説明

樹脂供給量調節手段を有する射出成形機

【課題】スクリューの溝内の成形材料を検出するための特別の手段を必要とせず、さらには、樹脂材料の種類によらず、さらには計量回転速度の大小に影響されることなく、飢餓状態が一定の状態を保つように材料供給を行うことが可能な射出成形機を提供すること。
【解決手段】供給量指令値Fの初期値を設定し、射出・保圧工程を実行し、計量開始し(SA100〜SA103)、前サイクルにて計算した供給量指令値Fに基づいて樹脂を供給するが、最初の成形サイクルではステップSA100で設定した供給量指令値Fの初期値を用いる。計量開始時のスクリュー回転エンコーダ値C1を検出し記憶し、計量完了か否か判断し、計量完了の場合は、計量完了時のスクリュー回転エンコーダ値C2を検出し記憶し(SA104〜SA106)、計量中におけるスクリュー回転量ΔC(=C2−C1)を算出し、計量中におけるスクリュー回転量ΔCが目標値になるように、樹脂の供給量指令値Fを算出する(SA107,SA108)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機に関し、特に、樹脂供給量調節手段を有する射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
成形材料となるペレットを射出成形機の射出シリンダーに供給するための方法として、射出シリンダーに連設した供給ホッパにペレットを貯留し、その自重を利用してペレットを射出シリンダーに送り込む方法が一般的に用いられている。この場合、射出シリンダーの樹脂供給口はペレットで満たされた状態になっている。以降、この状態を満杯供給と記載する。
【0003】
これに対して、射出シリンダーの樹脂供給口が疎の状態になるようにペレットを少量ずつ供給する、いわゆる飢餓供給が知られている。例えば、特許文献1には、ペレットの供給源と射出シリンダーとの間にペレットフィーダを設け、ペレットフィーダの送り速度を増減させることでペレットの供給速度を制御する技術が開示されている。
【0004】
飢餓供給を行うと、射出シリンダー内で発生したガスの樹脂供給口からの脱気が促進されたり、あるいは樹脂供給口付近における射出シリンダー内壁と樹脂材料との摩擦による射出シリンダー内壁の異常摩耗が抑制される、といった効果が見込まれる。ただし、樹脂供給口の樹脂材料の疎密状態(飢餓状態)が変動すると、計量工程における樹脂の可塑化品質が変動し、成形品質に悪影響を与える恐れがある。よって、飢餓供給を行う場合には、飢餓状態が一定の状態を保つように材料供給を行わなければならないという課題があった。
【0005】
特許文献2においては、スクリューにおける供給部に臨ませて配設され、スクリューの溝内の成形材料を検出する成形材料検出手段と、該成形材料検出手段による検出結果に対応させて、スクリューの溝内に成形材料が100[%]満たされることがないように、樹脂材料の供給量を制御する技術が開示されている。しかし、スクリューの溝内の成形材料を検出するための特別の手段を必要とするという問題があった。
【0006】
特許文献3においては、計量工程におけるスクリュー回転のトルクを検出し、該スクリュー回転トルクが基準値に一致するように原料の供給量を調整する技術が開示されている。しかし、樹脂材料の種類によっては、飢餓状態が変動してもスクリュー回転のトルクが変動しない場合があり、そのような場合にはスクリュー回転のトルクに基づいて飢餓状態を制御することができないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献4においては、可塑化工程時の実際の計量時間と予め設定した基準計量時間との差を判定手段にて判定し、その判定結果に基づいて材料供給装置による材料供給量を制御する技術が開示されている。しかし、計量時間はスクリュー回転速度の大小によって変動するため、飢餓状態を正確に判定できないという問題があった。
【0008】
特許文献5においては、色替え対象の原料を用いて色替え運転を行うにあたって、樹脂通路を間欠開閉して原料樹脂をフィード部に間欠供給する原料供給装置において、色替え樹脂の供給開始時期を決定する判断基準として、設定時間又はスクリュー回転の総回転数を設定する技術が開示されている。
【0009】
特許文献6においては、射出成形機の各部に配設されたセンサの計測情報などから、予め設定された各モニタリング項目に対応する計測データが許容範囲にあるか否かを判定してモニタリングを行う射出成形機において、スクリューの回転開始時点からのスクリュー回転量を累積演算し、このスクリュー回転量をチャージ・計量工程時のモニタリング項目の1つとして用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−318531号公報
【特許文献2】特開2002−248655号公報
【特許文献3】特開昭53−11957号公報
【特許文献4】特開平1−171830号公報
【特許文献5】特開平3−114813号公報
