説明

樹脂モールド

【課題】基材との密着性に優れ、転写材樹脂との離型性に優れ、且つ樹脂モールド自体の耐久性に優れた、転写材樹脂への繰り返し転写に耐えうる樹脂モールドを提供すること。
【解決手段】本発明の樹脂モールドは、表面に微細凹凸構造を有する樹脂モールドであって、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写用の樹脂モールドに関し、特にフッ素を含有する樹脂モールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ・マイクロメートルサイズ領域に制御対象を有する光学素子やバイオ材料を開発する上で、そのナノ・マイクロメートルサイズ領域において精密に加工制御された部材を用いることは、制御機能に大きく影響を与える。とりわけ民生用の光学素子の場合、主に数百nm域での波長制御が求められるため、数nm〜数十nmの加工精度が重要である。さらに、量産性の観点から、加工精度の再現性、均一性、スループット性も兼ね備えた精密加工技術であることが望まれる。
【0003】
公知の微細加工技術としては、例えば、電子線を使って直接微細加工する方法や、干渉露光で大面積に一括描画する方法などがある。最近では、半導体技術でのステッパー装置を応用したステップ&リピート法での微細パタン加工も知られている。しかしながら、いずれも複数の加工工程を必要とし、且つ高額な設備投資が必要であり、製作時間やコスト面で生産性の良い技術とは言い難い。
【0004】
これらの課題を解決する上で提案されている加工方法の一つとして、ナノインプリント法がある。微細パタン加工された部材を鋳型として用いて、樹脂(転写材)に数nm〜数十nmの加工精度で簡単に転写し複製できる技術である。簡易な工程で安価に実施できるため、産業上欠かせない精密複製加工技術として注目されている。転写材の物性や加工プロセスの違いから、熱ナノインプリント、光ナノインプリント、室温ナノインプリントやソフトリソグラフィー法等に区分されている。中でも、光硬化性樹脂を使った光ナノインプリント法は、迅速に繰り返し転写できるロールツーロール法プロセスに応用し易く、スループット性の点で魅力的とされる。プロセス上、転写材側からまたはモールド側からの露光を必須とするため、紫外・可視波長領域において高い光線透過率を有する材質を選択する必要がある。特に、モールド側の材質に関しては、主に石英やサファイア、ガラス製モールドに制限され、その剛性材質ゆえに連続製造技術や加工プロセスにおいて汎用性に欠ける課題がある。これらの剛性モールドが有する課題を解決するためには、剛性モールドの代替として透過性及びフレキシブル性を有す樹脂モールドが必要となる。近年、透過性とフレキシブル性を具備した樹脂モールドが報告されている(特許文献1)が、特許文献1に開示の熱可塑性の樹脂モールドには、基材との密着性については開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−198883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、その後の本発明者等の検討によって、基材との密着性に加えて樹脂モールドを用いた繰り返し転写性に優れた樹脂モールドにおいては、樹脂モールドとそのモールドを用いて転写する転写材樹脂との間の離型性に優れ、且つ、樹脂モールド自体の耐久性に優れた樹脂モールドの提供があらたな課題であることが明確になった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みて為されたものであり、基材との密着性に優れ、転写材樹脂との離型性に優れ、且つ樹脂モールド自体の耐久性に優れた、転写材樹脂への繰り返し転写に耐えうる樹脂モールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、樹脂モールド中の樹脂表面部(微細凹凸構造付近)のフッ素元素濃度(Es)を、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)以上、より好適には樹脂表面部の平均フッ素元素濃度(Es)より大きく、且つ、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を小さくすることで、ナノメートルサイズの凹凸形状を樹脂から樹脂へ繰り返し転写できる樹脂モールドが得られることを見出した。
【0009】
樹脂表面部のフッ素元素濃度(Es)を樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)よりも大きくすることで、樹脂表面部は自由エネルギーの低さゆえ転写材樹脂との離型性が向上し、樹脂中における基材付近では自由エネルギーを高く保つことで基材との密着性が向上する。さらに、且つ樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を樹脂表面部に対して相対的に低くすることで樹脂自体の強度が向上するので、ナノメートルサイズの凹凸形状を有する樹脂モールドから樹脂へ繰り返し転写できる樹脂モールドを作製できる。また、樹脂モールド(A)から、樹脂へ転写することにより作製された樹脂モールド(B)からも、樹脂へ繰り返し転写できることから、生産効率が飛躍的に向上すると共に、一般的に高価なマスタースタンパーのコストを吸収することができる。このため、本発明に係る樹脂モールドは、環境面からも産業上有用である。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0010】
本発明の樹脂モールドは、表面に微細凹凸構造を有する樹脂モールドであって、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の樹脂モールドにおいては、前記樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)と前記樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)との比が下記式(1)を満たすことが好ましい。
1≦Es/Eb≦1500 式(1)
【0012】
本発明の樹脂モールドにおいては、350nm〜450nmにおける全光線透過率が50%以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂モールドにおいては、光ナノインプリントにより形成された光重合性混合物の硬化物から成ることが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂モールドにおいては、前記光重合性混合物が、(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の樹脂モールドにおいては、前記(メタ)アクリレート100重量部に対して、前記フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜50重量部、前記光重合開始剤を0.01重量部〜10重量部含有することが好ましい。
【0016】
本発明の樹脂モールドにおいては、前記微細凹凸構造の形状が、ピッチ50nm〜1000nmであり、高さが50nm〜500nmであることが好ましい。
【0017】
本発明の樹脂モールドにおいては、ナノインプリント用であることが好ましい。
【0018】
本発明の樹脂モールドにおいては、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)と樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)との比が下記式(2)を満たすことが好ましい。
20≦Es/Eb≦200 式(2)
【0019】
本発明の樹脂モールドにおいては、フッ素含有(メタ)アクリレートと、非フッ素含有の(メタ)アクリレートと、からなる共重合体を含み、前記フッ素含有(メタ)アクリレートが、下記化学式(1)及び/又は下記化学式(2)で表されることが好ましい。
【化1】

(化学式(1)中、R1は、下記化学式(3)を表し、R2は、下記化学式(4)を表す。)
【化2】

(化学式(3)中、nは、1以上6以下の整数である。)
【化3】

(化学式(4)中、Rは、H又はCHである。)
【0020】
本発明の樹脂モールドにおいては、前記非フッ素含有の(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.8重量部〜6重量部含有することが好ましい。
【0021】
本発明の樹脂モールドの製造方法は、上記樹脂モールドの製造方法であって、非フッ素含有(メタ)アクリレート100重量部、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.8重量部〜6重量部、及び光重合開始剤を含む光重合性混合物を基板又はマスターモールド上に塗布する工程と、前記光重合性混合物を前記基板と前記マスターモールドとの間で押圧する工程と、前記光重合性混合物を露光により硬化させて硬化物を得る工程と、前記マスターモールドから前記硬化物を剥離する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基材との密着性に優れ、転写材樹脂との離型性に優れ、且つ樹脂モールド自体の耐久性に優れた、転写材樹脂への繰り返し転写に耐えうる樹脂モールドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係る樹脂モールドの微細凹凸構造の配列の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、以下具体的に説明する。尚、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタアクリレートを意味する。
【0025】
本発明に係る樹脂モールドは、表面に微細凹凸構造を有する樹脂モールドであって、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)以上であることを特徴とする。
【0026】
樹脂モールド中の樹脂表面(微細凹凸構造付近)のフッ素濃度を、樹脂モールドの平均フッ素濃度以上にすることで、樹脂表面は自由エネルギーの低さゆえに転写材樹脂との離型性に優れ、かつ、ナノメートルサイズの凹凸形状を繰り返し樹脂/樹脂転写できる離型性に優れる樹脂製モールドが得られると共に、基材付近では自由エネルギーを高く保つことで、接着性を向上することができる。
【0027】
さらに、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)よりも大きければ、樹脂表面は自由エネルギーの低さゆえに転写材樹脂との離型性により優れ、かつ、ナノメートルサイズの凹凸形状を繰り返し樹脂/樹脂転写できる離型性により優れる樹脂製モールドが得られると共に、一方で基材付近では自由エネルギーを高く保つことで、より接着性を向上することができるため、好ましい。
【0028】
さらに、表面に微細凹凸構造を有する樹脂モールドであって、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)とモールド表面部のフッ素元素濃度(Es)との比が下記式(1)を満たすことで、上記効果をより発揮するためより好ましい。
1≦Es/Eb≦1500 式(1)
【0029】
さらに、1<Es/Eb≦1500の範囲であればフッ素含有率の高い表面層を形成することができるため、離型が向上し好ましく、3≦Es/Eb≦1500、10≦Es/Eb≦100の範囲となるにしたがってより離型性が向上するため好ましい。
【0030】
尚、上記する最も広い範囲(1<Es/Eb≦1500)の中にあって、20≦Es/Eb≦200の範囲であれば、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂モールドの平均フッ素濃度(Eb)より十分高くなり、樹脂表面の自由エネルギーが効果的に減少するので、転写材樹脂との離型性が向上する。また、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)に対して相対的に低くすることにより、樹脂自体の強度が向上すると共に、樹脂中における基材付近では、自由エネルギーを高く保つことができるので、基材との密着性が向上する。これにより、基材との密着性に優れ、転写材樹脂との離型性に優れ、しかも、ナノメートルサイズの凹凸形状を樹脂から樹脂へ繰り返し転写できる樹脂モールドを得ることができるので特に好ましい。また、26≦Es/Eb≦189の範囲であれば、樹脂表面の自由エネルギーをより低くすることができ、繰り返し転写性が良好になるため好ましい。さらに、30≦Es/Eb≦160の範囲であれば、樹脂表面の自由エネルギーを減少させると共に、樹脂の強度を維持することができ、より繰り返し転写性が向上するため好ましく、31≦Es/Eb≦155であればより好ましい。46≦Es/Eb≦155であれば、上記効果をより一層発現できるため好ましい。
【0031】
さらに、本発明に係る樹脂モールドは下記のごとく、光重合、熱重合により得ることができるが、樹脂モールドが、光ナノインプリントによって光重合性混合物より形成された硬化物から成ることが好ましい。また、上記光重合性混合物が、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を含むことが好ましく、非フッ素含有の(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜50重量部、光重合開始剤を0.01重量部〜10重量部含有することが好ましい。
【0032】
フッ素含有(メタ)アクリレートが、0.1重量部以上であれば離型性に優れ、50重量部以下であれば基材への密着性に優れるため好ましい。特に5重量部〜10重量部であればフッ素含有(メタ)アクリレートの表面偏析に優れる。
【0033】
尚、上記範囲の中でもフッ素含有(メタ)アクリレートが、0.8重量部以上であることで、樹脂モールド表面部(微細凹凸構造表面)のフッ素元素濃度(Es)を高くすることができるためより好ましく、6重量部以下であることで、樹脂中における平均フッ素元素濃度(Eb)を低くし、バルク強度と基材界面の密着力を高くできるためより好ましい。さらに、1重量部〜6重量部の範囲であれば、樹脂表面の自由エネルギーをより低くすることができ、繰り返し転写性が良好になるため好ましい。
【0034】
さらに、上記フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は下記化学式(2)で示されるフッ素含有(メタ)アクリレートであることで、表面自由エネルギーをより効果的に低くでき、基材との密着性をより向上させ、且つ樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を減少させ樹脂の強度を保つことができるため、繰り返し転写性がより向上するために、好ましい。
【0035】
【化4】

