説明

樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法

【課題】開口部を有するスクリーン印刷用マスクの第1面に樹脂層及びマスキング層を形成する工程と、スクリーン印刷用マスクの第1面とは反対側の第2面から樹脂層除去液を供給して第1面の開口部上の樹脂層を除去する工程と、マスキング層を除去する工程とを含む樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製する方法において、樹脂層の欠けが発生することなく、かつ、樹脂層のボトムの開口巾と樹脂層のトップの開口巾とスクリーン印刷用マスクの開口巾を略同一に形成することができる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】開口部を有するスクリーン印刷用マスクの第1面に光架橋性樹脂を含有してなる樹脂層及びマスキング層を形成し、次に、第1面側から樹脂層全面に活性光線を照射し、次に、スクリーン印刷用マスクの第1面とは反対側の第2面から樹脂層除去液を供給して第1面の開口部上の樹脂層を除去し、次いで、マスキング層を除去することを特徴とする樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、多機能化に伴い、プリント配線基板の高密度化や配線パターンの微細化が進められており、プリント配線基板への電子部品の高密度実装化が広く行われている。このプリント配線基板への電子部品の高密度実装化においては、プリント配線基板面に電子部品を実装するためにクリーム半田を印刷し、半田端子に電子部品を搭載した後にリフロー炉で加熱して半田付けを行う。クリーム半田の印刷方法としては、スクリーン印刷による工程が広く用いられている。一般的に、スクリーン印刷は、パターン状の開口部が形成されたスクリーン印刷用マスクを印刷すべき被印刷基板の上面にセットし、スクリーン印刷用マスク上にクリーム半田等のペースト材料を供給してスキージによって掻き寄せることによって、開口部を通してペースト材料をパターン状に転写印刷する方法である。
【0003】
スクリーン印刷用マスクを用いて被印刷基板面にクリーム半田を印刷し、電子部品の実装用の半田端子を形成した場合、パターンが高密度かつ高精細になると、クリーム半田のスクリーン印刷用マスクからの抜け性の悪化を生じる。また、近年、環境面の問題からクリーム半田の素材も無鉛化の動きが高まっており、その対策の一環として、鉛を含まない鉛フリー半田が用いられるようになってきている。鉛フリーのクリーム半田は、従来のクリーム半田に比べ転写性に劣る傾向がある。転写性の悪化、具体的にはクリーム半田のスクリーン印刷用マスクからの抜け性の悪化により、半田端子の突起や欠け、ひび割れ、抜け等の欠陥が発生する。また、被印刷基板とスクリーン印刷マスクの密着性の悪化により、クリーム半田の滲みが発生することもあり、いずれも歩留まり低下の大きな原因となっていた。
【0004】
このような問題を解決するために、メタルマスク上に樹脂層としてシリコーンエラストマーを積層し、レーザー法によって開口部を設けた樹脂付きスクリーン印刷用マスクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。樹脂層の存在によって被印刷基板との密着性が向上し、クリーム半田の滲みの発生しないスクリーン印刷を達成できるものの、樹脂層が被印刷基板と接着してしまい、樹脂付きスクリーン印刷用マスクを引き上げる際に被印刷基板が持ち上がり、版離れが容易に実施できない問題がある。また、レーザー法によりメタルマスクと樹脂層を同時に一括で開口すると、メタルマスクから多量の熱が発生し、樹脂層の変形や変性を引き起こす場合があり、メタルマスクと樹脂層とをともに良好に開口するためのレーザー照射条件を定めるのが困難であるという問題もある。
【0005】
また、メタルマスクを作製した後に感光性樹脂層を形成し、フォトリソグラフ法によってメタルマスクの開口位置に合わせて感光性樹脂層を開口させる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、印刷パターンが高密度かつ高精細になると、フォトリソグラフ法では、メタルマスクの開口位置に正確に位置ずれなく感光性樹脂層の開口を形成するのが困難であるという問題がある。
【0006】
一方、開口部を有するスクリーン印刷用マスクの第1面に樹脂層及びマスキング層を形成する工程と、スクリーン印刷用マスクの第1面とは反対側の第2面から樹脂層除去液を供給して第1面の開口部上の樹脂層を除去する工程と、マスキング層を除去する工程とを含む樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法によっては、スクリーン印刷マスクの開口部と樹脂層の開口部との間で位置ずれが発生しないという効果や、レーザー法による一括開口がないため、樹脂層の変形及び変性が起こらないという効果が得られる。また、先に開口部を有するスクリーン印刷用マスクを最適な製造条件で作製できるので、内壁面の平滑性や開口部形状の寸法精度等が良好なスクリーン印刷用マスクに対して樹脂層を形成でき、スクリーン印刷用マスクの板厚及び樹脂層の厚みを自由に設定することができるという効果も得られる。
