、直列反応又は直並列反応の実施方法であって、第1反応体を含む流れを2mm以下の少なくとも一つの寸法を有するバルク流路に通し、ここで、該バルク流路に隣接して、メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒が存在し;該第1反応体は、メソ多孔質マトリックス上に担持される触媒上で第2反応体と反応し;メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒によって占められる容積と、該メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒に隣接するバルク流路の容積とが反応室の容積を決めるものとし;そして、該反応体の流れを、該流れの少なくとも90%が質量平均滞留時間の10%未満で変化する該反応室中の滞留時間を有するように制御することを含む方法を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、該方法は、さらに次の1又は任任意の組み合わせを特徴とする:単一生成物の収率が第1反応体の質量に基づき少なくとも90%であること;第1反応体がMeOHであり、第2反応体がO2であること;該第2反応体は、バルク流路の全長に沿う開口部から添加されること;該第2反応体は、メソ多孔質マトリックスの後にある開口部から添加されること(すなわち、メソ多孔質マトリックスは、開口部とバルク流路との間に配置される;触媒中の温度が少なくとも250℃であること;メソ多孔質マトリックスは、傾斜壁を有する凹部内に配置されること;及び/又はO2含有量が10モル%を超えないように制御されること。
【0007】
本発明の方法のいずれかは、さらに、詳細な説明の部で説明する反応特性条件のいずれかを特徴とすることができる;例えば、特定の平均滞留時間、滞留時間分布、接触時間、収率及び反応体の相対量である。また、本発明の方法は、随意に特定の特徴を有するマイクロチャネル装置を提供する工程を含めて、ここで説明する装置の特徴のいずれかを特徴とすることもできる。同様に、本発明の装置のいずれかは、詳細な説明の部で説明する構造上の特徴のいずれかをさらに特徴とすることができる。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、2mm以下の少なくとも一つの寸法を有するバルク流路と、該バルク流路に隣接するチャネル流路とを備えるマイクロチャネル装置であって、該チャネル壁は、傾斜壁を有するウェルと該ウェル中に配置されるメソ多孔質マトリックス材料とを備え;しかも、該メソ多孔質マトリックスは、該ウェル中に閉じこめられ、かつ、該ウェルの外側にある該バルク流路の壁部を覆っていない、前記マイクロチャネル装置を提供する。いくつかの実施形態では、メソ多孔質マトリックス上の触媒に加えて、ウェルの内部にはないバルク流路周辺の壁部上に配置される触媒(メソ多孔質ではない)も存在する;これは、触媒を反応マイクロチャネルにその場で適用する場合によく見られるであろう。いくつかの好ましい実施形態では、該装置は、次の特徴の一つ又は任意の組み合わせを有する:メソ多孔質マトリックスが構造壁であること;構造壁が階段状構造を形成する層から作られること;ここで説明するウェル及び階段の特定の寸法;該ウェルの壁部の傾きが実質的に直線であること(ウェルの傾斜壁の傾きは、好ましくは30〜60度の範囲内にある);ウェルはマイクロチャネルの幅全体にわたること(長さはバルク流路を通した流れ方向であり、高さは積層装置における厚み方向である;長さ、高さ及び幅は、互いに垂直である);バルク流路は、長方形、円筒形又は三角形である。もちろん、該装置は、このような特徴に制限されない。例えば、装置は、この明細書の他の部分で説明する特徴のいずれかを有することができるであろう。
【0009】
また、本発明は、ここで説明する装置のいずれかにおいて単位操作を実施する方法も包含する。例えば、別の態様では、本発明は、ここで説明するマイクロチャネル装置において単位操作を実施する方法であって、次の工程:該バルク流路に流体を通し、ここで、該流体は該バルク流路を通って所定の方向で流れ、しかも、ウェルは前縁と後縁とを有し、該ウェルの前縁は下方に傾斜し、該後縁は上方に傾斜しているものとし;そして、該流体が該マイクロチャネルを通過するときに単位操作を実施すること
を含む方法を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、バルク流路と、該バルク流路に隣接した構造壁とを備えるマイクロチャネル装置であって、該装置の操作中に該バルク流路を通した所定方向の流体流れが存在し;該構造壁は、該構造壁の最上層に、該流れ方向に対して10°〜80°の角度を有するクロスバーを備え;さらに、該構造層は、開口部及びクロスバーを有する表面下層を備え、ここで、該表面下層のクロスバーは、該バルク流路を通した流れ方向に対して、該最上層における角度とは異なる角度を有し;しかも、該最上層及び表面下層は、該流れ方向で見て、各層において開口部が最初に現れる前縁部を有し、ここで、該表面下層の該前縁部は、該バルク流路からの流れが該最上層の下に捕捉されないように、該最上層におけるクロスバーの角度に相当するテーパー形状を有する前記装置を提供する。このような装置の一例を図14に示している。好ましい実施形態では、該表面下層は、該最上層の鏡像として配置されている;随意に、このような最上層及び表面下層のいくつかを使用して構造壁を形成させることができる。
【0011】
また、本発明は、ここで説明する装置のいずれかを該装置を通過する1種以上の流体と共に備える、装置及び流体を備えるマイクロチャネルシステムも包含する。
【0012】
さらに、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法、次の工程:メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し;
該酸素の供給量は、酸素のモル%が該チャネルの5容積%で10%を超えないように制御され、この場合、メタノールの量(モル)は、該チャネルの5容積%で酸素の量を超えるものとし(ここで、該5容積%は連続長に基づくものであり、かつ、該連続長にわたる全断面積をカバーする);そして
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法を提供する。
【0013】
ここで議論する方法のいずれかについて、いくつかの実施形態では、該方法は、1ミリ秒以下の接触時間で実施できる。いくつかの実施形態では、濃縮の温度又は触媒活性は、反応チャネルの長さに沿って変化し得る。
【0014】
別の態様では、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し;
ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し;ここで、該酸素含有量を、該マイクロチャネル装置の任意の段部に入る酸素の濃度が1モル%よりも高くなるように制御するものとし;そして
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を通し、ここで、該酸素の含有量を、該マイクロチャネル装置の段部に入る酸素の濃度が1モル%よりも高くなるように制御し;
ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、この場合、該酸素の含有量該マイクロチャネル装置の任意の段部に入る酸素の濃度が0.01モル%よりも高くなるように制御するものとし(所定の実施形態では0.05モル%);そして、
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、マイクロチャネル装置の任意の段部に入る酸素の濃度は1モル%よりも高い。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し;該複数の開口部は、間隔を開けて配置され、かつ、不等な間隔であるものとし;そして、ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させることを含む方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を少なくとも第1段部及び第2段部に通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該第1段部及び第2段部のいずれかにおいて該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し;該酸素の含有量を、酸素のモル%が該第1段部及び第2段部のいずれかにおいて10%を超えないように制御するものとし;そして、ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させることを含む方法を提供する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、メタノール及び酸素を250℃以上の温度で触媒上に通すことを含むホルムアルデヒドの合成方法であって、該触媒は、メソ多孔質マトリックス上に配置されたチタニア担体上にV・Mo混合酸化物を含む方法を提供する。好ましいメソ多孔質マトリックスの一つはSBA−15であり、別の好ましいマトリックスは構造壁である。V2O5+MoO3担持触媒は活性が非常に高く、かつ、低温(≦260℃)でホルムアルデヒド生成に選択的である。また、このような触媒は、MoO3昇華に対しても抵抗性があるので、市販のFe−Mo触媒よりも安定である。
【0019】
ホルムアルデヒドを合成する好ましい方法では、該方法は、次の一つ以上:生成物流れが250℃以上の温度を有すること;生成物流れ中のO2含有量(任意の段部又は全ての段部又は最終段部の)が少なくとも0.01%(容積%)であること;ホルムアルデヒド合成触媒がV、Mo及びTiを含む酸化物を有すること;メタノールについて狭い滞留時間分布、をさらに特徴とすることができる。
【0020】
用語解説
マニホルディングに関する構造的特徴は、2003年10月27日出願の米国特許出願第20050087767号及び2006年4月11日出願の米国特許出願第11/400056号に定義されたとおりである。表面特徴、構造壁及び一般的な装置構成は、米国特許出願第20070256736号及び同20070017633号に記載されたようなものであることができる。これらの特許出願の全ては、あたかも以下で完全に複製されたかのように、引用によりここに含めるものとする。ここで示す定義が上記に係る特許出願における定義と対立する場合には、ここで示す定義が効力を持つものとする。
【0021】
標準的な特許用語と同様に、「含む(又は備える)」とは、「包含する」を意味し、これらの用語のいずれも追加の又は複数の構成要素の存在を除外するものではない。例えば、ある装置が薄層、シートなどを含む又は備える場合には、本発明の装置は、複数の薄層、シートなどを包含し得ると解すべきである。別の実施形態では、用語「含む又は備える」は、さらに限定的な成句である「から本質的になる」又は「からなる」に置き換えることができる。
【0022】
チャネルは、連続的であってよい又は間隙を含んでいてよいチャンネル壁により画定される。フォーム又はフェルトを通じた相互接続チャネルは、接続チャネルではない(ただし、フォームなどをチャネル内に配置してもよい)。
【0023】
「接続チャネル」とは、多岐管に連結されたチャネルのことである。典型的には、単位操作は、接続チャネルで行う。接続チャネルは、断面が平坦な入口と断面が平坦な出口とを有する。いくつかの単位操作又は単位操作の部分は、多岐管で行うことができ、好ましい実施形態では、単位操作の70%(所定の実施形態では少なくとも95%)よりも多くを接続チャネルで行う。「接続チャネルマトリックス」とは、隣接した実質的に平行な接続チャネルの一群のことである。好ましい実施形態では、接続チャネル壁は直線的である。いくつかの好ましい実施形態では、接続チャネルは直線的であり、方向又は幅で実質的に変化がない。複数の接続チャンネルの装置についての接続チャネルの圧力降下は、個々の接続チャネルの圧力降下の算術平均である。すなわち、各チャネルを通した圧力降下の合計をチャネル数で割ったものである。「接続マイクロチャネル」は、2mm以下、より好ましくは0.5〜1.5mm、さらに好ましくは0.7〜1.2mmの最小寸法、及び少なくとも1cmの長さを有する。
【0024】
「ヘッダー」とは、接続チャネルに流体を供給するように配置された多岐管のことである。
【0025】
「高さ」とは、長さに対して垂直な方向のことである。積層装置では、高さは積層方向である。
【0026】
チャネルの「水力直径」とは、チャネルの断面積をチャネルの濡れ周長の長さで割ったものの4倍であると定義される。
【0027】
「L−多岐管」とは、一方の多岐管への流れ方向が接続チャネルの軸に対して垂直であると同時に、反対の多岐管での流れ方向が接続チャネルの軸と平行である多岐管構造をいう:例えば、ヘッダーL−多岐管は、接続チャネルの軸に対して垂直な多岐管流れを有するのに対し、フッター多岐管の流れは、装置から外に接続チャネル軸の方向で移動する。この流れは、多岐管の入口から接続チャンネルを通って装置の外に出る「L」角をなす。2個のL−多岐管が一緒になって接続チャネルマトリックスの役割を果たす場合であって、そのヘッダーが多岐管の両末端上に入口を有するとき又はフッターが多岐管の両末端に出口を有するときに、その多岐管を「T−多岐管」という。
【0028】
「積層装置」とは、装置を通して流れるプロセス流れで単位操作を実行することのできる薄層から作られた装置のことである。
【0029】
「長さ」とは、流れ方向である、チャネルの(又は多岐管の)軸方向の間隔をいう。
【0030】
「M2M多岐管」とは、マクロ〜ミクロ多岐管、すなわち、流れを1個以上の接続マイクロチャネルに分配する又はそこから分配するマイクロチャネル多岐管であると定義される。次に、M2M多岐管は、 流れを、マクロ多岐管としても知られている断面積の大きい別の送出源に分配する又はそこから分配する。このマクロ多岐管は、例えばパイプ、導管又は開放容器であることができる。
【0031】
「多岐管」とは、2個以上の接続チャネルに流れを分配する容積である。ヘッダー多岐管の入口表面とは、ヘッダー多岐管の形状が上流のチャネルとは有意に異なることを特徴とする表面であると定義される。フッター多岐管の出口表面とは、フッター多岐管チャネルが下流のチャネルとは有意に異なることを特徴とする表面であると定義される。長方形チャネル及びそれ以外の典型的な多岐管形状のほとんどについて、その表面は平坦である;しかしながら、多岐管と接続チャネルとの接触面が半円形であるような特別な場合には、その表面は曲面であろう。
【0032】
多岐管は、L、U又はZ型であることができる。「U−多岐管」では、ヘッダー及びフッター中の流体は反対の方向に流れると同時に、接続チャネルの軸に対して非ゼロの角度である。
【0033】
「マイクロチャネル」とは、10mm以下(好ましくは 2.0mm以下)で、かつ、1μmを超える(好ましくは10μmを超える)、所定の実施形態では50〜500μmの少なくとも一つ内法(壁から壁、触媒をカウントしない) を有するチャネルのことである。好ましくは、マイクロチャネルは、少なくとも1cm、好ましくは少なくとも20cmの長さに対してこれらの寸法内にとどまる。また、マイクロチャネルは、少なくとも1個の出口とは異なる少なくとも1個の入口の存在によっても決まる。マイクロチャネルは、単にゼオライト又はメソ多孔質材料を通したチャネルではない。マイクロチャネルの長さは、マイクロチャネルを介した流れの方向に相当する。マイクロチャネルの高さと幅は、チャネルを通した流れの方向に実質的に垂直である。マイクロチャネルが2個の主要表面(例えば、積層されかつ結合した複数のシートにより形成される表面)を有する積層装置の場合には、その高さは、主要表面から主要表面までの距離であり、幅は高さに対して垂直である。
【0034】
レイノルズ数の値は、流れの流動様式を説明する。レイノルズ数についての様式は、チャネルの断面形状及びサイズの関数であり、次の範囲がチャネルについて典型的に使用される:
層流:Re<2000〜2200
遷移:2000〜2200<Re<4000〜5000
乱流:Re>4000〜5000。
【0035】
細孔の大きい担体は、少なくとも5%、より好ましくは30〜99%、さらに好ましくは70〜98%の多孔度を有する。好ましい細孔の大きい担体の例としては、市販の金属フォーム及び金属フェルトが挙げられる。また、化学テンプレート剤によって形成されるもののような、マイクロチャネル内でその場で形成される多孔質層も挙げられる。好ましくは、該担体は、BETによって測定されるときに、0.1μm以上、より好ましくは1〜500μmの容積平均細孔直径を有する。多孔質単体の好ましい形態はフォーム及びフェルトであり、好ましくは、これらは、熱に安定で伝導性のある材料、好ましくは、ステンレススチール、インコネル、アルミニウム、銀若しくは銅又はFeCrAlY合金などの金属から作られる。これらの多孔質担体は0.1〜1mmのように薄くてよい。フォームは、その構造全体にわたって細孔を画定する連続壁を有する連続構造である。フェルトは、繊維間に間隙がある不織繊維であり、スチールウールのような絡み合ったより糸が含まれる。多孔質担体は、熱伝導壁と開口部を有するシートとの間に積み重ねられ得る。或いは、多孔質担体は、エッチングされ、又は切断されていてよく、そうでなければ、シート内に位置する活性表面特徴の溝を有していてよい。これらのシートは、組立体を形成させるための壁として機能する非多孔質シートと共に積層できる。この細孔の大きな担体上に1個以上の活性触媒層を配置してもよい。細孔の大きな触媒(及びアルミナに担持された触媒活性部位を含む) は、好ましくは、金属の全細孔容積の5〜98%、より好ましくは30〜95%の細孔容積を有する。好ましくは、金属の細孔容積の少なくとも20%(より好ましくは少なくとも50%)が0.1〜300ミクロン(μm)、より好ましくは0.3〜200ミクロン、さらに好ましくは1〜100ミクロンのサイズ(直径)範囲の細孔から構成される。細孔容積及び細孔径の分布は水銀圧入法(細孔が円筒形形状であると仮定する)及び窒素吸着法により測定する。周知のように、水銀圧入法及び窒素吸着法は、補完的な技術である。水銀圧入法は、大きな細孔径(30nmよりも大きい)を測定することについて正確性が高く、窒素吸着法は、小さな細孔(50mm未満)について正確性が高い。酸化物層上に配置された触媒といった触媒を、細孔の大きな担体上に付着させることができる。
【0036】
「バルク流路」とは、大きな圧力降下なしに反応室を通した迅速なガス流れを可能にするマイクロチャネル装置内にある開口チャネルをいう。バルク流路は、好ましくは、5×10-8〜1×10-2m2、より好ましくは5×10-7〜1×10-4m2の表面積を有する。
【0037】
本発明において定義される「メソ多孔質マトリックス」は、「細孔の大きい担体」又は「構造壁」を有する。いくつかの好ましい実施形態では、メソ多孔質マトリックスは、触媒活性表面(例えば、限定されないが、金属酸化物担持金属)を有する。メソ多孔質マトリックスは、バルク流路の1以上の面上にあり、又は、曲線状の壁の場合には、流路の周囲の一部分上にある。好ましい実施形態では、メソ多孔質マトリックスはウェル中にある。「ウェル」は、マイクロチャンネル壁内のくぼみであり、好ましくは2mm以下の深さを有する。ここで詳細に説明するように、ウェルは、好ましくは、バルク流路に対して垂直な壁ではなく、傾斜壁を有する(最も好ましくは、これらの壁は、隣接するバルク流路を通した流体流れの方向に傾斜している) 。
【0038】
「構造壁」とは、複数の層から構成される壁であって、その複数の層のそれぞれが重複する開口部を有するものをいう。層内にある開口部は、少なくとも0.01平方マイクロメートル(μm2)、好ましくは0.01〜100,000平方マイクロメートル(μm2)、より好ましくは5〜10,000平方マイクロメートル(μm2)の孔面積を有する;また、構造壁について、それぞれの層は、このような開口部を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも1000個含まなければならないが、10個未満の非常に大きな開口を有する介在層が存在していてもよい。これらの開口部は、滞留時間の大きなばらつきをもたらすことなく混合を支援するはずである。構造壁は、バルク流路の面上にある。構造壁のいくつかの例がTonkovich外による米国特許出願第2007/0256736号及び同20060120213号に例示されている。これらは引用により本明細書に含められる。
【0039】
「サブチャネル」とは、より大きなチャネル内にあるチャネルのことである。チャネル及びサブチャネルは、チャネル壁によるそれらの長さにそって定義される。
【0040】
「部分多岐管」とは、少なくとも1個の他の部分多岐管と共に機能して平面で大きな1個の多岐管をつくる多岐管のことである。複数の部分多岐管は、連続壁によって互いに隔てられる。
【0041】
「表面特徴」とは、マイクロチャネル内の流れを変更するマイクロチャネル壁からの突起又は当該壁への凹みのことである。これらの特徴の頂部の面積がその特徴の基部の面積と同一の場合又はそれを超える場合には、その特徴は、凹みであるとみなされる。その特徴の基部の面積がその特徴の頂部の面積を超える場合には、その特徴は突起であるとみなされる(以下で議論するCRFを除く)。表面の特徴は、非円形表面の特徴については深さ、幅及び長さを有する。表面の特徴は、主チャネルの壁部に凹んだ、円形、楕円形、正方形、長方形、チェック形、シェブロン形、ジグザグ形などを有することができる。これらの特徴は、表面積を増加させ、かつ、拡散よりもむしろ、移流によりマイクロチャネル壁に流体をもたらす対流を創り出す。流れパターンは、渦、回転、タンブルであることができ、かつ、他の規則的、不規則的又はカオス的パターンを有することができる。ただし、流れパターンは、カオス的である必要はなく、場合によっては非常に規則的なようである。流れパターンは経持的に安定であるが、二次的な一時回転を受ける場合もある。表面の特徴は、好ましくは斜角である。すなわち、表面当たりのネットの流出の流れに対して平行でも垂直でもない。表面特徴は直角であることができる。すなわち、流れ方向に対して90度の角度であるが、ただし、好ましくは角度が付けられている。活性表面の特徴は、好ましくは、少なくとも一つ軸方向位置での、マイクロチャネルの幅に沿った2以上の角度によってさらに決まる。表面特徴の2以上の面は、物理的に接続していても接続していなくてもよい。マイクロチャネルの幅に沿った1以上の角度は、流体を直線的な層流流線から外に優先的に押し、かつ、引くように作用する。表面特徴の深さについての好ましい範囲は、2mm未満、より好ましくは1mm未満、所定の実施形態では0.01mm〜0.5mmである。表面特徴の側面の幅に関する好ましい範囲は、マイクロチャネル幅にほぼ及ぶ程度に十分なものである(杉綾模様で示されるようなもの)が、所定の実施形態では(例えばフィル特徴)は、マイクロチャネル幅の60%以下、所定の実施形態では40%以下、いくつかの実施形態では約10%〜約50%にわたることができる。好ましい実施形態では、表面特徴パターンの少なくとも一つの角度は、マイクロチャネル幅に対して10°、好ましくは30°以上の角度に向けられている(90°は長さ方向に対して平行であり、0°は幅方向に対して平行である)。側面幅は、マイクロチャネル幅と同じ方向で測定される。表面特徴の側面幅は、好ましくは0.05mm〜100cm、所定の実施形態では0.5mm〜5cmの範囲、所定の実施形態では1〜2cmの範囲にある。構造壁のいくつかの例がTonkovich外による米国特許出願第20070017633号に例示されている。当該文献は引用により本明細書に含められる。
【0042】
30個以下の開口部(すなわち、第2反応体のための開口)を有する多段装置について、それぞれの段部は、1個の開口部の中心点から反応チャネルの全長の下にある次の開口部の中心点までで始まり、最後の開口部の場合には、その段部の長さはチャネルの出口である。反応チャネルへの連続段部(例えば、多孔質膜又は第2反応体のための30個を超える開口部を有する任意の構成を介して)を有する装置について、この装置は、第1開口部で始まり、出口又はごくわずかな反応が生じる程度に十分に低い温度を有するチャネルの領域で終わる各長さの10個の段部を有すると考えられる。
【0043】
「単位操作」とは、化学反応、蒸発、圧縮、化学的分離、蒸留、凝縮、混合、加熱、又は冷却を意味する。「単位操作」は単なる流体輸送を意味しないが、この輸送も他印操作と共に頻繁に行われる。いくつかの好ましい実施形態では、単位操作は、単なる混合ではない。
【0044】
