樹脂成形物の製造方法
【課題】樹脂のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能な樹脂成形物の製造方法を提供する
【解決手段】樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップは、樹脂成形物の凹部又は凸部に対応してマトリクス状に配置された複数の凸部又は凹部を含む矩形の面を有する型の面の中心に重なるように、面及びこれに対向させる基板のうち少なくとも一方に、流動性を有する樹脂材料を滴状に配置する。第2配置ステップは、面の対角線上の複数個所に重なるように面及びこれに対向させる基板のうち少なくとも一方に、樹脂材料を滴状に配置する。押圧ステップは、第1及び第2配置ステップで少なくとも一方に樹脂材料が配置された型及び基板を、樹脂材料を介在させて相対的に押圧する。硬化ステップは、型と基板とが相対的に押圧された状態で、樹脂材料を硬化させ硬化樹脂とする。離型ステップは、硬化樹脂を型から離型する。
【解決手段】樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップは、樹脂成形物の凹部又は凸部に対応してマトリクス状に配置された複数の凸部又は凹部を含む矩形の面を有する型の面の中心に重なるように、面及びこれに対向させる基板のうち少なくとも一方に、流動性を有する樹脂材料を滴状に配置する。第2配置ステップは、面の対角線上の複数個所に重なるように面及びこれに対向させる基板のうち少なくとも一方に、樹脂材料を滴状に配置する。押圧ステップは、第1及び第2配置ステップで少なくとも一方に樹脂材料が配置された型及び基板を、樹脂材料を介在させて相対的に押圧する。硬化ステップは、型と基板とが相対的に押圧された状態で、樹脂材料を硬化させ硬化樹脂とする。離型ステップは、硬化樹脂を型から離型する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にマトリクス状に配列された複数の凹部又は凸部を含む樹脂層が形成された樹脂成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学レンズの製造分野においては、ガラス基板に対して硬化性樹脂(熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等)からなるレンズ部を形成することにより、耐熱性の高い光学レンズを得ることができる技術が存在する。
【0003】
この技術を適用した光学レンズの製造方法としては、ガラス基板に対して樹脂製のレンズ部を複数設けた、あるいは、複数のレンズ部を有し樹脂で一体的に成形された、所謂「ウエハレンズ」を作製した後、レンズ部毎にガラス基板をカットして複数の光学レンズを得る方法がある。
【0004】
ウエハレンズを製造する方法としては、例えば以下の方法がある。
【0005】
まず金属等からなるマスター型と基板との間に樹脂材料を介在させて樹脂を硬化させることにより、基板上に樹脂製のレプリカを形成し、この工程を繰り返すことにより、複数のレプリカが形成された樹脂製の中間型を作製する。次にその中間型に対して樹脂材料を塗布・硬化させることにより、樹脂製の転写型を作製する。そしてその転写型に樹脂材料を充填し、ガラス基板を押圧した後、樹脂材料を硬化させることにより、ガラス基板上に複数の樹脂製レンズ部を形成する。更にそのレンズ部とガラス基板とを転写型から離型することにより、ガラス基板上に複数のレンズ部が形成された1枚のウエハレンズが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−102312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、型に樹脂材料を塗布する手法としては、型に対して樹脂材料を定量的に吐出するディスペンス装置を用いるものがある。
【0008】
しかし、ディスペンス装置を用いる場合、樹脂材料の吐出位置や吐出量、更には型の形状等によって、型と基板とを押圧するときに樹脂材料が所望の形に広がらない場合がある。
【0009】
例えば図20Aに示すように、正方形の面fを有する型Fに対して、樹脂材料Aを型Fの中心に1点だけ配置した場合、そこに基板(図示なし)を押圧すると図20B〜図20Cのような広がり方となる(図20Bの矢印は樹脂材料Aの広がり方向を示す)。従って、樹脂材料Aを硬化させて得られる成形物A´は図20Dのように型Fからはみ出たものとなるおそれがある。
【0010】
