説明

構造物検査装置

【課題】検査作業を容易に行うと共に、検査精度の向上を図る。
【解決手段】本発明は、構造物2の表面の損傷部分を検査するための構造物検査装置1であって、構造物2の表面の画像を撮影するための撮像手段3と、撮像手段3の光学的な中心Pから構造物2の表面までの距離を計測するための距離計測手段4と、距離計測手段4により計測した撮像手段3の光学的な中心Pから構造物2の表面までの距離データと撮像手段3の光学的な中心Pから焦点までの距離とに基づき生成したクラックスケールを撮像手段3により撮影した構造物2の表面の損傷部分の画像上に重ね合わせることにより構造物2の表面の損傷部分の実際の寸法を計測する制御手段11と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面のクラック等、構造物の表面の損傷部分を検査するための構造物検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート等の構造物の表面には経年変化によりクラックや剥離等の損傷が発生するため、定期的に構造物の表面を検査することが必要となる。
【0003】
通常、この種の構造物の検査は、作業員が構造物の表面の損傷部分にスケールを直接当てて損傷部分の幅や長さを計測したり、或いは、光波測量機により構造物の表面の損傷部分の幅や長さを読み取ったりすることにより行われている。
【0004】
しかしながら、上記した従来の検査では、いずれの方法でも、検査作業に手間が掛かる上、検査が一人の作業員により行われるため、構造物の表面の損傷部分の計測結果が作業員の技量に大きく依存され、検査精度を高めることが難しいといった問題があった。
【0005】
また、光波測量機により構造物の表面の損傷部分の幅や長さを読み取る方法では、座標しか記録することができないため、クラックの幅は読み取れてもクラックの長さを読み取ることができないといった問題や、クラックが複雑な形状の場合にはクラックのどの部分を読み取ったのかを再現することが難しいといった問題があった。
【0006】
そこで、近年、これらの問題点を解決するため、デジタルカメラにより撮影した構造物の表面の損傷部分の画像を解析し、検査する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−267432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に記載されている技術では、被写界深度やキャリブレーションの問題などのため、拡大率の高い望遠レンズを使用して構造物の表面の損傷部分を計測し、検査することが難しいといった問題があった。さらに、検査精度を高めることができないといった問題は依然として解決するのが困難であった。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、検査作業を容易に行うことができ、検査精度の向上を図ることができると共に、望遠レンズを使用して構造物の表面の損傷部分を計測し、検査することのできる構造物検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、構造物の表面の損傷部分を検査するための構造物検査装置であって、前記構造物の表面の画像を撮影するための撮像手段と、該撮像手段の光学的な中心から前記構造物の表面までの距離を計測するための距離計測手段と、該距離計測手段により計測した前記撮像手段の光学的な中心から前記構造物の表面までの距離データと前記撮像手段の光学的な中心から焦点までの距離とに基づき生成したクラックスケールを前記撮像手段により撮影した前記構造物の表面の損傷部分の画像上に重ね合わせることにより前記構造物の表面の損傷部分の実際の寸法を計測する制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
そして、前記撮像手段の光学的な中心と前記距離計側手段の発光点とは、前記構造物の表面からの距離が同一となるように同軸上に設けられていてもよい。
【0011】
また、前記距離計測手段の光軸を前記撮像手段のレンズの光学的な中心に一致させるための光学部品を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検査作業を容易に行うことができると共に、検査精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る構造物検査装置を示す平面図である。なお、以下の説明では、本発明をコンクリート表面のクラックの検査装置として使用する場合について例示して説明する。
【0014】
本実施の形態に係る構造物検査装置1は、コンクリート2の表面のクラックを撮影するための撮像手段であるカメラ3と、カメラ3の側部に設けられた距離計測手段である距離計センサー4と、カメラ3及び距離計センサー4にそれぞれ通信ケーブル5,6を介して接続されたパソコン7と、距離計センサー4の光軸OAをカメラ3の光学的な中心Pに一致させるための光学部品である複数(図示では2個)のプリズム9,10とを備えて構成されている。なお、図1では距離センサー4が1台のみ設置されているが、カメラ3の周囲に複数台の距離センサー4を設置してもよい。
【0015】
カメラ3は、例えば、デジタル一眼レフカメラであり、アクセサリーシューや専用ブラケット(いずれも図示省略)に取り付けられている。また、レンズ8は、短焦点望遠レンズであるのが好ましい。
【0016】
距離計センサー4は、例えば、レーザー距離計であり、レーザーポインターを備えている。そして、距離計センサー4の発光点Qとカメラ3の光学的な中心Pとは、コンクリート2の表面からの距離Lが同一となるように同軸CL上に設けられているのが好ましい。なお、距離計センサー4の発光点Qとカメラ3の光学的な中心Pとが同軸CL上に設けられていない場合には、プリズム9,10を設置せずに、距離計センサー4から直接、レーザー光を発射し、コンクリート2の表面までの距離を計測するようにしてもよい。
【0017】
