説明

標的化された二本鎖RNA媒介による殺細胞

特定の標的細胞および/または標的組織を殺す方法が開示される。その方法は特定の標的細胞および/または標的組織に対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物に特定の標的細胞および/または標的組織をさらし、それにより特定の標的細胞および/または標的組織を殺すことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対応して標的化することができる選択された標的化成分と会合した二本鎖RNA(dsRNA)分子を含む組成物、および、特定の標的細胞タイプおよび/または組織タイプを殺すような組成物の使用に関する。特異的な表面マーカーを示す細胞/組織に関連する疾患(例えば、中枢神経系の悪性腫瘍など)には、満足すべき治療が得られていない、非常に大きな医学的および経済的な影響を有する数多くの疾患が含まれる。
【背景技術】
【0002】
悪性の神経膠腫は、最も一般的な成人発症型の神経学的新生物であり、若年性毛様細胞性星状膠細胞腫などの若年発症新生物に加えて、神経膠芽細胞腫、星状膠細胞腫、稀突起膠腫および脳室上衣細胞腫を含む一群の中枢神経系の原発性腫瘍を包含する。
【0003】
悪性の神経膠腫は、典型的には、腫瘍は成長が抑制されないことが大きな一因であると考えられる増殖因子/腫瘍関連抗原の過剰発現によって特長づけられる。様々な悪性の神経膠腫(例えば、神経膠芽細胞腫など)は、攻撃性の増大および予後の不良をもたらす上皮増殖因子受容体(EGFR)の過剰発現を示す(Kleihues P.およびOhgaki H.、1999、Neuro−oncol.、1999、Jan;1(1):44〜51;Krishnan他、2003、Front Biosci.、8:e1〜13)。悪性の神経膠腫はまた、血小板由来増殖因子受容体の過剰発現を示すことがある(Shapiro WR.およびShapiro JR.、1998、Oncology(Huntingt)、Feb;12(2):233〜40;Feldkamp他、1997、J.Neurooncol.、1997 Dec;35(3):223〜48)。血小板由来増殖因子受容体の過剰発現もまた、悪性度の増大および予後の不良と相関させられている現象である。
【0004】
悪性の神経膠腫は、原発性脳腫瘍の最も一般的なタイプであるが、すべてのヒトガンの中で最も危険性の高い、侵攻性で、非常に浸襲性で、かつ神経学的に破壊的な腫瘍である。合衆国において毎年診断される約17000例の新規脳腫瘍の中で、約半数が悪性の神経膠腫である。悪性の神経膠腫細胞は、白質および灰白質の両方の浸潤を伴う非常に浸襲性の脳腫瘍をもたらす(Bjerkvig他、1986、Cancer Res.、46:4071〜912)。診断においては、悪性神経膠腫による神経軸の多くを貫く微視的な伸張が通例である(Burger他、1980、Cancer、46:1179〜86;Kelly他、1987、J.Neurosurg.、66:865〜74;Moser、1988、Cancer、62:381〜90;Salazar他、1976、Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.、1:627〜37)。運動性の侵入細胞によるこのような伸張は、神経膠腫が現実に小さく、かつ限定的であると思われるときでさえも、ほとんどの神経膠腫が手術によって治療できないことを明確としている。多形性神経膠芽細胞腫(GBM)は、悪性神経膠腫の最も重篤な形態であり、上部脳(大脳)において一般に生じる極めて侵攻性の脳腫瘍であり、しかし、これはまた、脊髄、小脳、脳幹または視神経交叉部などの中枢神経系の他の場所でも生じることがある。星状膠細胞腫、稀突起膠腫および毛様細胞性星状膠細胞腫を含む低悪性度の神経膠腫は、すべての原発性脳腫瘍の25%を占めており、時間とともに、これらの低悪性度腫瘍のほとんどは悪性の神経膠腫に脱分化する。びまん性星状膠細胞腫が主に成人の大脳半球に存在し、これは、未分化星状膠細胞腫および(二次的な)神経膠芽細胞腫に進行する固有的な傾向を有している。神経膠芽細胞腫の大部分は、悪性度のさほど高くない識別可能な前駆体病変を伴うことなく新たに発生する(原発性神経膠芽細胞腫)(Kleihues P.およびOhgaki H.、2000、Toxicol.Pathol.2000 Jan−Feb;28(1):164〜60)。20年以上も前の画期的な脳腫瘍共同グループ研究により、放射線および単一薬剤化学療法を受けた悪性神経膠腫患者についての延命効果が明らかにされた以降、治療の著しい進歩は悪性神経膠腫の治療においてなされていない(Walker他、1978、J.Neurosurg、49:333〜43;Walker他、1980、NEJM、303:1323〜9)。様々な先端分子切断技術により、神経膠腫の生物学のより良好な理解がもたらされている一方で、これらは臨床的見返りを未だもたらしていない。特に神経膠芽細胞腫は、手術、放射線治療および化学療法を含む標準的な治療様式に対する抵抗によって特長づけられている。放射線治療は、手術による切除の後における標準的な治療であるが、これらの腫瘍はいつも再発し、一様に惨憺たる予後を伴い、神経手術および放射線治療における数十年の技術的進歩にもかかわらず、全体的な統計学に対して大きな変化はなく、神経膠芽細胞腫と診断された患者のメジアン生存は9ヶ月〜12ヶ月の範囲である。
【0005】
悪性神経膠腫の中枢神経系に対する非常に限定された局在化のために、また、これらの腫瘍は一般に遠方の転移物を生じさせないという事実のために、様々な遺伝子治療法がそれらの治療のために提案されている(Bansal,K.およびEngelhard,H.H.、2000、Curr Oncol Rep、2、463〜72;Shir,A.およびLevitzki,A.、2001、Cell Mol Neurobiol.、21、645〜56)。遺伝子発現ベクターを腫瘍細胞と同時に同時注入することを伴う先行技術の遺伝子治療法は、インビトロおよびインビボで試験されたときには有効な方策であると示されることがある一方で、そのような方法は、例えば、臨床的状況において考えられるような確立された腫瘍に対して試験されたときには満足すべき有効性を実証することができていない。神経膠芽細胞腫の治療のためにウイルスベクターを用いる先行技術の遺伝子治療法では、満足すべき感染効率を実証することができていない。これは、非常に密集した腫瘍である神経膠芽細胞腫の組織学的構造のためであり、すなわち、ウイルスまたはそれよりも大きいサイズの粒子による浸透に対してほぼ完全に不透過性であるためであると考えられる。
【0006】
従って、特異的な表面マーカーを示す疾患関連の細胞(例えば、神経膠芽細胞腫の細胞など)を選択的に殺す新規かつ最適な方法が長い間待望され、かつ差し迫って必要とされている。
【0007】
身体を感染から保護するためにウイルス感染細胞が用いる機構の1つには、ウイルス感染細胞だけがウイルス感染細胞において一般に発現するdsRNA分子によってアポトーシスを開始させることを含む。dsRNAのウイルス誘導による生成はインターフェロン(IFN)−α/インターフェロン−βの発現のアップレギュレーションをもたらす。インターフェロン−α/βは強力な抗増殖性サイトカインであり、その作用機構では、感染した細胞に隣接する細胞にウイルスが広がることを防止するために、PKRの発現および2’−5’OAS系を誘導することを含む。酵素PKRはSer/Thrプロテインキナーゼであり、これは、dsRNAにより活性化されたとき、タンパク質合成開始因子eIF−2のαサブユニットをリン酸化する。これにより、GDP/GTP交換因子eIF−2Bの封鎖および翻訳開始の迅速な阻害が生じる(Farrell他、1978、Proc Natl Acad Sci USA、75、5893〜7)。PKRの活性化は、タンパク質合成装置の阻害により部分的に駆動されるアポトーシスによる細胞死を強く誘導する(Jagus,R.他、1999、Int J Biochem Cell Biol.、31、123〜38)。NF−κBの活性化(これもまたPKRによって誘導される)は即時的な細胞死を防止し、それによりIFN−α/βの産生を可能にすることが考えられる。dsRNAの前アポトーシス活性に関与する機構にはまた、タンパク質合成の停止に寄与する2’−5’オリゴAシンセターゼ/RNaseL系のdsRNAによる活性化(Player,M.R.およびTorrence,P.F.、1998、Pharmacol Ther、78、55〜113)、ストレスキナーゼ(JNKおよびp38)の活性化(Iordanov,M.S.他、2000、Mol Cell Biol.、20、617〜27)、いくつかの前アポトーシス遺伝子の増強された発現をもたらす転写因子(IRF3およびDRAF1)の活性化、ならびに、NOの産生およびその後の細胞死をもたらすNO合成酵素の発現の活性化が含まれる。従って、dsRNAは、多数の機構(図1)を介して細胞を殺すことができる非常に強力な抗増殖性/細胞傷害性の分子である。
【0008】
従って、悪性神経膠腫などの疾患を治療するための最適な方策は、疾患に関連した細胞/組織を殺すためにdsRNAを使用することであると考えられる。
【0009】
いくつかの先行技術方法が、疾患に関連した細胞または組織(例えば、悪性神経膠腫の細胞または組織など)を選択的に殺すことに関してdsRNAを使用するために用いられているか、または提案されている。
【0010】
1つの方法には、ポリリシン/カルボキシメチルセルロースで安定化されたpICを悪性神経膠腫患者に筋肉内投与することを含む(Salazar,A.M.他、1996、Neurosurgery、38、1096〜103)。
【0011】
別の方法には、ポリリシン/カルボキシメチルセルロースで安定化されたpICを、神経膠芽細胞腫、星状膠細胞腫および脳室上衣細胞腫の患者に静脈内投与することを含む(Nakamura,O.他、1982、脳と神経、34、267〜73)。
【0012】
さらに別の方法には、ヒト神経膠芽細胞腫の細胞株に由来する確立された頭蓋内腫瘍を有するヌードマウスを、Δ(2−7)EGFR(神経膠芽細胞腫において特異的に発現する変異型形態のEGFR)のRNA転写物に対して相補的なアンチセンスRNAをコードするプラスミドベクターの腫瘍近位の注射によって治療し、その結果、そのような細胞のアポトーシスを特異的に誘導することができる細胞内dsRNAを生じさせるようにすることを含む(Ogris,M.他、2001、AAPS PharmSci、3:E21)。
【0013】
しかしながら、上記の方法はすべて、著しい短所により損なわれている。すなわち、dsRNAをヒト患者に投与することを用いる方法は、最適な治療結果を実証することができず、発熱、低血圧および白血球減少などの毒性の副作用の危険性を伴う。ヒト疾患のマウスモデルを用いる方法は、最適な治療効果を実証することができず、ヒト患者における有効性が明らかにされておらず、また、非常に特異的な変異型RNAを発現する疾患関連の細胞を殺すことに制限される。さらに、これらの方法はどれも、標的細胞に対してだけ治療試薬を選択的に標的化する能力を有しておらず、そのために、標的化されていない細胞/組織との相互作用による予測されない潜在的に有害な副作用を覚悟しているので、これらの方法はどれも、最適な安全性を有していない。
【0014】
従って、先行技術の方法はどれも、疾患に関連した細胞または組織を殺すためにdsRNAを使用するための十分な解決策を提供していない。
【0015】
従って、疾患に関連した細胞または組織を殺すためにdsRNAを使用し、上記の制限がない方法が必要であることが広く認識されており、そのような方法を有することは非常に好都合であると考えられる。
【発明の開示】
【0016】
本発明の1つの態様によれば、特定の標的細胞および/または標的組織を殺す方法が提供され、この方法は、特定の標的細胞および/または標的組織に対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物に特定の標的細胞および/または標的組織をさらし、それにより特定の標的細胞および/または標的組織を殺すことを含む。
【0017】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特長によれば、特定の標的細胞および/または標的組織を組成物にさらすことは、特定の標的細胞および/または標的組織を有する脊椎動物対象に組成物を投与することによって達成される。
【0018】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、脊椎動物対象に組成物を投与することは、脊椎動物対象に対して全身的に、および/または脊椎動物対象の中枢神経系の所定位置に対して組成物を投与することによって達成される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬用組成物で、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物を有効成分として含む医薬用組成物が提供される。
【0021】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特長によれば、組成物は核酸キャリアをさらに含む。
【0022】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、標的化成分は二本鎖RNA分子に非共有結合的に結合している。
【0023】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、標的化成分は核酸キャリアに共有結合的に結合している。
【0024】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、二本鎖RNA分子は核酸キャリアに非共有結合的に結合している。
【0025】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、核酸キャリアはポリカチオン性ポリマーを含む。
【0026】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、ポリカチオン性ポリマーはポリエチレンイミンである。
【0027】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、核酸キャリアは、非イオン性水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマーおよび/または生体適合性ポリマーを含む。
【0028】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、核酸キャリアはポリ(エチレングリコール)を含む。
【0029】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、標的化成分は特定の細胞タイプおよび/または組織タイプの表面マーカーのリガンドである。
【0030】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、組成物は、エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物をさらに含む。
【0031】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物はメリチンまたはメリチン誘導体である。
【0032】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、表面マーカーのリガンドは表面マーカーの生物学的リガンドである。
【0033】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、標的化成分は抗体または抗体フラグメントである。
【0034】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、標的化成分は増殖因子および/または分化因子である。
【0035】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、増殖因子および/または分化因子は上皮増殖因子である。
【0036】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、表面マーカーは、増殖因子受容体、分化因子受容体および/または腫瘍関連抗原である。
【0037】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、表面マーカーは上皮増殖因子受容体である。
【0038】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、二本鎖RNA分子はポリイノシン酸鎖および/またはポリシチジル酸鎖を含む。
【0039】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、二本鎖RNA分子は、10リボヌクレオチド〜3000リボヌクレオチドの範囲から選択される数のリボヌクレオチドからそれぞれの鎖が構成されるRNA鎖から構成される。
【0040】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは疾患に関連し、および/または神経系の細胞および/または組織である。
【0041】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは腫瘍細胞および/または腫瘍組織であり、および/またはグリア細胞および/またはグリア組織である。
【0042】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは悪性の神経膠細胞および/または悪性の神経膠組織である。
【0043】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは神経膠芽細胞腫の細胞および/または組織である。
【0044】
記載された好ましい実施形態におけるなおさらなる特長によれば、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプはヒトの細胞および/または組織である。
【0045】
本発明は、最適に広範囲の様々な標的細胞タイプおよび/または標的組織タイプを、インビトロまたはインビボで、最適な選択性、効力および迅速性を伴って殺すためにdsRNAを使用する方法を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。
【0046】
別途定義されない場合、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と同様または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。本明細書中で言及される刊行物、特許出願、特許および他の参考文献はすべて、その全体が参考として組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。また、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0047】
図面の簡単な記述
本発明は、例としてだけであるが、添付されている図面を参照して、本明細書中に記載される。次に図面を詳しく具体的に参照して、示されている細目は、例としてであり、また、本発明の好ましい実施形態の例示的な議論のためのものであり、従って、本発明の原理および概念的態様の最も有用かつ容易に理解された記述であると考えられるものを提供するために示されていることが強調される。これに関して、記述を図面と一緒に理解することにより、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具体化され得るかが当業者には明らかになるので、発明の構造的詳細を、発明の基本的な理解のために必要であるよりも詳細に示すことは試みられていない。
図1は二本鎖RNA(dsRNA)により誘導されるアポトーシスの機構を表す概略図である。
図2はU87MG細胞にインビトロで感染させたときの、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするレンチウイルスベクターの感染効率が100%であることを表す蛍光顕微鏡写真である。
図3は神経膠芽細胞腫の腫瘍をヌードマウスにおいてインビボでトランスフェクションしたときのGFP発現レンチウイルスベクターの感染効率が非常に低いことを表す蛍光顕微鏡写真−概略図の組合せ図である(図3a〜図3f)。腫瘍組織から得られたクリオスタット切片が、示されているように、共焦点顕微鏡によってGFPの発現について分析された。図3aおよび図3bは、それぞれ1xまたは20xの原倍率における、腫瘍周辺部から得られた断面(図3fを参照のこと、「P」の断面)の1対の代表的な蛍光顕微鏡写真である。図3cおよび図3dは、それぞれ1xおよび20xの原倍率における、腫瘍中心部/注入部位から得られた腫瘍断面(図3fを参照のこと、「C」の断面)の1対の代表的な蛍光顕微鏡写真である。図3eは、20xの原倍率における、腫瘍周辺部と腫瘍中心部/注入部位との間の中間距離に位置する腫瘍断面(図3fを参照のこと、「I」の断面)の蛍光顕微鏡写真である。図3fは、クリオスタット切片化スキームを表す概略図である;P−周辺部断面、I−中間部断面、C−中心部/注入部位断面。黒色三角形はレンチウイルスベクター注入の経路を示し、赤色線はレンチウイルスベクターに対する最大露出面積を示す。顕微鏡写真において、ADOBE PHOTOSHOPソフトウエアが、GFP陽性細胞の通常の緑色を赤色に反転させるために、また、それらの生存性をコントラスト強調するために使用された。
