説明

横開きバックドアを備えた車体後部構造

【課題】ヒンジ軸とバックドア開口端とがヒンジ軸線上から見て離れた位置にあっても、ヒンジ軸側でのバックドアと車体のバックドア開口部周辺との干渉を避けつつ、バックドアの左開き仕様と右開き仕様とで、車体本体側部材を共用化できるようにする。
【解決手段】バックドア3は、車体後方から見て車幅方向左側端部に設けたヒンジ部材9によって左右方向に開閉し、下端部3aがヒンジ部材9よりも車体後方に突出している。バックドア下端部3aのヒンジ部材9側の車幅方向外側端部に切欠部3bを形成し、この切欠部3bにおける車幅方向外側縁部3a1を、ヒンジ部材9よりも車幅方向内側に位置させる。そして、バックドア3が全閉状態での上記切欠部3bに対応する位置の車体本体1にカバー部材15を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横開きバックドアを備えた車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されたような横開きバックドアを備えた車体後部構造では、バックドアを開閉する際に、ヒンジ軸側におけるバックドアと車体のバックドア開口部周辺との干渉を避けるために、ヒンジ軸を、ヒンジ軸線上から見て(平面視で)バックドア開口端の極力近傍に位置させている。
【特許文献1】特許第3994746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、車体デザイン上の制約から、バックドアの例えば下端部をヒンジ軸よりも車体後方に突出させるなどで、バックドア開口端がヒンジ軸に対し車体後方に離れた位置関係となるような場合には、バックドアは開閉時に上記後方に突出した下端部付近が車体のバックドア開口部周辺に干渉する恐れがある。
【0004】
この干渉を避けるために、バックドアの上記後方に突出した下端部を、ヒンジ軸に対し車幅方向内側にオフセットさせることが考えられる。ところがこの場合には、ボディサイドアウタパネルやリアバンパなど車体本体側の部材に、突出部位を一体形成して上記オフセット分の領域をカバーする必要がある。
【0005】
このように、ヒンジ軸側において車体本体側の部材に突出部位を一体形成する場合には、ヒンジ軸を車幅方向左側に設定した左開き仕様と、ヒンジ軸を車幅方向右側に設定した右開き仕様とで、上記突出部位を一体形成した車体本体側の部材を、それぞれ別々に用意する必要が生じ、部材(部品)共用化の妨げとなってコストアップを招くものとなる。
【0006】
そこで、本発明は、ヒンジ軸とバックドア開口端とがヒンジ軸線上から見て離れた位置にあっても、ヒンジ軸側でのバックドアと車体のバックドア開口部周辺との干渉を避けつつ、バックドアの左開き仕様と右開き仕様とで、車体本体側部材の共用化を可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、全閉状態でのバックドアの下端部の車幅方向外側縁部をヒンジ部材よりも車幅方向内側に位置させ、該車幅方向外側縁部と車体本体側部材の車幅方向内側縁部との間の車体本体側にカバー部材を取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、全閉状態でのバックドアの下端部の車幅方向外側縁部が、ヒンジ部材よりも車幅方向内側に位置し、このバックドア下端部の車幅方向外側縁部と車体本体側部材の車幅方向内側縁部との間の車体本体側にカバー部材を取り付けたので、車体本体側部材としては、ヒンジ部材側において車幅方向内側に突出する形状とする必要がなく、したがって、ヒンジ部材とバックドア開口端とが離れた位置にあっても、バックドアと車体のバックドア開口部周辺との干渉を避けつつ、バックドアの左開き仕様と右開き仕様とで、車体本体側部材の共用化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係わる横開きバックドアを備えた車体後部構造を示す車体後部の斜視図、図2は、この車体後部の左側面図である、車体本体1の後端部にはバックドア3を取り付けてあるとともに、バックドア3の下部の車体本体1には、リアバンパ5を取り付けてある。この車体本体1とリアバンパ5とで、車体本体側部材を構成している。
【0011】
リアバンパ5は、車幅方向両端部が上方に向けてやや突出する突出部5aを備えており、リアバンパ5とバックドア3との間には、リアランプユニット7を取り付けている。バックドア3は、車体後方から見て車体左側に設けたヒンジ部材9を中心として左右方向に開閉可能な横開きとなっている。ヒンジ部材9は、リアサイドウインドウの窓開口部1aにほぼ対応する上下方向位置に設定してある。
【0012】
また、全閉状態のバックドア3は、図2の側面図で示すように、下部が上部よりも車体後方(図2中で右側)に位置するようやや傾斜しているものの全体的に見てほぼ上下方向に延在する形状となっている。このバックドア3の下端部3aは、車体本体1のボディサイドアウタ11とリアバンパ5との突き合わせ部13付近から後方に突出してより大きく傾斜し、かつヒンジ部材9よりも車体後方に位置している。
【0013】
