説明

樹脂成形品の製造方法

【課題】 ウエルド部の強度剛性の改善を図り、また、製品を切り出すことなく比較的簡単に製品品質の確認を行うことができる樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂材料を金型キャビティー2内に射出充填して樹脂成形品である大型ラジエータコアを製造する樹脂成形品の製造方法において、成形後における前記大型ラジエータコアの応力が掛かる部位に、製品強度物性を測定するためのJISK7113で規定された引張試験用ダンベル形状の捨て形状部位を設け、成形後に、その捨て形状部位を大型ラジエータコアから切り離す。捨て形状部位は、金型キャビティー2の製品以外の部位に捨て形状部位形成用キャビティー3として形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば樹脂成形品の製造方法に関し、詳細には、ウエルド部の強度剛性の改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、部品点数の削減および軽量化のニーズを受け、自動車部品のモジュール化開発が盛んに行われている。特にフロントモジュールでは、樹脂やマグネシウムなど、従来のスチールに代わる軽量化材料の採用が多く見られる。
【0003】
例えば、特許文献1では、ガラス繊維や炭素繊維含有ナイロン材によるフロントエンドモジュールへの適用が紹介されている。また、特許文献2では、長繊維剤含有樹脂材料を用いたフロントエンドパネルの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−219437号公報
【特許文献2】特開平11−180342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1及び2に記載の技術では、何れも強度剛性を製品として確保するためには、ウエルド強度を確保することが求められる。例えば、大型成形品では、樹脂流動の点で多点ゲート化(ゲートを多数設けること)が一般的であり、多点ゲートによりウエルド部位の発生が避けられないウエルドは基本的には、応力部位からずらす設計を行うことになる。
【0005】
しかし、多点ゲートでは、多数のウエルド発生部位が発生するため、設計的に対応することが難しい状況になっている。また、特許文献2に記載の技術のように、長繊維含有樹脂材料を用いる場合は、製品中の残存繊維長や繊維含有量など材料物性に影響を及ぼす要因を評価することが必要となっている。
【0006】
そこで、本発明は、上記した課題を解決するために、ウエルド部の強度剛性の改善を図り、また、製品を切り出すことなく比較的簡単に製品品質の確認を行うことができる樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、樹脂材料を金型キャビティー内に射出充填して樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法において、成形後における前記樹脂成形品の応力が掛かる部位に、製品強度物性を測定するためのJISK7113で規定された引張試験用ダンベル形状の捨て形状部位を設け、成形後に、その捨て形状部位を樹脂成形品から切り離すことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法であって、前記捨て形状部位は、前記樹脂成形品の製品以外の部位に設けることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法であって、前記樹脂成形品は、大型ラジエータコアであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法によれば、成形後における樹脂成形品の応力が掛かる部位に、捨て形状部位を設けたので、金型キャビティー内に射出された樹脂材料がこの捨て形状部位に流れ込み、樹脂の合流面に生じるウエルド部の発生を緩和させることができ、ウエルド部の強度剛性を改善できる。
【0011】
また、本発明によれば、捨て形状部位をJISK7113で規定された引張試験用ダンベル形状としたので、この捨て形状部位を製品から切り取って製品強度物性を簡単に測定することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、成形後の樹脂成形品から製品の一部を切り取ることがないから製品を無駄にすることもなく、さらには、スキン層(表層)もそのまま捨て形状部位に残ることから正確な材料物性を測定することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、樹脂成形品を大型ラジエータコアとしているので、多点ゲートによって成形せざるを得なかった大型ラジエータコアを、ウエルド部の発生を極力抑制して製造することができ、強度の高い製品とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明方法によって製造する大型ラジエータコアを成形するための金型キャビティーの平面図、図2は捨て形状部位を形成するための捨て形状部位形成用キャビティーに樹脂材料が流れ込む様子を示す要部拡大平面図、図3は捨て形状部位に樹脂が流れ込んだ様子を示す図、図4は捨て形状部位を設けなかったことによってウエルド部が発生する様子を示す図である。
【0016】
本実施の形態は、樹脂成形品として大型ラジエータコアを製造する方法に、本発明を適用した例である。大型ラジエータコアを製造するには、図1に示す金型1の金型キャビティー2内に樹脂材料を射出充填した後、所定時間常温で冷却後、該金型キャビティー2から成形品を取り出すことで製造する。