図4はpIC:PEI25複合体またはpIC:FuGENE6複合体を用いたトランスフェクションによってそれぞれ媒介されるインビトロでの高レベルのU87MG神経膠芽細胞腫細胞の殺傷を表す棒グラフである(図4a〜図4b)。5000個のU87MG細胞を200マイクロリットルの体積の培地に含むアリコートを96ウエルプレートにおいて各ウエルに播種し、一晩成長させた。その後、細胞を、未使用のPEI25キャリアまたはFuGENE6キャリアのいずれかとの複合でのpICの示された濃度でトランスフェクションした。PEI25を用いたトランスフェクションは以前の記載(Kircheis R.他、2001、Gene Therapy、8、28〜40)のように行われた。FuGENE6を用いたトランスフェクションは製造者の説明書に従って行われた。
図5はpIC:PEI25−PEG−EGF複合体を用いたトランスフェクション後1時間でのU87MGwtEGFR神経膠腫細胞腫細胞におけるアポトーシスが高レベルであることを表す顕微鏡写真である(図5a〜図5b)。トランスフェクションに先立ち、1mlの体積の培地における10000個の細胞を24ウエルプレートにおいて各ウエルに播種し、一晩成長させた。その後、細胞を、示された試薬を使用して、pICの示された濃度でトランスフェクションした。トランスフェクション後1時間において、アポトーシスによる死を、アネキシン染色キットまたはTunel染色キット(Roche;それぞれ図5aおよび図5b)を使用して検出した。UT−非トランスフェクション。
図6はpIC:PEI25−PEG−EGF複合体を用いたトランスフェクション後の3時間および24時間におけるU87MGwtEGFR細胞の致死率が大きいことを表す棒グラフである。5000個の細胞を200マイクロリットルの体積の培地に含むアリコートを96ウエルプレートにおいて各ウエルに播種し、一晩成長させた。その後、細胞を、PEI25−PEG−EGFキャリアとの複合で、示された濃度でのpICでトランスフェクションした。細胞の生存性がトランスフェクション後の3時間および24時間においてメチレンブルーアッセイによって評価された。棒上の数字は細胞生存百分率を示す。
図7はいかなる形態のEGFRも示さない悪性神経膠細胞、またはΔ(2−7)EGFRのみを示す悪性神経膠細胞ではなく、野生型EGFRを示すU87MGwtEGFR悪性神経膠腫細胞を特異的かつ効率的に殺すpIC:PEI25−PEG−EGF複合体の能力を表す棒グラフである。細胞を成長させ、示されたEGFRを発現させるためにトランスフェクションし、示されたキャリアとの複合で、示された濃度でのpICでトランスフェクションし、生存百分率をトランスフェクション後24時間においてメチレンブルーアッセイによってアッセイした。
図8はPEI−Melキャリアとの複合でのPEI25−PEG−EGFキャリアの部分的置換によるpIC:PEI25−PEG−EGF複合体の増強された殺細胞作用を表すヒストグラムである。U87MGwtEGFR細胞を、PEI25−PEG−EGFキャリア、または、1:10のPEI25−PEG−EGF対PEI−Melの比率でのPEI25−PEG−EGF+PEI−Melキャリアのいずれかと複合体化されたpICでトランスフェクションした。作用はトランスフェクションの24時間後にメチレンブルーアッセイによって測定された。
図9はpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体で刺激された後のU87MGwtEGFR細胞におけるIFN−α分泌が特異的に刺激されていることを表す棒グラフである。500000個のU87MG細胞またはU87MGwtEGFR細胞の懸濁物を6cmプレートに播種し、一晩成長させ、示されたpIC濃度でのpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションした。培養培地上清をトランスフェクション後24時間で集め、ELISAによってIFN−α含有量について分析した。
図10a〜図10dは、pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションされた、野生型EGFRを過剰発現する神経膠芽細胞腫細胞による可溶性の成長阻害因子の分泌(バイスタンダー効果)を表すヒストグラムである。バイスタンダー効果を調べるために、4000個のU87MG細胞(図10aおよび図10b)またはU87MGΔEGFR細胞(図10cおよび図10d)のアリコートを200マイクロリットルの培養培地において96ウエルプレートに播種し、一晩成長させた。その後、100マイクロリットルの培養培地上清を、トランスフェクション後の示された時間で集められた、pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションされたU87MGwtEGFR細胞による100マイクロリットルの馴化培養培地と交換した。細胞増殖を培地交換後の24時間(図10c〜図10d)および48時間(図10a〜図10b)で評価した。馴化培地を作製するために、500000個のU87MGwtEGFR細胞の懸濁物を2mlの培養培地において6cmプレートに播種し、一晩成長させ、示されたpIC濃度でのpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションした。UT−培地交換なし。図10e〜図10hは、pIC:キャリア複合体でトランスフェクションされた細胞による馴化培地の成長阻害効果(バイスタンダー効果)が、トランスフェクションのために使用されたpIC:キャリア複合体の残留物のためでないことを表すヒストグラムである。図10eおよび図10fは、示されたpIC濃度でのpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションされたU87MGwtEGFR細胞による馴化培養培地の、48時間後および24時間後のU87MGwtEGFR細胞の成長に対する影響をそれぞれ表す。この場合、馴化培地は、U87MGwtEGFR細胞のEGFR含有溶解物で処理されていない(トランスフェクション後の24時間、48時間、72時間)か、または処理されている(トランスフェクション後の24L時間、48L時間、72L時間)。馴化培地はトランスフェクション後の示された時間で集められた。処理された馴化培地または処理されていない馴化培地の細胞阻害活性において大きな差がないことに留意すること。このことは、成長阻害効果が、トランスフェクションのために使用されたpIC:キャリア複合体の残留物のためでないことを示している。馴化培地の影響を調べるために、4000個のU87MGwtEGFR細胞を200マイクロリットルの培養培地において96ウエルプレートに播種し、一晩成長させた。馴化培地アリコートの処理のための溶解物サンプルを、20000個のU87MGwtEGFR細胞を10マイクロリットルの溶解緩衝液においてインキュベーションすることによって作製した。溶解物処理は、100マイクロリットルの馴化培地を2時間インキュベーションすることからなった。図10gおよび図10hは、48時間後および24時間後においてそれぞれ、EGFR含有溶解物(0.5L、1L、10L マイクログラム/mlのpIC)を用いたpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体の処理が、未処理の複合体(0.5、1、10マイクログラム/mlのpIC)と比較して、U87MGwtEGFR細胞、U87MG細胞およびU87MGΔEGFR細胞におけるその細胞阻害活性を阻害する能力を実際に有することを示す。培養培地におけるpIC:キャリア複合体は、上記のように作製された溶解物サンプルと2時間インキュベーションすることによって溶解物で処理された。溶解物で処理された馴化培地、および、溶解物で処理されなかった馴化培地、ならびにpIC:キャリア複合体の影響を調べるために、4000個の細胞を、示されたように、200マイクロリットルの培養培地において96ウエルプレートに播種し、一晩成長させた。
図11はpIC:PEI−PEG−EGF+PEI−Mel複合体による治療により、野生型ヒトEGFRを示す致死性神経膠芽細胞腫の腫瘍を有する哺乳動物が治療されることをそれぞれ表す一連の写真およびデータプロットである(図11a〜図11b)。10個のU87MGwtEGFR細胞のアリコートを35匹のヌードマウスの脳内に定位固定により移植し、10日後、5匹の動物を屠殺して、腫瘍のサイズを評価した。10匹のマウスがpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体で治療され、他の10匹が等しい用量のPEI25−PEG−EGF+PEI−Melキャリアのみで治療された。接種後20日目(治療開始後10日)において、各実験群からの5匹の動物を屠殺し、それらの脳を、腫瘍サイズを評価するために切片化し(図11a)、また、5匹の動物が生存分析のためにモニターされた(図11b)。確立された10日齢の腫瘍が白色の矢により示される(図11a、左パネル)。dsRNA:キャリア複合体で治療されたマウスにおいてもっぱら、腫瘍が完全に存在しないこと(図11a)、また、生存が32日を超え、少なくとも接種後64日の長期にわたっていることに留意すること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明は、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化することができる選択された標的化成分と会合した二本鎖RNA(dsRNA)分子を含む組成物、有効成分としてのそのような組成物と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物、ならびに、特定の標的細胞および/または標的組織をそのような組成物にさらすことによって特定の標的細胞および/または標的組織を殺す方法に関する。具体的には、本発明は、特異的な表面マーカーを示す標的細胞および/または標的組織を、最適な選択性、迅速性、特異性および安全性を伴って、インビボで殺すために使用することができる。そのため、本発明の方法は、特異的な表面マーカーを示す標的細胞または標的組織を殺す先行技術方法のすべてよりもはるかに優れている。
【0049】
本発明の原理および操作は、図面および付随する記述を参照してより良好に理解され得る。
【0050】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明において示される細部、または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施することが可能であり、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は記述のためであり、限定であるとして見なしてはならないことを理解しなければならない。
【0051】
特異的な表面マーカーを示す細胞/組織によって特長づけられる疾患、例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)を過剰発現する神経膠芽細胞腫などは、典型的には、極めて大きい経済的および医学的な結果に関連しており、それらに対する満足すべき治療が現在得られていない。
【0052】
神経膠芽細胞腫などの疾患の治療が、ウイルスベクターに基づく遺伝子治療法を使用して試みられている。しかしながら、そのような方法は、ウイルスベクターが神経膠芽細胞腫の組織などの組織に効果的に浸透し、感染することができないことによって、また、複製欠陥ウイルスベクターおよび特に複製能を有するウイルスベクターの遺伝子配列を巻き込む有害な遺伝子組換えに対する潜在的可能性によって、また、ウイルスベクターによる致死性/有害な免疫/炎症応答を開始させる潜在的可能性によって非常に妨げられている。さらに、そのような方法は、核の能動的な取り込み機構とともにウイルスベクターの使用を多くの場合には要求する、標的細胞における核への遺伝子送達が決定的に要求されることによって制限されている。
【0053】
そのような疾患を治療するための最適な方策には、最適な細胞傷害能および組織浸透能を有する因子であるdsRNAを使用することを含む。
【0054】
dsRNA分子を使用して、疾患に関連する細胞または組織(例えば、悪性の神経膠腫細胞または神経膠腫組織など)を殺すための様々な方法が、先行技術によって記載されている。
【0055】
1つの方法では、ポリリシン/カルボキシメチルセルロースで安定化されたポリイノシン酸−ポリシチジル酸(pIC)dsRNA分子を悪性神経膠腫患者に全身投与することが伴い、別の方法では、ヒト神経膠芽細胞種の細胞株に由来する確立された頭蓋内腫瘍を有するヌードマウスを、そのような細胞において特異的に発現する変異型RNA転写物に対して相補的なアンチセンスRNAをコードし、その結果、そのような細胞のアポトーシスを特異的に誘導することができる細胞内dsRNA分子を生じさせるようにするプラスミドベクターを腫瘍近位に注射することによって治療することを含む。
【0056】
しかしながら、上記の方法はすべて、最適でない標的細胞選択性、ヒトにおける最適な治療結果を実証できないこと、毒性の危険性、および/または、1つだけのタイプの変異型RNAを特異的に発現する細胞を殺すことに限定される明らかにされた有効性を含む著しい欠点により損なわれている。
【0057】
従って、先行技術方法はすべて、最適な効力、安全性および/または選択性を伴って標的細胞/組織を殺すためにdsRNA分子を使用するための十分な解決策を提供することができないでいる。
【0058】
本発明を実施に移しているとき、また、先行技術の限界を克服しようとしているとき、本発明者らは、細胞傷害性であり、かつ、それにもかかわらず、細胞特異的であるdsRNA分子を構築した。この細胞特異的な細胞傷害性dsRNA分子は、特定の形態のEGFRを示す非常に悪性の、かつ本質的にはウイルスベクター不透過性の神経膠芽細胞腫腫瘍の細胞/組織を、最適な迅速性、効率および選択性を伴って、インビボで殺すために使用され、それにより、先行技術の制限の多くが否認された。
【0059】
従って、本発明の1つの態様によれば、特定の標的細胞および/または標的組織を殺す方法が提供される。この方法は、二本鎖リボ核酸(RNA)分子を含む組成物に特定の標的細胞および/または標的組織をさらすことによって達成される。
【0060】
下記の実施例の節において記載および例示されるように、本発明の二本鎖RNA(dsRNA)分子の最適に大きい細胞傷害性によって、この方法は、最適な有効性および迅速性を伴って標的細胞および/または標的組織を殺すために使用することができる。さらに、本明細書中下記および下記の実施例の節において記載されるように、その最適な組織浸透能の結果として、本発明の組成物は、ウイルスベクターの大きさおよび/または表面化学を有する粒子に対して事実上不透過性である標的細胞/組織(例えば、ヒト神経膠芽細胞腫の細胞/組織など)を、最適な効力および迅速性を伴って殺すために使用することができる。従って、本発明の組成物は、ウイルスベクターなどの細胞傷害性粒子による殺傷を事実上受けない標的細胞/組織を、最適な効力および迅速性を伴って殺すために使用することができる。そのため、本発明の方法は先行技術の様々な重大な制限を克服している。
【0061】
標的細胞/組織の最適に効率的な殺傷を可能にするために、本発明の方法は、好ましくは、標的細胞/組織に対するdsRNA分子の最適に効率的な送達を可能にするような方法で達成される。
【0062】
本発明の方法は、様々な状況のいずれでも、例えば、インビトロで培養された細胞の集団において、または、より好ましくは、脊椎動物対象におけるインビボで培養された細胞の集団において、標的細胞/組織を殺すために用いることができる。
【0063】
好ましくは、脊椎動物対象は哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
【0064】
本発明の方法は、様々な適用のいずれの状況においても対象における本質的には任意の所望されない標的細胞/組織を殺すために適用することができる。
【0065】
好ましくは、本発明の方法は、対象における疾患に関連する標的細胞/組織を殺し、その結果、それにより対象における疾患を治療するようにするために使用される。標的細胞/組織に関連する疾患を有する対象における標的細胞/組織の最適に効率的かつ迅速な殺傷を可能にする結果として、本発明の方法は、対象における疾患を、最適な有効性および迅速性を伴って治療するために使用され得ることが理解される。
【0066】
標的細胞/組織を有する対象における疾患を治療するために本発明の方法を使用するとき、標的細胞/組織を組成物にさらすことは、好ましくは、組成物を対象に投与することによって達成される。
【0067】
組成物は、適用および目的に依存して、様々な方法のいずれかで対象に投与することができる。
【0068】
例えば、組成物は、好都合には、対象に対して全身的および/または局所的に投与することができる。
【0069】
好ましくは、存在位置が知られ、かつ接近可能である標的細胞/組織に関連する疾患の場合、組成物は標的細胞/組織に対して局所的に投与される。そのような限局された投与は、標的でない細胞/組織が組成物によって影響される可能性を最小限に抑え、従って、そのような投与から生じる望ましくない副作用の可能性を最小限にする。その存在位置が知られ、かつ接近可能である標的細胞/組織に関連する疾患には、典型的には、充実性腫瘍が含まれる。下記の実施例の節において記載および例示されるように、そのような標的細胞/組織を有する哺乳動物対象における、非常に悪性のヒト腫瘍の標的細胞/組織への組成物の局所投与は、そのような腫瘍のそのような対象を完全かつ効率的に治療するために使用することができる。
【0070】
好ましくは、ヒト対象における腫瘍などの疾患を最適に治療する場合、組成物は腫瘍内に投与される。
【0071】
あるいは、その存在位置が不明で、および/またはびまん性で、および/または接近不能である標的細胞/組織に関連する疾患の場合、組成物は、好都合には、標的細胞/組織に対する組成物の暴露を容易にするために全身投与することができる。本発明の組成物の最適な生体分布能のために、組成物は全身投与のために非常に好適である。
【0072】
好ましくは、組成物が全身投与されるとき、組成物は、本明細書中下記に記載されるように、組成物に対する標的細胞/組織の優先的な暴露を可能にする本発明の標的化成分をさらに含む。
【0073】
存在位置が不明で、および/またはびまん性で、および/または接近不能である標的細胞/組織に関連する疾患には、例としてではあるが、血液学的悪性腫瘍(例えば、白血病など)、転移性充実性腫瘍;免疫エフェクターにより媒介される疾患、例えば、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、および移植関連疾患[例えば、移植片拒絶、移植片対宿主病(GVHD)]など;および神経変性疾患が含まれる。
【0074】
限局された投与および全身投与は、好都合には、例えば、転移性悪性腫瘍または潜在的に転移性の悪性腫瘍などの疾患を治療するために組み合わせることができる。従って、例えば、局所投与は、存在位置がが知られ、かつ接近可能である原発性の標的腫瘍細胞/組織の殺傷を達成するために行われ、全身投与は、その存在位置が不明で、および/またはびまん性で、および/または接近不能である転移性の標的細胞/組織の最適な殺傷を達成するために行われる。
【0075】
組成物は、適用および目的に依存して、断続的または連続的に投与することができる。好ましくは、腫瘍を治療する場合、組成物は連続して投与される。
【0076】
組成物は、適用および目的に依存して、様々な割合のいずれかで連続して投与することができる。
【0077】
好ましくは、組成物が連続して投与されるとき、組成物は、1時間あたり1マイクログラム〜10マイクログラムのdsRNAに対応する割合で投与される。
【0078】
組成物は、適用および目的に依存して、様々な持続期間のいずれかで投与することができる。
【0079】
好ましくは、腫瘍などの疾患を治療する場合、組成物は3日〜14日の持続期間にわたって投与される。
【0080】
ヒトなどの大型哺乳動物においては、組成物の腫瘍内/腫瘍周囲の投与を、好ましくは、Eriksdotter Jonhagen,M.他、1998、Dement Geriatr Cogn Disord、9、246〜57に以前に記載されたように、腫瘍内または腫瘍の近傍に配置されたカテーテルに操作可能に接続された水力学的マイクロポンプを使用して達成することができる。
【0081】
組成物は、対象に対して、それ自体、または、少なくとも1つの医薬的に許容され得るキャリアを含む医薬組成物における有効成分として投与することができる。医薬組成物における有効成分としての組成物の配合、およびそのような組成物の本発明の方法に従った使用が、本明細書中下記においてさらに詳しく記載される。
【0082】