【特許文献6】特開平3−118132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、スクリューの溝内の成形材料を検出するための特別の手段を必要とせず、さらには、樹脂材料の種類によらず、さらには計量回転速度の大小に影響されることなく、飢餓状態が一定の状態を保つように材料供給を行うことが可能な射出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の請求項1に係る発明は、射出シリンダーと、射出シリンダー内に回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューと、スクリューを回転駆動するスクリュー回転駆動手段と、所定区間内におけるスクリュー回転量を検出するスクリュー回転量検出手段と、射出シリンダー内に樹脂材料を供給する樹脂材料供給手段とを有する射出成形機において、前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量が所定の目標値となるように、前記樹脂材料供給手段の樹脂供給量を調節する樹脂供給量調節手段を有することを特徴とする射出成形機である。
請求項2に係る発明は、射出シリンダーと、射出シリンダー内に回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューと、スクリューを回転駆動するスクリュー回転駆動手段と、所定区間内におけるスクリュー回転量を検出するスクリュー回転量検出手段と、所定区間内におけるスクリュー後退量を検出するスクリュー後退量検出手段と、射出シリンダー内に樹脂材料を供給する樹脂材料供給手段とを有する射出成形機において、前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量を、前記スクリュー後退量検出手段によって検出したスクリュー後退量で除した値が所定の目標値となるように、前記樹脂材料供給手段の樹脂供給量を調節する樹脂供給量調節手段を有することを特徴とする射出成形機である。
【0013】
請求項3に係る発明は、さらに、満杯供給で成形したときの前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量に所定の飢餓係数を乗じた値を前記所定の目標値として設定する目標値設定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機である。
請求項4に係る発明は、さらに、満杯供給で成形したときの前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量を、前記スクリュー後退量検出手段によって検出したスクリュー後退量で除した値に所定の飢餓係数を乗じた値を前記所定の目標値として設定する目標値設定手段を有することを特徴とする請求項2に記載の射出成形機である。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記所定の目標値はオペレータが設定する値であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の射出成形機である。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記所定区間とは計量開始から計量終了までの区間であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の射出成形機である。
請求項7に係る発明は、前記所定区間とは計量開始から計量終了までの区間をさらに複数の区間に分割したうちの任意の区間であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の射出成形機である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、スクリューの溝内の成形材料を検出するための特別の手段を必要とせず、さらには、樹脂材料の種類によらず、さらには計量回転速度の大小に影響されることなく、飢餓状態が一定の状態を保つように材料供給を行うことが可能な射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る樹脂供給量調節手段を有する射出成形機の要部断面とその制御装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る樹脂供給量調節を計量中におけるスクリュー回転量に基づいて行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る樹脂供給量調節を計量中におけるスクリュー回転量と計量ストロークとの比に基づいて行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図4−1】本発明に係る樹脂供給量調節を計量中におけるスクリュー回転量に基づいて行う処理においてスクリュー回転量の目標値を設定する処理を含むアルゴリズムを示すフローチャートである(その1)。
【図4−2】本発明に係る樹脂供給量調節を計量中におけるスクリュー回転量に基づいて行う処理においてスクリュー回転量の目標値を設定する処理を含むアルゴリズムを示すフローチャートである(その2)。
