説明

樹脂成形品矯正装置

【課題】上押圧治具、下押圧治具の破損が抑制でき、所定の押さえ矯正が継続して実施可能となる。
【解決手段】成形後の冷却の際に収縮差により片面側が凸となるように反る成形直後の樹脂成形品1を矯正するための樹脂成形品1矯正装置である。前記樹脂成形品1を平面視で位置決めするための位置決め部2と、この位置決め部2で位置決めされた状態の前記樹脂成形品1を下から押し上げ支持する上下移動自在な複数の下押圧治具3と、前記樹脂成形品1を上から押圧するための上下移動自在な複数の上押圧治具4とを備える。前記下押圧治具3と上押圧治具4の各先端部に回転ローラ5を備える。下押圧治具3の回転ローラ5と上押圧治具4の回転ローラ5で前記成形直後の樹脂成形品1の上下面をそれぞれ押圧して冷却時の収縮差による反りと逆の矯正用変形を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品矯正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品矯正装置としては、例えば特許文献1、特許文献2などが知られている。
【0003】
ところで、従来から、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)で樹脂成形品を成形する際、樹脂成形品の一方の面の外観を良くするため、上下金型に温度差をつけて成形することが行われている。
【0004】
このように、上下金型に温度差をつけて成形すると、成形後の冷却の際に一方の面側と他方の面側との収縮差により片面側が凸となるように反りが発生する。
【0005】
そこで、図4(a)のような樹脂成形品矯正装置20を用いて、成形直後に樹脂成形品21の上下面を押圧して冷却時の収縮差による反りと逆の矯正用変形を与え、冷却の際の収縮差と相殺することで反りの発生を抑制することが行われている。
【0006】
図4(a)に示される樹脂成形品矯正装置20は、矯正台枠26と、矯正台枠26に設けられた複数の下押圧治具22と、矯正台枠26の上方に設けられた上枠27と、上枠27に設けられた複数の上押圧治具23が備えられている。
【0007】
各下押圧治具22、上押圧治具22はそれぞれ上下移動自在で、先端部には図4(b)に示されるように、フリージョイント28を介して先端部に板状の弾性体24を有する押部25が設けられている。
【0008】
そして、樹脂成形品21の上下両面がそれぞれ各下押圧治具22、上押圧治具23の先端に設けられた板状の弾性体24で押圧されて矯正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−26227号公報
【特許文献2】特開2003−311822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、板状の弾性体24で樹脂成形品21の上下面を押圧した矯正途中で樹脂成形品21が収縮するため、樹脂成形品21の収縮により上下面を押圧している板状の弾性体24が樹脂成形品21と共に引っ張られる。つまり、図4(b)の矢印A方向に示すように樹脂成形品21が収縮する場合、圧接している板状の弾性体24が矢印B方向に引っ張られ、押部25から外れたり、あるいは、弾性体24の劣化が早くなったりするおそれがある。また、板状の弾性体24で樹脂成形品21の収縮が押さえ込まれるので、樹脂成形品21に歪が発生して割れるなどの問題が発生するおそれがある。
【0011】
このため、所定の押え矯正が継続して実施できなくなるおそれがある。
【0012】
本発明は、前記した従来例の問題点に鑑みて発明したもので、上押圧治具、下押圧治具の破損が抑制でき、所定の押さえ矯正が継続して実施可能な樹脂成形品矯正装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の樹脂成形品矯正装置は、成形後の冷却の際に収縮差により片面側が凸となるように反る成形直後の樹脂成形品を矯正するための樹脂成形品矯正装置であって、前記樹脂成形品を平面視で位置決めするための位置決め部と、この位置決め部で位置決めされた状態の前記樹脂成形品を下から押し上げ支持する上下移動自在な複数の下押圧治具と、前記樹脂成形品を上から押圧するための上下移動自在な複数の上押圧治具とを備え、前記下押圧治具と上押圧治具の各先端部に回転ローラを備え、前記下押圧治具の前記回転ローラと前記上押圧治具の前記回転ローラで前記成形直後の樹脂成形品の上下面をそれぞれ押圧して冷却時の収縮差による反りと逆の矯正用変形を与えることを特徴とする。
【0014】
また、前記各回転ローラの前記樹脂成形品への接触する部分が弾性体であって、この弾性体が前記前記樹脂成形品に面接触するように押圧されることが好ましい。
【0015】
また、前記樹脂成形品が平面視長方形状をしており、前記回転ローラの回転軸が前記樹脂成形品の短辺と平行となり、前記回転ローラが前記樹脂成形品の短辺と平行な方向に移動可能となっていることが好ましい。
【0016】