この分野における当業者、例えば、医師、好ましくは、その疾患を専門とする医師などは、本発明の教示に従ってヒト対象における疾患を治療するための必要な専門的知識・技術を有する。同様に、この分野における当業者、例えば、獣医、好ましくは、その疾患を専門とする獣医などは、本発明の教示に従って動物における疾患を治療するための必要な専門的知識・技術を有する。
【0083】
本発明の方法では、適用および目的に依存して、本発明の方法を実施するために、様々なタイプのdsRNA分子のいずれかの使用が考えられる。
【0084】
dsRNA分子は合成することができ、または、細胞、細菌およびウイルスを含む様々な天然の供給源のいずれかから得ることができる。
【0085】
dsRNA分子は、マッチしないリボヌクレオチド対を含むことができ、しかし、最も好ましくは、マッチするリボヌクレオチド対から全体が構成される。
【0086】
マッチするリボヌクレオチド対には、アデニル酸(A)−ウリジル酸(U)対およびイノシン酸(I)−シチジル酸(C)対が含まれる。
【0087】
dsRNA分子のそれぞれの鎖は、イノシン酸、シチジル酸、アデニル酸、グアニル酸およびウリジル酸を含む様々なタイプのリボヌクレオチドのいずれかの様々な混合のいずれかから構成され得る。好ましくは、dsRNA分子の鎖は、単一タイプまたは単一リボヌクレオチドのポリマーである。
【0088】
好ましくは、dsRNA分子はポリイノシン酸鎖および/またはポリシチジル酸鎖を含む。最も好ましくは、dsRNA分子はポリイノシン酸−ポリシチジル酸(pIC)の複合体である。そのようなdsRNA分子は、この分野ではポリ(I)−ポリ(C)、ポリ(IC)またはポリICとして示されることがある。
【0089】
あるいは、dsRNA分子はポリアデニル酸(pA)−ポリウリジル酸(pU)の複合体であり得る。そのようなdsRNA分子は、この分野ではポリ(A)−ポリ(U)と呼ばれることがある。
【0090】
上記で記載されたように、dsRNA分子はミスマッチのリボヌクレオチド対を含むことができる。ミスマッチのリボヌクレオチド対を含む本発明のdsRNA分子は、以降、「ミスマッチdsRNA分子」として示される。
【0091】
好ましくは、ミスマッチdsRNA分子において、対応する鎖との間での水素結合(塩基積み重なり)は比較的損なわれておらず、すなわち、29個毎の連続した塩基残基において平均して1塩基対未満で中断される。ミスマッチは、dsRNAがリボヌクレアーゼによる消化を受けやすいところである鎖が内側に突き出ていること(または外側に突き出ていること)によってdsRNA二重らせんの正常な幾何構造の中断をもたらす。
【0092】
例えば、ミスマッチdsRNA分子は、5リボヌクレオチド〜30リボヌクレオチドについて1つのミスマッチしたウリジル酸(U)リボヌクレオチドまたはグアニル酸(G)リボヌクレオチドを含有するポリシチジル酸(pC)鎖と複合体化したポリイノシン酸(pI)鎖であり得る。そのようなミスマッチdsRNA分子は、好ましくは、pI−ポリ(CU)、pI−ポリ(CU)、pI−ポリ(C13U)、pI−ポリ(C22U)、pI−ポリ(C20G)またはpI−ポリ(C29G)である。最も好ましくは、そのようなミスマッチdsRNA分子はpI−ポリ(C12U)である。6塩基対〜12塩基対の非中断部分(すなわち、RNAらせんの1/2回〜1回の完全なターン)からなる領域であるpI−ポリ(C12U)と複合体化したpIから構成されるミスマッチdsRNA分子は、リンホカインの放出を引き起こすバイオトリガーとして、また、天然の抗ウイルス経路を構成する酵素のための絶対的な細胞内補因子としてその両方で役立つことができ、さらに、そのようなミスマッチしたウリジル酸リボヌクレオチドは、標的細胞/組織の細胞溶解の後におけるdsRNAの加水分解を促進させ、従って、標的でない細胞/組織に対する毒性を防止するために役立つことができる(米国特許第5593973号)。
【0093】
あるいは、ミスマッチdsRNA分子は、例えば、米国特許第4130641号および同第4024222号に記載されるように、リボヌクレオチドの1つが修飾リボシル骨格を有するミスマッチしたリボヌクレオチド対を含むことができる。特に、そのようなミスマッチdsRNA分子は、例えば、2’−O−メチルリボシル残基を含むことによって修飾されたリボシル骨格を有する、pC鎖とpI鎖との複合体であり得る。
【0094】
本発明を実施するために好適なミスマッチdsRNA分子を得ることおよび使用することに関する指針をこの分野の文献において得ることができる(例えば、米国特許第5593973号、欧州特許出願EP0300580を参照のこと)。
【0095】
dsRNA分子は、異なる数のリボヌクレオチドから構成される1対のRNA鎖から、または、より好ましくは、同じ数のリボヌクレオチドから構成される1対のRNA鎖から構成され得る。
【0096】
dsRNA分子のそれぞれのRNA鎖は様々な数のリボヌクレオチドのいずれかから構成され得る。
【0097】
好ましくは、二本鎖RNA分子のそれぞれのRNA鎖は、10リボヌクレオチド〜3000リボヌクレオチドの範囲から、より好ましくは、100リボヌクレオチド〜300リボヌクレオチドの範囲から選択される数のリボヌクレオチドから構成される。
【0098】
下記の実施例の節において記載および例示されるように、100リボヌクレオチド〜300リボヌクレオチドから構成されるRNA鎖を有するpIC分子を、実施例の節において示されるプロトコルに従って本発明の標的細胞/組織を、最適な迅速性および有効性を伴って殺すために用いることができる。実施例の節においてさらに記載されるように、本発明の組成物に対する標的細胞/組織の暴露は、標的細胞/組織によるIFN−αの分泌をもたらし、また、バイスタンダー細胞の成長阻害をもたらす。何らかの理論的枠組みに拘束されるものではないが、本発明者らは、そのようなINF−α分泌およびバイスタンダー細胞成長阻害が、dsRNA分子による細胞傷害性効果を媒介することに関与しているという意見である。
【0099】
本発明を実施するために好適なdsRNA分子を得ることおよび使用することに関する一般的な指針がこの分野の文献において提供される(例えば、米国特許第4927755号および同第4124702号を参照のこと)。
【0100】
最も好ましくは、dsRNA分子は、下記の実施例の節において記載されるように得られ、使用される。
【0101】
本発明の教示によれば、dsRNA分子は、好ましくは、標的細胞/組織に対して標的化することができる選択された標的化成分と会合させられる。
【0102】
そのような標的化成分との会合は、標的細胞/組織に対するdsRNA分子の最適に効率的な送達を促進させるために、それにより、最適な選択性を伴うdsRNA分子による標的細胞/組織の殺傷を促進させるために役立ち得ることが理解される。そのため、標的化成分は、最適な効率を伴う標的細胞/組織の殺傷を可能にし、その一方で、dsRNA分子と、標的化されていない細胞/組織との相互作用から生じる何らかの可能な望ましくない副作用を最小限に抑える。従って、そのような標的化成分を含む組成物の全身投与は、その存在位置が不明で、および/またはびまん性で、および/または接近不能である特定の標的細胞/組織に対するその標的化された送達を達成するために都合よく使用することができる。
【0103】
従って、本発明は、特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化することができる選択された標的化成分と会合したdsRNA分子を含む組成物を提供する。
【0104】
本明細書中で使用される場合、「特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化する」という標的化成分の能力は、特定の標的細胞/組織タイプの近傍に選択的に向かい、および/または特定の標的細胞/組織タイプと選択的に会合するその能力を示す。
【0105】
理論的枠組みに拘束されるものではないが、本発明者らは、特定の標的細胞/組織タイプの近傍に選択的に向かい、および/または特定の標的細胞/組織タイプと選択的に会合する標的化成分の能力が、会合したdsRNA分子を特定の標的細胞/組織タイプの近傍に選択的に向かわせ、および/または特定の標的細胞/組織タイプと選択的に会合させることを容易にするために役立ち、次に、標的細胞/組織の細胞質に対するdsRNA分子の特異的な送達、および、dsRNA分子による標的細胞/組織の同時に起こる殺傷を容易にするという意見である。
【0106】
本明細書中下記において記載されるように、本質的に任意の表面マーカーに対して標的化することができる本発明の標的化成分を一般に得ることができるので、本発明の組成物は、本質的に任意の標的細胞/組織を殺すために、および、従って、そのような標的細胞/組織に関連し、かつ、そのような標的細胞/組織を殺すことによる治療を受けやすい本質的に任意の疾患を対象において治療するために使用することができる。
【0107】
dsRNA分子は、適用および目的によって、様々な方法のいずれかで標的化成分と会合させることができる。
【0108】
例えば、dsRNA分子は標的化成分と共有結合的に会合させることができ、または、より好ましくは、標的化成分と非共有結合的に会合させることができる。
【0109】
dsRNA分子と標的化成分との非共有結合的な会合は、dsRNA分子を標的細胞/組織に対して標的化した後におけるdsRNAの標的化成分からの解離を容易にし、その結果、遊離したdsRNA分子による細胞/組織殺傷の活性化を促進させるようにするために都合よく用いることができる。そのような非共有結合的な会合は、都合よく達成されるという利点、および、分子間の共有結合的な会合を達成するために要求される煩雑および/または時間のかかる化学的合成に頼ることを必要とすることなく、様々なdsRNA分子−標的化成分の複合体の組合せの好都合な形成を可能にするという利点をさらに提供する。
【0110】
あるいは、dsRNA分子と標的化成分との共有結合的な会合は、標的化成分による標的細胞/組織に対するdsRNA分子の標的化が成功する前にdsRNA分子および標的化成分が相互に解離する何らかの望ましくない傾向を最小限にするために用いることができる。
【0111】
本発明の教示によれば、dsRNA分子と標的化成分との非共有結合的な会合は、好ましくは、dsRNA分子および標的化成分の両方と会合させられる核酸キャリアを介して達成される。本発明の方法を実施するための好適な核酸キャリアが、さらには本明細書中下記および下記の実施例の節において記載される。
【0112】
好ましくは、標的化成分は核酸キャリアに共有結合的に結合させられる。
【0113】
本発明の核酸キャリア、標的化成分およびdsRNA分子などの分子の共有結合的な会合は、当業者に広く知られている様々な化学的方法および生物学的方法のいずれかを使用して達成することができる。そのような化学的方法の実施に関する一般的な指針については、例えば、アメリカ化学会によって提供される広範囲に及ぶ指針を参照のこと(http://www.chemistry.org/portal/Chemistry)。当業者(例えば、化学者など)は、本発明を実施するための分子を共有結合的に会合させるために好適な化学的技術を実施するための要求される専門的知識・技術を有する。
【0114】
好ましくは、核酸キャリアに対する標的化成分の共有結合的な結合は、下記の実施例の節に記載されるように達成される。
【0115】
本発明の方法は、適用および目的に依存して、様々な機構のいずれかによって標的細胞/組織に対するdsRNA分子の標的化を達成することができる標的化成分を使用して達成することができる。
【0116】
さらに、本発明の方法では、本発明の様々な好適な標的化成分のいずれかを、様々な表面マーカーのいずれかを示す標的細胞/組織を殺すために利用することができる。
【0117】
本明細書中で使用される表現「表面マーカー」は、標的細胞/組織の細胞表面または細胞外マトリックスによって、特異的に示され、特有の高密度で示され、および/または特有の形態で示される任意の化学的構造体を示す。
【0118】
好ましくは、標的化成分は表面マーカーの特異的なリガンドである。
【0119】
表面マーカーのそのような特異的なリガンドは、dsRNA分子を標的細胞/組織に対して特異的に会合させるために、それにより、dsRNA分子による標的細胞/組織の特異的な殺傷を促進させるために役立ち得ることが理解される。
【0120】
好ましくは、標的化成分は、表面マーカーの生物学的リガンド、あるいは抗体または抗体フラグメントである。
【0121】
あるいは、標的化成分は、表面マーカーに対して特異的に標的化することができる任意の分子、成分または化学的構造体、例えば、親和性リガンドのコンビナトリアルライブラリーから選択される特異的な表面マーカーリガンドなどであり得る。
【0122】
本発明の本質的には任意の表面マーカーについて特異的な抗体または抗体フラグメントが、本明細書中下記に記載されるように、当業者によって新たに常法により作製され得るか、または商業的な供給によって得られることが理解される。抗体または抗体フラグメントは一般に、本発明の標的細胞/組織などの細胞/組織における本発明の表面マーカーの呈示を特長づけるためにこの分野で用いられる唯一の試薬であるので、どのような場合でも、好適な抗体または抗体フラグメントを、通常、当業者は入手することができる。
【0123】
本明細書中で使用される用語「抗体」は、実質的に完全な抗体分子を示す。
【0124】
本明細書中で使用される表現「抗体フラグメント」は、本発明の表面マーカーに結合することができる抗体の機能的なフラグメントを示す。
【0125】
本発明を実施するための好適な抗体フラグメントには、免疫グロブリン軽鎖(これは本明細書中では「軽鎖」として示される)の相補性決定領域(CDR)、免疫グロブリン重鎖(これは本明細書中では「重鎖」として示される)の相補性決定領域、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域、軽鎖、重鎖、Fdフラグメント、ならびに、軽鎖および重鎖の両方の本質的にはすべての可変領域を含む抗体フラグメント、例えば、Fv、単鎖Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)などが含まれる。
【0126】
軽鎖および重鎖の両方のすべての可変領域または本質的にすべての可変領域を含む機能的な抗体フラグメントは下記のように定義される:
(i)Fv、これは、2つの鎖として発現させられた軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域からなる遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;
(ii)単鎖Fv(「scFv」)、これは、好適なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む遺伝子操作された単鎖分子である;
(iii)Fab、これは、完全な抗体を酵素ペプシンで処理して、無傷な軽鎖と、その可変ドメインおよびC1ドメインからなる重鎖のFdフラグメントとを生じさせることによって得ることができる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメントである;
(iv)Fab’、これは、完全な抗体を酵素ペプシンで処理し、その後、還元することによって得ることができる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメントである(2つのFab’フラグメントが1個の抗体分子について得られる);
(v)F(ab’)、これは、完全な抗体を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる、抗体分子の一価の抗原結合性部分を含有する抗体分子のフラグメント(すなわち、2つのジスルフィド結合によって一緒になっているFab’フラグメントのダイマー)である。
【0127】
抗体(すなわち、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体)を作製する様々な方法がこの分野では広く知られている。抗体は、この分野で知られているいくつかの方法のいずれか1つによって作製することができ、この場合、そのような方法は、抗体分子のインビボ産生の誘導、免疫グロブリンライブラリーのスクリーニング(Orlandi D.R.他、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、86:3833〜3837;Winter G.他、1991、Nature、349:293〜299)、または、培養における連続した細胞株によるモノクローナル抗体分子の作製を用いることができる。これらには、限定されないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびエプスタイン・バールウイルス(EBV)−ハイブリドーマ技術が含まれる(Kohler G.他、1975、Nature、256:495〜497;Kozbor D.他、1985、J.Immunol.Methods、81:31〜42;Cote RJ.他、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:2026〜2030;Cole SP.他、1984、Mol.Cell.Biol.、62:109〜120)。
【0128】
標的抗原が小さすぎて、抗体をインビボで作製するときに十分な免疫原性応答を誘発させることができない場合、そのような抗原(ハプテン)は、抗原性的には中性のキャリアに、例えば、キ−ホールリンペットヘモシアニン(KLH)または血清アルブミン[例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)]のキャリアなどにカップリングすることができる(例えば、米国特許第5189178号および同第5239078号を参照のこと)。ハプテンをキャリアにカップリングすることは、この分野で広く知られている方法を使用して達成することができる。例えば、アミノ基への直接的なカップリングを行うことができ、そして場合により、その後、形成されたイミノ連結の還元を行うことができる。あるいは、キャリアは、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは他のカルボジイミド脱水剤などの縮合剤を使用してカップリングすることができる。リンカー化合物もまた、カップリングを行うために使用することができる;ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーの両方をPierce Chemical Company(Rockford、Ill.)から入手することができる。得られる免疫原性複合体は、その後、マウスおよびウサギなどの好適な哺乳動物対象に注射することができる。好適なプロトコルは、血清における抗体の産生を高めるスケジュールに従ったアジュバントの存在下での免疫原の繰り返される注射を伴う。免疫血清の力価を、この分野で広く知られている免疫アッセイ手法を使用して容易に測定することができる。
【0129】
得られる抗血清はそのまま使用することができ、または、モノクローナル抗体を、本明細書中上記で記載されたように得ることができる。
【0130】
抗体フラグメントは、この分野で広く知られている様々な方法を使用して得ることができる[例えば、HarlowおよびLane、“Antibodies:A Laboratory Manual”、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(1988)を参照のこと)]。例えば、本発明による抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解的加水分解によって、またはフラグメントをコードするDNAの大腸菌細胞もしくは哺乳動物細胞における発現(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞の培養または他のタンパク質発現システム)によって調製することができる。
【0131】
あるいは、抗体フラグメントは、従来の方法による完全な抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。本明細書中上記で記載されたように、(Fab’)抗体フラグメントを、抗体をペプシンで酵素切断して、5Sフラグメントを得ることによって製造することができる。このフラグメントは、チオール還元剤、および場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基に対する保護基を使用してさらに切断して、3.5SのFab’一価フラグメントを生じさせることができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素的切断は、2つの一価Fab’フラグメントと、1つのFcフラグメントとを直接生じさせる。そのような方法を実施するための十分な指針がこの分野の文献に示されている(例えば、Goldenberg、米国特許第4036945号および同第4331647号;Porter,RR.、1959、Biochem.J.、73:119〜126を参照のこと)。抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成させるための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または、他の酵素的技術、化学的技術もしくは遺伝子的技術などもまた、フラグメントが、完全な抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用することができる。