(化学式(1)中、R1は、下記化学式(3)を表し、R2は、下記化学式(4)を表す。)
【化5】

(化学式(3)中、nは、1以上6以下の整数である。)
【化6】

(化学式(4)中、Rは、H又はCHである。)
【0036】
本明細書中、「樹脂モールドの表面部」とは、樹脂モールドの微細凹凸構造の表面部のことを示し、樹脂モールドの表面に直交する厚み方向において、樹脂モールドの表面側から略1%〜10%の範囲の部分又は2nm〜20nmの範囲の部分を意味する。また、本発明では、樹脂モールドの表面部のフッ素元素濃度(Es)は、後述するXPS法により求めた値を採用する。本発明では、XPS法におけるX線の侵入長である数nmの深さにおける測定値をもってフッ素元素濃度(Es)としている。
【0037】
一方、本明細書中、「樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)」とは、仕込み量から計算する値、あるいは、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)から解析できる値を採用する。すなわち、樹脂モールドを構成する樹脂に含まれるフッ素元素濃度を意味する。例えば、フィルム状に形成された光重合性混合物の硬化物から構成される樹脂モールドの、樹脂部分を物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を同定することができる。
【0038】
樹脂モールドの製造方法は特に限定されないが、樹脂を光重合または熱重合により製造する方法が一般的である。また、樹脂モールドから光ナノインプリントによる転写による樹脂成型体を得、この樹脂成型体を樹脂モールドと見立てて光ナノインプリントにより新たな樹脂成型体を得、得られた樹脂成型体を樹脂モールドとして使用することも可能である。以下、光重合により合成する場合と、熱重合により合成する場合にわけて記載する。
【0039】
(光重合による合成)
光重合性混合物としては、非フッ素含有の(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を用いることが好ましい。(メタ)アクリレート、及びフッ素含有(メタ)アクリレートを光重合開始剤と共に混合した混合物を用いることで、表面自由エネルギーの低い疎水性界面などに該混合物を接触させた状態で上記混合物を硬化させると、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)を、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)以上に、さらには樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)をより小さくするように調整することができる。
【0040】
ナノパタン転写時の離型性、特に繰り返し転写性良好な樹脂モールドを作製するため、本発明においては、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を低く保った状態で、光重合性混合物を表面自由エネルギーの低い界面などに接触させた状態で硬化させることが望ましい。これにより、系全体のエネルギーを低くするように、フッ素含有(メタ)アクリレートが表面自由エネルギーの低い界面へと効果的に偏析するため、Es/Ebがより大きくなり、繰り返し転写性の良好な樹脂モールドを作製することができる。以下に本発明に係る樹脂モールドの製造に用いるそれぞれの成分について、次に説明する。
【0041】
(A)(メタ)アクリレート
(メタ)アクリレートとしては、後述する(B)フッ素含有(メタ)アクリレート以外の重合性モノマーであれば制限はないが、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマー、ビニル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマーが好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーがより好ましい。そして、それらは非フッ素含有のモノマーであることが好ましい。
【0042】
また、重合性モノマーとしては、重合性基を複数具備した多官能性モノマーであることが好ましく、重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましい。また、2種類以上の重合性モノマーを混合して用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。単一モノマーを使用する場合は、重合反応後の架橋点を増やし、硬化物の物理的安定性(強度、耐熱性等)を得るため、重合性基の数が3以上のモノマーであることが好ましい。また、重合性基の数が1または2であるモノマーの場合、重合性数の異なるモノマーと併用して使用することが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、芳香族系の(メタ)アクリレート[フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等。]、炭化水素系の(メタ)アクリレート[ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタアエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等。]、エーテル性酸素原子を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート[エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等。]、官能基を含む炭化水素系の(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート等。]、シリコーン系のアクリレート等。他には、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。アリル基を有するモノマーとしては、p−イソプロペニルフェノール、ビニル基を有するモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール等が挙げられる。なお、EO変性とはエチレンオキシド変性をECH変性とはエピクロロヒドリン変性を、PO変性とはプロピレンオキシド変性を意味する。
【0044】
(B)フッ素含有(メタ)アクリレート
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、ポリフルオロアルキレン鎖及び/又はペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖と、重合性基とを有することが好ましく、直鎖状ペルフルオロアルキレン基、または炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されかつトリフルオロメチル基を側鎖に有するペルフルオロオキシアルキレン基がさらに好ましい。また、トリフルオロメチル基を分子側鎖または分子構造末端に有する直鎖状のポリフルオロアルキレン鎖及び/又は直鎖状のペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖が特に好ましい。
【0045】
ポリフルオロアルキレン鎖は、炭素数2〜炭素数24のポリフルオロアルキレン基が好ましい。また、ポリフルオロアルキレン基は、官能基を有していてもよい。
【0046】
ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、(CFCFCFO)単位および(CFO)単位からなる群から選ばれた1種以上のペルフルオロ(オキシアルキレン)単位からなることが好ましく、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、又は(CFCFCFO)単位からなることがより好ましい。ペルフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖は、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れることから、(CFCFO)単位からなることが特に好ましい。ペルフルオロ(オキシアルキレン)単位の数は、含フッ素重合体の離型性と硬度が高いことから、2〜200の整数が好ましく、2〜50の整数がより好ましい。
【0047】
重合性基としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ジオキタセン基、シアノ基、イソシアネート基または式−(CH)aSi(M1)3−b(M2)で表される加水分解性シリル基が好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基がより好ましい。ここで、M1は加水分解反応により水酸基に変換される置換基である。このような置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基またはエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M1としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。M2は、1価の炭化水素基である。M2としては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基またはアルケニル基が好ましい。M2がアルキル基である場合、炭素数1〜炭素数4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。M2がアルケニル基である場合、炭素数2〜炭素数4のアルケニル基が好ましく、ビニル基またはアリル基がより好ましい。aは1〜3の整数であり、3が好ましい。bは0または1〜3の整数であり、0が好ましい。加水分解性シリル基としては、(CHO)SiCH−、(CHCHO)SiCH−、(CHO)Si(CH−または(CHCHO)Si(CH−が好ましい。
【0048】
重合性基の数は、重合性に優れることから1〜4の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましい。2種以上の化合物を用いる場合、重合性基の平均数は1〜3が好ましい。
【0049】
フッ素含有(メタ)アクリレートは、官能基を有すると透明基板との密着性に優れる。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル結合を有する官能基、アミド結合を有する官能基、水酸基、アミノ基、シアノ基、ウレタン基、イソシアネート基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基等が挙げられる。特に、カルボキシル基、ウレタン基、イソシアヌル酸誘導体を有する官能基の少なくとも一つの官能基を含むことが好ましい。尚、イソシアヌル酸誘導体には、イソシアヌル酸骨格を有するもので、窒素原子に結合する少なくとも一つの水素原子が他の基で置換されている構造のものが包含される。フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、フルオロ(メタ)アクリレート、フルオロジエン等を用いることができる。フッ素含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0050】
フルオロ(メタ)アクリレートとしては、CH=CHCOO(CH(CF10F、CH=CHCOO(CH(CFF、CH=CHCOO(CH(CFF、CH=C(CH)COO(CH(CF10F、CH=C(CH)COO(CH(CFF、CH=C(CH)COO(CH(CFF、CH=CHCOOCH(CFF、CH=C(CH)COOCH(CFF、CH=CHCOOCH(CFF、CH=C(CH)COOCH(CFF、CH=CHCOOCHCFCFH、CH=CHCOOCH(CFCFH、CH=CHCOOCH(CFCFH、CH=C(CH)COOCH(CFCF)H、CH=C(CH)COOCH(CFCFH、CH=C(CH)COOCH(CFCFH、CH=CHCOOCHCFOCFCFOCF、CH=CHCOOCHCFO(CFCFO)CF、CH=C(CH)COOCHCFOCFCFOCF、CH=C(CH)COOCHCFO(CFCFO)CF、CH=CHCOOCHCF(CF)OCFCF(CF)O(CFF、CH=CHCOOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFF、CH=C(CH)COOCHCF(CF)OCFCF(CF)O(CFF、CH=C(CH)COOCHCF(CF)O(CFCF(CF)O)(CFF、CH=CFCOOCHCH(OH)CH(CFCF(CF、CH=CFCOOCHCH(CHOH)CH(CFCF(CF、CH=CFCOOCHCH(OH)CH(CF10F、CH=CFCOOCHCH(OH)CH(CF10F、CH=CHCOOCHCH(CFCFCHCHOCOCH=CH、CH=C(CH)COOCHCH(CFCFCHCHOCOC(CH)=CH、CH=CHCOOCHCyFCHOCOCH=CH、CH=C(CH)COOCHCyFCHOCOC(CH)=CH等のフルオロ(メタ)アクリレートが挙げられる(但し、CyFはペルフルオロ(1,4−シクロへキシレン基)を示す。)。
【0051】
フルオロジエンとしては、CF=CFCFCF=CF、CF=CFOCFCF=CF、CF=CFOCFCFCF=CF、CF=CFOCF(CF)CFCF=CF、CF=CFOCFCF(CF)CF=CF、CF=CFOCFOCF=CF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCF=CF、CF=CFCFC(OH)(CF)CHCH=CH、CF=CFCFC(OH)(CF)CH=CH、CF=CFCFC(CF)(OCHOCH)CHCH=CH、CF=CFCHC(C(CFOH)(CF)CHCH=CH等のフルオロジエンが挙げられる。
【0052】
尚、本発明で用いるフッ素含有(メタ)アクリレートは、下記化学式(1)で示されるフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートであると、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を低くした状態で、効果的に樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)を高くでき、基材への接着性と離型性を一層効果的に発現できるため、より好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ダイキン工業社製の「オプツールDAC」を用いることができる。
【0053】
【化7】

