説明

樹脂成形品の端末処理装置及び端末処理方法

【課題】第一延出部と第二延出部の各末端側部位が、十分な意匠性を確保しつつ、有利に切断され得る樹脂成形品の端末処理技術を提供する。
【解決手段】保持手段20の第一及び第二裏当て面36a,36bに樹脂成形品10の第一及び第二延出部14a,14bを接触、保持させた状態下で、第一及び第二切断操作進行手段にて、第一及び第二切断刃22aを該第一及び第二延出部14a,14bに押し付けて、食い込ませることにより、該第一及び第二延出部14a,14bの末端部位の切断操作を進行せしめる一方、切断操作が行われていない該第一及び第二延出部14a,14bのうちの一方に押圧力が加えられたときに、該一方の延出部14a,14bが、撓み変形して、第一及び第二裏当て面36a,36bから離間するのを許容し得るように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の端末処理装置及び端末処理方法並びに樹脂成形品に係り、特に、シート状の樹脂成形品の端部に屈曲して設けられた延出部の末端側部位を切断し、除去することによって、樹脂成形品の端末部を処理する装置の改良と、そのような樹脂成形品の端末部の処理を有利に行う方法と、かかる処理方法によって端末部が処理されてなる樹脂成形品とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面が意匠面とされたシート状の樹脂成形品が、各種の部品や製品として、或いはそれらの表皮材等として、一般に利用されてきており、例えば、自動車等の車両用内装部品にも多く使用されている。
【0003】
ところで、このシート状の樹脂成形品が、その端部に、意匠面とは反対の裏面側に向かって屈曲して延びるように一体形成されたフランジ部等の延出部を有する場合、かかる延出部の末端側部位を切断し、除去することによって、樹脂成形品の端末部の処理を行うことがある。例えば、シート状の樹脂成形品が、樹脂製のシート材に対して真空成形を行って得られたものである場合には、かかる真空成形時に、所定の保持装置等に保持されるシート材の外周部が、樹脂成形品の全周に一体形成されたフランジ部の末端側部位となるため、そのような末端側部位が、樹脂成形品から切除されることとなる。
【0004】
このような樹脂成形品の端末部の処理は、一般に、(ア)シェア構造を有する上型と下型とを有し、剪断作用によって切断を行うプレス装置、(イ)NCカッター等の切削加工用の工作機械、(ウ)樹脂成形品を位置固定に保持する保持装置と、この保持装置に保持された樹脂成形品の延出部の延出方向中間部に対して側方から押し付けられて、食い込まされることにより、かかる延出部の末端側部位を切断する切断刃とを備えた端末処理装置等を用いて、実施されている。
【0005】
ところが、それら従来の樹脂成形品の端末処理に用いられる装置のうち、(ア)の装置を用いた場合には、かかる装置が、剪断作用にて樹脂成形品の切断を行うものであるため、切断面に、樹脂成形品を引きちぎったときに生ずるような、所謂糸バリが発生して、美麗な切断面を得ることが出来なかった。また、(イ)の装置を使用する際には、樹脂成形品の切断面が粗面化して、平滑度の低いものとなってしまうことが避けられなかった。それ故、それら(ア)の装置や(イ)の装置は、切断面も意匠面とされる樹脂成形品の末端処理に際して、到底、採用され得るものではなかったのである。
【0006】
一方、(ウ)の装置を用いた際には、糸バリ等が生ぜしめられることがなく、しかも、平滑度の高い切断面を得ることが出来る。また、例えば、下記特許文献1及び2に示されるように、樹脂成形品が基材と表皮材との積層構造体である場合にも、基材の切断面に、表皮材が巻き付けられたり、固着されたりすることで、比較的に美麗な切断面が得られるようになる。
【0007】
しかしながら、本発明者等が、(ウ)の装置、つまり、切断刃によって延出部を押し切る、所謂押切りタイプの従来装置について、様々な角度から検討を加えたところ、表面が意匠面とされたシート状の樹脂成形品の端部に、裏面側に屈曲し、且つ互いに交差する方向に延びるように一体形成されて、角部を形成する第一延出部と第二延出部のそれぞれの末端側部位を切断し、除去するに際して、従来の押し切りタイプの末端処理装置を用いた場合、以下の如き問題が生ずることが、判明した。
【0008】
すなわち、かかる従来の末端処理装置では、図11に示されるように、一般に、保持装置100が、互いに接近乃至離隔可能とされた第一保持型102と第二保持型104とを有している。そして、それら第一及び第二保持型102,104が互いに接近せしめられることにより、第一保持型102と第二保持型104との間に位置するシート状の樹脂成形品106が、その裏面108と意匠面110とを第一及び第二保持型102,104にそれぞれ接触させた状態で、厚さ方向の両側から第一保持型102と第二保持型104とにて挟まれて、保持装置100に保持されるようになっている。
【0009】
また、図12に示されるように、樹脂成形品106の端部に、前記せる如き第一延出部112と第二延出部114とが一体形成されている(ここでは、長手矩形形状を呈する樹脂成形品10の長さ方向の両側に位置する二つの端部に、第一延出部112が、それぞれ一つずつ設けられる一方、幅方向の両側に位置する二つの端部に、第二延出部114が、それぞれ一つずつ設けられている)場合には、それら第一延出部112と第二延出部114も、それぞれの裏面108と意匠面110とを第一及び第二保持型102,104にそれぞれ接触させた状態で、厚さ方向の両側から第一保持型102と第二保持型104とにて挟持されて、保持されるようになる。
【0010】
そして、そのような従来の末端処理装置にあっては、保持装置100による樹脂成形品106の保持状態下で、第一延出部112と第二延出部114のそれぞれの末端側部位を切断する際に、図12に示される如く、例えば、先ず、第一延出部112に刃先を向けて位置せしめられた第一切断刃116(ここでは、二つの第一切断刃116,116が、二つの第一延出部112,112のそれぞれに刃先を向けて位置せしめられている)が、第一延出部112の延出方向中間部の意匠面110に押し付けられて、食い込まされることにより、かかる第一延出部112の末端側部位が切断される。その後、第二延出部114に刃先を向けて位置せしめられた切断刃118(ここでは、二つの第二切断刃118,118が、二つの第二延出部114,114のそれぞれに刃先を向けて位置せしめられている)が、第二延出部114の延出方向中間部の意匠面110に押し付けられて、食い込まされることにより、第二延出部114の末端側部位が切断されることとなる。
【0011】
そして、そのような第一延出部112の末端側部位の切断操作の進行中には、図13に示される如く、第一延出部112の裏面108が第一保持型102に接触せしめられているため、第一延出部112が、第一切断刃116と第一保持型102との間に挟まれるようになり、以て、第一切断刃116が第一延出部112に確実に食い込んで、第一の延出部112の末端側部位がスムーズに切断される。
【0012】
一方、第二延出部114は、第一延出部112の末端側部位の切断操作の進行中に、第一切断刃116にて、延出方向(ここでは、樹脂成形品106の長さ方向)に押圧される。しかしながら、このとき、第二延出部114が、その厚さ方向において、第一保持型102と第二保持型104とにて挟持されているだけであるところから、かかる第二延出部114に対して、第一切断刃116が十分に食い込まず、そのために、第二延出部114が、第一切断刃116にて、第一延出部112の厚さ分だけ押し込まれる。そして、それによって、第二延出部114が、その延出方向において、第一保持型102と第二保持型104との間で押し縮められるようになり、その結果、第二延出部114の第一延出部112側端部120に、皺やクラックが生ずることがあった。そして、そうなった場合には、第一及び第二延出部112,114の末端側部位が切断されて、端末処理された樹脂成形品106の意匠性が著しく低下するといった深刻な問題が惹起されることとなるのである。
【0013】
【特許文献1】特開昭63−199628号公報
【特許文献2】特開昭63−91225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、シート状の樹脂成形品の端部に、裏面側に屈曲し、且つ互いに交差する方向に延びるように一体形成されて、角部を形成する第一延出部と第二延出部のそれぞれの末端側部位の切断に際して、第一延出部や第二延出部の基部側部位への皺やクラック等の発生が効果的に防止され、以て、第一延出部と第二延出部の各末端側部位が切断されて、端末処理された樹脂製品が、十分な意匠性を確保しつつ、有利に得られるようにした樹脂成形品の端末処理装置の改良された構造を提供することにある。また、本発明にあっては、意匠性を損なうことなく、樹脂成形品の端末部の処理を有利に行うことが出来る樹脂成形品の端末処理方法を提供すること、更には、そのような端末処理方法によって、端末部が有利に処理されてなる樹脂成形品を提供することをも、その解決課題とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そして、本発明にあっては、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、有利に実施され得るものであり、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいても採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示乃至は示唆される発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0016】