【0132】
本明細書中上記で記載されたように、Fvは、対形成した重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインから構成される。この会合は非共有結合的であり得る(例えば、Inbar他、1972、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69:2659〜62を参照のこと)。あるいは、本明細書中上記で記載されたように、可変ドメインは、分子間ジスルフィド結合によって単鎖Fvを生じさせるために連結することができ、あるいは、そのような鎖は、グルタルアルデヒドなどの化学試薬によって架橋することができる。
【0133】
好ましくは、Fvは単鎖Fvである。
【0134】
単鎖Fvは、ペプチドリンカーをコードするオリゴヌクレオチドによって接続された、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。このような構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、続いて、発現ベクターは、大腸菌などの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞により、リンカーペプチドがこれら2つの可変ドメインを架橋する単一ポリペプチド鎖が合成される。単鎖Fvを製造するための十分な指針がこの分野の文献に示されている(例えば、WhitlowおよびFilpula、1991、Methods、2:97〜105;Bird他、1988、Science、242:423〜426;Pack他、1993、Bio/Technology、11:1271〜77;Ladner他、米国特許第4946778号を参照のこと)。
【0135】
単離された相補性決定領域ペプチドを、目的とする抗体の相補性決定領域をコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のmRNAのRT−PCRによって調製することができる。そのような方法を実施するための十分な指針がこの分野の文献に示されている(例えば、LarrickおよびFry、1991、Methods、2:106〜10を参照のこと)。
【0136】
ヒトの治療または診断の場合、ヒト化抗体が好ましくは使用されることが理解される。非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)のヒト化された形態は、非ヒト抗体に由来する最小限の部分を好ましくは有する遺伝子操作されたキメラな抗体または抗体フラグメントである。ヒト化抗体には、ヒト抗体(レシピエント抗体)の相補性決定領域が、所望される機能性を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の相補性決定領域に由来する残基によって置換されている抗体が含まれる。場合により、ヒト抗体のFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、または取り込まれた相補性決定領域の配列もしくはフレームワーク配列においても、そのいずれにも見出されない残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの可変ドメイン、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、この場合、相補性決定領域のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト抗体の相補性決定領域に対応し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてが、関連したヒトコンセンサス配列のフレームワーク領域に対応する。ヒト化抗体はまた、最適には、典型的にはヒト抗体に由来する、Fc領域などの抗体定常領域の一部を少なくとも含む(例えば、Jones他、1986、Nature、321:522〜525;Riechmann他、1988、Nature、332:323〜329;Presta、1992、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596を参照のこと)。
【0137】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法がこの分野では広く知られている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からヒト化抗体に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、取り込まれた可変ドメインから典型的には選ばれる取り込み残基として示される。ヒト化は本質的には、ヒトの相補性決定領域を齧歯類の対応する相補性決定領域で代用することによって、記載されたように行うことができる(例えば、Jones他、1986、Nature、321:522〜525;Riechmann他、1988、Nature、332:323〜327;Verhoeyen他、1988、Science、239:1534〜1536;米国特許第4816567号を参照のこと)。従って、そのようなヒト化抗体は、完全なヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列によって実質的には置換されていないキメラな抗体である。実際、ヒト化抗体は典型的には、相補性決定領域の数個の残基と、おそらくはフレームワークの数個の残基とが、齧歯類抗体における類似的な部位に由来する残基によって置換されるヒト抗体であり得る。
【0138】
ヒト抗体はまた、この分野で知られている様々な技術を使用して製造することができ、これらには、ファージディスプレーライブラリー[例えば、HoogenboomおよびWinter、1991、J.Mol.Biol.、227:381;Marks他、1991、J.Mol.Biol.、222:581;Cole他、“Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy”、Alan R.Liss、77頁(1985);Boerner他、1991、J.Immunol.、147:86〜95を参照のこと]が含まれる。ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をコードする配列を遺伝子組換え動物(例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウス)に導入することによって作製することができる。抗原性チャレンジのとき、遺伝子再配置、鎖アセンブリーおよび抗体レパートリーを含めてすべての点においてヒトで認められるヒト抗体産生に非常に類似するヒト抗体の産生が、そのような動物において観測される。そのような方法を実施するための十分な指針がこの分野の文献に示されている(例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号、および同第5661016号;Marks他、1992、Bio/Technology、10:779〜783;Lonberg他、1994、Nature、368:856〜859;Morrison他、1994、Nature、368:812〜13;Fishwild他、1996、Nature Biotechnology、14:845〜51;Neuberger、1996、Nature Biotechnology、14:826;LonbergおよびHuszar、1995、Intern.Rev.Immunol.、13:65〜93を参照のこと)。
【0139】
抗体が得られると、抗体は、活性について、例えば、ELISAによって調べることができる。
【0140】
本明細書中上記で記載されたように、本質的に任意の所望される表面マーカーに対して標的化することができる標的化成分を当業者によって得ることができるので、本発明の方法は、本質的に任意のそのような表面マーカーを特異的に示す標的細胞/組織を殺すために用いることができ、そのため、そのような表面マーカーを示す標的細胞/組織に関連する本質的に任意の疾患を治療するために使用することができる。
【0141】
ガンなどの疾患において特異的に発現する表面マーカー、およびそのような表面マーカーに対して特異的な抗体に関する十分な指針がこの分野の文献に示されている(例えば、A M Scott、C Renner、「抗体によって認識される腫瘍抗原」、Encyclopedia of Life Sciences、Nature Publishing Group、Macmillan、London、英国、www.els.net、2001を参照のこと)。
【0142】
好ましくは、本発明の方法は、増殖因子受容体および/または腫瘍関連抗原(TAA)である表面マーカーを特異的に示す標的細胞/組織に関連する疾患を治療するために使用される。
【0143】
増殖因子受容体/TAA表面マーカーを特異的に示す標的細胞/組織に関連する疾患で、本発明の方法による治療を受けやすい疾患には、例えば、EGF受容体、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、インスリン様増殖因子受容体、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、トランスフェリン受容体および葉酸受容体などの増殖因子受容体/TAAを特異的に示す数多くの疾患の一部が含まれる。そのような疾患、および、これらが特異的に示す増殖因子受容体/TAAの具体的な例が下記の表1に示される。
【表1】

【0144】
好ましくは、本発明の方法は、EGF受容体(EGFR)を特異的に示す標的細胞/組織に関連する疾患を治療するために使用される。
【0145】
本発明の方法は、変異型EGFR、またはより好ましくは、野生型EGFRを特異的に示す標的細胞/組織に関連する疾患を治療するために使用することができる。
【0146】
EGFRの特定の変化体/変異型が、多くの場合、様々な悪性腫瘍の細胞/組織において特異的に示される。例えば、Δ(2−7)EGFR[これはまた、この分野ではEGFRタイプIII(EGFRvIII)として示される]は、EGFRの最も一般的な変化体/変異型であり、その細胞外ドメインに欠失を有し、その欠失は、乳ガン、卵巣ガン、前立腺ガンおよび肺ガンと同様に、神経膠芽細胞種において見出される新しい腫瘍特異的な標的の形成をもたらしている。本発明の方法に従ってそのような疾患を治療するための標的化成分を作製するために好適である、このEGFR変化体に対して特異的な抗体は、入手可能であり、または、新たに作製することができる(Kuan他、2000、Brain Tumor Pathol.、2000;17:71〜8)。
【0147】
本発明の教示に従って悪性の疾患を治療するための標的化成分として好適である、米国FDAによって承認されたヒト抗体の例が、下記の表2に記載される。
【表2】

【0148】
好ましくは、野生型EGFRを特異的に示す標的細胞/組織に関連する疾患を治療する場合、標的化成分はEGF(EGFRの生物学的リガンド)である。
【0149】
本発明の方法は、本質的には任意のタイプの分化系譜に由来する標的細胞/組織を殺すために使用することができる。
【0150】
好ましくは、本発明の方法は、神経系に由来する標的細胞/組織タイプ(より好ましくはグリア細胞/組織、より好ましくは悪性のグリア細胞/組織、最も好ましくは神経膠芽細胞腫の細胞/組織)を殺すために使用される。
【0151】
好ましくは、そのような特定の細胞タイプおよび/または組織タイプはヒトの細胞/組織である。
【0152】
下記の実施例の節において記載および例示されるように、EGFと会合したdsRNA分子を含む本発明の組成物は、EGFRを特異的に示すヒト神経膠芽細胞腫の標的細胞/組織を、そのような組織を有する哺乳動物対象において最適に効果的に、迅速に、かつ選択的に殺すことを達成するために、実施例の節に示されるプロトコルに従って使用することができる。
【0153】
従って、本発明の方法は、野生型EGFRなどの増殖因子受容体/TAAを特異的に発現する細胞/組織に関連する、神経膠芽細胞腫などの悪性腫瘍をヒト対象において治療するために最適である。
【0154】
本明細書中上記で記載されたように、本発明の方法は、特異的な表面マーカーを示す標的細胞/組織に関連する本質的には任意の疾患を治療するために使用することができる。そのような疾患にはさらに、例として、自己免疫疾患、移植関連疾患(移植片拒絶、移植片対宿主病)、およびアレルギー性疾患が含まれ、この場合、その病理発生を媒介する免疫エフェクター細胞が、本発明の方法に従ってそのような疾患を治療するように標的化され得る特異的な抗原受容体(T細胞受容体、B細胞受容体、マスト細胞により示されるFcεR:IgE複合体)を示す。
【0155】
当業者に知られている様々な方法を、本発明の細胞傷害活性を調べるために用いることができる。例えば、そのような細胞傷害活性は、アポトーシスをアッセイするために使用される様々なアッセイのいずれかによってインビトロで試験することができる。好ましくは、dsRNAにより誘導されるアポトーシスのそのような測定が、下記の実施例の列において記載されるように行われる。
【0156】
あるいは、組成物による治療に対する応答におけるPKRの活性化を調べるためのアッセイを用いることができる。この分野で記載される様々なアッセイを、PKRの活性化を調べるために用いることができる(例えば、Shir,A.およびLevitzki,A.、2001、Cell Mol.Neurobiol.、21、645〜56を参照のこと)。
【0157】
好ましくは、本発明の組成物は、dsRNA分子による標的細胞/組織の最適な殺傷を容易にするために役立つ核酸キャリアをさらに含む。
【0158】
dsRNA分子による標的細胞/組織の最適な殺傷を容易にするために、dsRNA分子と非細胞質環境との化学的相互作用を妨げることができ、および/または、標的細胞/組織の細胞質へのdsRNA分子の送達を容易にすることができ、最も好ましくは両者が可能である核酸キャリアが選択される。dsRNAの細胞傷害効果は細胞質内で媒介されるので、標的細胞/組織の細胞質へのdsRNAの送達を容易にする核酸キャリアは標的細胞/組織の最適な殺傷を容易にする。さらに、dsRNA分子と非細胞質環境(特に血清など)との化学的相互作用を妨げる核酸キャリアは、非細胞質環境によるdsRNA分子の分解をインビボおよびインビトロで妨げるために、また、標的でない細胞/組織に対するdsRNA分子の非特異的な接着を妨げるために役立ち得る。また、組成物が対象に投与されたとき、そのような核酸キャリアは、対象においてdsRNA分子により開始される望ましくない副作用(例えば、dsRNA分子に向けられた免疫/炎症性応答など)の可能性を最小限に抑える。
【0159】
様々な核酸キャリアを、本発明の教示に従って、適用および目的に依存して用いることができる。
【0160】
好ましくは、核酸キャリアは、ポリカチオン性ポリマー、非イオン性水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマー、および/または生体適合性ポリマーを含み、最も好ましくは、それらのすべてを含む。
【0161】
標準的な技術分野知識によれば、ポリカチオン性ポリマーは、その分布する正の静電荷電によって、本発明の方法を実施するための様々な好都合な特長をもたらす。例えば、ポリカチオン性ポリマーは、負の静電荷電が分布しているポリアニオン性ポリマーであるdsRNA分子と非共有結合的に最適に会合し、それによりdsRNA分子の負の静電荷電の中和を促進し、従って、非細胞質環境と化学的に相互作用するdsRNAの何らかの傾向を中和する能力を有する。さらに、十分な正荷電を有するポリカチオン性ポリマーは、細胞膜に接着しやすく、エンドソームによる取り込み、および、それに続く、エンドソームの膜分解のときにおけるdsRNAの細胞質送達を受ける正荷電のdsRNA:ポリカチオン性ポリマー複合体の形成を促進させる。さらに、ポリカチオン性ポリマーは、dsRNAとのその非共有結合的な会合の結果として、細胞質環境のもとでdsRNAから物理的に隔てることができ、それにより、dsRNAが殺細胞を最適に活性化することを可能にする。
【0162】
本発明の方法は、適用および目的に依存して、核酸(例えば、本発明のdsRNA分子など)を細胞に送達するために好適な様々なポリカチオン性ポリマーのいずれかを含む核酸キャリアを使用して実施することができる。
【0163】
好ましくは、ポリカチオン性ポリマーはポリエチレンイミン(PEI)である。
【0164】
あるいは、ポリカチオン性ポリマーは、例えば、ポリ−L−リシンであり得る。
【0165】
本発明のポリエチレンイミンは、本明細書中下記および下記の実施例の節において記載されるように、適用および目的に依存して、化学的組成および/または分子量の様々な組合せのいずれかによって特長づけられ得る。
【0166】
標的細胞/組織(例えば、本発明の細胞/組織など)内への核酸(例えば、本発明のdsRNA分子など)のトランスフェクションを容易にするためにポリカチオン性ポリマーを使用するための十分な指針がこの分野の文献に示されている(例えば、Kichler他、2001、J.Gene Med.、3:135〜44;Lecocq他、2000、Biochem Biophys Res Commun.、278:414〜8;Marschall他、1999、Gene Ther.、6:1634〜7を参照のこと)。
【0167】
本明細書中上記で記載されたように、核酸キャリアはまた、好ましくは、非イオン性水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマーおよび/または生体適合性ポリマーを含み、最も好ましくは、それらのすべてを含む。
【0168】
核酸キャリアは、好都合には、様々な非イオン性の水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマーおよび/または生体適合性ポリマーのいずれかを含むことができる。
【0169】
好ましくは、核酸キャリアは、ポリ(エチレングリコール)(これはまた、この分野ではPEGまたはポリエチレングリコールとして示される)、すなわち、生体適合性の非イオン性/水溶性ポリエーテルポリマーを含む。
【0170】
ポリ(エチレングリコール)は、薬物をインビボで運搬するための最も広く使用されている生物学的に不活性なポリマーの1つである。PEGは、薬学的適用のためのPEG−タンパク質共役共役、ならびに、細胞カプセル化のためのPEGヒドロゲル、薬物送達および細胞精製を含む様々な生物医学的適用において広範囲の用途を有する。PEGは、水溶液およびほとんどの有機溶液において優れた溶解性を有する。生物学的には、PEGは、毒性および免疫原性がないだけでなく、有利な薬物動態学および組織分布を有する。PEGの最も望ましい特長の1つが、インビボ投与のための米国食品医薬品局(FDA)によるその承認である。本発明の方法を実施するためにPEGを選択および利用するための十分な指針がこの分野の文献において得ることができる[一般的な指針については、例えば、Zalipsky,S.、Harris,J.M.、1997、Introduction to Chemistry and Biological Applications of Poly(ethylene glycol)、Poly(ethylene glycol) Chemistry and Biological Applications、アメリカ化学会、San Francisco、CA(1頁〜11頁)を参照のこと;PEGを分子(例えば、治療用核酸およびポリペプチドなど)に共有結合的に結合するための指針については、例えば、Molineux G.、2002、Cancer Treat Rev.、28 Suppl A:13〜6;Harris JM.およびChess RB.、2003、Nat Rev Drug Discov.、2:214〜21;Sato H.、2002、Adv Drug Deliv Rev.、54:487〜504;Roberts他、2002、Adv Drug Deliv Rev.、54:459〜76を参照のこと)。PEGに対する分子の共有結合的結合は、この分野では「ペグ化」と呼ばれることがある。
【0171】
本発明のPEGは、本明細書中下記および下記の実施例の節において記載されるように、適用および目的に依存して、化学的組成および/または分子量の様々な組合せのいずれかによって特長づけられ得る。
【0172】
好ましくは、本発明のPEGは、0.34kDa〜34kDaの範囲から選択される分子量を有し、最も好ましくは3.4kDaの分子量を有する。
【0173】
好ましくは、本発明のPEGは本発明のポリエチレンイミンと共有結合的に会合させられる。
【0174】