【0017】
金型キャビティー2には、成形後における大型ラジエータコアの応力が掛かる部位、すなわちウエルドが発生すると予測される部位に、樹脂材料が流れ込む捨て形状部位を形成するための捨て形状部位形成用キャビティー3を設ける。かかる捨て形状部位形成用キャビティー3は、製品強度物性を測定するためのJISK7113で規定された引張試験用ダンベル形状とする。
【0018】
捨て形状部位形成用キャビティー3を設けることで、異なる位置に設けられたゲートからそれぞれ流れ込んでくる樹脂材料4は、図2の矢印A1及びA2で示すようにお互いに合流するが、その合流点からさらに捨て形状部位形成用キャビティー3へと樹脂材料4が流れ込むようになる。そのため、両方向から流れ込んでくる樹脂材料4の合流点では、お互いに樹脂材料4同士がぶつかり合いながら捨て形状部位形成用キャビティー3へと流れ込んで、当該捨て形状部位形成用キャビティー3内に樹脂材料4が満たされ、図3に示すように、JISK7113で規定された引張試験用ダンベル形状の捨て形状部位5が形成される。
【0019】
この捨て形状部位5を、成形後における大型ラジエータコアの応力が掛かる部位に設けなかった場合は、図4の矢印B1及びB2で示すように、お互いに向かい合う方向に流れてきた樹脂材料4同士が合流点でぶつかり合い、その合流点に強度の弱いウエルド部6が形成される。
【0020】
しかしながら、本実施の形態では、大型ラジエータコアの応力が掛かる部位に捨て形状部位形成用キャビティー3を設け、その捨て形状部位形成用キャビティー3に樹脂材料4を流すようにしているので、ウエルド部の形成を抑制することができる。そのため、成形後における大型ラジエータコアの応力が掛かる部位の強度を確保することができ、強度に優れた信頼性の高い大型ラジエータコアを製造することが可能となる。
【0021】
そして、樹脂材料4を金型キャビティー2内に射出して充填させた後、所定時間常温で冷却させて該金型キャビティー2から樹脂成形品である大型ラジエータコアを取り出す。この大型ラジエータコアには、製品以外の部分に捨て形状部位5が一体化されている。
【0022】
製品取り出し後は、大型ラジエータコアから捨て形状部位5を切り取り、その捨て形状部位5を使用して製品強度物性を測定する。かかる捨て形状部位5は、JISK7113で規定された引張試験用ダンベル形状とされているので、充填した樹脂材料を構成するファイバ残存繊維長やファイバ含有量を測定するための試験機に取り付けられて物性試験がなされる。このように、捨て形状部位5を製品以外の部分から切り出すことで、製品である大型ラジエータコアの一部を切り出すことなく比較的簡単に製品品質確認を行うことができる。
【0023】
従来方法では、射出成形後の製品の一部を切り出して物性を測定してたが、そうすると表面スキン層が無くなり本来の物性を把握できない。しかしながら、本実施の形態のように、製品とは別の部分に捨て形状部位5を設けることで、表面スキン層もそのまま残ることから正確な物性を測定することが可能となる。また、製品を無駄にすることもない。
【0024】
「その他の実施の形態」
以上、本発明を適用した具体的な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に制限されることなく種々の変更が可能である。
【0025】
上述の実施の形態では、捨て形状部位をJISK7113で規定された引張試験用ダンベル形状としたが、この捨て形状部位5を、ISO3167やASTM638などの国際規格のT/P形状としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明方法によって製造する大型ラジエータコアを成形するための金型キャビティーの平面図である。
【図2】捨て形状部位を形成するための捨て形状部位形成用キャビティーに樹脂材料が流れ込む様子を示す要部拡大平面図である。
【図3】捨て形状部位に樹脂が流れ込んだ様子を示す図である。
【図4】捨て形状部位を設けなかったことによってウエルド部が発生する様子を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1…金型
2…金型キャビティー
3…捨て形状部位形成用キャビティー
4…樹脂材料
5…捨て形状部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を金型キャビティー内に射出充填して樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法において、
成形後における前記樹脂成形品の応力が掛かる部位に、製品強度物性を測定するためのJISK7113で規定された引張試験用ダンベル形状の捨て形状部位を設け、成形後に、その捨て形状部位を樹脂成形品から切り離す
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
前記捨て形状部位は、前記樹脂成形品の製品以外の部位に設ける
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形品は、大型ラジエータコアである
ことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−341387(P2006−341387A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166738(P2005−166738)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】