<1> 表面が意匠面とされたシート状の樹脂成形品の端部に、裏面側に屈曲し、且つ互いに交差する方向に延びるように一体形成されて、角部を形成する第一延出部と第二延出部のそれぞれの末端側部位を切断し、除去することによって、該樹脂成形品の端末部を処理する装置であって、(a)前記樹脂成形品の前記第一延出部の裏面に接触する第一裏当て面と、前記第二延出部の裏面に接触する第二裏当て面とを有し、それら第一裏当て面と第二裏当て面とに対して、該第一延出部と該第二延出部のそれぞれの裏面を接触させた状態で、該樹脂成形品を位置固定に保持すると共に、かかる樹脂成形品の保持状態下において、該第一延出部と該第二延出部のうちの何れか一方の延出部に対して、該一方の延出部の延出方向に押圧力が加えられたときに、該一方の延出部が撓み変形して、該一方の延出部が接触する該第一裏当て面又は該第二裏当て面から、該一方の延出部の少なくとも一部が離間するのを許容し得るように構成された保持手段と、(b)刃先が前記保持手段の前記第一裏当て面に向けて配された状態で、該第一裏当て面に対して、それと交差する方向において接近又は離隔可能に位置せしめられた第一切断刃と、(c)刃先が前記保持手段の前記第二裏当て面に向けて配された状態で、該第二裏当て面に対して、それと交差する方向において接近又は離隔可能に位置せしめられた第二切断刃と、(d)前記樹脂成形品が前記保持手段に保持された状態下で、前記第一切断刃を、該保持手段の前記第一裏当て面に対して接近させることにより、該第一裏当て面に接触して位置せしめられた前記第一延出部の意匠面の延出方向中間部に、該第一切断刃を押し付けて、食い込ませることによって、該第一切断刃による該第一延出部の前記末端側部位の切断操作を進行せしめる第一切断操作進行手段と、(e)前記樹脂成形品が前記保持手段に保持された状態下で、前記第一切断刃による前記第一延出部の末端側部位の切断操作の開始前又は終了後に、前記第二切断刃を、該保持手段の前記第二裏当て面に対して接近させることにより、該第二裏当て面に接触して位置せしめられた前記第二延出部の意匠面の延出方向中間部に、該第二切断刃を押し付けて、食い込ませることによって、該第二切断刃による該第二延出部の前記末端側部位の切断操作を進行せしめる第二切断操作進行手段とを含むことを特徴とする樹脂成形品の端末処理装置。
【0017】
<2> 前記第一切断操作進行手段による前記第一裏当て面への接近により、前記第一延出部の中間部に押し付けられて、食い込んだ前記第一切断刃が、該第一裏当て面に対する当接直前の位置で、且つ該第一切断刃と該第一裏当て面との間に位置する該第一延出部の未切断の裏面側部分が該第一切断刃の押付け力にて圧縮破壊せしめられる位置にまで到達したときに、該第一切断操作進行手段による該第一切断刃の該第一裏当て面への接近を停止させて、該第一切断刃による該第一延出部の前記末端側部位の切断操作を停止せしめる第一切断操作停止手段が、更に設けられると共に、前記第一切断操作進行手段による前記第二裏当て面への接近により、前記第二延出部の中間部に押し付けられて、食い込んだ前記第二切断刃が、該第二裏当て面に対する当接直前の位置で、且つ該第二切断刃と該第二裏当て面との間に位置する該第二延出部の未切断の裏面側部分が該第二切断刃の押付け力にて圧縮破壊せしめられる位置にまで到達したときに、該第二切断操作進行手段による該第二切断刃の該第二裏当て面への接近を停止させて、該第二切断刃による該第二延出部の前記末端側部位の切断操作を停止せしめる第二切断操作停止手段が、更に設けられている上記態様<1>に記載の樹脂成形品の端末処理装置。
【0018】
<3> 前記保持手段が、前記樹脂成形品における前記第一延出部と前記第二延出部とを除く部位の裏面に接触して、該樹脂成形品を支持する支持面と、該支持面において開口する複数の吸引孔とを備えた保持治具と、該保持治具の複数の吸引孔を通じて吸引を行う吸引機構とを更に有し、該樹脂成形品が該保持治具の支持面に支持された状態下で、該複数の吸引孔を通じての該吸引機構の吸引が行われることにより、該樹脂成形品が該支持面に吸着されて、位置固定に保持されるようになっている上記態様<1>又は<2>に記載の樹脂成形品の端末処理装置。
【0019】
<4> 前記第一切断刃が、第一ガイドプレート上に移動可能に配置されると共に、それら第一切断刃と第一ガイドプレートのうちの少なくとも何れか一方に、前記保持手段の前記第一裏当て面と交差する方向に延びる第一ガイド溝が設けられ、更に、それらのうちの少なくとも何れか他方に、該第一ガイド溝内に摺動可能に突入する第一摺動突起が設けられて、該第一ガイド溝に対する該第一摺動突起の摺動により、該第一切断刃が、該第一ガイド溝に案内されつつ、前記第一切断操作進行手段にて、該第一裏当て面に接近せしめられるようになっている上記態様<1>乃至<3>のうちの何れか一つに記載の樹脂成形品の端末処理装置。
【0020】
<5> 前記第二切断刃が、第二ガイドプレート上に移動可能に配置されると共に、それら第二切断刃と第二ガイドプレートのうちの少なくとも何れか一方に、前記保持手段の前記第二裏当て面と交差する方向に延びる第二ガイド溝が設けられ、更に、それらのうちの少なくとも何れか他方に、該第二ガイド溝内に摺動可能に突入する第二摺動突起が設けられて、該第二ガイド溝に対する該第二摺動突起の摺動により、該第二切断刃が、該第二ガイド溝に案内されつつ、前記第二切断操作進行手段にて、該第二裏当て面に接近せしめられるようになっている上記態様<1>乃至<4>のうちの何れか一つに記載の樹脂成形品の端末処理装置。
【0021】
<6> 表面が意匠面とされたシート状の樹脂成形品の端部に、裏面側に屈曲し、且つ互いに交差する方向に延びるように一体形成されて、角部を形成する第一延出部と第二延出部のそれぞれの末端側部位を切断し、除去することによって、該樹脂成形品の端末部を処理する方法であって、(a)互いに交差する方向に延び出して角部を形成する第一裏当て面と第二裏当て面とを有する保持手段に対して、前記樹脂成形品を、前記第一延出部の裏面において該第一裏当て面に接触させ、且つ前記第二延出部の裏面において該第二裏当て面に接触させた状態で、位置固定に保持させる工程と、(b)前記保持手段に保持された前記樹脂成形品における前記第一延出部の意匠面の延出方向中間部に、第一切断刃を押し付けて、食い込ませることにより、該第一切断刃による該第一延出部の末端側部位の切断操作を進行せしめると共に、かかる切断操作の進行中に、該第一延出部に対する該第一切断刃の押付けに伴って、該第一切断刃により、前記第二延出部に対して、その延出方向に押圧力が加えられたときに、該第二延出部を撓み変形させる工程と、(c)前記第一切断刃による前記第一延出部の末端側部位の切断操作の開始前又は終了後において、前記保持手段に保持された前記樹脂成形品における前記第二延出部の意匠面の延出方向中間部に、第二切断刃を押し付けて、食い込ませることにより、該第二切断刃による該第二延出部の末端側部位の切断操作を進行せしめると共に、かかる切断操作の進行中に、該第二延出部に対する該第二切断刃の押付けに伴って、該第二切断刃により、前記第一延出部に対して、その延出方向に押圧力が加えられたときに、該第一延出部を撓み変形させる工程とを含むことを特徴とする樹脂成形品の端末処理方法。
【0022】
<7> 前記第一延出部の中間部に食い込んだ前記第一切断刃が前記保持手段の前記第一裏当て面に当接する直前において、該第一切断刃と該第一裏当て面との間に位置する該第一延出部の未切断の裏面側部分が、該第一切断刃の押付け力にて圧縮破壊せしめられたときに、該第一延出部の中間部への該第一切断刃の押付けを停止せしめて、該第一切断刃による該第一延出部の末端側部位の切断操作を停止する工程と、該圧縮破壊された第一延出部の未切断の裏面側部分を、該第一切断刃による該第一延出部の末端側部位の切断操作の停止後に、該第一切断刃を用いることなく切り割ることにより、該第一延出部の末端側部位を切断し、除去する工程と、前記第二延出部の中間部に食い込んだ前記第二切断刃が前記保持手段の前記第二裏当て面に当接する直前において、該第二切断刃と該第二裏当て面との間に位置する該第二延出部の未切断の裏面側部分が、該第二切断刃の押付け力にて圧縮破壊せしめられたときに、該第二延出部の中間部への該第二切断刃の押付けを停止せしめて、該第二切断刃による該第二延出部の末端側部位の切断操作を停止する工程と、該圧縮破壊された該第二延出部の未切断の裏面側部分を、該第二切断刃による該第二延出部の末端側部位の切断操作の停止後に、該第二切断刃を用いることなく切り割ることにより、該第二延出部の末端側部位を切断し、除去する工程とを、更に含む上記態様<6>に記載の樹脂成形品の端末処理方法。
【0023】
<8> 上記態様<6>又は<7>に記載の樹脂成形品の端末処理方法によって、前記第一延出部と前記第二延出部のそれぞれの末端側部位が切断されて、除去されることにより、端末部が処理されていることを特徴とする樹脂成形品。