好ましくは、本発明のポリエチレンイミンを本発明のPEGに共役化するとき、ポリエチレンイミンは分岐しており、分子量が2.5kDa〜250kDaであり、最も好ましくは約25kDaである。好ましくは、本発明の25kDaのPEIは、光散乱によって測定されたとき、25kDaの分子量を有する。そのようなポリエチレンイミンと本発明のPEGとの共有結合的な会合は、好ましくは、下記の実施例の節に記載されるように行われる。
【0175】
本明細書中で使用される用語「約」は±10%を示す。
【0176】
下記の実施例の節において記載されるように、ポリエチレンイミン(2kDa)と共有結合的に会合したPEGを含む組成物は、本発明の方法を効果的に実施するために使用することができる。
【0177】
dsRNA分子による標的細胞/組織の最適な殺傷を容易にするために、本発明の組成物は、好ましくは、エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物をさらに含む。
【0178】
本発明の組成物は一般に標的細胞/組織のエンドソームに細胞内取り込みされるので、エンドソーム膜の分解を促進させることができるそのような化合物は、標的細胞/組織のエンドソームからその細胞質内へのdsRNA分子の放出を促進させることが理解される。その結果として、これは、細胞傷害性を最適に媒介するために細胞質局在化を必要とする、dsRNA分子による標的細胞/組織の殺傷を高める。
【0179】
エンドソーム膜の分解を促進させることができる様々な化合物(これは以降、「膜アンタゴニスト」と呼ばれる)はどれも用いることができる。
【0180】
好ましくは、膜アンタゴニストはメリチンまたはメリチン誘導体である。
【0181】
メリチンは、ハチ毒針毒液の膜溶解性成分であるカチオン性ペプチドである(Dempsey,C.E.、1990、Biochem.Biophys.Acta、1031、143〜161)。標的細胞/組織(例えば、本発明の細胞/組織)内への核酸(例えば、本発明のdsRNA分子など)のトランスフェクションを容易にするためにメリチンを使用するための十分な指針がこの分野の文献に示されている(例えば、Ogris他、2001、J.Biol.Chem.、276、47550〜47555を参照のこと)。
【0182】
好ましくは、メリチンまたはメリチン誘導体は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むペプチドである。配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドが、一般に、この分野ではメリチンと呼ばれている。
【0183】
本明細書中で使用される用語「ペプチド」は、51個未満のアミノ酸残基または修飾されたアミノ酸残基からなるポリペプチドを示す。
【0184】
あるいは、膜アンタゴニストは、エンドソーム膜の分解を促進させることができる様々なアミノ酸配列のいずれかを含むペプチドであり得る。
【0185】
本発明によるペプチドを得ることおよび利用するための指針が本明細書中下記において示される。
【0186】
膜アンタゴニストは様々な方法のいずれかで組成物に配合することができる。
【0187】
好ましくは、膜アンタゴニストは、本発明のポリカチオン性ポリマー(より好ましくは本発明のポリエチレンイミン、より具体的には、分子量が0.2kDa〜20kDaの範囲から選択されるポリエチレンイミン、最も好ましくは、分子量が約2kDaであるポリエチレンイミン)と共有結合的に会合させられる。
【0188】
膜アンタゴニストは様々な方法のいずれかで本発明のポリカチオン性ポリマーと共有結合的に会合させることができる。
【0189】
好ましくは、膜アンタゴニストは、下記の実施例の節に記載されるプロトコルに従って本発明のポリカチオン性ポリマーと共有結合的に会合させられる。
【0190】
下記の実施例の節において記載および例示されるように、ポリエチレンイミン(2kDa)と共有結合的に会合した、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの、本発明の組成物における取り込みは、様々なインビトロ状況およびインビボ状況において標的細胞/組織を殺す組成物の能力を著しく高める。
【0191】
本明細書中上記で議論されたように、膜アンタゴニストは、様々なアミノ酸配列のいずれかを含むペプチドであり得る。
【0192】
本明細書中で使用される用語「ペプチド」は、天然ペプチド(分解産物、合成的に合成されたペプチドまたは組換えペプチドのいずれでも)、およびペプチド模倣体(典型的には、合成的に合成されたペプチド)(例えば、ペプチドアナログであるペプトイドおよびセミペプトイドなど)を包含し、これらは、例えば、ペプチドを体内またはインビトロにおいてより安定にする修飾、あるいは、標的細胞/組織の細胞質内への浸透をより可能にする修飾を有することができる。そのような修飾には、限定されないが、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合の修飾(これには、CH−NH、CH−S、CH−S=O、O=C−NH、CH−O、CH−CH、S=C−NH、CH=CHまたはCF=CHが含まれるが、これらに限定されない)、骨格の修飾、および残基の修飾が含まれる。ペプチド模倣体化合物を調製するための様々な方法がこの分野では広く知られており、例えば、Quantitative Drug Design、C.A.Ramsden Gd.、第17.2章、F.Choplin Pergamon Press(1992)に具体的に記載される。
【0193】
ペプチド内のペプチド結合(−CO−NH−)を、例えば、N−メチル化結合(−N(CH)−CO−)、エステル結合(−C(R)H−C−O−O−C(R)−N−)、ケトメチレン結合(−CO−CH−)、α−アゾ結合(−NH−N(R)−CO−)(式中、Rは任意のアルキルであり、例えば、メチルである)、カルバ結合(−CH−NH−)、ヒドロキシエチレン結合(−CH(OH)−CH−)、チオアミド結合(−CS−NH−)、オレフィン性二重結合(−CH=CH−)、逆アミド結合(−NH−CO−)、ペプチド誘導体(−N(R)−CH−CO−)(式中、Rは、自然の状態では炭素原子上に存在する「通常の」側鎖である)によって置換することができる。
【0194】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合の任意のところに、そして同時に数個(2個〜3個)でさえも、存在させることができる。
【0195】
天然の芳香族アミノ酸(Trp、TyrおよびPhe)を、合成された非天然型の酸、例えば、TIC、ナフチルアラニン(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体、またはo−メチル−Tyrなどに置換することができる。
【0196】
上記に加えて、本発明のペプチドはまた、1つまたは複数の修飾されたアミノ酸、あるいは1つまたは複数の非アミノ酸モノマー(例えば、脂肪酸、複合炭水化物など)を含むことができる。
【0197】
ここで、本明細書および下記の請求項の節において使用される用語「アミノ酸(“amino acid”または“amino acids”)」は、20個の天然に存在するアミノ酸;多くの場合にはインビボで翻訳後修飾されたそのようなアミノ酸(これらには、例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンおよびホスホトレオニンが含まれる);および他の非通常型アミノ酸(これには、2−アミノアジピン酸、ヒドロキシリシン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシンおよびオルニチンが含まれるが、これらに限定されない)を包含することが理解される。さらに、用語「アミノ酸」はD−アミノ酸およびL−アミノ酸の両方を包含する。
【0198】
下記の表3および表4には、本発明とともに使用され得る天然に存在するアミノ酸、および非通常型または修飾されたアミノ酸がそれぞれ示される。
【0199】
本発明のペプチドは、線状形態または環状形態で利用することができる。
【0200】
ペプチドは環状形態で合成することができ、または、好適な条件のもとで環状構造を取るようにすることができる。
【0201】
例えば、本発明の教示によるペプチドは、コアペプチド配列の両側に存在する少なくとも2つのシステイン残基を含むことができる。この場合、環化を、これら2つのCys残基の間にS−S結合を形成することによって生じさせることができる。側鎖対側鎖の環化はまた、式−(−CH−)n−S−CH−C−(式中、n=1または2)の相互作用結合の形成によって生じさせることができ、これは、例えば、CysまたはホモCysを取り込み、そのフリーのSH基を、例えば、ブロモアセチル化されたLys、Orn、DabまたはDapと反応することによって可能である。さらに、環化は、例えば、Glu、Asp、Lys、Orn、ジアミノ酪酸(Dab)、ジアミノプロピオン酸(Dap)を鎖内の様々な位置に取り込むことによる、例えば、アミド結合の形成(−CO−NH−結合または−NH−CO−結合)によって得ることができる。骨格対骨格の環化もまた、式H−N((CH)n−COOH)−C(R)H−COOHまたは式H−N((CH)n−COOH)−C(R)H−NH)(式中、n=1〜4であり、さらに、Rはアミノ酸の任意の天然側鎖または非天然側鎖である)の修飾アミノ酸を取り込むことによって得ることができる。
【表3】

【表4】



【0202】
従って、本発明の方法は、特異的な表面マーカーを示す本質的に任意の標的細胞/組織を、最適な有効性、迅速性および選択性を伴って殺すために使用することができ、従って、神経膠芽細胞腫(すなわち、ヒト脳ガンの最も悪性で、難治性で、かつ致死性の形態)に関して下記の実施例の節において明らかにされるように、本質的に任意のそのような疾患を、最適な有効性、迅速性および安全性を伴って対象において治療するために使用することができる。
【0203】
本明細書中上記で記載されたように、本発明の組成物は、そのものとして、または医薬組成物における有効成分として使用することができる。
【0204】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、他の化学的成分、例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤などとの調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物への有効成分の投与を容易にすることである。
【0205】
本明細書中において、用語「有効成分」は、その生物学的作用を説明することができる組成物を示す。
【0206】
以降、表現「生理学的に許容され得るキャリア」および表現「医薬的に許容され得るキャリア」は、相互に交換可能に使用され得るが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された有効成分の生物学的な活性および性質を阻害しないキャリアまたは希釈剤を示す。佐剤がこれらの表現に包含される。
【0207】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0208】
薬物の配合および投与のための様々な技術が“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出され得る(これは参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0209】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、経鼻送達、腸管送達または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および頭蓋内注射、ならびに、くも膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射、眼内注射または頭蓋内注射が含まれる)が含まれ得る。
【0210】
あるいは、本明細書中上記で記載されたように、医薬組成物は、全身的様式ではなく、局所的様式で、例えば、医薬組成物を患者の組織領域内に直接的に注射することによって投与することができる。
【0211】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0212】
従って、本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用され得る調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容され得るキャリアを使用して従来の様式で配合され得る。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0213】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的塩緩衝液など)において配合することができる。経粘膜投与の場合、透過すべきバリアに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0214】
経口投与の場合、医薬組成物は、有効成分を、この分野で広く知られている医薬的に許容され得るキャリアと組み合わせることによって容易に配合され得る。そのようなキャリアは、医薬組成物が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物を、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
【0215】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、有効成分の量を明らかにするために、または有効成分の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0216】
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。また、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0217】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0218】
鼻吸入による投与の場合、本発明に従って使用される有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、有効成分および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0219】
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、また、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0220】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態での活性な調製物の水溶液が含まれる。また、有効成分の懸濁物を適切な油性または水系の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0221】
あるいは、有効成分は、好適なビヒクル(例えば、無菌のパイロジェン非含有水に基づく溶液)を使用前に用いて構成される粉末形態にすることができる。
【0222】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0223】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、有効成分が、その意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、治療されている対象の障害(例えば、虚血)の症状を防止または緩和または改善するために効果的であるか、あるいは、治療されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(組成物)の量を意味する。
【0224】
治療効果的な量の決定は、特に本明細書中に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0225】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、治療効果的な量または用量は、最初はインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量を、所望される濃度または力価を達成するために、動物モデルにおいて定めることができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0226】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、インビトロ、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって明らかにすることができる。これらのインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用される投薬量範囲を定める際に使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”、第1章、1頁を参照のこと)。
【0227】
投薬量および投薬間隔は、標的細胞/組織の殺傷を達成するために十分である有効成分の血漿中レベルまたは脳内レベル(最小有効濃度、MEC)をもたらすために個々に調節することができる。MECは、それぞれの調製物について変化し、しかし、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個体の特性および投与経路に依存する。様々な検出アッセイを、血漿中濃度を測定するために使用することができる。
【0228】
治療される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬はまた、単回または複数回の投与であり得る。この場合、治療の経過は、数日から数週間まで、または、治癒が達成されるまで、もしくは、疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0229】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、治療されている対象、病気の重篤度、投与様式、処方医師の判断などに依存する。
【0230】
本発明の組成物は、所望される場合には、有効成分を含有する1つ以上の単位投薬形態物を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーデバイスにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物に対する米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用キャリアに配合された本発明の調製物を含む組成物はまた、さらには上記で詳しく記載されているかのように、適応状態を治療するために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。
【0231】
本発明のさらなる目的、利点および新規な特長が、限定であることが意図されない下記の実施例を検討したとき、当業者に明らかになる。また、本明細書中上記で説明され、また、下記の請求項の節において特許請求される発明の様々な実施形態および態様はそれぞれが、下記の実施例において実験的裏付けが見出される。
【実施例】
【0232】
ここでは、上記説明と共に以下の実施例を参照して、非限定的様式で本発明を例示する。
【0233】
