説明

様々な浸透パラメーターでの化学気相浸透方法

【課題】その欠点を矯正し、多孔性の基材が、制御された微細構造の物質で高密度化されることを可能とする化学気相浸透方法の提供。
【解決手段】浸透条件を、化学蒸着浸透プロセスの開始および終わりにおいて、少なくとも1つの浸透パラメーター、すなわち、ガス相の滞留時間、圧力、温度、ガス相の前駆体含有量、およびガス相の任意のドーパントの濃度を変化させることによって修飾し、変化させ、それにより、浸透条件を、基材内に沈積した物質の微細構造を制御するための基材の孔サイズの変化に適合させることができ、特に一定の微細構造を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の蒸気を多孔性の基材に化学的に浸透させる方法に関する。
【0002】
本発明の適用分野は、マトリックスにより高密度化される繊維状の強化基材または「プリフォーム」からなる複合材料部品、とりわけ炭素-炭素複合材料からなる部品(炭素繊維プリフォームおよび炭素マトリックス)またはセラミックマトリックス複合体(CMC)からなる部品にある。
【背景技術】
【0003】
CMCおよび炭素−炭素複合材料は、それらの温度構造的特質、すなわち、それらの非常に良好な機械的特質が、ひどく圧力を加えられ、これらの機械的特質を、比較的高い温度においてさえも維持する能力を有する構造要素を形成することを可能とする様々な分野で使用される。これは、宇宙の分野において、とりわけ小型ロケットエンジンのノズルの熱保護を提供するパネルにおいて、航空機産業の分野において、例えば、ジェット航空機の部品のために、そして、摩擦の分野において、とりわけ航空機のブレーキディスクのため適用される。
【0004】
物質の蒸気を多孔性の基材に化学的に浸透させることは、基剤を密閉容器に入れ、ガスを、基材の到達できる内部の孔中に拡散させ、このガスはガス状態の物質の少なくとも1つの前駆体を含み、同時に、特に、基材の体積全体に前駆体から蒸着物が生じるように密閉容器内の温度と圧力とを制御することよりなる。炭素用の前駆体は、アルカン、アルキル、またはアルケンであり得、分解による炭素の熱分解を引き起こす。セラミック物質の蒸気の化学的浸透では、1種以上のガスの種を含むガスを、分解または相互の化学反応によって拡散させて所望のセラミックス材料を得る。かくして、例えば、炭化ケイ素(SiC)の化学気相浸透は、メチルトリクロロシラン(MTS)を含む気体によって、水素ガス(H2)の存在下で得られる。炭化物、窒化物、または酸化物のごとき他のセラミック用の前駆体であるガスの種は当業者によく知られている。
【0005】
いくつかの気相浸透方法が存在し、特に等温である等圧方法および温度勾配を有する等圧方法がある。
【0006】
等温等圧方法において、高密度化すべき基材はそれらの体積全体を通じて均一な温度で、均一な圧力で常に維持される。その欠点は、実際には、均一な高密度化を得ることが不可能であることにある。このマトリックス物質は、基材の外側の表面に近接する孔に優先的に蒸着する。表面孔が徐々に詰まってくると、ガスが、物質の内側に到達することをより困難にし、物質の表面および芯部間で高密度化の勾配が生じる。表面の孔を開けるための高密度化過程の間に一度またはそれ以上の回数基材の表面に脱スケールまたは機械で処理することはもちろん可能である。しかしながら、それは、高密度化の装置から基材を取り出し、それを冷却し、それを脱スケールし、基材を装置に戻し、次いで望む温度に戻すために必要とされる間、プロセスが中断される必要がある。
【0007】