接続チャネル又は多岐管の容積は、空間に基づく。この容積には、表面特徴の凹みも含まれる。ゲート又は格子特徴(これらは、米国特許出願の明細書に記載されるように、流量分布を均一化するのに役立つ)の容積は、多岐管の容量に含まれる;これは、多岐管と接続チャネルとの境界線がかなりの方向転換を特徴とするという規則に対する例外であえる。チャネル壁は、容積計算には含まれない。同様に、開口部(これは通常無視できる)及び整流器(存在する場合)の容積は、多岐管の容積に含まれる。
【0045】
「Z−多岐管」において、ヘッダー及びフッター中の流体は同じ方向に流れるが、接続チャネルの軸に対して0の角度である。多岐管装置に入る流体は、その流体が入った装置の反対側から出る。この流れは、入口から出口に「Z」方向をつくる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、実施例で使用したマイクロチャネル反応器のタイプの断面概略図を示す。バルク流路に直接隣接するのは、波形表面特徴を有するシムであり、頂部シム及び底部シムは、流体の通過を可能にするための穴を有する。
【図2】図2は、3種のホルムアルデヒド触媒:TiO2担持Fe(V2O5)−MoO3(600℃での上の線)、FeMoOx(Engelhardから得られる);及びTiO2/SBA−15担持V2O5−MoO3(600℃での下の線)の温度に応じた重量変化(MoO3の損失)を示す熱重量分析(TGA)を示す。
【図3】図3は、実施例で使用した様々なマイクロチャネル反応器の圧力降下を示す。
【図4】図4は、実施例からのホルムアルデヒド合成反応における、CO選択率のO2分圧への依存性を示す。
【図5】図5は、実施例で説明したように成形されたマイクロチャネル反応器を示す。
【図6】図6は、実施例で説明したマイクロチャネル反応器当たりの構造壁について滞留時間分布(RTD)を示す。
【図7】図7は、(a)直列反応及び(b)直並列反応を示す。
【図8】図8は、構造壁の上面図(a-単一層;b-2層のパターン)である。
【図9】図9は、テーパー壁なしの構造壁反応器におけるホルムアルデヒドの質量分率等高線を示す。ホルムアルデヒド濃度の高い領域(より暗い領域から右下)は、望ましくない副生成物を非常に形成しやすい、滞留時間の高い領域でもある。
【図10】図10は、テーパー構造壁反応器の概略図である。
【図11】図11は、階段を使用したテーパー構造壁反応器を示す。
【図12】図12は、円筒形形状において階段を使用するテーパー構造壁反応器を示す。
【図13】図13は、角度付き構造壁を示す(細孔領域を白で示している)。パネルaは個々のシム及び交互の積層パターンを示している。パネルbは上面図を示している(点線はデッドゾーンを示す)。パネルcは、デッドゾーン近くの出口(ハーフシム)における滞留時間分布を示している。
【図14】図14は、テーパーを有する角度付き構造壁を示す。上のパネル:個々のシム及び交互の積層パターン。下のパネル:組立体上面図(デッドゾーンが除かれている)。
【図15】図15は、操作条件、及び420℃、45個の段部、示された空気の割合及び接触時間による多段反応器の操作についての計算結果を示す。
【図16】図16は、操作条件及び435℃、32個の段部による多段反応器の操作についての計算結果を示す。
【図17】図17は、複数の段部で酸素供給を制御することによって、HCHO収率が増加し得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
マイクロチャネル装置
マイクロチャネル反応器は、1cm以下、好ましくは2mm以下(所定の実施形態では約1.0mm以下)で、かつ、1μmを超える、所定の実施形態では50〜500μmの少なくとも一つの寸法(壁〜壁、触媒はカウントしない)を有する少なくとも1個の反応チャネルの存在を特徴とする。触媒反応チャネルは触媒を含有するチャネルであり、この場合、該触媒は不均一系又は均一系である。均一系触媒は、反応体と同時に流れることができる。マイクロチャネル装置も同様に特徴付けられるが、ただし、触媒含有反応チャネルは必要ない。マイクロチャネルのギャップ(又は高さ)は、好ましくは約2mm以下、より好ましくは1mm以下である。反応チャネルの長さは、典型的にはそれよりも長い。好ましくは、その長さは1cmを超える、所定の実施形態では50cmを超える、所定の実施形態では20cmを超える、所定の実施形態では1〜100cmの範囲にある。マイクロチャネルの両側は、反応チャネル壁によって決まる。これらの壁は、好ましくは、セラミック、スチールのような鉄系合金又はモネルなどのNi系、Co系又はFe系超合金といった硬質材料から作られる。また、これらは、プラスチック、ガラス又は銅、アルミニウムなどの他の材料から作られることもできる。反応チャネルの壁部用の材料の選択は、反応器が目的とする反応に依存し得る。いくつかの実施形態では、反応室壁は、耐久性がありかつ熱伝導性に優れたステンレススチール又はインコネル(商標)から構成される。これらの合金は硫黄が少なくなければならず、所定の実施形態では、アルミナイドを形成する前に脱硫処理を施す。典型的には、反応チャネル壁は、マイクロチャネル装置のための主要な構造的支持体を与える材料から形成される。マイクロチャネル装置は、既知の方法によって作ることができ、好ましい実施形態では、交互配置されるプレート(「シム」としても知られている)を積層することによって作られ、好ましくは、この場合、反応チャネルのための設計されたシムが熱交換のために設計されたシムと交互に配置される。ある種のマイクロチャネル装置は、装置内に積層される10個の層を含み、この場合、これらの層のそれぞれが10個のチャネルを含む;この装置は、チャネルの少ない他の層を含むことができる。
【0048】
マイクロチャネル装置(例えばマイクロチャネル反応器)は、好ましくは、複数のマイクロチャネル(例えば複数のマイクロチャネル反応チャネル)及び複数の隣接する熱交換マイクロチャネルを備える。この複数のマイクロチャネルは、例えば、同時に作動することのできる2、10、100、1000個以上のチャネルを含むことができる。好ましい実施形態では、これらのマイクロチャネルは、平面マイクロチャネルの平行配列、例えば、平面マイクロチャネルの少なくとも3つの配列で配置される。いくつかの好ましい実施形態では、複数のマイクロチャネル入口が共通のヘッダーに連結され、及び/又は複数のマイクロチャネル出口が共通のフッターに連結されている。操作中に、熱交換マイクロチャネル(存在する場合)は、流動性の加熱及び/又は冷却流体を含有する。本発明で使用できるこのタイプの既知の反応器の例としては、米国特許第6,200,536号及び同6,219,973号(両方とも引用により含める)に例示されたマイクロコンポーネントシート構造形(例えば、マイクロチャネルを有する積層体)のものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的のためにこのタイプの反応器構造を使用する際の性能の利点としては、それらの比較的大きい熱伝達率及び物質移動速度並びにいかなる爆発限界も実質的に存在しないことが挙げられる。圧力降下が低いので高い処理量が可能になり、また触媒はチャネル内にある非常に接近しやすい形で固定できるので、分離の必要性を排除することができる。いくつかの実施形態では、1個の反応マイクロチャネル(又は複数のマイクロチャネル)は、バルク流路を含む。用語「バルク流路」とは、反応室内の開いた通路(連続バルク流れ領域)をいう。連続バルク流れ領域は、大きな圧力降下なしに、反応室を通した迅速な流体流れを可能にする。各反応チャネル内のバルク流れ領域は、好ましくは5×10-8〜1×10-1m2、より好ましくは5×10-7〜1×10-4m2の断面積を有する。バルク流れ領域は、好ましくは、(1)マイクロチャネルの内部容積又は(2) マイクロチャネルの断面積のいずれかの少なくとも5%、より好ましくは少なくとも50%、いくつかの実施形態では30〜99%を占める。
【0049】
多くの好ましい実施形態では、マイクロチャネル装置は、複数のマイクロチャネル、好ましくは、該装置に不可欠な共通の多岐管に連結される平行なチャネル(実質的に固定された管ではない)に平行な少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個の群を含み、この場合、該共通の多岐管は、多岐管に連結したチャネルを通した流れを均一にする傾向のある1個以上の特徴を備える。このような多岐管の例は、2003年10月27日出願の米国特許出願第10/695,400号に記載されている(これは、引用により本明細書に含めるものとする)。この文脈において、「平行」は、必ずしも直線的であることを意味せず、むしろ複数のチャネルが互いに一致することを意味する。いくつかの好ましい実施形態では、マイクロチャネル装置は、平行なマイクロチャネルの少なくとも3つの群を備え、この場合、各群内のチャネルは、共通の多岐管(例えば、マイクロチャネルの4群及び4個の多岐管)に連結しており、好ましくは、この場合、各共通の多岐管は、該多岐管に連結したチャネルを通した流れを均一にする傾向のある1個以上の特徴を備える。
【0050】
複数の多岐管を有する装置において、本発明は、1個の多岐管のその接続マイクロチャネルに対する容積比を特徴とすることができ、又は複数の多岐管及びそれらの接続マイクロチャネルの容積の合計を特徴とすることができる。しかしながら、接続チャネルがヘッダー及びフッターに連結される場合には、ヘッダー及びフッターの両方が多岐管の容積の計算に含められなければならない。部分多岐管の容積は、多岐管の容積に含められる。
【0051】
熱交換流体は、プロセスチャネル(例えば反応マイクロチャネル)に隣接する熱伝導マイクロチャネルを通って流れることができ、気体又は液体であることができ、しかも蒸気、オイル又は任意の他の既知の熱交換流体であることができる。この系は、熱交換器内で相変化を起こすように最適化できる。いくつかの好ましい実施形態では、複数の熱交換層が複数の反応マイクロチャネルと交互に配置される。例えば、少なくとも10個の熱交換器が少なくとも10個の反応マイクロチャネルと交互に配置され、好ましくは反応マイクロチャネルの少なくとも10個の層と適合する10個の熱交換マイクロチャネル層が存在する。他の好ましい実施形態では、熱交換マイクロチャネル又は層対反応マイクロチャネル又は層の比は、いくつかは0.1〜1の範囲で、いくつかは1〜10の範囲内で変更できる。これらの層のそれぞれは、単純な直線チャネルを含むことができ、又は層内のチャネルは、より複雑な形状を有することができる。好ましい実施形態では、1個以上の熱交換チャネルの1個以上の内壁は、表面特徴を有する。
【0052】
工業規模マイクロチャネル装置を作るための一般的な方法は、エッチング、スタンピングなどの異なる方法によってシムにマイクロチャネルを形成することである。これらの技術は、当該技術分野において公知である。例えば、シムが互いに積み重ねられ、かつ、化学結合、ろう着などの異なる方法によて結合できる。結合後、装置は機械加工を必要としても必要としなくてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の装置(又は方法)は、触媒材料を含む。触媒は、バルク流路の少なくとも一つの壁部の少なくとも一部を画定することができる。いくつかの好ましい実施形態では、触媒の表面は、流体流れが通過するバルク流路の少なくとも一つの壁を画定する。不均一触媒プロセスの間に、反応体組成物がマイクロチャネルを通って流れ、通過し、そして触媒と接触した状態になることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、各接続マイクロチャネルの幅は、その長さに沿って実質的に一定であり、しかも一セットの接続チャネルの各チャネルは、実質的に一定の幅を有する;「実質的に一定」とは、流れが幅に変動があっても本質的に影響を受けないことを意味する。これらの例のために、マイクロチャネルの幅は、実質的に一定に維持される。ここで、「実質的に一定」とは、製造工程の許容範囲内にあると定義される。
【0055】
マイクロチャネル(表面特徴を有する又は有しない) は、触媒又は吸着剤などの他の物質で被覆できる。触媒は、薄め塗膜などの当該技術分野に知られている技術を使用してマイクロチャネルの内部に塗布できる。また、CVD又は無電解めっきなどの技術も利用できる。いくつかの実施形態では、水性塩による含浸も好ましい。典型的には、この後に、当該技術分野において知られているような熱処理工程及び活性化工程を行う。他の被覆は、触媒先駆物質及び/又は担体を含有するゾル又はスラリー系溶液を含むことができる。被覆は、無電解めっきや他の表面流体反応など、反応の早い壁への塗布方法を包含することもできる。
【0056】
好ましい実施形態では、メタノールはホルムアルデヒド合成触媒上で反応してホルムアルデヒドを形成する。好ましいホルムアルデヒド合成触媒は、Mo、Ti、V及び随意にFeを含む酸素化合物(酸化物)を含む。いくつかの好ましい実施形態では、該酸化物は、基材上に配置される。この基材は、マイクロチャネルの壁である。いくつかの実施形態では、この基材は、アルミノシリケートなどの、安定な多孔質担体である。これらの酸化物は、粉末、ペレットなどとして、又はマイクロチャンネル壁上の壁被覆物として(例えば、マイクロチャンネル壁と酸化物との間に配置されるメソ多孔質層)、メソ多孔質材料上に担持できる。アルミノシリケート又はメソ多孔質材料(例えばSBA−15)は、金属酸化物(例えばチタニア)と混合できる。いくつかの実施形態では、該酸化物触媒は、少なくとも2重量%のV又は少なくとも6重量%のV、所定の実施形態では5〜20重量%のVを含む。これらの重量%は、任意の下層チャネル壁又はメソ多孔質マトリックスの重量を含まないが、ただし、アルミノシリケート、酸化物被覆などのような他の材料の重量は含む。ペレットについては、該ペレットの全質量が含まれる。いくつかの実施形態では、該酸化物触媒は、少なくとも2重量%Mo又は少なくとも6重量%のMo、所定の実施形態では5〜20重量%のMoを含む。いくつかの実施形態では、該酸化物触媒は、少なくとも4重量%のTi又は少なくとも10重量%のTi、所定の実施形態では5〜60重量%のTi、所定の実施形態では10〜40重量%Tiを含む。本発明は、これらの値の任意の組み合わせ、例えば、所定の実施形態では少なくとも2重量%のMoと、2重量%のVと、少なくとも4重量%のTiとを含むものとする。いくつかの実施形態では、該酸化物触媒は、少なくとも0.5重量%のFe又は少なくとも1重量%のFe、所定の実施形態では1〜10重量%のFeを含む。
【0057】
いくつかの好ましい実施形態では、ホルムアルデヒド合成触媒は、チタニア含有粉末にモリブデン酸塩水溶液を含浸させることによって作製できる。鉄が含浸(例えばMo/Ti材料又はV/Ti材料又はMo/V/Ti材料への)又はMo/Ti若しくはV/Ti若しくはMo/V/Tiによるイオン交換によって添加できる。また、V酸化物もMo/Ti、又はV/Ti、又はMo/V/Tiに含浸できる。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態では、表面保護層(例えば、シリカの) をまずマイクロリアクターの構造壁に被覆してから、ホルムアルデヒド合成触媒を被覆する。
【0059】
本発明は、ここで説明する装置内で化学反応及び他の単位操作を実施する方法を包含する。また、本発明は、説明した構造及び/又はここで説明した方法によって形成された構造の、予め結合された組立体及び積層装置も包含する。積層装置は、光学顕微鏡及び電子顕微鏡又は他の既知の技術によって非積層装置とは区別できる。また、本発明は、ここで説明する装置内において化学プロセス(例えば化学反応)を実施する方法も包含する。いくつかの実施形態では、該方法は、流体を多岐管に流し、そして接続チャネル内で単位操作を実施する工程を含む(多岐管がヘッダーの場合には、流体は、接続チャネルに通る前に多岐管を通過する;多岐管がフッターの場合には、流体は、接続チャネルを通貨した後に流れる)。いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、熱交換、混合、化学的分離又はマイクロチャネル内での固体形成プロセスを含めた非反応性単位操作、凝縮及び蒸発などの相変化単位操作を含む;このようなプロセスは、一般に化学プロセスと呼ばれており、その最も広い意味(本願において)には熱交換が含まれるが、好ましい実施形態では、単に熱交換だけでなく、熱交換及び/又は混合以外の単位操作が含まれる。
【0060】
また、本発明は、本発明の装置又は方法のいずれかにおいて1回以上の単位操作を実施する方法も包含する。単位操作を実施するための好適な操作条件は、日常的な実験により特定できる。本発明の反応としては、アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、ヒドロ脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、アンモ酸化、芳香族化、アリール化、自己熱改質、カルボニル化、脱カルボニル化、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、凝縮、熱分解、水素化分解、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、脱水素化、オキシ脱水素化、二量化、エポキシ化、エステル化、交換反応、フィッシャー・トロプシュ、ハロゲン化、ハロゲン水素化、同族体化、水和、脱水、水素化、脱水素化、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理(水素化脱硫HDS/HDNを含む)、異性化、メチル化、脱メチル化、複分解、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、再構成、逆水性ガスシフト、サバティエ、スルホン化、短鎖重合、トランスエステル化、三量体化及び水性ガスシフトが挙げられる。上で列挙した反応のそれぞれについて、当業者に知られている触媒及び条件が存在する;そして、本発明は、これらの触媒を使用する装置及び方法を包含する。例えば、本発明は、アミノ化触媒を含有するアミノ化触媒及び装置によるアミノ化方法を包含する。したがって、本発明は、個々に(例えば、水素化分解)、又はグループで(例えば、ハロゲン水素化触媒、ヒドロメタル化触媒及びヒドロシリル化触媒による、それぞれハロゲン水素化、ヒドロメタル化及びヒドロシリル化)、上記反応のそれぞれについて説明できる。好適な方法は、本発明の装置と、従来技術の知識及び/又は日常的な実験により特定できる触媒とを使用して、それぞれの反応について調節される。本発明は、上記反応のうちの任意の一つ又は任意の組合せを包含する。一例を挙げると、本発明は、ここで説明した構造特徴の一つ以上を有する装置(特に反応器)を使用したフィッシャー・トロプシュ反応を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、マイクロチャネル内におけるホルムアルデヒド合成触媒によるホルムアルデヒド合成を含む。
【0061】
マイクロチャネル又は接続マイクロチャネルのセットを通した圧力降下は、好ましくは500psi(35bar)未満、より好ましくは50psi(3.5bar)未満であり、所定の実施形態では0.1〜20psi(0.007〜1.4bar)の範囲にある。いくつかの実施形態では、多岐管がヘッダーの場合には、多岐管における圧力降下は、ヘッダーの入口と、最も低い圧力を有する接続チャネルの入口(ヘッダー出口に相当する)との間のpsiで測定されるときに、複数の接続チャネルによる圧力降下(複数の接続チャネルにわたる平均圧力降下そして測定される)の(より好ましくは80%未満、より好ましくは半分(50%)未満 所定の実施形態では20%未満)である。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態では、多岐管の容積は、複数の接続チャネルの容積の80%未満、又は50%未満(半分)、所定の実施形態では40%以下、所定の実施形態では20%未満である。いくつかの実施形態では、多岐管の容積は、複数の接続チャネルの容積の10%〜80%である。好ましくは、積層装置内における全ての多岐管の合算容積は、装置内における全ての接続チャンネルの合算容積の50%以下、所定の実施形態では40%以下、いくつかの実施形態では10%〜40%である。
【0063】
装置の特徴は、1個以上のシートを介して特徴を打ち抜く又は切断することによって作製できる。別法として又はそれに加えて、シートからの部分食刻又は材料の除去を使用して装置の特徴を作ることができる。また、切断と食刻との組合せを使用することもできる。いくつかの部分食刻の適用においては、チャネルの深部を、流路間に介在する壁部を有するシートから除去し、好ましくは所定の温度で差圧について壁部を支持するリブが、好ましくは高いアスペクト比のマイクロチャネル(幅対ギャップの比>2)を創り出す。いくつかの実施形態では、整流器及び調整器がM2M部分に設置される。
【0064】
接続チャネル長さの少なくとも5%である接続チャネルの部分で、化学反応、分離又は混合のために流れの中断を使用することが特に有利である。物質交換単位操作(反応、分離及び/又は混合)に適用されるような流れの中断(例えば、障害物を通過させる又は表面特徴上を通るなど)を使用すると、接続チャネル内における層流で作動する小型のマイクロチャネルによる物質交換用途よりもコンパクトな装置を可能にすると考えられる0.5mm〜1.5mmの好ましい範囲にあるプロセスチャネルギャップにより、性能を向上させることが可能である。不均一反応についての例として、壁上にある触媒に反応体を運ぶために流れの中断を使用すると、触媒に反応体を運ぶために層流拡散を使用する場合と比較して、物質移動の制限が克服される。触媒の実効性能は、層流のみよりも2倍以上又は5倍、又は10倍、又は100倍、又は1000倍効果的であることができる。この触媒についての効果の高い物質移動性能により、接続チャネルについて容積を少なくすることが可能になると共に、M2M中におけるチャネルギャップが0.5〜1.5mmの好ましい範囲内にとどまること、つまりM2Mの容積を最低限に抑えることが可能になる。また、化学的分離の例としては、吸収、吸着、蒸留、膜なども挙げられる。化学的分離、混合又は化学反応は、特に、M2Mの全容積の最小化に加え、接続チャネルの一部分が流れの中断した状態に有る場合には接続チャネルの全容積の最小化のために最適化される。
【0065】
段部とは、反応体が添加されかつ段部の長さによってきまるチャネルの区域のことである。段部の長さ(ある開口部又は入口から次の開口部又は入口までの長さ)は、好ましくは、2.5mm〜25cm、より好ましくは2.5mm〜13cm、さらに好ましくは2.5mm〜2.5cmの範囲内にある。段部の数は、少なくとも2〜100個以上(段は、固定数の段部なしに本質的に連続し得る)、所定の実施形態では3〜75個、所定の実施形態では10〜60の段部で変更できる。それぞれの段部は同じ長さを有することができ、又は複数の段部が異なる長さを有することができる。いくつかの好ましい実施形態では、接触時間は、およそ一定に維持されるが、ただし、各段部の長さは、各段部において非常に速い流速に対応するように、徐々に増加する。
【0066】
各段部中における滞留時間の変化は、好ましくは最小化される。いくつかの好ましい実施形態では、入口又は開口部に入る流れの少なくとも90%(より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、さらに好ましくは少なくとも99.5%)は、10%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下で変化する滞留時間を有する。所定の方法の滞留時間分布は、トレーサー又は標識化合物を使用したパルス試験により測定できる。反応器の滞留時間分布特性は、以下で説明する装置試験条件を使用して測定できる。反応器の滞留時間分布特性は、入口又は開口部に入る流れの少なくとも90%(より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、さらに好ましくは少なくとも99.5%)が10%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下で変化する滞留時間を有する測定値により特徴付け可能である。その代わりに、これらの値は、反応器を通過する全ての流体(所定の実施形態では気体である) の質量平均に基づき言及することもできる。ここで、質量平均は、生成物流れの質量に基づく。
【0067】