一般に、本明細書中で使用した用語および本発明で使用した実験手順には、分子、生化学、微生物学、および組換えDNAの技術が含まれる。このような技術は、文献で完全に説明されている。例えば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual”、Sambrookら、1989;“Current Protocols in Molecular Biology”、第I〜III巻、Ausubel,R.M.編1994;Ausubelら、“Current Protocols in Molecular Biology”、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland、1989;Perbal,“A Practical Guide to Molecular Cloning”、John Wiley&Sons、New York、1988;Watsonら、“Recombinant DNA”、Scientific American Books、New York;Birrenら編、“Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”、第1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、1998;米国特許第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号、および同第5272057号に記載の方法;“Cell Biology: A Laboratory Handbook”、第I〜III巻、Cellis,J.E.編、1994;“Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique”、Freshney、Wiley−Liss、N. Y.、1994、第3版;“Current Protocols in Immunology”、第I〜III巻、Coligan J.E.編、1994;Stitesら編、“Basic and Clinical Immunology”、第8版、Appleton&Lange、Norwalk,CT、1994;Mishell and Shiigi編、“Selected Methods in Cellular Immunology”、W.H.Freeman and Co.、New York、1980を参照のこと;利用可能な免疫アッセイは、特許および化学論文に広く記載されており、例えば、米国特許第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号、および同第5281521号;“Oligonucleotide Synthesis”、Gait,M.J.編、1984;“Nucleic Acid Hybridization”、Hames,B.D.and Higgins S.J.編、1985;“Transcription and Translation”、Hames,B.D.and Higgins S.J.編、1984;“Animal Cell Culture”、Freshney,R.I.編、1986;“Immobilized Cells and Enzymes”、IRL Press、1986;“A Practical Guide to Molecular Cloning”、Perbal,B.、1984および“Methods in Enzymology”、第1〜317巻、Academic Press、“PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”、Academic Press、San Diego,CA、1990;Marshakら、“Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual”、CSHL Press、1996(その全てが本明細書中に完全に記載されているかのように参照として援用される)を参照のこと。他の一般的引例を、本明細書中に記載する。引例中の手順は当該分野で周知であると考えられ、読者の都合のために記載する。
【0234】
他に規定されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で記述される方法及び材料と同様の又は等価の方法及び材料は本発明の実施又は試験のために用いられることができるが、好適な方法及び材料が以下に記述される。
【0235】
(実施例1)
神経膠芽細胞腫の細胞/組織の最適に効率的で、迅速で、かつ選択的なdsRNA媒介による殺傷
背景:特異的な細胞表面マーカーを示す細胞/組織によって特長づけられる疾患には、それらに対する満足すべき治療が得られていない、非常に大きい経済的および医学的な影響を有する数多くの疾患(例えば、上皮増殖胃因子受容体(EGFR)を過剰発現する多形性神経膠芽細胞腫など)が含まれる。特異的な表面マーカーを示す細胞/組織(例えば、悪性神経膠腫の細胞/組織など)を選択的に殺すための最適な方策は、dsRNA(非常に詰まったウイルスベクター不透過性の腫瘍組織(例えば、神経膠芽細胞腫の組織など)を最適に透過し、内部深くに存在する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導することができる最適に小さい細胞傷害性の化合物)によると考えられる。様々な先行技術方法では、特異的な表面マーカーを示す細胞を選択的に殺すためにdsRNAを使用することが試みられているが、そのような方法はすべて、最適でない効力、安全性および/または選択性を含む様々な重大な欠点により損なわれている。本発明を実施に移しているとき、下記に記載されるように、特異的な表面マーカーを示す細胞/組織をインビボで効果的、安全かつ選択的に殺す方法が、予想外にも発見され、それにより、先行技術の制限を克服した。
【0236】
材料および方法:
特異的な表面マーカーを示す細胞(すなわち、上皮増殖因子受容体(EGFR)を過剰発現する類表皮ガン細胞、直腸ガン細胞または腎臓ガン細胞)の選択的なトランスフェクションが、共有結合的にカップリングされたポリエチレンイミン(PEI)−上皮増殖因子(EGF)キャリア、または共有結合的にカップリングされたPEI−EGF−ポリ(エチレングリコール)(PEG)キャリアとのDNA発現ベクターの複合体化を使用して、最近、報告されている(Ogris,M.他、2001、AAPS PharmSci、3:E21)。これらの研究では、キャリアにおけるEGFの取り込みが、上皮増殖因子受容体(EGFR)を示す腫瘍細胞においてトランスフェクション効率の300倍までの増大をもたらしたことが示された。そのような観測結果が、EGF共役化キャリアと複合体化された二本鎖RNA(dsRNA)を製造し、EGFR陽性の神経膠芽細胞腫の細胞をインビトロで、また、そのような組織をインビボで最適に効果的で、迅速かつ選択的に殺すためにそのような複合体とのトランスフェクションを使用する方法を記述する下記のプロトコルの基礎となった。
【0237】
細胞株:用いられた細胞株には、ヒト神経膠芽細胞腫の細胞株U87MG、野生型EGF受容体(EGFR)を発現するその誘導体U87MGwtEGFR、および、Δ(2−7)EGFR(EGFと特異的に結合することができない、短縮された細胞外ドメインを有するEGFR変異型)を発現するその誘導体U87MGΔEGFRが含まれる。U87MG、U87MGwtEGFRおよびU87MGΔEGFRの細胞株は以前に記載されている(Shir,A.およびLevitzki,A.、2002、Nat.Biotechnol.、20、895〜900)。
【0238】
レンチウイルスベクターおよびトランスフェクション:緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするレンチウイルスベクターを、以前の記載(Naldini,L.他、1996、Science、272、263〜7)のように、ベクターSIN−PGKをプラスミドpMD.DおよびプラスミドpCMVDR8.91(Zufferey,R.他、1997、Nat.Biotechnol.、15、871〜5)と一緒に293T細胞株に同時トランスフェクションすることによって作製した。ベクターSIN−PGKはPGKプロモーターの制御下にGFPをコードしており、これにより、ウイルス力価および感染効率を感染細胞の蛍光顕微鏡分析またはFACS分析によって都合よく計算することを可能にする。
【0239】
pIC:キャリア複合体の成分:長さが100リボヌクレオチド〜300リボヌクレオチドのRNA鎖を有する合成されたポリイノシン酸−ポリシチジル酸複合体(pIC)の形態における二本鎖RNA(dsRNA)をPharmacia−Amershamから得た。FuGENE6トランスフェクション試薬をRocheから得た。共有結合的に共役化されたポリエチレンイミン(PEI)25−ポリ(エチレングリコール)(PEG)−上皮増殖因子(EGF)およびPEI−メリチン(MEL)のdsRNAキャリアを下記のように合成した。
【0240】
共有結合的に共役化されたPEI25−PEG−EGFキャリアの調製:
共有結合的に共役化されたPEI25−PEG−EGFキャリアを調製するための一般的な指針が、Current Protocols In Human Genetics(増刊11、章:遺伝子治療様ベクター(12.3.17〜12.3.18)、John Wiley&Sons,Inc.、1996)に示されている。
【0241】
試薬:光散乱によって測定されたときに25kDaの平均分子量を有する分岐型ポリエチレンイミン(PEI)(PEI25)およびスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)をSigma−Aldrich(Munich、ドイツ)から購入した。N−ヒドロキシスクシンイミジルポリエチレングリコールマレイミド(NHS−PEG−MAL、分子量=3.4kDa)をNektar Therapeuticsから得た(http://www.nektar.com)。化合物NHS−PEG−MALは、好適な反応基を有する成分をPEGに共役化するために使用される。組換えマウス上皮増殖因子(EGF)をPepro Tech EC Ltd.(London、英国)から購入した。
【0242】
液体クロマトグラフィー:液体クロマトグラフィーが、Waters626ポンプおよび996ダイオードアレイ検出器を使用して行われた。
【0243】
PEIの定量:共役体のPEI含有量が、以前の記載(Snyder,S.L.およびSobocinski,P.Z.、1975、Anal.Biochem.、64、284〜288)のように、405nmにおいて2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)アッセイによって分光測定法により測定された。
【0244】
ジチオピリジンリンカーの量の決定:共役化のためにPEI25において生じ得るジチオピリジンリンカーの量が、ジチオスレイトール(DTT)を用いてアリコートを還元した後、続いて、放出されたピリジン−2−チオンの343nmでの吸収測定(ε=8080/Mcm)を行うことによって決定された。
【0245】
NHS−PEG−MALにおける反応性マレイニミド基の定量:NHS−PEG−MALにおける反応性マレイニミド基の量が、300nmにおける吸光度(A300)の関数として分光光度法により計算された。水における1mg/mlのNHS−PEG−MALの溶液は1cmの光路長について0.15のOD300を有する。PEI25−PEG−MAL共役体における反応性マレイニミド基の量が、10マイクロリットルの1モルDTT溶液を100マイクロリットルのサンプルに加える前およびその後でのA300の差によって同様に計算された(DTTの添加は電子の脱局在化によりマレイニミド基のA300を除く)。
【0246】
EGF濃度の定量:可溶性の組換えEGFの濃度が、溶液におけるEGFの吸収を280nmで測定することにより計算された:水における1mg/mlのEGFの溶液は3.1のOD(1cmの光路長)をもたらす。
【0247】
EGF−PDP共役体におけるEGFおよびジチオピリジンのモル比が280nmおよび340nmにおいて分光光度法により決定される。ジチオピリジンの量については、吸収が340nmにおいて測定される(上記参照)。共役体の最初の吸収が280nmにおいて測定される(A280);280nmにおけるジチオピリジンの吸収を補正するために、この値は下記の式によって補正される:
式1:A280a=A340(DTT存在)×5.1/8.1
式2:修正A280=A280−A280a
【0248】
式2の結果が、EGFの最終濃度を計算するために使用される。
【0249】
Ellmanアッセイが、例えば、以前の記載(Kousba AA.、Poet TS、Timchalk C.、2003、Toxicology、188:219〜32)のように、EGF−SFにおけるメルカプト基の決定のために使用される。
【0250】
PEI25−PEG−MALの合成:ゲルろ過(Sephadex G−25、スーパーファイン;Amersham Biosciences)により得られたPEI25の1.6マイクロモル量を0.25MのNaClに溶解して、HClの慎重な添加によってpH4.4に調節した。0.4mlの水に溶解された6.4マイクロモル量のNHS−PEG−MALを加えた。室温で1時間反応した後、塩濃度を1M NaClに調節した。この混合物をカチオン交換カラム(Macro−prep High S;10/10;BioRad、Munchen、ドイツ)に負荷し、20mM酢酸ナトリウム(pH4.5)における1M〜3MのNaClの塩勾配を0.5ml/分の流速とともに使用して分画した。分画化は、緩衝液A(20mM酢酸ナトリウム、pH4.5)および緩衝液B(3M NaCl、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5)を使用して下記のように行われた:時間=0〜15分:56%緩衝液A、44%緩衝液B;時間=15〜20分:44%〜100%の緩衝液B;時間=20〜60分:100%の緩衝液B。検出器は240nmおよび300nmに設定され、生成物が時間=40〜50分で溶出された。PEI25および反応性マレイニミド基のモル比は1:1.6であった。
【0251】
EGF−PDPの合成:5mg量のEGF(分子量=6kDa)を20mMのHEPES(pH7.1)(アルゴンで脱気)に対して一晩透析した。0.5マイクロモル量のEGFと、100%エタノールにおける10mMストック液からの5マイクロモル量のスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP;Sigma−Aldrich(Munchen、ドイツ)から購入)とを混合した。混合物におけるエタノールの濃度は約33%(v/v)であった。室温で3時間後、反応混合物をゲルろ過カラム(G−10;HR10/30カラム、Amersham Biosciences、ドイツ;20%エタノールを含む20mMのHEPES、pH7.1)に負荷した。300nmにおいて検出される生成物(4ml)が時間=18〜26分で溶出された。収量は、0.77マイクロモルのジチオピリジンで修飾されたEGFについて3.36mgであった。
【0252】
EGF−SHの合成:0.56マイクロモル量のEGFを100マイクロリットルの水における50当量のDTTと混合した。室温で5分後、反応混合物をゲルろ過カラム(G−10;HR10/30カラム、Amersham Biosciences、ドイツ;20%エタノールを含む20mMのHEPES、pH7.1)に負荷した。280nmにおいて検出される生成物(5.5ml)が時間=17〜28分で溶出された。EGF対−SH基のモル比は1:1.82であった。
【0253】
PEI25−PEG−EGFの合成:0.51マイクロモルのチオール基を含有する0.28マイクロモル量のEGFを、0.51マイクロモルの反応性マレイニミド基を含有するPEI25−PEG−MALとアルゴン下で混合した。反応混合物の最終的なpHは6であり、最終的な塩濃度は0.3M NaClであった。室温で26時間インキュベーションした後、反応混合物の塩濃度を3MのNaClで0.5Mに調節し、反応混合物をカチオン交換カラム(Macro−prep High S;10/10;BioRad、Munchen、ドイツ)に負荷し、0.5ml/分の流速および280nmで設定された検出器を使用して、20mMのHEPES(pH7.1)における0.5M〜3Mの塩勾配を用いて分画化した。分画化は、緩衝液A(20mM HEPES、pH7.1)および緩衝液B(20mM HEPES(pH7.1)、3M NaCl)を使用して下記のように行われた:時間=0〜20分:78%緩衝液A、22%緩衝液B;時間=20〜80分:22%〜100%の緩衝液B;時間=80〜90分:100%の緩衝液B。共役体が2.4M〜3MのNaClで溶出された(10mlがプールされた)。イソクラティック部分での分画物(時間=10〜28分、生成物B)もまたプールされた(9ml)。生成物はHBS緩衝液(20mM HEPES(pH7.1)、150mM NaCl)(pH7.3、アルゴンで脱気)に対して4℃で一晩透析された。共役体におけるEGFの量(0.65mg)および生成物BにおけるEGFの量(0.98mg)が280nmにおいて分光光度法により決定された。共役体におけるPEI25の濃度(136nmol)および生成物BにおけるPEI25の濃度(38nmol)が405nmにおいてTNBSアッセイによって分光光度法により決定された。共役体におけるEGF対PEI25のモル比は0.8:1であった。
【0254】
PEI−Mel共役キャリアの調製:
試薬およびアッセイ:
分子量が2kDaであるポリエチレンイミン(PEI)およびスクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)をSigma−Aldrich(Munchen、ドイツ)から購入した。アミノ酸配列CIGAVLKVLTTGLPALISWIKRKRQQ(配列番号1)を有するペプチドのメリチン(Mel)を含む化合物D−Mel−SH(分子量=2893.6)をArnold博士(ミュンヘン大学遺伝子センター)から得た。
【0255】
共役体の液体クロマトグラフィー:共役体の液体クロマトグラフィーが、Amersham−Biosciences AKTAシステムを用いて行われた。共役のPEI含有量が405nmにおいてTNBSアッセイによって分光光度法により決定された。メリチン含有量が吸光係数(e280nm=5570)によって決定された。共役化のためにPEIにおいて利用可能なジチオピリジンリンカーの量が、ジチオスレイトール(DTT)でアリコートを還元した後、続いて、放出されたピリジン−2−チオンの343nmにおける吸収測定を行うことによって決定された。
【0256】
PEI−PDPの合成:100mg/mlのPEIストック溶液からの10マイクロモル量のPEIをHClでpH7.1に調節し、0.2mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解された20マイクロモル量のSPDPと混合し、体積を250mM NaCl/50mM HEPES(pH7.1)で1mlに調節した。混合物を室温で2時間インキュベーションし、続いてゲルろ過カラム(Sephadex G−10;HR10/30カラム、Amersham Biosciences、ドイツ;1/10 HBS[15mM NaCl、2mM HEPES、pH7.1])に負荷した。生成物が時間=8〜10分で溶出された(3ml)。11mgのPEI(5.5mM)および5.52mMのジチオピリジンリンカーを含有する生成物の1mlサンプルが得られた。
【0257】
PEI−Melの合成:7mg量のD−Mel−SHを100mM HEPES(pH7.4)、500mM NaCl(アルゴンで脱気された緩衝液)に溶解し、25%過剰のPDP(3.03molのPDP=6.06gのPEI−PDP)と混合した。アルゴン下で4時間後、反応混合物をカチオン交換カラム(Macro−prep High S;BioScale 21;BioRad、Munchen、ドイツ)に負荷し、20mMのHEPES(pH7.1)における0.5M〜3Mの塩勾配を用いて分画化した。生成物(20ml)が1.45M〜3MのNaClで溶出された。PEI−Mel共役体を4Lの1/10HBS(pH7.1)(アルゴン脱気)に対して一晩透析し、スピードバックを用いて1mlに濃縮して、滅菌ろ過した。共役体における最終的な濃度は、PEIについては2.23mMであり、残存PDP基については1.75mMであり、メリチンについては2.09mMであった。
【0258】
pIC:キャリア複合体の形成およびトランスフェクション:0.78マイクログラムのPEI25−PEG−EGFまたは0.08マイクログラムのPEI25−PEG−EGF+0.7マイクログラムのPEI−Melが溶解されたように、1マイクログラム量のpICを25マイクロリットルのHBS緩衝液に溶解した。キャリアをピペッティングによってpICと混合して、pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Melの複合体を生じさせた。より多量のpICのためのキャリアが比例的に調製された。30分後、トランスフェクションされる細胞の培養培地上清を、pIC:キャリア複合体が補充された培養培地と交換し、その結果、細胞が、要求されたキャリア複合体濃度でトランスフェクションされるようにした。
【0259】
インターフェロン(IFN)−αのアッセイ:pIC:キャリア複合体でトランスフェクションされた腫瘍細胞によるインターフェロン(IFN)−αの細胞分泌がIFN−αのELISA(IBL、ドイツ)によって測定された。
【0260】
インビボアッセイ:ウイルスベクターによる神経膠芽細胞腫の腫瘍組織の感染効率を分析するために、U87MGΔEGFR細胞をヌードマウスに皮下注射した。2週間後、平均体積が274立方ミリメートルである腫瘍が確立され、50マイクロリットルの濃縮されたGFP発現レンチウイルスベクター(10IU/ml)を用いた腫瘍の直接的な1回の感染が行われた。トランスフェクション後48時間で、動物は屠殺され、腫瘍が摘出され、摘出腫瘍の超薄切断物が分析された。感染細胞の分布および感染効率が、蛍光共焦点顕微鏡観察によるGFP発現細胞の可視化によって計算された。
【0261】
dsRNA:キャリア複合体による抗腫瘍活性の効率を分析するために、10個のU87MGwtEGFR細胞を、本発明者らによる以前の記載(ShirおよびLevitzki、2002、Nat Biotech.、20:895)のように、35匹のヌードマウスにおいて頭蓋内に移植した。移植された細胞は、腫瘍を生じさせるために、10日間、放置された。移植後10日目に、200マイクロリットルのAlzet浸透圧マイクロポンプを腫瘍内カテーテルとともに使用して、HBG緩衝液(Ogris他、2001、J Biol Chem.、276:47550〜5)に溶解されたpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体が、3日間、1時間について0.8マイクロリットルあたり0.1マイクログラムのpICの一定した速度(19.2マイクログラム/日)でマウスの腫瘍内に直接、送達された。ポンプは12時間毎に取り替えられた。陰性コントロールとして、コントロールのマウスはHBG緩衝液のみを受け、または非治療のままであった。腫瘍サイズの評価が、以前の記載(Mishima他、2001、Cancer Res.、61:5349〜54)のように行われた。動物実験は、研究用動物の管理に関するヘブライ大学指針に従って行われた。