温度勾配タイプの方法については、等温方法の上述の欠点は、かなり限られる。温度の差が、より熱い内部部分および、気体に暴露される基材のより冷たい表面の間に確立される。ガスの分解または反応閾より下になるように基材表面の温度を制御することによって、少なくとも高密度化プロセスの最初の部分の間、過程が続くに従い、基剤の内部から、表面に向けての高密度化のフロントの進行を確実とし得る。通常の方法において、温度勾配は、基材の内部表面をサセプターと接触させ、インダクターに結合したサセプターの周囲に1以上の基材を据え付けることにより得られる。高密度化すべき基材との直接的誘導結合により温度勾配を得ることも可能である。それらの技術は、FR−A−2711647およびUS−A−5348774明細書に記載されている。後者の明細書において、基材は、高密度化フロントが進むに従い、サセプターと結合させるか、または、基材との直接的結合によって加熱する。高密度化過程の進行をモニターするために、基材の重量の変化を連続的に測定するための手段が設けられる。測定された重量の変動の関数として、プロセスは、特にその所要時間に関し、高密度化パラメーターに対し作用することにより、特にインダクターに供給される電力において最適化できる。基材重量の変動のセンタリングは、高密度化プロセスの終わりを定義することも可能とする。温度勾配方法は、実際、等温プロセスについてよりもより均一な高密度化を得ることを可能とするが、特定形状、特に、環状である基材についてのみ実施できる。
【0008】
どのような高密度化方法が用いられても、基材の内部に蒸着する物質の微細構造は、化学気相浸透が起こる条件に依存する。例えば、熱分解炭素については、これらの浸透条件を修飾することにより、特に、平滑なラミナータイプ、暗色ラミナータイプ、粗いラミナータイプ、またはアイソトロフィックタイプの熱分解炭素を得ることが可能である。熱分解炭素の微細構造は、高密度化された基材の特性に関して重要な特徴である。かくして、炭素−炭素複合体から作成した部品のためには、粗いラミナータイプの微細構造を有することが、特に熱処理により黒鉛化されるその能力のためにしばしば望ましい。基材内に蒸着する物質の微細構造を制御することが、セラミックタイプ物質にとってはまた重要である。
【0009】
等温高密度化方法において、望む微細構造を有する蒸着を与えるように浸透パラメーターを最初に固定したにもかかわらず、微細構造は高密度化プロセスの間に変化し得ることが観察されている。均一な微細構造を保持することの困難さは、特に、5cm以上の厚さである繊維プリフォームのごとき厚い基材を高密度化する時に観察される。
【0010】
基材と接触するサセプターと誘導対合させるか、基材と直接誘導対合させるかにかかわらず、同じ困難が温度勾配高密度化方法に存する。
【特許文献1】FR−A−2711647
【特許文献2】US−A−5348774
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、その欠点を矯正し、多孔性の基材が、制御された微細構造の物質で高密度化されることを可能とする化学気相浸透方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、化学気相浸透プロセスの開始および終結の間に、以下の浸透条件:密閉容器中のガスの滞留時間;圧力;温度;ガス中の前駆体の濃度;およびガス中の何らかの可能なドーパントの濃度のうち少なくとも1つが変化することによって浸透条件は修飾され;それによって、基材内に蒸着した物質の微細構造を制御するために、浸透条件を基材の多孔度の変化に適合させるという事実によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書中で用いられる「前駆体」なる用語は、選択された操作条件下で、望む物質が基材内に蒸着させる、気体の一つのまたは複数の成分を意味する。
【0014】
既に述べたように、熱分解炭素を蒸着させる際には、前駆体は具体的にはアルカン、アルキル、およびアルケンである。本明細書中で用いる「ドーパント」なる用語は、選択された操作条件で、炭素の、前駆体からの蒸着を活性化するように働くガスの一つのまたは複数の成分を示すために用いる。ドーパントは前駆体も構成してよい。かくして、例えば、メタンおよびプロパン(両方とも前駆体である)の混合物からなるガス中、プロパンは、温度が約1000℃であり、圧力が約1.3kPaである場合にドーパントとして働く。他のドーパントは、必ずしも前駆体でないが、プロパンの代わりに、あるいはプロパンと一緒に、用いることができ、上述の浸透状態下で活性がより少ないガスに対して活性化剤として作用する(例えば、メタンの反応性を増加させる)。より高い温度および圧力において、例えば、1100℃の温度で、約6.5kPa(50Torr)の圧力において、メタンは、ドーパントの存在を必要としない前駆体として作用する。