【発明の効果】
【0024】
すなわち、本発明に従う樹脂成形品の端末処理装置にあっては、例えば、第一切断刃による第一延出部の末端側部位の切断操作が、第二切断刃による第二延出部の末端側部位の切断操作よりも先に実施される場合、かかる第一延出部の末端側部位の切断操作の進行中に、第二延出部が、その延出方向に、第一切断刃にて押圧されたときに、第二延出部が撓み変形して、保持手段の第二裏当て面から、第二延出部の一部又は全部が離間せしめられるようになる。
【0025】
それ故、第一延出部の末端側部位の切断操作の進行中に、第二延出部を押圧する第一切断刃が、第二延出部に十分に食い込まず、そのために、第二延出部が、第一切断刃にて、第一延出部の厚さ分だけ押し込まれることがあっても、第二延出部の一部又は全部が、第二裏当て面から離間するようにして、容易に撓み変形せしめられる。そして、それにより、第二延出部が、第一切断刃にて、延出方向に押し縮められるようなことが有利に回避され、以て、第二延出部の第一延出部側端部の基部側部位に、皺やクラックが発生することが、極めて効果的に防止され得ることとなる。
【0026】
また、第二切断刃による第二延出部の末端側部位の切断操作が、第一切断刃による第一延出部の末端側部位の切断操作よりも先に実施される場合にあっても、上記と同様に、第二延出部の末端側部位の切断操作の進行中に、第一延出部が、第二切断刃の押圧力によって押し縮められ、そのために、第一延出部の第二延出部側端部の基部側部位に、皺やクラックが発生するようなことが、極めて効果的に防止され得る。
【0027】
従って、かくの如き本発明に従う樹脂成形品の端末処理装置を用いれば、第一延出部や第二延出部の基部側部位に皺やクラック等の発生させることなく、それら第一延出部と第二延出部のそれぞれの末端側部位を確実に切断することが出来る。そして、その結果として、第一延出部と第二延出部の各末端側部位が切断されて、端末処理された樹脂製品が、十分な意匠性を確保しつつ、極めて有利に得られることとなるのである。
【0028】
そして、本発明に従う樹脂成形品の端末処理方法にあっても、本発明に従う樹脂成形品の端末処理装置を用いることによって得られる優れた作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得るのである。
【0029】
また、本発明に従う樹脂成形品にあっては、第一延出部や第二延出部の基部側部位に皺やクラック等が発生せしめられることなく、それら第一及び第二延出部のそれぞれの末端側部位が有利に切断され、以て、第一延出部と第二延出部のそれぞれの端末部において、十分な意匠性が、有利に確保され得るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0031】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有する端末処理装置を用いて、端末処理が施された樹脂成形品としての、自動車用内装部品の一部を構成する意匠パネルが、その斜視形態と縦断面形態とにおいて、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、意匠パネル10は、所定厚さを有する樹脂製のシート材からなり、全体として、長手矩形の筐体形状を呈している。
【0032】
すなわち、この意匠パネル10は、長手矩形の天板部12を有し、また、かかる天板部12の四つの辺部のそれぞれに対して、厚さ方向の一方側に所定高さで突出し、且つ各辺部の長さ方向に連続して延びる延出部としてのフランジ部14a,14b,14c,14d(図1には、二つのみを、また図2には、三つのみを示した)が、それぞれ一体的に立設されて、構成されている。換言すれば、意匠パネル10にあっては、天板部12と、それの長さ方向(図2の左右方向)と幅方向(図2の紙面に垂直な方向)のそれぞれの端部に、厚さ方向の一方側(図2の下側)に向かって直角に屈曲して延びる四つのフランジ部14a〜dとを一体的に有してなっている。
【0033】
そして、それら四つのフランジ部14a〜dのうち、天板部12の長さ方向の両側に位置する樹脂成形品10の二つ端部に、互いに対向して設けられた二つのフランジ部14a,14cが、それぞれ、第一延出部としての第一フランジ部14a,14bとされている一方、天板部12の幅方向の両側に位置する樹脂成形品10の二つの端部に、互いに対向して設けられた二つのフランジ部14b,14d(図1参照)が、それぞれ、第二延出部としての第二フランジ部14b,14dとされている。
【0034】
かくして、意匠パネル10においては、天板部12の四つの辺部のうち、互いに隣り合う二つの辺部に対して、第一フランジ部14a(14c)と第二フランジ部14b(14d)とが、厚さ方向の一方側に突出し、且つ互いに交差する方向に延びるように一体形成されて、それら第一フランジ部14a(14c)と第二フランジ部14b(14d)との間に、角部15が、それぞれ形成されている。また、ここでは、各フランジ部14a〜dの天板部12からの屈曲側となる厚さ方向の一方の面が裏面16とされている一方、かかる裏面16とは反対側の表面の全面(天板部12の表面の全面と各フランジ部14a〜dの表面の全面)が、意匠面18とされている。
【0035】
そして、このような意匠パネル10は、例えば、天板部12よりも大きな矩形の1枚の樹脂シートに対する真空成形が行われることにより、天板部14と二つの第一フランジ部14a,14cと二つの第二フランジ部14b,14dとを一体的に有する筐体形状において成形され、その後、各フランジ部14a〜dのうち、真空成形の実施時において所定の保持装置に保持されていた部分を含む末端側部位を切断し、除去する端末処理が実施されることによって、作製されているのである。
【0036】
ところで、かくの如き意匠パネル10の端末処理の実施に際しては、例えば、図3及び図4に示される端末処理装置が用いられる。
【0037】
すなわち、図3及び図4から明らかなように、端末処理装置は、意匠パネル10を保持する保持治具20と、意匠パネル10の第一フランジ部14a,14cと第二フランジ部14b,14dのそれぞれの末端側部位を切断するための四つの切断刃22a,22b,22c,22dとを有している。
【0038】
より具体的には、保持治具20は、長手矩形の厚肉平板乃至はブロック体からなる、ベース24を有し、かかるベース24の上面には、保持体26が固定されている。この保持体26は、全体として、下方に向かって開口する長手矩形の筐体形状を呈し、長手矩形平板状の上側底壁部28と、かかる上側底壁部28の下面の四つの辺部(外周部)からそれぞれ一体的に延び出す、平板状の四つの側壁部30a,30b,30c,30dとにて、構成されている。
【0039】
また、かかる保持体26にあっては、上側底壁部28の上面が、意匠パネル10の天板部12の裏面16と略同一の大きさ及び形状を有する支持面32とされている。そして、この支持面32に対して、意匠パネル10が、天板部12の裏面16において重ね合わされ、且つ四つのフランジ部14a〜dを垂下せしめた状態で載置されることにより、かかる支持面32(上側底壁部28)において、意匠パネル10を支持し得るようになっている(図5参照)。また、そのような上側底壁部28の外周部には、それを上下方向に貫通する多数の吸引孔34が、周方向に一定の距離を隔てて、多数形成されている。
【0040】
一方、保持体26の四つの側壁部30a〜dは、その外面が、意匠パネル10の支持面32(上側底壁部28)への支持状態下で垂下された四つのフランジ部14a〜dの裏面16にそれぞれ接触する裏当て面36a,36b,36c,36dとされている。そして、それら四つの裏当て面36a〜dのうち、上側底壁部28の長さ方向に対向位置する二つのものが、支持面32に支持された意匠パネル10の二つの第一フランジ部14a,14cがそれぞれ接触する第一裏当て面36a,36cとされている一方、上側底壁部28の幅方向に対向位置する残りの二つのものが、二つの第二フランジ部14b,14dがそれぞれ接触する第二裏当て面36b,36dとされている(図5参照)。
【0041】
そして、このような保持体26が、上側底壁部28から延び出す四つの側壁部30a〜dの先端面を、ベース24の上面に重ね合わせて、それら上側底壁部28の下面と四つの側壁部30a〜dの各内面とベース24の下面とにて、所定容積の内側空間38を形成せしめた状態で、ベース24上の略中央部に固定されている。また、かかる内側空間38は、保持体26の上側底壁部28に設けられた多数の吸引孔34を通じて、外部に連通せしめられており、更に、ベース24の上面の中央部と一つの側面とにおいて開口して、ベース24の内部に設けられた連通路40を通じても、外部に連通せしめられている。更にまた、この連通路40には、一端部が、図示しない吸引ポンプ等の吸引装置に接続された吸引パイプ42が、その他端部において接続されている。これにより、図示しない吸引装置の作動に伴って、保持体26の多数の吸引孔34を通じての吸引が行われるようになっている。
【0042】
