説明

樹脂、顔料分散液、着色硬化性組成物、これを用いたカラーフィルタ及びその製造方法

【課題】微細な顔料用の分散樹脂として有用な新規な樹脂とその製造方法、該樹脂を用いた顔料の分散性・分散安定性に優れた顔料分散液、顔料分散液を含有する未硬化領域の除去性に優れた着色硬化性組成物、それを用いた着色パターンを有する高コントラストなカラーフィルタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(i)窒素原子を有する主鎖部と、(ii)pKaが14以下である官能基を有し、該主鎖部に存在する窒素原子と結合する基「X」と、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を側鎖に有する樹脂である。該樹脂を高分子分散剤として用い、(B)顔料誘導体、及び、(C)溶剤を含む顔料分散液、及び、さらに(D)重合性化合物と、(E)重合開始剤とを含有することを特徴とする着色硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤などに有用な新規樹脂、その製造方法、それを含有する顔料分散液、液晶表示素子(LCD)や固体撮像素子(CCD、CMOSなど)等に用いられるカラーフィルタを作製するのに好適な着色硬化性組成物、及び該着色硬化性組成物により形成された着色領域を有するカラーフィルタ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタは、液晶ディスプレイや固体撮像素子に不可欠な構成部品である。カラーフィルタは、着色剤(顔料又は染料)を含有する硬化性組成物を用いて作成する。着色剤が顔料である場合、分散性・分散安定性を確保するために、分散剤を添加する必要性がある。特に、分散性・分散安定性の優れる分散剤として、高分子分散剤が開発されている(例えば、特許文献1及び2参照)。これらの高分子分散剤は、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ用途に用いられている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0003】
一方、近年、液晶ディスプレイでは、従来のTV用途・モニター用途のものに比し、より高度な画質が求められ、コントラスト及び色純度の向上が要求されている。
カラーフィルタ製造用途の硬化性組成物に関しては、使用する顔料の粒子サイズとして、より微小なものを用いることで、コントラストを向上させる試みがなされている(例えば、特許文献5、参照)。
しかしながら、顔料の粒子サイズを微小化すると、顔料の表面積が大きくなるため、分散性・保存安定性が悪化する問題があった。分散性・保存安定性を確保するために、分散剤の添加量を多くすると、現像性が低下し、良好なパターンが形成され難いという問題が生じた。一方、現像性を向上させるために、アルカリ可溶性樹脂の添加量を増やすと、分散性・保存安定性が悪化するという問題が発生した。つまり、現行の分散剤では分散性・保存安定性・現像性を鼎立することが非常に困難であった。
【0004】
また、近年、固体撮像素子は、画素数の向上に従い、ピクセルサイズの縮小(パターン幅、膜厚の縮小)が必須となっている。それに伴い、硬化性組成物中の顔料濃度を高める必要がある。しかし、顔料濃度を高めると、必然的に硬化性組成物中の分散樹脂・アルカリ可溶性樹脂の含有量が低下するため、分散性・分散安定性・現像性が悪化し、パターン形成が困難になる問題が生じた。
【0005】
すなわち、近年、高機能化された固体撮像素子・液晶ディスプレイに対応する高コントラストで色特性が良好なカラーフィルタは、従来の分散剤を含有する硬化性組成物では製造することが難しく、分散性・保存安定性と現像性を鼎立できる分散剤が望まれていた。
【特許文献1】特公昭63−30057号公報
【特許文献2】特開平9−169821号公報
【特許文献3】特開平9−176511号公報
【特許文献4】特開2001−272524号公報
【特許文献5】特開2006−30541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、微細な顔料用の分散樹脂として有用な新規な樹脂とその製造方法、及び、該樹脂を分散剤として用いることで、微細な顔料を用いた場合でも分散性・分散安定性に優れた顔料分散液を提供することにある。
本発明の他の目的は、微細な顔料を多量含有する場合であっても、硬化膜中の顔料分散均一性、及び未硬化領域の除去性に優れた着色硬化性組成物を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、顔料の分散安定性と現像性が良好な着色硬化性組成物により形成された高解像度で色特性の良好な着色パターンを有するカラーフィルタ及びその生産性に優れた製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、本発明の特定構造を有する樹脂、及びそれを含有する顔料分散液の分散性・分散安定性が予想外に向上することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の目的は下記の手段により達成されるものである。
【0008】
<1> (i)窒素原子を有する主鎖部と、(ii)pKaが14以下である官能基を有し、該主鎖部に存在する窒素原子と結合する基「X」と、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を側鎖に有する樹脂。
<2> 前記樹脂の(i)窒素原子を有する主鎖部が、アミノ基を有するオリゴマー又はポリマーから構成される主鎖部であることを特徴とする<1>に記載の樹脂。
<3> 前記樹脂の(i)窒素原子を有する主鎖部が、ポリ(低級アルキレンイミン)、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、メタキシレンジアミン−エピクロルヒドリン重縮合物、ポリビニルアミン、3−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリル酸アミド共重合体、及び、(メタ)アクリル酸2−ジアルキルアミノエチル共重合体から選択される1種以上で構成されることを特徴とする<1>又は<2>に記載の樹脂。
<4> 前記樹脂の(ii)pKaが14以下である官能基が、カルボン酸、スルホン酸及び−COCHCO−から選択される官能基であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載の樹脂。
<5> 一般式(I−1)で表される繰り返し単位及び一般式(I−2)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂。
【0009】
【化1】



【0010】
一般式(I−1)及び(I−2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。aはそれぞれ独立に1〜5の整数を表す。*は繰り返し単位間の連結部を表す。XはpKaが14以下である官能基を含有する基を表す。Yは数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖を表す。
<6> 一般式(II−1)で表される繰り返し単位を及び(II−2)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載の樹脂。
【0011】
【化2】



【0012】
一般式(II−1)及び(II−2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。*、X及びYは一般式(I−1)及び(I−2)中の*、X及びYと同義である。
<7> 前記樹脂の(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」が下記一般式(III−1)で表されることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項に記載の樹脂。
【0013】
【化3】



【0014】
一般式(III−1)中、Zはポリエステル鎖を部分構造として有するポリマー又はオリゴマーであり、下記一般式(IV)で表される遊離のカルボン酸を有するポリエステルからカルボキシル基を除いた残基を表す。
【0015】
【化4】



【0016】
一般式(IV)中、Zは一般式(III−1)中のZと同義である。
<8> 前記樹脂が、主鎖部に一級又は二級アミノ基を有する樹脂に、前記pKaが14以下である官能基を有する基「X」との前駆体xと、前記数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」の前駆体yとを反応させてなる樹脂であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項に記載の樹脂。
<9> 主鎖部に一級又は二級アミノ基を有する樹脂を合成し、その後、該樹脂にpKaが14以下である官能基を有する基「X」との前駆体xと、前記数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」の前駆体yとを反応させることを特徴とする<1>〜<8>のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【0017】
<10> (A)<1>〜<8>のいずれか1項に記載の樹脂、(B)顔料、及び、(C)溶剤、を含有する顔料分散液。
<11> (A)<1>〜<8>のいずれか1項に記載の樹脂、(B)顔料、(C)溶剤、(D)光重合開始剤、及び、(E)エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物、を含有することを特徴とする着色硬化性組成物。
<12> さらに(F)アルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする<11>に記載の着色硬化性組成物。
<13> 支持体上に、<11>又は<12>に記載の着色硬化性組成物により形成された着色パターンを有するカラーフィルタ。
<14> 支持体上に、<11>又は<12>に記載の着色硬化性組成物を塗布して該硬化性組成物からなる着色層を形成する着色層形成工程と、該着色層を、マスクを介してパターン露光する露光工程と、露光後の着色層を現像して着色パターンを形成する現像工程と、を含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【0018】
本発明の樹脂、及びそれを含有する顔料分散液により、達成が困難であった微細顔料の分散性・分散安定性を達成することが出来た。さらに、本発明の着色硬化性組成物により、現像性・パターン形成性が飛躍的に向上させることができた。これらのことから、本発明の着色硬化性組成物により形成された着色領域は高解像度で色純度が高いものとなる。このため、このような着色硬化性組成物を用いることにより、解像度で高コントラストのカラーフィルタや、該カラーフィルタを備えた固体撮像素子、コントラスト比の高い液晶ディスプレイなどを得ることができる。
なお、本発明における着色領域とは、カラーフィルタにおける着色画素(着色パターン)領域、及び、遮光膜形成領域を包含するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定構造を有する、微細な顔料用の分散樹脂として有用な新規な樹脂とその製造方法、及び、該樹脂を分散剤として用いることで、微細な顔料を用いた場合でも分散性・分散安定性に優れた顔料分散液を提供することができる。
また、本発明によれば、微細な顔料を多量含有する場合であっても、硬化膜中の顔料分散均一性、及び未硬化領域の除去性に優れた着色硬化性組成物、顔料の分散安定性と現像性が良好な着色硬化性組成物により形成された高解像度で色特性の良好な着色パターンを有するカラーフィルタ及びその生産性に優れた製造方法を提供する新規樹脂を提供することができる。
特に、本発明の樹脂を顔料分散・フォトレジストに用いることにより、分散性・分散安定性が非常に優れていた顔料分散液、及び、高い現像性を発揮する着色硬化性組成物を提供することが出来る。
また、本発明によれば、高解像度で色特性の良好な着色パターンを有するカラーフィルタ及びその生産性に優れた製造方法、さらには、該カラーフィルタを備えた液晶ディスプレイや固体撮像素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、本明細書における基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含することを意味する。例えば、「アルキル基」との表記は、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0021】
本発明の樹脂(以下、適宜、「特定樹脂」と称する)は、(i)窒素原子を有する主鎖部と、(ii)pKaが14以下である官能基を有し、該主鎖部に存在する窒素原子と結合する基「X」と、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を側鎖に有することを特徴とする。以下、本発明に係る特定樹脂について詳細に説明する。
【0022】
(i)窒素原子を有する主鎖部
本発明の特定樹脂は、(i)窒素原子を有する主鎖部から構成される。これにより、顔料表面への吸着力が向上し、且つ顔料間の相互作用が低減できる。
特定樹脂は、公知のアミノ基、より好ましくは、1級又は2級アミノ基を含有するオリゴマー又はポリマーから構成される主鎖部を有することが好ましい。アミノ基を含有するオリゴマー又はポリマーとしては、より具体的には、ポリ(低級アルキレンイミン)、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、メタキシレンジアミン−エピクロルヒドリン重縮合物、ポリビニルアミン、3−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリル酸アミド共重合体、(メタ)アクリル酸2−ジアルキルアミノエチル共重合体等から選択される主鎖構造であることが好ましく、ポリ(低級アルキレンイミン)、ポリアリルアミン及び(メタ)アクリル酸2−ジアルキルアミノエチル共重合体から選択される主鎖構造であることが最も好ましい。
ポリ(低級アルキレンイミン)は鎖状であっても網目状であってもよいが、特に網目状であることにより、分散安定性及び素材供給性が高くなる。
本発明の特定樹脂における主鎖部の数平均分子量は、100〜10,000が好ましく、200〜5,000がさらに好ましく、300〜2,000がより好ましく、特に、数平均分子量が500〜1500の範囲であることが、分散安定性、現像性両立の観点から最も好ましい。主鎖部の分子量は、核磁気共鳴分光法で測定した末端基と主鎖部の水素原子積分値の比率から求めるか、原料であるアミノ基を含有するオリゴマー又はポリマーの分子量の測定により求めることができる。
【0023】
特定樹脂の主鎖部は、特にポリ(低級アルキレンイミン)、又は、ポリアリルアミン骨格から構成されることが好ましい。なお、本発明において、ポリ(低級アルキレンイミン)における低級とは炭素数が1〜5であることを示し、低級アルキレンイミンとは、炭素数1〜5のアルキレンイミンを表す。
この構造を明示すれば、本発明の特定樹脂は、一般式(I−1)で表される繰り返し単位及び一般式(I−2)で表される繰り返し単位を有する構造、或いは、一般式(II−1)で表される繰り返し単位及び一般式(II−2)で表される繰り返し単位を含有する構造を含むことが好ましい。
【0024】
<一般式(I−1)で表される繰り返し単位及び一般式(I−2)で表される繰り返し単位>
本発明の特定樹脂の好ましい構成成分である一般式(I−1)で表される繰り返し単位及び一般式(I−2)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0025】
【化5】



【0026】
一般式(I−1)及び(I−2)中、R及びRは水素原子、ハロゲン原子、又は、アルキル基を表す。aは1〜5の整数を表す。*は繰り返し単位間の連結部を表す。XはpKaが14以下である官能基を含有する基を表す。Yは数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖を表す。
【0027】
本発明の樹脂は、一般式(I−1)又は一般式(I−2)で表される繰り返し単位に加えて、さらに一般式(I−3)で表される繰り返し単位を共重合成分として有することが好ましい。このような繰り返し単位を併用することで、この樹脂を顔料などの微粒子分散剤として用いたときにさらに分散性能が向上する。
【0028】
【化6】



