説明

樹脂フィルム付きトレイ、その製造方法、光学フィルムの収納構造体

【課題】発埃を抑えることができ、かつ強度を有し、光学フィルムを収納した場合においても、擦れ等によって光学フィルムを傷付けることのない、安価に製造可能なトレイを提供すること。
【解決手段】少なくとも2層の繊維質基材板と当該基材板の間に設けられた繊維質芯部を有しかつ前記芯部によって前記基材板の間に空隙を有するように形成されている緩衝板を、加工して得られたトレイであって、前記トレイの全表面が樹脂フィルムで覆われており、かつ、前記空隙が負圧状態にあることを特徴とする樹脂フィルム付きトレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムにより表面が覆われている樹脂フィルム付きトレイおよびその製造方法に関する。当該樹脂フィルム付きトレイは、光学フィルム、食品、精密工業部品等を収納して、保護するためのトレイとして用いることができる。特に、本発明の樹脂フィルム付きトレイは、粉塵等を嫌う、光学フィルムの収納に有用であり、当該光学フィルムを収納した樹脂フィルム付きトレイは、光学フィルムの収納構造体として好適に用いられる。光学フィルムとしては、例えば、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものがあげられる。
【背景技術】
【0002】
打ち抜かれた光学フィルムは、通常、積層された状態で、光学フィルムの大きさに応じて設計されたトレイに収納されて、保護された状態で搬送される。この際に、光学フィルムに、埃やダスト等の粉塵が付かないようにすることや、搬送時に光学フィルムがトレイ内で動くことによって光学フィルム同士の摩擦や光学フィルムとトレイとの摩擦によって光学フィルムに傷などが付かないことが求められる。
【0003】
従来、上記の用途では、プラスチック製のトレイが使用されていた。しかし、プラスチック製のトレイの成形には金型が必要である。近年では、テレビの大型化などにより、トレイの大きさも大きくなったり、一方、少量多品種生産によってトレイの種類も増えたりして、プラスチック製のトレイの作成コストが上昇していた。また、大型化した光学フィルムに対応して作成されたプラスチック製トレイは、重量が大きくなって搬送性が低下する。さらには、成形時の応力などによってカールしてしまうといった問題点があった。
【0004】
一方、上記トレイとしては、紙製のトレイを使用することも考えられる。紙製のトレイは金型が不要であり、また軽量化が可能で、カールの問題もない。しかしながら、紙製のトレイは発埃するという問題があった。光学フィルム等を取り扱うクリーンルーム内では、発埃するものを用いることはできない。また、紙製のトレイは強度の面でも不十分である。かかる問題に対しては、トレイの材料として、無埃紙を用いた段ボールや、特定のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いて形成した樹脂製段ボールを用いることで、発埃を抑えることが提案されている(特許文献1,2)。しかし、無埃紙を用いた段ボールであっても発埃量を十分には低減できず、また、コスト面、強度面においても課題が残る。また、樹脂性段ボールでは特殊な樹脂が必要なことから製造面、取り扱い面、コスト面において問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−103672号公報
【特許文献2】特開2004−050640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、発埃を抑えることができ、かつ強度を有し、光学フィルムを収納した場合においても、擦れ等によって光学フィルムを傷付けることのない、安価に製造可能なトレイおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、前記トレイ内に、光学フィルムが収納されている、光学フィルムの収納構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、以下に示す樹脂フィルム付きトレイ等により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、少なくとも2層の繊維質基材板と当該基材板の間に設けられた繊維質芯部を有しかつ前記芯部によって前記基材板の間に空隙を有するように形成されている緩衝板を、加工して得られたトレイであって、