(化学式(1)中、R1は、下記化学式(3)を表し、R2は、下記化学式(4)を表す。)
【0054】
【化8】

(化学式(3)中、nは、1以上6以下の整数である。)
【0055】
【化9】

(化学式(4)中、Rは、H又はCHである。)
【0056】
フッ素含有(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、耐摩耗性、耐傷付き、指紋付着防止、防汚性、レベリング性や撥水撥油性等の表面改質剤との併用もできる。例えば、ネオス社製「フタージェント」(例えば、Mシリーズ:フタージェント251、フタージェント215M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M;Sシリーズ:FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S;Fシリーズ:FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、フタージェント245F;Gシリーズ:フタージェント208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G;オリゴマーシリーズ:フタージェント730FM、フタージェント730LM;フタージェントPシリーズ:フタージェント710FL、FTX−710HL、等)、DIC社製「メガファック」(例えば、F−114、F−410、F−493、F−494、F−443、F−444、F−445、F−470、F−471、F−474、F−475、F−477、F−479、F−480SF、F−482、F−483、F−489、F−172D、F−178K、F−178RM、MCF−350SF、等)、ダイキン社製「オプツールTM」(例えば、DSX、DAC、AES)、「エフトーンTM」(例えば、AT−100)、「ゼッフルTM」(例えば、GH−701)、「ユニダインTM」、「ダイフリーTM」、「オプトエースTM」、住友スリーエム社製「ノベックEGC−1720」、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ」、等が挙げられる。
【0057】
フッ素含有(メタ)アクリレートは、分子量Mwが50〜50000であることが好ましく、相溶性の観点から分子量Mwが50〜5000であることが好ましく、分子量Mwが100〜5000であることがより好ましい。相溶性の低い高分子量を使用する際は希釈溶剤を使用しても良い。希釈溶剤としては、単一溶剤の沸点が40℃〜180℃の溶剤が好ましく、60℃〜180℃がより好ましく、60℃〜140℃がさらに好ましい。希釈剤は2種類以上使用もよい。
【0058】
溶剤含量は、少なくとも硬化性樹脂組成物中で分散する量であればよく、硬化性組成物100重量部に対して0重量部超〜50重量部が好ましい。乾燥後の残存溶剤量を限りなく除去することを配慮すると、0重量部超〜10重量部がより好ましい。
【0059】
特に、レべリング性を向上させる為に溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が0.1重量部以上40重量部以下であれば好ましい。溶剤含量が0.5重量部以上20重量部以下であれば、光重合性混合物の硬化性を維持できるためより好ましく、1重量部以上15重量部以下であれば、さらに好ましい。光重合性混合物の膜厚を薄くする為に溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が300重量部以上10000重量部以下であれば、塗工後の乾燥工程での溶液安定性を維持できるため好ましく、300重量部以上1000重量部以下であればより好ましい。
【0060】
(C)光重合開始剤
光重合開始剤は、光によりラジカル反応またはイオン反応を引き起こすものであり、ラジカル反応を引き起こす光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、下記の光重合開始剤が挙げられる。
【0061】
アセトフェノン系の光重合開始剤:アセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等。ベンゾイン系の光重合開始剤:ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等。ベンゾフェノン系の光重合開始剤:ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ペルフルオロベンゾフェノン等。チオキサントン系の光重合開始剤:チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等。アントラキノン系の光重合開始剤:2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン。ケタール系の光重合開始剤:アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール。その他の光重合開始剤:α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等。フッ素原子を有する光重合開始剤:ペルフルオロtert−ブチルペルオキシド、ペルフルオロベンゾイルペルオキシド等、などの公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
光重合性混合物は、光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤の具体例としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジスイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類のような公知慣用の光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
【0063】
市販されている開始剤の例としては、Ciba社製の「IRGACURE」(例えば、IRGACURE651、184、500、2959、127、754、907、369、379、379EG、819、1800、784、OXE01、OXE02)や「DAROCUR」(例えば、DAROCUR1173、MBF、TPO、4265)等が挙げられる。
【0064】
光重合開始剤は、1種のみを単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。2種類以上併用する場合には、フッ素含有(メタ)アクリレートの分散性、及び光重合性混合物の微細凹凸構造表面部及び内部の硬化性の観点から選択するとよい。例えば、αヒドロキシケトン系光重合開始剤とαアミノケトン系光重合開始剤とを併用することが挙げられる。また、2種類併用する場合の組み合わせとしては、例えば、Ciba社製の「Irgacure」同士、「Irgacure」と「Darocure」の組み合わせとして、Darocure1173とIrgacure819、Irgacure379とIrgacure127、Irgacure819とIrgacure127、Irgacure250とIrgacure127、Irgacure184とIrgacure369、Irgacure184とIrgacure379EG、Irgacure184とIrgacure907、Irgacure127とIrgacure379EG、Irgacure819とIrgacure184、DarocureTPOとIrgacure184などが挙げられる。
【0065】
(D)光重合性混合物
光重合性混合物は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜50重量部、光重合開始剤を0.01重量部〜10重量部含有する光重合性混合物である。特に上記の(メタ)アクリレートとしては、非フッ素含有の(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0066】
(メタ)アクリレート、特に、非フッ素含有の(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを、0.1重量部以上であれば離型性に優れ、50重量部以下であれば基材への密着性に優れるため好ましい。加えて、(メタ)アクリレートが、0.8重量部以上であることで、樹脂モールド表面部(微細凹凸構造表面)のフッ素元素濃度(Es)を高くすることができるためより好ましく、6重量部以下であることで、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を低くし、バルク強度と基材界面の密着力を高くできるためより好ましい。更に、(メタ)アクリレートが、1重量部〜6重量部の範囲であれば、樹脂表面の自由エネルギーをより低くすることができ、繰り返し転写性が良好になるため好ましい。
【0067】
また、光重合開始剤は、(メタ)アクリレート、特に非フッ素含有の(メタ)アクリレート100重量部に対して、0.01重量部以上であれば重合性に優れ、10重量部以下であれば、硬化後の未反応開始剤や分解物の樹脂表面へブリードアウトを低減できるため好ましい。光重合開始剤は、0.5重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上であることが更に好ましい。一方、光硬化剤は、5重量部以下であることがより好ましい。特に、光重合開始剤が、0.5重量部〜5重量部であれば、硬化後の樹脂透過率に優れる。
【0068】
レベリング性を向上させる為に溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、溶剤含量が0.1重量部以上40重量部以下であれば好ましい。溶剤含量が0.5重量部以上20重量部以下であれば、光重合性混合物の硬化性を維持できるためより好ましく、1重量部以上15重量部以下であればさらに好ましい。光重合製混合物の膜厚を薄くするために溶剤を含有する場合は、(メタ)アクリレート100重量部に対して、300重量部以上10000重量部以下であれば、塗工後の乾燥工程での溶液安定性を維持できるため好ましく、300重量部以上1000重量部以下であれば、より好ましい。
【0069】
(E)樹脂モールド(樹脂製スタンパ成形体)
以下、樹脂モールドをFと表記する。パタン形状またはパタン形状の反転形状について説明する箇所では、凸凹や凹凸パタンと表記し、その中でも凸凹パタン形状を具備した本発明に係る樹脂モールドに関してはF(+)と表記し、F(+)から転写した凹凸パタン形状を具備した該樹脂モールドに関してはF(−)と表記する。
【0070】
本発明においては、光重合性混合物(以下、硬化性樹脂組成物という)の硬化物を用いることにより、樹脂モールドを成形することができる。樹脂モールドとは、微細パタン形状を表面に具備したマスターモールドから硬化性樹脂組成物を転写剤として光ナノインプリント転写して得た、樹脂表面に微細凹凸パタン形状(微細凹凸構造)を具備した樹脂成形体である。また、本発明においては、樹脂成形体を、本発明に係る硬化性樹脂組成物だけなく、ゾルゲル反応による硬化を含む無機材への転写や、公知感光性樹脂組成物への光ナノインプリント転写を繰り返し転写できる樹脂製鋳型として用いることができる。ここでの「繰り返し転写」とは次の2つの場合((1)、(2))のいずれかまたは双方を意味する。
(1)凸凹パタン形状を具備したF(+)樹脂モールドから、転写した凹凸パタン転写物を複数製造すること。
(2)硬化性樹脂組成物を転写剤として用いた場合、樹脂モールドF(+)から反転したF(−)転写体を得て、次にF(−)転写体をモールドとして、反転転写したF(+)転写体を得る、凸凹/凹凸/凸凹/凹凸/・・・/を繰り返しパタン反転転写ができること。
【0071】
(微細凹凸パタン形状)