【0029】
一般式(I−3)中、R、R及びaは一般式(I−1)と同義である。Y’はアニオン基を有する数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖を表す。上記一般式(I−3)で表される繰り返し単位は、主鎖部に一級又は二級アミノ基を有する樹脂に、アミンと反応して塩を形成する基を有するオリゴマー又はポリマーを添加して反応させることで形成することが可能である。ここで、アニオン基としては、CO又はSOが好ましく、COが最も好ましい。アニオン基は、Y’が有するオリゴマー鎖又はポリマー鎖の末端位にあることが好ましい。
【0030】
一般式(I−1)、一般式(I−2)及び一般式(I−3)において、R及びRは特に水素原子であることが好ましい。aは2であることが原料入手性の観点から好ましい。
【0031】
本発明の樹脂は、一般式(I−1)、一般式(I−2)及び一般式(I−3)で表される繰り返し単位以外に、一級又は三級のアミノ基を含有する低級アルキレンイミンを繰り返し単位として含んでいてもよい。なお、そのような低級アルキレンイミン繰り返し単位における窒素原子には、さらに、前記X、Y又はY’で示される基が結合していてもよい。このような主鎖構造に、Xで示される基が結合した繰り返し単位とYが結合した繰り返し単位の双方を含む樹脂もまた、本発明の特定樹脂に包含される。
【0032】
一般式(I−1)で表される繰り返し単位は、pKaが14以下である官能基を含有する基Xを有する繰り返し単位であり、このような繰り返し単位は、保存安定性・現像性の観点から、本発明の樹脂に含まれる全繰り返し単位中、1〜80モル%含有することが好ましく、3〜50モル%含有することが最も好ましい。
一般式(I−2)で表される繰り返し単位は、数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖Yを有する繰り返し単位であり、このような繰り返し単位は、保存安定性の観点から、本発明の樹脂の全繰り返し単位中、10〜90モル%含有することが好ましく、30〜70モル%含有することが最も好ましい。
両者の含有比について検討するに、分散安定性、及び、親疎水性のバランスの観点からは、繰り返し単位(I−1):(I−2)はモル比で10:1〜1:100の範囲であることが好ましく、1:1〜1:10の範囲であることがより好ましい。
【0033】
なお、所望により併用される一般式(I−3)で表される繰り返し単位は数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖を含む部分構造が、主鎖の窒素原子にイオン的に結合しているものであり、本発明の樹脂の全繰り返し単位中、効果の観点からは、0.5〜20モル%含有することが好ましく、1〜10モル%含有することが最も好ましい。
なお、ポリマー鎖「Y」がイオン的に結合していることは、赤外分光法、酸価滴定や塩基滴定により確認できる。
【0034】
<一般式(II−1)で表される繰り返し単位及び(II−2)で表される繰り返し単位>
本発明の特定樹脂の他の好ましい構成成分である一般式(II−1)で表される繰り返し単位及び一般式(II−2)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0035】
【化7】



【0036】
一般式(II−1)及び(II−2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基を表す。*、X及びYは一般式(I−1)及び(I−2)中の*、X及びYと同義である。
【0037】
本発明の樹脂は、一般式(II−1)で表される繰り返し単位、一般式(II−2)で表される繰り返し単位に加えて、さらに一般式(II−3)で表される繰り返し単位を共重合成分賭して含むことが好ましい。このような繰り返し単位を併用することで、この樹脂を顔料などの微粒子分散剤として用いたときにさらに分散性能が向上する。
【0038】
【化8】



【0039】
一般式(II−3)中、R、R、R及びRは一般式(II−1)と同義である。Y’は一般式(I−3)中のY’と同義である。
【0040】
一般式(II−1)、(II−2)及び(II−3)において、R、R、R及びRは水素原子であることが原料の入手性の観点好ましい。
【0041】
一般式(II−1)はpKaが14以下である官能基Xを含有する基を有する繰り返し単位であり、このような繰り返し単位は、保存安定性・現像性の観点から、本発明の樹脂に含まれる全繰り返し単位中、1〜80モル%含有することが好ましく、3〜50モル%含有することが最も好ましい。
一般式(II−2)は数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖Yを有する繰り返し単位であり、このような繰り返し単位は、保存安定性の観点から、本発明の樹脂の全繰り返し単位中、10〜90モル%含有することが好ましく、30〜70モル%含有することが最も好ましい。
【0042】
両者の含有比について検討するに、分散安定性、及び、親疎水性のバランスの観点からは、繰り返し単位(II−1):(II−2)はモル比で10:1〜1:100の範囲であることが好ましく、1:1〜1:10の範囲であることがより好ましい。
所望により併用される一般式(II−3)で表される繰り返し単位は本発明の樹脂の全繰り返し単位中、0.5〜20モル%含有することが好ましく、1〜10モル%含有することが最も好ましい。
本発明の特定樹脂においては、分散性の観点から、特に一般式(I−1)で表される繰り返し単位と一般式(I−2)で表される繰り返し単位の双方を含むことが最も好ましい。
【0043】
(ii)pKaが14以下である官能基を含有する基「X」
Xは水温25℃でのpKaが14以下である官能基を含有する基を表す。ここでいう「pKa」とは、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載されている定義のものである。
「pKaが14以下である官能基」は、物性がこの条件を満たすものであれば、その構造などは特に限定されず、公知の官能基でpKaが上記範囲を満たすものが挙げられ、具体的には、例えば、カルボン酸(pKa 3〜5程度)、スルホン酸(pKa −3〜−2程度)、りん酸(pKa 2程度)、−COCHCO−(pKa 8〜10程度)、−COCHCN(pKa 8〜11程度)、−CONHCO−、フェノール性水酸基、−RCH2OH又は−(RCHOH(Rはペルフルオロアルキル基を表す pKa 9〜11程度))、スルホンアミド基(pKa 9〜11程度)等が挙げられ、特にカルボン酸(pKa 3〜5程度)、スルホン酸(pKa −3〜−2程度)、−COCHCO−(pKa 8〜10程度)が好ましい。
このpKaが14以下である官能基を含有する基「X」は、通常、主鎖構造に含まれる窒素原子に直接結合するものであるが、特定樹脂の主鎖部の窒素原子とXとは、共有結合のみならず、イオン結合して塩を形成する態様で連結していてもよい。また、本発明の樹脂は、分子内に2種以上の互いに異なるXを有していてもよい。
pKaが14以下である官能基を含有する基「X」の分子量は、50〜1000であることが好ましく、50〜500であることが最も好ましい。この分子量の範囲であることにより、現像性・分散性が良好となる。
【0044】
本発明におけるpKaが14以下である官能基を含有する基「X」としては、特に一般式(V−1)、一般式(V−2)又は一般式(V−3)で表される構造を有するものが好ましい。
【0045】
【化9】



【0046】
一般式(V−1)、一般式(V−2)中、Uは単結合又は二価の連結基を表す。d及びeは、それぞれ独立して0又は1を表す。一般式(V−3)中、Wはアシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。
【0047】
Uで表される二価の連結基としては、例えば、アルキレン(より具体的には、例えば、−CH−、−CHCH−、−CHCHMe−、−(CH−、−CHCH(n−C1021)−等)、酸素を含有するアルキレン(より具体的には、例えば、−CHOCH−、−CHCHOCHCH−等)、シクロアルキレン基(例えば、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロオクチレン等)、アリーレン基(例えば、フェニレン、トリレン、ビフェニレン、ナフチレン、フラニレン、ピロリレン等)、アルキレンオキシ(例えば、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、フェニレンオキシ等)等が挙げられるが、特に炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキレン基又は炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数5〜10のシクロアルキレン基又は炭素数6〜15のアリーレン基が最も好ましい。また、生産性の観点から、dは1が好ましく、また、eは0が好ましい。
【0048】
Wはアシル基又はアルコキシカルボニル基を表す。Wにおけるアシル基としては、炭素数1〜30のアシル基(例えば、ホルミル、アセチル、n−プロパノイル、ベンゾイル等)が好ましく、特にアセチルが好ましい。Wにおけるアルコキシカルボニル基としては、Wは、特にアシル基が好ましく、アセチル基が製造のし易さ・原料(Xの前駆体X’)の入手性の観点から好ましい。
【0049】
本発明の「X」は、主鎖部の窒素原子と結合していることを特徴としている。これにより、顔料の分散性・分散安定性が飛躍的に向上する。この理由は不明であるが、次のように考えている。すなわち、主鎖部の窒素原子はアミノ基、アンモニウム基又はアミド基の構造で存在しており、これらは顔料表面の酸性部と水素結合・イオン結合等の相互作用をして吸着していると考えられる。さらに、本発明の「X」は酸基として機能するため、顔料の塩基性部(窒素原子等)や金属原子(銅フタロシアンの銅等)と相互作用することができる。つまり、本発明の樹脂は、窒素原子と「X」とで、顔料の塩基性部と酸性部の双方を吸着することができるため、吸着能が高まり、分散性・保存安定性が飛躍的に向上したものと考えられる。
【0050】
さらに、「X」はそこに部分構造としてpKaが14以下の官能基を含むであるため、アルカリ可溶性基としても機能する。それにより、この樹脂を硬化性組成物などに用い、塗膜にエネルギーを付与して部分的に硬化させ、未露光部を溶解除去してパターンを形成する如き用途に使用する場合、未硬化領域のアルカリ現像液への現像性が向上し、超微細顔料を含有する顔料分散液を用いた着色硬化性組成物、顔料含率の高い顔料分散液及び着色硬化性組成物において、分散性・分散安定性・現像性の鼎立が可能になったと考えられる。
また、一般的にポリカプロラクトン鎖を含有する分散樹脂は、特開2007−63472号公報に記載のように、結晶性が高いため、低温で溶剤から析出する。しかし、本発明のポリカプロラクトン鎖を含有する分散樹脂は、予想外にも、溶剤溶解性が高く、低温でも溶剤から析出しない。この原因は不明であるが、樹脂中の「X」で示される部分構造が溶剤と親和することにより、溶剤溶解性が向上しているものと考えている。
【0051】
XにおけるpKaが14以下の官能基の含有量は特に制限がないが、本発明の特定樹脂1gに対し、0.01〜5mmolであることが好ましく、0.05〜1mmolであることが最も好ましい。この範囲において、顔料の分散性、分散安定性が向上し、且つ、硬化性組成物に該樹脂を用いた場合、未硬化部の現像性に優れることになる。また、酸価の観点からは、特定樹脂の酸価が5〜50mgKOH/g程度となる量、含まれることが、本発明の特定樹脂をパターン形成性の硬化性組成物に用いたときの現像性の観点から好ましい。
酸価滴定は、公知の方法により行うことができ、例えば指示薬法(中和点を指示薬により見極める方法)、又は電位差測定法等を用いることができる。また、酸価滴定に用いる滴定液は市販の水酸化ナトリウム水溶液を用いることができるが、比較的高いpKaを有する官能基(例えば、−COCHCO−、フェノール性水酸基等)のように、この水酸化ナトリウム水溶液によって酸価が測定しにくい場合は、ナトリウムメトキシド−ジオキサン溶液等の非水系滴定液を調製し、非水系溶媒系で酸価測定することが可能である。
【0052】
(iii)数平均分子量が500〜100,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」
「Y」は数平均分子量500〜100,000のオリゴマー鎖又はポリマー鎖を表す。Yは、特定樹脂の主鎖部と連結できるポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の公知のポリマー鎖が挙げられる。Yの特定樹脂との結合部位は、末端であることが好ましい。なお、本発明の樹脂は、分子内に互いに構造の異なる2種以上の「Y」(オリゴマー鎖、ポリマー鎖)を有していてもよい。
【0053】
Yは、主鎖部の窒素原子と結合していることが好ましい。Yと主鎖部の結合様式は、共有結合、イオン結合、又は、共有結合及びイオン結合の混合である。Yと主鎖部の結合様式の比率は、共有結合:イオン結合=100:0〜0:100であるが、95:5〜5:95が好ましく、90:10〜10:90がより好ましく、95:5〜80:20の範囲が最も好ましい。共有結合とイオン結合との結合様式をこの好ましい範囲とすることで、分散性・分散安定性が向上し、且つ溶剤溶解性が良好となる。
【0054】
Yは、主鎖部の窒素原子とアミド結合、又はカルボン酸塩としてイオン結合していることが好ましい。
【0055】
Yの数平均分子量はGPC法によるポリスチレン換算値により測定することができる。Yの数平均分子量は、特に1,000〜50,000が好ましく、1,000〜30,000が分散性・分散安定性・現像性の観点から最も好ましい。
Yで示される側鎖構造は、主鎖連鎖に対し、樹脂1分子中に、2つ以上連結していることが好ましく、5つ以上連結していることが最も好ましい。
【0056】
特に、Yは一般式(III−1)で表される構造を有するものが好ましい。
【0057】
【化10】



【0058】
一般式(III−1)中、Zはポリエステル鎖を部分構造として有するポリマー又はオリゴマーであり、下記一般式(IV)で表される遊離のカルボン酸を有するポリエステルからカルボキシル基を除いた残基を表す。
【0059】
【化11】



【0060】
一般式(IV)中、Zは一般式(III−1)中のZと同義である。
【0061】
特定樹脂が一般式(I−3)又は(II−3)で表される繰り返し単位を含有する場合、Y’が一般式(III−2)であることが好ましい。
【0062】
【化12】



