説明

樹脂成形品の内部流路成形部カット装置

【課題】樹脂成形品の内部流路成形部を切断面が綺麗な状態となるように切断可能で、しかも切断糟の発生量を抑制可能な樹脂成形品の内部流路成形部カット装置を提供する。
【解決手段】表面に凹設したキャビティ12B、14と、キャビティと連通する内部流路12Aとを備える成形型11、13より離型した樹脂成形品Aから、内部流路によって成形された内部流路成形部A2を切断するための内部流路成形部カット装置20において、開閉可能で、閉じることにより両者の間に位置する内部流路成形部に接触する一対の開閉刃35と、該開閉刃に熱を付与するヒータ41と、開閉刃を開閉動作させるステッピングモータ37と、ステッピングモータの回転速度を上記開閉刃の開閉位置に基づいて制御する制御手段38と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹設したキャビティと、キャビティと連通する内部流路(ゲート、スプルー等)とを備える成形型より離型した樹脂成形品から、内部流路によって成形された内部流路成形部を切断するための内部流路成形部カット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に凹設したキャビティとキャビティと連通する内部流路とを備える成形型から離型した樹脂成形品には、内部流路内で固化した内部流路成形部が成形される。成形品のうちキャビティによって成形された部分のみが最終製品の外形を構成する部分であり内部流路成形部は不要であるため、離型した成形品から内部流路成形部を切断する必要がある。
【0003】
特許文献1は内部流路成形部カット装置の従来例であり、成形型の内部流路(ゲート)によって成形された内部流路成形部(ゲート部)を有する樹脂成形品を固定状態で支持する成形品支持手段と、互いに接近する方向と離間する方向に直線移動可能な上刃体および下刃体と、上刃体および下刃体を加熱するヒータと、上刃体および下刃体を上下動させるサーボモータと、サーボモータの負荷電流を検出する電流センサからなる負荷検出器と、負荷検出器の検出結果が設定値となるようにサーボモータの回転トルクを制御する制御手段と、を具備している。
【0004】
樹脂成形品(内部流路成形部)の上下に位置する上刃体と下刃体をサーボモータの駆動力を利用して互いに接近する方向に直線移動させると、ヒータによって熱せられた上刃体と下刃体が内部流路成形部の上下両面に接触し、内部流路成形部を熱によって軟化させながら切断する。このときに上刃体と下刃体が内部流路成形部から受ける抵抗は刻々と変化するが、制御手段が負荷検出器の検出結果が設定値となるようにサーボモータの回転トルクを制御するので、切断中に上刃体と下刃体が受ける負荷は常に一定となる。
このように上刃体と下刃体をヒータで加熱しながら制御手段によってサーボモータをトルク制御すると、切断された内部流路成形部の剪断面(切断面)は高品質で安定したものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−236896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1の内部流路成形部カット装置を利用して樹脂成形品の内部流路成形部を切断すると、切断糟(樹脂の糟)が大量に発生するおそれがある。
多量の切断糟が発生すると、飛散した切断糟によって成形品(キャビティによって成形された部分)が傷付くおそれがある。さらに成形型に切断糟が付着するため、成形型の清掃作業が面倒になるおそれがある。
【0007】
本発明は、樹脂成形品の内部流路成形部を切断面が綺麗な状態となるように切断可能で、しかも切断糟の発生量を抑制可能な樹脂成形品の内部流路成形部カット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の樹脂成形品の内部流路成形部カット装置は、表面に凹設したキャビティと、該キャビティと連通する内部流路とを備える成形型より離型した樹脂成形品から、上記内部流路によって成形された内部流路成形部を切断するための内部流路成形部カット装置において、開閉可能で、閉じることにより両者の間に位置する上記内部流路成形部に接触する一対の開閉刃と、該開閉刃に熱を付与するヒータと、上記開閉刃を開閉動作させるステッピングモータと、上記ステッピングモータの回転速度を、上記開閉刃の開閉位置に基づいて制御する制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