樹脂モールドの表面は、マスターモールドの形状を転写して得られた構造であり、微細凹凸構造を具備している。光学部材やバイオ部材に適した構造が好ましく、格子状、ピラーやホール構造等がより好ましく、これらの断面凹凸形状が、長方形、正方形、台形、菱形、六角形、三角形、円形、曲率を有する形状等であってもよい。また、パタン配列は、ランダム配列した形状、周期的に配列したパタン形状のどちらでもよい。特に、パタンが周期的に配列した形状の場合、その周期ピッチサイズが50nm〜1000nmであることが好ましく、80nm〜700nmピッチであることがより好ましく、100nm〜250nmピッチであることがさらに好ましい。凹凸パタン高さは、50nm〜500nmであることが好ましく、100nm〜250nmであることがより好ましい。さらに、凸部または凹部断面形状のアスペクト比が0.5〜10であることが好ましく、アスペクト比が1〜5であることがより好ましい。ここでのアスペクト比とは、凸部または凹部断面形状の高さ(a)をa/2の高さ位置での半値幅(b)で割った値(a/b)と規定する。
【0072】
図1に、樹脂モールドの微細凹凸構造の配列の一例を示す。なお、図1においては、樹脂モールド表面の平面図を模式的に示しており、樹脂モールド表面内において互いに直交する方向を第一方向及び第二方向として示している。
【0073】
図1に示す例においては、微細凹凸構造は、第一方向において複数の凸部(または凹部)がそれぞれピッチPで配列された複数の凸部列(または凹部列)を含む。各凸部列(または凹部列)は、第二方向においてピッチSで互いに離間して配列される。また、各凸部列(または凹部列)は、互いに隣接する凸部列に属する各凸部(または各凹部)が、第一方向において互いに位置差αが生じるように配列される。ここで、位置差αとは、互いに隣接する凸部列(または凹部列)に属する各凸部(または各凹部)のうち、最も近接する凸部中央部間(または凹部中央部間)の第一方向における距離をいう。例えば、図1に示されるように、第(N)列の凸部列(または凹部列)に属する各凸部(または各凹部)の中心を通る第二方向における線分と、第(N)列に隣接する第(N+1)列の凸部列(または凹部列)に属する各凸部(または凹部)の中心を通る第二方向における線分と、の間の距離を意味する。なお、各凸部列は、第二方向において隣接する各凸部列間において、第一方向における位置差αが周期的に配列されていてもよく、非周期的に配列されていてもよい。また、ピッチPおよびピッチSは、想定する用途に応じ、適宜設計することができる。
【0074】
例えば、ディスプレイ用途など、可視光領域(400nm〜780nm)において反射率を抑え透過率を上げたい場合、隣接する凸部間の距離は、1nm以上300nm以下であることが好ましく、1nm以上150nm以下であることがより好ましい。このように、隣接する凸部間の距離が150nm以下であれば、可視光領域で回折光を生じることなく、反射率の角度依存性も抑制することができる。同様に、凸部の高さは1nm以上1000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがより好ましい。凸部の高さは大きいことが好ましいが、隣接距離と高さの比であるアスペクト比が3以上になると、微細構造積層体を無機基板に転写する際に離型しにくくなる。このため、微細凹凸構造は、上記設計思想に基づき、アスペクト比が3未満となるように適宜設計することが好ましい。
【0075】
また、例えば、結晶系シリコン太陽電池の分光感度は近赤外領域(700nm〜1000nm)にピークを持つため、太陽電池用最表面部材においては、この波長領域で優れた透過率を有することが求められる。このように、近赤外領域において反射率を抑え透過率を上げたい場合、隣接する凸部間の距離は、300nm以上2000nm以下であることが好ましく、500nm以上1000nm以下であることがより好ましい。また、凸部の高さは1nm以上5000nm以下であることが好ましく、1000nm以上5000nm以下であることがより好ましい。なお、この場合にも、微細凹凸構造は、アスペクト比が3未満となるように適宜設計することが好ましい。
【0076】
また、例えば、LEDの光取り出し効率を向上させるために、LEDを構成するTCOと封止剤界面や、フリップチップ型LEDのサファイア上に微細凹凸構造を形成する場合は、隣接する凸部間の距離は、250nm〜10000nmであることが好ましく、回折光による光取り出し効率が向上するため、500nm〜5000nmであることがより好ましい。なお、この場合にも、微細凹凸構造は、アスペクト比が3未満となるように適宜設計することが好ましい。
【0077】
鋳型とする被転写材(マスターモールドや樹脂モールド)の凸部断面積(S凸部)に対して、その反転した転写成形体(汎用性感光性樹脂や樹脂モールド)の凹部断面積(S凹部)が断面積比率(S凹/S凸×100)にして80%以上の転写精度で転写できる鋳型または転写材であることが好ましい。特に、樹脂モールドを鋳型としたときに、転写精度が80%以上であることがより好ましい。さらに、凹凸/凸凹/凹凸/凸凹・・・と繰り返し反転転写で高い転写精度を保持するためには、一回の転写精度は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0078】
(マスターモールド)
マスターモールドは、表面に微細凹凸パタンを具備し、材質としては、石英ガラス、紫外線透過ガラス、サファイヤ、ダイヤモンド、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン材、フッ素樹脂、シリコンウエハ、SiC基板、マイカ基板等が挙げられる。ナノパタン転写時の離型性をより向上させるために、離型処理を行っても良い。
【0079】
特に、マスターモールドに離型処理を施すことで、マスターモールド表面の自由エネルギーが低下する。そのため、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を低く保った状態で転写を行うことで、マスターモールド/感光性樹脂混合物/基材から構成される系全体のエネルギーを低くするように、本発明に係るフッ素含有(メタ)アクリレートがマスターモールド表面へと効果的に偏析するため、Es/Ebを大きくすることができる。そのため、繰り返し転写性良好な樹脂成型体を作製することができる。
【0080】
尚、マスターモールドへの離型処理の耐久性の観点から、離型処理剤としては、シランカップリング系離型剤が好ましい。市販されている離型剤の例としては、ダイキン工業社製のオプツールDSX、デュラサーフHD1101やHD2101、住友スリーエム社製のノベック等が挙げられる。
【0081】
以上、本発明に係る樹脂モールドの製造に用いる各成分を詳説した。次に、上記各成分を用いた樹脂モールドの製造方法について説明する。
【0082】
(F)樹脂モールドの製造方法
下記工程11〜下記工程14を順に行うことで、本発明に係る硬化性樹脂組成物を転写剤として使って、マスターモールドから樹脂モールドを作製することができる。
工程11:基板の上に硬化性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程12:上記工程11において硬化性樹脂組成物をマスターモールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程13:上記工程12において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程14:硬化物をマスターモールドから剥離し、マスターモールドのパタン形状の反転形状を具備した樹脂モールド(F)を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0083】
下記工程21〜下記工程28を順に行うことにより、マスターモールドの凹凸パタン形状と同形状の凹凸パタン形状を具備した樹脂モールド(F)を製造できる。
工程21:基板の上に硬化性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程22:上記工程21において硬化性樹脂組成物をマスターモールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程23:上記工程22において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程24:上記工程23において硬化物をマスターモールドから剥離し、マスターモールド形状の反転形状を具備した樹脂モールド(F(+))を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
工程25:基板の上に硬化性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程26:上記工程25において硬化性樹脂組成物を樹脂モールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程27:上記工程26において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程28:上記工程27において硬化物を樹脂モールド(F(+))から剥離し、マスターモールドのパタン形状と同じパタン形状を具備した樹脂モールド(F(−))を得る工程。
【0084】
(硬化物を鋳型から剥離する工程)
下記工程31〜下記工程34を順に行うことにより、公知慣用の感光性樹脂組成物を転写剤として使って、樹脂モールドから、上記反転形状を具備した樹脂転写物を製造できる。
工程31:基板の上に公知慣用の感光性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程32:上記工程31において感光性樹脂組成物を樹脂モールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程33:上記工程32において感光性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程34:上記工程33において該硬化物を樹脂モールドから剥離し、樹脂モールド(F)のパタン形状と反転形状を具備した転写物を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0085】
下記工程41〜下記工程47を順に行うことにより、樹脂モールド成形体をロール状に加工した樹脂製ロールスタンパを製造できる。
工程41:基板の上に硬化性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程42:上記工程41において硬化性樹脂組成物をマスターモールドに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程43:上記工程42において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程44:上記工程43において硬化物をマスターモールドから剥離し、マスターモールド形状の反転形状を具備した樹脂モールド(F(+))を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
工程45:上記工程44において作製した樹脂モールド(F(+))とロール基材との間に硬化性樹脂組成物を挟持させる工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程46:上記工程45において硬化性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程47:上記工程47において硬化物を樹脂モールド(F(+))から剥離し、マスターモールドのパタン形状と同じパタン形状を具備した樹脂製ロールスタンパ(F(−))を得る工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0086】
