説明

標準工期設定システム

【課題】簡単、安価な設備で、かつ、作業者に負担を強いないで作業時間を集計し、標準工期を設定できる標準工期設定システムを提供することが課題である。
【解決手段】受注製品に関する構成部品データと作業手順とを含む生産計画を記憶したデータベースと、受注製品を加工する各作業所を結ぶネットワークとが構築された生産管理システムにおいて、前記生産計画から受注製品を構成する部品の製作に必要な作業毎に、該作業実施に必要な項目を印刷すると共に前記項目データを記憶させたRFIDタグを配した作業カードを作成し、その作業カードを作業実施前カード収納部と、RFIDタグのデータを読み書きするリード/ライト装置を備えて作業中のカードを収納する作業中カード収納部と、作業終了後のカードを収容する作業後カード収納部とを有したカード収納装置に収容し、作業中カード収納部に作業カードが置かれた時間から作業時間を算出して集計し、各部品毎の標準作業時間を設定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準工期設定システムに係り、特に、特注品のように製品完成までの工期設定がベテランの勘で行われていたような各種作業の作業時間を、正確に把握して標準工期を設定できるようにした標準工期設定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産管理部門における受注生産品の生産計画は、作業手順を作成して各作業の標準時間を用い、各作業の工期を設定して受注品の納期がいつになるかを設定している。しかしながら、受注生産品の場合は今まで作ったことのないものが殆どであり、そういった場合の作業時間はベテラン作業員による作業見積によって見積もられる場合が多い。
【0003】
しかしながら、このような作業見積は実績に基づくものではないため、見積をする作業員によって作業時間が異なってくるという問題があり、生産計画を立てる上で実体のないものとなる可能性がある、また、加工手順がかなりの頻度で変わったり、それに伴って図面が変わることで加工方法も変わると、作業時間が当初の見積と異なって、生産計画に混乱が起こる場合がある。
【0004】
また、通常の生産計画は、余裕が最小となるように立案されるから、特急案件があった場合、現在、作業現場でどのような作業が行われているか把握できないと、特急案件の作業に対する作業計画を立てることができない、という問題もある。
【0005】
こういった作業時間の見積に関しては、例えば特許文献1に、現場で作業を行っている作業者(または機械)の作業を、ストップウォッチなどの時間計測用具を用いて要素作業毎に測定して集計した観測データ1と、集計された要素作業毎の集計区分当たりの(シフト当たりなど)発生頻度が要素作業発生頻度データ2として集められ、これらのデータと人員及び単位時間を要素として持つ基礎条件とから標準時間を求める演算部3とを備えた標準時間集計装置が示されている。
【0006】
また特許文献2には、パソコンに予め作業時間を集計するための操作画面、作業時間集計ファイルを作成する際に必要なデータ、個人情報等を記録し、作業員が作業開始時間を入力することで、JOB毎に作業時間が集計できるようにした作業時間集計装置が示されている。
【0007】
さらに特許文献3には、予めコンピュータに生産工程を構成する各要素作業の作業項目を作業順序に従って登録し、生産工程に携わる作業者によりスイッチ手段によって各要素作業の開始時の開始信号および終了時の終了信号をコンピュータに送信し、コンピュータにおいて各作業項目にリンクするデータとして開始信号の受信時から終了信号の受信時までの時間を各要素作業に要した作業時間として算出し、算出したデータを集計して所定の表ないしグラフを自動作成するようにした、生産工程の作業分析に資するデータ集計方法が示されている。なお、作業項目を入力させるに当たり、バーコードを用いて行うようにしたものもある。
【0008】
また、作業時間の集計に関するものではないが、特許文献4には、製品の製造工程におけるトレーサビリティの把握のため、材料購入から鍛造工程、熱処理工程、および研削工程を経て製造される仕掛品の情報を、その工程のロット番号と共にICタグ(RFIDタグ:Radio Frequency Identification)に記録し、そのICタグに記録された情報を管理のデータベースに製造番号または製造ロット番号に対応して記録しておいて、各工程の加工条件情報があとからわかるようにした機械要素商品の生産管理方法が示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−282323号公報