ホルムアルデヒドを製造するためのメタノールと酸素との反応について、この反応は、好ましくは250℃〜450℃、より好ましくは345℃〜420℃の温度で実施される。好ましくは、酸素を開口部からマイクロチャネルに沿って(すなわち、マイクロチャネルに段階的に)添加して0.1〜20%、より好ましくは0.5〜6%のO2濃度を有するガス混合物を形成させる。これらのO2濃度は、典型的には全段部内で測定される(ある開口部/O2入口から次の開口部/入口までの長さである段部の容積について平均される)が、 段部の出口又はマイクロチャネルの出口(最後の段の場合)でも測定できる。より好ましくは、段部の出口又はマイクロチャネルの出口で測定されるO2濃度は、0.01%〜10%、より好ましくは0.01%未満〜1%、さらに好ましくは0.05%〜0.15%である。望ましくは、これらの酸素レベルは、各段部の出口で測定され、所定の実施形態ではマイクロチャネル全体にわたって測定される(マイクロチャネル反応区域の容積の1%ということ(触媒が存在し、かつ、混合物が反応のために十分に高い温度の場合)。反応器の入口へのメタノール供給はそのままの状態のものであってもよく、又は不活性ガス、場合によっては酸素と混合してもよい。好ましい実施形態では、この供給物は、1%〜50%(モル基準)のメタノール、より好ましくは4〜26%のメタノールを含有する。接触時間(入口への供給に基づく)は、マイクロチャネル反応器全体の通路については1秒以内であり、各段部については、各段で好ましくは1〜500ミリ秒、より好ましくは1〜200ミリ秒である。
【0068】
反応器内でのメタノール転化率は、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも98%である。ホルムアルデヒド選択率は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、いくつかの実施形態では、70〜約95%の範囲内である。
【0069】
また、ホルムアルデヒドの製造方法は、メタノールの転化率及び選択率、例えばホルムアルデヒド選択率によって特徴付けることもできる。該装置は、本発明の詳細な説明又は実施例で説明する選択率及び/又は転化率のいずれかを得ることができる能力によって特徴付けることができる。この場合、該装置は、次の特定の試験条件下で試験される:140ミリ秒の接触時間、400℃の平均反応器温度、5psig(1.34atm)の入口圧力並びに2%O2及び4%メタノール(バランス挿入)を含有する供給物。例えば、装置は、上記試験条件で試験されるときに、少なくとも75%のメタノール転化率及び少なくとも95%のホルムアルデヒド選択率;又は少なくとも75%のメタノール転化率及び1.0%以下のdme選択率によって特徴付けることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネル反応器は、バルク流路と、それぞれのウェルが1μm〜1cm、より好ましくは、10μm〜5mm、より好ましくは20μm〜2mmのウェルの天底に至る深さを有する2個以上の壁部(好ましくは流れ方向にテーパー面を有する)とを有する。随意に、これらのウェルは、構造壁又は他のメソ多孔質マトリックスで部分的に又は完全に満たされている。いくつかの好ましい実施形態では、流動反応体が反応チャネルに添加できるようにウェルの壁部内に開口部が存在する。或いは、反応体は、反応マイクロチャネルの壁部内における、ウェル内ではないところにある開口部から添加できる。
【実施例】
【0071】
例
構造壁マイクロリアクター内でのメタノール部分酸化の実証研究
構造壁反応器、すなわちマイクロチャネル反応器Aを、マイクロチャネル反応器内でのホルムアルデヒドへのメタノール部分酸化実験のために使用した。このマイクロチャネル反応器A装置は、3.5インチ長、0.57インチ幅及び0.05インチの高さであるステンレススチール製構造壁反応器である。0.05インチの高さには、0.02インチの壁のいずれかの側の側面に位置する0.01インチの流れギャップ(プレート又はシムともいう)が含まれる(図1に示す)。各0.02インチの壁は2個のそれぞれ0.01インチの壁から異なる構造パターンで作製されている。流れギャップに近い壁は、2つの頂点で45度の角度を有する「Z」形状の表面特徴(SF)を有する。金属リブ並びに隣接する谷は、両方とも0.015インチ幅である。本壁は、金属表面全体上に〜2750個の孔(0.012インチ直径)を有する「孔」パターンを有する。これらの金属プレート(シム)を入口及び出口ヘッダーと一体化させてマイクロチャネル反応器A装置を形成させた。入口での流動に利用できる実際の断面積は、0.34インチ×0.01インチであるが、表面特徴部分の3.3インチは、触媒の装填のために利用できる。冷却チャネル(0.005インチの高さ、0.34インチの幅及び3.3インチの長さ)を両方の構造壁セットの外面上に作製して装置内での熱放出を制御した。図1を参照されたい。これらの実験を酸素分圧に対して広範囲の条件により実施してCO選択率に及ぼす影響を評価した。以下のデータから分かるように、酸素分圧が低いことは、CO選択率を低下させることを助長する。
【0072】
【表1】
【0073】
次に、DME(ジメチルエーテル)、MF(蟻酸メチル)及びDMM(ジメトキシメタン) の副生成物の形成に及ぼす温度の影響を示す。以下の実験データから分かるように、温度が高いと、MF及びDMMの形成が抑制される。
【0074】
【表2】
【0075】
接触時間減少の影響を実験で調査した。要約を表3に示す。接触時間を141ミリ秒から33ミリ秒に減少させると、ホルムアルデヒド選択率が91%から95%に改善した。
【0076】
【表3】
【0077】
段階添加モデルについての別の検討は、副生成物であるジメトキシメタン(DMM)又はメチラール、蟻酸メチル(MF)及びジメチルエーテル(DME)を管理することである。生成物流を急冷すると、DMMが無視できる値にまで減少した。生成物の急冷は、熱交換器での急速冷却によって又は窒素急冷を使用することによって達成できる。以下の表4から分かるように、これは、DMMの形成を有意に最小化する。
【0078】
【表4】
【0079】
MFの生成は、少ない接触時間及び非常に高い希釈率での粉末状V−Mo Ox/TiO2触媒の元々の評価(表5に示す)と比較して、高いままであった。このデータは、断面積0.25インチ×0.06インチ及び1.08インチの触媒床長さを有するマイクロチャネル充填層反応器で得られた。
【0080】
【表5】
【0081】
考慮すべき他の要因があるかどうかを理解しようとする試みとして、マイクロチャネル反応器A(上記)の詳しいCFDモデルを作製した。その結果(触媒の均一な適用に基づく)は、いくつかの分子が該構造の凹部領域(ウェル)内での平均滞留時間の100倍を超えて滞留できた点が印象的であった(図5参照)。蟻酸メチル形成などの反応について、2個のホルムアルデヒド分子が反応するのに時間が必要な場合には、この広い滞留時間分布が問題となるが、これは、例えば、構造壁の設計変更により滞留時間分布を最小限にすることによって減少できる(本明細書の最後で説明する)。
【0082】
これらの知見を考慮すると、合成方法の改善は、次の原理の一つ以上を基にすることができる:反応体の段階的及び制御添加;ホルムアルデヒドについて、この段階的組成物が、好ましくは、望ましくない生成物(例えば、ホルムアルデヒド合成の場合にはCO)の収量を減少させるために酸素、空気、又は富化空気を含めた(これらに限定されない)酸素源を含むこと;残留副生成物(ホルムアルデヒド合成の場合にも例えばMF)の形成を低減させるための適度の高温(ホルムアルデヒド合成について〜>360℃);DMMの生成を低減させる又はなくすための急速な生成物の急冷;RTDの最小化;及びデッドゾーンを減少させる(及び典型的には触媒を保持する)ための構造壁構造。
【0083】
触媒の製造:
1.2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2(ナノサイズ)
12%V2O5+11%MoO3/TiO2を初期湿式含浸法によって合成した。MoO3/TiO2を最初に製造した。0.528gのパラモリブデン酸アンモニウム(α、(NH4)6Mo7O24・4H2O)を5.29gのH2Oに溶解させた。この溶液を3.0gのTiO2ナノ粉末(200〜220m2/g、α)に含浸させた。この粉末を120℃で1時間にわたり乾燥させた。この含浸方法を1回繰り返した。その後この試料を500℃で4時間にわたり焼成した。V2O5被覆については、0.597gのNH4VO3及び1.2gのH2C2O4を6.6gのH2Oに溶解させた。この溶液をMoO3/TiO2粉末に含浸させた。再度、この試料を120℃で1時間にわたり乾燥させた。この含浸方法を、バナジウム溶液が全てMoO3/TiO2粉末上に被覆されるまで繰り返した。次に、この試料を450℃で4時間にわたり焼成した。
Feをイオン交換によりV2O5+MoO3/TiO2触媒に付加した。1.5gの12%V2O5+11%MoO3/TiO2試料を200mLの0.1M FeCl2溶液に撹拌しながら添加した。このイオン交換を20時間にわたり室温で実行した。次いで、このスラリーをろ過し、そして固形物をH2Oで3回洗浄した。120℃で乾燥させた後に、この試料を400℃で1時間にわたり焼成した。Fe2O3含有量は2%付近である。
【0084】
2.20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15
SBA−15は、シリカを主成分とする公知メソ多孔質材料である。SBA−15を次のとおりに製造した。128.0gの5NのHCl及び272gのH2Oを混合して1.6NのHCl溶液400gを生じさせた。、P123共重合体10.7gを添加し、撹拌しながら35〜40℃に加熱した。P123を溶解させた後に、22.7gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を撹拌しながら添加した。この溶液を35〜40℃で24時間にわたり撹拌した。次に、この混合物を三口フラスコに移し、温度を100℃に上昇させ、そしてこの温度で48時間保持した。このスラリーをろ過し、そしてH2Oで洗浄した。固形物を120℃で1時間にわたり乾燥させ、次いで500℃で4時間にわたり2℃/分の傾斜速度で焼成させた。製造されたSBA−15試料の表面積は876m2/gであった。その後、6.25gのチタンイソプロポキシドを11.0gのイソプロパノールに溶解させた。この溶液を3.0gのSBA−15粉末上に含浸させ、100℃で1時間にわたり乾燥させた。次いで、得られた試料を550℃で2時間にわたり空気中で焼成してTiO2/SBA−15を生成させた。次いで、0.70gのパラモリブデン酸アンモニウムを7.0gのH2Oに溶解させた。この溶液を4.0gのTiO2/SBA−15に滴下した。この粉末を120℃で1時間にわたり乾燥させ、次いで500℃で4時間にわたり焼成した。V2O5被覆については、1.47gのNH4VO3及び2.88gのH2C2O4を15.4gのH2Oに溶解させた。この溶液をMoO3/TiO2/SBA−15粉末に含浸させた。再度、この試料を120℃で1時間にわたり乾燥させた。この含浸方法を、バナジウム溶液の全てが消費されるまで繰り返した。次に、この試料を450℃で4時間にわたり焼成した。最終触媒組成は、20重量%V2O5、10重量%MoO3、26重量%TiO2及び44重量%SBA−15であった。
【0085】
MoO3昇華:
MoO3昇華を、450及び700℃で流動2.5%H2O/空気中において管状反応器内で検討した。表2に示すように、市販のFe−Mo−Ox触媒は、700℃で100時間の試験後に、25%の重量損失を受ける。これに対し、2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2(ナノサイズ)及び20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15触媒の両方については、これよりも有意に低い重量損失が観察される。これらは、それぞれわずか8及び5%に過ぎない。これらの結果は、担持V2O5+MoO3触媒がMoO3昇華に対してより抵抗性が高く、そのため市販のFe−Mo−Ox触媒よりも安定であることを実証するものである。450℃では、100時間の試験後に、3種の触媒すべてについての重量損失が2%未満であったが、これは、実験誤差の範囲内である。
【0086】
MoO3昇華を2つの方法により検討した。第1の方法は、気流中で、温度を上げながら重量損失を測定する熱重量分析(TGA)を伴う。第2の方法は、触媒を700℃〜の温度でH2O及び空気の雰囲気下において100時間にわたり処理することを包含する。市販のエンゲルハードFe2O3−MoO3触媒を対照として使用した。
【0087】
図1は、3種の試料のTGA概略図を示している。この試料の全てが、200〜300℃よりも下で重量をいくらか損失したが、これは吸着されたH2Oによるものである。MoO3は、310℃よりも下では蒸発しないであろう。この概略図から、2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2及びFe−Mo触媒は、およそ2重量%の水を脱離したが、20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15は空気中で8.5重量%を脱離した。温度を上昇させると、Fe−Mo触媒は、約425℃でさらに重量を失い始め、700℃よりも上では、さらに有意な重量変化があった。425℃よりも上で観察されるこれらの重量損失は、MoO3昇華によるものであると考えられる。これに対し、2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2及び20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15は、それぞれ600℃及び675℃よりも上で重量損失を受け始めた。この2つの担持V2O5+MoO3触媒についてのMoO3昇華温度が高いことは、これらの触媒が市販のFe−Mo触媒よりも熱に安定であることを示唆する。
【0088】
H2Oは供給物中に存在する場合があり(しかも、反応中に必ず形成される)かつMoO3昇華を促進させ得るので、本発明者は、H2Oの存在下でのMoO3昇華も検討した。MoO3昇華は、管状反応器内で流動2.5%H2O/空気中において700℃で検討した。表6に示したように、市販のFe−Mo−Ox触媒は、700℃で100時間の試験後に25%の重量損失を受ける。これに対し、2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2及び20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15触媒については、それよりも有意に低い重量損失、すなわち、それぞれわずか8及び5%が観察された。これらの結果は、さらに、担持V2O5+MoO3触媒がMoO3昇華に対してより安定であり、そのため市販のFe−Mo−Ox触媒よりも安定であることを示唆する。450℃では、100時間の試験後に、3種の触媒すべてについての重量損失は2%未満であったが、これは実験誤差の範囲内である。
【0089】
【表6】
【0090】
触媒性能:
触媒処方物(粉末状)についての初期性能試験を、熱交換器を有する充填床マイクロチャネル反応器で実施した。マイクロチャネルの入口断面積は、0.25インチ×0.06インチである。この試験のために、およそ0.2gの触媒(〜1インチの床長さ)を使用した。典型的な試験条件と、MoO3、V2O5及びTiO2担体を含む様々な触媒処方物についての性能のマトリックスとを以下の表7にまとめる。
【0091】
【表7】
【0092】
酸素濃度についての操業制約
4496B、4496C及び2870Aと示される3つの装置(上記図1で説明したマイクロチャネル反応器Aと同じ構造、すなわち、ステンレススチール製の構造壁反応器、3.5インチの長さ×0.57インチの幅×0.05インチの高さ:両側に0.02インチ構造壁が配置された0.01インチの流れギャップ)を試験した。V−Mo酸化物/TiO2触媒を該反応器の構造壁上にその場で被覆した。場合によっては、不活性SiO2被覆をこの構造壁に(その場で)適用してから、該触媒を、充填及び水切り技術を使用してウォッシュコートする。シリカなどの不活性被覆を使用して、副生成物(例えば、MF、DME及びDMM)の形成を最低限に抑える。現場ウォッシュコーティングについての充填及び水切り方法では、まず、この装置を650℃で10時間にわたり熱処理する。次いで、これをウォッシュコーティングプロセスに対して垂直に設置する。この装置を10mL/分の流量でシリンジポンプを用いて10%SiO2で底から充填した。該装置のゾルを〜0.5分間保持した後に、このゾルをくみ出した。チャネル内にある過剰のゾルを、圧縮空気を使用してパージした。次いで、冷却チャネルを水で洗浄した。その後、この装置を120℃で1時間にわたり乾燥させた。この被覆プロセスを3回繰り返した。最後に、この装置を600℃で4時間にわたり焼成した。マイクロチャネル反応器4496B及び4496Cへの触媒充填量は、それぞれ約100mg及び30mgであった。マイクロチャネル反応器2780Aは、約40mgの触媒が充填されたおよそ60mgのSiO2層を有していた。該装置における圧力降下プロフィール(周囲条件:室温及び大気圧での反応器出口で集めた窒素冷却流データ)を図3に示しており、これは、触媒の被覆が流れに接近しやすい主流れギャップの孔面積を減少させ得ることを示している。
【0093】
部分酸化実験を実行するために、HPLCポンプを使用して、液体メタノール供給原料をマイクロチャネル蒸発器に供給した。初期の試験のいくつかは、上記器具の代わりにシリンジポンプと管中管熱交換器を使用した。管中管蒸発器(メタノールの周囲の加熱空気/窒素流れが蒸発に関与する)を設置して、さらに高いメタノール流量を提供し(完全な蒸発を確保する)、そして該蒸発器内での副生成物形成を最低限に抑える(良好な温度制御により)。次いで、蒸発したガスを供給空気(酸素)及び希釈剤(窒素)と共に予備加熱し、その後、60μmステンレススチールフィルター(静的ミキサーと同様に作用する)内で互いに混合してから、反応器入口に供給する。冷却窒素を装置周辺の冷却チャネル内に〜10−15SLPMで流動させる。完全な反応器組立体を絶縁した。また、ヒートテープを使用して周囲への放熱も克服した。反応器を出る生成物流を〜120℃の昇温で保持してパラホルムアルデヒドの形成を防止する。排ガスを吸収装置に運び、そこでこれらの成分の大部分を水中に吸収させる。次いで、該吸収装置からの排ガスを分析のためにAgilent社製の小型GCに送った。続いて、実験中に吸収装置内で集められた液体を伝統的なAgilent6890 GC及び滴定を使用して分析した。試料をメタノール、ホルムアルデヒド(滴定)、ジメチルエーテル(DME)、蟻酸メチル(MF)及びメチラール(DMM)について分析した。
以下に要約する条件の範囲にわたって実験を実施した:
・250℃〜450℃、特に345〜420℃の温度
・0.1%〜20%、特に0.5〜6%の供給O2濃度
・1%〜50%、特に4〜26%の供給MeOH濃度
・10〜500ミリ秒、特に30〜200ミリ秒の範囲の接触時間。
【0094】
マイクロチャネル反応器試験を実施して酸素添加の単一段階をシミュレートした。つまり、メタノール供給物を酸素(空気からの)と反応器入口で混合してからV−Mo Ox/TiO2触媒上で反応させた。装置2870Aからの典型的な実験データを以下の表8に示す。これらの実験で収集されたデータの約90%は、±2%以内という、許容できる炭素収支(反応器を離れる炭素のモル対反応器に入る酸素のモルの比)を有していた。
【0095】
【表8】
【0096】
まず、試験データを、CO選択率について分析した(ホルムアルデヒドの酸化により形成されるCOは、主要な損失物質だからである)。CO選択率は、酸素分圧が低下すると共に直線的に減少することが分かった(提案された反応機構から予想されるとおり)。しかしながら、供給物中の酸素分圧が非常に低い(<1%)と、より高いCO選択率が観察される(図4a参照)が、これは、反応経路の変化を示している。したがって、CO選択率を最小限に抑えるためには、供給物酸素濃度が1〜10%の範囲、さらには1〜5%の範囲、さらには1〜2%の範囲内で望ましい供給酸素分圧の点での操作方法を提案する。これらの実験は、反応器全体において単一段階を再現するため、これらの局所分圧比範囲は、選択されたホルムアルデヒド合成条件下で最も低いCO選択率を与えるために各段階の開始付近において望ましい酸素分圧を示すものである。
【0097】
また、同じデータを反応器出口での酸素分圧(すなわち第1段階の終わり)についても分析した。この場合にも、CO選択率は反応器出口での酸素分圧が低下すると減少することが分かったが、反応器出口での酸素分圧が0.1%未満の場合には増加することが分かった(図4b参照)。したがって、CO形成に有意に寄与する酸素欠乏条件を除去するためには、0.01%〜10%、さらに0.01〜1%の範囲、さらには0.05〜0.15%の範囲内の出口O2濃度が該反応器の全ての段階で望ましい。すなわち、この実験反応器の入口及び出口(すなわち、多段反応器の第1段階)での局所酸素分圧値に課せられる制約は、該反応器内の酸素供給段階の残余についても保持されるはずである。したがって、不活性−段階添加点のそれぞれで反応器に供給される酸素の量を制御することが重要である。
【0098】
反応器性能のキャラクタリゼーション:改良構造壁構造
構造壁装置における滞留時間分布
構造壁反応器において、対流は、反応体分子と構造壁とを接触させ、次いで、これらの分子は表面特徴に拡散する(ある種の対流成分によって促進される)。反応は、壁表面(触媒層)で起こり、物質が主流れギャップに分散し(ある種の対流成分によって促進される)、続いて、対流によって反応器から運ばれる。滞留時間分布(RTD)は、反応器内の分子が滞在する時間の有用な評価を与える。
【0099】
マイクロチャネル反応器装置は、次の層を順に含有する:壁、孔層、z形表面特徴層、バルク流路、z形表面特徴、孔層、壁。マイクロチャネル反応器装置中で流動する流体のRTDを特徴付けるために、マイクロチャネル反応器Aの3D計算流動力学(CFD)シミュレーションを、市販のソフトウェアを使用して実施した。対称境界条件の使用すると、流れギャップの半分だけ(図1に示す)をシミュレートすることが可能になる。構造壁における「孔」及び「Z形表面特徴」を、該装置内における「真の」流れパターンを捕捉するように全て詳細に設計した(図5参照)。流体についての連続法的式及び運動量保存方程式を、有限体積法を使用して解いた。
【0100】
CFDシミュレーションから、流れの大部分が主チャネルを通過することが明らかになった。また、流れのかなりの割合が、「Z形」表面特徴のシムの凹部に入ることも分かる。しかしながら、非常に僅かな(対)流が「孔」シム内で生じる。模擬実験から、孔を含むシムにおけるいくつかの孔が流路の容積に基づき、平均滞留時間(〜10ミリ秒)よりも数桁高い500秒の滞留時間を有することが示された。「Z形」表面特徴層における滞留時間分布は、実際の流れギャップにおいて見られるものに非常に近い。
【0101】
マイクロチャネル反応器A装置におけるRTD挙動の要約したグラフを図6に示している。10ミリ秒(ms)値周辺の第1ピークは、流れギャップ容積に基づく平均接触時間に相当する。次の尾は、「Z形」表面特徴によって与えられる再循環を示している。第2のピーク(80ミリ秒周辺)及び次の尾は、孔「シム」における長い滞留時間を示すものである。数分の滞留時間を伴う長い尾は、ここには示されていない。理想的な流れの反応器では、全ての反応体分子が同じ滞留時間を経験する(対応する滞留時間分布はディラックのデルタ関数であろう)。したがって、非ゼロ変動の滞留時間分布(図6に示したようなもの)は、流れ分子の分散及び流れの不均等分布を示唆する。
【0102】
滞留時間の大きな格差は、直列反応(図7a参照)及び/又は対象の生成物が反応順序において中間体である(この場合「B」)直並列反応(図7b参照)にとって有害である。直列反応及び/又は直並列反応の例としては、(ただし限定されない)酸化、部分酸化、水素化及びニトロ化反応が挙げられる。特に、メタノール部分酸化の場合については、A=メタノール、B=ホルムアルデヒド、C=一酸化炭素、D=ジメチルエーテル、E=蟻酸メチル(A及びBの反応によって形成される追加の損失生成物DMMは図7bには示されていない)。
【0103】
長い滞留時間を有するくぼみ(反応器内の場所)は、所望の生成物(B)についての選択率の喪失につながる望ましくない生成物(例えばC及びE)の主要な発生源である。このような状況は、ホルムアルデヒドの高い生産性及び高い選択性を達成するためには非常に望ましくない。メタノール部分酸化についてこれを例示するために、図8に示す単純なパターンを有する構造壁反応器を模擬試験に使用した。
【0104】