かくして、本実施形態の端末処理装置においては、図5に示されるように、意匠パネル10が、天板部12の裏面16を保持体26の支持面32に重ね合わせると共に、第一及び第二の四つのフランジ部14a〜dの裏面16を保持体26の第一及び第二の四つの裏当て面36a〜dにそれぞれ接触させて、保持体26の上側底壁部28に支持された状態下で、図示しない吸引装置が作動せしめられることにより、かかる意匠パネル10の天板部12が、保持体26の上側底壁部28に吸着され、以て、意匠パネル10が、保持体26(保持治具20)に対して位置固定に保持されるようになっている。なお、このような意匠パネル10の保持体26に対する保持状態下で、第一及び第二フランジ部14a〜dは、保持体26に吸着されることなく、非拘束とされている。このことから明らかなように、ここでは、ベース24内部に設けられた連通路40と吸引パイプ42と図示しない吸引装置とにて、吸引機構が構成され、また、そのような吸引機構と保持治具20とにて、保持手段が構成されている。また、この保持体26による意匠パネル10の保持状態は、図示しない吸引装置の作動を停止することによって、容易に解除され得るようになっている。
【0043】
一方、図3及び図4から明らかなように、四つの切断刃22a〜dは、何れも、狭幅で長手の薄肉平板形状を有し、その幅方向一方側の端部に、刃先(切れ刃)が、略全長に亘って連続して延びるように形成されている。また、各切断刃22a〜dにおいては、その刃先の長さが、意匠パネル10の各フランジ部14a〜dの長さ(天板部12の各辺部の長さに相当する)よりも所定寸法長くされており、長さ方向の両側端部に、四つの切断刃22a〜dのうちの一つにて切断される一つのフランジ部(例えばフランジ部14a)に隣り合う二つのフランジ部(例えばフランジ部14b,14d)の長さ方向端部を切り込む切込み用突起44が、それぞれ設けられている。
【0044】
そして、ここでは、そのような四つの切断刃22a〜dが、保持治具20のベース24上において、その中央部に固定された保持体26の周りを取り囲むように配されている。つまり、四つの切断刃22a〜dが、保持体26の側面となる四つの裏当て面36a〜dのそれぞれと所定距離を隔てた位置で、刃先を各裏当て面36a〜dに向けつつ、それら各裏当て面36a〜dと平行に延びるように配置されている。また、かある四つの切断刃22a〜dのうち、二つの第一裏当て面36a,36cに対してそれぞれ刃先を向けて位置せしめられた二つのものが、第一切断刃22a,22cとされている一方、二つの第二裏当て面36b,36dに対してそれぞれ刃先を向けて位置せしめられた残りの二つのものが、第二切断刃22b,22dとされている。
【0045】
そして、そのような配置状態下において、二つの第一切断刃22a,22cが、保持体26の周りに、二つの第一裏当て面36a,36cと所定距離を隔てて、それぞれ対応位置せしめられた、互いに同一の構造を有する、第一移動装置46a,46cにそれぞれ取り付けられて、第一裏当て面36a,36cに対して、接近乃至離隔移動可能とされている。また、二つの第二切断刃22b,22dも、保持体26の周りに、二つの第二裏当て面36b,36dと所定距離を隔てて、それぞれ対応位置せしめられた、互いに、更には第一移動装置46a,46cと同一の構造を有する、第二移動装置46b,46dにそれぞれ取り付けられて、第二裏当て面36b,36dに対して、接近乃至離隔移動可能とされている。
【0046】
すなわち、第一及び第二移動装置46a〜dは、何れも、可動ホルダ48を、それぞれ一つずつ有している。それら各移動装置46a〜dの可動ホルダ48は、何れも、各切断刃22a〜dよりも長尺な長手矩形のブロック形態を呈し、保持体26の四つの裏当て面36a〜dのそれぞれに対して、水平方向に所定距離を隔てて対向し、且つ平行に延びるように位置せしめられている。また、かかる可動ホルダ48の裏当て面36a〜dとの対向面には、狭幅の凹溝50が全長に亘って連続して延びるように形成されている。そして、各切断刃22a〜dが、刃先側とは反対側の幅方向一端部において凹溝50内に挿入位置せしめられた状態で、可動ホルダ48に対して、ベース24の上面より同一の高さ一において、ボルト固定されている。かくして、各切断刃22a〜dが、刃先を可動ホルダ48の各裏当て面36a〜dに向けて位置させた状態で、可動ホルダ48により、ベース24の上面からの同一の高さ一において固定的に保持されている。
【0047】
また、各移動装置46a〜dは、可動ホルダ48の下方に位置せしめられたガイドプレート52を更に有している。このガイドプレート52は、可動ホルダ48の長さと略同程度の長さと、可動ホルダ48の幅よりも十分に大きな幅とを有する矩形平板からなっている。そして、各ガイドプレート52は、可動ホルダ48の下方において、幅方向一方側の側面を、保持体26の裏当て面36a〜dに対して水平方向に所定距離を隔てて対向し且つ平行に延びるように位置せしめた状態で、ベース24に固定されている。
【0048】
また、そのようなガイドプレート52の上面の中央部には、ガイド溝54が、ガイドプレート52の幅方向、つまり保持体26の各裏当て面36a〜dと直交する方向に向かって真っ直ぐに延びるように形成されている。そして、このガイドプレート52の上面に対して、可動ホルダ48が、その下面の中央部に一体形成された摺動突起56をガイド溝54内に摺動可能に突入させた状態で、重ね合わされて配置されている。これにより、可動ホルダ48が、ガイド溝54に案内されつつ、ガイドプレート52の幅方向に移動可能とされ、また、それに伴って、可動ホルダ48に固定的に保持された切断刃22a〜dが、保持体26の裏当て面36a〜dに対して接近乃至離隔移動せしめられるようになっている。
【0049】
なお、ここでは、第一移動装置46a,46cのガイドプレート52,52や可動ホルダ48,48にそれぞれ設けられるガイド溝54,54と摺動突起56,56が、各々、第一ガイド溝54,54及び第一摺動突起56,56とされている。また、第二移動装置46b,46dのガイドプレート52,52や可動ホルダ48,48にそれぞれ設けられるガイド溝54,54と摺動突起56,56が、各々、第二ガイド溝54,54及び第二摺動突起56,56とされている。
【0050】
さらに、各移動装置46a〜dは、油圧シリンダ58を、それぞれ一つずつ更に有している。この油圧シリンダ58は、可動ホルダ48やガイドプレート52を間に挟んだ保持体26側とは反対側において、ベース24上に固定されている。また、油圧シリンダ58は、保持体26の裏当て面36a〜dに向かって真っ直ぐに突出乃至引込作動せしめられるピストンロッド60を有し、このピストンロッド60が、その先端部において、可動ホルダ48の切断刃22a〜dの取付側とは反対側の面に連結されている。
【0051】
かくして、二つの第一移動装置46a,46cと二つの第二移動装置46b,46dの各油圧シリンダ58のピストンロッド60が突出作動せしめられるのに伴って、それら各移動装置46a〜dのそれぞれの可動ホルダ48に保持された第一切断刃22a,22cと第二切断刃22b,22dとが、保持体26の第一裏当て面36a,36cと第二裏当て面36b,36dとに対して、それぞれ接近移動せしめられるようになっている。そして、意匠パネル10が、上記のようにして、保持治具20の保持体26に吸着されて、位置固定に保持された状態下で、かくの如き油圧シリンダ58による第一及び第二切断刃22a〜dの第一及び第二裏当て面36a〜dへの接近移動が行われることによって、それら第一及び第二裏当て面36a〜dにそれぞれ接触位置する意匠パネル10の第一及び第二フランジ部14a〜dの幅方向(天板部12からの延出方向)の中間部に、第一及び第二切断刃22a〜dが押し付けられて、食い込み、以て、各フランジ部14a〜dの各切断刃22a〜dによる末端側部位の切断操作が進行せしめられるようになっているのである。このことから明らかなように、ここでは、第一移動装置46a,46cにて、第一切断操作進行手段が構成される一方、第二移動装置46a,46dにて、第二切断操作進行手段が構成されている。
【0052】
また、本実施形態の端末処理装置は、ベース24上に設置されたコントローラ62を更に有し、このコントローラ62にて、第一及び第二移動装置46a〜dの各油圧シリンダ58の作動が制御されるようになっている。
【0053】
すなわち、ここでは、コントローラ62の作動制御の下で、第二移動装置46b,46dの各油圧シリンダ58が引込状態とされているときに、図4に二点鎖線で示されるように、第一移動装置46a,46cの各油圧シリンダ58が同時に突出作動せしめられ、また、かかる突出作動状態から同時に引込作動せしめられるようになっている。そして、図示されてはいないものの、それら第一移動装置46a,46cの各油圧シリンダ58が同時に引込作動せしめられた状態において、第二移動装置46b,46dのそれぞれの油圧シリンダ58が同時に突出作動せしめられ、その後、かかる突出作動状態から同時に引込作動せしめられるようになっている。
【0054】
これによって、第一切断刃22a,22cによる第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作が同時に行われ、また、その後に、或いはその前に、第二切断刃22b,22dによる第二フランジ部14b,14dの末端部位の切断操作が同時に行われるようになっている。
【0055】