【0015】
本明細書中、「多孔度(ポロメトリー)」なる用語は、基材の孔のサイズを特徴付け、より具体的には孔の形状を特徴付けるものを示すために用いられる。例えば、非常に多孔性である基材であって、しかし孔がほとんど通じていないものは、非常には多孔性でないが、孔がすっかり通じている基材と、高密度化においては実質的に同じ問題を起こし、この場合ポロメトリーは類似であると考えられることが当業者にはすぐ明らかであろう。
【0016】
化学気相浸透過程を、基材のポロメトリーとは独立して、過程の一方の端から他方の端まであらかじめ定義された浸透パラメーターで実行することは、当該分野で通常行われることである。これは、特に、等温等圧方法において当てはまる。浸透パラメーターは、一般的に、望む最終的比重を得るように選択され、これにより、用件が満たされると、ポロメトリーが、基材の芯部に拡散するために不都合な場合でさえも、プロセスの終わりにおいてできるだけ高密度化が続くのを可能とする。これは選択につながる。
【0017】
温度勾配タイプの方法において、実際、高密度化すべき基材の内部ゾーンと暴出表面との間には、温度差が存在し、高密度化フロントは内部から表面に移動する。それにもかかわらず、等温方法と同様にして、高密度化ゾーン中の温度は制御され、最適高密度化のために決定された最適値において実質的に一定に維持されている。
【0018】
出願人は、結果として、驚くべきことに、浸透過程を通じて高前駆体濃度で、すなわち、通常用いられるよりも非常に大きい濃度で化学気相浸透が行われると、一定の微細構造を有する蒸着の形成につながることを観察した。しかしながら、特に、等温方法では、予期せぬことに、高密度化の急勾配が現れ、芯部における基材の高密度化は、表面の近辺におけるよりもはるかに少ない。
【0019】
あいにくと、高密度化された基材に期待された特性を達成するだけでなく、芯部および基材の表面の間の高密度化の不均一を最小にする目的のためにも蒸着の微細構造を制御する必要がある。
【0020】
基材のポロメトリーの変化の関数として高密度化プロセスを通じて浸透パラメーターを前進的に適用することは、これらの要求を満足する。また、固定されたパラメーターを用いる公知の方法と比較して、このような進歩的な適用は、高密度化の全継続の顕著な節約という結果となる。
【0021】
マイクロテクスチャーを一定に保持することを望む場合には、浸透条件を、少なくとも前駆体の濃度および/またはドーパントの濃度を、浸透プロセスの最初の値から、浸透プロセスの終わりでの、最初より低い、第二の値へ変化させることにより修飾することが有利である。
【0022】
主たる前駆体および/またはドーパントの濃度は、プロセスを通じて可能な限り高くなるよう選択される。かくして、例えば、メタンまたは天然ガスおよびプロパンからなる混合物からなるガスからの化学気相浸透による、熱分解炭素による等温高密度化においては、プロパンの濃度(ここにプロパンは主たる前駆体である[そして、ドーパントは、好ましくは20%よりは少なくない値(これはプロセスの開始において用いられるのに最も高い値)からある値まで変化し得る]であるときに、ドーパントである)は、プロセスの開始において用いられるのに最も高い値である好ましくは20%より少なくない値から、プロセスの終わりに用いられる最も低い値である6%ないし20%の値まで変化し得る。この場合、濃度は、ガス中の容積パーセントにより測定される。プロセスの開始におけるプロパンの最高容積濃度のために35%よりも高い値を選択することにおいて利点はない、なぜなら、蒸着の速度は非常にほとんど増加しないからである。
【0023】