代わりのパターンである数個のシム層(典型的には2〜50個の範囲)を使用して構造壁を作製した。このような構造壁(30層有する)の反応性CFDシミュレーションをホルムアルデヒド合成について実施した(直列−並列反応ネットワーク;図7)。ここで、メタノールが反応体であり、ホルムアルデヒドが望ましい生成物であり、一酸化炭素、ジメチルエーテル及び蟻酸メチルが望ましくない生成物であり、ジメトキシメタンが他の望ましくない生成物である。SWの前縁で完全に流れを生じさえるために、このモデルには0.1インチ長の流れ抜け部が備えられていた。SW反応区域の後には0.05インチ長の流れ抜け部が備えられていた。
【0105】
シミュレーションは、図9に示すように、構造壁の底部の終端部にホルムアルデヒド(HCHO)が蓄積することを示している。また、これらの区域は、非常に低い対流速度、つまり長い滞留時間にも関わっている。したがって、これらの区域は、CO、DME、MF及びDMMといった望ましくない副生成物に至る二次反応にとって好都合に働きやすい。これらの望ましくない生成物についての質量分率の曲線は、図9のHCHOの曲線に密接に従う。
【0106】
このような構造壁中における流れのCFD調査から、流れ抜けギャップ中における対流速度の0.1〜20%であることが明らかになった。しかしながら、上記デッドゾーンは、かなりの再循環及び非常に低い実効対流速度も有する。これらは、高い選択率で高い生産性の目標を満たす(例えば、>95%のホルムアルデヒド収率)のを困難にする、大きな望ましくない反応の区域をもたらす。
【0107】
構造壁内のデッドゾーンから生成物/反応体の対流を促進させるためには、図10に示されるように、傾斜構造壁パターンを提案する。両末端でのテーパーが重要であり、そしてこれは、再循環伴流の形成を最小限に抑え、かつ、対流速度の成分を構造壁の深さに沿って維持することに役立つ。テーパーの角度(流れ抜けギャップの底部から構造壁の底部までで測定されるθ)は、1度〜90度で変更できる。テーパーの角度が大きいと、構造壁の容積が大きくなり、すなわち触媒充填量が増えるが、構造壁の底部に沿って対流成分を安定化させる点では効果が少ない。望ましいテーパー角度は、10°〜80°、より好ましくは20°〜70°、さらには30°〜60°であることができるであろう。
【0108】
テーパーは、流れ方向が最も効果的であるが、垂直方向で使用することも可能である。実際には、テーパーは、例えば、一連の階段構造壁パターンによって達成できる。図11を参照されたい。これを達成するのに必要な段の数は、触媒充填量及び構造壁の深さに依存するであろう。段数は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、所定の実施形態では少なくとも5、所定の実施形態では3〜30段であろう。
【0109】
テーパーを有する同様の構造壁メッシュを、メッシュスリーブを使用することによって円筒形チャネル形状内に作製できる。長方形チャネル内にプレートの積み重ねを付着させるのと同様に、円筒形チャネル形状において構造壁を形成させるために円筒形メッシュスリーブの積み重ねと接着を想起することができる。図12を参照されたい。また、三角形プリズム及び他の幾何学形状で作るもともできる。
【0110】
角度付き構造壁パターンの特例:
上記構造壁において、流れは構造壁の表面に対して垂直である。この場合には、入射角(構造壁の最上層にある構造壁の表面への流れ方向間で測定されるδ、ここで、「最上」とは、バルク流路に隣接することを意味する。)は0°である。また、構造壁は、0°〜90°、好ましくは10°〜45°、より好ましくは20〜30°の範囲の変動入射角で作製することもできる。これらの角度付き構造壁は、流れに対して平行又は垂直であるもに勝る利点がある。というのは、これらは、流れの勢いを構造に向けることによって、深い構造壁中に追加の対流成分を導入するのに役立つからである。
【0111】
バルク流路に隣接する壁部に流れ方向に角度が付いている反応器では、この角度が追加のデッドゾーン(図13において点線で示された重複領域)の出現の原因となり得ることが分かる。これは、これらの領域が壁部の下の流れ領域との接続が限定されている又はそれとの接続がないためである。これらのデッドゾーンは、長い滞留時間、つまり、望ましくない生成物(上記のようなもの)の高い形成率を有する。このデッドゾーンの形成を多少なりとも解決するために、構造壁シム上のパターンを、図14(上)に示すように、構造壁上に入口及び出口「テーパー」パターン(流れ方向に傾斜)を導入することによって変更できる。得られた組立積層体(図14(下))はいかなるデッドゾーンも欠いており、そのため、直列反応及び/又は中間体が副生成物である直並列反応について、角度付きの構造壁の性能を向上させることが予想される。
【0112】
また、構造壁の深さに沿ったテーパー形成(上記のような)を、このテーパー形成角度付き構造壁の長さパターンと共に使用することもできる。
【0113】
マイクロチャネル内における滞留時間分布を減少させる、説明した構造壁構造は、任意の化学反応について使用でき、また、いくつかの分子に対する長い反応時間により所望の生成物に対する全体的な選択率が減少する部分酸化反応などの直接反応に対して特に利点があることが分かる。
【0114】
滞留時間分布を改善させる、説明した構造壁構造は、フィッシャートロプシュ反応並びにエチレンオキシド、アクリル酸、アクリロニトリル及びスチレンの製造などの反応に対して特別の利点を有する。フィッシャートロプシュ反応の場合には、生成物の分配は、滞留時間分布を改善させることによって、非常に高い分子量の炭化水素の形成を低減させるように調節できる。
【0115】
優れたホルムアルデヒド収率のための段階的酸素付加を有する反応器構造
マイクロチャネル反応器A(すなわちステンレススチール製構造壁反応器、3.5インチの長さ×0.57インチの幅×0.05インチの高さ:両側に0.02インチ構造壁が配置された0.01インチフローギャップ)から作成されたデータを使用してメタノール部分酸化反応ネットワークのモデルを作成した。この5個の反応ネットワーク(以下参照)は、Diakov外(Chem.Eng.Sci.,第57巻,p1563−1569,2002)及びDeshmukh外(App.Cat.A,第289巻、p240−255,2005)により提案されたものに類似する。
【0116】
【化1】
【0117】
メタノール部分酸化反応の化学両論及び速度に基づき、反応生成物HCHOは、酸素への0位の依存性を有するのに対し、主損失生成物COは、酸素において1位の酸素依存性を有する(上で与えたマイクロチャネル反応器における実験からも明らかである)。したがって、酸素から反応混合物への段階的又は多段添加は、HCHOとの反応(ホルムアルデヒドへのメタノール酸化後)に利用できる酸素を制限し、それによってCOへの選択性を最小限に抑えるであろう。他の損失生成物はvizである。MF及びDMMは、中程度に高い温度で反応を実施することによって制御できる(反応の速度を最小限に抑えるが、ただし、CO及びHCHO形成の相対速度を相殺しないように)。
【0118】
この反応モデルは、反応器マイクロチャネルの長さに沿って酸素(空気中)反応体の添加を段階的にシミュレートするように開発された1次元コンピュータモデルで実施できる。この空気の段階的添加は、局所酸素分圧を低下させて一酸化炭素の形成を抑制する(上記のとおり)。収率は、低圧で操作することによって増加した。
【0119】
V−Mo酸化物/TiO2触媒についての実験データからの速度モデルを使用して、段階的に酸素添加される1D多段反応器のモデルを作成した。重要なパラメーターは、各段階についての供給流速、段の長さ、温度及び触媒充填量である。このような2〜100個の段を設計してホルムアルデヒドの収率を最大化させる(収率=転化率×選択率、すなわち両者を最大化させることを意味する)。
【0120】
典型的な段部の長さは、0.1インチ〜10インチ、好ましくは0.1インチ〜5インチ、より好ましくは0.1インチ〜1インチの範囲にある。反応流れへの酸素(空気)の添加のための段部の数は、少なくとも2(収率の低い目標について)〜100(収率の高い目標について)、好ましくは5〜75、場合によっては10〜60個の段部で変更できる。実際には、この段階添加は、空気(又は他の酸素源)のアクティブ(計量)又はパッシブ(抵抗性制御ジェット)添加によって達成できる。生成物の収率を制御するための調節可能なパラメーターとしては、長さ、温度、触媒充填量、各段階についての空気の供給割合が挙げられるが、これらに限定されない。単位長さ当たりの触媒充填量及び段部の長さは、予め決められた収率を維持するために各段部で変更できる。温度は、MF及びDMMに対する選択率を減少させるように制御できると同時に、空気の供給割合はCO選択率を制限するように制御される。予め決められた(目標)収率を達成するために、これらの因子の全てを並行して変更できる。これらの因子の選択は自明ではなく、反応によって変更できるが、ここで例示とおりの一般的なガイドラインを提供することができる。反応器及び反応方法を他の反応に適応できると解すべきである。
【0121】
段部の長さは、特定の段部に供給される酸素のほぼ完全な(>75%、特に>90%、さらには>95% さらには>99%)の転化率を可能にするように設計される。つまり、反応器(段部)中における触媒充填量は、段部の長さにも影響を及ぼすであろう。酸素転化率の完全性の度合いのある程度の変化も、その反応器の位置での全メタノール転化率に基づき許容できる場合がある。しかしながら、非常に低い酸素レベルでCO形成の高い選択率が観察されたら、そのモデルでは、各段部の出口で0.1%のO2という設計制約が必要であった。
【0122】
酸素段部間では、各段部で酸化体と反応混合物との混合を手助けするために、混合特徴が必要となり得ることが予想される。一実施形態では、ジェット又は他の速度の速い酸化体入口(第2供給物流の速度よりも高い入口酸化体流の速度)方法の使用は、触媒内又は触媒前又は触媒間の反応を混合するのに十分なものであると考えられる。表面特徴、ポストその他の混合特徴は、各酸化体供給点への入口付近で2種の流れを混合するために必要であると考えられる。
【0123】
概念説明の証拠として、反応器の単位長さ当たりの均一な温度及び均一な触媒充填量が反応器全体にわたって推定された。各段部の長さ及び反応器に供給される空気(酸素)の割合は、主要同調変数として使用され、また、これらは各段部で変更する(図15a及び16a参照)。
【0124】
空気(酸素)の同じでない供給割合:
空気の割合の大きい短い段部を反応器の入り口付近で使用する。これらの段部は、メタノールの中程度の転化率(10%まで)及び酸素のほぼ完全な転化率(>95%)で高い選択率を達成するのに役立つ。中間段部は、僅かに低い転化率という犠牲を払ってでも最大の選択率を達成することを目的とした。この反応器内の最後の2段は、低いホルムアルデヒド選択率という犠牲を払ってでも高い反応体(メタノール)転化率を達成するように設計された、より長い段である(図15b参照)。
【0125】
同じでない段部の長さ:
全体として、段部の長さのほぼ単調な増加(形式AeBn、n=段部の数)及び供給空気の割合の減少(形式A(1−eBn))が反応器段部長さにわたって見られる。反応器内で達成されるメタノール転化率は、導入された空気(その地点に)の全量にほぼ等しい。というのは、該反応器内における累積酸素転化率が反応器長さ全体に沿って>99%であるからである。
【0126】
また、各段部での接触時間が一定に維持され、段部の長さがその後の各段部における高い流速に適応するように徐々に長くなるという操作戦略も予期される。或いは、損失生成物がより緩やかな反応のため優勢である場合には、接触時間の減少する段部を備えることができるであろう。しかしながら、これらの方法を実施しつつ選択率及び収率への影響について注意する必要がある。反応速度は重要な役割も果たすからである。
【0127】
これらの戦略を用いて、段部の数を増やした反応器シミュレーション(ただし、単位長さ当たりの温度及び触媒充填量は一定)を実施した。図17に示すように、空気供給に対して段部の数を増加させると(5〜60個)、収率が増加する(94.6〜97%)ことが分かるが、これは、上記方法の成功を明らかにするものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列反応又は直並列反応の実施方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
序論
メタノールからホルムアルデヒドへの選択的酸化のために、Fe−Mo−Ox触媒が商業的に使用されている。この反応は、シェル内に循環熱伝導流体を有する多管反応器内で実施される。その反応温度は、350〜450℃である。しかしながら、この反応は発熱的であるため、触媒床中にホットスポットが生じる。このような「ホットスポット」は、「モリブデン青」としてMoの昇華を促進させ、次の触媒の失活をもたらす。その結果として、Fe−Mo酸化物触媒は、6〜12ヶ月ごとに交換する必要がある。
【0003】
マイクロチャネル内で化学プロセスを実施することが熱伝導及び物質移動の向上に有益であることは、よく知られていることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要
本発明は、直列反応又は直並列反応の実施方法を提供する。さらに、本発明は、新規なマイクロチャネル装置及びマイクロチャネル装置内で反応を実施する方法も提供する。また、本発明は、ホルムアルデヒドの改善製造方法及びホルムアルデヒドを製造するのに有用な触媒も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、第1反応体をマイクロチャネルに通し、該マイクロチャネルに第2反応体を複数の工程で通すことを含む直列反応又は直並列反応の実施方法であって、該第1反応体及び第2反応体は、各工程で反応し;該第1反応体に基づく、該方法からの一次生成物の収率は少なくとも90%であり、しかも、各工程の終了時に、該第2反応体は完全には消費されていないが、ただし0.01〜10モル%の範囲で存在する方法を提供する。いくつかの実施形態では、該第2反応体は、連続工程供給量の非線形減少プロフィールに従って段階分けされる。いくつかの実施形態では、該方法は多相反応を含む;例えば、3相(気体−液体−固体)反応(例えばNi触媒による脂肪酸の水素化)。別の好ましい多相反応では、該第1反応体は液体を含み、該液体は、入口を介して該マイクロチャネルに供給され、該第2反応体は、開口部を介してマイクロチャネルに供給されるガスを含み、しかも、該第1反応体と該第2反応体とは、マイクロチャネルの壁部に装填された固体触媒部で反応する。この方法の別の好ましい実施形態では、2種以上の反応体を主マイクロチャネルを介して供給し、これらの反応体のうちの1種以上を該マイクロチャネルに開口部を介して複数の段階で供給する。好ましい実施形態では、該第1反応体はメタノールであり、該第2反応体は酸素である(この方法でホルムアルデヒドが合成され得る)。好ましいホルムアルデヒド合成方法では、このメタノールと酸素とがメソ多孔質マトリックス上に配置されたチタニアの上に配置された酸化バナジウムと酸化モリブデンとの混合物を含む触媒により反応する。この方法の別の実施形態では、触媒はメソ多孔質マトリックス上に配置されており、該メソ多孔質マトリックスは、該マイクロチャネルの全長に沿った壁部内に配置される(好ましくは、マイクロチャネル内には、メソ多孔質マトリックス上の触媒に隣接してバルク流路が存在する;好ましくは、該壁部の壁は先細になっている)。いくつかの実施形態では、該第2反応体の一部を第1反応体と一緒にしてからマイクロチャネルに入れる。
【0006】
第2の態様では、本発明は、直列反応又は直並列反応の実施方法であって、第1反応体を含む流れを2mm以下の少なくとも一つの寸法を有するバルク流路に通し、ここで、該バルク流路に隣接して、メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒が存在し;該第1反応体は、メソ多孔質マトリックス上に担持される触媒上で第2反応体と反応し;メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒によって占められる容積と、該メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒に隣接するバルク流路の容積とが反応室の容積を決めるものとし;そして、該反応体の流れを、該流れの少なくとも90%が質量平均滞留時間の10%未満で変化する該反応室中の滞留時間を有するように制御することを含む方法を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、該方法は、さらに次の1又は任任意の組み合わせを特徴とする:単一生成物の収率が第1反応体の質量に基づき少なくとも90%であること;第1反応体がMeOHであり、第2反応体がO2であること;該第2反応体は、バルク流路の全長に沿う開口部から添加されること;該第2反応体は、メソ多孔質マトリックスの後にある開口部から添加されること(すなわち、メソ多孔質マトリックスは、開口部とバルク流路との間に配置される;触媒中の温度が少なくとも250℃であること;メソ多孔質マトリックスは、傾斜壁を有する凹部内に配置されること;及び/又はO2含有量が10モル%を超えないように制御されること。
【0007】
本発明の方法のいずれかは、さらに、詳細な説明の部で説明する反応特性条件のいずれかを特徴とすることができる;例えば、特定の平均滞留時間、滞留時間分布、接触時間、収率及び反応体の相対量である。また、本発明の方法は、随意に特定の特徴を有するマイクロチャネル装置を提供する工程を含めて、ここで説明する装置の特徴のいずれかを特徴とすることもできる。同様に、本発明の装置のいずれかは、詳細な説明の部で説明する構造上の特徴のいずれかをさらに特徴とすることができる。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、2mm以下の少なくとも一つの寸法を有するバルク流路と、該バルク流路に隣接するチャネル流路とを備えるマイクロチャネル装置であって、該チャネル壁は、傾斜壁を有するウェルと該ウェル中に配置されるメソ多孔質マトリックス材料とを備え;しかも、該メソ多孔質マトリックスは、該ウェル中に閉じこめられ、かつ、該ウェルの外側にある該バルク流路の壁部を覆っていない、前記マイクロチャネル装置を提供する。いくつかの実施形態では、メソ多孔質マトリックス上の触媒に加えて、ウェルの内部にはないバルク流路周辺の壁部上に配置される触媒(メソ多孔質ではない)も存在する;これは、触媒を反応マイクロチャネルにその場で適用する場合によく見られるであろう。いくつかの好ましい実施形態では、該装置は、次の特徴の一つ又は任意の組み合わせを有する:メソ多孔質マトリックスが構造壁であること;構造壁が階段状構造を形成する層から作られること;ここで説明するウェル及び階段の特定の寸法;該ウェルの壁部の傾きが実質的に直線であること(ウェルの傾斜壁の傾きは、好ましくは30〜60度の範囲内にある);ウェルはマイクロチャネルの幅全体にわたること(長さはバルク流路を通した流れ方向であり、高さは積層装置における厚み方向である;長さ、高さ及び幅は、互いに垂直である);バルク流路は、長方形、円筒形又は三角形である。もちろん、該装置は、このような特徴に制限されない。例えば、装置は、この明細書の他の部分で説明する特徴のいずれかを有することができるであろう。
【0009】
また、本発明は、ここで説明する装置のいずれかにおいて単位操作を実施する方法も包含する。例えば、別の態様では、本発明は、ここで説明するマイクロチャネル装置において単位操作を実施する方法であって、次の工程:該バルク流路に流体を通し、ここで、該流体は該バルク流路を通って所定の方向で流れ、しかも、ウェルは前縁と後縁とを有し、該ウェルの前縁は下方に傾斜し、該後縁は上方に傾斜しているものとし;そして、該流体が該マイクロチャネルを通過するときに単位操作を実施すること
を含む方法を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、バルク流路と、該バルク流路に隣接した構造壁とを備えるマイクロチャネル装置であって、該装置の操作中に該バルク流路を通した所定方向の流体流れが存在し;該構造壁は、該構造壁の最上層に、該流れ方向に対して10°〜80°の角度を有するクロスバーを備え;さらに、該構造層は、開口部及びクロスバーを有する表面下層を備え、ここで、該表面下層のクロスバーは、該バルク流路を通した流れ方向に対して、該最上層における角度とは異なる角度を有し;しかも、該最上層及び表面下層は、該流れ方向で見て、各層において開口部が最初に現れる前縁部を有し、ここで、該表面下層の該前縁部は、該バルク流路からの流れが該最上層の下に捕捉されないように、該最上層におけるクロスバーの角度に相当するテーパー形状を有する前記装置を提供する。このような装置の一例を図14に示している。好ましい実施形態では、該表面下層は、該最上層の鏡像として配置されている;随意に、このような最上層及び表面下層のいくつかを使用して構造壁を形成させることができる。
【0011】
また、本発明は、ここで説明する装置のいずれかを該装置を通過する1種以上の流体と共に備える、装置及び流体を備えるマイクロチャネルシステムも包含する。
【0012】
さらに、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法、次の工程:メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し;
該酸素の供給量は、酸素のモル%が該チャネルの5容積%で10%を超えないように制御され、この場合、メタノールの量(モル)は、該チャネルの5容積%で酸素の量を超えるものとし(ここで、該5容積%は連続長に基づくものであり、かつ、該連続長にわたる全断面積をカバーする);そして
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法を提供する。
【0013】
ここで議論する方法のいずれかについて、いくつかの実施形態では、該方法は、1ミリ秒以下の接触時間で実施できる。いくつかの実施形態では、濃縮の温度又は触媒活性は、反応チャネルの長さに沿って変化し得る。
【0014】
別の態様では、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し;
ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し;ここで、該酸素含有量を、該マイクロチャネル装置の任意の段部に入る酸素の濃度が1モル%よりも高くなるように制御するものとし;そして
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を通し、ここで、該酸素の含有量を、該マイクロチャネル装置の段部に入る酸素の濃度が1モル%よりも高くなるように制御し;
ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、この場合、該酸素の含有量該マイクロチャネル装置の任意の段部に入る酸素の濃度が0.01モル%よりも高くなるように制御するものとし(所定の実施形態では0.05モル%);そして、
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法を提供する。いくつかの好ましい実施形態では、マイクロチャネル装置の任意の段部に入る酸素の濃度は1モル%よりも高い。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し;該複数の開口部は、間隔を開けて配置され、かつ、不等な間隔であるものとし;そして、ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させることを含む方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャンネル壁とを備えるものとし;該複数の開口部から酸素を少なくとも第1段部及び第2段部に通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該第1段部及び第2段部のいずれかにおいて該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し;該酸素の含有量を、酸素のモル%が該第1段部及び第2段部のいずれかにおいて10%を超えないように制御するものとし;そして、ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させることを含む方法を提供する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、メタノール及び酸素を250℃以上の温度で触媒上に通すことを含むホルムアルデヒドの合成方法であって、該触媒は、メソ多孔質マトリックス上に配置されたチタニア担体上にV・Mo混合酸化物を含む方法を提供する。好ましいメソ多孔質マトリックスの一つはSBA−15であり、別の好ましいマトリックスは構造壁である。V2O5+MoO3担持触媒は活性が非常に高く、かつ、低温(≦260℃)でホルムアルデヒド生成に選択的である。また、このような触媒は、MoO3昇華に対しても抵抗性があるので、市販のFe−Mo触媒よりも安定である。