前記トレイの全表面が樹脂フィルムで覆われており、かつ、前記空隙が負圧状態にあることを特徴とする樹脂フィルム付きトレイ、に関する。
【0010】
前記樹脂フィルム付きトレイにおいて、前記樹脂フィルムは、水蒸気の透過度が、80cm/m・24h・atm以下であることが好ましい。
【0011】
前記樹脂フィルム付きトレイにおいて、前記樹脂フィルムは、引張破断強度が0.5〜10MPaであり、伸び率が30〜1000%であることが好ましい。
【0012】
前記樹脂フィルム付きトレイにおいて、前記樹脂フィルムは、ポリエチレン層およびナイロン層を有するものが好適である。さらには、前記樹脂フィルムは、ポリエチレン層/ナイロン層/ポリエチレン層の積層体(/は、各層がこの順で積層されていることを示す)であることが好ましい。
【0013】
前記樹脂フィルム付きトレイにおいて、前記緩衝板としては、段ボールを用いることができる。
【0014】
前記樹脂フィルム付きトレイは、例えば、光学フィルムを収納するために用いることができる。
【0015】
また本発明は、当該光学フィルム用の樹脂フィルム付きトレイの収納部に、光学フィルムが収納されていることを特徴とする、光学フィルムの収納構造体、に関する。
【0016】
また本発明は、前記樹脂フィルム付きトレイの製造方法であって、
少なくとも2層の繊維質基材板と当該基材板の間に設けられた繊維質芯部を有しかつ前記芯部によって前記基材板の間に空隙を有するように形成されている緩衝板を、加工して得られたトレイを、
樹脂フィルムからなる袋の開口部から前記袋内に入れ込み工程(1)、
前記トレイが入れ込まれた前記袋内を脱気して負圧化する工程(2)、および
前記負圧状態の前記袋の開口部をシール加工して、前記袋を密閉化する工程(3)、を有することを特徴とする樹脂フィルム付きトレイの製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂フィルム付きトレイは、繊維質基材板と繊維質芯部により形成された緩衝板(例えば、段ボール紙)から加工されているトレイを用いており、軽量であり、かつ安価に製造可能である。また、本発明の樹脂フィルム付きトレイは、樹脂フィルム内に前記トレイを入れ込んで脱気、密閉化する簡易な操作によって製造することができる。
【0018】
一方、本発明の樹脂フィルム付きトレイは、トレイの全表面が樹脂フィルムにより覆われているため、トレイを形成する緩衝板の材料が繊維質であるにも拘らず発埃等の問題がない。また、緩衝板の空隙が負圧状態にあるため、樹脂フィルムは、緩衝板に密着した状態になっており、樹脂フィルム付きトレイは、トレイ単独の場合に比べて強度が格段に向上する。また、樹脂フィルム付きトレイ内に、光学フィルム等を収納した場合においても、光学フィルムは樹脂フィルムと接触することになるため、擦れ等によって光学フィルムを傷付けることがなく、取り扱い性も良好である。
【0019】
また、本発明の樹脂フィルム付きトレイに用いる緩衝板は、トレイ形成への裁断加工等が容易であり、またサイズ調整を任意に行うことができ、取り扱い性がよい。また、樹脂フィルム付きトレイを廃棄するにあたっては、樹脂フィルムとトレイ(緩衝板)は、負圧で密着(非接着)しているため、負圧を解除することにより、樹脂フィルムとトレイの分別ができリサイクルを容易で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の樹脂フィルム付きトレイの断面図の一例である。
【図2】本発明の樹脂フィルム付きトレイの上面図の一例である。
【図3】本発明の樹脂フィルム付きトレイに用いるトレイの一例である。
【図4】本発明の樹脂フィルム付きトレイの収納部に、光学フィルムを収納した、光学フィルムの収納構造体の断面図の一例である。
【図5】本発明のトレイを形成する緩衝板の断面図の一例である。
【図6】本発明の樹脂フィルム付きトレイの製造方法を示す概略図の一例である。
【符号の説明】
【0021】
A:樹脂フィルム付きトレイ
A´:トレイ
x:壁部
y:収納部
1:緩衝板
2:樹脂フィルム
B:光学フィルム