【0262】
実験結果:
レンチウイルスベクターのインビボ感染効率およびインビトロ感染効率の比較:
インビトロでのレンチウイルスベクターによる神経膠芽細胞腫細胞の感染効率の決定:インビトロでのレンチウイルスベクターの感染効率を明らかにするために、10個のU87MG細胞を6ウエルプレートにおいてウエルあたり2mlの体積の培地で播種し、一晩成長させた。その後、細胞に、緑色蛍光タンパク質(GFP)マーカーをコードする2x10IUのレンチウイルスベクターを感染させた。感染後48時間で、トランスフェクションされた細胞を、デジタルカメラを備えた蛍光顕微鏡を使用して写真撮影し、GFP陽性細胞の数をスコア化し、トランスフェクション効率を計算した。感染した細胞の百分率もまたFACS分析によって計算された(データは示されず)。図2に示されるように、このレンチウイルスベクターは、インビトロで、100%の効率で神経膠芽細胞腫の細胞に感染した。
【0263】
インビボでのレンチウイルスベクターによる神経膠芽細胞腫細胞の感染効率は非常に低い:インビボで確立された腫瘍におけるレンチウイルスベクターの感染効率を調べるために、10個のU87MGΔEGFR細胞をヌードマウスに皮下注射した。2週間後、平均体積が274立方ミリメートルである腫瘍が確立され、50マイクロリットルの濃縮されたGFP発現レンチウイルスベクター(10IU/ml)を用いた腫瘍の直接的な1回の感染が行われた。トランスフェクション後48時間で、動物は屠殺され、腫瘍が摘出され、超薄切断物が分析された。感染細胞の分布および感染効率が、蛍光共焦点顕微鏡観察によるGFP発現細胞の可視化によって計算された(図3a〜図3f)。感染細胞のすべてが、腫瘍の周辺部(図3a〜図3b)および腫瘍の中心部(図3c〜図3d)、すなわち、細胞がウイルスに直接にさらされた領域に存在することが見出され、その一方で、(腫瘍の99%を超える)中間領域における細胞は感染していないことが見出された(図3e)。切片化スキームの概略図が図3fに表される。これらの結果から、低いインビボ感染効率は、ウイルスに曝された細胞の割合が低いことの結果であるという結論に至った。
【0264】
3倍大きいレベルのインビトロでの神経膠芽細胞腫の殺細胞がpIC:PEI25複合体またはpIC:FuGENE6複合体によって媒介される:PEI25またはFuGENE6トランスフェクション試薬(Roche)とともに様々な量のpIC二本鎖RNA(dsRNA)を用いたU87MG神経膠芽細胞腫細胞のトランスフェクションは、トランスフェクション後1時間で、U87MG細胞の92%までの死をもたらした(それぞれ図4aおよび図4b)。血清が補充された培地におけるPEI25とのトランスフェクションは効率的でないことが見出された。β−ガラクトシダーゼまたはGFPのいずれかをコードするプラスミドの神経膠芽細胞腫細胞への平均トランスフェクション効率は、FuGENE6媒介によるプラスミドトランスフェクションによって30%であることが以前に明らかにされていた(Shir,A.およびLevitzki,A.、2002、Nat Biotechnol.、20、895〜900)。従って、dsRNAにより誘導される細胞死の観測された92%の効率は、プラスミドトランスフェクションによって誘導された細胞死の最大効率よりも少なくとも3倍大きい。
【0265】
pIC:PEI25−PEG−EGF複合体によるトランスフェクション1時間後における野生型EGFR過剰発現神経膠芽細胞腫細胞の高いアポトーシス致死率:pIC:PEI25−PEG−EGF複合体によるU87MGwtEGFR細胞のトランスフェクションは、アネキシンアッセイおよびTunelアッセイによって測定されたとき、トランスフェクション後1時間において高いアポトーシス致死率をもたらした(それぞれ図5aおよび図5b)。試験された用量範囲におけるコントロールU87MG細胞の成長に対する著しい影響は観測されなかった。U87MGwtEGFR細胞の76%までがトランスフェクション後3時間以内に死んだ(図6;5マイクログラム/mlのpIC)。このとき、U87MG細胞の成長に対する著しい影響はなかった。トランスフェクション後24時間で、5マイクログラム/mlのpICでトランスフェクションされたU87MGwtEGFR細胞の致死率は、コントロールU87MG細胞のわずかに12%と比較して、86%であった。最適な結果が、25マクロリットルのHBS緩衝液(20mM HEPES(pH7.1)、150mM NaCl)におけるdsRNA対PEI25の、1:0.78の対重量比率を使用して得られた。PEI25における窒素と、核酸におけるリン酸塩との比率は、通常、6である。より少ない容量の緩衝液における複合体の希釈は、より大きな量のpICが使用されたにもかかわらず、効果の低下をもたらした。
【0266】
pIC:PEI25−EGF−PEG複合体でのトランスフェクションによる、野生型EGFRを過剰発現する神経膠芽細胞腫細胞の非常に効率的かつ特異的な殺傷:図7に示されるように、pIC:PEI25−PEG−EGF複合体によるトランスフェクションは、U87MG細胞およびU87MGΔEGFR細胞(これらは、それぞれ、EGFRを何ら示さず、またはΔ(2−7)EGFRを示す)のいずれかに対する影響が事実上ないことによって明らかにされるように、大きな効率および特異性を伴ってU87MGwtEGFR細胞を殺すことができることが見出された。
【0267】
PEI−Melキャリアの取り込みは、野生型EGFRを過剰発現する標的の神経膠芽細胞腫細胞におけるpIC:PEI25−PEG−EGF複合体の細胞傷害性を高める:PEI−MelキャリアがpIC:PEI25−PEG−EGF複合体に取り込まれたとき、殺細胞効果が劇的に高まり、それにもかかわらず、殺細胞効果は非常に選択的なままであった(図8;pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel)。メリチンは、ホスホリパーゼA2の活性化(エンドソーム膜の破壊に関連する事象)をもたらすハチ毒液ペプチドである。従って、PEI−MelキャリアをpIC:キャリア複合体に取り込むことによって観測される細胞傷害性増強は、以前に示唆されたように(Ogris,M.他、AAPS PharmSci、2001、3(3)、第21)、エンドソームから細胞質へのdsRNAの放出を促進させることによって媒介され得る。そのような増強はまた、より大きい分子量のPEIからよりも容易にPEIから解離するRNAの報告された能力に関連し得る(Ogris,M.他、AAPS PharmSci、2001、3(3)、第21)。これにより、細胞質へのPEI複合体化pICの放出が、PEI25複合体化pICと比較して増強される。従って、pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Melの混合されたキャリア複合体を使用して、コントロールのU87MG細胞に対する影響を事実上伴うことなく、U87MGwtEGFR標的細胞の95%以上を殺すことが可能であった(図8)。さらに、いずれかの標的細胞株に対するキャリアの著しい細胞傷害性効果は、pICの非存在下では検出することができなかった(図8)。
【0268】
野生型pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションされたEGFR過剰発現の神経膠芽細胞腫細胞はINF−αを特異的に分泌する:ELISAを使用して、2.5マイクログラム/mlのpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションされたU87MGwtEGFR細胞による培地におけるINF−αの著しい分泌がトランスフェクション後24時間において測定された(図9)。INF−αの分泌は、トランスフェクション後のより長い期間または類似する期間において、それよりも低い濃度または大きい濃度のpICでは検出されなかった(データは示されず)。INF−βの発現は、調べられたpIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体濃度では検出することができなかった(データは示されず)。
【0269】
pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションされた野生型EGFR過剰発現の神経膠芽細胞腫細胞は可溶性の成長阻害因子を分泌する(バイスタンダー効果):図10a〜図10hは、トランスフェクションされたU87MGwtEGFR細胞による馴化培地は、pIC:キャリア複合体でトランスフェクションされていないU87MGwtEGFR細胞、U87MG細胞およびU87MGΔEGFR細胞の成長を著しく阻害する可溶性因子を含有することを示す。馴化培地の成長阻害効果が、トランスフェクションのために使用されたpIC:キャリア複合体の残留物によって単に媒介されていないことを確認するために、EGFRを過剰発現するU87MGwtEGFR細胞の溶解物による処理は、馴化培地の成長阻害効果を妨げることができないことが明らかにされた(図10e〜図10f)。さらなるコントロール実験により、そのような溶解物による処理は、pIC:キャリア複合体の細胞傷害性効果を実際に阻害することができることが明らかにされた(図10g〜図10h)。
【0270】
pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体による治療により、野生型EGFRを過剰発現するヒト神経膠芽細胞腫腫瘍を有する哺乳動物が治療される:pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体が、神経膠芽細胞腫の腫瘍をインビボで治療するために使用できるかどうかを明らかにするために、図11aに示されるように、10日齢の頭蓋内U87MGwtEGFR由来腫瘍を有するマウスが作製された。この時点で、pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体が、一定の速度で3日間、腫瘍内に送達された。腫瘍接種後20日目に、すなわち、dsRNA:キャリア複合体による治療が終了した後7日目に、腫瘍が、複合体で治療されたマウスでは完全に消失し、その一方で、治療されていない動物では、腫瘍は成長し続け、36mmの平均体積になった(図4a)。図11bに示されるように、治療されていない動物、および、PEI25−PEG−EGF+PEI−Melキャリア単独で治療されたコントロール動物はともに、接種後平均して32日間生存し、これに対して、dsRNA:キャリア複合体で治療された動物は、接種後少なくとも64日間、生存し続け、その間、増大した頭蓋内圧の徴候を全く示さなかった。
【0271】
まとめ:上記の結果から、下記のことが明らかにされる:(i)神経膠芽細胞腫の腫瘍はインビボでは、ウイルスベクターによる浸透および感染に対して非常に不透過性である;(ii)dsRNA:キャリア複合体を使用するトランスフェクションおよび同時に起こる殺細胞は、プラスミドベクターを使用したときよりも、pIC:キャリア複合体を使用したとき、少なくとも3倍大きい効率である;(iii)野生型EGFRを過剰発現する神経膠芽細胞腫細胞の大きいアポトーシス致死率が、pIC:PEI25−PEG−EGF複合体を用いたトランスフェクション後1時間において達成され得る;(iv)野生型EGFRを示すEGFR過剰発現の悪性神経膠腫細胞の非常に効率的かつ特異的な殺傷が、pIC:PEI25−EGF−PEG複合体を用いたトランスフェクションによって達成され得る;(v)PEI−Melキャリアの取り込みは、野生型EGFRを過剰発現する標的の神経膠芽細胞腫細胞においてpIC:PEI25−PEG−EGF複合体の細胞傷害性を高める;(vi)野生型pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションされたEGFR過剰発現の神経膠芽細胞腫細胞はINF−αおよび可溶性の成長阻害因子を特異的に分泌する;および(vii)pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体による治療は、致死性のヒト野生型EGFR陽性の神経膠芽細胞腫腫瘍を有する哺乳動物を治療するために使用することができる。
【0272】
結論:本発明のdsRNA:キャリア複合体は、特異的な表面マーカーを示す細胞/組織を、最適な迅速性、効力、選択性および安全性を伴ってインビボで殺すために使用することができる。従って、本発明は、先行技術方法のすべてと比較して、特異的な表面マーカーを示す細胞/組織に関連する疾患を最適に治療するために一般に適用可能である。本発明の方法は、ウイルスベクターと比較して本発明のdsRNA:キャリア複合体の優れた組織浸透能のために、特異的な表面マーカーを示す非常に不透過性の組織と関連する疾患、例えば、多形性神経膠芽細胞腫(悪性神経膠腫の最も悪性かつ致死性の形態)などを治療することに関して、すべての先行技術方法と比較して、特に最適である。特異的な表面マーカーを示す細胞/組織を殺すために一般に適用可能であることによって、本発明の方法は、悪性疾患、自己免疫疾患、感染性疾患および移植関連疾患を含めて、特異的な表面マーカーを示す細胞/組織に関連する数多くの疾患を最適に治療するために一般に適用可能であることが理解される。本発明のキャリアを使用して達成される非常に優れた特異的な標的化によって、本発明の方法が、標的化されていない細胞のトランスフェクションから生じる有害な副作用の危険性を最小限にしながら、様々な疾患を治療するために使用できることもまた特に理解される。
【0273】
わかりやすいように個別の態様として説明した本発明のいくつかの特徴を1つの態様に組み合わせて提供できることは理解されるだろう。逆に、簡潔に説明するために1つの態様として説明した本発明の様々な特徴を個別に提供するか、一部を適当に組み合わせて提供することもできる。
【0274】
本発明をその特定態様に関して説明したが、多くの代替、変更および変形態様が当業者にとって明白であることは明らかである。したがって、特許請求の範囲の精神およびその広い範囲に包含されるそれらの代替、変更および変形態様は、全て本発明に包含されるものとする。本明細書で言及した刊行物、特許、特許出願およびアセッション番号によって同定される配列は全て、具体的かつ個別的な表示の有無にかかわらず、参照により完全な形で本明細書に組み込まれるものとする。また、本願で行う参考文献の引用および記載は、当該参考文献を本発明に対する先行技術として利用できるとの自認ではないと解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】二本鎖RNA(dsRNA)により誘導されるアポトーシスの機構を表す概略図である。
【図2】U87MG細胞にインビトロで感染させたときの、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするレンチウイルスベクターの感染効率が100%であることを表す蛍光顕微鏡写真である。
【図3】神経膠芽細胞腫の腫瘍をヌードマウスにおいてインビボでトランスフェクションしたときのGFP発現レンチウイルスベクターの感染効率が非常に低いことを表す蛍光顕微鏡写真−概略図の組合せ図である(図3a〜図3f)。
【図4】pIC:PEI25複合体またはpIC:FuGENE6複合体を用いたトランスフェクションによってそれぞれ媒介されるインビトロでの高レベルのU87MG神経膠芽細胞腫細胞の殺傷を表す棒グラフである(図4a〜図4b)。
【図5】pIC:PEI25−PEG−EGF複合体を用いたトランスフェクション後1時間でのU87MGwtEGFR神経膠腫細胞腫細胞におけるアポトーシスが高レベルであることを表す顕微鏡写真である(図5a〜図5b)。
【図6】pIC:PEI25−PEG−EGF複合体を用いたトランスフェクション後の3時間および24時間におけるU87MGwtEGFR細胞の致死率が大きいことを表す棒グラフである。
【図7】いかなる形態のEGFRも示さない悪性神経膠細胞、またはΔ(2−7)EGFRのみを示す悪性神経膠細胞ではなく、野生型EGFRを示すU87MGwtEGFR悪性神経膠腫細胞を特異的かつ効率的に殺すpIC:PEI25−PEG−EGF複合体の能力を表す棒グラフである。
【図8】PEI−Melキャリアとの複合でのPEI25−PEG−EGFキャリアの部分的置換によるpIC:PEI25−PEG−EGF複合体の増強された殺細胞作用を表すヒストグラムである。
【図9】pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体で刺激された後のU87MGwtEGFR細胞におけるIFN−α分泌が特異的に刺激されていることを表す棒グラフである。
【図10a−d】pIC:PEI25−PEG−EGF+PEI−Mel複合体でトランスフェクションされた、野生型EGFRを過剰発現する神経膠芽細胞腫細胞による可溶性の成長阻害因子の分泌(バイスタンダー効果)を表すヒストグラムである。
【図10e−h】pIC:キャリア複合体でトランスフェクションされた細胞による馴化培地の成長阻害効果(バイスタンダー効果)が、トランスフェクションのために使用されたpIC:キャリア複合体の残留物のためでないことを表すヒストグラムである。
【図11】pIC:PEI−PEG−EGF+PEI−Mel複合体による治療により、野生型ヒトEGFRを示す致死性神経膠芽細胞腫の腫瘍を有する哺乳動物が治療されることをそれぞれ表す一連の写真およびデータプロットである(図11a〜図11b)。
【配列表フリーテキスト】
【0276】
配列番号1はメリチン(Mel)ペプチドの配列である。
【配列表】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物。
【請求項2】
核酸キャリアをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記標的化成分は前記二本鎖RNA分子に非共有結合的に結合している請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記標的化成分は前記核酸キャリアに共有結合的に結合している請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記二本鎖RNA分子は前記核酸キャリアに非共有結合的に結合している請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記核酸キャリアは、ポリカチオン性ポリマー、非イオン性水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマーおよび生体適合性ポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーはポリエチレンイミンおよび/またはポリ(エチレングリコール)である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物をさらに含む請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物はメリチンまたはメリチン誘導体である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記標的化成分は前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプの表面マーカーのリガンドである請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記表面マーカーの前記リガンドは前記表面マーカーの生物学的リガンドである請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記標的化成分は抗体または抗体フラグメントである請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記標的化成分は増殖因子である請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記増殖因子は上皮増殖因子である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記表面マーカーは、増殖因子受容体および/または腫瘍関連抗原である請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記表面マーカーは上皮増殖因子受容体である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記二本鎖RNA分子はポリイノシン酸鎖および/またはポリシチジル酸鎖を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記二本鎖RNA分子は、10リボヌクレオチド〜3000リボヌクレオチドの範囲から選択される数のリボヌクレオチドからそれぞれの鎖が構成されるRNA鎖から構成される請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは疾患に関連し、および/または神経系の細胞および/または組織である請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは腫瘍細胞および/または腫瘍組織であり、および/またはグリア細胞および/またはグリア組織である請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは悪性の神経膠細胞および/または悪性の神経膠組織である請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは神経膠芽細胞腫の細胞および/または組織である請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプはヒトの細胞および/または組織である請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