【0063】
一般式(III−2)中、Zは一般式(III−1)のZと同義である。
【0064】
片末端にカルボキシル基を有するポリエステル(一般式(IV)で表わされるポリエステル)は、(IV-1)カルボン酸とラクトンの重縮合、(IV-2)ヒドロキシ基含有カルボン酸の重縮合、(IV-3)二価アルコールと二価カルボン酸(もしくは環状酸無水物)の重縮合、により得ることができる。
【0065】
(IV-1)カルボン酸とラクトンの重縮合反応において用いるカルボン酸は、脂肪族カルボン酸(炭素数1〜30の直鎖又は分岐のカルボン酸が好ましく、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、n−ヘキサン酸、n−オクタン酸、n−デカン酸、n−ドデカン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸等)、ヒドロキシ基含有カルボン酸(炭素数1〜30の直鎖又は分岐のヒドロキシ基含有カルボン酸が好ましく、例えば、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシドデカン酸、5−ヒドロキシドデカン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、2,2−ビス(ヒロドキシメチル)酪酸等)が挙げられるが、特に、炭素数6〜20の直鎖脂肪族カルボン酸又は炭素数1〜20のヒドロキシ基含有カルボン酸が好ましい。これらカルボン酸は混合して用いても良い。ラクトンは、公知のラクトンを用いることができ、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−オクタノラクトン、δ−バレロラクトン、δ−ヘキサラノラクトン、δ−オクタノラクトン、ε−カプロラクトン、δ−ドデカノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等を挙げることができ、特にε−カプロラクトンが反応性・入手性の観点から好ましい。
これらラクトンは複数種を混合して用いても良い。
カルボン酸とラクトンの反応時の仕込み比率は、目的のポリエステル鎖の分子量によるため一義的に決定できないが、カルボン酸:ラクトン=1:1〜1:1,000が好ましく、1:3〜1:500が最も好ましい。
【0066】
(IV-2)ヒドロキシ基含有カルボン酸の重縮合におけるヒドロキシ基含有カルボン酸は、前記(IV-1)におけるヒドロキシ基含有カルボン酸と同様であり、好ましい範囲も同様である。
(IV-3)二価アルコールと二価カルボン酸(もしくは環状酸無水物)の重縮合反応における二価アルコールとしては、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール(炭素数2〜30のジオールが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等)が挙げられ、特に炭素数2〜20の脂肪族ジオールが好ましい。
二価カルボン酸としては、直鎖又は分岐の二価の脂肪族カルボン酸(炭素数1〜30の二価の脂肪族カルボン酸が好ましく、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、グルタル酸、スベリン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸等)が挙げられ、特に炭素数3〜20の二価カルボン酸が好ましい。また、これら二価カルボン酸と等価な酸無水物(例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸等)を用いてもよい。
二価カルボン酸と二価アルコールは、モル比1:1で仕込むことが好ましい。これにより、末端にカルボン酸を導入することが可能となる。
【0067】
ポリエステル製造時の重縮合は、触媒を添加して行うことが好ましい。触媒としては、ルイス酸として機能する触媒が好ましく、例えばTi化合物(例えば、Ti(OBu)、Ti(O−Pr)等)、Sn化合物(例えば、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズヒドロキシブチルオキシド、塩化第二スズ、ブチルスズジオキシド等)、プロトン酸(例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸等)等が挙げられる。触媒量は、全モノマーのモル数に対し、0.01〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%が最も好ましい。反応温度は、80〜250℃が好ましく、100〜180℃が最も好ましい。反応時間は、反応条件により異なるが、概ね1〜24時間である。
【0068】
ポリエステルの数平均分子量はGPC法によるポリスチレン換算値として測定することができる。ポリエステルの数平均分子量は、1,000〜1,000,000であるが、2,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000が最も好ましい。分子量がこの範囲にある場合、分散性・現像性の両立ができる。
【0069】
Yにおけるポリマー鎖を形成するポリエステル部分構造は、特に、(IV-1)カルボン酸とラクトンの重縮合、及び、(IV-2)ヒドロキシ基含有カルボン酸の重縮合、により得られるポリエステルであることが、製造容易性の観点から好ましい。
【0070】
本発明の特定樹脂の具体的態様〔(A−1)〜(A−60)〕を、樹脂が有する繰り返し単位の具体的構造とその組合せにより以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。下記式中、k、l、m、及びnはそれぞれ繰り返し単位の重合モル比を示し、kは1〜80、lは10〜90、mは0〜80、nは0〜70であり、且つk+l+m+n=100である。p及びqはポリエステル鎖の連結数を示し、それぞれ独立に5〜100,000を表す。R’は水素原子又はアルコキシカルボニル基を表す。
【0071】
【化13】



【0072】
【化14】



【0073】
【化15】



【0074】
【化16】



【0075】
【化17】



【0076】
【化18】



【0077】
【化19】



【0078】
【化20】



【0079】
【化21】



【0080】
【化22】



【0081】
本発明の特定樹脂を合成するには、(1)一級又は二級アミノ基を有する樹脂と、Xの前駆体x及びYの前駆体yとを反応させる方法、(2)窒素原子を含有するモノマーと、Xを含有するモノマーとYを含有するマクロモノマーとの重合による方法、により製造することが可能であるが、まず、一級又は二級アミノ基を主鎖に有する樹脂を合成し、その後、該樹脂に、Xの前駆体x及びYの先駆体yを反応させて、主鎖に存在する窒素原子に高分子反応により導入することで製造することが好ましい。
以下、(1)一級又は二級アミノ基を有する樹脂と、Xの前駆体x及びYの前駆体yとを反応させる方法について説明する。
一級又は二級アミノ基を有する樹脂としては、前記窒素原子を有する主鎖部を構成する1級又は2級アミノ基を含有するオリゴマー又はポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(低級アルキレンイミン)、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、メタキシレンジアミン−エピクロルヒドリン重縮合物、ポリビニルアミン等が挙げられる。これらのうち、ポリ(低級アルキレンイミン)、又は、ポリアリルアミンから構成されるオリゴマー又はポリマーが好ましい。
【0082】
pKaが14以下である官能基を有する基「X」の前駆体xとは、前記一級又は二級アミノ基を有する樹脂と反応し、主鎖にXを導入することのできる化合物を表す。
xの例としては、環状カルボン酸無水物(炭素数4〜30の環状カルボン酸無水物が好ましく、例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物、マレイン酸無水物、アリルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、n−オクチルコハク酸無水物、n−デシルコハク酸無水物、n−ドデシルコハク酸無水物、n−テトラデシルコハク酸無水物、n−ドコセニルコハク酸無水物、(2−ヘキセン−1−イル)コハク酸無水物、(2−メチルプロペン−1−イル)コハク酸無水物、(2−ドデセン−1−イル)コハク酸無水物、n−オクテニルコハク酸無水物、(2,7−オクタンジエン−1−イル)コハク酸無水物、アセチルリンゴ酸無水物、ジアセチル酒石酸無水物、ヘット酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3又は4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラフルオロコハク酸無水物、3又は4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、ナフタル酸無水物、ナフタル酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンカルボン酸二無水物等)、ハロゲン原子含有カルボン酸(例えば、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、4−クロロ−n−酪酸等)、スルトン(例えば、プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン等)、ジケテン、環状スルホカルボン酸無水物(例えば、2−スルホ安息香酸無水物等)、−COCHCOClを含有する化合物(例えば、エチルマロニルクロリド等)、又はシアノ酢酸クロリド等が挙げられ、特に環状カルボン酸無水物、スルトン、ジケテンが、生産性の観点から好ましい。
【0083】
数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」の前駆体yとは、前記一級又は二級アミノ基を有する樹脂と反応し、「Y」を導入することのできる化合物を表す。
yは、特定樹脂の窒素原子と共有結合又はイオン結合できる基を末端に有する数平均分子量500〜1,000,000オリゴマー又はポリマーが好ましく、特に、片末端に遊離のカルボキシル基を有する数平均分子量500〜1,000,000オリゴマー又はポリマーが最も好ましい。
yの例としては、一般式(IV)で表される片末端に遊離のカルボン酸を有するポリエステル、片末端に遊離のカルボン酸を有するポリアミド、片末端に遊離のカルボン酸を有するポリ(メタ)アクリル酸系樹脂等が挙げられるが、特に、一般式(IV)で表される片末端に遊離のカルボン酸を含有するポリエステルが最も好ましい。
【0084】
yは公知の方法で合成することができ、例えば、一般式(IV)で表される片末端に遊離のカルボン酸を含有するポリエステルは、前記の通り、(IV-1)カルボン酸とラクトンの重縮合、(IV-2)ヒドロキシ基含有カルボン酸の重縮合、(IV-3)二価アルコールと二価カルボン酸(もしくは環状酸無水物)の重縮合より製造する方法が挙げられる。片末端に遊離のカルボン酸を含有するポリアミドは、アミノ基含有カルボン酸(例えば、グリシン、アラニン、β−アラニン、2−アミノ酪酸等)の自己縮合等により製造することができる。片末端に遊離のカルボン酸を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルはカルボキシル基含有連鎖移動剤(例えば、3−メルカプトプロピオン酸等)の存在下、(メタ)アクリル酸系モノマーをラジカル重合することにより製造することができる。
【0085】
本発明の特定樹脂は、(a)一級又は二級アミノ基を有する樹脂とx、yを同時に反応させる方法、(b)一級又は二級アミノ基を有する樹脂とxを反応させた後、yと反応させる方法、(c)一級又は二級アミノ基を有する樹脂とyを反応させた後、xと反応させる方法、により製造することができる。特に、(c)一級又は二級アミノ基を有する樹脂とyを反応させた後、xと反応させる方法が好ましい。
【0086】
反応温度は、条件により適宜選択できるが、20〜200℃が好ましく、40〜150℃が最も好ましい。反応時間は、1〜48時間が好ましく、1〜24時間が生産性の観点からさらに好ましい。
【0087】
反応は溶媒存在下で行っても良い。溶媒としては、水、スルホキシド化合物(例えば、ジメチルスルホキシド等)、ケトン化合物(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル化合物(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート等)、エーテル化合物(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素化合物(例えば、ペンタン、ヘキサン等)、芳香族炭化水素化合物(例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等)、二トリル化合物(例えば、アセトニトリル、プロピオンニトリル等)、アミド化合物(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、カルボン酸化合物(例えば、酢酸、プロピオン酸等)、アルコール化合物(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、3−メチルブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等)、ハロゲン系溶媒(例えば、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)が挙げられる。
溶媒を用いる場合、基質に対し、0.1〜100重量倍用いることが好ましく、0.5〜10重量倍用いることが最も好ましい。
本発明の特定樹脂は、再沈法で精製してもよい。再沈法で、低分子量成分を除去することにより、得られた特定樹脂を顔料分散剤として使用した場合の分散性能が向上する。
再沈には、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メタノールなどのアルコール系溶媒を用いることが好ましい。
【0088】
次に、(2)窒素原子を含有するモノマーと、Xを含有するモノマーとYを含有するマクロモノマーとの重合による方法について説明する。
この方法において用いる、窒素原子を含有するモノマーとしては、公知のモノマーを選ぶことができ、例えば、(メタ)アクリル酸2−ジアルキルアミノエチル、3−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等が挙げられるが、特に三級アミノ基を含有するモノマーが好ましく、(メタ)アクリル酸2−ジアルキルアミノエチル、3−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが最も好ましい。
Xを含有するモノマーとしては、Xを含有する(メタ)アクリル酸アミドが好ましく、例えば、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアラニン等の(メタ)アクリロイル基を含有するアミノ酸が好ましい。
Yを含有するマクロモノマーとしては、公知のマクロモノマーが挙げられるが、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン又はポリエステルの片末端に重合性基を有しているマクロモノマーが好ましい。例としては、東亜合成製マクロモノマーAA−6(末端基がメタクリロイル基であるポリメタクリル酸メチル)、AS−6(末端基がメタクリロイル基であるポリスチレン)、AN−6S(末端基がメタクリロイル基であるスチレンとアクリロニトリルの共重合体)、AB−6(末端基がメタクリロイル基であるポリアクリル酸ブチル)、ダイセル化学製プラクセルFM5(メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン5モル当量付加品)、FA10L(アクリル酸2−ヒドロキシエチルのε−カプロラクトン10モル当量付加品)及び特開平2−272009号公報に記載のポリエステル系マクロマーが好ましい。
【0089】
重合は窒素雰囲気下、ラジカル重合開始剤を用いて行うことが好ましい。ラジカル重合開始剤は公知のラジカル重合開始剤を用いることができるが、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸メチルが分子量の調整や取り扱いの観点から好ましい。
ラジカル重合開始剤は、全モノマーのモル数に対し、0.01モル%〜10モル%用いることが好ましく、0.1モル%〜5モル%用いることが最も好ましい。
分子量を調整するのに、連鎖移動剤を添加しても良い。連鎖移動剤としては、特にチオール化合物が好ましく、炭素数5〜20のアルカンチオール、2−メルカプトエタノール及び2−メルカプトプロピオン酸が好ましい。
連鎖移動剤は、全モノマーのモル数に対し、0.01モル%〜10モル%用いることが好ましく、0.1モル%〜5モル%用いることが最も好ましい。反応温度は60〜100℃が好ましく、70〜90℃が最も好ましい。
反応溶媒としては、前記(1)一級又は二級アミノ基を有する樹脂と、Xの前駆体x及びYの前駆体yとを反応させる方法で挙げた溶媒が挙げられる。
【0090】
このようにして得られた本発明の新規樹脂は、GPC法により測定された重量平均分子量が3,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがさらに好ましい。分子量が上記範囲において、高現像性・高保存安定性を達成しうるという利点を有する。また、本発明の特定樹脂における(i)主鎖部における窒素原子の存在は、酸滴定等の方法により確認することができ、(ii)pKaが14以下である官能基の存在、及び、その官能基が主鎖部に存在する窒素原子と結合していることは塩基滴定・核磁気共鳴分光法・赤外分光法等の方法により確認することができる。また、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を側鎖に有する点については、核磁気共鳴分光法・GPC法等の方法で確認することができる。
【0091】
以下に、本発明の特定樹脂の具体例をその分子量とともに記載する。
【0092】
【化23】