下記工程51〜下記工程54を順に行うことにより、上記工程41〜上記工程47の順で作製した樹脂製ロールスタンパ成形体を使って、感光性樹脂組成物を転写剤としたロールツーロール式の連続転写ができる。特に、本発明に係る硬化性樹脂組成物を転写剤として使った場合、連続転写された転写品は樹脂モールド連続成形体として使用できる。
工程51:基板の上に感光性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程52:上記工程51において感光性樹脂組成物を樹脂製ロールスタンパに押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程53:上記工程52において感光性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程54:上記工程53において該硬化物を樹脂モールド(F)から剥離し、樹脂モールド(F)のパタン形状と反転形状を具備した転写物を連続的に製造できる工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0087】
下記工程61〜下記工程64を順に行うことにより、上記工程51〜上記工程54の順に作製した樹脂モールド連続成形体を使用して、パタン形状を連続体から連続体へ連続転写ができる。
工程61:基板の上に感光性樹脂組成物を塗布する工程(樹脂を塗工する工程)。
工程62:上記工程61において感光性樹脂組成物を樹脂モールド(F)連続成形体に押圧する工程(樹脂を鋳型に押圧する工程)。
工程63:上記工程62において感光性樹脂組成物を光ラジカル重合させ硬化物を得る工程(樹脂を光硬化させる工程)。
工程64:上記工程63において該硬化物を樹脂モールド(F)連続成形体から剥離し、樹脂モールド(F)のパタン形状の反転形状を具備した転写物を連続的に製造できる工程(硬化物を鋳型から剥離する工程)。
【0088】
以下、各工程の詳細について説明する。
【0089】
(樹脂組成物を基材に塗工する工程)
樹脂組成物の基板上に塗布する方法として、流延法、ポッティング法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、キャスト法、ディップコート法、ダイコート法、ラングミュアプロジェット法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、フローコート法、カーテンコート法、等が挙げられる。硬化性樹脂組成物の塗工厚は、50nm〜5mmが好ましく、100nm〜200μmがより好ましく、100nm〜100μmがさらに好ましい。
【0090】
基板がマスターモールドまたは樹脂モールドよりも大きい場合、樹脂組成物を基板全面に塗布しても良いし、マスターモールドまたは樹脂モールドを型押しする範囲にのみに樹脂組成物が存在するように樹脂組成物を基板の一部に塗布しても良い。
【0091】
基板に樹脂組成物を塗工後、プリベイクすることで、溶剤を含む場合は溶剤の留去や、または内添した含フッ素重合性(メタ)アクリレートの表面偏析を促進させることができる。内添した含フッ素重合性(メタ)アクリレートを表面に偏析させることで、マスターモールド又は樹脂モールドを押圧する際に、含フッ素重合性(メタ)アクリレートがマスターモールド或いは樹脂モールドの微細構造内部に効率的に充填され、マスターモールド或いは樹脂モールドの劣化を抑制するのみならず、得られる樹脂モールドの表面フッ素元素濃度(Es)をバルクのフッ素元素濃度(Eb)で除した値Es/Ebを大きく向上させ、離型性を向上させることができる。温度は、25℃〜120℃が好ましく、40℃〜105℃がより好ましく、50℃〜105℃がさらに好ましく、60℃〜105℃が最も好ましい。プリベイク時間は30秒〜30分が好ましく、1分〜15分がより好ましく、3分〜10分がさらに好ましい。
【0092】
基板の材質に関しては特に制限はなく、ガラス、セラミック、金属等の無機材料、プラスチック等の有機材料を問わず使用できる。成形体の用途に応じて、板、シート、フィルム、薄膜、織物、不織布、その他任意の形状およびこれらを複合化したものを使用できるが、屈曲性を有し連続生産性に優れたシート、フィルム、薄膜、織物、不織布等を含むことが特に好ましい。屈曲性を有する材質としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、架橋ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂や、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系などの紫外線(UV)硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂と、ガラスなどの無機基板、上記熱可塑性樹脂、トリアセテート樹脂とを組み合わせたり、または単独で用いて基材を構成させることも出来る。
【0093】
基板と樹脂組成物との接着性を向上させる処理を施すことが好ましい。例えば基材の接着させる面に、樹脂組成物との化学結合や、浸透などの物理的結合のための易接着コーティング、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV/オゾン処理、高エネルギー線照射処理、表面粗化処理、多孔質化処理などを施すことが好ましい。
【0094】
(樹脂組成物を基材に押圧する工程)
気泡が入らないように柔軟性の高い基板を端から静かに鋳型(マスターモールドや樹脂モールドや樹脂製ロールスタンパなど)上に被膜し、一定圧力下にて押圧することが好ましい。押圧する際のプレス圧力は、0MPa超〜10MPaが好ましく、0.01MPa〜5MPaがより好ましく、0.01MPa〜1MPaがさらに好ましい。
【0095】
(樹脂を光硬化させる工程)
マスターモールドの光透過性が低い場合、基板側から露光することが好ましい。一方、マスターモールドが紫外波長の光に対する透過率が高い場合、例えば合成石英材質の場合は、基材側またはマスターモールド側の少なくとも一側面から露光することが好ましく、基材側とマスターモールド側の両面から露光するとより好ましい。樹脂モールドを使用した場合、基板側または樹脂モールド(F)側の少なくとも一側面から露光することが好ましく、基板側と樹脂モールド(F)側の両面から露光するとより好ましい。基板を使用せず、硬化性樹脂組成物のみをマスターモールドに塗布して硬化させてもよい。その場合は、酸素による重合阻害を防ぐため、窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下での露光する方法、または、接着性の低い基板で被覆し、硬化後、基板と樹脂モールドを剥がしとる方法等で硬化物を製造できる。
【0096】
使用する露光光源としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、UV−LEDが好ましい。長時間露光時の発熱を抑える観点から、可視波長以上の波長をカットするフィルター(バンドパスフィルターを含む)を利用することが好ましい。積算光量としては、波長365nmで300mJ/cm以上が好ましく、反応率の高い硬化物(E)を得る目的で、800mJ/cm以上が好ましく、800mJ/cm〜6000mJ/cmがより好ましく、光による樹脂劣化性を防ぐため、800mJ/cm〜3000mJ/cmが特に好ましい。
【0097】
硬化物の厚さに依存せず、350nm〜450nmにおける全光線透過率が50%以上であることが好ましく、効率的な光反応を行う上で、70%以上であることがより好ましい。硬化物の厚さが0nm超〜50μmのとき、350nm〜450nmにおける全光線透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0098】
(硬化物を鋳型から剥離する工程)
マスターモールドに柔軟性がある場合、モールド面側または基材面側の少なくとも一方から一定速度で剥離することが好ましい。剥離方法としては、線剥離が好ましい。例えば、マスターモールドの剛性が高い材質の場合、特に無機材質の場合、マスターモールド側から剥離すると部分的に面剥離による剥離面積が高くなり、硬化物の破損が懸念される。したがって、柔軟性のある基板側から剥がすことが好ましい。剥離速度は、特定方向から一定速度で0m/min超〜5m/minの速度で線剥離することが、硬化物の破損リスクを低減できる点で好ましい。
【0099】
また、硬化後〜剥離前の間に加熱処理を施すことが好ましい。この過程で加熱処理を施すことにより、未反応基を減少させることができ、離型が容易になる。また、加熱環境で安定な状態を取るため、得られた樹脂モールドを鋳型として使用する場合の、鋳型の耐久性が向上する。温度は、50℃〜120℃が好ましく、50℃〜105℃がより好ましく、60℃〜105℃がさらに好ましい。加熱時間は30秒〜30分が好ましく、30秒〜15分がより好ましく、1分〜10分がさらに好ましい。
【0100】
一方で、剥離後に加熱処理を行ってもよい。剥離後に加熱処理を行うことで、未反応基の反応が促進するのみならず、加熱温度にて安定な樹脂モールドが得られるため、樹脂モールドから樹脂へと転写する際の樹脂の浸透を抑制し、離型を向上することができる。温度は、50℃〜120℃が好ましく、50℃〜105℃がより好ましく、60℃〜105℃がさらに好ましい。加熱時間は30秒〜30分が好ましく、30秒〜15分がより好ましく、1分〜10分がさらに好ましい。
【0101】
(熱重合による合成)
表面に微細パタンを有する熱可塑性樹脂は、マスターモールドを熱可塑性樹脂に熱圧着させてマスターモールドの微細パタンを熱可塑性樹脂に形成する工程およびマスターモールドを熱可塑性樹脂から離脱させる工程を具備する方法で製造される。熱圧着させる方法以外に、キャスト法で塗布してから熱硬化させる方法でも作製することができる。
【0102】
熱圧着させる場合、熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱したモールドを転写層に圧着させて行うか、転写層を熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱してからモールドに圧着させて行うのが好ましい。熱圧着における温度は、より好ましくは(熱可塑性樹脂の軟化温度)〜(熱可塑性樹脂の軟化温度+60℃)であり、特に好ましくは(熱可塑性樹脂の軟化温度+5℃)〜(熱可塑性樹脂の軟化温度+40℃)である。この範囲においてモールドの微細パタンを転写層に効率的に形成できる。また熱圧着の圧力は、0.5MPa〜200MPa(絶対圧)が好ましく、0.5MPa〜10MPa(絶対圧)がより好ましく0.5MP〜5MPaがさらに好ましい。
【0103】
モールドを離脱させる場合、転写層を熱可塑性樹脂の軟化温度以下に冷却してから行うのが好ましい。より好ましくは、(熱可塑性樹脂の軟化温度−10℃)〜(熱可塑性樹脂の軟化温度−50℃)である。この範囲において、転写層に形成された微細パタンの形状をより保持できる。ただし、熱可塑性樹脂の軟化温度とは、熱可塑性樹脂が非結晶性である場合はガラス転移温度を意味し、熱可塑性樹脂が結晶性である場合は融解温度を意味する。
【0104】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン系重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、ポリフルオロ(メタ)アクリレート系重合体、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン/エチレン系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/炭化水素系アルケニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体等が挙げられる。