そして、本実施形態においては、コントローラ62による作動制御下で、上記のようにして、第一及び第二移動装置46a〜dの各油圧シリンダ58が突出作動せしめられた際に、第一及び第二切断刃22a〜dの先端の刃先が保持体26の第一及び第二裏当て面36a〜dに当接する直前の位置で、各油圧シリンダ58の突出作動が停止せしめられて、第一及び第二切断刃22a〜dが、第一及第二裏当て面36a〜dに対して当接せしめられないようになっている。即ち、第一及び第二切断刃22a〜dの第一及び第二裏当て面36a〜dへの当接直前で、第一及び第二切断刃22a〜dによる第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作が停止されるように構成されている。そして、この第一及び第二切断刃22a〜dによる第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作における各油圧シリンダ58の突出作動の停止位置が、第一及び第二切断刃22a〜dと第一及び第二裏当て面36a〜dとの間に位置する第一及び第二フランジ部14a〜dの未切断の裏面16側部分を、第一及び第二切断刃22a〜dの押付け力にて圧縮破壊させたときの位置とされているのである。このことから明らかなように、本実施形態では、第一切断操作停止手段と第二切断操作停止手段とが、コントローラ62にて構成されている。
【0056】
そして、かくの如き構造とされた端末処理装置を用いて、意匠パネル10の第一及び第二の四つのフランジ部14a〜dのそれぞれの端末部の処理を行う際には、例えば、以下のようにして、その作業が進められることとなる。
【0057】
すなわち、先ず、図4に実線で示されるように、第一及び第二移動装置46a〜dの各油圧シリンダ58が、全て、引込作動させた状態とされる。
【0058】
次いで、図5に示される如く、真空成形等によって別途に成形された意匠パネル10の天板部12が、その裏面16において、保持体26の支持面32に重ね合わされ、且つ四つのフランジ部14a〜dが、それぞれの裏面16において、四つの裏当て面36a〜dに接触させられた状態で、意匠パネル10が保持体26にて支持された後、吸引装置(図示せず)が作動せしめられて、多数の吸引孔34を通じての吸引が行われることにより、保持体26に支持された意匠パネル10が、保持体26の上側保持体30に吸着されて、保持治具20にて位置固定に保持せしめられる。
【0059】
その後、図6に示されるように、先ず、保持体26を間に挟んで、その長さ方向の両側にそれぞれ位置せしめられた第一移動装置46a,46bの油圧シリンダ58がそれぞれ同時に突出作動せしめられ、それにより、それら各油圧シリンダ58のピストンロッド60に連結された可動ホルダ48に保持される第一切断刃22a,22cが、保持体26の第一裏当て面36a,36cに接触位置する意匠パネル10の第一フランジ部14a,14cに接近移動せしめられる。そうして、二つの第一切断刃22a,22cが、二つの第一フランジ部14の意匠面18の幅方向中間部に同時に押し付けられて、食い込み、以て、それら第一フランジ部14a,14cの末端側部位を意匠面18側から裏面16側に向かって切断する操作が、同時に進行せしめられる。
【0060】
なお、上記のようにして、第一フランジ部14a,14cの末端側部位を第一切断刃22a,22cにて切断する場合、或いは後述する如く、第二フランジ部14b,14dの末端側部位を第二切断刃22b,22dにて切断する場合には、第一及び第二フランジ部14a〜dの意匠面18に対する第一及び第二切断刃22a〜dの押付けによって、第一及び第二フランジ部14a〜dが、押潰し変形状態から延性破壊状態に移行することで、第一及び第二切断刃22a〜dが第一及び第二フランジ部14a〜dに、より深く食い込んでいき、やがて、第一及び第二切断刃22a〜dと第一及び第二裏当て面36a〜dの間に位置する第一及び第二フランジ部14a〜dの未切断の裏面16側部分が十分に薄肉となったときに、そのような未切断の薄肉の裏面16側部分が、切断刃22a〜dの押付け力により、延性破壊状態から圧縮破壊状態に更に移行すると考えられる。そして、そのような圧縮破壊が惹起されたときには、最早、第一及び第二切断刃22a〜dを用いるまでもなく、手作業等により、第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位を容易に切断することが可能となる。
【0061】
それ故、本工程では、図7に示されるように、第一移動装置46a,46cの油圧シリンダ58のそれぞれの突出作動量に応じて、第一切断刃22a,22c(図6では、第一切断刃22aのみを示す)を、第一フランジ部14a,14c(図6では、第一フランジ部14aのみを示す)に、より深く食い込ませて、第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作を徐々に進行していく過程において、第一切断刃22a,22cが第一裏当て面36a,36cに当接する直前で、且つ第一切断刃22a,22cと第一裏当て面36a,36cの間に位置する第一フランジ部14a,14cの未切断の裏面16側部分が延性破壊状態から、第一切断刃22a,22cの押付け力による圧縮破壊に移行したときに、コントローラ62にて、第一移動装置46a,46cの各油圧シリンダ58の突出作動が停止せしめられる。
【0062】
なお、本発明者等の研究によれば、上記の如き第一及び第二切断刃22a〜dによる第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作において、例えば、各フランジ部14a〜dの裏面16に、各切断刃22a〜dの長さ方向に沿って延びる線状の白化部分等が生じた時点が、各フランジ部14a〜dの未切断の裏面16側部分が延性破壊状態から圧縮破壊状態に移行した時点と判断することが出来、また、そのような延性破壊状態から圧縮破壊状態に移行したときの各フランジ部14a〜dの未切断の裏面16側部分の厚さが、各フランジ部14a〜dを形成する樹脂の材質、例えば、粘性等によって、大凡決定されるものであることが判明している。
【0063】
従って、ここでは、第一フランジ部14a,cの未切断の裏面16側部分が延性破壊状態から圧縮破壊に移行したときに、コントローラ62にて、第一移動装置46a,46cの各油圧シリンダ58の突出作動を停止させるタイミングが、第一切断刃22a,22cの先端の刃先から第一裏当て面36a,36cまでの距離(図7にLにて示される寸法)が予め定された寸法となったときに設定される。
【0064】
なお、そのような油圧シリンダ58の突出作動を停止させるときの第一切断刃22a,22cから第一裏当て面36a,36cまでの距離:Lは、様々な材質の樹脂材料からなる樹脂成形品(意匠パネル10)を用いて、予め実施された各種の試験や実験の結果から、具体的に決定される。因みに、樹脂成形品が、例えば、PC、PMMA、硬質PVC、PP、PE、ABS等の硬質で、且つ比較的に粘性の低い樹脂材料を用いて形成されている場合には、切断刃22a〜dから裏当て面36a〜dまでの距離:Lが0.005〜0.01mm程度となったときに、油圧シリンダ58の突出作動が停止せしめられて、第一切断刃22a,cによる第一フランジ部14a,cの切断操作が停止せしめられることとなる。
【0065】
かくして、本工程においては、第一切断刃22a,22cが第一裏当て面36a,36cに当接する直前で、且つ第一切断刃22a,22cと第一裏当て面36a,36cの間に位置する第一フランジ部14a,14cの未切断の裏面16側部分の厚さ寸法が、意匠パネル10の材質等に応じて、予め実施された実験等により決定された値となったときに、第一移動装置46a,46cの各油圧シリンダ58の突出作動が停止される。そして、かかる切断操作の停止後、直ちに、それら第一移動装置46a,46cの各油圧シリンダ58が、同時に引込作動せしめられることとなる。これによって、第一切断刃22a,22cによる第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作が、第一フランジ部14a,14cの裏面16側部分を未切断のまま残した切断途中の状態で、同時に停止されるのである。
【0066】
ここにおいて、前述せるように、第一及び第二切断刃22a〜dのそれぞれのものにおける長さ方向の両側端部には、切込み用突起44がそれぞれ設けられている。そして、第一フランジ部14a,14cの末端側部位が切断される際に、第二フランジ部14b,14dの末端側部位のうち、第一フランジ部14a,14cの末端側部位と角部15を形成する部分、つまり第二フランジ部14b,14dの末端側部位の長さ方向端部が、第一切断刃22a,22cの各切込み用突起44にて切り込まれるようになっており、また、第二フランジ部14b,14dの末端側部位が切断される際には、第一フランジ部14a,14cの末端側部位のうち、第二フランジ部14b,14dの末端側部位と角部15を形成する部分、つまり第一フランジ部14a,14cの末端側部位の長さ方向端部が、第二切断刃22b,22dの各切込み用突起44にて切り込まれるようになっている。しかしながら、実際には、各フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作の進行時に、各切断刃22a〜dの切込み用突起44にて、各フランジ部14a〜dの末端側部位の長さ方向端部を十分に切り込むことが困難であった。