【0093】
【化24】



【0094】
【化25】




【0095】
【化26】



【0096】
【化27】




【0097】
【化28】



【0098】
[顔料分散液]
本発明の特定樹脂は、特に顔料分散剤として優れた機能を発揮する。以下、(A)本発明の特定樹脂、(B)顔料、(C)溶剤、を含有する顔料分散液について詳細に述べる。
本発明の顔料分散液には、(A)本発明の特定樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
顔料分散液においては、(A)特定樹脂は、後述する(B)顔料100質量部に対して1質量部から200質量部の範囲で含有してもよく、好ましくは、5質量部から100質量部の範囲であり、より好ましくは、5質量部から60質量部の範囲である。
【0099】
<(B)顔料>
本発明の顔料分散液が有する顔料は、従来公知の種々の無機顔料または有機顔料を用いることができる。また、無機顔料であれ有機顔料であれ、高透過率であることが好ましいことを考慮すると、なるべく細かいものの使用が好ましく、ハンドリング性をも考慮すると、上記顔料の平均粒子径は、0.005μm〜0.1μmが好ましく、0.005μm〜0.05μmがより好ましい。
【0100】
また、上記無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、および前記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0101】
本発明の顔料分散液に用いることができる有機顔料としては、例えば、
C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208;
【0102】
C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276;
【0103】
C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50;
C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79;
C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58;
C.I.ピグメントブラウン23、25、26;
C.I.ピグメントブラック1,7;
カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック等を挙げることができる。
【0104】
本発明では、特に顔料の構造式中に塩基性のN原子をもつものを好ましく用いることができる。これら塩基性のN原子をもつ顔料は本発明の組成物中で良好な分散性を示す。その原因については十分解明されていないが、感光性重合成分と顔料との親和性の良さが影響しているものと推定される。
【0105】
本発明において好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
【0106】
C.I.ピグメントイエロー11、24、108、109、110、138、139、150、151、154、167、180、185、
C.I.ピグメントオレンジ36、71、
C.I.ピグメントレッド122、150、171、175、177、209、224、242、254、255、264、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、
C.I.ピグメントブルー15:1、15:3、15:6、16、22、60、66、
C.I.ピグメントグリーン7、36、37、58;
C.I.ピグメントブラック1
【0107】
これら有機顔料は、単独もしくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。上記組合せの具体例を以下に示す。例えば、赤の顔料として、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料単独またはそれらの少なくとも一種と、ジスアゾ系黄色顔料、イソインドリン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料またはペリレン系赤色顔料と、の混合などを用いることができる。例えば、アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド177が挙げられ、ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド155、C.I.ピグメントレッド224が挙げられ、ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメントレッド254が挙げられ、色分解性の点でC.I.ピグメントイエロー139との混合が好ましい。また、赤色顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:50が好ましい。100:4以下では400nmから500nmの光透過率を抑えることが困難であり、また100:51以上では主波長が短波長寄りになり、色分解能を上げることが出来ない場合がある。特に、上記質量比としては、100:10〜100:30の範囲が最適である。尚、赤色顔料同士の組み合わせの場合は、求める分光に併せて調整することができる。
【0108】
また、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料を単独で、または、これとジスアゾ系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、アゾメチン系黄色顔料若しくはイソインドリン系黄色顔料との混合を用いることができる。例えば、このような例としては、C.I.ピグメントグリーン7、36、37とC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180またはC.I.ピグメントイエロー185との混合が好ましい。緑顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:150が好ましい。上記質量比としては100:30〜100:120の範囲が特に好ましい。
【0109】
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料を単独で、若しくはこれとジオキサジン系紫色顔料との混合を用いることができる。例えばC.I.ピグメントブルー15:6とC.I.ピグメントバイオレット23との混合が好ましい。青色顔料と紫色顔料との質量比は、100:0〜100:100が好ましく、より好ましくは100:10以下である。
【0110】
また、ブラックマトリックス用の顔料としては、カーボン、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタン単独または混合が用いられ、カーボンとチタンブラックとの組合せが好ましい。また、カーボンとチタンブラックとの質量比は、100:0〜100:60の範囲が好ましい。
【0111】
本発明に用いられる顔料は、予め微細化処理を施したものを使用することが好ましい。顔料1次粒子の微細化は、i)顔料、ii)水溶性の無機塩、iii)該無機塩を実質的に溶解しない水溶性有機溶剤をニーダー等で機械的に混練する方法がよく知られている(ソルトミリング法)。この工程において、必要に応じて、iv) 顔料被覆用高分子化合物等を同時に使用してもよい。
【0112】
i)顔料
顔料としては、既述の顔料と同様のものが挙げられる。
ii)水溶性の無機塩
無機塩は、水に溶解するものであれば特に限定されず、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等を用いることができるが、価格の点から塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを用いるのが好ましい。ソルトミリングする際に用いる無機塩の量は、処理効率と生産効率の両面から、有機顔料の1〜30重量倍、特に5〜25重量倍であることが好ましい。有機顔料に対する無機塩の量比が大きいほど微細化効率が高いが、1回の顔料の処理量が少なくなるためである。
【0113】
iii) ii)を実質的に溶解しない少量の水溶性の有機溶剤
水溶性有機溶剤は、有機顔料、無機塩を湿潤する働きをするものであり、水に溶解(混和)し、かつ用いる無機塩を実質的に溶解しないものであれば特に限定されない。但し、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコール等が用いられる。
【0114】
水溶性有機溶剤の添加量としては、無機塩に対して5重量%〜50重量%が好ましい。より好ましくは無機塩に対して10重量%〜40重量%であり、最適には無機塩に対して15重量%〜35重量%である。添加量が5重量%未満であると、均一な混練が難しくなり、粒子サイズが不ぞろいになる恐れがある。添加量が50重量%以上であると、混練組成物がやわらかくなりすぎ、混練組成物にシアがかかりにくくなる為に、十分な微細化効果が得られなくなる。
水溶性有機溶剤はソルトミリング初期に全てを添加しても良いし、分割して添加しても良い。水溶性有機溶剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用することも出来る。
【0115】
iv)顔料被覆用高分子化合物
添加してもよい顔料被覆用高分子化合物は、好ましくは室温で固体であり、水不溶性で,かつソルトミリング時の湿潤剤に用いる水溶性有機溶剤に少なくとも一部可溶である必要があり,天然樹脂,変性天然樹脂,合成樹脂,天然樹脂で変性された合成樹脂が用いられる。乾燥した処理顔料を用いる場合には,用いる化合物は室温で固体であることが好ましい。天然樹脂としてはロジンが代表的であり,変性天然樹脂としては,ロジン誘導体,繊維素誘導体,ゴム誘導体,タンパク誘導体およびそれらのオリゴマーが挙げられる。合成樹脂としては,エポキシ樹脂,アクリル樹脂,マレイン酸樹脂,ブチラール樹脂,ポリエステル樹脂,メラミン樹脂,フェノール樹脂,ポリウレタン樹脂等が挙げられる。天然樹脂で変性された合成樹脂としては,ロジン変性マレイン酸樹脂,ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
【0116】
合成樹脂としては、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
これらの樹脂を加えるタイミングは、ソルトミリング初期にすべてを添加してもよく、分割して添加してもよい。
【0117】
本発明の着色組成物をカラーフィルタ用として用いる場合には、色むらやコントラストの観点から、顔料の一次粒子径は5〜100nmが好ましく、5〜70nmがより好ましく、5〜50nmが更に好ましく、5〜40nmが最も好ましい。本発明の特定樹脂は、5〜40nmの範囲で特に効果を発揮することができる。
顔料の一次粒子径は、電子顕微鏡等の公知の方法で測定することができる。
【0118】
中でも、顔料としては、アントラキノン系、アゾメチン系、ベンジリデン系、シアニン系、ジケトピロロピロール系、フタロシアニン系から選ばれる顔料であることが好ましい。
【0119】
本発明の顔料分散液における顔料の含有量は、顔料分散液の全固形分に対して、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上70質量%以下であることがもっとも好ましい。本発明の特定樹脂を顔料分散剤として用いた場合、公知の分散剤では安定な均一分散が困難である、顔料が40質量%以上の高含有量条件下において、特にその効果が著しいといえる。
【0120】
(C)溶剤
本発明の顔料分散液は、少なくとも一種の(C)溶剤を有する。(C)溶剤としては、以下に示される有機溶剤から選択される液体が挙げられ、顔料分散液中に含まれる各成分の溶解性や、硬化性組成物に応用した場合の塗布性などを考慮して選択されるものであり、これら所望の物性を満足すれば基本的に特には限定されないが、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
溶剤の具体例としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;
【0121】
エーテル類、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、エチルセロソルブアセテート(エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン等;が好ましい。
【0122】
これらの中でも、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等がより好ましい。
【0123】
本発明の顔料分散液における(C)溶剤の含有量としては、50〜90質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、70〜90質量%が最も好ましい。溶剤の含有量が前記範囲内であることにより、異物の発生抑制の点で有利である。
【0124】
(その他の成分)
本発明の顔料分散液には、前記(A)〜(C)の必須成分に加え、顔料分散液の用途など、目的に応じて、本発明の効果を損なわない限りにおいて他の成分を含有することができる。
本発明の顔料分散液は、さらに顔料誘導体を含有することが好ましい。特に、酸性基を有する顔料誘導体を含有することで、分散性・分散安定性が飛躍的に向上する。
顔料誘導体は、有機顔料、アントラキノン類又はアクリドン類の一部分を酸性基、塩基性基又はフタルイミドメチル基で置換した構造が好ましい。顔料誘導体を構成する有機顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられる。
【0125】
顔料誘導体が有する酸性基としては、スルホン酸、カルボン酸及びその4級アンモニウム塩が好ましい。また、顔料誘導体が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましい。
【0126】
顔料誘導体の使用量は特に制限がないが、顔料に対し5〜50質量%用いることが好ましく、10〜30質量%用いることがさらに好ましい。
【0127】
本発明の顔料分散液に、さらに(G)複素環を含有するモノマーとエチレン性不飽和結合を有する重合性オリゴマーを共重合体単位として含むグラフト共重合体(以下、単に(G)グラフト共重合体とよぶ)を含有することが好ましい。これにより、分散性がさらに向上する。複素環を含有するモノマーとしては、一般式(VI−1)及び一般式(VI−2)で表されるモノマーが好ましい。
【0128】
【化29】



【0129】
〔前記一般式(VI−1)において、Rは、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。Rは、アルキレン基を表す。Wは、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。Xは−O−、−S−、−C(=O)O−、−CONH−、−C(=O)S−、−NHCONH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)S−、−OC(=O)−、−OCONH−、−NHCO−から選ばれるいずれかを表す。Yは、NR、O、Sから選ばれるいずれかを表し、Rは水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を表す。式(1)中、NとYは互い連結して環状構造を形成する。m、nはそれぞれ独立に0または1である。〕
【0130】
前記式(VI−1)において、Rは、水素原子、又は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜4が特に好ましい。好ましいアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基等が挙げられる。Rはアルキレン基を表し、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜4が特に好ましい。好ましいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基があげられる。Yは、NR、O、Sから選ばれるいずれかを表し、Rは水素原子、アルキル基、もしくはアリール基を表す。Yとしては、S、NHが特に好ましい。Xは−O−、−S−、−C(=O)O−、−CONH−、−C(=O)S−、−NHCONH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)S−、−OC(=O)−、−OCONH−、−NHCO−から選ばれるいずれかを表し、−O−、−S−、−CONH−、−NHCONH−、−NHC(=O)S−が特に好ましい。
【0131】
式(V1−1)中、NとYは互い連結して環状構造を形成する。形成される環状構造としては、イミダゾール環、ピリミジン環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアゾール環、オキサゾール環の単環構造、およびベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、プリン環、キナゾリン環、ペリミジン環、等の縮合環構造があげられ、本発明においては縮合環構造が好ましい。これらのうち、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環が特に好ましく挙げることができる。
【0132】
本発明における顔料分散剤において、前記一般式(VI−1)で表される単量体の好ましい具体例〔(M−1)〜(M−18)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0133】
【化30】



【0134】
【化31】



【0135】
【化32】



【0136】
一般式(VI−2)において、Rは水素またはメチル基を表し、Rはアルキレン基を表し、Zは含窒素複素環構造を表す。
で表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、メチレンオキシカルボニル基、メチレンチオ基、等が挙げられ、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシカルボニル基、メチレンチオ基が好ましい。
【0137】
前記一般式(1)中、Zは含窒素複素環構造を表し、具体的には、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、ベンズイミダゾール構造、ベンズトリアゾール構造、ベンズチアゾール構造、環状アミド構造、環状ウレア構造、および環状イミド構造を有するものが挙げられる。
これらのうち、Zで示される複素環構造としては、下記一般式(2)または(3)であらわされる構造であることが好ましい。
【0138】
【化33】



【0139】
前記一般式(2)中、Xは単結合、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基など)、−O−、−S−、−NR−、及び、−C(=O)−からなる群より選ばれるいずれかである。なお、ここでRは水素原子またはアルキル基を表し、Rがアルキル基を表す場合のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
これらのうち、Xは単結合、メチレン基、−O−、−C(=O)−が好ましく、−C(=O)−が特に好ましい。
【0140】
前記一般式(2)および一般式(3)中、環A、環B、および環Cはそれぞれ独立に芳香環を表す。該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環等が挙げられ、なかでも、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、フェノキサジン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環が特に好ましい。
【0141】
前記一般式(VI−2)で表される構造単位の好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0142】
【化34】

【0143】
(G)グラフト共重合体の合成に使用しうる重合性オリゴマー(マクロモノマー)の好ましい例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ−n−ブチル(メタ)アクリレート及びポリ−i−ブチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンの分子末端の一個に(メタ)アクリロイル基が結合したポリマーを挙げることができる。市場で入手できるこのような重合性オリゴマーとしては、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(Mn=6000、商品名:AS−6、東亜合成化学工業(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AA−6、東亜合成化学工業(株)製)及び片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(Mn=6000、商品名:AB−6、東亜合成化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0144】
(G)グラフト共重合体はさらに、酸基を有する単量体(構造単位)を共重合成分として含むことが好ましい。
酸基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、p−ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルの無水コハク酸付加体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルの無水フタル酸付加体、等が挙げられる。
【0145】
(G)グラフト共重合体の好ましい様態としては、前記一般式(IV−1)又は(IV−2)で表される単量体を2〜50質量%で含み、さらに、末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーを10〜90質量%、酸基を有する構造単位を1〜30質量%含む共重合体が好ましい。
【0146】
本発明の顔料分散液は、分散安定性の向上、現像性制御などの観点から、他の高分子材料〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、および、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン等の分散剤をさらに添加することができる。
このような他の高分子材料は、その構造からさらに直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0147】
併用可能な上記高分子材料は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。本発明に用いうる他の高分子材料の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(ブロック共重合体)、4400、4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」(以上、商品名)、或いは、後述する(F)アルカリ可溶性樹脂に記載される高分子化合物等が挙げられる。
【0148】
これらの高分子材料は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。高分子材料を併用する場合、本発明における高分子材料の含有量としては、本発明の特定樹脂に対して、1質量%〜100質量%であることが好ましく、3質量%〜80質量%がより好ましく、5質量%〜50質量%が更に好ましい。
本発明の顔料分散液は、前記本発明の特定樹脂を顔料分散剤として用いるため、微細な顔料を高濃度で含む場合においても、顔料の分散性と分散安定性に優れる。
【0149】
[着色硬化性組成物]
本発明の前記顔料分散液に、さらに(D)光重合開始剤、(E)エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物を添加することで、解像性・色特性・塗布性・現像性に優れた着色硬化性組成物を提供することができる。
【0150】
<(D)光重合開始剤>
本発明の硬化性組成物は、感度及びパターン形成性向上のため(D)光重合開始剤を含有する。本発明における光重合開始剤は、光により分解し、本発明における重合可能な成分の重合を開始、促進する化合物であり、波長300〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。また、光重合開始剤は、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0151】
光重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物、アルキルアミノ化合物、等が挙げられる。
以下、これらの各化合物について詳細に述べる。
【0152】
有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報、M.P.Hutt”Journal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0153】
s−トリアジン化合物として、より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
【0154】
オキソジアゾール化合物としては、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(シアノスチリル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(ナフト−1−イル)−1,3,4−オキソジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−スチリル)スチリル−1,3,4−オキソジアゾールなどが挙げられる。
【0155】
カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルホリノブチロフェノン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0156】
ケタール化合物としては、ベンジルメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルエチルアセタールなどを挙げることができる。
ベンゾイン化合物としてはm−ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエートなどを挙げることができる。
【0157】
アクリジン化合物としては、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタンなどを挙げることができる。
【0158】
有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0159】
アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を挙げることができる。
クマリン化合物としては、例えば、3−メチル−5−アミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−クロロ−5−ジエチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン、3−ブチル−5−ジメチルアミノ−((s−トリアジン−2−イル)アミノ)−3−フェニルクマリン等を挙げることができる。
【0160】
アジド化合物としては、米国特許第2848328号明細書、米国特許第2852379号明細書ならびに米国特許第2940853号明細書に記載の有機アジド化合物、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−エチルシクロヘキサノン(BAC−E)等が挙げられる。
【0161】
メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0162】
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0163】
有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837、特開2002−107916、特許第2764769号、特願2000−310808号、等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0164】
ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特願2001−132318号明細書等記載される化合物等が挙げられる。
【0165】
オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S. Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報記載の化合物等が挙げられる。
【0166】
前記オキシムエステル化合物に代表されるオキシム系開始剤のなかでも、感度、径時安定性、後加熱時の着色の観点から、下記一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0167】
【化35】