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の樹脂フィルム付きトレイ等について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の樹脂フィルム付きトレイAの断面図の一例を示す。図1に示すように、本発明の樹脂フィルム付きトレイAは、トレイA´の全表面が、樹脂フィルム2で覆われている。本発明で用いるトレイA´は、緩衝板1を加工することにより形成され、少なくとも側部の一部に壁部xを有する。図1の断面図では、壁部xを、トレイの両側に有する。図1では、トレイA´の壁部xは、緩衝板1の両側の端部を折り曲げることより、壁部xが形成されている。
【0024】
図1のトレイA´では、緩衝板1の平面部に対して壁部xが垂直になっているが、壁部xの角度は適宜に設定することができる。壁部の高さは、通常、強度、加工性の点から10〜80mm程度であるのが好ましく、20〜40mmであるのがより好ましい。また前記壁部xは断面が台形、矩形、Rを伴う三角形等の各種の形状になるように、立体的に形成することができる。前記壁部xを立体的に形成するにあたっては、緩衝板1の端部は、各種の壁部xの立体形状になるように予め裁断して平面部とともに一体成形することができ、別途、壁部xのみを形成することもできる。例えば、壁部xの立体的な形成は、緩衝板1の端部を予め裁断しておけば、緩衝板1の端部を折り曲げることによって行うことができる。壁部xを立体的に形成することにより、壁部xの強度を向上させることができる。また、壁部xは空洞を形成するように緩衝板1の端部を形成することもできる。壁部xに空洞を形成することにより、壁部xを立体的に形成することができる。一方、空洞を有する壁部xを設けた場合には、壁部xの強度を確保するため、当該空洞には、別途、緩衝板1等を入れ込むことができる。壁部xを立体的に形成する場合、壁部xの幅は、通常、10〜80mm程度であるのが好ましく、20〜30mmであるのがより好ましい。
【0025】
樹脂フィルム付きトレイAの上面図は、例えば、図2に一例が示されている。図2の、b−b´の断面図が、図1の断面図のb−b´に対応する。図2では、トレイA´の上面図として、矩形の場合が例示されているが、上面図の形状は、樹脂フィルム付きトレイAが適用される用途に応じて適宜に形状を決定することができる。上面図の形状としては、矩形の他に、三角形、四角形等の他の多角形の形状があげられる。図2に示す矩形のトレイA´では、壁部xは、トレイA´の四辺において形成されているが、用途に応じて壁部xは、四辺の全てに設けなくともよい。なお、図2では、矩形の各角部には、壁部xが設けられていないが、当該角部に壁部xを適宜に設けることもできる。また、図2では、矩形の各角部を円状に形成しているが当該角部の形状は特に制限はない。
【0026】
樹脂フィルム付きトレイAに用いる、トレイA´は、例えば、緩衝板1の端部1x、1zを図3(1)に示すように裁断しておき、端部1xを折り合わせることで立体的な壁部xを形成することができる。当該壁部xは、図3(2)の拡大図で示されるように、断面図が空洞の台形を形成するように折り合わされている。前記空洞には、補強緩衝板1´が入れ込まれている。また、図3(3)に示すように、前記緩衝板1の端部1zは、トレイA´の裏面に貼り合わされてトレイA´の強度を向上させている。
【0027】
図4は、図1に示す、樹脂フィルム付きトレイAの収納部Y(平面部)に、光学フィルムBが収納されている、光学フィルムの収納構造体の断面図である。図4では、複数の光学フィルムBが積層された状態のものが示されているが、単に1枚の光学フィルムを収納することもできる。
【0028】
なお、図1乃至図3に示すトレイの形状は一例にすぎない。トレイの形状は、収納する対象物(例えば、光学フィルム)の形状に応じて、大きさ、形状を設計することができる。図1乃至図3では、矩形の光学フィルムに合わせて設計したトレイが示されている。
【0029】
図1では、緩衝板1の構造は記載されていないが、緩衝板1は、少なくとも2層の繊維質基材板と当該基材板の間に設けられた繊維質芯部を有しかつ前記芯部によって前記基材板の間に空隙を有するように形成されているものである。図1のa−a´断面図の一例を図5に示す。図5では、基材板11と基材板12の間に波状に形成された芯部13が配置されている。芯部13は接着剤によって、基材板11、12に固定することができる。なお、図5では、基材板11、12と芯部13の一組の構造が記載されているが、本発明の緩衝板は、これら構造を2層以上組み合わせたような構造を採用することができる。図5に示すように、前記芯部13と前記基材板11、12の間には空隙14が形成されているが、本発明の樹脂フィルム付きトレイAでは、当該空隙14が負圧状態になることで、緩衝板1から形成されたトレイA´と樹脂フィルム2が密着している。