【0019】
ホルムアルデヒドを合成する好ましい方法では、該方法は、次の一つ以上:生成物流れが250℃以上の温度を有すること;生成物流れ中のO2含有量(任意の段部又は全ての段部又は最終段部の)が少なくとも0.01%(容積%)であること;ホルムアルデヒド合成触媒がV、Mo及びTiを含む酸化物を有すること;メタノールについて狭い滞留時間分布、をさらに特徴とすることができる。
【0020】
用語解説
マニホルディングに関する構造的特徴は、2003年10月27日出願の米国特許出願第20050087767号及び2006年4月11日出願の米国特許出願第11/400056号に定義されたとおりである。表面特徴、構造壁及び一般的な装置構成は、米国特許出願第20070256736号及び同20070017633号に記載されたようなものであることができる。これらの特許出願の全ては、あたかも以下で完全に複製されたかのように、引用によりここに含めるものとする。ここで示す定義が上記に係る特許出願における定義と対立する場合には、ここで示す定義が効力を持つものとする。
【0021】
標準的な特許用語と同様に、「含む(又は備える)」とは、「包含する」を意味し、これらの用語のいずれも追加の又は複数の構成要素の存在を除外するものではない。例えば、ある装置が薄層、シートなどを含む又は備える場合には、本発明の装置は、複数の薄層、シートなどを包含し得ると解すべきである。別の実施形態では、用語「含む又は備える」は、さらに限定的な成句である「から本質的になる」又は「からなる」に置き換えることができる。
【0022】
チャネルは、連続的であってよい又は間隙を含んでいてよいチャンネル壁により画定される。フォーム又はフェルトを通じた相互接続チャネルは、接続チャネルではない(ただし、フォームなどをチャネル内に配置してもよい)。
【0023】
「接続チャネル」とは、多岐管に連結されたチャネルのことである。典型的には、単位操作は、接続チャネルで行う。接続チャネルは、断面が平坦な入口と断面が平坦な出口とを有する。いくつかの単位操作又は単位操作の部分は、多岐管で行うことができ、好ましい実施形態では、単位操作の70%(所定の実施形態では少なくとも95%)よりも多くを接続チャネルで行う。「接続チャネルマトリックス」とは、隣接した実質的に平行な接続チャネルの一群のことである。好ましい実施形態では、接続チャネル壁は直線的である。いくつかの好ましい実施形態では、接続チャネルは直線的であり、方向又は幅で実質的に変化がない。複数の接続チャンネルの装置についての接続チャネルの圧力降下は、個々の接続チャネルの圧力降下の算術平均である。すなわち、各チャネルを通した圧力降下の合計をチャネル数で割ったものである。「接続マイクロチャネル」は、2mm以下、より好ましくは0.5〜1.5mm、さらに好ましくは0.7〜1.2mmの最小寸法、及び少なくとも1cmの長さを有する。
【0024】
「ヘッダー」とは、接続チャネルに流体を供給するように配置された多岐管のことである。
【0025】
「高さ」とは、長さに対して垂直な方向のことである。積層装置では、高さは積層方向である。
【0026】
チャネルの「水力直径」とは、チャネルの断面積をチャネルの濡れ周長の長さで割ったものの4倍であると定義される。
【0027】
「L−多岐管」とは、一方の多岐管への流れ方向が接続チャネルの軸に対して垂直であると同時に、反対の多岐管での流れ方向が接続チャネルの軸と平行である多岐管構造をいう:例えば、ヘッダーL−多岐管は、接続チャネルの軸に対して垂直な多岐管流れを有するのに対し、フッター多岐管の流れは、装置から外に接続チャネル軸の方向で移動する。この流れは、多岐管の入口から接続チャンネルを通って装置の外に出る「L」角をなす。2個のL−多岐管が一緒になって接続チャネルマトリックスの役割を果たす場合であって、そのヘッダーが多岐管の両末端上に入口を有するとき又はフッターが多岐管の両末端に出口を有するときに、その多岐管を「T−多岐管」という。
【0028】
「積層装置」とは、装置を通して流れるプロセス流れで単位操作を実行することのできる薄層から作られた装置のことである。
【0029】
「長さ」とは、流れ方向である、チャネルの(又は多岐管の)軸方向の間隔をいう。
【0030】
「M2M多岐管」とは、マクロ〜ミクロ多岐管、すなわち、流れを1個以上の接続マイクロチャネルに分配する又はそこから分配するマイクロチャネル多岐管であると定義される。次に、M2M多岐管は、 流れを、マクロ多岐管としても知られている断面積の大きい別の送出源に分配する又はそこから分配する。このマクロ多岐管は、例えばパイプ、導管又は開放容器であることができる。
【0031】
「多岐管」とは、2個以上の接続チャネルに流れを分配する容積である。ヘッダー多岐管の入口表面とは、ヘッダー多岐管の形状が上流のチャネルとは有意に異なることを特徴とする表面であると定義される。フッター多岐管の出口表面とは、フッター多岐管チャネルが下流のチャネルとは有意に異なることを特徴とする表面であると定義される。長方形チャネル及びそれ以外の典型的な多岐管形状のほとんどについて、その表面は平坦である;しかしながら、多岐管と接続チャネルとの接触面が半円形であるような特別な場合には、その表面は曲面であろう。
【0032】
多岐管は、L、U又はZ型であることができる。「U−多岐管」では、ヘッダー及びフッター中の流体は反対の方向に流れると同時に、接続チャネルの軸に対して非ゼロの角度である。
【0033】
「マイクロチャネル」とは、10mm以下(好ましくは 2.0mm以下)で、かつ、1μmを超える(好ましくは10μmを超える)、所定の実施形態では50〜500μmの少なくとも一つ内法(壁から壁、触媒をカウントしない) を有するチャネルのことである。好ましくは、マイクロチャネルは、少なくとも1cm、好ましくは少なくとも20cmの長さに対してこれらの寸法内にとどまる。また、マイクロチャネルは、少なくとも1個の出口とは異なる少なくとも1個の入口の存在によっても決まる。マイクロチャネルは、単にゼオライト又はメソ多孔質材料を通したチャネルではない。マイクロチャネルの長さは、マイクロチャネルを介した流れの方向に相当する。マイクロチャネルの高さと幅は、チャネルを通した流れの方向に実質的に垂直である。マイクロチャネルが2個の主要表面(例えば、積層されかつ結合した複数のシートにより形成される表面)を有する積層装置の場合には、その高さは、主要表面から主要表面までの距離であり、幅は高さに対して垂直である。
【0034】
レイノルズ数の値は、流れの流動様式を説明する。レイノルズ数についての様式は、チャネルの断面形状及びサイズの関数であり、次の範囲がチャネルについて典型的に使用される:
層流:Re<2000〜2200
遷移:2000〜2200<Re<4000〜5000
乱流:Re>4000〜5000。
【0035】
細孔の大きい担体は、少なくとも5%、より好ましくは30〜99%、さらに好ましくは70〜98%の多孔度を有する。好ましい細孔の大きい担体の例としては、市販の金属フォーム及び金属フェルトが挙げられる。また、化学テンプレート剤によって形成されるもののような、マイクロチャネル内でその場で形成される多孔質層も挙げられる。好ましくは、該担体は、BETによって測定されるときに、0.1μm以上、より好ましくは1〜500μmの容積平均細孔直径を有する。多孔質単体の好ましい形態はフォーム及びフェルトであり、好ましくは、これらは、熱に安定で伝導性のある材料、好ましくは、ステンレススチール、インコネル、アルミニウム、銀若しくは銅又はFeCrAlY合金などの金属から作られる。これらの多孔質担体は0.1〜1mmのように薄くてよい。フォームは、その構造全体にわたって細孔を画定する連続壁を有する連続構造である。フェルトは、繊維間に間隙がある不織繊維であり、スチールウールのような絡み合ったより糸が含まれる。多孔質担体は、熱伝導壁と開口部を有するシートとの間に積み重ねられ得る。或いは、多孔質担体は、エッチングされ、又は切断されていてよく、そうでなければ、シート内に位置する活性表面特徴の溝を有していてよい。これらのシートは、組立体を形成させるための壁として機能する非多孔質シートと共に積層できる。この細孔の大きな担体上に1個以上の活性触媒層を配置してもよい。細孔の大きな触媒(及びアルミナに担持された触媒活性部位を含む) は、好ましくは、金属の全細孔容積の5〜98%、より好ましくは30〜95%の細孔容積を有する。好ましくは、金属の細孔容積の少なくとも20%(より好ましくは少なくとも50%)が0.1〜300ミクロン(μm)、より好ましくは0.3〜200ミクロン、さらに好ましくは1〜100ミクロンのサイズ(直径)範囲の細孔から構成される。細孔容積及び細孔径の分布は水銀圧入法(細孔が円筒形形状であると仮定する)及び窒素吸着法により測定する。周知のように、水銀圧入法及び窒素吸着法は、補完的な技術である。水銀圧入法は、大きな細孔径(30nmよりも大きい)を測定することについて正確性が高く、窒素吸着法は、小さな細孔(50mm未満)について正確性が高い。酸化物層上に配置された触媒といった触媒を、細孔の大きな担体上に付着させることができる。
【0036】
「バルク流路」とは、大きな圧力降下なしに反応室を通した迅速なガス流れを可能にするマイクロチャネル装置内にある開口チャネルをいう。バルク流路は、好ましくは、5×10-8〜1×10-2m2、より好ましくは5×10-7〜1×10-4m2の表面積を有する。
【0037】
本発明において定義される「メソ多孔質マトリックス」は、「細孔の大きい担体」又は「構造壁」を有する。いくつかの好ましい実施形態では、メソ多孔質マトリックスは、触媒活性表面(例えば、限定されないが、金属酸化物担持金属)を有する。メソ多孔質マトリックスは、バルク流路の1以上の面上にあり、又は、曲線状の壁の場合には、流路の周囲の一部分上にある。好ましい実施形態では、メソ多孔質マトリックスはウェル中にある。「ウェル」は、マイクロチャンネル壁内のくぼみであり、好ましくは2mm以下の深さを有する。ここで詳細に説明するように、ウェルは、好ましくは、バルク流路に対して垂直な壁ではなく、傾斜壁を有する(最も好ましくは、これらの壁は、隣接するバルク流路を通した流体流れの方向に傾斜している) 。
【0038】
「構造壁」とは、複数の層から構成される壁であって、その複数の層のそれぞれが重複する開口部を有するものをいう。層内にある開口部は、少なくとも0.01平方マイクロメートル(μm2)、好ましくは0.01〜100,000平方マイクロメートル(μm2)、より好ましくは5〜10,000平方マイクロメートル(μm2)の孔面積を有する;また、構造壁について、それぞれの層は、このような開口部を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも1000個含まなければならないが、10個未満の非常に大きな開口を有する介在層が存在していてもよい。これらの開口部は、滞留時間の大きなばらつきをもたらすことなく混合を支援するはずである。構造壁は、バルク流路の面上にある。構造壁のいくつかの例がTonkovich外による米国特許出願第2007/0256736号及び同20060120213号に例示されている。これらは引用により本明細書に含められる。
【0039】
「サブチャネル」とは、より大きなチャネル内にあるチャネルのことである。チャネル及びサブチャネルは、チャネル壁によるそれらの長さにそって定義される。
【0040】
「部分多岐管」とは、少なくとも1個の他の部分多岐管と共に機能して平面で大きな1個の多岐管をつくる多岐管のことである。複数の部分多岐管は、連続壁によって互いに隔てられる。
【0041】
「表面特徴」とは、マイクロチャネル内の流れを変更するマイクロチャネル壁からの突起又は当該壁への凹みのことである。これらの特徴の頂部の面積がその特徴の基部の面積と同一の場合又はそれを超える場合には、その特徴は、凹みであるとみなされる。その特徴の基部の面積がその特徴の頂部の面積を超える場合には、その特徴は突起であるとみなされる(以下で議論するCRFを除く)。表面の特徴は、非円形表面の特徴については深さ、幅及び長さを有する。表面の特徴は、主チャネルの壁部に凹んだ、円形、楕円形、正方形、長方形、チェック形、シェブロン形、ジグザグ形などを有することができる。これらの特徴は、表面積を増加させ、かつ、拡散よりもむしろ、移流によりマイクロチャネル壁に流体をもたらす対流を創り出す。流れパターンは、渦、回転、タンブルであることができ、かつ、他の規則的、不規則的又はカオス的パターンを有することができる。ただし、流れパターンは、カオス的である必要はなく、場合によっては非常に規則的なようである。流れパターンは経持的に安定であるが、二次的な一時回転を受ける場合もある。表面の特徴は、好ましくは斜角である。すなわち、表面当たりのネットの流出の流れに対して平行でも垂直でもない。表面特徴は直角であることができる。すなわち、流れ方向に対して90度の角度であるが、ただし、好ましくは角度が付けられている。活性表面の特徴は、好ましくは、少なくとも一つ軸方向位置での、マイクロチャネルの幅に沿った2以上の角度によってさらに決まる。表面特徴の2以上の面は、物理的に接続していても接続していなくてもよい。マイクロチャネルの幅に沿った1以上の角度は、流体を直線的な層流流線から外に優先的に押し、かつ、引くように作用する。表面特徴の深さについての好ましい範囲は、2mm未満、より好ましくは1mm未満、所定の実施形態では0.01mm〜0.5mmである。表面特徴の側面の幅に関する好ましい範囲は、マイクロチャネル幅にほぼ及ぶ程度に十分なものである(杉綾模様で示されるようなもの)が、所定の実施形態では(例えばフィル特徴)は、マイクロチャネル幅の60%以下、所定の実施形態では40%以下、いくつかの実施形態では約10%〜約50%にわたることができる。好ましい実施形態では、表面特徴パターンの少なくとも一つの角度は、マイクロチャネル幅に対して10°、好ましくは30°以上の角度に向けられている(90°は長さ方向に対して平行であり、0°は幅方向に対して平行である)。側面幅は、マイクロチャネル幅と同じ方向で測定される。表面特徴の側面幅は、好ましくは0.05mm〜100cm、所定の実施形態では0.5mm〜5cmの範囲、所定の実施形態では1〜2cmの範囲にある。構造壁のいくつかの例がTonkovich外による米国特許出願第20070017633号に例示されている。当該文献は引用により本明細書に含められる。
【0042】
30個以下の開口部(すなわち、第2反応体のための開口)を有する多段装置について、それぞれの段部は、1個の開口部の中心点から反応チャネルの全長の下にある次の開口部の中心点までで始まり、最後の開口部の場合には、その段部の長さはチャネルの出口である。反応チャネルへの連続段部(例えば、多孔質膜又は第2反応体のための30個を超える開口部を有する任意の構成を介して)を有する装置について、この装置は、第1開口部で始まり、出口又はごくわずかな反応が生じる程度に十分に低い温度を有するチャネルの領域で終わる各長さの10個の段部を有すると考えられる。
【0043】
「単位操作」とは、化学反応、蒸発、圧縮、化学的分離、蒸留、凝縮、混合、加熱、又は冷却を意味する。「単位操作」は単なる流体輸送を意味しないが、この輸送も他印操作と共に頻繁に行われる。いくつかの好ましい実施形態では、単位操作は、単なる混合ではない。
【0044】
接続チャネル又は多岐管の容積は、空間に基づく。この容積には、表面特徴の凹みも含まれる。ゲート又は格子特徴(これらは、米国特許出願の明細書に記載されるように、流量分布を均一化するのに役立つ)の容積は、多岐管の容量に含まれる;これは、多岐管と接続チャネルとの境界線がかなりの方向転換を特徴とするという規則に対する例外であえる。チャネル壁は、容積計算には含まれない。同様に、開口部(これは通常無視できる)及び整流器(存在する場合)の容積は、多岐管の容積に含まれる。
【0045】
「Z−多岐管」において、ヘッダー及びフッター中の流体は同じ方向に流れるが、接続チャネルの軸に対して0の角度である。多岐管装置に入る流体は、その流体が入った装置の反対側から出る。この流れは、入口から出口に「Z」方向をつくる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、実施例で使用したマイクロチャネル反応器のタイプの断面概略図を示す。バルク流路に直接隣接するのは、波形表面特徴を有するシムであり、頂部シム及び底部シムは、流体の通過を可能にするための穴を有する。
【図2】図2は、3種のホルムアルデヒド触媒:TiO2担持Fe(V2O5)−MoO3(600℃での上の線)、FeMoOx(Engelhardから得られる);及びTiO2/SBA−15担持V2O5−MoO3(600℃での下の線)の温度に応じた重量変化(MoO3の損失)を示す熱重量分析(TGA)を示す。
【図3】図3は、実施例で使用した様々なマイクロチャネル反応器の圧力降下を示す。
【図4】図4は、実施例からのホルムアルデヒド合成反応における、CO選択率のO2分圧への依存性を示す。
【図5】図5は、実施例で説明したように成形されたマイクロチャネル反応器を示す。
【図6】図6は、実施例で説明したマイクロチャネル反応器当たりの構造壁について滞留時間分布(RTD)を示す。
【図7】図7は、(a)直列反応及び(b)直並列反応を示す。
【図8】図8は、構造壁の上面図(a-単一層;b-2層のパターン)である。
【図9】図9は、テーパー壁なしの構造壁反応器におけるホルムアルデヒドの質量分率等高線を示す。ホルムアルデヒド濃度の高い領域(より暗い領域から右下)は、望ましくない副生成物を非常に形成しやすい、滞留時間の高い領域でもある。
【図10】図10は、テーパー構造壁反応器の概略図である。
【図11】図11は、階段を使用したテーパー構造壁反応器を示す。
【図12】図12は、円筒形形状において階段を使用するテーパー構造壁反応器を示す。
【図13】図13は、角度付き構造壁を示す(細孔領域を白で示している)。パネルaは個々のシム及び交互の積層パターンを示している。パネルbは上面図を示している(点線はデッドゾーンを示す)。パネルcは、デッドゾーン近くの出口(ハーフシム)における滞留時間分布を示している。
【図14】図14は、テーパーを有する角度付き構造壁を示す。上のパネル:個々のシム及び交互の積層パターン。下のパネル:組立体上面図(デッドゾーンが除かれている)。
【図15】図15は、操作条件、及び420℃、45個の段部、示された空気の割合及び接触時間による多段反応器の操作についての計算結果を示す。
【図16】図16は、操作条件及び435℃、32個の段部による多段反応器の操作についての計算結果を示す。
【図17】図17は、複数の段部で酸素供給を制御することによって、HCHO収率が増加し得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
マイクロチャネル装置
マイクロチャネル反応器は、1cm以下、好ましくは2mm以下(所定の実施形態では約1.0mm以下)で、かつ、1μmを超える、所定の実施形態では50〜500μmの少なくとも一つの寸法(壁〜壁、触媒はカウントしない)を有する少なくとも1個の反応チャネルの存在を特徴とする。触媒反応チャネルは触媒を含有するチャネルであり、この場合、該触媒は不均一系又は均一系である。均一系触媒は、反応体と同時に流れることができる。マイクロチャネル装置も同様に特徴付けられるが、ただし、触媒含有反応チャネルは必要ない。マイクロチャネルのギャップ(又は高さ)は、好ましくは約2mm以下、より好ましくは1mm以下である。反応チャネルの長さは、典型的にはそれよりも長い。好ましくは、その長さは1cmを超える、所定の実施形態では50cmを超える、所定の実施形態では20cmを超える、所定の実施形態では1〜100cmの範囲にある。マイクロチャネルの両側は、反応チャネル壁によって決まる。これらの壁は、好ましくは、セラミック、スチールのような鉄系合金又はモネルなどのNi系、Co系又はFe系超合金といった硬質材料から作られる。また、これらは、プラスチック、ガラス又は銅、アルミニウムなどの他の材料から作られることもできる。反応チャネルの壁部用の材料の選択は、反応器が目的とする反応に依存し得る。いくつかの実施形態では、反応室壁は、耐久性がありかつ熱伝導性に優れたステンレススチール又はインコネル(商標)から構成される。これらの合金は硫黄が少なくなければならず、所定の実施形態では、アルミナイドを形成する前に脱硫処理を施す。典型的には、反応チャネル壁は、マイクロチャネル装置のための主要な構造的支持体を与える材料から形成される。マイクロチャネル装置は、既知の方法によって作ることができ、好ましい実施形態では、交互配置されるプレート(「シム」としても知られている)を積層することによって作られ、好ましくは、この場合、反応チャネルのための設計されたシムが熱交換のために設計されたシムと交互に配置される。ある種のマイクロチャネル装置は、装置内に積層される10個の層を含み、この場合、これらの層のそれぞれが10個のチャネルを含む;この装置は、チャネルの少ない他の層を含むことができる。
【0048】
マイクロチャネル装置(例えばマイクロチャネル反応器)は、好ましくは、複数のマイクロチャネル(例えば複数のマイクロチャネル反応チャネル)及び複数の隣接する熱交換マイクロチャネルを備える。この複数のマイクロチャネルは、例えば、同時に作動することのできる2、10、100、1000個以上のチャネルを含むことができる。好ましい実施形態では、これらのマイクロチャネルは、平面マイクロチャネルの平行配列、例えば、平面マイクロチャネルの少なくとも3つの配列で配置される。いくつかの好ましい実施形態では、複数のマイクロチャネル入口が共通のヘッダーに連結され、及び/又は複数のマイクロチャネル出口が共通のフッターに連結されている。操作中に、熱交換マイクロチャネル(存在する場合)は、流動性の加熱及び/又は冷却流体を含有する。本発明で使用できるこのタイプの既知の反応器の例としては、米国特許第6,200,536号及び同6,219,973号(両方とも引用により含める)に例示されたマイクロコンポーネントシート構造形(例えば、マイクロチャネルを有する積層体)のものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の目的のためにこのタイプの反応器構造を使用する際の性能の利点としては、それらの比較的大きい熱伝達率及び物質移動速度並びにいかなる爆発限界も実質的に存在しないことが挙げられる。圧力降下が低いので高い処理量が可能になり、また触媒はチャネル内にある非常に接近しやすい形で固定できるので、分離の必要性を排除することができる。いくつかの実施形態では、1個の反応マイクロチャネル(又は複数のマイクロチャネル)は、バルク流路を含む。用語「バルク流路」とは、反応室内の開いた通路(連続バルク流れ領域)をいう。連続バルク流れ領域は、大きな圧力降下なしに、反応室を通した迅速な流体流れを可能にする。各反応チャネル内のバルク流れ領域は、好ましくは5×10-8〜1×10-1m2、より好ましくは5×10-7〜1×10-4m2の断面積を有する。バルク流れ領域は、好ましくは、(1)マイクロチャネルの内部容積又は(2) マイクロチャネルの断面積のいずれかの少なくとも5%、より好ましくは少なくとも50%、いくつかの実施形態では30〜99%を占める。
【0049】
多くの好ましい実施形態では、マイクロチャネル装置は、複数のマイクロチャネル、好ましくは、該装置に不可欠な共通の多岐管に連結される平行なチャネル(実質的に固定された管ではない)に平行な少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個の群を含み、この場合、該共通の多岐管は、多岐管に連結したチャネルを通した流れを均一にする傾向のある1個以上の特徴を備える。このような多岐管の例は、2003年10月27日出願の米国特許出願第10/695,400号に記載されている(これは、引用により本明細書に含めるものとする)。この文脈において、「平行」は、必ずしも直線的であることを意味せず、むしろ複数のチャネルが互いに一致することを意味する。いくつかの好ましい実施形態では、マイクロチャネル装置は、平行なマイクロチャネルの少なくとも3つの群を備え、この場合、各群内のチャネルは、共通の多岐管(例えば、マイクロチャネルの4群及び4個の多岐管)に連結しており、好ましくは、この場合、各共通の多岐管は、該多岐管に連結したチャネルを通した流れを均一にする傾向のある1個以上の特徴を備える。