【図5】本発明に係る樹脂供給量調節を計量開始から計量終了までの区間をさらに複数の区間に分割したうちの任意の区間のスクリュー回転量に基づいて行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
飢餓供給を行って材料密度を疎にすると、計量工程においてスクリュー1回転あたりの樹脂の可塑化能力が低下するという特性がある。つまり、満杯供給時に比べて、所定の樹脂量を計量するのに必要なスクリュー回転量が多くなる。本発明はこの特性に着目し、計量中のスクリュー回転量に基づいて樹脂材料の供給量を最適に制御するものである。すなわち、計量中におけるスクリュー回転量を検出し、該検出したスクリュー回転量が所定値に一致するように樹脂材料の供給量を制御することによって、飢餓状態の一定の状態を保つように材料供給を行うものである。
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明に係る樹脂供給量調節手段を有する射出成形機の要部断面とその制御装置を示すブロック図である。図中の符号1は射出成形機の射出スクリューで、射出シリンダー2に摺動および回転自在に内嵌され、射出用サーボモータM1およびスクリュー回転用サーボモータM2により軸方向の射出動作と軸回りのスクリュー回転とが独立して行われるようになっている。符号31は射出用サーボモータM1を駆動源として射出スクリュー1に射出動作を行わせるための動力伝達機構であり、符号32はスクリュー回転用サーボモータM2を駆動源として射出スクリューに計量動作を行わせるための動力伝達機構である。また、射出シリンダー2には、バンドヒータ等からなる図示しない加熱手段が設けられている。
【0020】
また、射出シリンダー2の基部上面には成形材料となるぺレットを投入するためのホッパ4が配備され、ペレットの供給源となるホッパ4と射出シリンダー2との間には、ホッパ4内のペレットを射出シリンダー2に供給するためのペレットフィーダ5が設けられている。ペレットフィーダ5は、ホッパ4と射出シリンダー2との間に形成された連通路6を横切るようにして配備された羽根付ロータ7と羽根付ロータ7の回転駆動手段であるモータM3および該モータM3の回転速度を制御するモータ駆動回路8によって構成され、樹脂の供給量指令値Fに基づいて羽根付ロータ7の回転速度を制御することにより、ホッパ4から射出シリンダー2に送り込まれるペレットの移送速度が調整されるようになっている。
なお、ペレットフィーダ5の主要部を構成する羽根付ロータ7に替えて計量専用スクリューおよびその周辺部の構成を適用し、モータM3で計量専用スクリューを回転駆動して射出シリンダー2にペレットを送り込むようにしても良い。射出用サーボモータM1およびスクリユー回転用サーボモータM2の各々にはロータリーエンコーダーP1およびP2の各々が装着され、射出スクリュー1の現在位置(軸方向)や回転位置(軸回り)等が検出されるようになっている。
【0021】
射出成形機の制御装置100は数値制御用のマイクロプロセッサ(以下、CNCCPUという)111とプログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサ(以下、PMCCPUという)113を有し、PMCCPU113には射出成形機のシーケンス動作やペレットフィーダ5を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM116、および、不揮発性のPMC用RAM109や現在値記憶RAM108が接続されている。CNCCPU111は射出成形機の各部を全体的に制御するためのものであって、クランプ用(図示せず),エジェクタ用(図示せず),スクリュー回転用,射出用等の各軸のサーボモータを駆動制御するサーボ回路がサーボインターフェイス110を介して接続されている。なお、図1では射出用サーボモータM1のためのサーボ回路102とスクリュー回転用サーボモータM2のためのサーボ回路101のみを図示している。
【0022】
104は不揮発性の共有RAMで、射出成形機の各動作を制御するNCプログラム等を記憶するメモリ部と各種設定値,パラメータ,マクロ変数等を記憶する設定メモリ部とを有し、該設定メモリ部には、LCD表示装置付手動データ入力装置117およびオペレータパネルコントローラ115を介してオペレータが設定入力した各種の成形条件および計量条件等が記憶される。112はバスアービターコントローラ(以下、BACという)で、該BAC112にはCNCCPU111およびPMCCPU113,共有RAM104,入力回路105,出力回路106の各バスが接続され、該BAC112によって使用するバスが制御されるようになっている。
また、射出用サーボモータM1はサーボ回路102に接続され、ロータリーエンコーダーP1からの検出出力がサーボ回路102に入力されており、サーボインターフェイス110内の現在位置記憶レジスタにより、射出スクリュー1の現在位置(軸方向)が常時検出されるようになっている。また、スクリュー回転用サーボモータM2はサーボ回路101に接続され、ロータリーエンコーダーP2からの検出出力がサーボ回路101に入力され、位置,速度の制御が行われる。RAM103はCNCCPU111のための演算データ記憶メモリである。