このようなバックドア3の下部におけるヒンジ部材9側の車幅方向端部には、縦長のほぼ長方形となる切欠部3bを形成している。そして、バックドア3を全閉としたときの切欠部3bに対応する位置の車体本体1に、外観形状が縦長のほぼ長方形となるカバー部材15を取り付けている。すなわち、このカバー部材15は、バックドア3を全閉としたときの下端部3aの前記切欠部3bに対応する車幅方向外側縁部3a1と車体本体側部材(ボディサイドアウタ11,リアバンパ5)の車幅方向内側縁部11a,5a1との間の車体本体1側に取り付けている。
【0014】
図3は、図2のA−A断面図であり、バックドア3の回転中心となるヒンジ部材9のヒンジ軸9aは、前記したボディサイドアウタ11よりも車幅方向内側の車室内側に位置しており、図3では、このヒンジ軸9aを中心とするバックドア3の回転軌跡を二点鎖線で示している。
【0015】
ここで、図3の実線で示す全閉状態でのバックドア3は、下端部3aの上記した切欠部3bに対応する車幅方向外側縁部3a1を、ヒンジ部材9のヒンジ軸9aよりも車幅方向内側に位置させている。なお、図3に示すヒンジ部材9は、平面視で仮想の位置として図示している。
【0016】
また、前述したようにバックドア3の下端部3aが、ヒンジ部材9よりも車体後方に位置しているので、ヒンジ部材9のヒンジ軸9aと、バックドア3の下端部3aに対応するバックドア開口端1bとが、平面視で互いに重なり合う位置にはなく、互いに離れた位置にあることになる。
【0017】
次に、カバー部材15について図4を用いて説明する。カバー部材15は、アウタカバー17とインナカバー19とを備えている。このカバー部材15は、図4(b)の状態からアウタカバー17の係止爪17aをインナカバー19の係止孔19aに挿入係止するとともに、図4(c)に示すねじ21をインナカバー19の裏側からねじ挿入孔19bに挿入してアウタカバー17のねじ孔17bにねじ止めすることで、図4(a)のような組み付け状態となる。
【0018】
そして、図4(a)のように一体化させたカバー部材15を、インナカバー19の裏側に設けたクリップ23を車体本体1側に嵌入固定するとともに、図4(b)に示すねじ25をインナカバー19のねじ挿入孔19cに挿入し、図3に示すように車体本体1側にねじ止め固定することで、車体本体1に取り付ける。このとき、上記したクリップ23やねじ25による取付部が、全閉状態のバックドア3の裏側に位置することになる。
【0019】
このようにして取り付けたカバー部材15は、アウタカバー17の外表面17cが、ボディサイドアウタ11,リアバンパ5及び全閉状態のバックドア3の外表面に対し、連続した同一の外表面を形成する。そして、このアウタカバー17が、車体外部から見て縦長のほぼ長方形状となる。この外形がほぼ長方形状のアウタカバー17は、車幅方向内側の内側長辺部17d及び車幅方向外側の外側長辺部17eが、車体後方から見て下部側が上部側よりも車幅方向内側に位置するよう傾斜している。
【0020】
このように、本実施形態における横開きバックドアを備えた車体後部構造では、バックドア3の下端部3aにおけるヒンジ部材9側の車幅方向端部に切欠部3bを形成することによって、バックドア3の下端部3aの車幅方向外側縁部3a1を、ヒンジ部材9よりも車幅方向内側に位置させている。このため、図3に示すように、バックドア3を実線で示す全閉状態から、二点鎖線で示すように開放しても、逆に開放状態から閉じる動作を行っても、車幅方向外側縁部3a1は、上記切欠部3bに対応する位置にて取り付けてある車体本体1側のカバー部材15(バックドア開口端1bに相当)に干渉することはない。
【0021】
また、本実施形態の車体本体1に右開き用のバックドア、つまりヒンジ部材を車体後方から見て車幅方向右側端部に設定してあるバックドアについては、上記した左開き用のバックドア3に対し左右が反転した形状となるように車幅方向右側の下端部に、切欠部3bと同様の切欠部を形成する。そして、この切欠部に対応する位置に、前記したカバー部材15に対し左右が反転した形状のカバー部材を取り付ける。もちろん、このとき左側のカバー部材15は不要である。
【0022】
したがって、右開き用のバックドアについても、前記した左開き用のバックドア3と同様に、下端部の車幅方向外側縁部が、切欠部に対応する位置にて取り付けてある車体本体1側のカバー部材(バックドア開口端に相当)に干渉することはない。
【0023】
この際、本実施形態では、上記切欠部3bに対応する位置に、ボディサイドアウタ11やリアバンパ5とは別部材としてカバー部材15を取り付けている。このため、バックドアを、上記したバックドア3のように左開き用として車体本体1に取り付ける場合でも、また右開き用として車体本体1に取り付ける場合でも、車体本体側部品となる車体本体1(ボディサイドアウタ11)やリアバンパ5は、形状を変更することなく、共用化することができる。
【0024】
これに対し、上記左開き用のバックドア3の切欠部3bに対応する位置に、ボディサイドアウタ11やリアバンパ5の一部を突出させた形状とした場合には、バックドアを右開き用としてこれらボディサイドアウタ11やリアバンパ5を車体本体1に組み付ける際に、この突出部位が全閉時にバックドアの下端角部が干渉してしまうので、上記の突出部位がなく、かつこれと車幅方向反対側に突出部位のある車体本体側部品を用意する必要が生じてしまう。
【0025】