【0050】
複数の多岐管を有する装置において、本発明は、1個の多岐管のその接続マイクロチャネルに対する容積比を特徴とすることができ、又は複数の多岐管及びそれらの接続マイクロチャネルの容積の合計を特徴とすることができる。しかしながら、接続チャネルがヘッダー及びフッターに連結される場合には、ヘッダー及びフッターの両方が多岐管の容積の計算に含められなければならない。部分多岐管の容積は、多岐管の容積に含められる。
【0051】
熱交換流体は、プロセスチャネル(例えば反応マイクロチャネル)に隣接する熱伝導マイクロチャネルを通って流れることができ、気体又は液体であることができ、しかも蒸気、オイル又は任意の他の既知の熱交換流体であることができる。この系は、熱交換器内で相変化を起こすように最適化できる。いくつかの好ましい実施形態では、複数の熱交換層が複数の反応マイクロチャネルと交互に配置される。例えば、少なくとも10個の熱交換器が少なくとも10個の反応マイクロチャネルと交互に配置され、好ましくは反応マイクロチャネルの少なくとも10個の層と適合する10個の熱交換マイクロチャネル層が存在する。他の好ましい実施形態では、熱交換マイクロチャネル又は層対反応マイクロチャネル又は層の比は、いくつかは0.1〜1の範囲で、いくつかは1〜10の範囲内で変更できる。これらの層のそれぞれは、単純な直線チャネルを含むことができ、又は層内のチャネルは、より複雑な形状を有することができる。好ましい実施形態では、1個以上の熱交換チャネルの1個以上の内壁は、表面特徴を有する。
【0052】
工業規模マイクロチャネル装置を作るための一般的な方法は、エッチング、スタンピングなどの異なる方法によってシムにマイクロチャネルを形成することである。これらの技術は、当該技術分野において公知である。例えば、シムが互いに積み重ねられ、かつ、化学結合、ろう着などの異なる方法によて結合できる。結合後、装置は機械加工を必要としても必要としなくてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の装置(又は方法)は、触媒材料を含む。触媒は、バルク流路の少なくとも一つの壁部の少なくとも一部を画定することができる。いくつかの好ましい実施形態では、触媒の表面は、流体流れが通過するバルク流路の少なくとも一つの壁を画定する。不均一触媒プロセスの間に、反応体組成物がマイクロチャネルを通って流れ、通過し、そして触媒と接触した状態になることができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、各接続マイクロチャネルの幅は、その長さに沿って実質的に一定であり、しかも一セットの接続チャネルの各チャネルは、実質的に一定の幅を有する;「実質的に一定」とは、流れが幅に変動があっても本質的に影響を受けないことを意味する。これらの例のために、マイクロチャネルの幅は、実質的に一定に維持される。ここで、「実質的に一定」とは、製造工程の許容範囲内にあると定義される。
【0055】
マイクロチャネル(表面特徴を有する又は有しない) は、触媒又は吸着剤などの他の物質で被覆できる。触媒は、薄め塗膜などの当該技術分野に知られている技術を使用してマイクロチャネルの内部に塗布できる。また、CVD又は無電解めっきなどの技術も利用できる。いくつかの実施形態では、水性塩による含浸も好ましい。典型的には、この後に、当該技術分野において知られているような熱処理工程及び活性化工程を行う。他の被覆は、触媒先駆物質及び/又は担体を含有するゾル又はスラリー系溶液を含むことができる。被覆は、無電解めっきや他の表面流体反応など、反応の早い壁への塗布方法を包含することもできる。
【0056】
好ましい実施形態では、メタノールはホルムアルデヒド合成触媒上で反応してホルムアルデヒドを形成する。好ましいホルムアルデヒド合成触媒は、Mo、Ti、V及び随意にFeを含む酸素化合物(酸化物)を含む。いくつかの好ましい実施形態では、該酸化物は、基材上に配置される。この基材は、マイクロチャネルの壁である。いくつかの実施形態では、この基材は、アルミノシリケートなどの、安定な多孔質担体である。これらの酸化物は、粉末、ペレットなどとして、又はマイクロチャンネル壁上の壁被覆物として(例えば、マイクロチャンネル壁と酸化物との間に配置されるメソ多孔質層)、メソ多孔質材料上に担持できる。アルミノシリケート又はメソ多孔質材料(例えばSBA−15)は、金属酸化物(例えばチタニア)と混合できる。いくつかの実施形態では、該酸化物触媒は、少なくとも2重量%のV又は少なくとも6重量%のV、所定の実施形態では5〜20重量%のVを含む。これらの重量%は、任意の下層チャネル壁又はメソ多孔質マトリックスの重量を含まないが、ただし、アルミノシリケート、酸化物被覆などのような他の材料の重量は含む。ペレットについては、該ペレットの全質量が含まれる。いくつかの実施形態では、該酸化物触媒は、少なくとも2重量%Mo又は少なくとも6重量%のMo、所定の実施形態では5〜20重量%のMoを含む。いくつかの実施形態では、該酸化物触媒は、少なくとも4重量%のTi又は少なくとも10重量%のTi、所定の実施形態では5〜60重量%のTi、所定の実施形態では10〜40重量%Tiを含む。本発明は、これらの値の任意の組み合わせ、例えば、所定の実施形態では少なくとも2重量%のMoと、2重量%のVと、少なくとも4重量%のTiとを含むものとする。いくつかの実施形態では、該酸化物触媒は、少なくとも0.5重量%のFe又は少なくとも1重量%のFe、所定の実施形態では1〜10重量%のFeを含む。
【0057】
いくつかの好ましい実施形態では、ホルムアルデヒド合成触媒は、チタニア含有粉末にモリブデン酸塩水溶液を含浸させることによって作製できる。鉄が含浸(例えばMo/Ti材料又はV/Ti材料又はMo/V/Ti材料への)又はMo/Ti若しくはV/Ti若しくはMo/V/Tiによるイオン交換によって添加できる。また、V酸化物もMo/Ti、又はV/Ti、又はMo/V/Tiに含浸できる。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態では、表面保護層(例えば、シリカの) をまずマイクロリアクターの構造壁に被覆してから、ホルムアルデヒド合成触媒を被覆する。
【0059】
本発明は、ここで説明する装置内で化学反応及び他の単位操作を実施する方法を包含する。また、本発明は、説明した構造及び/又はここで説明した方法によって形成された構造の、予め結合された組立体及び積層装置も包含する。積層装置は、光学顕微鏡及び電子顕微鏡又は他の既知の技術によって非積層装置とは区別できる。また、本発明は、ここで説明する装置内において化学プロセス(例えば化学反応)を実施する方法も包含する。いくつかの実施形態では、該方法は、流体を多岐管に流し、そして接続チャネル内で単位操作を実施する工程を含む(多岐管がヘッダーの場合には、流体は、接続チャネルに通る前に多岐管を通過する;多岐管がフッターの場合には、流体は、接続チャネルを通貨した後に流れる)。いくつかの好ましい実施形態では、本発明は、熱交換、混合、化学的分離又はマイクロチャネル内での固体形成プロセスを含めた非反応性単位操作、凝縮及び蒸発などの相変化単位操作を含む;このようなプロセスは、一般に化学プロセスと呼ばれており、その最も広い意味(本願において)には熱交換が含まれるが、好ましい実施形態では、単に熱交換だけでなく、熱交換及び/又は混合以外の単位操作が含まれる。
【0060】
また、本発明は、本発明の装置又は方法のいずれかにおいて1回以上の単位操作を実施する方法も包含する。単位操作を実施するための好適な操作条件は、日常的な実験により特定できる。本発明の反応としては、アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、ヒドロ脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、アンモ酸化、芳香族化、アリール化、自己熱改質、カルボニル化、脱カルボニル化、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、凝縮、熱分解、水素化分解、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、脱水素化、オキシ脱水素化、二量化、エポキシ化、エステル化、交換反応、フィッシャー・トロプシュ、ハロゲン化、ハロゲン水素化、同族体化、水和、脱水、水素化、脱水素化、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理(水素化脱硫HDS/HDNを含む)、異性化、メチル化、脱メチル化、複分解、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、再構成、逆水性ガスシフト、サバティエ、スルホン化、短鎖重合、トランスエステル化、三量体化及び水性ガスシフトが挙げられる。上で列挙した反応のそれぞれについて、当業者に知られている触媒及び条件が存在する;そして、本発明は、これらの触媒を使用する装置及び方法を包含する。例えば、本発明は、アミノ化触媒を含有するアミノ化触媒及び装置によるアミノ化方法を包含する。したがって、本発明は、個々に(例えば、水素化分解)、又はグループで(例えば、ハロゲン水素化触媒、ヒドロメタル化触媒及びヒドロシリル化触媒による、それぞれハロゲン水素化、ヒドロメタル化及びヒドロシリル化)、上記反応のそれぞれについて説明できる。好適な方法は、本発明の装置と、従来技術の知識及び/又は日常的な実験により特定できる触媒とを使用して、それぞれの反応について調節される。本発明は、上記反応のうちの任意の一つ又は任意の組合せを包含する。一例を挙げると、本発明は、ここで説明した構造特徴の一つ以上を有する装置(特に反応器)を使用したフィッシャー・トロプシュ反応を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、マイクロチャネル内におけるホルムアルデヒド合成触媒によるホルムアルデヒド合成を含む。
【0061】
マイクロチャネル又は接続マイクロチャネルのセットを通した圧力降下は、好ましくは500psi(35bar)未満、より好ましくは50psi(3.5bar)未満であり、所定の実施形態では0.1〜20psi(0.007〜1.4bar)の範囲にある。いくつかの実施形態では、多岐管がヘッダーの場合には、多岐管における圧力降下は、ヘッダーの入口と、最も低い圧力を有する接続チャネルの入口(ヘッダー出口に相当する)との間のpsiで測定されるときに、複数の接続チャネルによる圧力降下(複数の接続チャネルにわたる平均圧力降下そして測定される)の(より好ましくは80%未満、より好ましくは半分(50%)未満 所定の実施形態では20%未満)である。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態では、多岐管の容積は、複数の接続チャネルの容積の80%未満、又は50%未満(半分)、所定の実施形態では40%以下、所定の実施形態では20%未満である。いくつかの実施形態では、多岐管の容積は、複数の接続チャネルの容積の10%〜80%である。好ましくは、積層装置内における全ての多岐管の合算容積は、装置内における全ての接続チャンネルの合算容積の50%以下、所定の実施形態では40%以下、いくつかの実施形態では10%〜40%である。
【0063】
装置の特徴は、1個以上のシートを介して特徴を打ち抜く又は切断することによって作製できる。別法として又はそれに加えて、シートからの部分食刻又は材料の除去を使用して装置の特徴を作ることができる。また、切断と食刻との組合せを使用することもできる。いくつかの部分食刻の適用においては、チャネルの深部を、流路間に介在する壁部を有するシートから除去し、好ましくは所定の温度で差圧について壁部を支持するリブが、好ましくは高いアスペクト比のマイクロチャネル(幅対ギャップの比>2)を創り出す。いくつかの実施形態では、整流器及び調整器がM2M部分に設置される。
【0064】
接続チャネル長さの少なくとも5%である接続チャネルの部分で、化学反応、分離又は混合のために流れの中断を使用することが特に有利である。物質交換単位操作(反応、分離及び/又は混合)に適用されるような流れの中断(例えば、障害物を通過させる又は表面特徴上を通るなど)を使用すると、接続チャネル内における層流で作動する小型のマイクロチャネルによる物質交換用途よりもコンパクトな装置を可能にすると考えられる0.5mm〜1.5mmの好ましい範囲にあるプロセスチャネルギャップにより、性能を向上させることが可能である。不均一反応についての例として、壁上にある触媒に反応体を運ぶために流れの中断を使用すると、触媒に反応体を運ぶために層流拡散を使用する場合と比較して、物質移動の制限が克服される。触媒の実効性能は、層流のみよりも2倍以上又は5倍、又は10倍、又は100倍、又は1000倍効果的であることができる。この触媒についての効果の高い物質移動性能により、接続チャネルについて容積を少なくすることが可能になると共に、M2M中におけるチャネルギャップが0.5〜1.5mmの好ましい範囲内にとどまること、つまりM2Mの容積を最低限に抑えることが可能になる。また、化学的分離の例としては、吸収、吸着、蒸留、膜なども挙げられる。化学的分離、混合又は化学反応は、特に、M2Mの全容積の最小化に加え、接続チャネルの一部分が流れの中断した状態に有る場合には接続チャネルの全容積の最小化のために最適化される。
【0065】
段部とは、反応体が添加されかつ段部の長さによってきまるチャネルの区域のことである。段部の長さ(ある開口部又は入口から次の開口部又は入口までの長さ)は、好ましくは、2.5mm〜25cm、より好ましくは2.5mm〜13cm、さらに好ましくは2.5mm〜2.5cmの範囲内にある。段部の数は、少なくとも2〜100個以上(段は、固定数の段部なしに本質的に連続し得る)、所定の実施形態では3〜75個、所定の実施形態では10〜60の段部で変更できる。それぞれの段部は同じ長さを有することができ、又は複数の段部が異なる長さを有することができる。いくつかの好ましい実施形態では、接触時間は、およそ一定に維持されるが、ただし、各段部の長さは、各段部において非常に速い流速に対応するように、徐々に増加する。
【0066】
各段部中における滞留時間の変化は、好ましくは最小化される。いくつかの好ましい実施形態では、入口又は開口部に入る流れの少なくとも90%(より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、さらに好ましくは少なくとも99.5%)は、10%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下で変化する滞留時間を有する。所定の方法の滞留時間分布は、トレーサー又は標識化合物を使用したパルス試験により測定できる。反応器の滞留時間分布特性は、以下で説明する装置試験条件を使用して測定できる。反応器の滞留時間分布特性は、入口又は開口部に入る流れの少なくとも90%(より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%、さらに好ましくは少なくとも99.5%)が10%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下で変化する滞留時間を有する測定値により特徴付け可能である。その代わりに、これらの値は、反応器を通過する全ての流体(所定の実施形態では気体である) の質量平均に基づき言及することもできる。ここで、質量平均は、生成物流れの質量に基づく。
【0067】
ホルムアルデヒドを製造するためのメタノールと酸素との反応について、この反応は、好ましくは250℃〜450℃、より好ましくは345℃〜420℃の温度で実施される。好ましくは、酸素を開口部からマイクロチャネルに沿って(すなわち、マイクロチャネルに段階的に)添加して0.1〜20%、より好ましくは0.5〜6%のO2濃度を有するガス混合物を形成させる。これらのO2濃度は、典型的には全段部内で測定される(ある開口部/O2入口から次の開口部/入口までの長さである段部の容積について平均される)が、 段部の出口又はマイクロチャネルの出口(最後の段の場合)でも測定できる。より好ましくは、段部の出口又はマイクロチャネルの出口で測定されるO2濃度は、0.01%〜10%、より好ましくは0.01%未満〜1%、さらに好ましくは0.05%〜0.15%である。望ましくは、これらの酸素レベルは、各段部の出口で測定され、所定の実施形態ではマイクロチャネル全体にわたって測定される(マイクロチャネル反応区域の容積の1%ということ(触媒が存在し、かつ、混合物が反応のために十分に高い温度の場合)。反応器の入口へのメタノール供給はそのままの状態のものであってもよく、又は不活性ガス、場合によっては酸素と混合してもよい。好ましい実施形態では、この供給物は、1%〜50%(モル基準)のメタノール、より好ましくは4〜26%のメタノールを含有する。接触時間(入口への供給に基づく)は、マイクロチャネル反応器全体の通路については1秒以内であり、各段部については、各段で好ましくは1〜500ミリ秒、より好ましくは1〜200ミリ秒である。
【0068】
反応器内でのメタノール転化率は、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも98%である。ホルムアルデヒド選択率は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、いくつかの実施形態では、70〜約95%の範囲内である。
【0069】
また、ホルムアルデヒドの製造方法は、メタノールの転化率及び選択率、例えばホルムアルデヒド選択率によって特徴付けることもできる。該装置は、本発明の詳細な説明又は実施例で説明する選択率及び/又は転化率のいずれかを得ることができる能力によって特徴付けることができる。この場合、該装置は、次の特定の試験条件下で試験される:140ミリ秒の接触時間、400℃の平均反応器温度、5psig(1.34atm)の入口圧力並びに2%O2及び4%メタノール(バランス挿入)を含有する供給物。例えば、装置は、上記試験条件で試験されるときに、少なくとも75%のメタノール転化率及び少なくとも95%のホルムアルデヒド選択率;又は少なくとも75%のメタノール転化率及び1.0%以下のdme選択率によって特徴付けることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、マイクロチャネル反応器は、バルク流路と、それぞれのウェルが1μm〜1cm、より好ましくは、10μm〜5mm、より好ましくは20μm〜2mmのウェルの天底に至る深さを有する2個以上の壁部(好ましくは流れ方向にテーパー面を有する)とを有する。随意に、これらのウェルは、構造壁又は他のメソ多孔質マトリックスで部分的に又は完全に満たされている。いくつかの好ましい実施形態では、流動反応体が反応チャネルに添加できるようにウェルの壁部内に開口部が存在する。或いは、反応体は、反応マイクロチャネルの壁部内における、ウェル内ではないところにある開口部から添加できる。
【実施例】
【0071】
例
構造壁マイクロリアクター内でのメタノール部分酸化の実証研究
構造壁反応器、すなわちマイクロチャネル反応器Aを、マイクロチャネル反応器内でのホルムアルデヒドへのメタノール部分酸化実験のために使用した。このマイクロチャネル反応器A装置は、3.5インチ長、0.57インチ幅及び0.05インチの高さであるステンレススチール製構造壁反応器である。0.05インチの高さには、0.02インチの壁のいずれかの側の側面に位置する0.01インチの流れギャップ(プレート又はシムともいう)が含まれる(図1に示す)。各0.02インチの壁は2個のそれぞれ0.01インチの壁から異なる構造パターンで作製されている。流れギャップに近い壁は、2つの頂点で45度の角度を有する「Z」形状の表面特徴(SF)を有する。金属リブ並びに隣接する谷は、両方とも0.015インチ幅である。本壁は、金属表面全体上に〜2750個の孔(0.012インチ直径)を有する「孔」パターンを有する。これらの金属プレート(シム)を入口及び出口ヘッダーと一体化させてマイクロチャネル反応器A装置を形成させた。入口での流動に利用できる実際の断面積は、0.34インチ×0.01インチであるが、表面特徴部分の3.3インチは、触媒の装填のために利用できる。冷却チャネル(0.005インチの高さ、0.34インチの幅及び3.3インチの長さ)を両方の構造壁セットの外面上に作製して装置内での熱放出を制御した。図1を参照されたい。これらの実験を酸素分圧に対して広範囲の条件により実施してCO選択率に及ぼす影響を評価した。以下のデータから分かるように、酸素分圧が低いことは、CO選択率を低下させることを助長する。
【0072】
【表1】
【0073】
次に、DME(ジメチルエーテル)、MF(蟻酸メチル)及びDMM(ジメトキシメタン) の副生成物の形成に及ぼす温度の影響を示す。以下の実験データから分かるように、温度が高いと、MF及びDMMの形成が抑制される。
【0074】
【表2】
【0075】
接触時間減少の影響を実験で調査した。要約を表3に示す。接触時間を141ミリ秒から33ミリ秒に減少させると、ホルムアルデヒド選択率が91%から95%に改善した。
【0076】
【表3】
【0077】
段階添加モデルについての別の検討は、副生成物であるジメトキシメタン(DMM)又はメチラール、蟻酸メチル(MF)及びジメチルエーテル(DME)を管理することである。生成物流を急冷すると、DMMが無視できる値にまで減少した。生成物の急冷は、熱交換器での急速冷却によって又は窒素急冷を使用することによって達成できる。以下の表4から分かるように、これは、DMMの形成を有意に最小化する。
【0078】
【表4】
【0079】
MFの生成は、少ない接触時間及び非常に高い希釈率での粉末状V−Mo Ox/TiO2触媒の元々の評価(表5に示す)と比較して、高いままであった。このデータは、断面積0.25インチ×0.06インチ及び1.08インチの触媒床長さを有するマイクロチャネル充填層反応器で得られた。
【0080】
【表5】
【0081】
考慮すべき他の要因があるかどうかを理解しようとする試みとして、マイクロチャネル反応器A(上記)の詳しいCFDモデルを作製した。その結果(触媒の均一な適用に基づく)は、いくつかの分子が該構造の凹部領域(ウェル)内での平均滞留時間の100倍を超えて滞留できた点が印象的であった(図5参照)。蟻酸メチル形成などの反応について、2個のホルムアルデヒド分子が反応するのに時間が必要な場合には、この広い滞留時間分布が問題となるが、これは、例えば、構造壁の設計変更により滞留時間分布を最小限にすることによって減少できる(本明細書の最後で説明する)。
【0082】
これらの知見を考慮すると、合成方法の改善は、次の原理の一つ以上を基にすることができる:反応体の段階的及び制御添加;ホルムアルデヒドについて、この段階的組成物が、好ましくは、望ましくない生成物(例えば、ホルムアルデヒド合成の場合にはCO)の収量を減少させるために酸素、空気、又は富化空気を含めた(これらに限定されない)酸素源を含むこと;残留副生成物(ホルムアルデヒド合成の場合にも例えばMF)の形成を低減させるための適度の高温(ホルムアルデヒド合成について〜>360℃);DMMの生成を低減させる又はなくすための急速な生成物の急冷;RTDの最小化;及びデッドゾーンを減少させる(及び典型的には触媒を保持する)ための構造壁構造。
【0083】
触媒の製造:
1.2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2(ナノサイズ)
12%V2O5+11%MoO3/TiO2を初期湿式含浸法によって合成した。MoO3/TiO2を最初に製造した。0.528gのパラモリブデン酸アンモニウム(α、(NH4)6Mo7O24・4H2O)を5.29gのH2Oに溶解させた。この溶液を3.0gのTiO2ナノ粉末(200〜220m2/g、α)に含浸させた。この粉末を120℃で1時間にわたり乾燥させた。この含浸方法を1回繰り返した。その後この試料を500℃で4時間にわたり焼成した。V2O5被覆については、0.597gのNH4VO3及び1.2gのH2C2O4を6.6gのH2Oに溶解させた。この溶液をMoO3/TiO2粉末に含浸させた。再度、この試料を120℃で1時間にわたり乾燥させた。この含浸方法を、バナジウム溶液が全てMoO3/TiO2粉末上に被覆されるまで繰り返した。次に、この試料を450℃で4時間にわたり焼成した。
Feをイオン交換によりV2O5+MoO3/TiO2触媒に付加した。1.5gの12%V2O5+11%MoO3/TiO2試料を200mLの0.1M FeCl2溶液に撹拌しながら添加した。このイオン交換を20時間にわたり室温で実行した。次いで、このスラリーをろ過し、そして固形物をH2Oで3回洗浄した。120℃で乾燥させた後に、この試料を400℃で1時間にわたり焼成した。Fe2O3含有量は2%付近である。