医薬的に許容され得るキャリア、および有効成分として特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物を含む医薬用組成物。
【請求項25】
前記組成物は核酸キャリアをさらに含む請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項26】
前記標的化成分は前記二本鎖RNA分子に非共有結合的に結合している請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項27】
前記標的化成分は前記核酸キャリアに共有結合的に結合している請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項28】
前記二本鎖RNA分子は前記核酸キャリアに非共有結合的に結合している請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項29】
前記核酸キャリアは、ポリカチオン性ポリマー、非イオン性水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマーおよび生体適合性ポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項30】
前記ポリマーはポリエチレンイミンおよび/またはポリ(エチレングリコール)である請求項29に記載の医薬用組成物。
【請求項31】
前記組成物はエンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物をさらに含む請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項32】
前記エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物はメリチンまたはメリチン誘導体である請求項31に記載の医薬用組成物。
【請求項33】
前記標的化成分は前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプの表面マーカーのリガンドである請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項34】
前記表面マーカーの前記リガンドは前記表面マーカーの生物学的リガンドである請求項33に記載の医薬用組成物。
【請求項35】
前記標的化成分は抗体または抗体フラグメントである請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項36】
前記標的化成分は増殖因子である請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項37】
前記増殖因子は上皮増殖因子である請求項36に記載の医薬用組成物。
【請求項38】
前記表面マーカーは、増殖因子受容体および/または腫瘍関連抗原である請求項33に記載の医薬用組成物。
【請求項39】
前記表面マーカーは上皮増殖因子受容体である請求項38に記載の医薬用組成物。
【請求項40】
前記二本鎖RNA分子はポリイノシン酸鎖および/またはポリシチジル酸鎖を含む請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項41】
前記二本鎖RNA分子は、10リボヌクレオチド〜3000リボヌクレオチドの範囲から選択される数のリボヌクレオチドからそれぞれの鎖が構成されるRNA鎖から構成される請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項42】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは疾患に関連し、および/または神経系の細胞および/または組織である請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項43】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは腫瘍細胞および/または腫瘍組織であり、および/またはグリア細胞および/またはグリア組織である請求項42に記載の医薬用組成物。
【請求項44】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは悪性の神経膠細胞および/または悪性の神経膠組織である請求項43に記載の医薬用組成物。
【請求項45】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは神経膠芽細胞腫の細胞および/または組織である請求項44に記載の医薬用組成物。
【請求項46】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプはヒトの細胞および/または組織である請求項24に記載の医薬用組成物。
【請求項47】
特定の標的細胞および/または標的組織を殺す方法であって特定の標的細胞および/または標的組織に対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物に特定の標的細胞および/または標的組織をさらし、それにより特定の標的細胞および/または標的組織を殺すことを含む方法。
【請求項48】
前記特定の標的細胞および/または標的組織を前記組成物にさらすことは、特定の標的細胞および/または標的組織を有する脊椎動物対象に組成物を投与することによって達成される請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記脊椎動物対象に前記組成物を投与することは、前記脊椎動物対象に対して全身的に、および/または前記脊椎動物対象の中枢神経系の所定位置に対して前記組成物を投与することによって達成される請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物は核酸キャリアをさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記標的化成分は前記二本鎖RNA分子に非共有結合的に結合している請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記標的化成分は前記核酸キャリアに共有結合的に結合している請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記二本鎖RNA分子は前記核酸キャリアに非共有結合的に結合している請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記核酸キャリアは、ポリカチオン性ポリマー、非イオン性水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマーおよび生体適合性ポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記ポリマーはポリエチレンイミンおよび/またはポリ(エチレングリコール)である請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記組成物はエンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物をさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項57】
前記エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物はメリチンまたはメリチン誘導体である請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記標的化成分は前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプの表面マーカーのリガンドである請求項47に記載の方法。
【請求項59】
前記表面マーカーの前記リガンドは前記表面マーカーの生物学的リガンドである請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記標的化成分は抗体または抗体フラグメントである請求項47に記載の方法。
【請求項61】
前記標的化成分は増殖因子である請求項47に記載の方法。
【請求項62】
前記増殖因子は上皮増殖因子である請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記表面マーカーは、増殖因子受容体および/または腫瘍関連抗原である請求項58に記載の方法。
【請求項64】
前記表面マーカーは上皮増殖因子受容体である請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記二本鎖RNA分子はポリイノシン酸鎖および/またはポリシチジル酸鎖を含む請求項47に記載の方法。
【請求項66】
前記二本鎖RNA分子は、10リボヌクレオチド〜3000リボヌクレオチドの範囲から選択される数のリボヌクレオチドからそれぞれの鎖が構成されるRNA鎖から構成される請求項47に記載の方法。
【請求項67】
前記特定の標的細胞タイプおよび/または組織タイプは疾患に関連し、および/または神経系の細胞および/または組織である請求項47に記載の方法。
【請求項68】
前記特定の標的細胞タイプおよび/または組織タイプは腫瘍細胞および/または腫瘍組織であり、および/またはグリア細胞および/またはグリア組織である請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記特定の標的細胞タイプおよび/または組織タイプは悪性の神経膠細胞および/または悪性の神経膠組織である請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記特定の標的細胞タイプおよび/または組織タイプは神経膠芽細胞腫の細胞および/または組織である請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記特定の標的細胞タイプおよび/または組織タイプはヒトの細胞および/または組織である請求項47に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物。
【請求項2】
核酸キャリアをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記標的化成分は前記二本鎖RNA分子に非共有結合的に結合している請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記標的化成分は前記核酸キャリアに共有結合的に結合している請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記二本鎖RNA分子は前記核酸キャリアに非共有結合的に結合している請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記核酸キャリアは、ポリカチオン性ポリマー、非イオン性水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマーおよび生体適合性ポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマーはポリエチレンイミンおよび/またはポリ(エチレングリコール)である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物をさらに含む請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物はメリチンまたはメリチン誘導体である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記標的化成分は前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプの表面マーカーのリガンドである請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記表面マーカーの前記リガンドは前記表面マーカーの生物学的リガンドである請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記標的化成分は抗体または抗体フラグメントである請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記標的化成分は増殖因子である請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記増殖因子は上皮増殖因子である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記表面マーカーは、増殖因子受容体および/または腫瘍関連抗原である請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記表面マーカーは上皮増殖因子受容体である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記二本鎖RNA分子はポリイノシン酸鎖および/またはポリシチジル酸鎖を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記二本鎖RNA分子は、10リボヌクレオチド〜3000リボヌクレオチドの範囲から選択される数のリボヌクレオチドからそれぞれの鎖が構成されるRNA鎖から構成される請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは疾患に関連し、および/または神経系の細胞および/または組織である請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプは腫瘍細胞および/または腫瘍組織であり、および/またはグリア細胞および/またはグリア組織である請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
医薬的に許容され得るキャリア、および有効成分として特定の細胞タイプおよび/または組織タイプに対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物を含む医薬用組成物。
【請求項22】
特定の標的細胞および/または標的組織を殺す方法であって特定の標的細胞および/または標的組織に対して標的化することができる選択された標的化成分と結合した二本鎖RNA分子を含む組成物に特定の標的細胞および/または標的組織をさらし、それにより特定の標的細胞および/または標的組織を殺すことを含む方法。
【請求項23】
前記特定の標的細胞および/または標的組織を前記組成物にさらすことは、特定の標的細胞および/または標的組織を有する脊椎動物対象に組成物を投与することによって達成される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記脊椎動物対象に前記組成物を投与することは、前記脊椎動物対象に対して全身的に、および/または前記脊椎動物対象の中枢神経系の所定位置に対して前記組成物を投与することによって達成される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物は核酸キャリアをさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が医薬用組成物中に処方される請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記標的化成分は前記二本鎖RNA分子に非共有結合的に結合している請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記標的化成分は前記核酸キャリアに共有結合的に結合している請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記二本鎖RNA分子は前記核酸キャリアに非共有結合的に結合している請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記核酸キャリアは、ポリカチオン性ポリマー、非イオン性水溶性ポリマー、ポリエーテルポリマーおよび生体適合性ポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリマーはポリエチレンイミンおよび/またはポリ(エチレングリコール)である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物はエンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物をさらに含む請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記エンドソーム膜の分解を促進させることができる化合物はメリチンまたはメリチン誘導体である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記標的化成分は前記特定の細胞タイプおよび/または組織タイプの表面マーカーのリガンドである請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記表面マーカーの前記リガンドは前記表面マーカーの生物学的リガンドである請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記標的化成分は抗体または抗体フラグメントである請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記標的化成分は増殖因子である請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記増殖因子は上皮増殖因子である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記表面マーカーは、増殖因子受容体および/または腫瘍関連抗原である請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記表面マーカーは上皮増殖因子受容体である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記二本鎖RNA分子はポリイノシン酸鎖および/またはポリシチジル酸鎖を含む請求項22に記載の方法。
【請求項42】
前記二本鎖RNA分子は、10リボヌクレオチド〜3000リボヌクレオチドの範囲から選択される数のリボヌクレオチドからそれぞれの鎖が構成されるRNA鎖から構成される請求項22に記載の方法。
【請求項43】
前記特定の標的細胞タイプおよび/または組織タイプは疾患に関連し、および/または神経系の細胞および/または組織である請求項22に記載の方法。
【請求項44】
前記特定の標的細胞タイプおよび/または組織タイプは腫瘍細胞および/または腫瘍組織であり、および/またはグリア細胞および/またはグリア組織である請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a−d】
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【図10e−h】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−506433(P2006−506433A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553056(P2004−553056)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000957
【国際公開番号】WO2004/045491
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(502275425)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム (10)
【Fターム(参考)】