上記制御手段は、一対の開閉刃が上記内部流路成形部に接触する位置までの距離と全閉位置までの距離とが等しい所定の中間位置に到達するまでは、一定の高速度で上記ステッピングモータを回転させ、該中間位置に到達したときに回転速度を切り替えて一対の開閉刃が上記全閉位置に到達するまでは該高速度より遅い低速度で上記ステッピングモータを回転させてもよい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲における「aに到達するまではA、aに到達したときにB(に切り替わる)」という表現は、aに到達する瞬間までAの状態が維持され、aに到達した瞬間の後にBの状態になるという意味であり、状態Aと状態Bがaにおいて同時に起こることはない。
【0010】
上記制御手段は、一対の開閉刃が上記内部流路成形部に接触する位置までの距離と全閉位置までの距離とが等しい所定の中間位置に到達するまでは、一対の開閉刃間の把持力が一定の高圧力となるように上記ステッピングモータを回転させ、該中間位置に到達したときに回転速度を切り替えて一対の開閉刃が上記全閉位置に到達するまでは上記把持力が該高圧力より小さい低圧力となるように上記ステッピングモータを回転させてもよい。
【0011】
上記樹脂成形品の原料をアペル(登録商標)とし、上記ヒータによって上記開閉刃を190〜210℃の間の一定温度に加熱してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステッピングモータの回転速度を開閉刃の開閉位置に基づいて制御しながら、ヒータによって熱せられた一対の開閉刃を閉じるので、一対の開閉刃によって成形品の内部流路成形部が切断され、その切断面は綺麗な状態となる。
さらに切断中に内部流路成形部から発生する切断糟は少量となるので、飛散した切断糟によって成形品(キャビティによって成形された部分)が傷付くおそれは小さく、また成形型に付着する切断糟は少量なので成形型の清掃作業が面倒になることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の取出カット装置と金型装置を模式的に表した側面図である。
【図2】取出カット装置の正面図であり、(a)は回転アームが退避位置に位置し、かつ開閉刃が全開位置に位置するときの図、(b)は回転アームが把持位置に位置し、かつ開閉刃が全開位置に位置するときの図である。
【図3】取出カット装置の平面図であり、(a)は回転アームが退避位置に位置し、かつ開閉刃が全開位置に位置するときの図、(b)は回転アームが把持位置に位置し、かつ開閉刃が全開位置に位置するときの図である。
【図4】上型が下型から上方に分離した後に、下部ベース及び上部ベースが取出位置まで前進したときの正面図である。
【図5】回転アームが把持位置まで回転したときの図4と同様の正面図である。
【図6】把持部材が上方に回転したときの図4と同様の正面図である。
【図7】図6の状態となったときの回転アーム、把持部材、及び、成形品の平面図である。
【図8】開閉刃が閉方向に移動して成形品の突部に接触し始めたときの図4と同様の正面図である。
【図9】開閉刃が全閉位置まで移動して突部を切断したときの図4と同様の正面図である。
【図10】取出カット装置を利用した成形品の把持、切断、及び、取出の手順を表したフローチャートである。
【図11】回転アームと開閉刃の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】開閉刃の移動速度(把持力、圧力)を時間軸に沿って表したグラフである。
【図13】成形品の突部の切断面を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明中の前後、左右、及び、上下の方向は図中の矢印方向を基準としている。
金型装置10は、共に金属製の上型(成形型)11と下型(成形型)13を具備している。上型11は上下方向に直線的に移動可能な可動型であり、下型13は床面上に固定した固定型である。上型11の内部には上型11の上面から下面近傍にまで到る管路であるスプルー(内部流路)12Aと、上型11の下面に凹設した平面視円形でスプルー12Aと連通するキャビティ12Bと、が形成してあり、下型13の上面にはキャビティ12Bと略上下対称形状であるキャビティ14が凹設してある。