【0168】
前記一般式(3)中、R及びXは、各々独立に、1価の置換基を表し、Aは、2価の有機基を表し、Arは、アリール基を表す。nは、0〜5の整数である。
【0169】
Rとしては、高感度化の点から、アシル基が好ましく、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましい。
【0170】
Aとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、無置換のアルキレン基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基)で置換されたアルキレン基、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)で置換されたアルキレン基、アリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基、スチリル基)で置換されたアルキレン基が好ましい。
【0171】
Arとしては、感度を高め、加熱経時による着色を抑制する点から、置換又は無置換のフェニル基が好ましい。置換フェニル基の場合、その置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基が好ましい。
【0172】
Xとしては、溶剤溶解性と長波長領域の吸収効率向上の点から、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基が好ましい。
また、一般式(3)におけるnは1〜2の整数が好ましい。
一般式(3)で表される化合物については、本願出願人が先に提案した特願2008−251321号明細書段落番号〔0089〕〜〔0108〕に一般式(α)で表される化合物として詳細に記載されており、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
【0173】
オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩などが挙げられる。
【0174】
本発明に好適に用いることのできるヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩であり、安定性の観点から、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基等の電子供与性基で2つ以上置換されていることが好ましい。また、その他の好ましいスルホニウム塩の形態として、トリアリールスルホニウム塩の1つの置換基がクマリン、アントアキノン構造を有し、300nm以上に吸収を有するヨードニウム塩などが好ましい。
【0175】
本発明に好適に用いることのできるスルホニウム塩としては、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩が挙げられ、安定性と感度の点から好ましくは電子吸引性基で置換されていることが好ましい。電子吸引性基としては、ハメット値が0より大きいことが好ましい。好ましい電子吸引性基としては、ハロゲン原子、カルボン酸などが挙げられる。
また、その他の好ましいスルホニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩の1つの置換基がクマリン、アントラキノン構造を有し、300nm以上に吸収を有するスルホニウム塩が挙げられる。別の好ましいスルホニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩が、アリロキシ基、アリールチオ基を置換基に有する300nm以上に吸収を有するスルホニウム塩が挙げられる。
【0176】
また、オニウム塩化合物としては、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0177】
アシルホスフィン(オキシド)化合物としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア819、ダロキュア4265、ダロキュアTPOなどが挙げられる。
【0178】
アルキルアミノ化合物としては、例えば、特開平9−281698号公報の段落番号[0047]、特開平6−19240号公報、特開平6−19249号公報等に記載のジアルキルアミノフェニル基を有する化合物やアルキルアミン化合物が挙げられる。具体的には、ジアルキルアミノフェニル基を有する化合物としてはp−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の化合物や、p−ジエチルアミノベンズカルバルデヒド、9−ジュロリジルカルバルデヒド等のジアルキルアミノフェニルカルバルデヒドが、アルキルアミン化合物としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0179】
本発明に用いられる(D)光重合開始剤としては、露光感度の観点から、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、メタロセン化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物、オニウム系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物およびその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体およびその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0180】
より好ましくは、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物、オニウム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物であり、トリアジン系化合物、アルキルアミノ化合物、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が更に好ましく、オキシム系化合物、ビイミダゾール系化合物が最も好ましい。
【0181】
特に、本発明の硬化性組成物を固体撮像素子のカラーフィルタにおける着色画素の形成に用いる場合、処方上、硬化性組成物の顔料濃度が高くなるため、開始剤の添加量は少なくなり、感度が低下してしまう。又、露光をステッパーで行う際には、トリアジン系化合物等のごとく、露光時にハロゲン含有化合物を発生する開始剤を用いると、機器の腐食の原因となり使用し難い。これらを考慮すれば、感度と諸性能を満足させる光重合開始剤としては、オキシム系化合物が好ましく、特に、365nmに吸収を有するオキシム系化合物が最も好ましい。
【0182】
(D)光重合開始剤の含有量は、本発明の硬化性組成物の全固形分に対し0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%〜30質量%、特に好ましくは1質量%〜20質量%である。この範囲で、良好な感度とパターン形成性が得られる。
【0183】
<(E)エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物>
本発明の硬化性組成物は、前記樹脂以外のエチレン性不飽和二重結合を含有する化合物(以下、単に「エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物」と称する場合がある。)を含有することができる。
【0184】
本発明に用いることができるエチレン性不飽和二重結合を含有する化合物は、前記樹脂以外のものであって、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0185】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0186】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0187】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0188】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0189】
さらに、酸基を含有するモノマーも使用でき、例えば、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートマレイン酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートマレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。これらの中では、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル等が挙げられる。
【0190】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0191】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式で表される化合物における水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0192】
一般式 CH=C(R10)COOCHCH(R11)OH
(ただし、R10及びR11は、H又はCHを示す。)
【0193】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0194】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0195】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、硬化性組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。硬化感度の観点から、(メタ)アクリル酸エステル構造を2個以上含有する化合物を用いることが好ましく、3個以上含有する化合物を用いることがより好ましく、4個以上含有する化合物を用いることが最も好ましい。また、硬化感度、および、未露光部の現像性の観点では、EO変性体を含有することが好ましい。また、硬化感度、および、露光部強度の観点ではウレタン結合を含有することが好ましい。
【0196】
また、硬化性組成物中の他の成分(例えば、樹脂、光重合開始剤、顔料)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0197】
以上の観点より、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレートEO変性体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体などが好ましいものとして挙げられ、また、市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)、UA−7200(新中村化学社製)が好ましい。
【0198】
中でも、ビスフェノールAジアクリレートEO変性体、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートEO変性体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートEO変性体などが、市販品としては、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)がより好ましい。
【0199】
本発明における(E)エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物の含有量は、本発明の硬化性組成物の固形分中に、1質量%〜90質量%であることが好ましく、5質量%〜80質量%であることがより好ましく、10質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
【0200】
特に、本発明の硬化性組成物をカラーフィルタの着色パターン形成に使用する場合、(E)エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物の含有量は、上記の範囲において5質量%〜50質量%であることが好ましく、7質量%〜40質量%であることがより好ましく、10質量%〜35質量%であることが更に好ましい。
【0201】
本発明の着色硬化性組成物は、さらに(F)アルカリ可溶性樹脂を含有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、現像性・パターン形成性が向上する。
【0202】
<(F)アルカリ可溶性樹脂>
本発明において使用しうるアルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であって、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基(例えばカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、ヒドロキシル基など)を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
上記アルカリ可溶性樹脂としてより好ましいものは、側鎖にカルボン酸を有するポリマー、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等のアクリル系共重合体のものが挙げられる。
酸価としては、20〜200mgKOH/g、好ましくは30〜150mgKOH/g、更に好ましくは35〜120mgKOH/gの範囲のものが好ましい。
【0203】
アルカリ可溶性樹脂の具体的な構成単位については、特に(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。前記(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。ここで、アルキル基及びアリール基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
前記アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートのとしては、CH=C(R)(COOR) 〔ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキルは炭素数1〜8のアルキル基)、ヒドロキシグリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等を挙げることができる。
【0204】
また分子側鎖にポリアルキレンオキサイド鎖を有する樹脂も好ましいものである。前記ポリアルキレンオキサイド鎖としてはポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖あるいはこれらの併用も可能であり、末端は水素原子あるいは直鎖もしくは分岐のアルキル基である。
ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖の繰り返し単位は1〜20が好ましく、2〜12がより好ましい。これらの側鎖にポリアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系共重合体は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどおよびこれらの末端OH基をアルキル封鎖した化合物、例えばメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートなどを共重合成分とするアクリル系共重合体である。
【0205】
また、前記ビニル化合物としては、CH=CR 〔ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環を表し、Rは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜12のアラルキル基を表す。〕具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等を挙げることができる。
これら共重合可能な他の単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい共重合可能な他の単量体は、アルキル(メタ)アクリレート(アルキルは炭素数2から4のアルキル基)、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及びスチレンである。
これらの中では特に、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体やベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好適である。
【0206】
アクリル系樹脂は、既に述べたように、20〜200mgKOH/gの範囲の酸価を有する。酸価が200を越えた場合、アクリル系樹脂がアルカリに対する溶解性が大きくなりすぎて現像適正範囲(現像ラチチュード)が狭くなる。一方、20未満と小さすぎると、アルカリに対する溶解性が小さく現像に時間がかかり過ぎて好ましくない。
また、アクリル系樹脂の質量平均分子量Mw(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)は、カラーレジストを塗布等の工程上使用しやすい粘度範囲を実現するために、また膜強度を確保するために、2,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜50,000である。
アクリル系樹脂の酸価を上記で特定した範囲とするには、各単量体の共重合割合を適切に調整することに容易に行うことができる。また、質量平均分子量の範囲を上記範囲とするには、単量体の共重合の際に、重合方法に応じた連鎖移動剤を適切な量使用することにより容易に行うことができる。
アクリル系樹脂は、例えばそれ自体公知のラジカル重合法により製造することができる。ラジカル重合法でアクリル系樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類及びその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者であれば容易に設定することができるし、条件設定が可能である。
【0207】
本発明の硬化性組成物にアルカリ可溶性樹脂を添加する際の添加量としては、組成物の全固形分の5〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜60質量%である。アルカリ可溶性樹脂の量が5質量%より少ないと膜強度が低下し、また、90質量%より多いと、酸性分が多くなるので、溶解性のコントロールが難しくなり、又相対的に顔料が少なくなるので十分な画像濃度が得られない。な厚さの塗膜が得やすくなる点で好ましい。特に、広幅で大面積の基板への塗布に好適なスリット塗布に対して得率が高く良好な塗膜を得ることができる。
【0208】
また、本発明における光硬化性着色組成物の架橋効率を向上させるために、重合性基をアルカリ可溶性樹脂に有した樹脂を単独もしくは重合性基を有しないアルカリ可溶性樹脂と併用してもよく、アリール基、(メタ)アクリル基、アリールオキシアルキル基等を側鎖に含有したポリマー等が有用である。
重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像液での現像が可能であって、さらに光硬化性と熱硬化性を備えたものである。
これら重合性基を含有するポリマーの例を以下に示すが、COOH基、OH基等のアルカリ可溶性基と炭素−炭素間不飽和結合が含まれていれば下記に限定されない。
(1)予めイソシアネート基とOH基を反応させ、未反応のイソシアネート基を1つ残し、かつ(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ含む化合物とカルボキシル基を含むアクリル樹脂との反応によって得られるウレタン変性した重合性二重結合含有アクリル樹脂、
(2)カルボキシル基を含むアクリル樹脂と分子内にエポキシ基及び重合性二重結合を共に有する化合物との反応によって得られる不飽和基含有アクリル樹脂、
(3)酸ペンダント型エポキシアクリレート樹脂、
(4)OH基を含むアクリル樹脂と重合性二重結合を有する2塩基酸無水物を反応させた重合性二重結合含有アクリル樹脂。
上記のうち、特に(1)及び(2)の樹脂が好ましい。
【0209】
本発明における重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂の酸価としては好ましくは30〜150mgKOH/g、より好ましくは35〜120mgKOH/gであり、また質量平均分子量Mwとしては好ましくは2,000〜50,000、より好ましくは3,000〜30,000である。
具体例として、OH基を有する例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートと、COOH基を含有する例えばメタクリル酸と、これらと共重合可能なアクリル系若しくはビニル系化合物等のモノマーとの共重合体に、OH基に対し反応性を有するエポキシ環と炭素間不飽和結合基を有する化合物(例えばグリシジルアクリレートなどの化合物)を反応させて得られる化合物、等を使用できる。OH基との反応ではエポキシ環のほかに酸無水物、イソシアネート基、アクリロイル基を有する化合物も使用できる。また、特開平6−102669号公報、特開平6−1938号公報に記載のエポキシ環を有する化合物にアクリル酸のような不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物に、飽和もしくは不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる反応物も使用できる。COOH基のようなアルカリ可溶化基と炭素間不飽和基とを併せ持つ化合物として、例えば、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製);Photomer 6173(COOH基含有Polyurethane acrylic oligomer、Diamond Shamrock Co.Ltd.,製);ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業(株)製);サイクロマーPシリーズ、プラクセルCF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業(株)製);Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)、などが挙げられる。
【0210】
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて以下に詳述する成分をさらに含有してもよい。
<増感剤>
本発明の硬化性組成物は、重合開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有してもよい。本発明に用いることができる増感剤としては、前記した光重合開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。本発明に用いることができる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ300nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
【0211】
好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ330nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10−ジアルコキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリジンオレンジ、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーズケトンなどの芳香族ケトン化合物、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物などが挙げられる。
等が挙げられ、更に欧州特許第568,993号明細書、米国特許第4,508,811号明細書、同5,227,227号明細書、特開2001−125255号公報、特開平11−271969号公報等に記載の化合物等などが挙げられる。
【0212】
<重合禁止剤>
本発明においては、硬化性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0213】
重合禁止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0214】
<その他の添加剤>
さらに、本発明においては、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤、基板密着性を向上させうる基板密着剤を加えてもよい。
可塑剤としては例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0215】
本発明の硬化性組成物を基板等の硬質材料表面に適用する場合には、該硬質材料表面との密着性を向上させるための添加剤(以下、「基板密着剤」と称する。)を加えてもよい。
基板密着剤としては、公知の材料を用いることができるが、特にシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤を用いることが好ましい。
【0216】
シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビスアリルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、フェニルトリメトキシシラン、N−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、(アクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、等が挙げられる。
中でもγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
【0217】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、トリイソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0218】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0219】
基板密着剤の含有量は、硬化性組成物の未露光部に残渣が残らないようにする観点から、本発明の硬化性組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0220】
本発明の着色硬化性組成物は、高感度で硬化し、かつ、保存安定性も良好である。また、硬化性組成物を適用する基板などの硬質材料表面への高い密着性を示す。従って、本発明の硬化性組成物は、3次元光造形やホログラフィー、カラーフィルタといった画像形成材料やインク、塗料、接着剤、コーティング剤等の分野において好ましく使用することができる。
また、本発明の着色硬化性組成物は、微細な顔料を高濃度で含有しても、顔料分散安定性と現像性に優れ、高精細で色特性の良好な着色領域を形成しうることから、固体撮像素子用のカラーフィルタの製造、特に、膜厚が0.8μm以下、好ましくは、0.1〜0.5μmの範囲の画素を形成するような場合、特に本発明の顔料含有着色硬化性組成物を用いることでその効果が著しいといえる。
【0221】
[カラーフィルタ及びその製造方法]
次に、本発明のカラーフィルタ及びその製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタは、支持体上に、本発明の硬化性組成物を用いてなる着色パターンを有することを特徴とする。
以下、本発明のカラーフィルタについて、その製造方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)を通じて詳述する。
【0222】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、支持体上に、本発明の硬化性組成物を塗布して該硬化性組成物からなる着色層を形成する着色層形成工程と、前記着色層を、マスクを介して露光する露光工程と、露光後の着色層を現像して着色パターンを形成する現像工程とを含むことを特徴とする。
以下、本発明の製造方法における各工程について説明する。
【0223】
<着色層形成工程>
着色層形成工程では、支持体上に、本発明の硬化性組成物を塗布して該硬化性組成物からなる着色層を形成する。
【0224】
本工程に用いうる支持体としては、例えば、液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスおよびこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
また、これらの支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0225】
支持体上への本発明の硬化性組成物の塗布方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
硬化性組成物の塗布直後の膜厚としては、塗布膜の膜厚均一性、塗布溶剤の乾燥のしやすさの観点から、0.1〜10μmが好ましく、0.2〜5μmがより好ましく、0.2〜3μmがさらに好ましい。
【0226】
基板上に塗布された着色層(硬化性組成物層)の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等で50℃〜140℃の温度で10〜300秒で行うことができる。
【0227】
硬化性組成物の乾燥後の塗布膜厚(以下、適宜、「乾燥膜厚」と称する)としては、LCD用カラーフィルタとして用いるためには、LCD薄型化に対応でき、色濃度確保の観点から、0.1μm以上2.0μm未満が好ましく、0.2μm以上1.8μm以下がより好ましく、0.3μm以上1.75μm以下が特に好ましい。
また、IS用カラーフィルタとして用いるためには、色濃度確保の観点、斜め方向の光が受光部に到達せず、又、デバイスの端と中央とで集光率の差が顕著になる等の不具合を低減する観点から、0.05μm以上1.0μm未満が好ましく、0.1μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.2μm以上0.7μm以下が特に好ましい。
【0228】
<露光工程>
露光工程では、前記着色層形成工程において形成された着色層(硬化性組成物層)を、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光する。
本工程における露光においては、塗布膜のパターン露光は、所定のマスクパターンを介して露光し、光照射された塗布膜部分だけを硬化させることによりことにより行うことができる。露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。照射量は5〜1500mJ/cmが好ましく10〜1000mJ/cmがより好ましく、10〜500mJ/cmが最も好ましい。
本発明のカラーフィルタが液晶表示素子用である場合は、上記範囲の中で5〜200mJ/cmが好ましく10〜150mJ/cmがより好ましく、10〜100mJ/cmが最も好ましい。また、本発明のカラーフィルタが固体撮像素子用である場合は、上記範囲の中で30〜1500mJ/cmが好ましく50〜1000mJ/cmがより好ましく、80〜500mJ/cmが最も好ましい。
【0229】
<現像工程>
次いでアルカリ現像処理(現像工程)を行うことにより、上記露光により光未照射部分をアルカリ水溶液に溶出させ、光硬化した部分だけが残る。現像液で現像して、各色(3色あるいは4色)の画素からなるパターン状皮膜を形成することにより行うことができる。現像液としては、下地の回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。現像温度としては通常20℃〜30℃であり、現像時間は20〜90秒である。
【0230】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機化合物等が挙げられ、これらのアルカリ剤を濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が現像液として好ましく使用される。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
次いで、余剰の現像液を洗浄除去し、乾燥を施す。
本発明の硬化性組成物を用いた場合、顔料分散剤として用いられる本発明の特定樹脂は、顔料の分散性、分散安定性に優れ、且つ、分子内にpKaが14以下である官能基を有することから、現像性に優れるため、微細なパターンを形成する場合においても、未硬化部の残膜が生じがたく、このため、微細なパターン形成を必要とするCCD用カラーフィルターの着色パターン形成に好適である。
【0231】
なお、本発明の製造方法においては、上述した、着色層形成工程、露光工程、及び現像工程を行った後に、必要により、形成された着色パターンを加熱(ポストベーク)及び/又は露光により硬化する硬化工程を含んでいてもよい。
【0232】
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理であり、通常100℃〜240℃の熱硬化処理を行う。基板がガラス基板またはシリコン基板の場合は上記温度範囲の中でも200℃〜240℃が好ましい。
このポストベーク処理は、現像後の塗布膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0233】
以上説明した、着色層形成工程、露光工程、及び現像工程(更に、必要により硬化工程)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタが作製される。
【0234】
本発明の硬化性組成物の用途として、主にカラーフィルタの画素への用途を主体に述べてきたが、カラーフィルタの画素間に設けられるブラックマトリックスにも適用できることは言うまでもない。ブラックマトリックスは、本発明の硬化性組成物に着色剤として、カーボンブラック、チタンブラックなどの黒色の顔料を添加したものを用いる他は、上記画素の作製方法と同様に、パターン露光、アルカリ現像し、更にその後、ポストベークして膜の硬化を促進させて形成させることができる。
【0235】
本発明のカラーフィルタは露光感度に優れた本発明の硬化性組成物を用いて製造されるため、露光部における硬化した組成物は基板との密着性及び耐現像性に優れ、形成された着色パターンと支持体基板との密着性は高く、また、かつ、所望の断面形状を与えるパターンは高解像度となる。
また、本発明の固体撮像素子は、前記本発明のカラーフィルタの製造方法によって製造された本発明のカラーフィルタを備えることを特徴とする。
従って、具体的には、本発明のカラーフィルタを液晶表示素子やCCD等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS等に好適である。本発明のカラーフィルタは、例えば、CCD素子を構成する各画素の受光部と集光するためのマイクロレンズとの間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【実施例】
【0236】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
なお、実施例中、酸価及びアミン価は電位差法(溶媒テトラヒドロフラン/水=100/10(体積比)、滴定液 0.01N水酸化ナトリウム水溶液(酸価) 0.01N塩酸(アミン価))により決定した。但し、実施例18、及び実施例29では、0.01N水酸化ナトリウム水溶液に代えて、0.01Nナトリウムメトキシドジオキサン溶液系にて滴定した。
【0237】
(合成例1)ポリエステル(i−1)の合成
n−オクタン酸6.4g、ε−カプロラクトン200g、チタン(IV)テトラブトキシド5gを混合し、160℃で8時間加熱した後、室温まで冷却しポリエステル(i−1)を得た。
スキームを以下に示す。
【0238】
【化36】