【0023】
そして、制御装置100の出力回路106にはD/A変換器9を介してモータ駆動回路8が接続され、D/A変換器9でD/A変換された制御装置100からの速度指令によりモータ駆動回路8がモータM3を駆動制御して、ペレットフィーダ5の羽根付ロータ7が制御装置100からの速度指令に対応する送り速度でホッパ4内のペレットを射出シリンダー2に供給するようになっている。
【0024】
以上のような構成において、CNC用ROM114に格納されたNCプログラムや共有RAM104に格納された各種成形条件およびPMC用ROM116に格納されたシーケンスプログラム等により、PMCCPU113がシーケンス制御を行いながら、CNCCPU111が射出成形機の各軸のサーボ回路へサーボインターフェイス110を介してパルス分配して射出成形機を駆動制御するものであり、射出成形機本体に関する限り、各部の駆動制御方式は従来のものと全く同様である。
【0025】
即ち、計量・混練りの工程においては、共有RAM104に予め設定された背圧に基いて従来と同様に射出用サーボモータM1が駆動制御され、また、PMCCPU113からの計量開始信号を受けたCNCCPU111が、共有RAM104に予め設定されたスクリュー回転速度に応じてサーボインターフェイス110を介して所定周期毎のパルス分配を開始し、エラーレジスタやF/V変換器および誤差増幅器や電力増幅器等を備えたサーボ回路101がCNCCPU111からの分配パルスとロータリーエンコーダーP2からのフィードバックパルスに基いて位置,速度,電流ループの各処理を行ってトルク指令を出力し、射出スクリュー1の回転速度が設定速度となるようにスクリュー回転用サーボモータM2を制御する。
【0026】
上記の射出成形機およびその制御装置は、図2〜図5に示す本発明に係るアルゴリズムを示すフローチャートの処理を実行するため、以下に説明する機能を備える。
<樹脂の供給量指令値Fの初期値>
運転開始時に設定する供給量指令値Fの初期値は、射出スクリュー1の径などのスペックに応じた固有値としてもよいし、計量完了位置などから成形品ボリュームを求めて、そのボリュームに相当する樹脂量を供給する値としてもよい。供給量指令値Fの初期値は、不揮発性メモリである共有RAM104に予め記憶させておくことができる。
【0027】
<スクリュー回転量検出手段>
スクリュー回転量検出手段は、射出スクリュー1のスクリュー回転量を検出し記憶する手段であって、例えばスクリュー回転軸にロータリーエンコーダーP2を備え、計量工程の開始時と終了時のロータリーエンコーダーP2からの値を検出し記憶する手段である。計量工程の開始時と終了時のロータリーエンコーダーP2からの検出値は、例えば、RAM103に記憶させる。そして、前記検出および記憶した2つの値の差を求め、この2つの値の差を計量中のスクリュー回転量としてRAM103に記憶させる。あるいは、スクリュー回転量検出手段は、スクリュー回転軸に回転速度検出器を備え、計量工程の開始時から完了時までのスクリュー回転速度の時間積分値を求めるようにしてもよい。
【0028】
<樹脂の供給量指令値Fの算出について>
供給量指令値Fの算出にあたっては、前記検出したスクリュー回転量が所定の目標値より小さい場合には、飢餓状態が密(換言すれば、満杯状態)であるので、供給量指令値Fを小さくするように調整し、前記検出したスクリュー回転量が所定の目標値より大きい場合には、飢餓状態が疎であるので、供給量指令値を大きくするように調整するようにしてもよい。または、前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量と所定の目標値との偏差に基づいてPID制御を行い、供給量指令値を算出するようにしてもよい。
あるいは、前記検出したスクリュー回転量を前記検出したスクリュー後退量(後述して説明)で除した値が所定の目標値より小さい場合には、飢餓状態が密である(換言すれば、満杯状態)ので、供給量指令値Fを小さくするように調整し、前記検出したスクリュー回転量を前記検出したスクリュー後退量で除した値が所定の目標値より大きい場合には、飢餓状態が疎であるので、供給量指令値Fを大きくするように調整するようにしてもよい。または、前記検出したスクリュー回転量を前記検出したスクリュー後退量で除した値と所定の目標値との偏差に基づいてPID制御を行い、供給量指令値Fを算出するようにしてもよい。
【0029】
<樹脂供給量調節手段について>
樹脂供給量調節手段は、前記算出した供給量指令値Fに基づいて1成形サイクルあたりの樹脂材料の供給量を調節するようにしてもよい。例えば、ペレットフィーダ5の羽根付ロータ7の回転量を制御したり、特開平6−304967号公報のように、フィードスクリューを用いて樹脂材料を供給する樹脂材料供給手段であれば、1成形サイクルあたりのフィードスクリュー回転量を制御するようにしてもよい。または、1成形サイクルあたりの回転時間を制御するようにしてもよい。