上型11は図示を省略したスライド支持機構によって上下方向に移動可能に支持されており、スライド支持機構に設けた型用駆動手段の動力を利用することにより、下型13から上方に離間する分離位置(図1の位置)と、その下面が下型13の上面に接触する型締位置(図示略)との間を上下動可能である。
【0015】
続いて取出カット装置(内部流路成形部カット装置)20の詳しい構造について説明する。
取出カット装置20は、金属製の下部ベース21と、下部ベース21の上面に設けた金属製の上部ベース22と、上部ベース22に開閉可能に支持した左右一対の把持手段23と、下部ベース21に左右方向にスライド可能に支持した左右一対の開閉刃35と、を具備している。
下部ベース21及び上部ベース22は床面から上方に離間した位置に固定した前後方向に延びるスライドレール(図示略)にスライド可能に支持してあり、図示を省略した駆動手段(エアシリンダ(又は単軸ロボット)とエアチャックを有する)の動力によって金型装置10から後方に退避した初期位置(図1の実線の位置)と、下型13の直上に位置する取出位置(図1の仮想線の位置)との間を前後方向に直線移動可能である。
【0016】
左右の把持手段23は左右対称であり、後端部が上部ベース22に対して上下方向に延びる回転軸回りに回転可能として支持された側面視略倒立L字形をなす金属製の回転アーム24と把持部材28を具備している。左右の回転アーム24は上記駆動手段の動力によって、互いに左右方向に離間する退避位置(図2(a)、図3(a)の位置)と、互いに接近する把持位置(図2(b)、図3(b)の位置)との間を回転可能である。左右の回転アーム24は互いに同期しながら回転し、平面視において常に左右対称な状態を維持する。
左右の回転アーム24の前端側の下端部に形成した支持部25には、左右方向に延びる支持孔26が貫通孔として形成してある。
左右の支持部25の支持孔26(図5参照)には、金属からなる左右一対の把持部材28が取り付けてある。把持部材28は、支持孔26の内部に隙間をもって挿入した取付片29を有しており、取付片29は前後方向に延びる金属製の回転支持軸27によって支持部25に上下方向に回転可能として支持してある。把持部材28に対して外力を付与しないとき、把持部材28は自身の自重によって下方に回転し取付片29の下面が支持孔26の下面に接触するので、把持部材28はその内側端部が外側端部より下方に位置する初期傾斜位置(図2(a)、図4の位置)に保持される。把持部材28の内側部分には互いに上下に離間する上方保持部30と下方保持部31が形成してある。さらに上方保持部30及び下方保持部31の前後方向の中央部には、開口側端部(内側端部)が断面V字形をなす保持溝32がそれぞれ形成してある。
【0017】
金属からなる左右の開閉刃35の後部には側面視L字形をなす被支持片36が突設してあり、左右の被支持片36の上端部が下部ベース21に対して左右方向にスライド自在に支持してある。左右の開閉刃35(被支持片36を除く部分)は左右の把持部材28の直下に位置しており、下部ベース21に内蔵したステッピングモータ37(図2、図3参照)の動力によって、互いに離間する全開位置(図2〜図6の位置)と、互いに接近する全閉位置(図9の位置)との間を左右方向に直線移動可能である。下部ベース21の内部にはステッピングモータ37と接続する制御手段38と、制御手段38に接続しかつ制御プログラムをインストールしてある記憶手段39とが設けてあり、制御手段38から送信される制御信号(パルス信号)に基づいて移動する。左右の開閉刃35は互いに同期しながら移動し、平面視において常に左右対称な状態を維持する。
左右の開閉刃35の対向縁部には刃部40が形成してある。さらに開閉刃35の内部には制御手段38と電気的に接続する電子温度調節器(ヒータ)41が内蔵してある(図3参照)。
【0018】
続いて金型装置10と取出カット装置20の動作について、図10のフローチャート、図11のタイミングチャート、及び、図12のグラフを参照しながら説明する。
図1に示すように成形動作が開始される前は、上型11は分離位置に位置し、下部ベース21及び上部ベース22は初期位置に位置し、把持手段23は退避位置に位置し、開閉刃35は全開位置に位置している。