【特許文献2】特開2001−331830号公報
【特許文献3】特開平9−297863号公報
【特許文献4】特開2006−48374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1に示された標準時間集計装置は、作業者以外の人が時間計測用具を用いて作業時間を測定する必要があり、標準時間設定までに多大な労力と時間がかかる。また、特許文献2に示された作業時間集計装置は作業員が作業開始時間を入力する必要があり、パソコンへの入力作業が必要であると共に、切削や溶接などの現場においては作業時間を入力することが作業の中断となる上に、単に作業時間を入力するためだけに手を洗ったりせねばならぬ場合が生じたりして使いやすいシステムとは言い難い。
【0011】
さらに特許文献3に示されたデータ集計方法は、作業者はスイッチ手段によって作業の開始と終了をコンピュータに送信すればよいが、やはりコンピュータが必要であり、また、特許文献4に示された機械要素商品の生産管理方法は、後で各工程の加工条件情報を調べるためのもので、作業時間の集計方法については言及されていない。
【0012】
そのため本発明においては、簡単、安価な設備で、かつ、作業者に負担を強いないで作業時間を集計し、標準工期を設定できる標準工期設定システムを提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明にある標準工期設定システムは、
受注製品に関する構成部品データと作業手順とを含む生産計画を記憶したデータベースを有し、前記受注製品を加工する各作業所を結ぶネットワークが構築された生産管理システムにおける、前記受注製品を構成する部品毎の製作に必要な作業の標準作業時間を求め、前記受注製品毎の標準工期を設定する標準工期設定システムであって、
前記ネットワークに接続されて前記データベースに記憶された生産計画により、受注製品を構成する部品の製作に必要な作業毎に、該作業実施に必要な項目を印刷すると共に前記項目データを記憶させたRFIDタグを配した作業カードを作成する作業カード作成装置と、該作業カート作成装置が作成した作業カードを作業実施前に収納する実施前カード収納部と、前記RFIDタグのデータを読み書きするリード/ライト装置を備えて作業中の前記カードを収納する作業中カード収納部と、作業終了後の前記作業カードを収容する作業後カード収納部とを有したカード収納装置と、前記ネットワークに接続され、前記リード/ライト装置による前記作業カードのRFIDタグの読み取り結果から、前記作業中カード収納部に作業カードが置かれた時間と作業後カード収納部へ移動させた時間とを検知して作業時間を算出し、前記生産管理システムに送るコンピュータと、からなり、
前記生産管理システムにおいて前記コンピュータから送られた作業時間を集計し、各部品毎の標準作業時間を設定して前記受注製品毎の標準工期を設定することを特徴とする。
【0014】
このように受注製品を構成する部品の製作に必要な作業毎に、該作業実施に必要な項目を印刷すると共に前記項目データを記憶させたRFID(Radio Frequency Identification)タグを配した作業カードを作成し、その作業カードを作業開始に先立ち、カード収納装置の実施前カード収納部から作業中カード収納部へ移動させ、さらに作業終了時に作業後カード収納部へ移動させるという、作業員にとっては手を洗うなどの作業も不要で、何ら負担を感じること無く実施できる簡単な作業により、作業中カード収納部に備えられたリード/ライト装置のRFIDタグの読み取り結果から、作業中カード収納部に作業カードが存在した時間、すなわち作業時間を容易に算出することができる。
【0015】
従って、従来の方法のようにストップウオッチなどで作業時間を測定する、という多大な労力と時間がかかる方法を取ることなく、また、各作業所に高価なパソコンを設置して作業員が手を洗ってデータ入力を行う、というコストがかかって作業員に余計な作業を強いる方法を取ることなく、非常に簡単、安価な構成で、容易に、正確に作業時間を集計でき、それによって受注製品毎の標準工期を正確に設定することができる標準工期設定システムを提供することができる。
【0016】