【0084】
2.20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15
SBA−15は、シリカを主成分とする公知メソ多孔質材料である。SBA−15を次のとおりに製造した。128.0gの5NのHCl及び272gのH2Oを混合して1.6NのHCl溶液400gを生じさせた。、P123共重合体10.7gを添加し、撹拌しながら35〜40℃に加熱した。P123を溶解させた後に、22.7gのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を撹拌しながら添加した。この溶液を35〜40℃で24時間にわたり撹拌した。次に、この混合物を三口フラスコに移し、温度を100℃に上昇させ、そしてこの温度で48時間保持した。このスラリーをろ過し、そしてH2Oで洗浄した。固形物を120℃で1時間にわたり乾燥させ、次いで500℃で4時間にわたり2℃/分の傾斜速度で焼成させた。製造されたSBA−15試料の表面積は876m2/gであった。その後、6.25gのチタンイソプロポキシドを11.0gのイソプロパノールに溶解させた。この溶液を3.0gのSBA−15粉末上に含浸させ、100℃で1時間にわたり乾燥させた。次いで、得られた試料を550℃で2時間にわたり空気中で焼成してTiO2/SBA−15を生成させた。次いで、0.70gのパラモリブデン酸アンモニウムを7.0gのH2Oに溶解させた。この溶液を4.0gのTiO2/SBA−15に滴下した。この粉末を120℃で1時間にわたり乾燥させ、次いで500℃で4時間にわたり焼成した。V2O5被覆については、1.47gのNH4VO3及び2.88gのH2C2O4を15.4gのH2Oに溶解させた。この溶液をMoO3/TiO2/SBA−15粉末に含浸させた。再度、この試料を120℃で1時間にわたり乾燥させた。この含浸方法を、バナジウム溶液の全てが消費されるまで繰り返した。次に、この試料を450℃で4時間にわたり焼成した。最終触媒組成は、20重量%V2O5、10重量%MoO3、26重量%TiO2及び44重量%SBA−15であった。
【0085】
MoO3昇華:
MoO3昇華を、450及び700℃で流動2.5%H2O/空気中において管状反応器内で検討した。表2に示すように、市販のFe−Mo−Ox触媒は、700℃で100時間の試験後に、25%の重量損失を受ける。これに対し、2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2(ナノサイズ)及び20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15触媒の両方については、これよりも有意に低い重量損失が観察される。これらは、それぞれわずか8及び5%に過ぎない。これらの結果は、担持V2O5+MoO3触媒がMoO3昇華に対してより抵抗性が高く、そのため市販のFe−Mo−Ox触媒よりも安定であることを実証するものである。450℃では、100時間の試験後に、3種の触媒すべてについての重量損失が2%未満であったが、これは、実験誤差の範囲内である。
【0086】
MoO3昇華を2つの方法により検討した。第1の方法は、気流中で、温度を上げながら重量損失を測定する熱重量分析(TGA)を伴う。第2の方法は、触媒を700℃〜の温度でH2O及び空気の雰囲気下において100時間にわたり処理することを包含する。市販のエンゲルハードFe2O3−MoO3触媒を対照として使用した。
【0087】
図1は、3種の試料のTGA概略図を示している。この試料の全てが、200〜300℃よりも下で重量をいくらか損失したが、これは吸着されたH2Oによるものである。MoO3は、310℃よりも下では蒸発しないであろう。この概略図から、2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2及びFe−Mo触媒は、およそ2重量%の水を脱離したが、20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15は空気中で8.5重量%を脱離した。温度を上昇させると、Fe−Mo触媒は、約425℃でさらに重量を失い始め、700℃よりも上では、さらに有意な重量変化があった。425℃よりも上で観察されるこれらの重量損失は、MoO3昇華によるものであると考えられる。これに対し、2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2及び20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15は、それぞれ600℃及び675℃よりも上で重量損失を受け始めた。この2つの担持V2O5+MoO3触媒についてのMoO3昇華温度が高いことは、これらの触媒が市販のFe−Mo触媒よりも熱に安定であることを示唆する。
【0088】
H2Oは供給物中に存在する場合があり(しかも、反応中に必ず形成される)かつMoO3昇華を促進させ得るので、本発明者は、H2Oの存在下でのMoO3昇華も検討した。MoO3昇華は、管状反応器内で流動2.5%H2O/空気中において700℃で検討した。表6に示したように、市販のFe−Mo−Ox触媒は、700℃で100時間の試験後に25%の重量損失を受ける。これに対し、2%Fe2O3−12%V2O5+11%MoO3/TiO2及び20%V2O5+10%MoO3/TiO2/SBA−15触媒については、それよりも有意に低い重量損失、すなわち、それぞれわずか8及び5%が観察された。これらの結果は、さらに、担持V2O5+MoO3触媒がMoO3昇華に対してより安定であり、そのため市販のFe−Mo−Ox触媒よりも安定であることを示唆する。450℃では、100時間の試験後に、3種の触媒すべてについての重量損失は2%未満であったが、これは実験誤差の範囲内である。
【0089】
【表6】
【0090】
触媒性能:
触媒処方物(粉末状)についての初期性能試験を、熱交換器を有する充填床マイクロチャネル反応器で実施した。マイクロチャネルの入口断面積は、0.25インチ×0.06インチである。この試験のために、およそ0.2gの触媒(〜1インチの床長さ)を使用した。典型的な試験条件と、MoO3、V2O5及びTiO2担体を含む様々な触媒処方物についての性能のマトリックスとを以下の表7にまとめる。
【0091】
【表7】
【0092】
酸素濃度についての操業制約
4496B、4496C及び2870Aと示される3つの装置(上記図1で説明したマイクロチャネル反応器Aと同じ構造、すなわち、ステンレススチール製の構造壁反応器、3.5インチの長さ×0.57インチの幅×0.05インチの高さ:両側に0.02インチ構造壁が配置された0.01インチの流れギャップ)を試験した。V−Mo酸化物/TiO2触媒を該反応器の構造壁上にその場で被覆した。場合によっては、不活性SiO2被覆をこの構造壁に(その場で)適用してから、該触媒を、充填及び水切り技術を使用してウォッシュコートする。シリカなどの不活性被覆を使用して、副生成物(例えば、MF、DME及びDMM)の形成を最低限に抑える。現場ウォッシュコーティングについての充填及び水切り方法では、まず、この装置を650℃で10時間にわたり熱処理する。次いで、これをウォッシュコーティングプロセスに対して垂直に設置する。この装置を10mL/分の流量でシリンジポンプを用いて10%SiO2で底から充填した。該装置のゾルを〜0.5分間保持した後に、このゾルをくみ出した。チャネル内にある過剰のゾルを、圧縮空気を使用してパージした。次いで、冷却チャネルを水で洗浄した。その後、この装置を120℃で1時間にわたり乾燥させた。この被覆プロセスを3回繰り返した。最後に、この装置を600℃で4時間にわたり焼成した。マイクロチャネル反応器4496B及び4496Cへの触媒充填量は、それぞれ約100mg及び30mgであった。マイクロチャネル反応器2780Aは、約40mgの触媒が充填されたおよそ60mgのSiO2層を有していた。該装置における圧力降下プロフィール(周囲条件:室温及び大気圧での反応器出口で集めた窒素冷却流データ)を図3に示しており、これは、触媒の被覆が流れに接近しやすい主流れギャップの孔面積を減少させ得ることを示している。
【0093】
部分酸化実験を実行するために、HPLCポンプを使用して、液体メタノール供給原料をマイクロチャネル蒸発器に供給した。初期の試験のいくつかは、上記器具の代わりにシリンジポンプと管中管熱交換器を使用した。管中管蒸発器(メタノールの周囲の加熱空気/窒素流れが蒸発に関与する)を設置して、さらに高いメタノール流量を提供し(完全な蒸発を確保する)、そして該蒸発器内での副生成物形成を最低限に抑える(良好な温度制御により)。次いで、蒸発したガスを供給空気(酸素)及び希釈剤(窒素)と共に予備加熱し、その後、60μmステンレススチールフィルター(静的ミキサーと同様に作用する)内で互いに混合してから、反応器入口に供給する。冷却窒素を装置周辺の冷却チャネル内に〜10−15SLPMで流動させる。完全な反応器組立体を絶縁した。また、ヒートテープを使用して周囲への放熱も克服した。反応器を出る生成物流を〜120℃の昇温で保持してパラホルムアルデヒドの形成を防止する。排ガスを吸収装置に運び、そこでこれらの成分の大部分を水中に吸収させる。次いで、該吸収装置からの排ガスを分析のためにAgilent社製の小型GCに送った。続いて、実験中に吸収装置内で集められた液体を伝統的なAgilent6890 GC及び滴定を使用して分析した。試料をメタノール、ホルムアルデヒド(滴定)、ジメチルエーテル(DME)、蟻酸メチル(MF)及びメチラール(DMM)について分析した。
以下に要約する条件の範囲にわたって実験を実施した:
・250℃〜450℃、特に345〜420℃の温度
・0.1%〜20%、特に0.5〜6%の供給O2濃度
・1%〜50%、特に4〜26%の供給MeOH濃度
・10〜500ミリ秒、特に30〜200ミリ秒の範囲の接触時間。
【0094】
マイクロチャネル反応器試験を実施して酸素添加の単一段階をシミュレートした。つまり、メタノール供給物を酸素(空気からの)と反応器入口で混合してからV−Mo Ox/TiO2触媒上で反応させた。装置2870Aからの典型的な実験データを以下の表8に示す。これらの実験で収集されたデータの約90%は、±2%以内という、許容できる炭素収支(反応器を離れる炭素のモル対反応器に入る酸素のモルの比)を有していた。
【0095】
【表8】
【0096】
まず、試験データを、CO選択率について分析した(ホルムアルデヒドの酸化により形成されるCOは、主要な損失物質だからである)。CO選択率は、酸素分圧が低下すると共に直線的に減少することが分かった(提案された反応機構から予想されるとおり)。しかしながら、供給物中の酸素分圧が非常に低い(<1%)と、より高いCO選択率が観察される(図4a参照)が、これは、反応経路の変化を示している。したがって、CO選択率を最小限に抑えるためには、供給物酸素濃度が1〜10%の範囲、さらには1〜5%の範囲、さらには1〜2%の範囲内で望ましい供給酸素分圧の点での操作方法を提案する。これらの実験は、反応器全体において単一段階を再現するため、これらの局所分圧比範囲は、選択されたホルムアルデヒド合成条件下で最も低いCO選択率を与えるために各段階の開始付近において望ましい酸素分圧を示すものである。
【0097】
また、同じデータを反応器出口での酸素分圧(すなわち第1段階の終わり)についても分析した。この場合にも、CO選択率は反応器出口での酸素分圧が低下すると減少することが分かったが、反応器出口での酸素分圧が0.1%未満の場合には増加することが分かった(図4b参照)。したがって、CO形成に有意に寄与する酸素欠乏条件を除去するためには、0.01%〜10%、さらに0.01〜1%の範囲、さらには0.05〜0.15%の範囲内の出口O2濃度が該反応器の全ての段階で望ましい。すなわち、この実験反応器の入口及び出口(すなわち、多段反応器の第1段階)での局所酸素分圧値に課せられる制約は、該反応器内の酸素供給段階の残余についても保持されるはずである。したがって、不活性−段階添加点のそれぞれで反応器に供給される酸素の量を制御することが重要である。
【0098】
反応器性能のキャラクタリゼーション:改良構造壁構造
構造壁装置における滞留時間分布
構造壁反応器において、対流は、反応体分子と構造壁とを接触させ、次いで、これらの分子は表面特徴に拡散する(ある種の対流成分によって促進される)。反応は、壁表面(触媒層)で起こり、物質が主流れギャップに分散し(ある種の対流成分によって促進される)、続いて、対流によって反応器から運ばれる。滞留時間分布(RTD)は、反応器内の分子が滞在する時間の有用な評価を与える。
【0099】
マイクロチャネル反応器装置は、次の層を順に含有する:壁、孔層、z形表面特徴層、バルク流路、z形表面特徴、孔層、壁。マイクロチャネル反応器装置中で流動する流体のRTDを特徴付けるために、マイクロチャネル反応器Aの3D計算流動力学(CFD)シミュレーションを、市販のソフトウェアを使用して実施した。対称境界条件の使用すると、流れギャップの半分だけ(図1に示す)をシミュレートすることが可能になる。構造壁における「孔」及び「Z形表面特徴」を、該装置内における「真の」流れパターンを捕捉するように全て詳細に設計した(図5参照)。流体についての連続法的式及び運動量保存方程式を、有限体積法を使用して解いた。
【0100】
CFDシミュレーションから、流れの大部分が主チャネルを通過することが明らかになった。また、流れのかなりの割合が、「Z形」表面特徴のシムの凹部に入ることも分かる。しかしながら、非常に僅かな(対)流が「孔」シム内で生じる。模擬実験から、孔を含むシムにおけるいくつかの孔が流路の容積に基づき、平均滞留時間(〜10ミリ秒)よりも数桁高い500秒の滞留時間を有することが示された。「Z形」表面特徴層における滞留時間分布は、実際の流れギャップにおいて見られるものに非常に近い。
【0101】
マイクロチャネル反応器A装置におけるRTD挙動の要約したグラフを図6に示している。10ミリ秒(ms)値周辺の第1ピークは、流れギャップ容積に基づく平均接触時間に相当する。次の尾は、「Z形」表面特徴によって与えられる再循環を示している。第2のピーク(80ミリ秒周辺)及び次の尾は、孔「シム」における長い滞留時間を示すものである。数分の滞留時間を伴う長い尾は、ここには示されていない。理想的な流れの反応器では、全ての反応体分子が同じ滞留時間を経験する(対応する滞留時間分布はディラックのデルタ関数であろう)。したがって、非ゼロ変動の滞留時間分布(図6に示したようなもの)は、流れ分子の分散及び流れの不均等分布を示唆する。
【0102】
滞留時間の大きな格差は、直列反応(図7a参照)及び/又は対象の生成物が反応順序において中間体である(この場合「B」)直並列反応(図7b参照)にとって有害である。直列反応及び/又は直並列反応の例としては、(ただし限定されない)酸化、部分酸化、水素化及びニトロ化反応が挙げられる。特に、メタノール部分酸化の場合については、A=メタノール、B=ホルムアルデヒド、C=一酸化炭素、D=ジメチルエーテル、E=蟻酸メチル(A及びBの反応によって形成される追加の損失生成物DMMは図7bには示されていない)。
【0103】
長い滞留時間を有するくぼみ(反応器内の場所)は、所望の生成物(B)についての選択率の喪失につながる望ましくない生成物(例えばC及びE)の主要な発生源である。このような状況は、ホルムアルデヒドの高い生産性及び高い選択性を達成するためには非常に望ましくない。メタノール部分酸化についてこれを例示するために、図8に示す単純なパターンを有する構造壁反応器を模擬試験に使用した。
【0104】
代わりのパターンである数個のシム層(典型的には2〜50個の範囲)を使用して構造壁を作製した。このような構造壁(30層有する)の反応性CFDシミュレーションをホルムアルデヒド合成について実施した(直列−並列反応ネットワーク;図7)。ここで、メタノールが反応体であり、ホルムアルデヒドが望ましい生成物であり、一酸化炭素、ジメチルエーテル及び蟻酸メチルが望ましくない生成物であり、ジメトキシメタンが他の望ましくない生成物である。SWの前縁で完全に流れを生じさえるために、このモデルには0.1インチ長の流れ抜け部が備えられていた。SW反応区域の後には0.05インチ長の流れ抜け部が備えられていた。
【0105】
シミュレーションは、図9に示すように、構造壁の底部の終端部にホルムアルデヒド(HCHO)が蓄積することを示している。また、これらの区域は、非常に低い対流速度、つまり長い滞留時間にも関わっている。したがって、これらの区域は、CO、DME、MF及びDMMといった望ましくない副生成物に至る二次反応にとって好都合に働きやすい。これらの望ましくない生成物についての質量分率の曲線は、図9のHCHOの曲線に密接に従う。
【0106】
このような構造壁中における流れのCFD調査から、流れ抜けギャップ中における対流速度の0.1〜20%であることが明らかになった。しかしながら、上記デッドゾーンは、かなりの再循環及び非常に低い実効対流速度も有する。これらは、高い選択率で高い生産性の目標を満たす(例えば、>95%のホルムアルデヒド収率)のを困難にする、大きな望ましくない反応の区域をもたらす。
【0107】
構造壁内のデッドゾーンから生成物/反応体の対流を促進させるためには、図10に示されるように、傾斜構造壁パターンを提案する。両末端でのテーパーが重要であり、そしてこれは、再循環伴流の形成を最小限に抑え、かつ、対流速度の成分を構造壁の深さに沿って維持することに役立つ。テーパーの角度(流れ抜けギャップの底部から構造壁の底部までで測定されるθ)は、1度〜90度で変更できる。テーパーの角度が大きいと、構造壁の容積が大きくなり、すなわち触媒充填量が増えるが、構造壁の底部に沿って対流成分を安定化させる点では効果が少ない。望ましいテーパー角度は、10°〜80°、より好ましくは20°〜70°、さらには30°〜60°であることができるであろう。
【0108】
テーパーは、流れ方向が最も効果的であるが、垂直方向で使用することも可能である。実際には、テーパーは、例えば、一連の階段構造壁パターンによって達成できる。図11を参照されたい。これを達成するのに必要な段の数は、触媒充填量及び構造壁の深さに依存するであろう。段数は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、所定の実施形態では少なくとも5、所定の実施形態では3〜30段であろう。
【0109】
テーパーを有する同様の構造壁メッシュを、メッシュスリーブを使用することによって円筒形チャネル形状内に作製できる。長方形チャネル内にプレートの積み重ねを付着させるのと同様に、円筒形チャネル形状において構造壁を形成させるために円筒形メッシュスリーブの積み重ねと接着を想起することができる。図12を参照されたい。また、三角形プリズム及び他の幾何学形状で作るもともできる。
【0110】
角度付き構造壁パターンの特例:
上記構造壁において、流れは構造壁の表面に対して垂直である。この場合には、入射角(構造壁の最上層にある構造壁の表面への流れ方向間で測定されるδ、ここで、「最上」とは、バルク流路に隣接することを意味する。)は0°である。また、構造壁は、0°〜90°、好ましくは10°〜45°、より好ましくは20〜30°の範囲の変動入射角で作製することもできる。これらの角度付き構造壁は、流れに対して平行又は垂直であるもに勝る利点がある。というのは、これらは、流れの勢いを構造に向けることによって、深い構造壁中に追加の対流成分を導入するのに役立つからである。
【0111】
バルク流路に隣接する壁部に流れ方向に角度が付いている反応器では、この角度が追加のデッドゾーン(図13において点線で示された重複領域)の出現の原因となり得ることが分かる。これは、これらの領域が壁部の下の流れ領域との接続が限定されている又はそれとの接続がないためである。これらのデッドゾーンは、長い滞留時間、つまり、望ましくない生成物(上記のようなもの)の高い形成率を有する。このデッドゾーンの形成を多少なりとも解決するために、構造壁シム上のパターンを、図14(上)に示すように、構造壁上に入口及び出口「テーパー」パターン(流れ方向に傾斜)を導入することによって変更できる。得られた組立積層体(図14(下))はいかなるデッドゾーンも欠いており、そのため、直列反応及び/又は中間体が副生成物である直並列反応について、角度付きの構造壁の性能を向上させることが予想される。
【0112】
また、構造壁の深さに沿ったテーパー形成(上記のような)を、このテーパー形成角度付き構造壁の長さパターンと共に使用することもできる。
【0113】
マイクロチャネル内における滞留時間分布を減少させる、説明した構造壁構造は、任意の化学反応について使用でき、また、いくつかの分子に対する長い反応時間により所望の生成物に対する全体的な選択率が減少する部分酸化反応などの直接反応に対して特に利点があることが分かる。
【0114】
滞留時間分布を改善させる、説明した構造壁構造は、フィッシャートロプシュ反応並びにエチレンオキシド、アクリル酸、アクリロニトリル及びスチレンの製造などの反応に対して特別の利点を有する。フィッシャートロプシュ反応の場合には、生成物の分配は、滞留時間分布を改善させることによって、非常に高い分子量の炭化水素の形成を低減させるように調節できる。
【0115】
優れたホルムアルデヒド収率のための段階的酸素付加を有する反応器構造
マイクロチャネル反応器A(すなわちステンレススチール製構造壁反応器、3.5インチの長さ×0.57インチの幅×0.05インチの高さ:両側に0.02インチ構造壁が配置された0.01インチフローギャップ)から作成されたデータを使用してメタノール部分酸化反応ネットワークのモデルを作成した。この5個の反応ネットワーク(以下参照)は、Diakov外(Chem.Eng.Sci.,第57巻,p1563−1569,2002)及びDeshmukh外(App.Cat.A,第289巻、p240−255,2005)により提案されたものに類似する。
【0116】
【化1】
【0117】
メタノール部分酸化反応の化学両論及び速度に基づき、反応生成物HCHOは、酸素への0位の依存性を有するのに対し、主損失生成物COは、酸素において1位の酸素依存性を有する(上で与えたマイクロチャネル反応器における実験からも明らかである)。したがって、酸素から反応混合物への段階的又は多段添加は、HCHOとの反応(ホルムアルデヒドへのメタノール酸化後)に利用できる酸素を制限し、それによってCOへの選択性を最小限に抑えるであろう。他の損失生成物はvizである。MF及びDMMは、中程度に高い温度で反応を実施することによって制御できる(反応の速度を最小限に抑えるが、ただし、CO及びHCHO形成の相対速度を相殺しないように)。
【0118】
この反応モデルは、反応器マイクロチャネルの長さに沿って酸素(空気中)反応体の添加を段階的にシミュレートするように開発された1次元コンピュータモデルで実施できる。この空気の段階的添加は、局所酸素分圧を低下させて一酸化炭素の形成を抑制する(上記のとおり)。収率は、低圧で操作することによって増加した。
【0119】
V−Mo酸化物/TiO2触媒についての実験データからの速度モデルを使用して、段階的に酸素添加される1D多段反応器のモデルを作成した。重要なパラメーターは、各段階についての供給流速、段の長さ、温度及び触媒充填量である。このような2〜100個の段を設計してホルムアルデヒドの収率を最大化させる(収率=転化率×選択率、すなわち両者を最大化させることを意味する)。
【0120】
典型的な段部の長さは、0.1インチ〜10インチ、好ましくは0.1インチ〜5インチ、より好ましくは0.1インチ〜1インチの範囲にある。反応流れへの酸素(空気)の添加のための段部の数は、少なくとも2(収率の低い目標について)〜100(収率の高い目標について)、好ましくは5〜75、場合によっては10〜60個の段部で変更できる。実際には、この段階添加は、空気(又は他の酸素源)のアクティブ(計量)又はパッシブ(抵抗性制御ジェット)添加によって達成できる。生成物の収率を制御するための調節可能なパラメーターとしては、長さ、温度、触媒充填量、各段階についての空気の供給割合が挙げられるが、これらに限定されない。単位長さ当たりの触媒充填量及び段部の長さは、予め決められた収率を維持するために各段部で変更できる。温度は、MF及びDMMに対する選択率を減少させるように制御できると同時に、空気の供給割合はCO選択率を制限するように制御される。予め決められた(目標)収率を達成するために、これらの因子の全てを並行して変更できる。これらの因子の選択は自明ではなく、反応によって変更できるが、ここで例示とおりの一般的なガイドラインを提供することができる。反応器及び反応方法を他の反応に適応できると解すべきである。
【0121】