このように、本実施形態では、全閉状態でのバックドア3の下端部3aの車幅方向外側縁部3a1が、ヒンジ部材9よりも車幅方向内側に位置し、この位置関係に対応するようにカバー部材15を車体本体1に取り付けている。このため、車体本体側部材である車体本体1(ボディサイドアウタ11)やリアバンパ5としては、上記位置関係に対応した形状とする必要がなく、したがって、図3に示すようにヒンジ軸9aとバックドア開口端1bとがヒンジ軸線上から見て離れた位置関係にあっても、バックドア3と車体本体1のバックドア開口部周辺との干渉を避けつつ、バックドア3が右開き仕様と左開き仕様とで車体本体側部材を共用化することができる。
【0026】
また、本実施形態のリアバンパ5は、バックドア3が開いた状態で車体本体1に取り付ける。このため、リアバンパ5に、バックドア3の切欠部3bに対応する位置に一部が突出する突出部位を一体化して設けずに、カバー部材15として別体のものを取り付けることで、リアバンパ5を車体本体1やバックドア3に干渉することなく取り付けることが可能となる。
【0027】
また、本実施形態では、カバー部材15を間に挟んでバックドア3の下端部3aの車幅方向外側縁部3a1と反対の車幅方向外側に、リアバンパ5の突出部5aの車幅方向内側縁部5a1が位置している。このため、リアバンパ5としては、バックドア3の切欠部3bに対応した突出形状とする必要がなく、したがって、図3に示すようにヒンジ軸9aとバックドア開口端1bが離れた位置にあっても、バックドア3と車体本体1のバックドア開口部周辺との干渉を避けつつ、バックドア3が右開き仕様と左開き仕様とでリアバンパ5を共用化することができる。
【0028】
また、本実施形態では、カバー部材15を間に挟んでバックドア3の下端部3aの車幅方向外側縁部3a1と反対の車幅方向外側に、ボディサイドアウタ11の車幅方向内側縁部11aが位置している。このため、ボディサイドアウタ11としては、バックドア3の切欠部3bに対応した突出形状とする必要がなく、したがって、図3に示すようにヒンジ軸9aとバックドア開口端1bが離れた位置にあっても、バックドア3と車体本体1のバックドア開口部周辺との干渉を避けつつ、バックドア3が右開き仕様と左開き仕様とでボディサイドアウタ11を共用化することができる。
【0029】
さらに、本実施形態では、カバー部材15は、車体本体1に対するクリップ23やねじ25による取付部が、全閉状態のバックドア3の裏側に位置している。このため、インナカバー19を、取り付け具であるクリップ23やねじ25によってバックドア3の裏側の車体本体1側に固定することで、カバー部材15は、取り付け具を外部に露出させることなく、車体本体1に取り付けることができ、外観品質の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係わる横開きバックドアを備えた車体後部構造を示す車体後部の斜視図である。
【図2】図1の車体後部構造を示す車体後部の左側面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1の車体後部構造におけるカバー部材を示すもので、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図、(c)は(b)とは逆の裏側から見た分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 車体本体(車体本体側部材)
3 バックドア
3a バックドアのヒンジ部材側の下端部
3a1 バックドアの下端部の車幅方向外側縁部
5 リアバンパ(車体本体側部材)
5a1 リアバンパの車幅方向内側縁部
9 ヒンジ部材
11 ボディサイドパネル(車体本体側部材)
15 カバー部材
23 クリップ(取付部)
25 ねじ(取付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に設けたヒンジ部材によってバックドアが横方向に開閉可能に支持され、前記バックドアの前記ヒンジ部材側の下端部が該ヒンジ部材よりも車体後方に位置する横開きバックドアを備えた車体後部構造であって、全閉状態での前記バックドアの下端部の車幅方向外側縁部を前記ヒンジ部材よりも車幅方向内側に位置させ、該車幅方向外側縁部と車体本体側部材の車幅方向内側縁部との間の車体本体側にカバー部材を取り付けたことを特徴とする横開きバックドアを備えた車体後部構造。
【請求項2】
前記車体本体側部材はリアバンパであることを特徴とする請求項1に記載の横開きバックドアを備えた車体後部構造。
【請求項3】
前記車体本体側部材はボディサイドパネルであることを特徴とする請求項1または2に記載の横開きバックドアを備えた車体後部構造。
【請求項4】
前記カバー部材は、車体本体に対する取付部が、全閉状態の前記バックドアの裏側に位置していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の横開きバックドアを備えた車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−100211(P2010−100211A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274501(P2008−274501)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】