説明

樹脂射出成型装置

【課題】小さな設置スペースに設置することができる樹脂射出成型装置を提供する。
【解決手段】鉛直軸心L廻りに間欠的に回転駆動されるターンテーブル2を有する。ターンテーブル2に固着した複数個の下型5のうち、樹脂射出成型周方向位置Xよりも一工程前のものを、予め加熱する加熱手段Hを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂射出成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂射出成型装置は、加熱により溶融した樹脂を射出機から金型内へ射出して、冷却し、成型するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、テレビのパネル枠や、コピー機の表面パネル等の、大型薄物の成型品、あるいは、大型長物の成型品を成型すると、いわゆるウェルドラインw(図4参照)が生じる。図4は、テレビのパネル枠p(例えば肉厚は2〜3mm)を成型した際にウェルドラインwが生じたものを示す。すなわち、大型薄物や大型長物では、ゲート口g(溶融樹脂の注入箇所)から注入された樹脂jが冷えて固まりながら金型k(図5参照)内へ充填される。そして、ゲート口gとゲート口gの中間部分にウェルドラインwが発生する。つまり、固まりながら流れてきた樹指j同士がぶつかる場所(樹脂jが最後に到達する場所)に、ウェルドラインwが発生する。このウェルドラインを外観上見えないようにするために、成型工程後に塗装工程が必要となるが、シンナーなどの環境問題やリードタイムの延長などの問題があった。
【0004】
そこで、ウェルドラインwを防ぐために、金型kを加熱手段hにより加熱してから溶融樹脂を射出するものがある。例えば、誘導加熱コイルcを金型kに図5の矢印α方向に接近させて、金型kを加熱し、その後、誘導加熱コイルcを金型kから図5の矢印β方向に離間させ、引き続いて、溶融樹脂を射出していた。
【0005】
しかし、ウェルドラインwが発生しやすい形状の成型品に対しては大型の誘導加熱コイルcが必要となり、成型サイクル中での誘導加熱コイルcの移動に問題があった。例えば、大型の誘導加熱コイルcを移動させるには、全体として大きな設置スペースが必要だという欠点があった。
【特許文献1】特開2002−240117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、大型の加熱手段を移動させるので、大きな設置スペースが必要だという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明に係る樹脂射出成型装置は、鉛直軸心廻りに間欠的に回転駆動されるターンテーブルを有し、該ターンテーブルに固着した複数個の下型のうち、樹脂射出成型周方向位置よりも一工程前のものを、予め加熱する加熱手段を具備したものである。
【0008】
また、1個の上型と、複数個の下型と、溶融樹脂を注入するためのノズルとを、具備し、鉛直軸心廻りに間欠的に回転駆動されるターンテーブル上に、均等中心角度をもって上記複数個の下型を、固着し、上記ターンテーブルが間欠的に回転して順次送られてくる上記下型に対し、合体分離自在に上方から接近可能な上記上型とノズルを、上記ターンテーブルの所定周方向位置に配設し、さらに、該所定周方向位置から上記均等中心角度だけ上流側の上流周方向位置に、上記下型を加熱する加熱手段を、設けたものである。
【0009】
また、上記加熱手段が、誘導加熱コイルから成るものである。
また、上記下型を3個以上とすると共に、上記上流周方向位置よりもさらに上流側の下型停止周方向位置のうち少なくともひとつを、インサート部品組込みエリアとしたものである。
また、上記ノズルを上下方向に配設したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂射出成型装置によれば、加熱手段を定位置に設置することができ、装置全体の容積を減少することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1・図2は、本発明の第1の実施の形態を示す。この樹脂射出成型装置は、加熱により溶融した樹脂(溶融樹脂)を、射出機のノズル1からターンテーブル2上の金型3内(すなわち上型4及び下型5によって形成される図示省略のキャビティ)へ射出して、冷却し、成型するものである。特に、テレビのパネル枠や、コピー機の表面パネル等の、大型薄物の成型品、あるいは、大型長物の成型品を成型するのに適している。
【0012】
ターンテーブル2は、鉛直軸心L廻りに間欠的に回転駆動される。ターンテーブル2に、(下型停止周方向位置Zに於て)順次所定の工程を行なうことができるような配置に複数個の下型5が固着されている。下型5のうち樹脂射出成型周方向位置Xよりも一工程前のもの(下型5)を予め加熱する加熱手段Hを具備している。
【0013】
具体的には、1個の上型4と、2個の下型5と、溶融樹脂を注入するためのノズル1とを、具備する。ノズル1が上下方向(鉛直方向)に配設されている。
鉛直軸心L廻りに図2の矢印E方向に間欠的に回転駆動されるターンテーブル2上に、均等中心角度θ( 180°)をもって複数個(2個)の下型5が、固着されている。言い換えると、ターンテーブル2の中心点Tを避けた位置(周縁部)に複数個の下型5が配設されており、ターンテーブル2を均等中心角度θだけ回転させた時に、下型5が同じ位置に配置されるように(中心点Tに関して回転対称に)配設されている。ターンテーブル2は、例えば金属から成る。「固着」とは、着脱自在に取付ける(固定する)場合を含む。
【0014】