【0007】
しかしながら、上記方法においては、開口部上の樹脂層を除去する際に、樹脂層除去液がスクリーン印刷用マスク面に対して垂直方向に浸透するだけでなく、横方向へも浸透するため、図7に示すように、樹脂層3のボトムBの開口巾L1が樹脂層3のトップTの開口巾L2に比較して広くなる現象が生じる。ここで、ボトムBとは、樹脂層3のスクリーン印刷用マスク1に接している側をいい、トップTとはその反対側をいう。このため、開口部における樹脂層3のトップTが鋭角に尖った形状となり、印刷を繰り返すことによってその部分に欠けが発生する。鋭角部分が欠けると、開口巾L2が広がり、その結果、印刷されたクリーム半田がすそをひいた形状になったり、滲みが発生して、狭いスペース間ではショートが発生するという問題があった。また、スクリーン印刷用マスク1の開口巾L3と樹脂層3の開口巾L1及びL2とが同一でないため、適正半田ペースト量と開口巾の関係の設定が困難になる問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−311867号公報
【特許文献2】特許第3017752号公報
【特許文献3】国際公開第2007/117040号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、開口部を有するスクリーン印刷用マスクの第1面に樹脂層及びマスキング層を形成する工程と、スクリーン印刷用マスクの第1面とは反対側の第2面から樹脂層除去液を供給して第1面の開口部上の樹脂層を除去する工程と、マスキング層を除去する工程とを含む樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製する方法において、樹脂層の欠けが発生することなく、かつ、適性半田ペースト量と開口巾の設定を容易にするために、樹脂層のボトムの開口巾と樹脂層のトップの開口巾とスクリーン印刷用マスクの開口巾を略同一に形成することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、開口部を有するスクリーン印刷用マスクの第1面に光架橋性樹脂層を含有してなる樹脂層及びマスキング層を形成し、次に、第1面側から樹脂層全面に活性光線を照射し、次に、スクリーン印刷用マスクの第1面とは反対側の第2面から樹脂層除去液を供給して第1面の開口部上の樹脂層を除去し、次いで、マスキング層を除去することを特徴とする樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法によって、上記課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法によると、樹脂層は光架橋性樹脂を含有してなり、樹脂層除去液を供給する前に、あらかじめ第1面側から樹脂層全面に活性光線を照射することで、光架橋性樹脂が架橋し、その際に、非開口部上と開口部上とで樹脂層除去液に対する溶解性の差が生じる。すなわち、開口部上では、樹脂層のボトムと接触している酸素の量が多いため、架橋反応が阻害され、架橋度合いが小さくなる。一方、非開口部は、樹脂層に接触する酸素の量が少ないため、架橋反応が阻害されず、架橋度合いが大きくなる。なお、樹脂層のトップにはマスキング層が形成してあるため、非開口部、開口部共に、トップ側から接触する酸素の量は少ない。
【0012】
また、非開口部においては、照射された活性光線が樹脂層を通過し、スクリーン印刷用マスクの表面において反射するが、開口部においては、スクリーン印刷用マスクからの反射光がほとんどない。そのため、非開口部と開口部の樹脂層に照射されるトータルのエネルギーに差異が発生し、非開口部の架橋度合いが大きくなる。
【0013】
よって、非開口部の樹脂層における樹脂層除去液への溶解性が、開口部の樹脂層のそれよりも低くなり、樹脂層除去液が、スクリーン印刷用マスク面に対して垂直方向に浸透しやすくなるため、樹脂層のボトムの開口巾と樹脂層のトップの開口巾とスクリーン印刷用マスクの開口巾を略同一に形成することができる。その結果、樹脂層の欠けが発生することなく、かつ、適性半田ペースト量と開口巾の設定を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法で製造された樹脂付きスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図2】開口部を有するスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図3】本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【図4】本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【図5】本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【図6】本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【図7】従来技術の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法について詳細に説明する。被印刷基板としてプリント配線基板、ペースト材料としてクリーム半田を例に挙げ、スクリーン印刷について説明するが、本発明の趣旨に反しない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0016】