他のパラメーターは、前駆体濃度が一定か否かにかかわらず、一定のマイクロテクスチャーを保持するように修飾できる。これは温度および圧力にも適用される。かくして、メタンまたは天然ガス、およびプロパンの混合物からなるガスでの等温高密度化の状況においてはなお、そして粗いラミナータイプの微細構造を得る目的のためには、高密度化温度は、最初の値(例えば、1020℃と等しいかまたはそれより低い)から第二の値(最初の値より低く、例えば、950℃ないし1020℃の範囲にある)まで低下させることができ、該第二の値は、蒸着の速度があまり遅くないように選択され、蒸着温度の閾値がこの例においては約860℃である。 なお、同じ例において、圧力は、例えば約2.5kPaと等しい最初の値から、最初の値より低く、例えば、約0.5kPaないし約2kPaの範囲まで低下させることができ、例えば約3kPaである第三の値にまで再び昇温し得る。
【0024】
ガスの滞留時間を修飾することもまた可能である。ガスを、基材を入れる密閉容器に導入する場合、および、残存するガスを、連続的に該密閉容器から排気する場合、滞留時間は、ガスが密閉容器の入口からその出口まで流れる平均時間、すなわち、装置の熱い部分で費やされる時間を採用する;滞留時間は従ってガスの流速およびそれが密閉容器の内部で占めることができる体積(これは基材の温度、圧力、体積の関数である)に依存する。浸透がパルス方法、すなわち、連続的なサイクルで行われる場合には(各サイクルは所定量のガスを密閉容器に入れ、残存するガスを、密閉容器を真空に連結することにより排気することよりなり、滞留時間は、取り込みの開始から排気の開始までの間に経過する時間である。好ましくは、もしガスの滞留時間が浸透プロセスの間に変化すれば、変動は、方向の増加にある。
【0025】
浸透パラメーターは、浸透プロセスを通じて、またはその一部分で、連続的にまたは不連続的に変化させることができる。
【0026】
浸透プロセスは、通常の方法において、既に述べたように、ガスの基材内の孔への接近を十分再開するために、表面を、表面蒸着を除去するように組み立てることからなる脱スケール操作を行うことにより、お互いに分けた複数の連続プロセスに小分けすることができる。そのような状況下では、浸透パラメーターは、パラメーター値の組を、新しい高密度化段階に規定することにより不連続的に修飾することができる。パラメーター修飾を、それぞれの新しい段階に適用する必要はない。
【0027】
本発明は、等圧および等温タイプの方法および温度勾配タイプの方法のごとき様々なタイプの化学気相浸透方法を用いることにより実施できることもまた理解されるであろう。
【0028】
蒸着の微細構造を制御することは、通常望む目的であるであろう微細構造を、蒸着したマトリックス全体で均一に維持することだけでなく、微細構造が、高密度化プロセスの間、予定の方法で変化させることからもなり得ることもまた理解されるであろう。
【0029】
かくして、例えば、プロパンおよびメタンまたは天然ガスの混合物からなるガスから得られた熱分解炭素による温度勾配タイプの高密度化の場合を考慮すると、様々な熱分解炭素微細構造が、浸透パラメーターを変化させることにより順次蒸着し得る。この例において、以下の表に、粗いラミナータイプ、暗色のラミナータイプ、および平滑ラミナータイプの熱分解炭素を得るために適した浸透パラメーターの値の範囲が記載される。
【0030】
熱分解炭素の プロパン濃度 圧力 温度 保持時間
タイプ (kPa) (℃) (s)
粗いラミナー >6% >0.5 >850 0.1
3.3 1050 <10
暗色ラミナー >6% >3.3 >800 0.1
<100 1050 <500
平滑なラミナー >6% >0.5 >1050 >0.1
<3.3 <1250 <10
【0031】
平滑ラミナータイプの熱分解炭素のための上記表に与えられる蒸着条件は、等温高密度化にも適用できる。沈殿全体に一定の平滑ラミナー微細構造を保持することは、1以上のパラメーターか、高密度化プロセスの間に与えられる範囲で変化することを必要とできる。
【0032】
本発明の方法を実施する実施例は、非限定例として与えられる。
【実施例】
【0033】
実施例1