ターンテーブル2が間欠的に回転して順次送られてくる下型5に対し、合体分離自在に上方から接近可能な上型4とノズル1が、ターンテーブル2の所定周方向位置(樹脂射出成型周方向位置)Xに配設されている。さらに、所定周方向位置Xから均等中心角度θだけ上流側の上流周方向位置Yに、下型5を加熱する加熱手段Hが、設けられている。加熱手段Hは、例えば、誘導加熱コイルから成る。なお、「周方向位置」は、ターンテーブル2の周方向の位置を指し、上下方向の位置を問わない。
【0015】
図3は、第2の実施の形態を示す。下型5を4個とすると共に、上流周方向位置Yよりもさらに上流側の下型停止周方向位置Z(ターンテーブル2が間欠的に回転して停止した時に下型5が停止する周方向位置)のひとつが、インサート部品組込みエリアAとされている。「インサート部品組込みエリア」とは、インサート部品(図示省略。例えば埋込み用のナット)を組込み可能な空間(特に上部空間)を有するエリアのことをいう。なお、この実施の形態に於ける均等中心角度θは、90°となる。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0016】
なお、図2・図3に於て、下型5のキャビティ形状を図示省略した。
本発明は、設計変更可能であって、例えば、下型5の個数を3個又は5個以上とするも良い。また、4個以上の下型を有する場合に、下型停止周方向位置Zのうちふたつ以上を、インサート部品組込みエリアAとするも良い。また、加熱手段Hが、例えば、電気ヒータから成るも良い。
【0017】
以上のように、本発明は、鉛直軸心L廻りに間欠的に回転駆動されるターンテーブル2を有し、ターンテーブル2に固着した複数個の下型5のうち、樹脂射出成型周方向位置Xよりも一工程前のものを、予め加熱する加熱手段Hを具備しているので、加熱手段H(例えば大型の誘導加熱コイル)を定位置に設けることができる。そして、小さな設置スペースに設置することができる。
【0018】
1個の上型4と、複数個の下型5と、溶融樹脂を注入するためのノズル1とを、具備し、鉛直軸心L廻りに間欠的に回転駆動されるターンテーブル2上に、均等中心角度θをもって複数個の下型5を、固着し、ターンテーブル2が間欠的に回転して順次送られてくる下型5に対し、合体分離自在に上方から接近可能な上型4とノズル1を、ターンテーブル2の所定周方向位置Xに配設し、さらに、所定周方向位置Xから均等中心角度θだけ上流側の上流周方向位置Yに、下型5を加熱する加熱手段Hを、設けたので、加熱手段H(例えば大型の誘導加熱コイル)を定位置に設けることができる。そして、小さな設置スペースに設置することができる。
【0019】
また、下型5を3個以上とすると共に、上流周方向位置Yよりもさらに上流側の下型停止周方向位置Zのうち少なくともひとつを、インサート部品組込みエリアAとしたので、効率良くインサート部品を組込むことができる。すなわち、ターンテーブル2上でインサート部品を組込んだ後に、ターンテーブル2を回転させるのみで射出成型を行なう位置(所定周方向位置X)へ移動させることができるので、他の場所でインサート部品を組込む場合と比較して、スムーズに射出成型までを完了することができる。
【0020】
また、ノズル1を上下方向に配設したので、小さなスペースに設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す正面図である。
【図2】簡略平面図である。
【図3】第2の実施の形態を示す簡略平面図である。
【図4】従来の樹脂射出成型装置によって成型された成型品を示す平面図である。
【図5】従来例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 (射出機の)ノズル
2 ターンテーブル
4 上型
5 下型
A インサート部品組込みエリア
H 加熱手段
L 鉛直軸心
X 所定周方向位置(樹脂射出成型周方向位置)
Y 上流周方向位置
Z 下型停止周方向位置
θ 均等中心角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直軸心(L)廻りに間欠的に回転駆動されるターンテーブル(2)を有し、該ターンテーブル(2)に固着した複数個の下型(5)のうち、樹脂射出成型周方向位置(X)よりも一工程前のものを、予め加熱する加熱手段(H)を具備したことを特徴とする樹脂射出成型装置。
【請求項2】
1個の上型(4)と、複数個の下型(5)と、溶融樹脂を注入するためのノズル(1)とを、具備し、
鉛直軸心(L)廻りに間欠的に回転駆動されるターンテーブル(2)上に、均等中心角度(θ)をもって上記複数個の下型(5)を、固着し、
上記ターンテーブル(2)が間欠的に回転して順次送られてくる上記下型(5)に対し、合体分離自在に上方から接近可能な上記上型(4)とノズル(1)を、上記ターンテーブル(2)の所定周方向位置(X)に配設し、さらに、該所定周方向位置(X)から上記均等中心角度(θ)だけ上流側の上流周方向位置(Y)に、上記下型(5)を加熱する加熱手段(H)を、設けたことを特徴とする樹脂射出成型装置。
【請求項3】
上記加熱手段(H)が、誘導加熱コイルから成る請求項1又は2記載の樹脂射出成型装置。
【請求項4】
上記下型(5)を3個以上とすると共に、上記上流周方向位置(Y)よりもさらに上流側の下型停止周方向位置(Z)のうち少なくともひとつを、インサート部品組込みエリア(A)とした請求項1,2又は3記載の樹脂射出成型装置。
【請求項5】
上記ノズル(1)を上下方向に配設した請求項1,2,3又は4記載の樹脂射出成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−73065(P2009−73065A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244686(P2007−244686)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(393027729)株式会社カンネツ (8)
【Fターム(参考)】