そして、前記生産管理システムは、前記リード/ライト装置からのRFIDタグの読み取り結果により現在作業中の作業を把握し、前記生産計画に対する進捗状況を解析する解析システムを備えていることで、本発明では単に作業時間を集計するだけでなく、作業の進捗状況、作業者の作業状態をも同時に管理することのできる標準工期設定システムとすることができる。
【0017】
また、前記作業カード作成装置は、前記データベースに記憶された前記部品の設計変更情報データを含ませた、前記設計変更前に作成した作業カードとは異なる作業カードを作成する機能を有し、前記コンピュータは、前記リード/ライト装置によるRFIDタグの読み取り結果で設計変更前の作業カードの前記作業中カード収納部への載置を検知し、警告信号を発する機能を有していることで、本発明では、作業者が設計変更を知らずに誤ったデータで作業することを防ぐ機能を備えた標準工期設定システムとすることができる。
【0018】
さらに、前記コンピュータは、前記リード/ライト装置からのRFIDタグの読み取り結果で、前記データベースに記憶された生産計画の作業手順と異なる順の作業カードの前記作業中カード収納部への載置を検知し、警告信号を発する機能を有していることで、作業者が作業順を誤って作業しようとした場合、それを防ぐ機能を備えた標準工期設定システムとすることができる。
【0019】
そして、前記作業カードは、作業対象の装置毎、若しくはオペレータ毎に異なった色で作成されていることで、複数の同じような加工装置が並んでいる職場であっても、装置毎、作業者毎に異なった色で作業カードを作成することで、指示まちがいを起こすことなく作業指示のできる標準工期設定システムとすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のごとく本発明になる標準工期設定システムは、単に作業開始に先立ち、作業カードを実施前カード収納部から作業中カード収納部へ移動させ、さらに作業終了時に作業後カード収納部へ移動させるという、作業員にとっては手を洗うなどの作業も不要で、何ら負担を感じること無く実施できる簡単な作業をするだけで作業時間を正確に算出することができる。従って、従来の方法のようにストップウオッチなどで作業時間を測定する、という多大な労力と時間がかかる方法を取ることなく、また、各作業所に高価なパソコンを設置するという、コストがかかって作業員に余計な作業を強いる方法を取ることなく、非常に簡単、安価な構成で、容易に、正確に作業時間を集計でき、それによって受注製品毎の標準工期を正確に設定することができる標準工期設定システムを提供することができる。
【0021】
また本発明になる標準工期設定システムは、生産計画に対する進捗状況を解析する解析システムを備えていることで、作業の進捗状況、作業者の作業状態をも同時に管理することができ、さらに、設計変更があった場合に設計変更前の作業カードによる作業、生産計画の作業手順と異なる作業順による作業、などの誤った作業を防止することもできる。また、前記作業カードは作業対象の装置毎、若しくはオペレータ毎に異なった色としたから、複数の同じような加工装置が並んでいる職場であっても指示まちがいを起こすことなく作業指示のできる、標準工期設定システムとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明になる標準工期設定システムを有する生産管理システムの構成の一例のブロック図である。図中10は生産管理システムを構成するメインコンピュータで、101は受注製品に関する構成部品データと作業手順102とを含む生産計画、103はこれら生産計画101、作業手順102を記憶している生産管理システムデータベース、104は以下に説明するRFID(Radio Frequency Identification)タグデータから得られる作業時間などのデータを記憶するRFIDタグデータデータベースである。
【0024】
11は各職場に設置されるクライアントコンピュータ、111、111、……は後記する図2に示した作業カードの作成装置、112、112、……は作業管理チェックリスト作成プリンタ、12、12、……は作業時間集計用コンピュータ、13はネットワーク、14、14、……は作業カードの作成装置111、111、……で作成された、後記図2で説明する作業カード、15は作業管理チェックリスト作成プリンタ112、112、……で印刷され、測定などを実施するための作業管理チェックリスト、16、16、……、17、17、……はカード収納装置、18、18、……、19、19、……は作業カード14、14、……に配されたRFIDタグのリード(R)/ライト(W)装置、20、23は未作業作業カード収納部、21、24は作業中作業カード収納部、22、25は作業後カード収納部、26、26、……は測定対象物である。なお、カード収納装置16、17は、各職場に設置されている個々の溶接設備(設備A)、機械加工(切削:設備B)、機械加工(研削:設備C)、……のそれぞれに対応して設けられている。