繊維状のプリフォームから構成される多孔性基材を、炭素繊維から以下のように作成した。250mm×250mmある予め酸化されたポリアクリロニトリル(PAN)繊維クロスのパイルを、切断し、積み重ね、お互いニードリングにより結合させた。ニードリングは、プリフォームを作成する時に、各層を、基礎となる構造にニードル処理して行い、ニードリングの密度は、特にFR−A−2584106明細書に記載されているように、プリフォーム全体で実質的に均一に維持した。
【0034】
このようにして得られたプリフォームを熱処理に付して、予め酸化されたPANを炭素に転化し、次いで、浸透オーブンの反応チャンバーに入れることにより、化学気相浸透により高密度化した。等温タイプの浸透プロセスは、4つの段階で行った。各段階の終わりおよび以下の段階の開始において、プリフォームをオーブンから取り出し、その内部の孔への接近を十分再開し、継続する高密度化を促進するために、プリフォームの表面に蓄積した熱分解炭素を除去することよりなる脱スケール操作に付した。
【0035】
反応チャンバーに入れたガスは、プロパンおよび天然ガスの混合物(メタンで必須である)によりなり、チャンバーの入口から出口まで連続的に流した。ガスの滞留時間は、約1秒(s)であり、チャンバー中の圧力は、約1.3kPa(10Torr)に維持した。浸透プロセスの各段階の間に、温度を一定に保ち、それは約980℃に等しかった。
【0036】
浸透条件は、ガス中のプロパン濃度(炭素およびドーパントの主たる前駆体)
を構成するパラメーターを修飾することによって、単独で修飾した。
【0037】
浸透プロセスの段階IないしIVの4つのそれぞれにつき、以下の表は、段階の所要時間および天然ガスおよびプロパンの混合物中の体積パーセントとしてのプロパン濃度を与える。
【0038】
段階I 段階II 段階III 段階IV 合計
所要時間(時間) 260 260 400 400 1320
プロパン濃度(%) 20 20 10 6
【0039】
プロパン濃度は、工程において、段階Iの20%から段階IVの6%まで修飾された。
浸透プロセスの終わりにおいて、プリフォームの相対質量、すなわち、その最初の質量を越えた質量の増加の割合は220%であった。高密度化されたプリフォームを通って作られたセクションの試験により、粗いラミナータイプの実質的に均一な微細構造およびプリフォームの芯部への拡大が明らかとなった。
【0040】
実施例2
プリフォームは実施例1と同じものを用いた。熱分解炭素浸透は、脱スケーリングによって分けられる4つの段階において同様に行い、天然ガスおよびプロパンの混合物によって構成されるガスを用いた。ガスの滞留時間は、約1秒であり、圧力は約1.3kPaであった。
【0041】
この場合において、浸透条件の修飾は、2つのパラメーター:温度およびプロパン濃度に関するものであり、それは連続的に行った。浸透プロセスの段階IからIVの各々について、以下の表には、所要時間、段階の開始における温度、段階の終わりにおける温度、段階の開始におけるプロパン濃度、段階の終わりにおけるプロパン濃度を与える。温度は、段階IおよびIIの間のみ連続して修飾されたが、プロパン濃度は、段階IIIおよびIVの間のみ連続して修飾したことが理解されるであろう。温度は、その最も高い値(1050℃)からその最も低い値(980℃)にまで実質的に直線的に変化させた。プロパン濃度も同様にその最も高い値(体積パーセントにおいて20%)からその最も低い値(10%)にまで直線的に変化させた。該プロセスは等温タイプのものであって、温度がプリフォーム全体で常に均一であったことが理解されるであろう。
【0042】
浸透プロセスの終りにおいて、相対重量獲得は約220%であった。プリフォームの芯部への高密度化は、実施例1で観察されたものと実質的に同じ特性を有する、しかしながら、高密度化プロセスの全所要時間はかなり減少した。
【0043】
段階I 段階II 段階III 段階IV 合計
所要時間(時間) 80 160 350 400 990
開始温度(℃) 1050 1016 980 980
終結温度(℃) 1016 980 980 980
開始時プロパン
濃度(%) 20 20 20 15
終結時プロパン
濃度(%) 20 20 15 10
【0044】
実施例3(比較例)