【0030】
前記緩衝板に係る、基材板、芯部はいずれも繊維質素材を含有するものが用いられる。かかる繊維質素材を用いた緩衝板としては、例えば、両面段ボールシート、多段段ボールシート、複両面段ボールシート、複々両面段ボールシート、プラスチック段ボールシート等があげられる。なお、段ボールの構造において、前記緩衝板の基材板はライナ、芯部は中芯に該当する。繊維質素材としては、従来用いられている、各種パルプ繊維を用いることができる。段ボールシートに用いるパルプ繊維としては、例えば、段ボール古紙、雑誌古紙、新聞古紙等の古紙等を微細化した古紙パルプや、クラフトパルプ等があげられるが、パルプ繊維には、填料等の無機物が適宜に配合することができる。緩衝板として、段ボールシートを用いる場合に、D4、C5、K5、K6、K7クラスのものを収納物に応じて適宜に選択されるが、収納物が、光学フィルムの場合には、強度、加工性、コスト等の点から、K5〜K7Fクラスのものを用いるのが好ましい。また、前記空洞3に用いる補強緩衝板(段ボールシート)としては強化ダンボールシートを用いることで、トレイの側部(壁部)の折れや撓みを防止することができる。
【0031】
前記緩衝板(例えば、段ボールシート)の厚さは、通常、2〜10mm程度であるのが好ましく、さらには3〜8mmの範囲になるように形成したものが好ましい。
【0032】
また、緩衝板1として、段ボールシートを用いて、図2、3に示すような矩形のトレイを形成する場合には、当該段ボールシートに用いる中芯の方向M(中芯の波状の凹凸部により表面または裏面から認識される方向)を、矩形トレイの四辺に対して斜めになるように加工することにより、矩形トレイが四辺に対して平行に折れることを防止でき、矩形トレイの強度を向上することができる。また、多段段ボールシートを用いる場合には、表側の中芯の方向と裏側の中芯の方向を交差させることにより、緩衝板(トレイ)の強度を向上することができる。また、図3(1)のように、中芯の方向Mを、矩形トレイの四辺に対して斜めになるように緩衝板1を予め裁断しておけば、当該緩衝板1から得られるトレイA´では、裏側に貼り合せた端部1zの中芯の方向を、表側の中心の方向と交差させることができる。
【0033】
次いで、本発明の樹脂フィルム付きトレイの製造方法について説明する。当該製造方法の概略は図6に示す。図6では、緩衝板1により形成された、四辺に壁部xを有する矩形トレイA´を用いる場合が例示されている。
【0034】
まず、図6(1)のように、矩形トレイA´を、樹脂フィルム2からなる袋Fの開口部Kから前記袋内に入れ込み工程(1)、施す。前記袋の形状、大きさは、トレイの形状、大きさに合わせて、袋が大きすぎないように、またトレイが袋内に容易に入れ込むことができるように適宜に選択される。矩形トレイA´に対しては、矩形の袋が好ましく、矩形袋は4辺の1辺のみが開口した状態のものが用いられる。なお、図6では、矩形トレイA´の長辺に合わせて開口部Kが設けられているが、矩形トレイA´の短辺に合わせて開口部Kを設けてもよい。なお、トレイA´の袋F内への入れ込みは、脱気工程(2)、密閉化工程(3)の操作を容易に行って、シール不良や樹脂フィルム2(袋F)によるシワ等が発生しないように入れ込まれたトレイA´の端部と開口部Kには、50〜150mm程度のトレランスTを持たせるのが好ましい。
【0035】
前記入れ込み工程(1)の後、次いで、前記トレイが入れ込まれた前記袋内を脱気して負圧化する工程(2)、を施す。前記袋内に前記トレイが入れ込まれた状態は、図6(2)に示される。図6(2)の状態で脱気を行うが、脱気手段としては、各種手段を採用することができ、例えば、真空ポンプ、イジェクター等が用いられる。具体的には、真空ポンプ等によって、袋の開口部Kから脱気を行い、袋内を負圧化する。負圧は大気圧を0kPaとしたときに、それより低い圧力の状態である。負圧化の程度は、トレイと樹脂フィルムを密着させる程度に行う。負圧化は、到達真空度が、−30kPa以下、更には−50kPa以下になるように行うのが好ましい。なお、脱気する時間としては、通常、3〜60秒間程度、好ましくは5〜40秒間程度、更に好ましくは7〜20秒間程度、更に好ましくは9〜15秒間程度である。脱気時間が長くなると生産効率の点で好ましくなく、トレイの形状が変形する場合がある。また脱気時間が短くなると袋内に空気が残って負圧化できなくなる。また、脱気速度(排気速度)としては、50〜2000リットル/分程度が好ましく、更には50〜1650リットル/分程度が好ましく、更には180〜800リットル/分程度であるのが好ましい。