【0067】
例えば、第一フランジ部14aの末端側部位を第一切断刃22aにて切断する際には、図7に示されるように、第一切断刃22aが、第一フランジ部14aの裏面16に接触位置する第一裏当て面36aに向かって接近移動せしめられるため、第一切断刃22aが、第一裏当て面36aによる裏当てによって、第一フランジ部14aに確実に食い込んで、第一フランジ部14aの末端側部位がスムーズに切断される。一方、このとき、図8に示されるように、第一フランジ部14aの長さ方向両側にそれぞれ位置する角部15を形成する第二フランジ部14b,14d(図8には、一つの角部15と第二フランジ部14bのみを示す)には、それぞれの長さ方向において、第一切断刃22aの各切込み用突起44が押し付けられるが、そのような各切込み用突起44の各第二フランジ部14b,14dへの押付けは、裏当てが存在しない状態で実施される。このため、第一フランジ部14aの末端側部位の第一切断刃22aによる切断操作の進行中に、第二フランジ部14b,14dに対して、第一切断刃22aの各切込み用突起44が容易には食い込まず、それ故に、第二フランジ部14b,14dが、第一切断刃22aの各切込み用突起44にて、第一フランジ部14aの厚さ分だけ長さ方向に押し込まれて、切込みが不十分になってしまうのである。
【0068】
ところが、本実施形態の端末処理装置では、前記せる如く、意匠パネル10の保持体26への保持状態下で、第一及び第二フランジ部14a〜dが、何れも、非拘束状態とされている。そのため、図8に示されるように、第一切断刃22aが、第一フランジ部14aに押し付けられて、食い込まされると共に、第二フランジ部14b,14dが、第一切断刃22aの各切込み用突起44にて、第一フランジ部14aの厚さ分だけ、長さ方向に押し込まれたときに、第二フランジ部14b,14dが、第二裏当て面36b,36dから部分的に離間するように撓み変形せしめられるようになる。
【0069】
かくして、第一切断刃22a,22cによる第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作を行う本工程では、かかる切断操作がスムーズに進行せしめられる一方で、第二フランジ部14b,14dが、それらに押し付けられる第一切断刃22a,22cの各切込み用突起44にて、それぞれの長さ方向に押し縮められるようなことが有利に回避され得るようになる。
【0070】
その後、保持体26を間に挟んで、その幅方向の両側に位置する第二移動装置46b,46dのそれぞれの油圧シリンダ58が、第一移動装置46a,46cの各油圧シリンダ58の、上記した突出及び引込作動と同様な作動状態において、同時に突出及び引込作動せしめられる。これにより、保持体26の幅方向両側に位置する第二裏当て面36b,36dに接触せしめられた第二フランジ部14b,14dの末端側部位に対して、第二切断刃22b,22dによる切断操作が、同時に進行せしめられ、また、第二フランジ部14b,14dの裏面16側部分を未切断のまま残した切断途中の状態で、同時に停止されるのである。
【0071】
次いで、図示しない吸引装置の作動が停止せしめられて、保持体26の上側底壁部28に対する意匠パネル10の天板部12の吸着が解消されることにより、意匠パネル10の保持治具20への保持状態が解除される。そして、その後、意匠パネル10が、保持体26(保持治具20)から取り外され(離脱せしめられ)た後、意匠パネル10の第一及び第二フランジ部14a〜dのそれぞれにおける、圧縮破壊状態で未切断のまま残された裏面16側部分が、第一及び第二切断刃22a〜dやその他の工具等を何等用いることなく、各々、手作業で容易に切割りされる。それによって、第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位が、完全に切断されて、除去されるのである。しかも、手作業等で切割りされる第一及び第二フランジ部14a〜dの裏面16側部分は、第一及び第二切断刃22a〜dを用いた切断操作によって既に圧縮破壊せしめられているため、手作業等での切割り後において、切断面に糸バリが発生したり、切断面が粗面化して、平滑度が低くなったりするようなこともないのである。
【0072】
このように、本実施形態においては、第一切断刃22a,22cによる第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作の進行中に、第二フランジ部14b,14dの長さ方向の端部が、第一切断刃22a,22cの各切込み用突起44にて押し込まれたときに、第二フランジ部14b,14dが、第二裏当て面36b,36dから部分的に離間するように撓み変形せしめられることで、長さ方向に押し縮められることが回避され得るようになっている。そのため、第一切断刃22a,22cによる第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作によって、第二フランジ部14b,14dに、皺やクラック等が発生するようなことが、効果的に防止され得る。また、そのような第一切断刃22a,22cによる第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作の後に行われる第二切断刃22b,22dによる第二フランジ部14b,14dの末端側部位の切断操作の進行中には、第一フランジ部14a,14cが、既に実質的に切断されているため、かかる第一フランジ部14a,14cに皺やクラック等が生ずることもない。
【0073】
従って、かくの如き本実施形態によれば、第一フランジ部14a,14cと第二フランジ部14b,14dのそれぞれの末端側部位を、それら各フランジ部14a〜dに対して皺やクラック等を発生させることなく、確実に切断して、処理することが出来る。そして、その結果として、第一及び第二フランジ部14a〜dの各末端側部位が切断されて、端末処理された意匠パネル10が、十分な意匠性を確保しつつ、極めて有利に得られることとなるのである。
【0074】
また、本実施形態では、第一及び第二切断刃22a〜dによる第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作が、第一及び第二フランジ部14a〜dに食い込んだ第一及び第二切断刃22a〜dの第一及び第二裏当て面36a〜dへの当接直前において、第一及び第二フランジ部14a〜dの裏面16側部分を未切断のまま残した切断途中の状態で終了せしめられる。それ故、第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作を何度も繰り返して実施しても、第一及び第二切断刃22a〜dの刃先が、第一及び第二裏当て面36a〜dにへの当接によって潰れ変形して、劣化してしまうようなことが、未然に防止され得る。しかも、未切断のまま残された第一及び第二フランジ部14a〜dの裏面16側部分は、第一及び第二切断刃22a〜dを何等用いない手作業等での切割り操作によって、切断面に糸バリが発生したり、切断面が粗面化して、平滑度が低くなったりするようなこともなく、極めて容易に切断されて、除去される。
【0075】
それ故、かくの如き本実施形態によれば、意匠パネル10の第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位を、美麗な切断面を有するように、しかも、より長期に亘って安定的に且つスムーズに切断することが出来るのである。また、第一及び第二切断刃22a〜dの当接による第一及び第二裏当て面36a〜dの損傷や劣化も有利に防止され得、以て、保持治具20の耐久性の向上も、効果的に図られ得る。
【0076】
さらに、本実施形態では、二つの第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作が同時に行われた後、残りの二つの第二フランジ部14b,14dの末端側部位の切断操作が同時に行われるようになっているところから、例えば、それら第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作を一つずつ順番に行う場合に比して、第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作に掛かる時間の短縮化が有利に図られて、かかる切断操作の効率化が、効果的に実現され得る。
【0077】
更にまた、本実施形態においては、意匠パネル10を保持治具20の保持体26に支持せしめた状態下で、単に、吸引装置の作動とその停止を行うだけで、意匠パネル10の保持体26に対する固定的な保持とかかる保持状態の解除とが、容易に実施され得る。これによっても、第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位の切断操作の効率化が図られ、更にはそのような切断操作の作業性の向上が、有利に高められ得る。
【0078】
また、本実施形態では、第一及び第二移動装置46a〜dの各可動ホルダ48に設けられた摺動突起56が、ベース24上に固定された各ガイドプレート52のガイド溝54に突入して、摺動せしめられることにより、各可動ホルダ48が、保持体26の第一及び第二裏当て面36a〜dに接近移動せしめられるようになっている。そして、かかる第一及び第二裏当て面36a〜dへの各可動ホルダ48の接近移動に伴って、それら各可動ホルダ48に保持された第一及び第二切断刃22a〜dが、保持体26に保持された意匠パネル10の第一及び第二フランジ部14a〜dに押し付けられて、食い込まされるように構成されている。