また、前記樹脂成形品がSMCで成形されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、前記のように構成したので、矯正時における樹脂成形品の収縮に対して回転ローラが転動して追従し、これにより上押圧治具、下押圧治具の破損を抑制でき、所定の押さえ矯正を継続して実施可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の樹脂成形品矯正装置を示し、(a)は側面図であり、(b)は矯正台枠の平面図である。
【図2】(a)は同上の矯正中における樹脂成形品の変形に回転ローラが追従することを説明する説明図であり、(b)は同上の回転ローラの正面図である。
【図3】同上の樹脂成形品が矯正順序を示し、(a)は樹脂成形品矯正装置に供給された状態の上枠、上押圧治具を省略した平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は矯正状態を示す側面図である。
【図4】(a)は従来例の樹脂成形品矯正装置の側面図であり、(b)は矯正中における樹脂成形品の変形の際に弾性体に作用する力を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0020】
図1乃至図3には樹脂成形品矯正装置7の一実施形態が示されている。樹脂成形品矯正装置7は、成形装置(例えば成形プレス装置)で成形された直後の未冷却(熱い状態)の樹脂成形品1を搬送する搬送コンベア8の前方に配置される。
【0021】
樹脂成形品矯正装置7は、矯正台枠9と、ストッパ10と、矯正台枠9に設けられた複数の下押圧治具3と、矯正台枠9の上方に設けられた上枠11と、上枠に設けられた複数の上押圧治具4を備えることで構成される。
【0022】
下押圧治具3は、矯正台枠9の平面視で搬送方向と直交する方向の両側に搬送方向に沿って複数個設けられ、各下押圧治具3はそれぞれ上下移動自在とされている。
【0023】
上押圧治具4は、上枠11の前記複数の下押圧治具3の上方に対応する位置に設けられ、各上押圧治具4は上下移動自在とされている。
【0024】
各下押圧治具3、各上押圧治具4のそれぞれの先端部には回転ローラ5が備えられ、この回転ローラ5の樹脂成形品1に接触する部分は弾性体6により構成されている。
【0025】
回転ローラ5は、各下押圧治具3、各上押圧治具4の先端に設けた回転軸12に回転自在に取付けられる。
【0026】
回転軸12は、搬送コンベア8から矯正台枠9への搬送方向と直交する水平軸となっている。また、樹脂成形品1の長手方向が、この搬送方向に合うように積載されて搬送されるようになっている。
【0027】
ここで、回転ローラ5は回転軸12に対して軸方向に移動自在となっている。
【0028】
各下押圧治具3、各上押圧治具4を上下する手段は図示していないが、従来から公知の任意の上下駆動手段、例えば、油圧シリンダーやエアシリンダなどを用いることができる。
【0029】
ストッパ10は、矯正台枠9に供給された樹脂成形品1を平面視で位置決めするための位置決め部2となるもので、固定ストッパであってもよく、あるいは、上下移動自在な可動ストッパであってもよい。
【0030】
成形装置(例えば成形プレス装置)で樹脂成形品1を成形するには、例えば、SMCを材料としてプレス成形により板状に成形される。
【0031】
この場合、成形品の一方の面の外観を良くするため、上下金型に温度差をつけて成形される。
【0032】
このように、上下金型に温度差をつけて成形された樹脂成形品1は、冷却の際に収縮差により片面側が凸となるように反るような内部応力を有する。
【0033】
前記内部応力を有する樹脂成形品1は成形された直後の未冷却の状態で、搬送コンベア8で樹脂成形品矯正装置7に搬送される。
【0034】
搬送時、各下押圧治具3が下降させられ、各上押圧治具4が上昇させられている。そして、下降した各下押圧治具3の回転ローラ5はいずれも搬送コンベア8と同じ高さ位置にされ、樹脂成形品1が搬送コンベア8から下降した回転ローラ5上にスムーズに搬送され、位置決め部2に当って、図3(a)、(b)のように平面視での位置決めが行われる。
【0035】
成形直後の内部応力を有する樹脂成形品1が樹脂成形品矯正装置7に搬送されて位置決め停止された状態で、各下押圧治具3、各上押圧治具4が上下方向に移動させられて樹脂成形品1の上下両面がそれぞれ下押圧治具3、上押圧治具4の回転ローラ5により押圧される。
【0036】
樹脂成形品1は、未冷却(熱い状態)のまま、回転ローラ5の弾性体6が押圧される。この場合、弾性体6は押圧により変形させられ樹脂成形品1に対して面接触状態で押圧することになる。
【0037】
押圧に当っては、図3(c)のように、各下押圧治具3、各上押圧治具4の上下方向の移動量を変えることで、樹脂成形品1の上下面をそれぞれ押圧して冷却時の収縮差による反りと逆の矯正用変形が与えられる。
【0038】
図1、図3(c)の実施形態では、樹脂成形品1の冷却時の収縮差による反りが下面側が凸となる場合の例で、この場合は各下押圧治具3、各上押圧治具4の上下方向の移動量を調整して樹脂成形品1の上面側が凸となるように矯正用変形が与えられる。
