説明

模様入り壁パネル及びその製造方法

【課題】従来の模様入り壁材より積層、硬化等の工程数が少なく、軽量で断熱性に優れる、模様入り壁パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】表面側から順に、模様の発現する透明又は不透明な表面樹脂層11、模様層12、熱硬化性樹脂発泡成形品13の各層を備え、上記熱硬化性樹脂発泡成形品の熱伝導率が、0.1〜0.3W/m・Kであり、比重が、0.5〜1.5である模様入り壁パネルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニット、トイレ、シャワールームなどの壁パネルに用いられる模様入り壁パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴室ユニット等に用いられる模様入り壁パネルの製造方法は、特許文献1に記載されている。その方法は、以下の(イ)〜(ヌ)に記載するものである。
(イ)型の表面に透明又は、半透明の樹脂を載置し、これを廷伸して表面樹脂層を形成させる工程
(ロ)表面樹脂層の上に、片面に模様がある模様付き透明樹脂シートを、その模様面が型側に対面するように合わせて積層する工程
(ハ)表面樹脂層を硬化させる工程
(ニ)透明樹脂シートの上に、樹脂を含有する不透明有色FRP層を積層させる工程
(ホ)不透明有色FRP層の樹脂を硬化させる工程
(ヘ)前記不透明有色FRP層の上にレジンコンクリート層を積層させる工程
(ト)前記レジンコンクリート層を硬化させる工程
(チ)最外層のFRP層を積層させる工程
(リ)最外層FRP層の樹脂を硬化させる工程
(ヌ)成形品を脱型させる工程。
【特許文献1】特公平03−47183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述した特許文献1に記載される方法は、木目、石調、抽象等の模様柄をほとんど制限なく付与でき、また模様も精密である等の利点を有するが、積層・硬化等の工程が多く、作業時間が長くなる。更に、補強層となるレジンコンクリート層やFRP層は、強度に優れる一方で、断熱性が低く結露の原因となりやすい。
【0004】
本発明は、上記問題を解決する模様入り壁パネルの提供、すなわち、従来の模様入り壁材より積層、硬化等の工程数が少なく、軽量で断熱性に優れる、模様入り壁パネルの製造方法及の提示を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)表面側から順に、模様の発現する透明又は不透明な表面樹脂層、模様層、熱硬化性樹脂発泡成形品の各層を備え、上記熱硬化性樹脂発泡成形品の熱伝導率が、0.1〜0.3W/m・Kであり、比重が、0.5〜1.5である模様入り壁パネル。
(2)以下の工程により製造される模様入り壁パネルの製造方法。
(a)型の表面に透明又は、半透明の樹脂を載置し、これを廷伸して表面樹脂層を形成させる工程。
(b)表面樹脂層の上に、片面に模様がある模様付き透明樹脂シートを、その模様面が型側に対面するように合わせて積層する工程。
(c)表面樹脂層を硬化させる工程。
(d)模様層の上に不透明有色樹脂層の樹脂を塗布し、その上に熱硬化性樹脂発泡成形品を接着させる工程。
(e)半硬化させた不透明有色樹脂層を硬化させる工程。
(f)脱型する工程。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、鮮明な意匠性を失うことなく、従来の壁材よりも軽量で、断熱性が高く、成形時間を短縮した模様入り壁材の製造方法及び成形品を提供することができる。本発明により得られる模様入り壁材は、浴室ユニット、トイレ、シャワールームなどの壁パネルに適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられる模様層を発現する透明又は不透明な樹脂は、特に制限されるものではないが、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができ、必要に応じて硬化剤、顔料等を混合することもできる。また、表面樹脂層の厚さは、0.1mm〜5.0mmとする。
【0008】
本発明に用いられる模様層は、特に制限されるものではないが、転写印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スプレー印刷法等を使用して形成することができる。特に、転写印刷法は、表面樹脂層を一旦形成させてから模様付けせずにすみ、模様付けされた転写フィルムを、未硬化の前記表面樹脂に押付けながら廷伸して同時積層することができ、作業時間を短縮できるので好ましい。また、模様は、木目、石調、抽象柄等いずれでもよく、特に制限するものではない。
【0009】
本発明における模様層を付ける方法の一つは、上記したように、転写印刷法である。転写フィルムを用いる場合、ベースフィルムとしては、耐熱性・剥離性を有し、透明又は不透明樹脂に不溶であれば特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、フッ素系フィルム等のプラスチックフィルムが使用できる。また、模様に使用するインキは、透明又は不透明な樹脂に可溶であるものから選ばれる。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、硝化綿(ニトロセルロース)系樹脂等に顔料又は染料を混合したもの等を用いることができる。
【0010】