図面を用いて、本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法を説明する。開口部2を有するスクリーン印刷用マスク1(図2)の第1面に開口部を塞ぐように、光架橋性樹脂を含有してなる樹脂層3及びマスキング層4を設ける(図3)。次に、第1面側から樹脂層全面に活性光線5を照射する(図4)。続いて、反対面(第2面とする)から樹脂層除去液を供給する。樹脂層除去液は開口部2を通って、第1面の樹脂層3に達し、開口部2上の樹脂層3を除去する(図5)。マスキング層4は、この樹脂層除去液に対して不溶性の成分からなり、従って、樹脂層除去液は、樹脂層3の開口部2上を選択的に除去できる。あらかじめ活性光線5を照射することで、非開口部の樹脂層における樹脂層除去液への溶解性が、開口部の樹脂層のそれよりも低くなるため、樹脂層除去液は、スクリーン印刷用マスク面に対して垂直方向に浸透しやすくなり、樹脂層のボトムの開口巾と樹脂層のトップの開口巾とスクリーン印刷用マスクの開口巾を略同一に形成することができる。また、開口部の面積及び形状にかかわらず、スクリーン印刷用マスクの開口部と略同一面積、略同一形状に樹脂層の開口部を形成することができる。開口部2上の樹脂層3を除去した後、マスキング層4を除去することにより(図6)、樹脂層3の開口部2上が除去された樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製することができる。
【0017】
図1を用いて、本発明に係わる樹脂付きスクリーン印刷用マスクの開口断面を説明する。本発明の樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法においては、樹脂層3のボトムBの開口巾L1と樹脂層3のトップTの開口巾L2とスクリーン印刷用マスク1の開口巾L3を略同一に形成することができる。略同一とは、L1、L2及びL3のばらつき(|L1−L2|、|L1―L3|、|L2―L3|)が全て10μm以内となることをいう。
【0018】
本発明に係わる樹脂付きスクリーン印刷用マスクの樹脂層の厚みは、5〜50μmであるのが好ましく、さらに好ましくは10〜30μmである。この樹脂層の厚みは、印刷すべきペースト材料の転写量に対して、適正量のペースト材料が印刷されるように、あらかじめ定められたスクリーン印刷用マスクの厚みと合わせて決定される。樹脂層の厚みが大きすぎると、L1の値がL2及びL3に対して広くなってしまう問題が発生したり、樹脂層除去液が浸透しにくくなり、樹脂層の開口が不十分になることがある。逆に薄すぎると、樹脂層が被印刷基板表面の微細な凹凸を吸収できなくなり、被印刷基板と樹脂付きスクリーン印刷用マスクとの密着性が低下して、滲みが発生し、転写パターン間のブリッジの原因になることがある。
【0019】
本発明に係わる開口部を有するスクリーン印刷用マスクとは、スキージ面にペースト材料をのせ、スキージで掻き寄せることでクリーム半田等のペースト材料を被印刷基板上に転写することができるものであれば、いずれの方式で作製したスクリーン印刷用マスクも使用することができる。例えば、ソリッドマスク、サスペンドマスク、又は、メタルマスク(エッチング法、レーザー法、アディティブ法、機械加工法)等、いずれのものも使用可能である。材質は、ニッケル、銅、クロム、亜鉛、鉄等を主成分とする金属又は合金(ステンレス等)等を適用できる。また、スクリーン印刷用マスクの開口パターンについても特に制限はなく、例えば、正円形、楕円形等の円形;正方形、長方形、菱形、台形等の四角形;六角形、八角形等の多角形;ひょうたん形、ダンベル形等の不定形等が挙げられる。スクリーン印刷用マスクの厚みは、通常10〜300μmであり、ペースト材料の転写量によって厚みを決定する。開口部の大きさは、一般的な表面実装において、数百μm〜数十mm、高密度実装においては、大きさ50〜300μm、ピッチ間隔50〜500μmである。さらに、スクリーン印刷用マスクの開口部の断面形状はテーパーを有している場合もある(テーパーを有している場合は、被印刷基板と接触する側、すなわち、樹脂層を設ける側の開口巾をL3とする)。
【0020】
本発明に係わるマスキング層としては、樹脂層除去液に対して不溶性又は難溶性であり、活性光線を透過する性質を有するフィルムを使用することができる。例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂が利用できる。汎用性の点から、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等を好適に使用することができる。マスキング層は、樹脂層と一体化してスクリーン印刷用マスク上に形成するようにすれば、工程上、簡便で安定に樹脂層とマスキング層の形成ができるので好ましい。
【0021】
本発明に係わる樹脂層及びマスキング層を形成する方法としては、あらかじめ、マスキング層となるフィルムに樹脂層を形成し、ラミネータによりスクリーン印刷用マスクに熱圧着する方法を好適に使用することができる。