まず制御手段38が図示を省略した電源で発生した電力を電子温度調節器41に供給して、左右の開閉刃35(刃部40)を190〜210℃の間の所定温度(例えば200℃)まで加熱し、この温度を維持する(フローチャートのステップ1)。この温度は成形品の原料となる樹脂材料(アペル)の射出装置(後述)による射出時の温度と、樹脂材料(アペル)のガラス転移温度とを考慮して設定した温度であり、射出時の温度とガラス転移温度の中間温度である。
続いて成形動作を行う(フローチャートのステップ2)。具体的には、まず型用駆動手段の駆動力を利用して上型11を型締位置まで下降させ、さらに上型11に接続する射出装置(図示略)がスプルー12Aに成形品の樹脂原料となるアペルの液状材料(樹脂、ガラス材など)を注入する。すると液状材料がスプルー12Aを通ってキャビティ12B及びキャビティ14に充填されるので、上型11と下型13によって一定時間の型締め及び冷却を行うとスプルー12A、キャビティ12B、及びキャビティ14の内部においてアペルの液状材料が固化して成形品Aとなる。この後に型用駆動手段によって上型11を分離位置まで上昇させると、上型11(スプルー12A、キャビティ12B)は成形品Aから分離し、成形品Aが下型13のキャビティ14に取り残される。成形品Aは、キャビティ12B、及びキャビティ14によって成形された、平面視円形をなし最終的に製品(レンズ)となる製品部A1と、スプルー12Aによって成形された、製品部A1の上面から上方に突出する棒状(断面円形)の突部(内部流路成形部)A2と、を有している。この後に下型13に接続したイジェクト装置が成形品Aを上方に押し、成形品Aとキャビティ14の間に隙間を形成する。
【0019】
次いで駆動手段の動力(エアシリンダ(又は単軸ロボット)の動力)を利用して初期位置に位置する下部ベース21及び上部ベース22を取出位置まで直線的に前進させて(図1の仮想線参照。フローチャートのステップ3、ステップ4)、図4に示すように左右の把持部材28及び開閉刃35を突部A2の左右両側に位置させる。
続いて駆動手段の動力(エアチャックの動力)を利用して退避位置に位置する左右の回転アーム24を図3(b)、図5に示す把持位置まで回転させて、左右の把持部材28の上方保持部30の保持溝32のみを突部A2に左右両側から嵌合させる(保持溝32の内面を突部A2の表面に接触させる。フローチャートのステップ5)。すると図5に示すように、左右の回転アーム24から各把持部材28に掛かる突部A2側に向かう水平方向の移動力によって、左右の把持部材28が回転支持軸27を回転軸として持上位置(図6の位置)まで上方に回転する。その結果、上方保持部30の保持溝32によって突部A2(成形品A)が図6に示した距離Lだけ上方に持ち上げられ、かつ左右の把持部材28の下方保持部31の保持溝32が左右両側から突部A2に嵌合する(保持溝32の内面が突部A2の表面に接触する)ので、成形品Aの製品部A1が下型13のキャビティ14から上方に脱出する。
【0020】
続いて制御手段38が、記憶手段39にインストールされた制御プログラム及び上記電源の電力に基づいてステッピングモータ37を制御しながら回転させる。
まず制御手段38がステッピングモータ37に対して所定時間間隔でパルス信号(正転信号)を断続的に送信し、ステッピングモータ37を所定の速度で正転させる(フローチャートのステップ6)。ステッピングモータ37の駆動力を受けた左右の開閉刃35は全開位置から全閉位置側に向かって移動速度(把持力。左右の開閉刃35から突部A2に及ぶ圧力)を徐々に高めながらスライドし、各刃部40が突部A2に接触し始めたときに開閉刃35の移動速度(把持力)は最高速度(100%)に達する(図8、及び、図12の点A参照)。開閉刃35は熱によって突部A2を溶かしながら全閉位置側にスライドし、開閉刃35が中間位置(各刃部40が突部A2に接触し始めたときの位置までの距離と、後述する全閉位置までの距離とが等しくなる位置。図12の点B参照。)に到達するまでこの移動速度を維持する(フローチャートのステップ7)。
そして左右の刃部40が上記中間位置に到達したときに(左右の刃部40が突部A2を所定の中間深さまで切断したときに)、制御手段38はステッピングモータ37に対して送るパルス信号の時間間隔を僅かに長くする(単位時間当たりのパルス数を減じる。図12の点B参照)。すると各刃部40(開閉刃35)の移動速度(把持力)が80%に低下し(フローチャートのステップ8)、各開閉刃35はこの移動速度(把持力)を維持したまま全閉位置側にさらにスライドする。