【0025】
本発明においては、製品の受注が生産管理システムに伝えられると、最初にその製品をどのような工程で製作するかが検討され、作業手順書102を含む生産計画101が作成されて、それがメインコンピュータ10を介して生産管理システムデータベース103に記憶される。そして、作業手順書102を含む生産計画101が生産管理システムデータベース103に記憶されると、各職場に設置されるクライアントコンピュータ11は、作業手順書102に記載された受注製品を構成する部品の製作に必要な作業毎に、それぞれの作業実施に必要な項目を印刷すると共に、各項目データを記憶させたRFIDタグを配した作業カード14を作業カード作成装置111で、作業管理チェックリスト作成プリンタ112で作業管理チェックリスト15をそれぞれ作成する。
【0026】
その作業カード14の一例を示したのが図2である。この図2において、14は例えば名刺程度の大きさのカードに、作業手順書102に記載された受注製品を構成する部品の製作に必要な作業毎に、内容がわかるよう、オーダー番号14a、製品名14b、向け先(お客名)14c、作業手順14d、アイテム14e、図面番号14f、などを印刷する。また現在、RFIDタグは専用の熱転写プリンタで印刷できるので、上記した印刷データを記憶させたRFIDタグ14gを、図1に示したRFIDタグリード(R)/ライト(W)装置18、19で読みとれる位置に印刷する。
【0027】
また、この作業カードは、複数の同じような加工装置が並んでいる職場では、誤って指定した装置、または作業者以外に渡してしまう場合が考えられる。こういったことを防止するため、例えば装置毎、若しくはオペレータ毎に異なった色で作成すると、誤った装置、若しくはオペレータに渡されれば、それが誤りであることがすぐに判明し、指示まちがいを防止することができる。
【0028】
図3は、本発明になる標準工期設定システムに用いるRFIDタグを配した作業カードを、どのような区分で作成するかを説明するための図である。いま、例えばある受注製品を構成する部品の加工が、溶接加工161、機械加工(切削)162、機械加工(研削)163、……とそれぞれの設備における加工を必要とし、かつ、それぞれにおける加工がさらに作業1、作業2、作業3、……に別れているとすると、これら作業1、作業2、作業3、……のそれぞれについて作業カード1(14)、作業カード2(14)、作業カード3(14)、……の作業カードを作業カード作成装置111で作成する。
【0029】
そのため、溶接加工161には作業カード1(14)、作業カード2(14)、作業カード3(14)、……が、機械加工(切削)162には作業カード1(14)、作業カード2(14)、作業カード3(14)、……が、機械加工(研削)163には作業カード1(14)、作業カード2(14)、作業カード3(14)、……が、それぞれ前記作業管理チェックリスト作成プリンタ112で作成された作業管理チェックリスト15と共に渡され、各作業カードに記載した作業を実施することになる。
【0030】
なお、工期が長期に渡るような作業の場合、途中で設計変更が行われることも珍しくないが、そういった場合、本発明においてはその設計変更データを盛り込んだ作業カード14を、設計変更前のカードとは別に作成する。即ち設計変更においては、通常、図面が改訂され、それに伴って作業手順(作業管理チェックリスト15)なども変更されることが多いから、例えば図面番号に追い番を付して対応させる。
【0031】
この場合、新しい作業カードによる作業を実施するわけであるが、その情報が正しく伝わらず、設計変更前の作業カードで作業が行われてしまう可能性がある。そのため本願の標準工期設定システムにおいては、生産管理システムデータベース103に収納された設計変更に関するデータは、ネットワーク13を通してクライアントコンピュータ11にも伝えられ、作業カードに配されたRFIDタグ14gの内容をリード(R)/ライト(W)装置18、19で読み取ったとき、もし設計変更前の作業カードで作業が行われようとしている場合は、作業カードの内容が正しくないことを音声、あるいはクライアントコンピュータ11の表示画面に表示して、作業者に警告を発して注意を促す。