【0022】
本発明に係わる樹脂層は、活性光線によって架橋する性質を有しており、また、酸素阻害が発生するラジカル重合系を含む架橋性樹脂を含有してなる。具体的には、例えば、カルボキシル基を含有するバインダーポリマー(A)、分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)を含むものが好適に使用できる。
【0023】
カルボキシル基を含有するバインダーポリマー(A)としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。アクリル樹脂を構成するアクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、カルボキシル基の成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸や、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸、それらの無水物やハーフエステル等を挙げることができる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が特に好ましい。また、上記その他の構成成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ビニル−n−ブチルエーテル等を挙げることができる。
【0024】
分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(B)としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー;ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β′−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO、PO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、EO及びPOは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを示し、EO変性された化合物は、エチレンオキサイド基のブロック構造を有するものであり、PO変性された化合物は、プロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものである。
【0025】
光重合開始剤(C)としては、活性光線によって、ラジカルを発生する化合物であり、活性光線として紫外線を適用する場合を例にすると、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物等を挙げることができる。
【0026】
また、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0027】
樹脂層には、必要に応じて、上記(A)〜(C)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、熱発色防止剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱硬化剤、表面張力調整剤、撥水剤及び撥油剤等が挙げられ、各々0.01〜20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明に係わる活性光線とは、樹脂層を架橋できるものであればよく、紫外線、可視光線、γ線、X線等が挙げられる。特に、紫外線は、光架橋性樹脂の架橋反応に広く使用されており好適に使用できる。紫外線であれば、50〜2000mJ/cmのエネルギーの範囲内が好ましく、さらに好ましくは、300〜1000mJ/cmの範囲内が好ましい。使用する光架橋性樹脂の光感度又は厚みに応じて照射エネルギーを選択する。50mJ/cm未満であれば、非開口部上の樹脂層の架橋が不十分となり、よって開口巾L1が広くなる傾向になる。2000mJ/cm超であれば、開口部上の樹脂層の架橋度合いが大きくなり、樹脂層除去液で除去できなくなる可能性がある。活性光線の照射時には、スクリーン印刷用マスクの第2面側に反射防止のシートを重ねてもよい。また、真空にして密着露光してもよい。
【0029】
本発明に係わる樹脂層除去液としては、樹脂層を溶解又は分散可能な液であり、使用する樹脂層の組成に見合った液を使用する。樹脂層除去液によって、開口部の樹脂層を除去し、開口部に樹脂層の存在しない領域を形成する。樹脂層除去液は、マスキング層を溶解しない液か、あるいは、マスキング層を溶解する液であっても、樹脂層を適正量分だけ溶解する条件において、マスキング層が膨潤したり、形状が変化したりすることがない液を使用する。また、スクリーン印刷用マスクに対しても、溶解や膨潤、形状変化等を起こさせない樹脂層除去液を使用する。一般的には、アルカリ水溶液が有用に使用され、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩、アルカリ金属水酸化物、リン酸又は炭酸アルカリ金属塩、リン酸又は炭酸アンモニウム塩等の無機塩基性化合物の水溶液、エタノールアミン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、モルホリン等の有機塩基性化合物を使用することができる。これら水溶液は、樹脂層に対する溶解性を制御するため、濃度、温度、スプレー圧等を調整する必要がある。樹脂層除去液の供給は、マスキング層を有する面と反対の面から、開口部を通して樹脂層に樹脂層除去液が接触するように供給できれば、いずれの方式を用いてもよい。ディップ処理装置、両面シャワースプレー装置、片面シャワースプレー装置等を利用することができる。樹脂層の除去は、樹脂層除去液による処理に続いて、洗浄液(例えば、水や酸)による洗浄処理を行うことによって、速やかに停止させることができる。