【0036】
脱気装置としては、例えば、富士インパルス社製のLOS‐NT(真空ポンプ脱気仕様/真空ポンプ圧力設定範囲容量:490kPa,排気速度:180リットル/分,到達真空度:−91.3kPa)、富士インパルス社製のLOS‐NTW(イジェクター仕様<エアー源外部コンプッサー>/コンプレッサー圧力設定範囲容量:540kPa,排気速度:1650リットル/分,到達真空度:−56.9kPa)等があげられる。なお、脱気装置としては、例えば、富士インパルス社製のLOS‐NTを用いる場合の脱気時間は、5〜30秒間程度、好ましくは9〜20秒間程度であり、富士インパルス社製のLOS‐NTWを用いる場合の脱気時間は、5〜20秒間程度、好ましくは9〜15秒間程度である。
【0037】
さらに、前記負圧状態の前記袋の開口部Kをシール加工して、前記袋を密閉化する工程(3)、を施す。かかる密閉化工程(3)によって、樹脂フィルム付きトレイAが得られる。図6(3)に示すように、得られた樹脂フィルム付きトレイAでは、開口部Kがシール加工Sにより密閉されている。密閉化工程(3)は、脱気工程(2)の後にまたは脱気工程(2)と共に施すことができる。密閉化手段としては、開口部Kを封止することができる手段であればよい。例えば、樹脂フィルムをヒートシールする方法、樹脂フィルムを接着剤により貼り合せる方法等を採用することができる。
【0038】
なお、図6(3)では、得られた樹脂フィルム付きトレイAにおいて、樹脂フィルム2がトレイA´の側部の一部で密着していないように表されているが、これは、樹脂フィルム付きトレイAの作成に際して、トレイA´に対して樹脂フィルム2にトレランスTを持たせている状態を示したものであり、図6(3)においても、実質的に図1の断面図に示すようにトレイA´の全表面が、樹脂フィルム2で覆われている。
【0039】
本発明の樹脂フィルム付きトレイに用いられる樹脂フィルムとしては、各種の材料から形成したものを用いることがきる。樹脂フィルムの材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12等のナイロン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、セルロース系樹脂等があげられる。樹脂フィルムは、これら樹脂材料を単独またはブレンドして形成したものでもよい。また、樹脂フィルムとしては、これら樹脂材料から得られる樹脂フィルムの積層体を用いることができる。当該積層体は、各樹脂フィルムを接着剤等により貼り合せることにより、または各樹脂材料を共押出することにより得ることができる。前記共押出の積層体を得る場合にも接着層とともに、各樹脂材料を共押出して積層体とすることができる。さらには樹脂フィルムとしては、各樹脂層とともに、アルミ箔層等の金属箔を有する積層体を用いることができる。本発明の樹脂フィルムとしては、柔軟性とシール性が良好なことから、樹脂フィルムの積層体が好ましく、特に、強度と密着性の点から接着層とともに共押出した積層体が好ましい。
【0040】
また本発明で用いる樹脂フィルムの厚さは、トレイとの密着性と強度を付与する観点から、50〜120μm程度であるのが好ましく、60〜80μmであるのがより好ましい。樹脂フィルムが積層体の場合においても、当該積層体の厚さは前記範囲にあるのが好ましい。
【0041】
前記樹脂フィルムは、各種の樹脂フィルムを用いることができるが、水蒸気の透過度が、50cm/m・24h・atm以下のものが好ましい。水蒸気の透過度が大きくなると、得られた樹脂フィルム付きトレイにおける、樹脂フィルムとトレイの負圧状態が経時的に解消されて強度が低下しやすい。水蒸気の透過度は、80cm/m・24h・atm以下であるのが好ましく、さらには60cm/m・24h・atm以下であるのが好ましい。なお、水蒸気の透過度は、JIS K7126において、23℃、65%RHの条件下で測定した値である。
【0042】
