説明

樹脂モールドパッケージ

【課題】樹脂モールド成形時におけるボンディングワイヤの変形を防止する。
【解決手段】樹脂モールドパッケージは、半導体チップ20を固着するダイパッド14と、該半導体チップ20の近傍に形成されたインナーリード15とをボンディングワイヤ22により接続し、樹脂により該半導体チップ接続部分をモールドする構成である。インナーリード部分に、上面にボンディングパッド23を有する電子部品21を設け、前記半導体チップ20と接続対象のインナーリード16aとに対して、該電子部品20の前記ボンディングパッド23を中継部としてボンディングワイヤ22A、22Bをボンディングした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングワイヤをジャンピングワイヤとして用いる構造を含む樹脂モールドパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に示すように基板レスの樹脂モールドパッケージにおいては、制御ICなどの半導体チップ1を固着するダイパッド2と、該半導体チップ1の近傍に形成された複数のインナーリード3(これはリードフレームと一体形成されている)とをボンディングワイヤ4により接続し、又、インナーリード部分にチップ化された電子部品を実装している。なお、この後、図示しない樹脂により該半導体チップ1接続部分をモールドする構成としている。この樹脂モールドパッケージにおいては、例えば必要電位を半導体チップ1に取り込むために、図8に示すように、ボンディングワイヤ4aによりインナーリード3aを跨いで別のインナーリード3bに接続する場合がある。この場合ボンディングワイヤ4aはジャンパワイヤとして用いられることになる。ボンディングワイヤをジャンパワイヤとして用いた構造を含む回路装置として特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−277355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来構成では、ボンディングワイヤ4aがインナーリード3aを跨ぐと、該ボンディングワイヤ4aの長さが長くなるため、樹脂モールド成形時において、ボンディングワイヤが変形して(いわゆるワイヤ流れ)他の部分とショートし易くなってしまう。
【0004】
ワイヤの変形を防止するためには、インナーリードを半導体チップに近づける必要があり、インナーリード部分のレイアウト設計に制約が多く、樹脂モールドパッケージの大型化を来たしてしまう問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボンディングワイヤの長さが長くなることを無くし得て、樹脂モールド成形時におけるボンディングワイヤの変形を防止でき、インナーリード部分のレイアウト設計の制約も軽減できる樹脂モールドパッケージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、半導体チップと接続対象のインナーリードとに対して、中継部材のボンディングパッドを中継部としてボンディングワイヤをボンディングする構成としている。これによれば、半導体チップと接続対象のインナーリードとの間に他のインナーリードなどがあったとしても、あるいは、半導体チップと接続対象のインナーリードとの間の距離が長くても、前記中継部材を中継してボンディングワイヤをボンディングすることで、ボンディングワイヤ単独の長さを短くすることができて、樹脂モールド成形時におけるボンディングワイヤの変形を防止でき、他部分とのショートなどを防止でき、且つ、インナーリードを半導体チップに無理に近づける必要がなくてインナーリード部分のレイアウト設計の制約も軽減できる。
【0007】
この場合、前記中継部材は、樹脂モールドパッケージに実装されるチップ化された電子部品であっても良い(請求項2の発明)。このようにすると、本来的に使用される電子部品を中継部材として利用でき、構成部品の追加が不要で、コストの低廉化に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の第1の実施例につき図1ないし図5を参照して説明する。図5には、完成状態の樹脂モールドパッケージ11を示している。また、図3にはモールド前の状態の全体を示し、また、図4にはモールド後の状態を示している。また、図1には、図3におけるA部分を拡大して示している。これら図1、図3〜図5を参照して、樹脂モールドパッケージ11の構成について説明する。
【0009】
図3において、リードフレーム12には、ヒートシンク部13、ダイパッド14、複数のインナーリード15、複数のアウターリード16が形成されており、このリードフレーム12は上部連結部17、中間連結部18及び下部連結部19により他のリードフレーム(図示せず)と連結されている。
【0010】
図1に示すように、前記ダイパッド14には、制御ICなどの半導体チップ20がマウントされている。前記インナーリード15の各先端部は概ね半導体チップ20に近づけた構成となっている。
また、適宜のインナーリード15、15間には、チップコンデンサやチップ抵抗などのチップ化された電子部品21が必要個数実装されている。この電子部品21は、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップ化されたトランジスタなどである。
【0011】