【0030】
第1面側から樹脂層全体に活性光線を照射することによって、樹脂層除去液及びその後の洗浄処理に使用する洗浄液の汚染が抑制され、液の交換頻度を少なくすることができるという効果も得られる。これは、活性光線を照射しないで除去された樹脂層は樹脂層除去液又は洗浄液に溶解するため、液のpHが変化して、除去能力が低下していくが、活性光線を照射した後に除去された樹脂層のほとんどは樹脂層除去液又は洗浄液中に小片となって分散するため、液のpHが変化しにくく、除去能力が低下しにくいためである。また、樹脂層が溶解すると、液に泡が発生しやすくなって、消泡剤が必要となるが、活性光線を照射した後の樹脂層が分散した液では、泡が発生しにくく、消泡剤の量を減らすことができる。
【0031】
本発明に係わる樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法の工程のうち、開口部上の樹脂層を除去して、マスキング層を除去する工程の後に、活性光線処理又は/及び加熱処理によって樹脂層の架橋反応を施すことで、耐溶剤性を向上させることが好ましい。これにより、樹脂付きスクリーン印刷用マスクの連続印刷での耐久性が向上する。
【実施例】
【0032】
以下実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
表1に示す各成分を混合し、得られた塗工液を、ワイヤーバーを用いて、PETフィルム(商品名:R310、25μm厚、三菱化学ポリエステルフィルム(株))上に塗工し、100℃、3分間乾燥し、溶剤成分をとばし、PETフィルム上に厚み20μmの樹脂層を設けた。
【0034】
【表1】

【0035】
次に、厚さ100μmのステンレス板(SUS304)にYAGレーザーで多数の開口部を形成し、面積400×480mmのスクリーン印刷用マスクを作製し、上記で得られた樹脂層を該スクリーン印刷用マスクの片面(第1面とする)に100℃で熱圧着し、樹脂層及びマスキング層(PETフィルム)を設けた。
【0036】
次いで、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置(商品名:ユニレックURM300、ウシオ電機製、12mW/cm)を用いて、第1面側から600mJ/cmのエネルギーの紫外線を全面に照射した。
【0037】
続いて、8質量%の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)の樹脂層除去液を用いて、スクリーン印刷用マスクの第2面側よりシャワースプレーを当てて、第1面の開口部上の樹脂層を除去した。次いで、水を洗浄液とした洗浄を行った後、マスキング層を除去した。
【0038】
さらに、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置(商品名:ユニレックURM300、ウシオ電機製、12mW/cm)を用いて、2000mJ/cmの紫外線を照射した。さらに、150℃のオーブン中で30分間加熱し、樹脂層を架橋させ、樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製した。
【0039】
作製された樹脂付きスクリーン印刷用マスクの開口部のうち、300μmφの円形の開口部を顕微鏡で観察し、樹脂層のボトムBの開口巾L1、樹脂層のトップTの開口巾L2、スクリーン印刷用マスクの開口巾L3の距離を測定した。測定値は、L1=305μm、L2=300μm、L3=300μmであり、図1のように、L1、L2、L3が略同一の形状となっていることが分かった。
【0040】
上記樹脂付きスクリーン印刷用マスクを、パレット上に載置したプリント配線基板上にセットし、スキージによりクリーム半田のスクリーン印刷を200回実施した。この際、10版に1回、イソプロピルアルコールの含浸したウエスにより洗浄を行った。その結果クリーム半田の滲みは少なく、良好な印刷ができた。
【0041】
引き続き、50枚の樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製した後、洗浄液(水)のpHを測定したところ、8.0であった。また、洗浄液に泡は少なく、消泡剤は不要であった。
【0042】
(実施例2〜9)
樹脂層の厚み、第1面側からの紫外線照射エネルギー、樹脂層除去液の炭酸ナトリウム水溶液の濃度を表2記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製した。
【0043】
【表2】

【0044】