また樹脂フィルムは、強度と密着性の点から、引張破断強度は、好ましくは0.5〜10MPa、より好ましく1〜6MPa、更に好ましくは2〜3MPaであり、伸び率が好ましくは30〜1000%、より好ましくは100〜700%、更に好ましくは400〜600%である。また、樹脂フィルムは、強度と密着性の点から、ヤング率は、好ましくは100〜1000MPaであり、より好ましくは200〜600MPaであり、更に好ましくは200〜600MPaである。引張破断強度、伸び率、ヤング率は、JIS K7127に準拠して測定した値である。
【0043】
このような要件を満足できる樹脂フィルムとしては、水蒸気の透過性と、柔軟性と強度のバランスから、複数の樹脂材料または金属箔を組み合わせた積層体を用いるのが好ましい。積層体は柔軟層と強化層を有することが好ましい。かかる観点から、前記樹脂フィルムは、前記水蒸気の透過度(80cm/m・24h・atm以下)を満足することがこし、柔軟層と強化層の積層体であることが好ましい。前記柔軟層は、ヤング率が10〜2000MPaであることが好ましく、更には100〜1000MPaであるのが好ましく、更には200〜500MPaであるのが好ましい。また、強化層は、引張破断強度が1MPa以上、更には2MPa以上であることが好ましく、2〜6MPaであるのがより好ましい。前記積層体における、柔軟層としてはポリエチレン層が好ましく、強化層としてナイロン層を有することが好ましい。かかる積層体の具体例としては、少なくとも、ポリエチレン層およびナイロン層を有する積層体が好ましい。特に、ポリエチレン層/ナイロン層/ポリエチレン層の積層体が好ましい。当該積層体はポリエチレン層接着層/ナイロン層/接着層/ポリエチレン層、の構造を有するものが好ましい。ポリエチレン層接着層/ナイロン層/接着層/ポリエチレン層、の構造を有する積層体の具体例としては、例えば、クリロン化成社製のラミナーエースNK−3(厚み70μm,水蒸気の透過度7.8cm/m・24h・atm,引張破断強度2.1〜2.7MPa,伸び率470〜590%、ヤング率300〜380MPa)、ラミナーエースNK−4(厚み80μm,他は同じ)等があげられる。
【0044】
上記以外の積層体としては、ポリエチレンテレフタレート層/アルミ箔層/ポリエチレン層があげられ、具体的には、例えば、MICS社のフィルム(厚み80μm,水蒸気の透過度4.9cm/m・24h・atm,引張破断強度2.0〜2.6MPa,伸び率470%、ヤング率340MPa)、フィルム(厚み80μm,水蒸気の透過度8cm/m・24h・atm,引張破断強度2.0〜2.6MPa,伸び率470%、ヤング率340MPa)等があげられる。また前記積層体としては、ポリエチレンテレフタレート層/アルミ蒸着層またはアルミ箔層/ポリエチレン層があげられ、具体的には、例えば、富士インパルス社製のIAシリーズ等(厚み74〜80μm,水蒸気の透過度1.0cm/m・24h・atm以下,引張破断強度3.67〜4.12MPa,伸び率115〜120%Pa)等があげられる。また前記積層体としては、ポリエチレン層/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ポリエチレン層があげられ、具体的には、例えば、クリロン化成社製のハイラミナVK−10(厚み70μm,水蒸気の透過度4.9cm/m・24h・atm,引張破断強度2.8MPa,伸び率540%、ヤング率420MPa)等があげられる。その他の積層体としては、例えば、宇部フィルム社製の「シュペレン」、東セロ社製の「トーセロT.A.F.」等があげられる。
【0045】
本発明の樹脂フィルム付きトレイは、各種の収納物に対するトレイとし用いることができる。特に、粉塵等が発生しないことから、光学フィルム等の収納トレイとして好適である。光学フィルムとしては、例えば、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものがあげられる。
【0046】
偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0047】
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。
【0048】
また本発明に用いられる光学フィルムとしては、偏光板に、他の光学層を積層したものがあげられる。他の光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等と積層することができる。
【0049】