制御手段38は開閉刃35が閉じる全閉位置(一対の開閉刃35の間には0.02mmの微小隙間が形成される)に到達するまでこの時間間隔でパルス信号をステッピングモータ37に送信し続け(フローチャートのステップ9)、開閉刃35が全閉位置に到達したときにステッピングモータ37に対するパルス信号の送信を停止する(ステッピングモータ37の回転速度及び一対の開閉刃35間の把持力をゼロにする)。左右の開閉刃35が全閉位置に到達すると(図9、及び、図12の点C参照)、左右の開閉刃35(刃部40)によって突部A2が完全に切断される。
左右の開閉刃35が突部A2を切断すると、突部A2の切断箇所より下方に位置する部分と製品部A1は自重によって落下するので、製品部A1が下型13のキャビティ14内に再度位置する(図9参照)。
続いて制御手段38はステッピングモータ37に対してパルス信号(逆転信号)を送り、左右の開閉刃35を全開位置に復帰させる(フローチャートのステップ10)。
【0021】
次いで、駆動手段の動力(エアシリンダ(又は単軸ロボット)の動力)によって取出位置に位置する下部ベース21及び上部ベース22が初期位置まで後退する(フローチャートのステップ11)。さらに駆動手段の動力(エアチャックの動力)の動力によって左右の回転アーム24が退避位置まで回転する(フローチャートのステップ12)。すると左右の把持部材28(保持溝32)による突部A2の把持が解除されるので、成形品Aが自由落下して下方に配設してある成形品収納箱(図示略)に回収される。成形品収納箱に回収された成形品Aは、その突部A2を切り落とし、製品部A1の表面をさらに加工(研磨加工若しくはコーティングなど)することにより最終的な製品であるレンズとなる。また持上位置に位置していた左右の把持部材28が自重によって初期傾斜位置まで自動的に回転復帰する。
【0022】
図13は成形品収納箱から取り出した突部A2のカット面を示している。この図面から明らかなように、190〜210℃に加熱されかつ上記態様で制御(開閉刃35の開閉方向位置に基づいてステッピングモータ37の回転速度(開閉刃35の移動速度。一対の開閉刃35間の把持力)を調整する制御)されながらスライドする開閉刃35(刃部40)によって切断された突部A2の切断面は綺麗な状態となる。
さらに切断作業中(図12の点A〜点Cの間)に突部A2から発生する切断糟は少量となるので、飛散した切断糟によって製品部A1が傷付くおそれは小さい。さらに上型11及び下型13に切断糟が付着するものの、その付着量は少量なので、成形作業の終了後に行う上型11及び下型13の清掃作業が面倒になることはない。
さらに樹脂材料(アペル)の特性を考慮した上で電子温度調節器41による開閉刃35の加熱温度を適正な温度(190〜210℃)に設定しているので、切断中に突部A2が開閉刃35(刃部40)に溶着することがない。なお出願人の実験によると、樹脂材料をアペルとした場合に開閉刃35の温度を190℃より低くすると、突部A2の切断面に残る破断跡が大きくなってしまう。一方、開閉刃35の温度を210℃より高くすると突部A2が開閉刃35(刃部40)に溶着し易くなるため(温度が上昇するにつれてより溶着し易くなる)、開閉刃35の切断能力が低下する。そのため突部A2の切断面に大きな溶断跡が残ってしまい、さらに開閉刃35を全開位置側へ移動復帰させるときに切断した突部A2(の上部)が開閉刃35(刃部40)に付着するおそれがある。
またステッピングモータ37を(フィードバックを行わない)上記制御により制御しているので、制御手段38を構成する回路の構成を簡単にすることが可能である。
【0023】
以上本実施形態を利用して本発明を説明したが、本発明は様々な変形を施しながら実施可能である。
例えば、アペル以外の樹脂材料を原料とする樹脂成形品に本発明を適用してもよい。その際、樹脂材料に応じて電子温度調節器41による開閉刃35の加熱温度を変更する。例えば、樹脂材料がOKP4(ガラス転移温度:125℃、射出装置による射出時の温度:240℃)(登録商標)の場合は、加熱温度を170〜190℃に設定し、成形作業中はこの範囲内の所定温度(例えば180℃)に維持する。このようにすれば、OKP4を使用した場合であってもされた突部A2の切断面を綺麗にすることが可能であり、かつ発生する切断糟を少量に抑えることが可能になる。さらに突部A2に大きな破断跡が生じたり、突部A2が開閉刃35(刃部40)に対して溶着するのを回避できる。