実施例1と同一のプリフォームを用いた。熱分解炭素高密度化は、それぞれ以下の所要時間の4つの段階において実施した:500時間、500時間、400時間、および400時間であり、脱スケーリングにより分離した。浸透条件は、全浸透プロセスを通じて変化せずに維持した、すなわち、ガスは、天然ガスおよびプロパンの混合物によって構築され、プロパンの容積濃度は6%であり、該ガスは約1.8秒の滞留時間を有し、圧力は1.5kPaであり、温度は980℃であった。
【0045】
これらのパラメーターおよび浸透段階の所要時間は、通常の化学気相浸透プロセス、すなわち、一定のパラメーターを用いたプロセスを実施するために出願人によって決定された最適値であり、実施例1および2で得られたのと類似の高密度化を生じる。相対質量獲得は同一(220%)であったが、熱分解炭素の微細構造は全く均一ではなかった。
【0046】
本発明は、工業的に言えば、高密度化の程度の点で先行技術の結果と同一であるが、浸透を通じて均一である微細構造を保持するという結果を維持しつつ、高密度化の全所要時間を1.36(実施例1)および1.82(実施例2)分の1に減らすかなりの利益を提供することが分かる。
【0047】
実施例4
繊維プリフォームは、250mmの直径、および30mmの厚さを有する円盤であり、実施例1に記載したクロスのパイルを積み重ね、ニードリングすることによって作成した。
【0048】
プリフォームは、天然ガスおよびプロパンの混合物からなるガスで、1015℃の温度、および1.5kPaの圧力における化学気相浸透によって熱分解炭素で高密度化した。
浸透プロセスは、介在させた脱スケーリング操作により隔てた2つの段階IおよびIIによって行った。2つの段階の各々につき、プロパンの容積濃度、およびガスの滞留時間を以下の表は与える。
【0049】
段階I 段階II 合計
所要時間(時間) 350 500 850
プロパン濃度(容積%) 20 6
滞留時間(秒) 1 1.8
【0050】
浸透プロセスの終わりにおいて、相対質量獲得は約250%であり、高密度化は実質的に均一であり、粗いラミナータイプの熱分解炭素の微細構造は均一であった。
【0051】
実施例5
実施例4と同一のプリフォームを用いた。熱分解炭素による浸透は、脱スケーリングで隔てた2つの段階で実施し、1.5kPaの前駆体にて天然ガスおよびプロパンの混合物から構成されるガスを用いた。2つの段階の各々につき、段階の所要時間、プロパンの容積濃度(各段階の間一定)、開始時および終結時の温度の値(連続的変化)、ならびに開始時および終結時の滞留時間(連続的変化)を以下の表に示す。
【0052】
段階I 段階II 合計
所要時間(時間) 200 300 500
プロパン濃度 20 6
(容積%)
開始温度(℃) 1050 1030
終結温度(℃) 1030 1015
開始時滞留時間(秒) 1 1.2
終結時滞留時間(秒) 1.2 1.8
【0053】
全体の質量獲得は250%であり、熱分解炭素マトリックスは、実施例4のそれと同じ特性を有していた。
【0054】
実施例6(比較)
実施例4と同一のプリフォームを用いた。浸透は、脱スケーリングによって隔てた2段階にて実施し、天然ガスおよびプロパンの混合物から構成されるガスを用いた。浸透条件は、浸透プロセスを通じて維持した、すなわち、ガス中のプロパンの容積濃度は6%であり、温度は1015℃であり、滞留時間は1.8秒であり、圧力は1.5kPaであった。
各段階の所要時間は500時間であり、実施例4および5におけるように250%の質量獲得にての高密度化を生じた。
【0055】
実施例4および5は、蒸着した熱分解炭素につき均一な微細構造を供しつつ、本発明は、高密度化の全所要時間を非常に顕著に減少させることを可能とすることを示す(実施例6のそれと比較して1.18および2で除した所要時間)。
【0056】
実施例7
実質的に炭化ケイ素(SiC)繊維からなる繊維プリフォームによって構成される多孔性基材は、商品名「Nicalon」の下ニホンカーボンによって市販されている繊維によって構成されている糸を有する平織布のパイルを積み重ねることによって作成した。布パイルを積み重ね、ツーリングにて圧縮して、その体積の35%が繊維によって占められ、その厚さが5mmであるプリフォームを得た。