あるいは、樹脂供給量調節手段は、前記算出した供給量指令値Fに基づいて単位時間あたりの樹脂材料の供給量を調節するようにしてもよい。例えば、ペレットフィーダ5の羽根付ロータ7の回転速度を制御したり、特開平6−304967号公報のように、フィードスクリューを用いて樹脂材料を供給する樹脂材料供給手段であれば、樹脂材料供給時のフィードスクリューの回転速度を制御するようにしてもよい。このとき、フィードスクリューは計量工程の開始時点から終了時点まで回転させるようにしてもよいし、成形サイクルの開始時点から終了時点まで回転させるようにしてもよい。
【0030】
<スクリュー後退量検出手段>
スクリュー後退量検出手段は、スクリュー前後進方向の位置を検出するスクリュー位置検出手段を備え、計量工程の開始時と完了時のスクリュー位置の値をそれぞれ検出し記憶する手段である。例えば、スクリュー後退量検出手段は、射出スクリュー1のスクリュー前後進方向の位置を検出し記憶するため、射出用サーボモータM1にはロータリーエンコーダーP1が装着され、射出スクリュー1の現在位置(軸方向)が検出されるようになっている。そして、前記検出および記憶した2つの値の差を計量中のスクリュー後退量として求めるようにする。あるいは、スクリュー前後進方向の速度を検出するスクリュー前後進速度検出手段を備え、計量工程の開始時から完了時までのスクリュー前後進速度の時間積分値を求めるようにしてもよい。
【0031】
<スクリュー回転量をスクリュー後退距離で除した値について>
上記のように、計量中におけるスクリュー回転量が設定した目標値となるように制御することで、飢餓状態が一定になるように制御することができるが、適切な飢餓状態となるための前記目標値は、計量ボリュームによってそれぞれ異なる目標値の値を設定する必要がある。そのため、金型を交換して成形する成形品を変更する場合には、成形品ボリュームに応じて適切な飢餓状態となるためのスクリュー回転量の目標値を再調整する必要がある。例えば、金型を交換して成形品ボリュームが2倍となった場合、適切な飢餓状態とするための前記目標値はおおよそ2倍の値を再設定する必要があり、オペレータの負担となる恐れがある。
【0032】
そこで、計量中におけるスクリュー回転量をスクリュー後退量(スクリュー後退距離)で除した値に基づいて飢餓状態が一定になるように制御してもよい。この場合、金型を交換して成形する成形品を変更した場合でも、成形品ボリュームに応じて計量中におけるスクリュー回転量とスクリュー後退量の両方がほぼ同じ比率で変わるため、計量中におけるスクリュー回転量をスクリュー後退量で除した値はほとんど変化しない。そのため、目標値を再調整する作業が不要となり、オペレータの負担を軽減できる。
【0033】
<目標値の設定について>
上記のように、計量中におけるスクリュー回転量が設定した目標値となるように制御することで、飢餓状態が一定になるように制御することができるが、適切な飢餓状態となるための前記目標値は、樹脂の特性やスクリュー形状による標準的な可塑化能力などを勘案して設定する必要があり、最適な目標値を設定するのが難しい。
そこで、飢餓状態を形成する前に、いったんは満杯供給による成形を行い、満杯状態で成形したときの前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量に所定の飢餓係数を乗じた値を前記所定の目標値として設定するようにしてもよい。この場合、満杯状態で成形したときの前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量を基準として、前記基準とするスクリュー回転量に所定の飢餓係数を乗じた値を目標値として設定するため、樹脂の特性やスクリュー形状による標準的な可塑化能力などを勘案して設定する作業が不要となり、オペレータの負担を軽減できる。
【0034】
なお、前記所定の飢餓係数は、樹脂の特性やスクリュー形状による標準的な可塑化能力などによらず、形成したい飢餓状態の疎密に対応する値を設定すればよいため、設定が容易である。一般的には、1.1〜1.2程度の飢餓係数を設定することで、安定した計量を行うことができる。飢餓係数が1.1〜1.2というのは、満杯供給時に比べてスクリュー回転量が1.1〜1.2倍となるように樹脂の供給量を減らすことを意味する。なお、前記所定の飢餓係数は、オペレータが設定するようにしてもよいし、1.1〜1.2程度の固有値をあらかじめ樹脂供給量調節手段に記憶させておいてもよい。
【0035】
図2は、本発明に係る樹脂供給量調節を計量中におけるスクリュー回転量に基づいて行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。なお、運転開始時には、射出シリンダー内には手動で樹脂が充填されている。
●[ステップSA100]供給量指令値Fの初期値を設定する。
●[ステップSA101]射出・保圧工程を実行する。
●[ステップSA102]計量開始する。
●[ステップSA103]前サイクルにて計算した供給量指令値Fに基づいて樹脂を供給する。なお、最初の成形サイクルではステップSA100で設定した供給量指令値Fの初期値を用いる。
●[ステップSA104]計量開始時のスクリュー回転エンコーダ値C1を検出し記憶する。
●[ステップSA105]計量完了か否か判断し、計量完了の場合はステップSA106へ移行する。