本発明に用いられる熱硬化性樹脂発泡成形品は、特に制限するものではないが、化学発泡剤、熱膨張性マイクロカプセル、ガラスバルーン、シラスバルーン等を適宜選定し、添加した不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができ、好ましくは、嵩比重が小さいため、樹脂に配合しやすく、また成形方法によって成形品の比重を調整できる化学発泡剤や熱膨張性マイクロカプセルを用いる。
【0011】
本発明における熱硬化性発泡成形品の添加剤の一つは、上記したように熱膨張性マイクロカプセルである。熱膨張性マイクロカプセルは、低沸点炭化水素を熱可塑性高分子殻(シェル)で包み込んだ中空球体であり、加熱すると高分子殻が軟化し,中の液状炭化水素が気体に変化するので、その圧力でカプセルが膨張する。このような熱膨張性マイクカプセルとしては,例えば松本油脂製薬(株)から提供されている「マツモトマイクロスフェアーF−80S(商品名)」がある。「マツモトマイクロスフェアーF−80S(商品名)」は中空球体又の外郭のポリマーが、アクリロニトリルコポリマーで構成され、中空球体内に低沸点炭化水素が封入された構成になっている。そして温度を上げると、外郭のポリマーが軟化すると共に内包された低沸点炭化水素がガス化し、体積が50〜100倍に膨張する。このような性質の熱膨張性マイクロカプセルを、不飽和ポリエステル樹脂に対して1〜150質量%添加したSMCを用いることができる。
【0012】
上記熱膨張性マイクロカプセルを含有したSMCを加熱成形すると、硬化反応が加熱により進行すると同時に熱膨張性マイクロカプセルが加熱により膨張し、この膨張した状態で硬化反応が終了していくことになる。従って、硬化による収縮は、熱膨張性マイクロカプセルの膨張によって抑えられ、成形品の成形収縮を効果的に低減して、寸法の安定した成形品を得ることができ。さらに、このように熱膨張した熱膨張性マイクロカプセルは、膨張した形状をそのまま保持した状態で存在するものであり、その部分に微細に空洞が形成されることになって、比重を低下させ、軽量化することができる。また、この熱膨張性マイクロカプセルによる空洞は、非常に微細に存在するものであるため、成形品自体の強度を低下させるには至らない。その結果、成形品は、強度を保持しなから軽量化となり、高断熱となる。熱硬化性樹脂発泡成形品の比重は、0.5〜1.5であることが好ましく、特に、0.5〜1.0であることが特に好ましい。比重が0.5未満である場合は、成形品の表面平滑性が低下してくるので意匠性が徐々に落ち、比重が1.5を超えると、成形品の重量が重くなり、成形品の大きさにもよるが、浴槽の壁パネルに用いる大きさでは一人作業が困難となってくる。
熱硬化性樹脂発泡成形品の熱伝導率は、0.1〜0.3W/m・Kであることが好ましく、0.1W/m・K未満であると、気泡体積を多くする必要があることから比重が0.5未満になった場合と同様の問題が生じる。熱伝導率が、0.3W/m・Kを超えると、気泡体積が少ないことから、比重が1.5を超えた場合と同様の問題が生じる。
成形品にさらに高い断熱性を付与することを考えると、熱硬化性樹脂発泡成形品の比重が、0.5〜1.0であることが好ましい。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の1実施例である模様入り壁材の断面図である。図1に示す模様入り壁材を以下の手順で作製した。
(a)ガラス型の表面にフッ素離型剤をスプレーガンで均一に塗布する。その上に無色透明ポリエステル樹脂(日立化成株式会社製、商品名PS−3717)100重量部にメチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーメックN)1重量部を混合したものを塗布する。
(b)ベースフィルムの片面に単色インキ層と模様インキ層を形成させた模様転写フィルムの端部を無色透明ポリエステル樹脂に押付け、ロールコーターにより樹脂に押付けた端部から無色透明ポリエステル樹脂層樹脂厚みが0.35mmになるように均一に廷伸する。これにより模様転写フィルムと無色透明ポリエステル樹脂とを密着させる。
(c)廷伸した無色透明ポリエステル樹脂を、65℃の環境下で半硬化させた後、ベースフィルムを剥離し、無色透明ポリエステル樹脂層11と模様層12とした。
(d)模様が転写された無色透明ポリエステル樹脂層の上に、白色ポリエステル樹脂(東京インキ株式会社製、商品名カラードレジン)100重量部にメチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーメックN)1重量部を混合した物を塗布し、熱膨張性マイクロカプセルを5重量部添加したSMCを過熱加圧成形した熱硬化性樹脂発泡成形品を接着させる。
(e)前記白色ポリエステル樹脂を65℃の環境下で硬化させ、熱硬化性樹脂発泡成形品層13とした。
(f)脱型し、模様入り壁パネルを得た。
【実施例2】
【0014】
図2は、本発明の1実施例である模様入り壁材の断面図である。図2に示す模様入り壁材を以下の手順で作製した。
(a)ガラス型の表面にフッ素離型剤をスプレーガンで均一に塗布する。その上に無色透明ポリエステル樹脂(日立化成株式会社製、商品名PS−3717)100重量部にメチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーメックN)1重量部を混合したものを塗布する。
(b)ベースフィルムの片面に単色インキ層と模様インキ層を形成させた模様転写フィルムの端部を無色透明ポリエステル樹脂に押付け、ロールコーターにより樹脂に押付けた端部から無色透明ポリエステル樹脂層樹脂厚みが0.35mmになるように均一に廷伸する。これにより模様転写フィルムと無色透明ポリエステル樹脂とを密着させる。
(c)廷伸した無色透明ポリエステル樹脂を、65℃の環境下で半硬化させた後、ベースフィルムを剥離し、無色透明ポリエステル樹脂層21と模様層22とした。