そして、半導体チップ20と適宜のインナーリード15の先端部との間はボンディングワイヤ22により接続されている。
前記複数の電子部品21のうち例えば1つの電子部品21aは、半導体チップ20と1つのインナーリード15aとをボンディングワイヤで接続する場合の中継部材として使用されている。つまり、図2に示すように、この電子部品21aの上面には、ボンディングパッド23が形成されている。この場合、このボンディングパッド23は、当該電子部品21aの種別や型番を示すマークを導体で形成し、該マークを、ボンディングパッドとして利用するようにしても良い。
【0012】
半導体チップ20と1つのインナーリード15aとは、前記電子部品21aの前記ボンディングパッド23を中継して、ボンディングワイヤ22A、22Bにより接続されている。
この場合、電子部品21aとボンディングワイヤ22A、22Bとで、インナーリード15bをジャンプした形態となっている。
このようにして、図3に示す状態のモールド前の基板レスの回路が構成される。この後、図4に示すように半導体チップ20、インナーリード15、15a、15b、電子部品21部分を樹脂24によりモールドし、そして、図5に示すように、前記連結部17、上部連結部18及び下部連結部19をカットして樹脂モールドパッケージ11が完成する。
【0013】
このように本実施例においては、インナーリード15部分に、上面にボンディングパッド23を有する中継部材たる電子部品21aを設け、半導体チップ20と接続対象のインナーリード15aとに対して、該受動素子aの前記ボンディングパッド23を中継部としてボンディングワイヤ22A、22Bをボンディングした構成としている。
【0014】
これによれば、半導体チップ20と接続対象のインナーリード15aとの間に他のインナーリード15bなどがあったとしても、あるいは、半導体チップ20と接続対象のインナーリード15bとの間の距離が長くても、前記受動素子20を中継してボンディングワイヤ22A、22Bをボンディングすることで、各ボンディングワイヤ22A、22Bの長さを短くすることができて、樹脂モールド成形時におけるボンディングワイヤ22A、22Bの変形を防止でき、他部分とのショートなどを防止できる。また、インナーリード15aを半導体チップに無理に近づける必要がなくてインナーリード部分のレイアウト設計の自由度を向上できる。つまり、図1に示したインナーリード15aと、従来構成を示す図7のインナーリード3bとの比較から分かるように、本実施例のインナーリード15aでは、その先端部を半導体チップ20に近づけなくても済むから、カットした形態としており、設計の自由度が向上したことが分かる。
【0015】
この場合、前記中継部材を、当該樹脂モールドパッケージに実装されるチップ化された電子部品20としたから、本来的に使用される電子部品21を中継部材として利用でき、構成部品の追加が不要で、コストの低廉化に寄与できる。
【0016】
なお、図6には本発明の第2の実施例を示している。この第2の実施例では、中継部材としては、専用の中継部材24を設けている。この中継部材24は、絶縁材から成り、上面にボンディングパッド25を形成している。この中継部材24を接着剤にて適宜部位に接着すれば良い。
その他、本発明は上記各実施例に限定されず、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例を示し、図3のP部分の拡大平面図
【図2】図1の矢印A−A線断面図
【図3】樹脂モールド前の状態での全体の平面図
【図4】樹脂モールド後の状態での全体の平面図
【図5】完成状態での全体の平面図
【図6】本発明の第2の実施例を示す図2相当図
【図7】従来例を示す図1相当図
【図8】図2相当図
【符号の説明】
【0018】
図面中、11は樹脂モールドパッケージ、12はリードフレーム、14はダイパッド、15、15a、15bはインナーリード、16はアウターリード、20は半導体チップ、21は電子部品(中継部材)、22、22A、22Bはボンディングワイヤ、23はボンディングパッド、24は中継部材、25はボンディングパッドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを固着するダイパッドと、該半導体チップの近傍に形成されたインナーリードとをボンディングワイヤにより接続し、樹脂により該半導体チップ接続部分をモールドするようにした樹脂モールドパッケージにおいて、
前記インナーリード部分に、上面にボンディングパッドを有する中継部材を設け、
前記半導体チップと接続対象のインナーリードとに対して、該中継部材の前記ボンディングパッドを中継部としてボンディングワイヤをボンディングしたことを特徴とする樹脂モールドパッケージ。
【請求項2】
前記中継部材は、当該樹脂モールドパッケージに実装されるチップ化された電子部品であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂モールドパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−124022(P2009−124022A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298103(P2007−298103)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】