●[ステップSA106]計量完了時のスクリュー回転エンコーダ値C2を検出し記憶する。
●[ステップSA107]計量中におけるスクリュー回転量ΔC(=C2−C1)を算出する。
●[ステップSA108]計量中におけるスクリュー回転量ΔCが目標値になるように、樹脂の供給量指令値Fを算出する。
●[ステップSA109]運転終了か否か判断し、運転終了でない場合にはステップSA101へ戻り処理を継続し、運転終了の場合には処理を終了する。
【0036】
図3は、本発明に係る樹脂供給量調節を計量中におけるスクリュー回転量と計量ストロークとの比に基づいて行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。なお、運転開始時には、射出シリンダー内には手動で樹脂が充填されている。
●[ステップSB100]供給量指令値Fの初期値を設定する。
●[ステップSB101]射出・保圧工程を実行する。
●[ステップSB102]計量開始する。
●[ステップSB103]前サイクルにて計算した供給量指令値Fに基づいて樹脂を供給する。なお、最初の成形サイクルではステップSB100で設定した供給量指令値Fの初期値を用いる。
●[ステップSB104]計量開始時のスクリュー回転エンコーダ値C1を検出し記憶する。
●[ステップSB105]計量開始時のスクリュー位置X1を検出し記憶する。
●[ステップSB106]計量完了か否か判断し、計量完了の場合はステップSB107へ移行する。
●[ステップSB107]計量完了時のスクリュー回転エンコーダ値C2を検出し記憶する。
●[ステップSB108]計量完了時のスクリュー位置X2を検出し記憶する。
●[ステップSB109]計量中におけるスクリュー回転量/スクリュー後退量ΔC/ΔX(=(C2−C1)/(X2−X1))を算出する。
●[ステップSB110]計量中におけるスクリュー回転量/スクリュー後退量ΔC/ΔXが目標値になるように、樹脂の供給量指令値Fを算出する。
●[ステップSB111]運転終了か否か判断し、運転終了でない場合にはステップSB101へ戻り処理を継続し、運転終了の場合には処理を終了する。
【0037】
図4は、本発明に係る樹脂供給量調節を計量中におけるスクリュー回転量に基づいて行う処理においてスクリュー回転量の目標値を設定する処理を含むアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。なお、運転開始時には、射出シリンダー内には手動で樹脂が充填されている。
●[ステップSC100]樹脂が密の状態(満杯状態)となるように、樹脂材料を供給する。
●[ステップSC101]射出・保圧工程を実行する。
●[ステップSC102]計量開始する。
●[ステップSC103]計量開始時のスクリュー回転エンコーダ値C’1を検出し記憶する。
●[ステップSC104]計量完了か否か判断し、計量完了の場合はステップSC105へ移行する。
●[ステップSC105]計量完了時のスクリュー回転エンコーダ値C’2を検出し記憶する。
●[ステップSC106]計量中におけるスクリュー回転量ΔC’(=C’2−C’1)を算出する。
●[ステップSC107]目標値Sを、S=K*ΔC’により算出し設定する。なお、Kは飢餓係数である。
●[ステップSC108]供給量指令値Fの初期値を設定する。
●[ステップSC109]射出・保圧工程を実行する。
●[ステップSC110]計量開始する。
●[ステップSC111]前サイクルにて計算した供給量指令値Fに基づいて樹脂を供給する。なお、最初の成形サイクルではステップSC108で設定した供給量指令値Fの初期値を用いる。
●[ステップSC112]計量開始時のスクリュー回転エンコーダ値C1を検出し記憶する。
●[ステップSC113]計量完了か否か判断し、計量完了の場合はステップSC114へ移行する。
●[ステップSC114]計量完了時のスクリュー回転エンコーダ値C2を検出し記憶する。
●[ステップSC115]計量中におけるスクリュー回転量ΔC(=C2−C1)を算出する。
●[ステップSC116]計量中におけるスクリュー回転量ΔCが目標値Sになるように、樹脂の供給量指令値Fを算出する。
●[ステップSC117]運転終了か否か判断し、運転終了でない場合にはステップSC109へ戻り処理を継続し、運転終了の場合には処理を終了する。
【0038】
図5は、本発明に係る樹脂供給量調節を計量開始から計量完了までの区間をさらに複数の区間に分割したうちの任意の区間のスクリュー回転量に基づいて行う処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。以下、各ステップに従って説明する。なお、運転開始時には、射出シリンダー内には手動で樹脂が充填されている。
●[ステップSD100]供給量指令値Fの初期値を設定する。
●[ステップSD101]射出・保圧工程を実行する。
●[ステップSD102]計量開始する。
●[ステップSD103]前区間にて計算した供給量指令値Fに基づいて樹脂を供給する。なお、最初の区間ではステップSD100で設定した供給量指令値Fの初期値を用いる。