【0239】
(合成例2〜10)
表1に記載の仕込み量にした以外は合成例1と同様にしてポリエステル(i−2)〜(i−10)を得た。これらの合成例で得た樹脂の数平均分子量、重量平均分子量を既述のGPC法により測定した。結果を下記表1に示す。また、原料仕込み比より算出したラクトン繰り返し単位の単位数をともに下記表1に示す。
【0240】
【表1】

【0241】
(合成例11)ポリエステル(i−11)の合成
窒素気流下、12−ヒドロキシステアリン酸100g、チタン(IV)テトラブトキシド0.1g及びキシレン300gを混合し、外温160℃で生成する水をディーンスターク管で留去しながら反応した。GPC測定における数平均分子量が8,000、重量平均分子量が12,000となったところで加熱を停止し、ポリエステル(i−11)を得た。
【0242】
(合成例12)ポリエステル(i−12)の合成
合成例11と同様の実験を行い、GPC測定における数平均分子量が6,000、重量平均分子量が11,000となったところで加熱を停止し、ポリエステル(i−12)を得た。
【0243】
(合成例13)ポリエステル(i−13)の合成
窒素気流下、アジピン酸307g、ネオペンチルグリコール110g、1,4−ブタンジオール57g及びエチレングリコール26gを外温160℃で生成する水をディーンスターク管で留去しながら反応した。GPC測定における数平均分子量が8,000、重量平均分子量が13,000となったところで反応を停止し、ポリエステル(i−13)を得た。
【0244】
(合成例14)マクロモノマー(i−14)の合成
窒素気流下、メタクリル酸メチル50g(500mmol)、プロピレングリコールモノメチルエーテル100g、2−メルカプトプロピオン酸2.5g(23.6mmol)を80℃に加熱した。次に、V−601(和光純薬製)0.1gを添加し、3時間後、さらにV−601を0.1g添加し、4時間加熱した。その後、メタクリル酸グリシジル3.35g(23.6mmol)及びテトラブチルアンモニウムブロミド0.5gを添加し、80℃で5時間加熱した。放冷後、水200mLとメタノール800mLの混合溶媒を用いて再沈し、乾燥後、マクロモノマー(i−14)を55g得た。
【0245】
(合成例15)
[樹脂(J−1)の合成]
ポリエチレンイミン(SP−018、数平均分子量1,800、日本触媒製)10g及びポリエステル(i−1)(Y前駆体y)100gを混合し、120℃で3時間加熱して、中間体(J−1B)を得た。その後、65℃まで放冷し、無水コハク酸(X前駆体x)3.8gを含有するプロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート(以下、PGMEAとよぶ)200gをゆっくり添加し2時間攪拌した。その後、PGMEAを添加し、樹脂(J−1)のPGMEA10重量%溶液を得た。樹脂(J−1)は、ポリエステル(i−1)由来の側鎖と無水コハク酸由来のpKaが14以下である官能基(カルボキシ基)を有する基を有するものである。
合成スキームを以下に示す。
【0246】
【化37】



【0247】
中間体(J−1B)の塩基滴定を行ったところ、酸価が0.11mmol/gであることが確認できた。また、樹脂(J−1)の塩基滴定、酸滴定を行ったところ、酸価が0.31mmol/g、塩基価が0.83mmol/gであった。すなわち、樹脂(J−1)の酸価と中間体(J−1B)の酸価の差より、一般式(J−1)に相当する繰り返し単位のモル%)が、樹脂(J−1)の塩基価と反応前の樹脂の窒素原子数の差よりl+l(一般式(I−2)に相当する繰り返し単位のモル%)が、中間体(J−1B)の酸価よりm+m(一般式(I−3)に相当する繰り返し単位)のモル%が計算でき、k/(l+l)/(m+m)/n=10/50/5/35となる。
即ち、一般式(I−1)で表される繰り返し単位において、Xが−COCHCHCOHである繰り返し単位を10モル%、一般式(I−2)で表される繰り返し単位において、Yがポリ(ε−カプロラクトン)であるものを50モル%含む樹脂であることがわかる。また、GPC法による重量平均分子量は24,000であった。
【0248】
(合成例16〜31)
[樹脂(J−2)〜(J−17)の合成]
表2及び表3に記載の如き、アミノ基含有樹脂と、X前駆体xと、前記合成例1〜13で得たポリエステルと、を用いた他は、合成例14と同様に合成を行い、樹脂(J−2)〜(J−17)のPGMEA10重量%溶液を得た。また、樹脂(J−13)は、反応液を水で再沈し、乾燥後、PEGMAで10質量%溶液としたものを用いた。
合成に用いたアミノ基含有樹脂は、以下に示すとおりである。
SP−003(ポリエチレンイミン(日本触媒製) 数平均分子量300)
SP−006(ポリエチレンイミン(日本触媒製) 数平均分子量600)
SP−012(ポリエチレンイミン(日本触媒製) 数平均分子量1,200)
SP−018(ポリエチレンイミン(日本触媒製) 数平均分子量1,800)
SP−020(ポリエチレンイミン(日本触媒製) 数平均分子量10,000)
【0249】
(合成例32)
[樹脂(J−18)の合成]
ディーンスターク管を備えた反応器中、ポリアリルアミン(PAA−03、重量平均分子量3,000、日本触媒製)水溶液100g、トルエン500gを外温130℃で水分の留去が停止するまで還流し、その後、濃縮してトルエンを除いた。次に、ポリエステル(i−1)100gを混合し、120℃で3時間加熱した。その後、65℃まで放冷し、無水コハク酸(X前駆体x)3.8gを含有するプロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート(以下、PGMEAとよぶ)200gをゆっくり添加し2時間攪拌した。その後、PGMEAを添加し、樹脂(I−18)のPGMEA10重量%溶液を得た。
【0250】
(合成例33〜40)
[樹脂(J−19)〜(J−26)の合成]
表2及び表3に記載の如き、アミノ基含有樹脂と、X前駆体xと、前記合成例1〜13で得たポリエステルと、を用いた他は、合成例32同様に合成を行い、樹脂(J−19)〜(J−26)のPGMEA10重量%溶液を得た。
合成に用いたアミノ基含有樹脂は、以下に示すとおりである。
PAA−01(ポリアリルアミン(日東紡製)重量平均分子量1,000)
PAA−03(ポリアリルアミン(日東紡製)重量平均分子量3,000)
PAA−05(ポリアリルアミン(日東紡製)重量平均分子量5,000)
PAA−08(ポリアリルアミン(日東紡製)重量平均分子量8,000)
PAA−15(ポリアリルアミン(日東紡製)重量平均分子量15,000)
【0251】
(合成例41)
[樹脂(I−27)の合成]
モノマー(B)0.50g(3.5mmol)、マクロモノマー(i−14)55g(23mmol)、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノエチル)(9.6mmol)1.50g、ドデカンチオール0.2g(1.0mmol)をジメチルスルホキシド200gとN−メチルピロリドン100gの混合溶媒に溶解させた。80℃に加熱後、V−601を0.1g添加し3時間撹拌した。その後、V−601を0.1g添加し、3時間撹拌後、放冷した。得られた溶液を水4000Lに1時間かけて滴下し、析出した樹脂を濾過で採取した。乾燥後、1−メトキシ−2−プロパノールに溶解させ、10質量%溶液を得た。
合成スキームを以下に示す。
【0252】
【化38】