【0039】
本実施形態は、前述のように弾性体6を押圧して面接触で押圧することで、点接触による押圧に比べて樹脂成形品1の矯正がスムーズに行われる。
【0040】
樹脂成形品1は上下面を押圧される矯正途中で収縮が進行するが、樹脂成形品1に接触する弾性体6は回転ローラ5に設けてあるため、樹脂成形品1の収縮に対して外周面が弾性体6となった回転ローラ5が回転することで追従する。
【0041】
つまり、図3(a)の矢印C方向に樹脂成形品1が大きく収縮する場合、圧接している弾性体6は回転ローラ5が矢印Dのように回転することで、弾性体6が外れたり、損傷したりするのが抑制され、所定の押さえ矯正が継続して実施可能となる。
【0042】
ここで、樹脂成形品1が平面視長方形状をした板状のものの場合、長辺側が短辺側よりも収縮による変形量が大きい。
【0043】
したがって、平面視長方形状、例えば長方形をした板状の樹脂成形品1の場合、樹脂成形品1を長辺と平行な方向に樹脂成形品矯正装置7に搬送する。これにより回転ローラ5の回転軸12が樹脂成形品1の短辺と平行となって、変形量の大きい長辺側の変形に対して回転ローラ5が回転してスムーズに追従できる。
【0044】
また、この場合、前述のように回転ローラ5が回転軸12の軸方向に移動自在とされることで、樹脂成形品1の短辺方向における収縮に対しても、回転ローラ5が回転軸12に沿って移動することが追従可能となる。
【0045】
このように、樹脂成形品矯正装置7で、成形直後の内部応力を有する樹脂成形品1を矯正しながら、樹脂成形品1に冷風を当てて冷却する。
【0046】
そして、冷却後、下押圧治具3を下降すると共に上押圧治具4を上昇することで矯正が解除されて、樹脂成形品1を取り出すと、反りのない樹脂成形品1が得られる。
【0047】
もちろん、樹脂成形品矯正装置7で、成形直後の内部応力を有する樹脂成形品1が矯正された後、樹脂成形品矯正装置7から樹脂成形品1が取り出され、次に、樹脂成形品1が冷却装置に送られて冷却されるようにしてもよい。
【0048】
この場合も反りのない樹脂成形品1が得られる。
【0049】
なお、SMCを材料として成形プレス装置で板状の樹脂成形品1を成形して、樹脂成形品矯正装置7で矯正する場合、樹脂成形品1の厚みは10mm以下とするのが矯正効果がより発現できる。
【0050】
ところで、成形装置による成形サイクル(実施形態では成形プレス装置によるプレスサイクル)が早く、矯正に要する時間が長い場合は、樹脂成形品矯正装置7を複数並列に並べ、複数の樹脂成形品矯正装置7に順次樹脂成形品1を供給して矯正するとよい。
【0051】
この場合、複数の樹脂成形品矯正装置7に順次供給された樹脂成形品1は、矯正が行われ、矯正時間が経過したものから順序取り出し搬出される。
【符号の説明】
【0052】
1 樹脂成形品
2 位置決め部
3 下押圧治具
4 上押圧治具
5 回転ローラ
6 弾性体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形後の冷却の際に収縮差により片面側が凸となるように反る成形直後の樹脂成形品を矯正するための樹脂成形品矯正装置であって、前記樹脂成形品を平面視で位置決めするための位置決め部と、この位置決め部で位置決めされた状態の前記樹脂成形品を下から押し上げ支持する上下移動自在な複数の下押圧治具と、前記樹脂成形品を上から押圧するための上下移動自在な複数の上押圧治具とを備え、前記下押圧治具と上押圧治具の各先端部に回転ローラを備え、前記下押圧治具の前記回転ローラと前記上押圧治具の前記回転ローラで前記成形直後の前記樹脂成形品の上下面をそれぞれ押圧して冷却時の収縮差による反りと逆の矯正用変形を与えることを特徴とする樹脂成形品矯正装置。
【請求項2】
前記回転ローラの前記樹脂成形品への接触する部分が弾性体であって、この弾性体が前記前記樹脂成形品に面接触するように押圧されることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品矯正装置。
【請求項3】
前記樹脂成形品が平面視長方形状をしており、前記回転ローラの回転軸が前記樹脂成形品の短辺と平行となり、前記回転ローラが前記樹脂成形品の短辺と平行な方向に移動可能となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の樹脂成形品矯正装置。
【請求項4】
前記樹脂成形品がSMCで成形されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の樹脂成形品矯正装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107242(P2013−107242A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252860(P2011−252860)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】