【0057】
プリフォームは、浸透オーブンの反応チャンバー中の化学気相浸透によって得た炭化ケイ素で高密度化した。等温タイプの浸透プロセスを、3つの段階IないしIIIで行った。最初の段階の終わりに、プリフォームをオーブンから取り出して、ツーリングを取り除いた。なぜなら、SiC蒸着は、次いで、プリフォームが高密度化される、すなわち、プリフォームがその形を保持するのを確実とするよう十分結合したからである。高密度化段階の間に脱スケーリングは行わなかった。
【0058】
チャンバーに入れたガスは、SiCの前駆体であるメチルトリクロロシラン(MTS)ガスおよび水素ガス(H2)の混合物よりなるものであった。チャンバー中のガスの滞留時間は、約10秒に等しく、チャンバーの圧力は約13kPa(100Torr)の値に維持した。
【0059】
浸透条件は、温度を修飾することによってのみ修飾した。段階IないしIIIの各々について、以下の表は段階の所要時間、各段階を通じて一定に維持されるその温度および各段階の終わりにおけるプリフォームの比重を与える。
【0060】
段階I 段階II 段階III 合計
所要時間(時間) 70 70 70 210
温度(℃) 1050 1030 1010
比重 1.9 2.3 2.5
【0061】
実施例8(比較)
実施例7のそれと同一であるプリフォームを用いた。SiC浸透は、2つの工程IおよびIIにおいて実施し、それは、プリフォームをツーリングから取り出す間の最初の段階および、高密度化の程度が実質的に実施例7で到達したのと同一に達するまで継続した第2段階よりなるものであった。
【0062】
使用したガスおよび浸透条件は、当該プロセスを通じて温度を一定に維持した以外は、以下の表に示されるように、実施例7のそれと同一であった。該表は、また、段階IおよびIIの所要時間、全体の所要時間および得られた密度を与える。高密度化の同じ最終程度(比重2.5)を達成するために、プロセスの全所要時間は、実施例7のそれよりも実質的に長く、温度変動(この場合25%)を変化させることによって全所要時間の減少を達成した。
【0063】
フェーズI フェーズII 合計
所要時間(時間) 70 210 280
温度(℃) 1010 1010
比重 1.5 2.5
【0064】
実施例9
相互にスペーサーによりわずかに離して配置しつつ、実施例4で用いられた種類の繊維プリフォームを、共通の軸上で積み重ねた。プリフォームを黒鉛の円柱状ブロックから構成されるサセプターの回りの浸透オーブンの反応チャンバー中に積み重ね、それらの内部表面をブロックと接触させた。温度勾配が、プリフォームの内部表面およびオーブンに導入されたガスに暴露される外側表面の間に確立されるように、チャンバーの外側に位置するインダクターを用いる誘導的カップングによってサセプターを加熱した。プリフォームを、天然ガスおよびプロパンの混合物を用いることによって熱分解炭素で高密度化した。プリフォームの表面温度を測定し、WO−A−95/11868明細書に記載されるごとく、インダクターを通じて電流を制御することによって、望む値に制御した。
熱分解炭素浸透条件は、以下のごとく高密度化過程の間に修飾した。
【0065】
開始 終了
表面温度(制御された) 550℃ 980℃
プロパン濃度 20% 20%
圧力 2.5kPa 2.5kPa
【0066】
粗いラミナータイプの熱分解炭素高密度化が、作成された部品中、全ての点において得られた。
【0067】
実施例10
方法は実施例9のそれと同じであったが、熱分解炭素浸透条件は、以下の通りに修飾した。
【0068】
開始 中途 終了
表面温度(制御された) 550℃ 700℃ 950℃
プロパン濃度 20% 20% 15%
圧力 2.5kPa 2.5kPa 80kPa
【0069】