また、前述した光学フィルムには、粘着層を設けることもできる。前記積層した光学フィルムは当該粘着層により貼り合せたものを用いることができる。また、粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、通常、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。さらには、前記光学フィルムの粘着層が設けられていない面には、表面保護フィルムを設けることにより光学フィルムを保護することができる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0051】
実施例1
(トレイの作成)
段ボールシート(K5クラス)をトレイの平板形状に打ち抜き加工を行い、図3(1)に示すように裁断した後、図3(2):表側、(3):裏側に示される矩形トレイを作成した。矩形の長辺は900mm、短辺450mm、壁部の幅25mm、高さは30mmとした。壁部の空洞には、強化段ボールシートを巻き込むようにして入れ込んだ。
【0052】
(樹脂フィルム)
下記の樹脂フィルム1から、上記トレイに合わせて、矩形(長辺1000mm、短辺550mm)の袋(一の長辺を開口部とし、他の三辺をシールしたもの)を用いた。
樹脂フィルム1:ポリエチレン層接着層/ナイロン層/接着層/ポリエチレン層、の構造を有する積層体である、クリロン化成社製のラミナーエースNK−3(厚み70μm,水蒸気の透過度7.8cm/m・24h・atm,引張破断強度2.1〜2.7MPa,伸び率470〜590%、ヤング率300〜380MPa)。
【0053】
(樹脂フィルム付きトレイの作成)
上記トレイを、樹脂フィルム1からなる袋の開口部から当該記袋内に入れ込んだ。次いで、前記トレイが入れ込まれた前記袋内を、富士インパルス社製のノズル付き真空シーラーLOS‐NTWにより、12秒間脱気して、前記袋内を負圧化するとともに、前記袋の開口部をシール圧0.55MPaでシール加工して、前記袋を密閉化して、樹脂フィルム付きトレイを得た。得られた樹脂フィルム付きトレイは、トレイに樹脂フィルム1が密着した状態であった。
【0054】
実施例2〜6
実施例1において、樹脂フィルム1の代わりに、下記樹脂フィルム2〜6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂フィルム付きトレイを得た。得られた樹脂フィルム付きトレイは、トレイに樹脂フィルム1が密着した状態であった。
【0055】
樹脂フィルム2:ポリエチレン層接着層/ナイロン層/接着層/ポリエチレン層、の構造を有する積層体である、クリロン化成社製のラミナーエースNK−4(厚み80μm,水蒸気の透過度7.8cm/m・24h・atm,引張破断強度2.1〜2.7MPa,伸び率470〜590%、ヤング率300〜380MPa)。
樹脂フィルム3:ポリエチレンテレフタレート層/アルミ箔層/ポリエチレン層、の構造を有する積層体である、富士インパルス社製のIA袋(アルミラミネート,厚み80μm,水蒸気の透過度0.1cm/m・24h・atm以下,引張破断強度3.67〜4.12MPa,伸び率115〜120%Pa)。
樹脂フィルム4:ポリエチレンテレフタレート層/アルミ蒸着層/ポリエチレン層、の構造を有する積層体である、富士インパルス社製のIA袋(アルミ蒸着透明防湿袋,厚み74μm,水蒸気の透過度1.0cm/m・24h・atm以下,引張破断強度3.87MPa,伸び率115〜120%)。
樹脂フィルム5:ポリエチレン層/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ポリエチレン層、の構造を有する積層体である、クリロン化成社製のハイラミナVK−10(厚み70μm,水蒸気の透過度4.9cm/m・24h・atm,引張破断強度2.8MPa,伸び率540%、ヤング率420MPa)。
樹脂フィルム6:日新化学工業社製の低密度ポリエチレンLDPE(厚み80μm,水蒸気の透過度5.9cm/m・24h・atm,引張破断強度2MPa,伸び率600〜700)。
【0056】
(評価)
上記樹脂フィルム1〜6を用いて得られた実施例1〜6の樹脂フィルム付きトレイは、トレイの全面が樹脂フィルムに覆われており、粉塵等の発生は認められなかた。また、実施例1〜6の樹脂フィルム付きトレイについて、下記評価を行った。なお、比較例1として、トレイをそのまま用いた場合を示す。
【0057】
(強度:フィルム破れ試験1)