●[ステップSD104]区間開始時のスクリュー回転エンコーダ値C3を検出および記憶する。
●[ステップSD105]区間開始時のスクリュー位置X3を検出および記憶する。
●[ステップSD106]現在のスクリュー位置Xnを検出および記憶する。
●[ステップSD107]現在のスクリュー位置Xnと区間開始時のスクリュー位置X3との差は、所定後退量より大きいか否か判断し、大きい場合にはステップSD108へ移行し、大きくない場合にはステップSD106へ戻る。
●[ステップSD108]区間終了時のスクリュー回転エンコーダ軸C4を検出および記憶する。
●[ステップSD109]区間中の計量中におけるスクリュー回転量ΔC(=C4−C3)を算出する。
●[ステップSD110]区間中におけるスクリュー回転量が目標値になるように、樹脂の供給量指令値Fを算出する。
●[ステップSD111]計量完了か否か判断し、区間の計量完了の場合はステップSD103へ戻り処理を継続する。
●[ステップSD112]運転終了か否か判断し、運転終了でない場合にはステップSD101へ戻り処理を継続し、運転終了の場合には処理を終了する。
【符号の説明】
【0039】
1 射出スクリュー
2 射出シリンダー
4 ホッパ
5 ペレットフィーダ
6 連通路
7 羽根付ロータ
M3 モータ
F 供給量指令値
C1,C’1 計量開始時のスクリュー回転エンコーダ値
C2,C’2 計量完了時のスクリュー回転エンコーダ値
C3 区間の計量開始時のスクリュー回転エンコーダ値
C4 区間の計量終了時のスクリュー回転エンコーダ値
ΔC,ΔC’ 計量中におけるスクリュー回転量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出シリンダーと、射出シリンダー内に回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューと、スクリューを回転駆動するスクリュー回転駆動手段と、所定区間内におけるスクリュー回転量を検出するスクリュー回転量検出手段と、射出シリンダー内に樹脂材料を供給する樹脂材料供給手段とを有する射出成形機において、
前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量が所定の目標値となるように、前記樹脂材料供給手段の樹脂供給量を調節する樹脂供給量調節手段を有することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
射出シリンダーと、射出シリンダー内に回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューと、スクリューを回転駆動するスクリュー回転駆動手段と、所定区間内におけるスクリュー回転量を検出するスクリュー回転量検出手段と、所定区間内におけるスクリュー後退量を検出するスクリュー後退量検出手段と、射出シリンダー内に樹脂材料を供給する樹脂材料供給手段とを有する射出成形機において、
前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量を、前記スクリュー後退量検出手段によって検出したスクリュー後退量で除した値が所定の目標値となるように、前記樹脂材料供給手段の樹脂供給量を調節する樹脂供給量調節手段を有することを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
さらに、満杯供給で成形したときの前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量に所定の飢餓係数を乗じた値を前記所定の目標値として設定する目標値設定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
さらに、満杯供給で成形したときの前記スクリュー回転量検出手段によって検出したスクリュー回転量を、前記スクリュー後退量検出手段によって検出したスクリュー後退量で除した値に所定の飢餓係数を乗じた値を前記所定の目標値として設定する目標値設定手段を有することを特徴とする請求項2に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記所定の目標値はオペレータが設定する値であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の射出成形機。
【請求項6】
前記所定区間とは計量開始から計量終了までの区間であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の射出成形機。
【請求項7】
前記所定区間とは計量開始から計量終了までの区間をさらに複数の区間に分割したうちの任意の区間であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−962(P2012−962A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141013(P2010−141013)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】