パソコン7は、距離計センサー4により計測したカメラ3の光学的な中心Pからコンクリート2の表面までの距離データとカメラ3の光学的な中心Pから焦点までの距離とに基づき生成したクラックスケールをカメラ3により撮影したコンクリート2の表面の損傷部分の画像上に重ね合わせることによりコンクリート2の表面の損傷部分の実際の寸法を計測する制御部11と、前記画像、距離データ、焦点距離、制御部11による計測結果等を記憶する記憶部12と、カメラ3により撮影したコンクリート2の表面のクラックの画像を表示する液晶表示装置等の表示部13と、焦点距離等の各種データを入力するためのキーボードやマウス等の入力部14とを備えている。
【0018】
このような構成を備えた構造物検査装置1において、コンクリート2の表面のクラックの画像をカメラ3により撮影すると同時に、距離計センサー4によりカメラ3の光学的な中心Pからコンクリート2の表面のクラックまでの距離Lを測定する。
【0019】
この場合、距離計センサー4から発射されたレーザー光はプリズム9,10によりそれぞれ直角に反射されるため、距離計センサー4は、光路の全長から各プリズム9,10間の距離Lを減じた長さを距離Lとして算出する。また、距離計センサー4から発射されたレーザー光がプリズム9,10に反射されることにより、距離計センサー4の光軸OAがカメラ3のレンズ8の光学的な中心Pに一致するようになるため、カメラ3の光学的な中心Pからコンクリート2の表面のクラックまでの距離Lを精度良く計測することができる。
【0020】
このようにカメラ3が撮影したコンクリート2の表面のクラックの画像データ及び距離計センサー4が計測したカメラ3の光学的な中心Pからコンクリート2の表面のクラックまでの距離データは、それぞれ通信ケーブル5,6を介してパソコン7に送信され、記憶部12に格納される。
【0021】
パソコン7側では、制御部11が、記憶部12に格納した画像データに基づき表示部13にコンクリート2の表面のクラックの画像を表示させる。さらに、制御部11は、前記距離データと予め入力部14から記憶部12に入力された焦点距離とから実際の倍率に合うようにクラックスケールを生成する。そして、入力部14からの操作に基づき、このクラックスケールが表示部13上を移動し、表示部13に表示されている前記クラック画像に重ね合わせられると、制御部11は、コンクリート2の表面のクラックの実際の長さや幅等の寸法を自動計測し、このクラックの寸法のデータを記憶部12に格納する。
【0022】
上記したように本発明の実施の形態に係る構造物検査装置1によれば、コンクリート2の表面のクラックの実際の長さや幅が自動計測されるため、計測結果が作業員の技量に依存されることはない。したがって、検査作業を容易に行うことができると共に、検査精度を高めることができる。また、被写界深度やキャリブレーションの問題を解決することができるため、拡大率の高い望遠レンズを使用して構造物の表面の損傷部分を計測し、検査することもできるようになる。
【0023】
さらに、パソコン7の表示部13上でクラックの幅や長さを複数の作業員により確認することができるため、検査の信頼性を高めることができる。また、過去に検査した時の画像をパソコン7の表示部13上で重ねて表示することにより、クラックの変化や成長を容易に把握することができる他、漏水、劣化、ひび割れ、さびなどが発生している箇所を容易に発見することができる。
【0024】
なお、計測誤差が無視できる程度にコンクリート2の表面からカメラの光学的な中心Pまでの距離が離れている場合には、プリズム10,11を設置せずに、距離計センサー4からのレーザー光が直接、コンクリート2の表面に向かって発射されるようにしてもよい。
【0025】
また、カメラ3の光学的な中心Pと距離計センサー4の発光点Qとは必ずしも同軸CL上に配置されていなくてもよく、この場合、クラックの寸法の計測時に、カメラ3の光学的な中心Pからコンクリート2の表面までの距離と、距離計センサー4の発光点Qからコンクリート2の表面までの距離との差を予め見込んでおいてクラックの寸法を計測するようにすれば、計測誤差の発生を抑制することができる。
【0026】
また、上記した実施の形態では、本発明をコンクリート表面のクラックの検査に使用した場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は、タイルの剥離やブロック、レンガ、ケーブルやアスファルトの亀裂等、他の構造物の表面の損傷部分を検査するための検査装置全般に適用可能であることは言う迄もない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る構造物検査装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 構造物検査装置
2 コンクリート
3 カメラ
4 距離計センサー
9 プリズム
10 プリズム
11 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面の損傷部分を検査するための構造物検査装置であって、
前記構造物の表面の画像を撮影するための撮像手段と、
該撮像手段の光学的な中心から前記構造物の表面までの距離を計測するための距離計測手段と、
該距離計測手段により計測した前記撮像手段の光学的な中心から前記構造物の表面までの距離データと前記撮像手段の光学的な中心から焦点までの距離とに基づき生成したクラックスケールを前記撮像手段により撮影した前記構造物の表面の損傷部分の画像上に重ね合わせることにより前記構造物の表面の損傷部分の実際の寸法を計測する制御手段と、
を備えていることを特徴とする構造物検査装置。
【請求項2】
前記撮像手段の光学的な中心と前記距離計側手段の発光点とは、前記構造物の表面からの距離が同一となるように同軸上に設けられている請求項1に記載の構造物検査装置。
【請求項3】
前記距離計測手段の光軸を前記撮像手段のレンズの光学的な中心に一致させるための光学部品を備えている請求項1又は2に記載の構造物検査装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−53001(P2009−53001A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219325(P2007−219325)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(507288039)
【出願人】(507288040)
【Fターム(参考)】