【0032】
これは設計変更の場合だけでなく、例えば作業カード14が14、14、……と順に作業するように指示されているにもかかわらず、順番が指示通りでなかった場合、同様に作業の順番が正しくないことを音声、あるいはクライアントコンピュータ11の表示画面に表示して、作業者に警告を発して注意を促す。
【0033】
なお、本願になる標準工期設定システムでは、こういった設計変更や作業順番の誤りだけでなく、例えばクライアントコンピュータ11に、リード/ライト装置18、19からのRFIDタグの読み取り結果により、現在作業中の作業を把握して生産計画に対する進捗状況を解析する解析システムを備えるようにすると、単に作業時間を集計するだけでなく、作業の進捗状況、作業者の作業状態をも同時に管理することが可能となる。
【0034】
また、図1に15で示した作業管理チェックリストは、購入した製品や外注で製作した製品が設計通りに製作されているかを測定して確認する場合の、手順も記載されており、この場合は加工作業と異なり、測定対象26と作業管理チェックリスト15が一緒に担当部署に送られ、作業管理チェックリスト15に記載された測定が実施される。
【0035】
図4は、本発明になる標準工期設定システムにおける作業カードの発行と回収までのフロー図である。以下、この図4のフロー図と図1のブロック図とを用い、本発明を更に詳細に説明する。
【0036】
図4のステップS10で、製品の受注が生産管理システムに伝えられて処理がスタートすると、まずステップS11で、前記したように受注製品に関する生産計画101が作成され、ステップS12で構成部品データと作業手順102とが作成される。そして、それら生産計画101、作業手順102とが前記したようにメインコンピュータ10を介して生産管理システムデータベース103に記憶されと、作業手順書102を含む生産計画101がネットワーク13を介し、各職場に設置されているクライアントコンピュータ11に伝えられる。
【0037】
そして各職場に設置されているクライアントコンピュータ11は、ステップS13で作業手順書102に記載された受注製品を構成する部品の製作に必要な作業毎に、図3で説明したように作業カード作成装置111、作業管理チェックリスト作成プリンタ112を用い、例えば溶接加工161、機械加工(切削)162、機械加工(研削)163、……とそれぞれの設備における加工に対応した、作業1、作業2、作業3、……のそれぞれについて作業実施に必要な項目を印刷すると共に、各項目データを記憶させたRFIDタグ14gを配した作業カード1(14)、作業カード2(14)、作業カード3(14)、……、及び各作業に対応した作業管理チェックリスト15を作成する。
【0038】
また、加工ではなくて例えば測定対象26の測定の場合は、作業管理チェックリスト作成プリンタ112を用いて作業管理チェックリスト15のみを印刷し、測定対象26と共に担当部署に届ける。一方、作成された作業カード14と作業管理チェックリスト15はステップS14で各作業部署に配布され、各作業部署では、ステップS15で作業長が各作業、即ち作業カード14を作業員の担当する図3で説明した、例えば溶接加工161、機械加工(切削)162、機械加工(研削)163などに分けると共に作業管理チェックリスト15を渡して作業指示を出す。
【0039】
その時設備毎に複数枚に分けられた作業カード14は、図1における例えば20で示した未作業作業カード収納部に入れられる。そして作業員がステップS16で加工作業を開始するとき、作業に対応した作業カード、例えば作業カード1(14)を作業中作業カード収納部21、24に移動させる。
【0040】
すると作業中作業カード収納部21、24に設けられたRFIDタグリード(R)/ライト(W)装置18、19が、この作業カード14のRFIDタグ14gに記憶されている前記図2で説明したような、オーダー番号14a、製品名14b、向け先(お客名)14c、作業手順14d、アイテム14e、図面番号14f、などのデータを読み取り、作業時間集計用コンピュータ12に送る。
【0041】