段部の長さは、特定の段部に供給される酸素のほぼ完全な(>75%、特に>90%、さらには>95% さらには>99%)の転化率を可能にするように設計される。つまり、反応器(段部)中における触媒充填量は、段部の長さにも影響を及ぼすであろう。酸素転化率の完全性の度合いのある程度の変化も、その反応器の位置での全メタノール転化率に基づき許容できる場合がある。しかしながら、非常に低い酸素レベルでCO形成の高い選択率が観察されたら、そのモデルでは、各段部の出口で0.1%のO2という設計制約が必要であった。
【0122】
酸素段部間では、各段部で酸化体と反応混合物との混合を手助けするために、混合特徴が必要となり得ることが予想される。一実施形態では、ジェット又は他の速度の速い酸化体入口(第2供給物流の速度よりも高い入口酸化体流の速度)方法の使用は、触媒内又は触媒前又は触媒間の反応を混合するのに十分なものであると考えられる。表面特徴、ポストその他の混合特徴は、各酸化体供給点への入口付近で2種の流れを混合するために必要であると考えられる。
【0123】
概念説明の証拠として、反応器の単位長さ当たりの均一な温度及び均一な触媒充填量が反応器全体にわたって推定された。各段部の長さ及び反応器に供給される空気(酸素)の割合は、主要同調変数として使用され、また、これらは各段部で変更する(図15a及び16a参照)。
【0124】
空気(酸素)の同じでない供給割合:
空気の割合の大きい短い段部を反応器の入り口付近で使用する。これらの段部は、メタノールの中程度の転化率(10%まで)及び酸素のほぼ完全な転化率(>95%)で高い選択率を達成するのに役立つ。中間段部は、僅かに低い転化率という犠牲を払ってでも最大の選択率を達成することを目的とした。この反応器内の最後の2段は、低いホルムアルデヒド選択率という犠牲を払ってでも高い反応体(メタノール)転化率を達成するように設計された、より長い段である(図15b参照)。
【0125】
同じでない段部の長さ:
全体として、段部の長さのほぼ単調な増加(形式AeBn、n=段部の数)及び供給空気の割合の減少(形式A(1−eBn))が反応器段部長さにわたって見られる。反応器内で達成されるメタノール転化率は、導入された空気(その地点に)の全量にほぼ等しい。というのは、該反応器内における累積酸素転化率が反応器長さ全体に沿って>99%であるからである。
【0126】
また、各段部での接触時間が一定に維持され、段部の長さがその後の各段部における高い流速に適応するように徐々に長くなるという操作戦略も予期される。或いは、損失生成物がより緩やかな反応のため優勢である場合には、接触時間の減少する段部を備えることができるであろう。しかしながら、これらの方法を実施しつつ選択率及び収率への影響について注意する必要がある。反応速度は重要な役割も果たすからである。
【0127】
これらの戦略を用いて、段部の数を増やした反応器シミュレーション(ただし、単位長さ当たりの温度及び触媒充填量は一定)を実施した。図17に示すように、空気供給に対して段部の数を増加させると(5〜60個)、収率が増加する(94.6〜97%)ことが分かるが、これは、上記方法の成功を明らかにするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
第1反応体をマイクロチャネルに通し、
該マイクロチャネルに第2反応体を複数の段階で通すこと
を含む直列反応又は直並列反応の実施方法であって、
該第1反応体及び第2反応体が各段階で反応し;
該第1反応体に基づく、該方法からの一次生成物の収率が少なくとも90%であり、しかも、各段階の終了時に、該第2反応体は完全には消費されていないが、ただし0.01〜10モル%の範囲で存在する、前記方法。
【請求項2】
前記第1反応体が液体を含み、該液体を入口から前記マイクロチャネルに供給し、前記第2反応体が、開口部を介してマイクロチャネルに供給されるガスを含み、しかも、該第1反応体と該第2反応体とは、前記マイクロチャネルの壁部に装填された固体触媒部で反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2種以上の反応体を前記マイクロチャネルに供給し、該2種以上の反応体の1種以上も複数の段部にある開口部から該マイクロチャネルに供給する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1反応体がメタノールであり、前記第2反応体が酸素であり、前記一次生成物がホルムアルデヒドである、請求項1〜3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタノールと前記酸素とを、メソ多孔質マトリックス上に配置されたチタニアの上に配置された酸化バナジウムと酸化モリブデンとの混合物を含む触媒上で反応させる、請求項1〜4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
触媒がメソ多孔質マトリックス上に配置され、該メソ多孔質マトリックスが前記マイクロチャネルの全長に沿ったウェル内に配置され、さらに、該マイクロチャネルがバルク流路を備え、しかも、該メソ多孔質マトリックスが該バルク流路に隣接している、請求項1〜5いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ウェルが壁部を備え、該壁部が前記バルク流路を通した流れ方向に傾斜している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2反応体の一部を前記第1反応体と一緒にしてからマイクロチャネルに入れる、請求項1〜7いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応体の流れを、前記マイクロチャネルを通した質量流量の少なくとも90%が質量平均滞留時間の10%未満で変化する滞留時間を有するように制御することを含む、請求項1〜8いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応室内での直列反応又は直並列反応の実施方法であって、次の工程:
第1反応体を含む流れを2mm以下の少なくとも一つの寸法を有するバルク流路に通し、ここで、該バルク流路に隣接して、メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒が存在し、該第1反応体は、メソ多孔質マトリックス上に担持される触媒上で第2反応体と反応し、該メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒によって占められる容積と、該メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒に隣接するバルク流路の容積とが反応室の容積を決めるものとし;
該反応体の流れを、該流れの少なくとも90%が質量平均滞留時間の10%未満で変化する該反応室内での滞留時間を有するように制御すること;
を含む方法。
【請求項11】
生成物流を生じさせ、しかも、その単一生成物の収率が前記第1反応体の質量を基にして少なくとも90%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1反応体がメタノール含有流れ中のメタノールを含み、前記第2反応体がO2であり、前記単一生成物がホルムアルデヒドである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記メタノール含有流れにO2を段階的に添加し、いずれかの段階に入るO2濃度が1〜10容積%の範囲にあり、前記反応器における全ての段階について出るO2濃度が0.01〜1容積%である、請求項10〜12いずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応室内における流れの少なくとも95%が2%以下で変化する滞留時間を有するように、流れを制御する、請求項10〜13いずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
マイクロチャネル装置であって、
2mm以下の少なくとも一つの寸法を有するバルク流路と、
該バルク流路に隣接するチャネル流路と
を備え、
該チャネルの壁は、傾斜壁を有するウェルと該ウェル中に配置されるメソ多孔質マトリックス材料とを備え、しかも
該メソ多孔質マトリックスは、該壁の中に閉じ込められ、かつ、該壁の外側にある該バルク流路の壁を覆っていない、マイクロチャネル装置。
【請求項16】
メソ多孔質マトリックス上には配置されず、ウェルの内部にはないバルク流路周辺の壁部上に配置される触媒をさらに備える、 請求項15に記載のマイクロチャネル装置。
【請求項17】
前記メソ多孔質マトリックスが構造壁を備え、しかも、該構造壁が階段状構造を形成する層から作られている、請求項15又は16に記載のマイクロチャネル装置。
【請求項18】
請求項15〜17いずれか一項に記載のマイクロチャネル装置において単位操作を実施する方法であって、次の工程:
前記バルク流路に流体を通し、ここで、該流体は該バルク流路を通って所定の方向で流れ、前記ウェルは、前縁及び後縁を有し、該ウェルの前縁は下方に傾斜しており、該後縁は上方に傾斜しているものとし;及び
該流体が該マイクロチャネル装置を通過するときに単位操作を実施すること
を含む方法。
【請求項19】
マイクロチャネル装置であって、
バルク流路と、
該バルク流路に隣接する構造壁と
を備え、
該装置の操作中に該バルク流路を通した所定の流体流れ方向が存在し;
該構造壁は、該構造壁の最上層に、該流れ方向に対して10°〜80°の角度を有するクロスバーを備え、さらに
該構造壁は、開口部及びクロスバーを有する表面下層を備え、ここで、該表面下層のクロスバーは、該バルク流路を通した流れ方向に対して、該最上層における角度とは異なる角度を有し、
該最上層及び該表面下層は前縁を有し、この際、流れ方向で見て、該開口部が各層に最初に出現し、ここで、該表面下層の該前縁部は、該バルク流路からの流れが該最上層の下に捕捉されないように、該最上層におけるクロスバーの角度に相当するテーパー形状を有する、マイクロチャネル装置。
【請求項20】
請求項19に記載のマイクロチャネル装置を備え、前記バルク流路を通過する第1反応体と、前記開口部を通過する第2反応体とをさらに含む、装置及び流体を備えるマイクロチャネルシステム。
【請求項21】
マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャネル壁とを備えるものとし;
該複数の開口部に酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、該酸素の含有量は、酸素のモル%が該チャネルの5容積%で10%を超えないように制御され、この場合、メタノールの量(モル)は、該チャネルの5容積%で酸素の量を超えるものとし(ここで、該5容積%は連続長に基づくものであり、かつ、該連続長にわたる全断面積をカバーする);及び
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法。
【請求項22】
マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャネル壁とを備えるものとし;
該複数の開口部に酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、該酸素含有量は、該マイクロチャネル装置のいずれかの段部に入る酸素の濃度が1モル%を超えるように制御され、該酸素含有量は、該マイクロチャネル装置のいずれかの段部を出る酸素濃度が0.01モル%を超えるように制御されるものとし;及び
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法。
【請求項23】
マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャネル壁とを備えるものとし;
該複数の開口部に酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、該複数の開口部は、不規則な間隔を開けて配置されるものとし;及び
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法。
【請求項24】
前記酸素を複数の段階でメタノールに添加し、しかもO2含有量を全ての段階の終了時に少なくとも0.01%(容積%)のレベルに保持する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャネル壁とを備えるものとし;
該複数の開口部を介して少なくとも第1段部及び第2段部に酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該第1ステージ及び第2ステージのいずれかにおいて該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、該酸素の含有量を、酸素のモル%が該第1段部及び第2段部のいずれかにおいて10%を超えないように制御するものとし;及び
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法。
【請求項26】
メタノール及び酸素を250℃以上の温度で触媒上に通すことを含むホルムアルデヒドの合成方法であって、該触媒がメソ多孔質マトリックス上に配置されたチタニア担体上にV・Mo混合酸化物を含む方法。
【請求項1】
次の工程:
第1反応体をマイクロチャネルに通し、
該マイクロチャネルに第2反応体を複数の段階で通すこと
を含む直列反応又は直並列反応の実施方法であって、
該第1反応体及び第2反応体が各段階で反応し;
該第1反応体に基づく、該方法からの一次生成物の収率が少なくとも90%であり、しかも、各段階の終了時に、該第2反応体は完全には消費されていないが、ただし0.01〜10モル%の範囲で存在する、前記方法。
【請求項2】
前記第1反応体が液体を含み、該液体を入口から前記マイクロチャネルに供給し、前記第2反応体が、開口部を介してマイクロチャネルに供給されるガスを含み、しかも、該第1反応体と該第2反応体とは、前記マイクロチャネルの壁部に装填された固体触媒部で反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2種以上の反応体を前記マイクロチャネルに供給し、該2種以上の反応体の1種以上も複数の段部にある開口部から該マイクロチャネルに供給する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1反応体がメタノールであり、前記第2反応体が酸素であり、前記一次生成物がホルムアルデヒドである、請求項1〜3いずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メタノールと前記酸素とを、メソ多孔質マトリックス上に配置されたチタニアの上に配置された酸化バナジウムと酸化モリブデンとの混合物を含む触媒上で反応させる、請求項1〜4いずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
触媒がメソ多孔質マトリックス上に配置され、該メソ多孔質マトリックスが前記マイクロチャネルの全長に沿ったウェル内に配置され、さらに、該マイクロチャネルがバルク流路を備え、しかも、該メソ多孔質マトリックスが該バルク流路に隣接している、請求項1〜5いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ウェルが壁部を備え、該壁部が前記バルク流路を通した流れ方向に傾斜している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2反応体の一部を前記第1反応体と一緒にしてからマイクロチャネルに入れる、請求項1〜7いずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応体の流れを、前記マイクロチャネルを通した質量流量の少なくとも90%が質量平均滞留時間の10%未満で変化する滞留時間を有するように制御することを含む、請求項1〜8いずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応室内での直列反応又は直並列反応の実施方法であって、次の工程:
第1反応体を含む流れを2mm以下の少なくとも一つの寸法を有するバルク流路に通し、ここで、該バルク流路に隣接して、メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒が存在し、該第1反応体は、メソ多孔質マトリックス上に担持される触媒上で第2反応体と反応し、該メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒によって占められる容積と、該メソ多孔質マトリックス上に担持された触媒に隣接するバルク流路の容積とが反応室の容積を決めるものとし;
該反応体の流れを、該流れの少なくとも90%が質量平均滞留時間の10%未満で変化する該反応室内での滞留時間を有するように制御すること;
を含む方法。
【請求項11】
生成物流を生じさせ、しかも、その単一生成物の収率が前記第1反応体の質量を基にして少なくとも90%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1反応体がメタノール含有流れ中のメタノールを含み、前記第2反応体がO2であり、前記単一生成物がホルムアルデヒドである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記メタノール含有流れにO2を段階的に添加し、いずれかの段階に入るO2濃度が1〜10容積%の範囲にあり、前記反応器における全ての段階について出るO2濃度が0.01〜1容積%である、請求項10〜12いずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応室内における流れの少なくとも95%が2%以下で変化する滞留時間を有するように、流れを制御する、請求項10〜13いずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
マイクロチャネル装置であって、
2mm以下の少なくとも一つの寸法を有するバルク流路と、
該バルク流路に隣接するチャネル流路と
を備え、
該チャネルの壁は、傾斜壁を有するウェルと該ウェル中に配置されるメソ多孔質マトリックス材料とを備え、しかも
該メソ多孔質マトリックスは、該壁の中に閉じ込められ、かつ、該壁の外側にある該バルク流路の壁を覆っていない、マイクロチャネル装置。
【請求項16】
メソ多孔質マトリックス上には配置されず、ウェルの内部にはないバルク流路周辺の壁部上に配置される触媒をさらに備える、 請求項15に記載のマイクロチャネル装置。
【請求項17】
前記メソ多孔質マトリックスが構造壁を備え、しかも、該構造壁が階段状構造を形成する層から作られている、請求項15又は16に記載のマイクロチャネル装置。
【請求項18】
請求項15〜17いずれか一項に記載のマイクロチャネル装置において単位操作を実施する方法であって、次の工程:
前記バルク流路に流体を通し、ここで、該流体は該バルク流路を通って所定の方向で流れ、前記ウェルは、前縁及び後縁を有し、該ウェルの前縁は下方に傾斜しており、該後縁は上方に傾斜しているものとし;及び
該流体が該マイクロチャネル装置を通過するときに単位操作を実施すること
を含む方法。
【請求項19】
マイクロチャネル装置であって、
バルク流路と、
該バルク流路に隣接する構造壁と
を備え、
該装置の操作中に該バルク流路を通した所定の流体流れ方向が存在し;
該構造壁は、該構造壁の最上層に、該流れ方向に対して10°〜80°の角度を有するクロスバーを備え、さらに
該構造壁は、開口部及びクロスバーを有する表面下層を備え、ここで、該表面下層のクロスバーは、該バルク流路を通した流れ方向に対して、該最上層における角度とは異なる角度を有し、
該最上層及び該表面下層は前縁を有し、この際、流れ方向で見て、該開口部が各層に最初に出現し、ここで、該表面下層の該前縁部は、該バルク流路からの流れが該最上層の下に捕捉されないように、該最上層におけるクロスバーの角度に相当するテーパー形状を有する、マイクロチャネル装置。
【請求項20】
請求項19に記載のマイクロチャネル装置を備え、前記バルク流路を通過する第1反応体と、前記開口部を通過する第2反応体とをさらに含む、装置及び流体を備えるマイクロチャネルシステム。
【請求項21】
マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャネル壁とを備えるものとし;
該複数の開口部に酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、該酸素の含有量は、酸素のモル%が該チャネルの5容積%で10%を超えないように制御され、この場合、メタノールの量(モル)は、該チャネルの5容積%で酸素の量を超えるものとし(ここで、該5容積%は連続長に基づくものであり、かつ、該連続長にわたる全断面積をカバーする);及び
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法。
【請求項22】
マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャネル壁とを備えるものとし;
該複数の開口部に酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、該酸素含有量は、該マイクロチャネル装置のいずれかの段部に入る酸素の濃度が1モル%を超えるように制御され、該酸素含有量は、該マイクロチャネル装置のいずれかの段部を出る酸素濃度が0.01モル%を超えるように制御されるものとし;及び
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法。
【請求項23】
マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャネル壁とを備えるものとし;
該複数の開口部に酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、該複数の開口部は、不規則な間隔を開けて配置されるものとし;及び
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法。
【請求項24】
前記酸素を複数の段階でメタノールに添加し、しかもO2含有量を全ての段階の終了時に少なくとも0.01%(容積%)のレベルに保持する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
マイクロチャネル装置中でホルムアルデヒドを合成する方法であって、次の工程:
メタノールをチャネルに通し、ここで、該チャネルは、バルク流路と、該バルク流路に隣接した、メソ多孔質マトリックス上に担持されたホルムアルデヒド合成触媒と、複数の開口部を備えるチャネル壁とを備えるものとし;
該複数の開口部を介して少なくとも第1段部及び第2段部に酸素を通し、ここで、該メタノールと該酸素とは該第1ステージ及び第2ステージのいずれかにおいて該ホルムアルデヒド合成触媒上で反応し、該酸素の含有量を、酸素のモル%が該第1段部及び第2段部のいずれかにおいて10%を超えないように制御するものとし;及び
ホルムアルデヒドを含む生成物流れを、該メタノール反応体に基づき少なくとも90%の収率で生成させること
を含む方法。
【請求項26】
メタノール及び酸素を250℃以上の温度で触媒上に通すことを含むホルムアルデヒドの合成方法であって、該触媒がメソ多孔質マトリックス上に配置されたチタニア担体上にV・Mo混合酸化物を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2011−516260(P2011−516260A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504099(P2011−504099)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/039592
【国際公開番号】WO2009/126547
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(504455241)ヴェロシス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/039592
【国際公開番号】WO2009/126547
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(504455241)ヴェロシス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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