マトリックス中の熱分解炭素の微細構造は、高密度化フロントがプリフォームの芯部から、その外の表面へ進行するにつれ変化した。得られた部品の芯部において、熱分解炭素マトリックスは、純粋な粗いラミナータイプであって、それは、繊維と接触しつつ、外に向けて純粋な暗色のラミナータイプへと徐々に変化し、暗色のラミナーと粗いラミナーの混合物を経過するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体状態で一定微細構造の熱分解炭素の少なくとも1つの前駆体を含有するガスにより、該熱分解炭素を多孔性基材中に化学気相浸透させる方法であって、
該方法は等温タイプのものであり、かつ該基材を密閉容器に入れ、該ガスを密閉容器内に導入する工程を含み、該方法は:化学気相浸透プロセスの開始において、密閉容器への導入と密閉容器からの排気との間のガス滞留時間、密閉容器内の圧力、基材の温度、ガス中の前駆体の濃度、およびガス中のいずれかのドーパントの濃度の最初の値を設定し;化学気相浸透プロセスの間において、密閉容器への導入と密閉容器からの排気との間のガス滞留時間、密閉容器内の圧力、基材の温度、ガス中の前駆体の濃度、およびガス中のいずれかのドーパントの濃度の少なくとも1つの値を、浸透プロセスの開始における該最初の値から該最初の値とは異なる第二の値に変化させる工程を含み;ここに、該ガス滞留時間は、もしそれを変化させるならば、最初の値から第二の値へ増加させ、該温度は、それを変化させるならば、最初の値から第二の値へ低下させ、該前駆体濃度は、それを変化させるならば、最初の値から第二の値へ低下させ、該ドーパント濃度は、それを変化させるならば、最初の値から第二の値へ低下させ、それによって、基材内に蒸着された熱分解炭素の微細構造を不変に保つように、化学気相浸透プロセスを行う条件を、熱分解炭素が基材内に蒸着される結果として基材のポロメトリーに生じた変化に適合させることを特徴とする該方法。
【請求項2】
該圧力を、変化させるならば、浸透プロセスの開始における最初の値から、浸透プロセス間の、最初の値より低い第二の値に低下させ、次いで、浸透プロセスの終結における、第二の値より高い第三の値まで増加させることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
密閉容器への導入と密閉容器からの排気との間のガス滞留時間、密閉容器内の圧力、基材の温度、ガス中の前駆体の濃度、およびガス中のいずれかのドーパントの濃度のうちの少なくとも1つの値を連続的に変化させることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
密閉容器への導入と密閉容器からの排気との間のガス滞留時間、密閉容器内の圧力、基材の温度、ガス中の前駆体の濃度、およびガス中のいずれかのドーパントの濃度のうちの少なくとも1つの値を不連続的に変化させることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
化学気相浸透プロセスを複数の連続的な段階にて行い、密閉容器への導入と密閉容器からの排気との間のガス滞留時間、密閉容器内の圧力、基材の温度、ガス中の前駆体の濃度、およびガス中のいずれかのドーパントの濃度の少なくとも1つの値の変化が新しい段階の開始において行われることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
メタンおよびプロパンの混合物を含有するガスによる熱分解炭素の化学気相浸透のための請求項1ないし5いずれか1記載の方法であって、ガス中のプロパンの体積濃度を、20%以上の最初の値から、6%ないし20%の範囲にある第二の値に変化させることを特徴とする該方法。

【公開番号】特開2008−19511(P2008−19511A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258873(P2007−258873)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【分割の表示】特願平8−530054の分割
【原出願日】平成8年4月9日(1996.4.9)
【出願人】(592027148)ソシエテ・ナシオナル・デテユード・エ・ドウ・コンストリユクシオン・ドウ・モトール・ダヴイアシオン、“エス.エヌ.ウ.セ.エム.アー.” (4)
【Fターム(参考)】