【0105】
熱重合により合成する場合、上述のフッ素含有(メタ)アクリレートと合わせて用いるが(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜10重量部含有する熱重合性混合物として用いる。
【0106】
(G)用途
本発明に係る樹脂モールドは、ナノインプリント用途において様々に用いられ、具体的には、マイクロレンズアレーやワイヤグリッド型偏光、モスアイ型無反射膜や回折格子、フォトニック結晶素子などの光デバイスや、パターンドメディアなどのナノインプリント用途として製造する際に用いられる。他にも、細胞培養シートや脂肪培養チップ、バイオセンサー電極などのバイオデバイスへの製造に用いることができる。その他にも、各種電池やキャパシタの電極や、マイクロ・ナノ流路、放熱面、断熱面などへと応用できる。
【0107】
加えて、本発明に係る樹脂モールドは、例えば上述した電子線描画等で作製された、表面に微細凹凸構造を有すマスターモールドから、出来る限り多くの樹脂モールド(A)を得ることを可能にせしめる。しかも、本発明に係る樹脂モールドは、樹脂モールド(A)から、ナノインプリント法により、樹脂モールド(A)の微細凹凸構造を転写した樹脂モールド(B)を可能な限り多く得ることも可能にせしめる。これらにより、本発明に係る樹脂モールドによれば、生産効率を飛躍的に向上せしめることが可能となる。
【0108】
(実施例)
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
【0109】
[残膜厚測定]
樹脂モールドを使用しナノインプリント法により転写された微細凹凸構造の残膜厚は走査型電子顕微鏡(以下、SEM)観察より測定した。まず、試料を適当な大きさに切り出した後に、常温割断し、試料台に積載した。次に、観察面にOsを2nm程度コーティングし、検鏡用試料とした。使用装置及び検鏡条件は以下に示す。
装置;HITACHI s−5500
加速電圧;10kV
MODE;Normal
【0110】
[フッ素元素濃度測定]
樹脂モールドの表面フッ素元素濃度はX線光電子分光法(以下、XPS)にて測定した。XPSにおける、X線のサンプル表面への侵入長は数nmと非常に浅いため、XPSの測定値を本発明における樹脂モールド表面のフッ素元素濃度(Es)として採用した。樹脂モールドを約2mm四方の小片として切り出し、1mm×2mmのスロット型のマスクを被せて下記条件でXPS測定に供した。
XPS測定条件
使用機器 ;サーモフィッシャーESCALAB250
励起源 ;mono.AlKα 15kV×10mA
分析サイズ;約1mm(形状は楕円)
取込領域
Survey scan;0〜1, 100eV
Narrow scan;F 1s,C 1s,O 1s,N 1s
Pass energy
Survey scan; 100eV
Narrow scan; 20eV
【0111】
一方、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を測定するには、物理的に剥離した切片を、フラスコ燃焼法にて分解し、続いてイオンクロマトグラフ分析にかけることで、樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)を測定した。
【0112】
[透過率測定]
PETフィルム上に作製した樹脂モールドの透過率は、分光光度計(SHIMADZU、UV−2550)を用いて測定した。あらかじめPETフィルム単体の透過率を測定し、その値をバックグランドとして、樹脂モールド単体の透過率を算出した。実施例1〜実施例3で作製した樹脂モールドはいずれも波長350nm〜450nmでの全光線透過率が50%以上であった。
【0113】
以下、代表的な樹脂モールドの作製方法と物性について説明する。
【0114】
[実施例1]フッ素含有樹脂モールドの製造方法1
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが145nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の平板状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)とトリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合し、金型の微細凹凸構造面上に滴下した。続いて、PETフィルムで混合液を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。PETフィルム面側からのUV露光後、金型とPETフィルムを剥離しフッ素含有樹脂モールドを得た。
【0115】
上記モールドをXPSにて測定したところ、表面のフッ素元素濃度Esと樹脂中の平均フッ素元素濃度Ebとの比Es/Ebは69であった。
【0116】
[実施例2]フッ素含有樹脂モールドの製造方法2
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが145nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の円筒状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)とトリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で10:100:5の割合で混合した。続いて、混合液をマイクログラビアを用いてPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムに対する60℃の乾燥工程を経て、上記ニッケル製金型の微細凹凸構造面と張り合わせた。UV露光後、金型とPETフィルムを剥離しフッ素含有樹脂モールドを得た。
【0117】
上記樹脂モールドをXPSにて測定したところ、表面のフッ素元素濃度Esと樹脂中の平均フッ素元素濃度Ebとの比Es/Ebは76であった。
【0118】
[実施例3]フッ素含有樹脂モールドの製造方法3
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが145nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の円筒状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。CHEMINOX FAMAC−6(ユニマッテク社製)とトリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)及びIrgacure 184(Ciba社製)を重量部で2:100:5の割合で混合した。続いて、混合液をマイクログラビアを用いてPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムに対する60℃の乾燥工程を経て、ニッケル製金型の微細凹凸構造面と張り合わせた。PET面側からのUV露光後、金型とPETフィルムを剥離しフッ素含有樹脂モールドを得た。
【0119】
上記樹脂モールドをXPSにて測定したところ、表面のフッ素元素濃度Esと樹脂中の平均フッ素元素濃度Ebとの比Es/Ebは26であった。
【0120】
(フッ素含有樹脂モールドの繰り返し転写性)
実施例1〜実施例3で調合した樹脂組成物を転写剤として、実施例1〜実施例3で作製した樹脂モールドの反転転写を行った。樹脂モールドをステンレス板の上に固定し、微細凹凸構造面上に転写剤を滴下した。続いて、PETフィルムで転写剤を挟み込むと同時にハンドローラーを使用して引き伸ばした。被覆したPETフィルム面側からUV露光後、樹脂モールドと被覆したPETフィルムを剥離し、樹脂モールドの転写品Aを得た。同手順にて、同一樹脂モールドから三回連続して転写品Aを作製した。三回とも一定の低剥離抵抗(平均10mN/mm)を示した。また、目視観察では、転写面の破断は確認されなかった。さらに詳細に転写性を確認するため、樹脂モールド及び転写品Aの断面SEM(走査型電子顕微鏡)観察を行った。樹脂モールド側の凹凸構造と転写品Aの凸凹構造が一致し転写性が良好であることが確認された。この結果から、転写品Aは、マスターモールドと同じパタン形状を具備した樹脂モールドであることが確認された。
【0121】
次に転写品Aを樹脂モールドとして用いて、上記転写方法と同様にして、TAC(トリアセチルセルロール樹脂)フィルムを基材としたアクリル系紫外線硬化性樹脂(屈折率1.52)への繰り返し10回UV転写し、転写品Bを作製した。目視による転写面の破断もなく、5mN/mm〜10mN/mmの抵抗で剥離できた。1回目〜10回目の転写品Bの形状を確認するために、表面反射スペクトル測定により評価した。表面反射スペクトル測定では、表面の微細凹凸構造が表面屈折率に反映されるため、微細凹凸構造に変化があれば、反射スペクトルの波形変化として観測される。その結果、1回目〜10回目の転写品Bの反射スペクトル波形はいずれも一致し、連続繰り返し転写によるパタン変化はないことが確認された。さらに断面SEM観察より、10回目の転写品Bの凹凸構造と、マスターモールドから作製した転写品の凹凸構造が一致したことから、繰り返し転写時の転写性が保持されていることが明らかとなった。
【0122】
[実施例4]フッ素含有樹脂モールドを使ったワイヤグリッド偏光フィルムの作製
上記転写品Bを用いて、ワイヤグリッド偏光フィルムを下記手順により作製し、光学性能評価を行った。
【0123】
(ワイヤグリッド偏光フィルムの作製)
・スパッタリング法を用いた誘電体層の形成
凹凸形状転写表面に、スパッタリング法により誘電体層として二酸化珪素を成膜した。スパッタリング装置条件は、Arガス圧力0.2Pa、スパッタリングパワー770W/cm、被覆速度0.1nm/sとし、転写フィルム上の誘電体平均厚みが3nmとなるように成膜した。ここでは、誘電体の厚みを測定するため表面が平滑なガラス基板を転写フィルムと共に装置に挿入し、平滑ガラス基板上の誘電体厚みを誘電体平均厚みとした。
【0124】
・真空蒸着法を用いた金属の蒸着
次に誘電体層を成膜した凹凸形状転写表面に、真空蒸着によりアルミニウム(Al)を成膜した。Alの蒸着条件は、常温下、真空度2.0×10−3Pa、蒸着速度40nm/sとした。Alの厚みを測定するため表面が平滑なガラス基板を転写フィルムと共に装置に挿入し、平滑ガラス基板上のAl厚みをAl平均厚みとし、格子の長手方向と垂直に交わる平面内において基材面の法線と蒸着源のなす角度を蒸着角θとした。蒸着角θを20°、Al平均厚みを133nmとした。
【0125】
・不要Alの除去
次にアルカリ水溶液に浸漬し不要なAlを除去した。不要Alの除去としては、Al蒸着した転写フィルムを室温下で、0.1重量%水酸化ナトリウム水溶液に80秒間浸漬することで行った。
【0126】
・分光光度計による光線透過率測定
偏光度と光線透過率の測定には偏光フィルム評価装置(日本分光社製、V7000)を用い、23℃65%RHの条件で行った。結果、偏光度99.90%で光線透過率42.5%であった。比較対象として、マスターモールドからUV転写した転写品を使ったワイヤグリッド偏光フィルムを作製した。作製方法は上記手順に従って作製した。結果、偏光度99.90%で光線透過率42.0%であった。すなわち、マスターモールドまたは樹脂モールドを鋳型として作製したワイヤグリッド偏光フィルムの光学性能は同等であることが確認された。以上より、樹脂モールドがワイヤグリッド偏光フィルム用のモールドとして使用できることが証明された。
【0127】
尚、偏光度および光線透過率は下記式より算出した。Imaxは直線偏光に対する平行ニコル、Iminは直行ニコル状態での透過光強度である。尚、光線透過率T(θ)は、入射光角度θの光線透過率を示す。