【0253】
(合成例42)
[比較用樹脂(J−28)の合成]
メタクリル酸0.50g(5.8mmol)、マクロモノマー(i−14)55g(23mmol)、メタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノエチル)(9.6mmol)1.50g、ドデカンチオール0.2g(1.0mmol)を1−メトキシ−2−プロパノール132gの混合溶媒に溶解させた。80℃に加熱後、V−601を0.1g添加し3時間撹拌した。その後、V−601を0.1g添加し、3時間撹拌後、放冷した。得られた溶液に1−メトキシ−2−プロパノールを添加し、10質量%溶液を得た。
合成スキームを以下に記す。
【0254】
【化39】



【0255】
(合成例43〜45)
[比較用樹脂(J−29)〜(J−31)の合成]
合成例15〜17において、X前駆体xとしての無水コハク酸を添加しなかった以外は同様の操作を行い、比較用樹脂(J−29)〜(J−31)を得た。
【0256】
(酸価及びアミン価の測定)
得られた樹脂(J−1)〜(J−27)、比較例樹脂(J−28)〜(J−31)の酸価及びアミン価を既述の方法により測定した。結果を表2及び表3に併記する。
これらの測定結果より、中間体酸価と目的樹脂酸価の側鎖にpKaが14以下である官能基が存在することが確認できる。
【0257】
【表2】

【0258】
【表3】

【0259】
ここで、ポリカプロラクトン鎖を有している樹脂の低温での溶剤溶解性について評価した。
樹脂(J−1)〜(J−16)、(J−14)〜(J−19)、(J−29)及び(J−30)(すべて10wt%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液)を5℃で2日放置し、溶液から固体が析出しているかどうかを目視で確認した。その結果を下記表4に示す。
下記表4に明らかなように、本発明の樹脂は、ポリカプロラクトン鎖を有しているにもかかわらず、低温での溶剤溶解性に優れていることが分かった。
【0260】
【表4】

【0261】
[実施例1〜27、比較例1〜4]
〔A1.硬化性組成物の調製〕
ここでは、液晶表示素子用途のカラーフィルタ形成用として顔料を含有する硬化性組成物を調整した例を挙げて説明する。
【0262】
A1−1.顔料分散液の調製
顔料分散液の調製
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36(PG36)を40質量部(平均粒子径60nm)、樹脂(I−1)200質量部(固形分換算20質量部)からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。顔料分散液について、顔料の平均粒径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製)を用いて、P1を更に希釈することなく測定した)により測定したところ、25nmであった。
【0263】
A1−1−1.顔料分散液の顔料分散性、分散安定性の評価
顔料分散液の調製
表5に記載の顔料を40質量部(平均粒子径60nm)、前記樹脂(J−1)〜(J−30)のPGMEA10重量%溶液180質量部(固形分換算18質量部)にPGMEAを添加して230質量部にした混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。顔料分散液について、顔料の平均粒径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製)を用いて、P1を更に希釈することなく測定した)により測定し、表5に結果を示した。
【0264】
【表5】

【0265】
表5より、本発明の樹脂は非常に微細な顔料に対して分散剤として用いた場合、分散性及び分散安定性に優れていることが明らかである。
【0266】
A1−2.硬化性組成物(塗布液)の調製
前記分散処理した顔料分散液を用いて下記組成比となるよう撹拌混合して硬化性組成物溶液を調製した。
・前記顔料分散液 600質量部
・光重合開始剤(2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’
−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール) 30質量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50質量部
・アルカリ可溶性樹脂(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、mol比:80/10/10、Mw:10000) 5質量部
・溶媒:プロピレングリコール1−モノメチルエーテル−2−アセテート 900質量部
・基板密着剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 1質量部
・(F)増感剤(下記化合物α) 15質量部
・(G)共増感剤(2−メルカプトベンゾイミダゾール) 15質量部
【0267】
【化40】



【0268】
〔A2.カラーフィルタの作製〕
A2−1.硬化性組成物層の形成
上記顔料を含有する硬化性組成物をレジスト溶液として、550mm×650mmのガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、10分間そのままの状態で待機させ、真空乾燥とプレベーク(prebake)(100℃80秒)を施して硬化性組成物塗布膜(硬化性組成物層)を形成した。
【0269】
(スリット塗布条件)
・塗布ヘッド先端の開口部の間隙: 50μm
・塗布速度: 100mm/秒
・基板と塗布ヘッドとのクリヤランス: 150μm
・乾燥膜厚 1.75μm
・塗布温度: 23℃
【0270】
A2−2.露光、現像
その後、2.5kWの超高圧水銀灯を用いて硬化性組成物塗布膜を、線幅20μmのテスト用フォトマスクを用いてパターン状に露光し、露光後、塗布膜の全面を有機系現像液(商品名:CD、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の10%水溶液で被い、60秒間静止した。
【0271】
A2−3.加熱処理
静止後、純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、かかる露光(光硬化)処理及び現像処理を施した塗布膜を220℃のオーブンにて1時間加熱した(ポストベーク)。これにより、ガラス基板上に硬化性組成物塗布膜(着色層)を形成してなるカラーフィルタを得た。
【0272】
〔実施例28〜54、比較例5〜8〕
〔A3.性能評価〕
上記で調製された硬化性組成物からなる塗布液の保存安定性、及び硬化性組成物を用いてガラス基板上に形成された硬化性組成物塗布膜(着色層)のコントラスト、現像性、さらに、パターン断面形状を下記のようにして評価した。結果を表6に示す。
【0273】
A3−1.硬化性組成物の経時安定性
前記にて調製された硬化性組成物(塗布液)を室温で1ケ月保存した後、液の粘度を測定し下記の基準に従って評価した。
−評価基準−
○:粘度上昇は認められなかった。
△:5%以上10%未満の粘度上昇が認められた。
×:10%以上の粘度上昇が認められた。
【0274】
A3−2.硬化性組成物塗布膜(着色層)のコントラスト
カラーフィルタを2枚の偏光フィルムの間に挟み、偏光フィルムの偏光軸が平行な場合と垂直な場合の透過光の輝度を、色彩輝度計を使用して測定し、コントラスト比を求めた。コントラスト比が高いほど、液晶ディスプレイ用カラーフィルタとして良好な性能を示す。
【0275】
A3−3.現像性、パターン断面形状、基板密着性
ポストベーク後の基板表面及び断面形状を、光学顕微鏡及びSEM写真観察により確認することにより、現像性、パターン断面形状、基板密着性を評価した。評価方法・評価基準の詳細は以下の通りである。
【0276】
<現像性>
露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった。
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった。
×:未露光部に、残渣が著しく確認された。
【0277】
<基板密着性>
基板密着性の評価として、パターン欠損が発生しているか否かを観察した。これらの評価項目については、下記基準に基づいて評価を行った
−評価基準−
○:パターン欠損がまったく観察されなかった。
△:パターン欠損がほとんど観察されなかったが、一部分欠損が観察された。
×:パターン欠損が著しく観察された。
【0278】
<パターン断面形状>
形成されたパターンの断面形状を観察した。パターン断面形状は順テーパーが最も好ましく、矩形が次に好ましい。逆テーパーは好ましくない。
これらの評価結果を下記表6に示す。
【0279】
【表6】

【0280】
表6の結果から、本発明の特定樹脂を含有する実施例28〜54の着色硬化性組成物は、その溶液状態において保存安定性に優れたものであることが判る。また、着色硬化性組成物を用いて、支持体上で着色パターンを形成した場合には、本発明における樹脂を用いていない各比較例に対して、コントラストが高く、現像性に優れると共に、パターン断面形状にも優れたカラーフィルタが得られていることが判る。
【0281】
以下、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として着色硬化性組成物を調製した例を挙げて説明する。
【0282】
[実施例55〜81、比較例9〜12]
〔B1.レジスト液の調製〕
下記組成の成分を混合して溶解し、レジスト液を調製した。
<レジスト液の組成>
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 19.20質量部
(PGMEA:溶剤)
・乳酸エチル 36.67質量部
・樹脂(メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシ
エチル共重合体(モル比=60/22/18、重量平均分子量:15,000
数平均分子量:8,000)の40%PGMEA溶液) 30.51質量部
・エチレン性不飽和二重結合含有化合物
(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 12.20質量部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.0061質量部
・フッ素系界面活性剤(F−475、大日本インキ化学工業(株)製) 0.83質量部
・光重合開始剤(トリハロメチルトリアジン系の光重合開始剤) 0.586質量部
(TAZ−107、みどり化学社製)
【0283】
〔B2.下塗り層付シリコン基板の作製〕
6inch シリコンウエハをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に前記レジスト液を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
【0284】
〔B3.顔料分散液の調製〕
顔料としてC.I.ピグメントグリーン36(PG36)及びC.I.ピグメントイエロー139(PY139)の混合物(質量比 70:30)40質量部(平均粒子径65nm)、樹脂(I−1)160質量部(固形分換算16質量部)からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ、直径0.3mm)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。
顔料分散液について、顔料の平均粒径を動的光散乱法により実施例1と同様に測定したところ、30nmであった。
【0285】
〔B4.硬化性組成物(塗布液)の調製〕
前記分散処理した顔料分散液を用いて下記組成比となるよう撹拌混合して硬化性組成物溶液を調製した。
・着色剤(前記顔料分散液) 600質量部
・光重合開始剤(オキシム系光重合開始剤)
(CGI−124、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 30質量部
・TO−1382(東亞合成(株)製) 25質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 30質量部
・溶媒(PGMEA) 900質量部
・基板密着剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 1質量部
【0286】
〔B5.硬化性組成物によるカラーフィルタの作製及び評価〕
<パターン形成>
上記のように調製した硬化性組成物を、前記B2.で得られた下塗り層付シリコンウエハの下塗り層上に塗布し、着色層(塗布膜)を形成した。そして、この塗布膜の乾燥膜厚が0.5μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長でパターンが2μm四方のIslandパターンマスクを通して50〜1200mJ/cmの種々の露光量で露光した。
その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハー基板をスピン・シャワー現像機(DW−30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハー基板に着色パターンを形成した。
【0287】
着色パターンが形成されたシリコンウエハを真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハー基板を回転数50r.p.m.で回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。
その後、測長SEM「S−9260A」(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、着色パターンのサイズを測定した。パターン線幅が2μmとなる露光量を露光感度として評価した。
【0288】
<現像性>
露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった。
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった。
×:未露光部に、残渣が著しく確認された。
【0289】
<基板密着性>
基板密着性の評価として、パターン欠損が発生しているか否かを観察した。これらの評価項目については、下記基準に基づいて評価を行った
−評価基準−
○:パターン欠損がまったく観察されなかった。
△:パターン欠損がほとんど観察されなかったが、一部分欠損が観察された。
×:パターン欠損が著しく観察された。
【0290】
<パターン形成性>
形成されたパターンの断面形状を観察した。パターン断面形状は矩形が好ましく、逆テーパーは好ましくない。
【0291】
<硬化性組成物の保存安定性>
前記B4.にて調製された硬化性組成物(塗布液)を室温で1ケ月保存した後、液の粘度を測定し下記判定基準に従って評価した。
−評価基準−
○:粘度上昇は認められなかった。
△:5%以上10%未満の粘度上昇が認められた。
×:10%以上の粘度上昇が認められた。
<色ムラ>
色ムラの評価は、輝度分布を下記方法で解析し、平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数に占める割合をもとに行った。評価基準は以下の通りである。
輝度分布の測定方法について説明する。まず、硬化性組成物を、前記B2.と同様の方法で得られた下塗り層付ガラス板の下塗り層上に塗布し、着色層(塗布膜)を形成した。この塗布膜の乾燥膜厚が0.7μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。この塗布済みガラス板の輝度分布を顕微鏡MX−50(オリンパス社製)にて撮影した画像を解析した。
−評価基準−
○:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の99%以上
△:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の95%以上99%未満
×:平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数中の95%未満
これらの結果を下記表7に示す。
【0292】
【表7】

【0293】
表7の結果から、本発明の特定樹脂を含有する実施例55〜81の硬化性組成物(顔料系)は、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として用いた場合においても、その溶液状態において保存安定性に優れたものであることが判る。また、この硬化性組成物を用いて、支持体上で着色パターンを形成した場合には、本発明における樹脂を用いていない比較例に対して、現像性に優れると共に、パターン断面形状、色ムラの何れにも優れたカラーフィルタが得られていることが判る。
これらの結果より、実施例の硬化性組成物は、固体撮像素子用途のカラーフィルタを作製する場合においても、液晶表示素子用途のカラーフィルタを作製する場合と同様に、優れたパターン形成性が実現されることがわかった。
【0294】
[実施例82〜96、比較例13〜15]
<高顔料濃度での顔料分散実験>
(顔料分散液の調製)
下記表8に記載の顔料を40質量部(平均粒子径60nm)、樹脂(PGMEA10重量%溶液150質量部(固形分換算15質量部)にPGMEAを添加して230質量部にした混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。顔料分散液について、顔料の平均粒径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製)を用いて、P1を更に希釈することなく測定した)により測定し、表8に結果を示した。
【0295】
【表8】