樹脂フィルム付きトレイの収納部(表側)に、平板90mm径の物を置き、100gの円柱物(直径120mm)を30cmの高さから垂直に落とした。実施例1〜6の樹脂フィルム付きトレイでは、フィルムは破れなかった。なお、実施例1、2では円柱物の底部の跡がフィルムにやや残る状態であり、実施例3〜5では円柱物の角部の跡がフィルムに残る状態であり、実施例6では円柱物の角部の跡がハッキリとフィルムに残る状態であった。比較例1について同様の試験を行った結果、円柱物の角度のあとが、やや残る状態であった。
【0058】
(強度:フィルム破れ試験2)
樹脂フィルム付きトレイの収納部(表側)に、1000gの円柱物(直径120mm)を30cmの高さから直接、垂直に落とした。実施例1〜5の樹脂フィルム付きトレイでは、フィルムは破れなかった。なお、実施例1〜5では円柱物の角部の跡がハッキリとフィルムに残る状態であった。実施例6では、フィルムが破れる状態であった。比較例1について同様の試験を行った結果、円柱物の角度のあとが、ハッキリ残る状態であった。
【0059】
(経時的な負圧状態)
上記樹脂フィルム1〜5を用いて得られた実施例1の樹脂フィルム付きトレイは、経時的(2000時間)にも負圧状態を維持していた。一方、樹脂フィルム6を用いて得られた実施例6の樹脂フィルム付きトレイは、20時間経過した後に、負圧が解除された。なお、実施例6の樹脂フィルム付きトレイについて、負圧が解除された状態で、上記の強度:フィルム破れ試験1、2を行った結果、形態の維持が困難な状態であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層の繊維質基材板と当該基材板の間に設けられた繊維質芯部を有しかつ前記芯部によって前記基材板の間に空隙を有するように形成されている緩衝板を、加工して得られたトレイであって、
前記トレイの全表面が樹脂フィルムで覆われており、かつ、前記空隙が負圧状態にあることを特徴とする樹脂フィルム付きトレイ。
【請求項2】
前記樹脂フィルムは、水蒸気の透過度が、80cm/m・24h・atm以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂フィルム付きトレイ。
【請求項3】
前記樹脂フィルムは、引張破断強度が0.5〜10MPaであり、伸び率が30〜1000%であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂フィルム付きトレイ。
【請求項4】
前記樹脂フィルムが、ポリエチレン層およびナイロン層を有する積層体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂フィルム付きトレイ。
【請求項5】
前記樹脂フィルムが、ポリエチレン層/ナイロン層/ポリエチレン層の積層体であることを特徴とする請求項4記載の樹脂フィルム付きトレイ。
【請求項6】
前記緩衝板が、段ボールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂フィルム付きトレイ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂フィルム付きトレイは、光学フィルムを収納するために用いられるものであることを特徴とする、光学フィルム用の樹脂フィルム付きトレイ。
【請求項8】
請求項7記載の光学フィルム用の樹脂フィルム付きトレイの収納部に、光学フィルムが収納されていることを特徴とする、光学フィルムの収納構造体。
【請求項9】
請求項1〜7いずれかに記載の樹脂フィルム付きトレイの製造方法であって、
少なくとも2層の繊維質基材板と当該基材板の間に設けられた繊維質芯部を有しかつ前記芯部によって前記基材板の間に空隙を有するように形成されている緩衝板を、加工して得られたトレイを、
樹脂フィルムからなる袋の開口部から前記袋内に入れ込み工程(1)、
前記トレイが入れ込まれた前記袋内を脱気して負圧化する工程(2)、および
前記負圧状態の前記袋の開口部をシール加工して、前記袋を密閉化する工程(3)、を有することを特徴とする樹脂フィルム付きトレイの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−241458(P2010−241458A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91379(P2009−91379)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】