作製された樹脂付きスクリーン印刷用マスクの開口部のうち、300μmφの円形の開口部を顕微鏡で観察し、樹脂層のボトムBの開口巾L1、樹脂層のトップTの開口巾L2、スクリーン印刷用マスクの開口巾L3の距離を測定し、結果を表3に示した。また、樹脂付きスクリーン印刷用マスクを、パレット上に載置したプリント配線基板上にセットし、スキージによりクリーム半田のスクリーン印刷を200回実施した。この際、10版に1回、イソプロピルアルコールの含浸したウエスにより洗浄を行った。クリーム半田の滲みが少なく、良好な印刷ができた場合を「○」、クリーム半田の滲みが発生した場合を「×」とし、結果を表3に示した。
【0045】
【表3】

【0046】
実施例2〜9において、引き続き、50枚の樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製した後、洗浄液(水)のpHを測定したところ、8.0であった。また、洗浄液に泡は少なく、消泡剤は不要であった。
【0047】
(比較例)
表1に示す各成分を混合し、得られた塗工液を、ワイヤーバーを用いて、PETフィルム(商品名:R310、25μm厚、三菱化学ポリエステルフィルム(株))上に塗工し、100℃、3分間乾燥し、溶剤成分をとばし、PETフィルム上に厚み20μmの樹脂層を設けた。
【0048】
次に、厚さ100μmのステンレス板(SUS304)にYAGレーザーで多数の開口部を形成し、面積400×480mmのスクリーン印刷用マスクを作製し、上記で得られた樹脂層を該スクリーン印刷用マスクの片面(第1面とする)に100℃で熱圧着し、樹脂層及びマスキング層(PETフィルム)を設けた。
【0049】
次いで、8質量%の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)の樹脂層除去液を用いて、スクリーン印刷用マスクの第2面側よりシャワースプレーを当てて、第1面の開口部上の樹脂層を除去した。水を洗浄液とした洗浄を行った後、マスキング層を除去した。
【0050】
続いて、吸引密着機構を有する焼付用高圧水銀灯光源装置(商品名:ユニレックURM300、ウシオ電機製、12mW/cm)を用いて、2000mJ/cmの紫外線を照射した。さらに、150℃のオーブン中で30分間加熱し、樹脂層を架橋させ、樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製した。
【0051】
作製された樹脂付きスクリーン印刷用マスクの開口部のうち、300μmφの円形の開口部を顕微鏡で観察し、樹脂層のボトムBの開口巾L1、樹脂層のトップTの開口巾L2、スクリーン印刷用マスクの開口巾L3の距離を測定した。測定値は、L1=315μm、L2=300μm、L3=300μmであり、L1とL2、L3の値の差が大きくなり、図7に示すように、樹脂層のトップが尖った形状となった。
【0052】
上記樹脂付きスクリーン印刷用マスクを、パレット上に載置したプリント配線基板上にセットし、スキージによりクリーム半田のスクリーン印刷を200回実施した。この際、10版に1回、イソプロピルアルコールの含浸したウエスにより洗浄を行った。その結果、100版目くらいから、クリーム半田の滲みが多数発生しはじめた。印刷が終わったスクリーン印刷用マスクを観察したところ、樹脂層のトップTの開口巾L2が315μmにまで広がっており、樹脂層のトップの尖った部分が欠けていることが判明した。
【0053】
引き続き、50枚の樹脂付きスクリーン印刷用マスクを作製した後、洗浄液(水)のpHを測定したところ、9.5であった。また、洗浄液に泡が大量に発生し、消泡剤を添加する必要があった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によって作製された樹脂付きスクリーン印刷用マスクは、広くスクリーン印刷の用途に適用可能であり、例えば、ペースト材としては、導電性材料、絶縁性材料、色材、封止材料、接着材料、レジスト材料、処理薬剤等を、スクリーン印刷によって任意の基材上にパターン形成を行う用途に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 スクリーン印刷用マスク
2 開口部
3 樹脂層
4 マスキング層
5 活性光線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するスクリーン印刷用マスクの第1面に光架橋性樹脂を含有してなる樹脂層及びマスキング層を形成し、次に、第1面側から樹脂層全面に活性光線を照射し、次に、スクリーン印刷用マスクの第1面とは反対側の第2面から樹脂層除去液を供給して、第1面の開口部上の樹脂層を除去し、次いで、マスキング層を除去することを特徴とする樹脂付きスクリーン印刷用マスクの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−274624(P2010−274624A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131997(P2009−131997)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【出願人】(503284693)松井電器産業 株式会社 (2)
【Fターム(参考)】