【0296】
表8に明らかなように、本発明の樹脂は、顔料濃度が高くても分散安定性に優れているものであった。
特に、粘度・粘度上昇抑制の観点から、特に、(J−1)、(J−2)、(J−3)、(J−4)、(J−5)、(J−10)、(J−11)及び(J−12)が好ましく、(J−1)、(J−2)、(J−3)、(J−4)、(J−10)、(J−11)及び(J−12)がさらに好ましく、(J−2)、(J−3)、(J−4)、(J−11)及び(J−12)が最も好ましい。つまり、窒素原子を有する主鎖部がポリエチレンイミンであることが好ましく、窒素原子を有する主鎖部が数平均分子量300〜1,800のポリエチレンイミンであることがさらに好ましく、窒素原子を有する主鎖部が数平均分子量600〜1,200のポリエチレンイミンであることがさらに好ましい。
【0297】
[実施例97〜118、比較例16〜19]
<液晶表示素子用途のカラーフィルタ>
ここでは、液晶表示素子用途のカラーフィルタ形成用として顔料を含有する硬化性組成物を調整した例を挙げて説明する。
(着色硬化性組成物の調製)
・前記顔料分散液 600質量部
・光重合開始剤(表9に記載) 20質量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート 25質量部
・アルカリ可溶性樹脂(表9に記載) 20質量部
・溶媒:プロピレングリコール1−モノメチルエーテル−2−アセテート 900質量部
・基板密着剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン) 1質量部
【0298】
ここで用いた表9に記載の光重合開始剤(Z−1)〜(Z−7)の構造は、以下の通りである。なお、下記に示す光重合開始剤(Z−1)は(Z−1−a):(Z−1−b)=20:10(質量部)の混合物である。
【0299】
【化41】



【0300】
【化42】

【0301】
(着色硬化性組成物層の形成)
上記着色硬化性組成物をレジスト溶液として、550mm×650mmのガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、真空乾燥とプリベーク(prebake)(100℃80秒)を施して、着色硬化性組成物の塗布膜(硬化性組成物層)を形成した。
【0302】
(スリット塗布条件)
・塗布ヘッド先端の開口部の間隙: 50μm
・塗布速度: 100mm/秒
・基板と塗布ヘッドとのクリヤランス: 150μm
・乾燥膜厚 1.75μm
・塗布温度: 23℃
【0303】
(露光、現像)
その後、2.5kWの超高圧水銀灯を用いて、着色硬化性組成物の塗布膜を、線幅20μmのフォトマスクを用いて、日立ハイテクノロジー社製のLE4000Aでパターン状に 100mJ/cm露光した。露光後、塗布膜の全面を無機系現像液(商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の1%水溶液で被い、60秒間静止した。
【0304】
(加熱処理)
静止後、純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、かかる露光(光硬化)処理及び現像処理を施した塗布膜を220℃のオーブンにて1時間加熱した(ポストベーク)。これにより、ガラス基板上に着色硬化性組成物のパターン(着色層)を形成したカラーフィルタを得た。
【0305】
(性能評価)
上記で調製された着色硬化性組成物の保存安定性、現像性、露光感度及び着色硬化性組成物を用いてガラス基板上に形成された硬化性組成物塗布膜(着色層)のコントラスト、さらに、パターン断面形状を下記のようにして評価した。結果を表9に示す。
【0306】
1.保存安定性
前記にようにして得られた着色硬化性組成物の、調製後1日経過したものと、1ヶ月経過したものの粘度をそれぞれ測定した。粘度の測定にはTV−22型粘度計コーンプレートタイプ(東機産業株式会社)を用いた。
粘度の値が小さいことで、顔料の分散性に優れることが分かり、また、粘度が小さく、かつ、経時による増粘度が小さいほど、顔料の分散安定性が良好であることを表す。
【0307】
2.カラーフィルタのコントラスト
前記のようにして得られたカラーフィルタを2枚の偏光板の間に挟み、偏光板の偏光軸が平行な場合と垂直な場合の透過光の輝度を、色彩輝度計(トプコン社製色彩輝度計BM−7)を使用して測定し、平行な場合の輝度を垂直な場合の輝度で除してコントラストを求めた。コントラストが高いほど、液晶表示装置用カラーフィルタとして良好な性能を示す。
【0308】
3.現像性
前記のようにして現像を行った後、20個の現像部(未露光部)をSEMで観察し、残渣の個数を数えた。
残渣が少ないほど現像性が良好であることを示す。
4.基板密着性
基板密着性の評価として、パターン欠損が発生しているか否かを観察した。これらの評価項目については、下記基準に基づいて評価を行った
−評価基準−
○:パターン欠損がまったく観察されなかった。
△:パターン欠損がほとんど観察されなかったが、一部分欠損が観察された。
×:パターン欠損が著しく観察された。
【0309】
5.パターン形成性
形成されたパターンの断面形状を観察した。パターン断面形状は矩形が好ましく、逆テーパーは好ましくない。
6.露光感度
前記露光工程において、10mJ/cm〜500mJ/cmの範囲で種々の露光量に変更して露光を行い、ポストベーク後のパターン線幅が20μmとなる露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
【0310】
【表9】

【0311】
表9の結果から、本発明の特定樹脂を含有する実施例98〜120の着色硬化性組成物は、保存安定性、現像性に優れたものであることが判る。また、着色硬化性組成物を用いて、支持体上で着色パターンを形成した場合には、コントラストが高く、基板密着性、パターン形成性も良好であることがわかる。これに対し本発明の着色硬化性組成物を用いない比較例12〜13は、保存により粘度が上昇し、経時安定性が悪く、現像で残渣が発生し、コントラストも低いものであった。
また、実施例はいずれも、パターン断面形状においても優れたカラーフィルタが得られたことが判る。
【0312】
[実施例119〜140、比較例20〜22]
<固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成>
以下、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として、着色硬化性組成物を調製した例を挙げて説明する。
【0313】
(レジスト液の調製)
下記組成の成分を混合して溶解し、レジスト液を調製した。
<レジスト液の組成>
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 19.20部
・溶剤:乳酸エチル 36.67部
・アルカリ可溶性樹脂:メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸
−2−ヒドロキシエチル共重合体(モル比=60/22/18、重量平均
分子量15,000 数平均分子量)の40%PGMEA溶液 30.51部
・エチレン性不飽和二重結合含有化合物:ジペンタエリスリトールヘキサア
クリレート 12.20部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.0061部
・フッ素系界面活性剤:F−475、DIC(株)製 0.83部
・光重合開始剤:トリハロメチルトリアジン系の光重合開始剤 0.586部
(TAZ−107、みどり化学社製)
【0314】
(下塗り層付シリコン基板の作製)
6inchシリコンウエハをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に前記レジスト液を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
【0315】
(着色硬化性組成物(塗布液)の調製)
前記顔料分散液(D−1)〜(D−18)を用いて、下記組成比となるよう撹拌混合して着色硬化性組成物を調製した。
・前記顔料分散液 600部
・光重合開始剤 (表9に記載) 20部
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 25部
・アルカリ可溶性樹脂(表9に記載) 20部
・溶剤:PGMEA 900部
【0316】
(着色硬化性組成物によるカラーフィルタの作製及び評価)
<パターン形成>
上記のように調製した着色硬化性組成物を、前記のようにして得られた下塗り層付シリコンウエハの下塗り層上に塗布し、着色層(塗布膜)を形成した。そして、この塗布膜の乾燥膜厚が0.5μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
【0317】
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長でパターンが1.2μm四方のIslandパターンマスクを通して50〜1200mJ/cmの種々の露光量で露光した。
その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハ基板をスピン・シャワー現像機(DW−30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハ基板に着色パターンを形成した。
【0318】
着色パターンが形成されたシリコンウエハを真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハ基板を回転数50r.p.m.で回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。
その後、測長SEM「S−9260A」(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、着色パターンのサイズを測定した。パターンサイズが1.2μmとなる露光量を露光感度として評価した。
【0319】
(性能評価)
前述のようにして調製された着色硬化性組成物の分散性、分散安定性、露光感度、塗布性、及び現像性を前記と同様にして評価し、表9に結果を示した。
また、上記のようにして得られたカラーフィルタの色ムラについて下記のように評価し、表9に結果を示した。
【0320】
1.保存安定性
得られた着色硬化性組成物の調製後1日経過したものと1ヶ月経過したものの粘度をそれぞれ測定した。粘度の測定にはTV−22型粘度計コーンプレートタイプ(東機産業株式会社)を用いた。
粘度の値が小さいことで、顔料の分散性に優れることが分かり、また、粘度が小さく、かつ、経時による増粘度が小さいほど、顔料の分散安定性が良好であることを表す。
【0321】
2.カラーフィルタの色ムラ
前記で得られたカラーフィルタの色ムラの評価は、輝度分布を下記方法で解析し、平均からのずれが±5%以内である画素が全画素数に占める割合をもとに行った。評価基準は以下の通りである。
輝度分布の測定方法について説明する。まず、得られた着色硬化性組成物を、前記の方法で作製した下塗り層付ガラス板の下塗り層上に塗布し、着色層(塗膜)を形成した。
この塗膜の乾燥膜厚が0.7μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
この塗布済みガラス板の輝度分布を、顕微鏡MX−50(オリンパス社製)にて撮影した画像を解析し、平均からのずれが±5%以内である画素の割合(百分率)を算出した。この値が高いほど色ムラが小さく良好であることを示す。
【0322】
3.現像性
前記のように現像を行った後、現像部(未露光部)をSEMで20個観察し、残渣の個数を数えた。
【0323】
4.基板密着性
基板密着性の評価として、パターン欠損が発生しているか否かを観察した。これらの評価項目については、下記基準に基づいて評価を行った
−評価基準−
○:パターン欠損がまったく観察されなかった。
△:パターン欠損がほとんど観察されなかったが、一部分欠損が観察された。
×:パターン欠損が著しく観察された。
【0324】
5.パターン形成性
形成されたパターンの断面形状を観察した。パターン断面形状は矩形が好ましく、逆テーパーは好ましくない。
6.露光感度
露光量を10〜500mJ/cmの種々の露光量に変更して露光し、ポストベイク後のパターン線幅が1.2μmとなる露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
【0325】
【表10】

【0326】
表10の結果から、固体撮像素子用途のカラーフィルタ形成用として用いた本発明における実施例121〜143の着色硬化性組成物は、保存安定性に優れたものであることが判る。また、この着色硬化性組成物を用いて、支持体上で着色パターンを形成した場合には、比較例に対して、残渣が少なく現像性に優れると共に、色ムラに優れたカラーフィルタが得られていることが判る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)窒素原子を有する主鎖部と、(ii)pKaが14以下である官能基を有し、該主鎖部に存在する窒素原子と結合する基「X」と、(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」を側鎖に有する樹脂。
【請求項2】
前記樹脂の(i)窒素原子を有する主鎖部が、アミノ基を有するオリゴマー又はポリマーから構成される主鎖部であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記樹脂の(i)窒素原子を有する主鎖部が、ポリ(低級アルキレンイミン)、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、メタキシレンジアミン−エピクロルヒドリン重縮合物、ポリビニルアミン、3−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリル酸アミド共重合体、及び、(メタ)アクリル酸2−ジアルキルアミノエチル共重合体から選択される1種以上で構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記樹脂の(ii)pKaが14以下である官能基が、カルボン酸、スルホン酸及び−COCHCO−から選択される官能基であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項5】
一般式(I−1)で表される繰り返し単位及び一般式(I−2)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂。
【化1】



一般式(I−1)及び(I−2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。aは1〜5の整数を表す。*は繰り返し単位間の連結部を表す。XはpKaが14以下である官能基を含有する基を表す。Yは数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖を表す。
【請求項6】
一般式(II−1)で表される繰り返し単位を及び(II−2)で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂。
【化2】



一般式(II−1)及び(II−2)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。*、X及びYは一般式(I−1)及び(I−2)中の*、X及びYと同義である。
【請求項7】
前記樹脂の(iii)数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」が下記一般式(III−1)で表されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の樹脂。
【化3】



一般式(III−1)中、Zはポリエステル鎖を部分構造として有するポリマー又はオリゴマーであり、下記一般式(IV)で表される遊離のカルボン酸を有するポリエステルからカルボキシル基を除いた残基を表す。
【化4】



一般式(IV)中、Zは一般式(III−1)中のZと同義である。
【請求項8】
前記樹脂が、主鎖部に一級又は二級アミノ基を有する樹脂に、前記pKaが14以下である官能基を有する基「X」との前駆体xと、前記数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」の前駆体yとを反応させてなる樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項9】
主鎖部に一級又は二級アミノ基を有する樹脂を合成し、その後、該樹脂にpKaが14以下である官能基を有する基「X」との前駆体xと、前記数平均分子量が500〜1,000,000であるオリゴマー鎖又はポリマー鎖「Y」の前駆体yとを反応させることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項10】
(A)請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂、(B)顔料、及び、(C)溶剤、を含有する顔料分散液。
【請求項11】
(A)請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の樹脂、(B)顔料、(C)溶剤、(D)光重合開始剤、及び、(E)エチレン性不飽和二重結合を含有する化合物、を含有することを特徴とする着色硬化性組成物。
【請求項12】
さらに(F)アルカリ可溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項11に記載の着色硬化性組成物。
【請求項13】
支持体上に、請求項11又は請求項12に記載の着色硬化性組成物により形成された着色パターンを有するカラーフィルタ。
【請求項14】
支持体上に、請求項11又は請求項12に記載の着色硬化性組成物を塗布して該硬化性組成物からなる着色層を形成する着色層形成工程と、該着色層を、マスクを介してパターン露光する露光工程と、露光後の着色層を現像して着色パターンを形成する現像工程と、を含むことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【公開番号】特開2009−203462(P2009−203462A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−964(P2009−964)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】