【0079】
それ故、このような本実施形態においては、予め、第一及び第二切断刃22a〜dを、刃先が第一及び第二裏当て面36a〜dに向けられた状態で、各裏当て面36a〜dと平行に延びるように配置しておけば、第一及び第二フランジ部14a〜dの切断操作時における第一及び第二切断刃22a〜dの第一及び第二フランジ部14a〜dへの食込み深さが、各フランジ部14a〜dの長さ方向において、常時、一定の深さと為され得る。これによって、第一及び第二切断刃22a〜dによる第一及び第二フランジ部14a〜dの切断操作が、それぞれ停止せしめられたときに、未切断のまま残された各フランジ部14a〜dの裏面16側部分の厚さが、常に一定の厚さとされ得る。そして、その結果として、それら未切断の各フランジ部14a〜dの裏面16側部分が、第一及び第二切断刃22a〜dやその他の工具等を何等用いることなく、各々、手作業で、より確実に且つ容易に切割りされ、以て、第一及び第二フランジ部14a〜dの末端側部位が、更に確実に完全に切断されて、除去され得ることとなるのである。
【0080】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0081】
例えば、前記実施形態では、二つの第一フランジ部14a,14cの末端側部位の切断操作が同時に進行されて、停止せしめられた後、二つの第二フランジ部14b,14dの末端側部位の切断操作が同時に進行されて、停止せしめられるようになっていたが、各移動装置46a〜dの油圧シリンダ58に対するコントローラ62による作動制御を適宜に変更すること等によって、第二フランジ部14b,14dの末端側部位の切断操作を、第二フランジ部14b,14dの末端側部位の切断操作よりも先に行ったり、或いは第一及び第二フランジ部14a〜dの四つのもののうちの一つ一つに対して、末端側部位の切断操作を順番に行ったりしても良い。
【0082】
さらに、保持手段による樹脂成形品の保持構造も、例示された吸引機構による樹脂成形品の吸着構造に、何等限定されるものではなく、例えば、第一及び第二裏当て面を有し、且つ第一延出部と第二延出部のうちの一方の延出部に対して、それの延出方向に押圧力が加えられたときに、かかる一方の延出部が撓み変形して、第一裏当て面や第二裏当て面から少なくとも一部が離間するのを許容し得る構造とされておれば良い。それ故、例えば、保持手段を複数の保持体を含んで構成して、それら複数の保持体にて、樹脂成形品の第一及び第二延出部以外の部位を挟持して、位置固定に保持する構造や、保持手段に、樹脂成形品の第一及び第二延出部以外の部位に係合する係合部を設けて、かかる係合部による係合により、樹脂成形品を位置固定に保持する構造等が、適宜に採用され得る。
【0083】
更にまた、切断刃の形状や配設位置等も、切断されるべき樹脂成形品の第一及び第二延出部の数や形成位置等に応じて、適宜に変更され得る。
【0084】
例えば、図9に示されるように、樹脂成形品たる意匠パネル70が、長手矩形の天板部72と、この天板部72の意匠面74とは反対側の面の外周部に、鈎形状をもって周方向にそれぞれ延出するように一体形成されて、二つの角部75a,75bをそれぞれ形成する第一フランジ部76aと第二フランジ部76bとを有して構成される場合には、それら鉤状の第一及び第二フランジ部76a,76bの形状に対応した鉤形状を呈する刃先を備えた第一切断刃78aと第二切断刃78bとを、それぞれの刃先が、第一及び第二フランジ部76a,76bに向けた状態で、それら第一及び第二フランジ部76a,76bに対して、図9に矢印:アにて示される方向において、接近乃至離隔可能に配置される。
【0085】
また、図10に示されるように、樹脂成形品としての意匠パネル80が、三角形状の天板部82と、この天板部82の意匠面74とは反対側の面の外周部に、三つの辺部に沿ってそれぞれ延びるように一体形成されて、三つの角部85a,85b,85cをそれぞれ形成する平板状の三つのフランジ部86a,86b,86cを有して構成される場合には、狭幅の平板状を呈する三つ切断刃88a,88b,88cが、それぞれの刃先を、各フランジ部86a〜cに向け、且つそれらと平行に延びるように位置せしめた状態で、各フランジ部86a〜cに対して、図10に矢印:イにて示される方向において、接近乃至離隔可能に配置される。
【0086】
さらに、第一及び第二切断操作進行手段の構造も、例示された、第一及び第二切断刃22a〜dを保持治具20の保持体26に接近移動させる第一及び第二移動装置46a〜dに何等限定されるものではなく、例えば、保持体26を第一及び第二切断刃22a〜dに接近移動させる構造において、第一及び第二切断操作進行手段を構成することも出来、或いは保持体26と第一及び第二切断刃22a〜dの両方を互いに接近移動させる構造において、第一及び第二切断操作進行手段を構成することも出来る。なお、それらの構造を採用する場合には、保持体26の第一及び第二切断刃22〜dへの接近移動を停止させる機構乃至は装置にて、或いは保持体26と第一及び第二切断刃22〜dの互いの接近移動を停止させる機構乃至は装置にて、第一及び第二切断操作停止手段が構成されることとなる。また、様々な構造において切断操作進行手段を構成する場合にあっても、その数や配設位置等が、切断刃の数や配設位置等に応じて、適宜に変更される得ることは、言うまでもないところである。
【0087】
更にまた、第一及び第二切断操作停止手段も、例示のコントローラ56に代えて、単に、第一及び第二移動装置46a〜dによる第一及び第二切断刃22a〜dの移動を阻止するストッパ手段等を採用することが出来る。また、上記せるように、第一及び第二切断操作進行手段として、保持体26を第一及び第二各切断刃22a〜dに接近移動させる構造や、それら保持体26と第一及び第二切断刃22a〜dの両方を互いに接近移動させる構造のものを採用する場合にも、保持体26や第一及び第二切断刃22a〜dの移動を停止させるコントローラやストッパ手段等が、適宜に採用されることとなる。更に、第一切断操作停止手段と第二切断操作停止手段とを、互いに別個の独立した構造をもって構成することも、可能である。
【0088】
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車用内装部品の一部を構成する意匠パネルに一体形成された第一及び第二フランジ部の端末部を処理するための端末処理装置と端末処理方法とそのような端末処理が行われた意匠パネルに適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他のシート状の樹脂成形品の端部に一体形成された第一延出部と第二延出部のそれぞれの端末部を処理する端末処理装置と端末処理方法とそのような端末処理が行われた樹脂成形品の何れに対しても有利に適用されるものであることは、勿論である。
【0089】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に従う構造を有する端末処理装置を用いて端末部が処理された樹脂成形品の一例を示す斜視説明図である。
【図2】図1におけるII−II断面説明図である。
【図3】本発明に従う構造を有する端末処理装置の一実施形態を示す縦断面説明図であって、図4のIII−III断面に相当する図である。
【図4】図3におけるIV矢視説明図である。
【図5】図3に示された端末処理装置を用いて、樹脂成形品の端末部を処理する際に実施される工程例を示す説明図であって、樹脂成形品を保持手段にて保持せしめた状態を示している。
【図6】図5に示された工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、保持手段に保持された樹脂成形品の末端側部位を切断刃にて切断している状態を示している。
【図7】図6におけるVII部拡大説明図である。
【図8】図6のVIII−VIII断面における部分拡大説明図である。
【図9】本発明に従う端末処理装置の別の実施形態における切断刃の配置位置を示す説明図である。
【図10】本発明に従う端末処理装置の更に別の実施形態における切断刃の配置位置を示す説明図である。
【図11】従来構造を有する端末処理装置の縦断面説明図であって、図12のXI−XI断面に相当する図である。
【図12】図11におけるXII−XII断面説明図である。
【図13】図12におけるXIII部拡大説明図である。
【符号の説明】
【0091】
10,70,80 意匠パネル 12,72,82 天板部
14a〜d,76a〜d,86a〜d フランジ部
18 意匠面 20 保持治具
22a〜d,78a〜d,88a〜d 切断刃
26 保持体 32 支持面
34 吸引孔 36a〜d 裏当て面
46a〜d 移動装置 52 ガイドプレート
54 ガイド溝 56 摺動突起
58 油圧シリンダ 62 コントローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が意匠面とされたシート状の樹脂成形品の端部に、裏面側に屈曲し、且つ互いに交差する方向に延びるように一体形成されて、角部を形成する第一延出部と第二延出部のそれぞれの末端側部位を切断し、除去することによって、該樹脂成形品の端末部を処理する装置であって、