このとき作業時間集計用コンピュータ12は、まず、ステップS18でRFIDタグリード(R)/ライト(W)装置18、19が読み取った作業カードの内容を生産管理システムの生産管理システムデータベース103と照合し、前記したように作業の順番は正しいか、また次のステップS19では設計変更が反映された作業カードかどうかをチェックし、それぞれ順番間違えや設計変更が反映される前の作業カードの場合は前記したように、音声や作業時間集計用コンピュータ12の表示画面に間違いであることを表示し、正しい作業カードによる作業を実施するように促す。
【0042】
そのため、作業の順番が間違っている場合、また設計変更が反映されていない作業カード14の場合は、ステップS20に進んでカード間違いであることを警告し、ステップS21で正しい作業カードをセットさせる。そしてステップS18に戻り、以上の作業をくり返す。なお、ステップS18、ステップS19のどちらも正しい作業カードの場合はステップS22に進んで加工作業を開始する。
【0043】
このとき作業時間集計用コンピュータ12は、作業カード14が、作業中作業カード収納部21、24にセットされたときに作業カード14のRFIDタグ14gに記憶されているデータを読み、前記したように正しいカードかどうかのチェックを実施すると共に、正しいカードの場合は作業中作業カード収納部21、24に作業カード14がセットされた時間を参照して記憶する。
【0044】
そして作業カードで支持された作業が完了すると、作業員はステップS23で作業カード14を作業後カード収納部22、25へ移し、それによって作業時間集計用コンピュータ12は、その作業カード14が作業後カード収納部22、25へ移された時間を参照し、先に記憶した作業中作業カード収納部21、24に作業カード14がセットされた時間との差を求めて、作業カード14に記載された作業に要した時間を算出してデータをメインコンピュータ10に送る。そのためメインコンピュータ10は、作業カード14の作業に要した時間をRFIDタグに記憶されているデータと共にデータベース104に記憶する。
【0045】
このようにして全ての作業カード14の作業が終了すると、ステップS24で作業カード14は回収され、印刷されていた事項が消去されると共に、RFIDタグも削除されて次の作業の指示のために用いられる。
【0046】
一方、データベース104に記憶された各作業カード14の作業時間は、一定の期間毎に対応する作業の作業時間が集計され、例えばヒストグラムが作成されて統計処理がなされ、該当作業の標準時間が算出されて見直しが行われる。
【0047】
このように本発明になる標準工期設定システムは、単に作業開始に先立ち、作業カードを実施前カード収納部から作業中カード収納部へ移動させ、さらに作業終了時に作業後カード収納部へ移動させるという、作業員にとっては手を洗うなどの作業も不要で、何ら負担を感じること無く実施できる簡単な作業をするだけで作業時間を正確に算出することができる。従って、従来の方法のようにストップウオッチなどで作業時間を測定する、という多大な労力と時間がかかる方法を取ることなく、また、各作業所に高価なパソコンを設置するという、コストがかかって作業員に余計な作業を強いる方法を取ることなく、非常に簡単、安価な構成で、容易に、正確に作業時間を集計でき、それによって受注製品毎の標準工期を正確に設定することができる標準工期設定システムを提供することができる。
【0048】
また本発明になる標準工期設定システムは、生産計画に対する進捗状況を解析する解析システムを備えていることで、作業の進捗状況、作業者の作業状態をも同時に管理することができ、さらに、設計変更があった場合に設計変更前の作業カードによる作業、生産計画の作業手順と異なる作業順による作業、などの誤った作業を防止することもできる。また、前記作業カードは作業対象の装置毎、若しくはオペレータ毎に異なった色としたから、複数の同じような加工装置が並んでいる職場であっても指示まちがいを起こすことなく作業指示のできる、標準工期設定システムとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、従来は非常に手間と時間を要した標準作業時間を、作業員負担を強いることなく、コスト的にも安価に算出でき、正確な生産計画を立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明になる標準工期設定システムを有する生産管理システムの構成の一例のブロック図である。
【図2】本発明になる標準工期設定システムに用いる、RFIDタグを配した作業カードの一例である。