偏光度=[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×100%
【0128】
[実施例5]フッ素含有樹脂モールドを用いたナノインプリント
3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン及び3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4‘−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを含むカチオン重合性樹脂を、マイクログラビアを用いSiOを蒸着したPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムを実施例1、実施例2及び実施例3で作製したフッ素含有樹脂モールドと貼り合わせると同時にゴムニップにより圧力を加え、ニップ圧がなくなった状態で樹脂モールド側からUV露光した。UV露光後、モールドと該PETフィルムとを剥離した。転写された微細凹凸構造をSEMにて観察したところ、残膜厚は5nm以下であった。
【0129】
[比較例1]
比較例1として、実施例1での組成においてフッ素樹脂組成を含まない組成物を調合し、樹脂モールドを作製した。結果、UV硬化後に転写剤硬化物との界面剥離ができなかった。
【0130】
[比較例2]
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが145nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の平板状金型にハーベス社製のDurasurf 2101Zを用い離型処理を施した。東洋合成工業社製のPAC01を金型の微細凹凸構造面上に滴下した。続いて、PETフィルムでUV硬化性樹脂を挟み込むと同時にハンドローラーを使用し引き延ばした。PETフィルム面側からのUV露光後、金型とPETフィルムを剥離し樹脂モールドを得た。
【0131】
3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン及び3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを含むカチオン重合性樹脂をマイクログラビアを用いSiOを蒸着したPETフィルムへと塗工した。続いて、PETフィルムを樹脂モールドと貼り合わせると同時にゴムニップにより圧力を加え、ニップ圧がなくなった状態で樹脂モールド側からUV露光した。UV露光後、モールドとPETフィルムとを剥離したところ、高密着し剥離できなかった。一方で、部分的に剥離できた部分をAFMで観察したところ、微細凹凸構造の転写は見られなかった。
【0132】
[実施例6]
・円筒状金型作製
円筒状金型の基材には石英ガラスを用いた。半導体レーザーを用いた直接描画リソグラフィー法により石英ガラス表面に微細凹凸構造を形成した。微細凹凸構造を形成した石英ガラスロール表面に対し、デュラサーフHD−1101Z(ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置して固定化した。その後、デュラサーフHD−ZV(ダイキン化学工業社製)で3回洗浄し、離型処理を実施した。
【0133】
・樹脂モールド(A)の作製
下記表1に示すサンプルNo.に対応した原料を混合し、光硬化性樹脂を調合した。フッ素含有(メタ)アクリレートとして、下記表1中の、サンプルNo.D1〜D7、D4’及びD5’においてはOPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)を使用した。また、サンプルNo.F1においては、CHEMINOX FAMAC−6(ユニマッテク社製)を使用した。サンプルNo.KKは、次のように合成した。トリフルオロエチルメタアクリレート45重量部、パーフルオロオクチルエチルアクリレート45重量部、グリシジルメタアクリレート10重量部、ドデシルメルカプタン0.5重量部、2−2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.5重量部及び、メチルエチルケトン200重量を混合し、窒素雰囲気下、80度、7時間攪拌し、メチルエチルケトン溶液で希釈されたプレポリマーを得た。次に、プレポリマーのメチルエチルケトン溶液の26重量部と、フルオライトFE−16の4重量部と、サンエイドSI−100L(三新化学工業社製の商品名)の0.2重量部とを混合し、メチルエチルケトンで固形分が10%になるように希釈することにより、サンプルNo.KKを得た。
【0134】
サンプルNo.D1〜D7、F1、及びKKを感光性樹脂混合物として用い、次の操作にて樹脂モールド(A)を得た。PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)の易接着面に、マイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。次いで、上記円筒状金型に対し、光硬化性樹脂が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cmとなるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールド(A)(長さ200m、幅300mm)を得た。リール状樹脂モールド(A)の表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部同士の隣接距離は250nm、凸部高さは250nmであった。サンプルNo.D5’及びD4’は、離型処理を施していない円筒状金型を用いたことを除いて、上記手法と同様に転写を行った。
【0135】
・樹脂モールド(B)の作製
得られた各サンプルNo.に対応するリール状樹脂モールド(A)を鋳型とし、転写材にリール状樹脂モールド(A)の作製に使用した樹脂を用い、次のように転写を行い、リール状樹脂モールド(B)を得た。PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)に、該PETフィルムの易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。次いで、上記樹脂モールド(A)の微細凹凸構造面に対し、光硬化性樹脂が塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cmとなるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、表面に微細凹凸構造が転写されたリール状の樹脂モールド(B)(長さ200m、幅300mm)を得た。
【0136】
樹脂モールド(A)から樹脂モールド(B)の作製は、バッチ式で次のようにも行った。リール状樹脂モールド(A)を15cm四方にカットし、該樹脂モールド(A)上に光硬化性樹脂を滴下し、PETフィルム:A4100の易接着面と貼り合わせると同時に、ハンドローラで引き延ばし、続いてUV光を照射した。続いて、105度のオーブン中で3分加熱し、その後、樹脂モールド(A)を剥離し、樹脂モールド(B)を得た。本操作を20回繰り返し、同一の樹脂モールド(A)を用いて樹脂モールド(B)を20枚得ることを試みた。
【0137】
・樹脂モールド(C)(D)の作製
得られたリール状樹脂モールド(B)から樹脂モールド(C)の作製は、バッチ式で次のようにも行った。リール状樹脂モールド(B)を15cm四方にカットし、該樹脂モールド(B)上に光硬化性樹脂を滴下し、PETフィルム:A4100の易接着面と貼り合わせると同時に、ハンドローラで引き延ばし、続いてUV光を照射した。続いて、105度のオーブン中で3分加熱し、その後、樹脂モールド(B)を剥離し、樹脂モールド(C)を得た。続いて、樹脂モールド(C)を12cm四方にカットし、該樹脂モールド(C)上に光硬化性樹脂を滴下し、PETフィルム:A4100の易接着面と貼り合わせると同時に、ハンドローラで引き延ばし、続いてUV光を照射した。続いて、105度のオーブン中で3分加熱し、その後、樹脂モールド(C)を剥離し、樹脂モールド(D)を得た。これらの操作は、全て、樹脂モールドを構成する樹脂と同様の樹脂を用い行った。
【0138】
・他の樹脂への転写
得られたリール状樹脂モールド(B)を鋳型とし、転写材に次に示す樹脂を用い、次のように転写を行い、リール状樹脂成型体を得た。
樹脂…SH710(東レ・ダウコーニング社製)とKBM5103(信越化学工業社製)とチタニウムテトラブトキシド(和光純薬工業社製)とIrgacure184(Ciba社製)及びIrgacure369(Ciba社製)を重量部で、1:2:2:0.068:0.032の割合で混合
【0139】
PETフィルム:A4100(東洋紡社製:幅300mm、厚さ100μm)に、該PETフィルムの易接着面にマイクログラビアコーティング(廉井精機社製)により、塗布膜厚6μmになるように塗布した。次いで、上記円筒状金型に対し、光硬化性無機レジストが塗布されたPETフィルムをニップロール(0.1MPa)で押し付け、大気下、温度25℃、湿度60%で、ランプ中心下での積算露光量が600mJ/cmとなるように、UV露光装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン社製、Hバルブ)を用いて紫外線を照射し、連続的に光硬化を実施し、105℃で加温した後に、樹脂モールド(B)を剥離し、表面に無機物から構成される微細凹凸構造が転写されたリール(長さ200m、幅300mm)を得た。リールの表面微細凹凸の形状は、走査型電子顕微鏡観察で確認した結果、凸部同士の隣接距離は250nm、凸部高さは250nmであった。
【0140】
・各転写結果とEs/Eb
上記転写結果と、リール状樹脂モールド(A)のEs/Eb値を下記表1に示す。下記表1における略語は次の意味を示す。
・OPTOOL DAC HP(ダイキン工業社製)又はFAMAC6…溶媒を含有したフッ素含有(メタ)アクリレート
・非フッ素含有(メタ)アクリレート…トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製 M350)
・フッ素含有(メタ)アクリレート…非フッ素含有の(メタ)アクリレート(M350、グリシジルメタアクリレート)100重量部に対する溶媒を除いたフッ素含有(メタ)アクリレートの重量部
・Es/Eb…Esは上述したXPS法による測定値を使用した。Ebは、仕込み量から算出した。
・離形性評価1…樹脂モールド(A)の作製において、円筒状モールド(金型)に対する離型処理を施さなかった場合の転写結果。×はパタン形成ができなかった場合。△は、転写はできるが部分的にパタンが破壊されていた場合。○は、転写結果良好な場合。
・離形性評価2…樹脂モールド(A)から樹脂モールド(B)の作製をバッチ式で行った場合の転写結果。nは20枚。×は、樹脂モールド(A)と樹脂モールド(B)が密着し、剥離できなかった場合。△は、部分的に剥離出来なかった場合。○は、剥離可能だが、パタンが部分的に破壊されていた場合。◎は、20枚全て転写性が良好な場合。
・離形性評価3…樹脂モールド(A)から樹脂モールド(C)、(D)の作製を行った場合の転写結果。×は、樹脂モールド(C)或いは樹脂モールド(D)の作製過程で、剥離が全く出来なかった場合。△は、樹脂モールド(D)まで作製可能だが、部分的に剥離出来なかった場合。○は、樹脂モールド(D)まで作製可能だが、部分的にパタンが破壊されていた場合。◎は、樹脂モールド(D)まで、良好に転写された場合。
・離形性評価4…樹脂モールド(A)から作製した樹脂モールド(B)により、他の樹脂へ転写した場合の転写結果。×は、密着してしまい剥離できなかった場合。△は、部分的に剥離できなかった場合。○は、部分的にパタンが破壊されていた場合。◎は、転写が良好な場合。
【0141】
【表1】