前記樹脂成形品の前記第一延出部の裏面に接触する第一裏当て面と、前記第二延出部の裏面に接触する第二裏当て面とを有し、それら第一裏当て面と第二裏当て面とに対して、該第一延出部と該第二延出部のそれぞれの裏面を接触させた状態で、該樹脂成形品を位置固定に保持すると共に、かかる樹脂成形品の保持状態下において、該第一延出部と該第二延出部のうちの何れか一方の延出部に対して、該一方の延出部の延出方向に押圧力が加えられたときに、該一方の延出部が撓み変形して、該一方の延出部が接触する該第一裏当て面又は該第二裏当て面から、該一方の延出部の少なくとも一部が離間するのを許容し得るように構成された保持手段と、
刃先が前記保持手段の前記第一裏当て面に向けて配された状態で、該第一裏当て面に対して、それと交差する方向において接近又は離隔可能に位置せしめられた第一切断刃と、
刃先が前記保持手段の前記第二裏当て面に向けて配された状態で、該第二裏当て面に対して、それと交差する方向において接近又は離隔可能に位置せしめられた第二切断刃と、
前記樹脂成形品が前記保持手段に保持された状態下で、前記第一切断刃を、該保持手段の前記第一裏当て面に対して接近させることにより、該第一裏当て面に接触して位置せしめられた前記第一延出部の意匠面の延出方向中間部に、該第一切断刃を押し付けて、食い込ませることによって、該第一切断刃による該第一延出部の前記末端側部位の切断操作を進行せしめる第一切断操作進行手段と、
前記樹脂成形品が前記保持手段に保持された状態下で、前記第一切断刃による前記第一延出部の末端側部位の切断操作の開始前又は終了後に、前記第二切断刃を、該保持手段の前記第二裏当て面に対して接近させることにより、該第二裏当て面に接触して位置せしめられた前記第二延出部の意匠面の延出方向中間部に、該第二切断刃を押し付けて、食い込ませることによって、該第二切断刃による該第二延出部の前記末端側部位の切断操作を進行せしめる第二切断操作進行手段と、
を含むことを特徴とする樹脂成形品の端末処理装置。
【請求項2】
前記第一切断操作進行手段による前記第一裏当て面への接近により、前記第一延出部の中間部に押し付けられて、食い込んだ前記第一切断刃が、該第一裏当て面に対する当接直前の位置で、且つ該第一切断刃と該第一裏当て面との間に位置する該第一延出部の未切断の裏面側部分が該第一切断刃の押付け力にて圧縮破壊せしめられる位置にまで到達したときに、該第一切断操作進行手段による該第一切断刃の該第一裏当て面への接近を停止させて、該第一切断刃による該第一延出部の前記末端側部位の切断操作を停止せしめる第一切断操作停止手段が、更に設けられると共に、前記第一切断操作進行手段による前記第二裏当て面への接近により、前記第二延出部の中間部に押し付けられて、食い込んだ前記第二切断刃が、該第二裏当て面に対する当接直前の位置で、且つ該第二切断刃と該第二裏当て面との間に位置する該第二延出部の未切断の裏面側部分が該第二切断刃の押付け力にて圧縮破壊せしめられる位置にまで到達したときに、該第二切断操作進行手段による該第二切断刃の該第二裏当て面への接近を停止させて、該第二切断刃による該第二延出部の前記末端側部位の切断操作を停止せしめる第二切断操作停止手段が、更に設けられている請求項1に記載の樹脂成形品の端末処理装置。
【請求項3】
前記保持手段が、前記樹脂成形品における前記第一延出部と前記第二延出部とを除く部位の裏面に接触して、該樹脂成形品を支持する支持面と、該支持面において開口する複数の吸引孔とを備えた保持治具と、該保持治具の複数の吸引孔を通じて吸引を行う吸引機構とを更に有し、該樹脂成形品が該保持治具の支持面に支持された状態下で、該複数の吸引孔を通じての該吸引機構の吸引が行われることにより、該樹脂成形品が該支持面に吸着されて、位置固定に保持されるようになっている請求項1又は請求項2に記載の樹脂成形品の端末処理装置。
【請求項4】
前記第一切断刃が、第一ガイドプレート上に移動可能に配置されると共に、それら第一切断刃と第一ガイドプレートのうちの少なくとも何れか一方に、前記保持手段の前記第一裏当て面と交差する方向に延びる第一ガイド溝が設けられ、更に、それらのうちの少なくとも何れか他方に、該第一ガイド溝内に摺動可能に突入する第一摺動突起が設けられて、該第一ガイド溝に対する該第一摺動突起の摺動により、該第一切断刃が、該第一ガイド溝に案内されつつ、前記第一切断操作進行手段にて、該第一裏当て面に接近せしめられるようになっている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の樹脂成形品の端末処理装置。
【請求項5】
前記第二切断刃が、第二ガイドプレート上に移動可能に配置されると共に、それら第二切断刃と第二ガイドプレートのうちの少なくとも何れか一方に、前記保持手段の前記第二裏当て面と交差する方向に延びる第二ガイド溝が設けられ、更に、それらのうちの少なくとも何れか他方に、該第二ガイド溝内に摺動可能に突入する第二摺動突起が設けられて、該第二ガイド溝に対する該第二摺動突起の摺動により、該第二切断刃が、該第二ガイド溝に案内されつつ、前記第二切断操作進行手段にて、該第二裏当て面に接近せしめられるようになっている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載の樹脂成形品の端末処理装置。
【請求項6】
表面が意匠面とされたシート状の樹脂成形品の端部に、裏面側に屈曲し、且つ互いに交差する方向に延びるように一体形成されて、角部を形成する第一延出部と第二延出部のそれぞれの末端側部位を切断し、除去することによって、該樹脂成形品の端末部を処理する方法であって、
互いに交差する方向に延び出して角部を形成する第一裏当て面と第二裏当て面とを有する保持手段に対して、前記樹脂成形品を、前記第一延出部の裏面において該第一裏当て面に接触させ、且つ前記第二延出部の裏面において該第二裏当て面に接触させた状態で、位置固定に保持させる工程と、
前記保持手段に保持された前記樹脂成形品における前記第一延出部の意匠面の延出方向中間部に、第一切断刃を押し付けて、食い込ませることにより、該第一切断刃による該第一延出部の末端側部位の切断操作を進行せしめると共に、かかる切断操作の進行中に、該第一延出部に対する該第一切断刃の押付けに伴って、該第一切断刃により、前記第二延出部に対して、その延出方向に押圧力が加えられたときに、該第二延出部を撓み変形させる工程と、
前記第一切断刃による前記第一延出部の末端側部位の切断操作の開始前又は終了後において、前記保持手段に保持された前記樹脂成形品における前記第二延出部の意匠面の延出方向中間部に、第二切断刃を押し付けて、食い込ませることにより、該第二切断刃による該第二延出部の末端側部位の切断操作を進行せしめると共に、かかる切断操作の進行中に、該第二延出部に対する該第二切断刃の押付けに伴って、該第二切断刃により、前記第一延出部に対して、その延出方向に押圧力が加えられたときに、該第一延出部を撓み変形させる工程と、
を含むことを特徴とする樹脂成形品の端末処理方法。
【請求項7】
前記第一延出部の中間部に食い込んだ前記第一切断刃が前記保持手段の前記第一裏当て面に当接する直前において、該第一切断刃と該第一裏当て面との間に位置する該第一延出部の未切断の裏面側部分が、該第一切断刃の押付け力にて圧縮破壊せしめられたときに、該第一延出部の中間部への該第一切断刃の押付けを停止せしめて、該第一切断刃による該第一延出部の末端側部位の切断操作を停止する工程と、該圧縮破壊された第一延出部の未切断の裏面側部分を、該第一切断刃による該第一延出部の末端側部位の切断操作の停止後に、該第一切断刃を用いることなく切り割ることにより、該第一延出部の末端側部位を切断し、除去する工程と、前記第二延出部の中間部に食い込んだ前記第二切断刃が前記保持手段の前記第二裏当て面に当接する直前において、該第二切断刃と該第二裏当て面との間に位置する該第二延出部の未切断の裏面側部分が、該第二切断刃の押付け力にて圧縮破壊せしめられたときに、該第二延出部の中間部への該第二切断刃の押付けを停止せしめて、該第二切断刃による該第二延出部の末端側部位の切断操作を停止する工程と、該圧縮破壊された該第二延出部の未切断の裏面側部分を、該第二切断刃による該第二延出部の末端側部位の切断操作の停止後に、該第二切断刃を用いることなく切り割ることにより、該第二延出部の末端側部位を切断し、除去する工程とを、更に含む請求項6に記載の樹脂成形品の端末処理方法。
【請求項8】
前記請求項6又は請求項7に記載の樹脂成形品の端末処理方法によって、前記第一延出部と前記第二延出部のそれぞれの末端側部位が切断されて、除去されることにより、端末部が処理されていることを特徴とする樹脂成形品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−286029(P2009−286029A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142045(P2008−142045)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【出願人】(592190866)株式会社江東彫刻 (8)
【Fターム(参考)】