(d)模様が転写された無色透明ポリエステル樹脂層の上に、白色ポリエステル樹脂(東京インキ株式会社製、商品名カラードレジン)100重量部にメチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーメックN)1重量部を混合した物を塗布し、ガラスバルーンを40重量部添加したSMCを過熱加圧成形した熱硬化性樹脂発泡成形品を接着させる。
(e)前記白色ポリエステル樹脂を65℃の環境下で硬化させ、熱硬化性樹脂発泡成形品層23とした。
(f)脱型し、模様入り壁パネルを得た。
【0015】
図3は、本発明の比較例である模様入り壁材の断面図である。図3に示す模様入り壁材を以下の手順で作製した。
(a)ガラス型の表面にフッ素離型剤をスプレーガンで均一に塗布する。その上に無色透明ポリエステル樹脂(日立化成株式会社製、商品名PS−3717)100重量部にメチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーメックN)1重量部を混合したものを塗布する。
(b)ベースフィルムの片面に単色インキ層と模様インキ層を形成させた模様転写フィルムの端部を無色透明ポリエステル樹脂に押付け、ロールコーターにより樹脂に押付けた端部から無色透明ポリエステル樹脂層樹脂厚みが0.35mmになるように均一に廷伸する。これにより模様転写フィルムと無色透明ポリエステル樹脂とを密着させる。
(c)廷伸した無色透明ポリエステル樹脂を、65℃の環境下で半硬化させた後、ベースフィルムを剥離し、無色透明ポリエステル樹脂層31と模様層32にした。
(d)模様が転写された無色透明ポリエステル樹脂層上に、ガラス繊維チョップドストランドマット(230g/m)を載せ、白色ポリエステル樹脂(東京インキ株式会社製、商品名カラードレジン)100重量部にメチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーメックN)1重量部を混合したものを含浸させた。
(e)白色ポリエステル樹脂を、65℃の環境下で硬化させ、不透明有色樹脂層33とした。
(f)不透明有色樹脂層上に不飽和ポリエステル樹脂(日立化成工業株式会社製、PS−5181PT)100重量部に炭酸カルシウム粗粒(日東粉化工業株式会社製、商品名寒水石#40)300重量部、炭酸カルシウム細粒(日東粉化工業株式会社製、商品名炭カルTS−70)200重量部、メチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーメックN)4重量部を混合したものを塗布し、レジンコンクリート層34とする。
(g)レジンコンクリート層34の上に、ガラス繊維チョップドストランドマット(230g/m)を載せ、不飽和ポリエステル樹脂(日立化成工業株式会社製、PS−5182PT)100重量部に、メチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製、商品名パーメックN)1重量部を混合したものを塗布する。
(h)FRP層の樹脂を65℃の環境下で硬化させ、FRP層35とした。
(i)ついで、温風炉65℃の環境下で樹脂を完全硬化させた。
(j)型より脱型し、模様入り壁材を得た。
【0016】
表1に、実施例及び比較例で得られた成形品の評価結果を示した。実施例1と2を、比較例と比較してみると、実施例では、比重及び熱伝導率が小さく、軽量で断熱性に優れていることが分かる。また、成形時間は、比較例の半分以下であることが分かる。
【0017】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の1実施例である模様入り壁材の断面図である。
【図2】本発明の他の実施例である模様入り壁材の断面図である。
【図3】本発明の比較例である模様入り壁材の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
11…無色透明ポリエステル樹脂層、12…模様層、13…熱硬化性樹脂発泡成形品、21…無色透明ポリエステル樹脂層、22…模様層、23…熱硬化性樹脂発泡成形品、31…無色透明ポリエステル樹脂層、32…様層、33…白色FRP層、34…レジンコンクリート層、35…FRP製補強層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から順に、模様の発現する透明又は不透明な表面樹脂層、模様層、熱硬化性樹脂発泡成形品の各層を備え、上記熱硬化性樹脂発泡成形品の熱伝導率が、0.1〜0.3W/m・Kであり、比重が、0.5〜1.5である模様入り壁パネル。
【請求項2】
以下の工程により製造される模様入り壁パネルの製造方法。
(a)型の表面に透明又は、半透明の樹脂を載置し、これを廷伸して表面樹脂層を形成させる工程。
(b)表面樹脂層の上に、片面に模様がある模様付き透明樹脂シートを、その模様面が型側に対面するように合わせて積層する工程。
(c)表面樹脂層を硬化させる工程。
(d)模様層の上に不透明有色樹脂層の樹脂を塗布し、その上に熱硬化性樹脂発泡成形品を接着させる工程。
(e)半硬化させた不透明有色樹脂層を硬化させる工程。
(f)脱型する工程。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−316541(P2006−316541A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141280(P2005−141280)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】