【0024】
さらにステッピングモータ37の代わりのモータで開閉刃35を駆動し、この開閉刃35の位置を取出カット装置20に設けた位置センサで常に検出し、モータの回転(正転)速度(一対の開閉刃35間の把持力)を開閉刃35の開閉方向位置に基づいて制御してもよい。
また金型装置10の一対の型の接離方向と、一対の回転アーム24、開閉刃35の配置方向(移動方向)は上記実施形態のものには限定されない。例えば、金型装置10を水平方向に接離可能な一対の型により構成し、かつ、上下に並べた一対の回転アーム24、開閉刃35を上下方向に移動させてもよい。
さらにレンズ以外の成形品を成形する場合にも本発明を適用できるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
10 金型装置
11 上型(成形型)
12A スプルー(内部流路)
12B キャビティ
13 下型(成形型)
14 キャビティ
20 取出カット装置(内部流路成形部カット装置)
21 下部ベース
22 上部ベース
23 把持手段
24 回転アーム
25 支持部
26 支持孔
27 回転支持軸
28 把持部材
29 取付片
30 上方保持部
31 下方保持部
32 保持溝
35 開閉刃
36 被支持片
37 ステッピングモータ
38 制御手段
39 記憶手段
40 刃部
41 電子温度調節器(ヒータ)
A 成形品
A1 製品部
A2 突部(内部流路成形部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹設したキャビティと、該キャビティと連通する内部流路とを備える成形型より離型した樹脂成形品から、上記内部流路によって成形された内部流路成形部を切断するための内部流路成形部カット装置において、
開閉可能で、閉じることにより両者の間に位置する上記内部流路成形部に接触する一対の開閉刃と、
該開閉刃に熱を付与するヒータと、
上記開閉刃を開閉動作させるステッピングモータと、
上記ステッピングモータの回転速度を、上記開閉刃の開閉位置に基づいて制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする樹脂成形品の内部流路成形部カット装置。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂成形品の内部流路成形部カット装置において、
上記制御手段は、
一対の開閉刃が上記内部流路成形部に接触する位置までの距離と全閉位置までの距離とが等しい所定の中間位置に到達するまでは、一定の高速度で上記ステッピングモータを回転させ、該中間位置に到達したときに回転速度を切り替えて一対の開閉刃が上記全閉位置に到達するまでは該高速度より遅い低速度で上記ステッピングモータを回転させる樹脂成形品の内部流路成形部カット装置。
【請求項3】
請求項1記載の樹脂成形品の内部流路成形部カット装置において、
上記制御手段は、
一対の開閉刃が上記内部流路成形部に接触する位置までの距離と全閉位置までの距離とが等しい所定の中間位置に到達するまでは、一対の開閉刃間の把持力が一定の高圧力となるように上記ステッピングモータを回転させ、該中間位置に到達したときに回転速度を切り替えて、一対の開閉刃が上記全閉位置に到達するまでは上記把持力が該高圧力より小さい低圧力となるように上記ステッピングモータを回転させる樹脂成形品の内部流路成形部カット装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の樹脂成形品の内部流路成形部カット装置において、
上記樹脂成形品の原料をアペルとし、
上記ヒータによって上記開閉刃を190〜210℃の間の一定温度に加熱する樹脂成形品の内部流路成形部カット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−218265(P2012−218265A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85234(P2011−85234)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】