【0142】
表1から分かるように、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素濃度(Eb)より大きい場合には、円筒状モールド(金型)に対する離型処理を施さなかった場合においてもパタン転写が可能であり、樹脂モールド(A)が形成できた(サンプルNo.D1〜D7、F1、D5’、D4’及びKK)。さらに、2≦Es/Eb≦376の場合には、作製した樹脂モールド(A)からバッチ式で20枚の転写を行うことも可能であった(サンプルNo.D1〜D7、F1、D5’、及びD4’)。
【0143】
特に、20≦Es/Eb≦200の場合には、樹脂表面の自由エネルギーが効果的に減少すると共に、樹脂中における基材付近では自由エネルギーを高く保つことができるので、離形性及び樹脂モールド(A)自体の耐久性が良好となり、26≦Es/Eb≦189の範囲の場合には、樹脂モールド(A)から樹脂モールド(C)、(D)の作製にまで良好に転写されていた(サンプルNo.D2〜D7、及びF1)。さらに、31≦Es/Eb≦155の範囲の場合には、最も良好な転写結果が得られた((サンプルNo.D3〜D7)。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の樹脂モールドは、ナノインプリントの分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細凹凸構造を有する樹脂モールドであって、樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)が、樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)以上であることを特徴とする樹脂モールド。
【請求項2】
前記樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)と前記樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)との比が下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1記載の樹脂モールド。
1≦Es/Eb≦1500 式(1)
【請求項3】
350nm〜450nmにおける全光線透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂モールド。
【請求項4】
光ナノインプリントにより形成された光重合性混合物の硬化物から成ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の樹脂モールド。
【請求項5】
前記光重合性混合物が、(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項4記載の樹脂モールド。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート100重量部に対して、前記フッ素含有(メタ)アクリレートを0.1重量部〜50重量部、前記光重合開始剤を0.01重量部〜10重量部含有することを特徴とする請求項5記載の樹脂モールド。
【請求項7】
前記微細凹凸構造の形状が、ピッチ50nm〜1000nmであり、高さが50nm〜500nmであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の樹脂モールド。
【請求項8】
ナノインプリント用であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の樹脂モールド。
【請求項9】
樹脂モールドを構成する樹脂中の平均フッ素元素濃度(Eb)と樹脂モールド表面部のフッ素元素濃度(Es)との比が下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1記載の樹脂モールド。
20≦Es/Eb≦200 式(2)
【請求項10】
フッ素含有(メタ)アクリレートと、非フッ素含有の(メタ)アクリレートと、からなる共重合体を含み、前記フッ素含有(メタ)アクリレートが、下記化学式(1)及び/又は下記化学式(2)で表されることを特徴とする請求項9に記載の樹脂モールド。
【化1】

(化学式(1)中、R1は、下記化学式(3)を表し、R2は、下記化学式(4)を表す。)
【化2】

(化学式(3)中、nは、1以上6以下の整数である。)
【化3】

(化学式(4)中、Rは、H又はCHである。)
【請求項11】
前記非フッ素含有の(メタ)アクリレート100重量部に対して、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.8重量部〜6重量部含有することを特徴とする請求項10に記載の樹脂モールド。
【請求項12】
請求項10に記載の樹脂モールドの製造方法であって、非フッ素含有(メタ)アクリレート100重量部、フッ素含有(メタ)アクリレートを0.8重量部〜6重量部、及び光重合開始剤を含む光重合性混合物を基板又はマスターモールド上に塗布する工程と、前記光重合性混合物を前記基板と前記マスターモールドとの間で押圧する工程と、前記光重合性混合物を露光により硬化させて硬化物を得る工程と、前記マスターモールドから前記硬化物を剥離する工程とを有することを特徴とする樹脂モールドの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2011−207221(P2011−207221A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51063(P2011−51063)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】