【図3】本発明になる標準工期設定システムに用いるRFIDタグを配した作業カードを、どのような区分で発行するかを説明するための図である。
【図4】本発明になる標準工期設定システムにおける作業カードの発行と改修までのフロー図である。
【符号の説明】
【0051】
10 メインコンピュータ
101 生産計画
102 作業手順
103 生産管理システムデータベース
104 RFIDタグデータデータベース
11 クライアントコンピュータ
111 作業カード作成装置
112 作業管理チェックリスト作成プリンタ
12 作業時間集計用コンピュータ
13 ネットワーク
14 作業カード
15 作業管理チェックリスト
16、17 カード収納装置
18、19 RFIDタグリード(R)/ライト(W)装置
20、23 未作業作業カード収納部
21、24 作業中作業カード収納部
22、25 作業後カード収納部
26 測定対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受注製品に関する構成部品データと作業手順とを含む生産計画を記憶したデータベースを有し、前記受注製品を加工する各作業所を結ぶネットワークが構築された生産管理システムにおける、前記受注製品を構成する部品毎の製作に必要な作業の標準作業時間を求め、前記受注製品毎の標準工期を設定する標準工期設定システムであって、
前記ネットワークに接続されて前記データベースに記憶された生産計画により、受注製品を構成する部品の製作に必要な作業毎に、該作業実施に必要な項目を印刷すると共に前記項目データを記憶させたRFIDタグを配した作業カードを作成する作業カード作成装置と、
該作業カード作成装置が作成した作業カードを作業実施前に収納する実施前カード収納部と、前記RFIDタグのデータを読み書きするリード/ライト装置を備えて作業中の前記カードを収納する作業中カード収納部と、作業終了後の前記作業カードを収容する作業後カード収納部とを有したカード収納装置と、
前記ネットワークに接続され、前記リード/ライト装置による前記作業カードのRFIDタグの読み取り結果から、前記作業中カード収納部に作業カードが置かれた時間と作業後カード収納部へ移動させた時間とを検知して作業時間を算出し、前記生産管理システムに送るコンピュータと、からなり、
前記生産管理システムにおいて前記コンピュータから送られた作業時間を集計し、各部品毎の標準作業時間を設定して前記受注製品毎の標準工期を設定することを特徴とする標準工期設定システム。
【請求項2】
前記生産管理システムは、前記リード/ライト装置からのRFIDタグの読み取り結果により現在作業中の作業を把握し、前記生産計画に対する進捗状況を解析する解析システムを備えていることを特徴とする請求項1に記載した標準工期設定システム。
【請求項3】
前記作業カード作成装置は、前記データベースに記憶された前記部品の設計変更情報データを含ませた、前記設計変更前に作成した作業カードとは異なる作業カードを作成する機能を有し、
前記コンピュータは、前記リード/ライト装置によるRFIDタグの読み取り結果で設計変更前の作業カードの前記作業中カード収納部への載置を検知し、警告信号を発する機能を有していることを特徴とする請求項1または2に記載した標準工期設定システム。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記リード/ライト装置からのRFIDタグの読み取り結果により、前記データベースに記憶された生産計画の作業手順と異なる順の作業カードの前記作業中カード収納部への載置を検知し、警告信号を発する機能を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載した標準工期設定システム。
【請求項5】
前記作業カードは、作業対象の装置毎、若しくはオペレータ毎に異なった色で作成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載した標準工期設定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−265878(P2009−265878A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113809(P2008−113809)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】