また図21Aに示すように、正方形の面fを有する型Fに対して、樹脂材料Aを型Fの中心に1箇所、そして型Fの中心と各辺とを結ぶ垂線(図21Aの点線)上に複数個所配置した場合、図21B〜図21Cのような広がり方となる(図21Bの矢印は樹脂材料Aの広がり方向を示す)。従って樹脂材料Aを硬化させて得られる成形物A´は図21Dのように型Fからはみ出たり(図21DのA´´)、気泡(図21DのA´´´)が生じたものとなるおそれがある。
【0011】
マスター型として、上記特許文献1では一つのレンズ部のみを有するものを用いているが、短時間でより多くのレンズ部を形成するために、複数のレンズ部がマトリクス状に並んで形成されたマスター型を用いて繰り返し成形を行うことにより、中間型を作製することも考えられる。このような複数のレンズ部がマトリクス状に形成されたマスター型を用いる場合、マスター型上に配するべき樹脂材料の量も多くなり、上述したような樹脂材料のはみ出しや気泡発生の問題がより顕著になる。このように樹脂材料が型からはみ出たり、気泡を生じた状態では、所望の樹脂成形物を得ることができないという問題があった。
【0012】
従って本発明は、上記課題を解決するために、樹脂材料のはみ出しや気泡の発生の防止を図ることが可能な樹脂成形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、基板上にマトリクス状に配列された複数の凹部又は凸部を含む樹脂層が形成された樹脂成形物の製造方法である。第1配置ステップは、樹脂成形物の凹部又は凸部に対応してマトリクス状に配置された複数の凸部又は凹部を含む矩形の面を有する型の面の中心に重なるように、面及びこれに対向させる基板のうち少なくとも一方に、流動性を有する樹脂材料を滴状に配置する。第2配置ステップは、面の対角線上の複数個所に重なるように面及びこれに対向させる基板のうち少なくとも一方に、樹脂材料を滴状に配置する。押圧ステップは、第1及び第2配置ステップで少なくとも一方に樹脂材料が配置された型及び基板を、樹脂材料を介在させて相対的に押圧する。硬化ステップは、型と基板とが相対的に押圧された状態で、樹脂材料を硬化させ硬化樹脂とする。離型ステップは、硬化樹脂を型から離型する。
また、上記課題を解決するために、請求項2記載の発明は、請求項1記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び第2配置ステップで配置される滴状の樹脂材料間のピッチは実質的に一定である。
また、上記課題を解決するために、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び第2配置ステップで1箇所に配置される滴状の樹脂材料の量は実質的に一定である。
また、上記課題を解決するために、請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップで配置される滴状の樹脂材料の量と第2配置ステップで各箇所に配置される滴状の樹脂材料の量とは異なる。
また、上記課題を解決するために、請求項5記載の発明は、請求項4記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップで配置される滴状の樹脂材料の量は、第2配置ステップで各箇所に配置される滴状の樹脂材料の量の1〜6倍である。
また、上記課題を解決するために、請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び第2配置ステップで配置される樹脂材料の総量は、押圧ステップにおいて形成される型と基板との隙間の体積に実質的に等しい。
また、上記課題を解決するために、請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び前記第2配置ステップにおいて、面及び基板の少なくとも一方に配置される複数の滴状の樹脂材料は、押圧ステップにおける基板上の押圧位置に面を対向させた場合に、基板に対して垂直な方向からみたときの、面の中心に重なる位置にある滴状の樹脂材料と、それ以外の複数の滴状の樹脂材料とのそれぞれの距離が実質的に等しい。
また、上記課題を解決するために、請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び/又は第2配置ステップで配置された滴状の樹脂材料のうち少なくとも一組の隣り合う2つの樹脂同士が、押圧ステップによる押圧により最初に交わる点は、凹部又は凸部の頂点を通り面に対して垂直な軸上と異なる位置にある。
また、上記課題を解決するために、請求項9記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、基板には、面の凹部又は凸部を囲む位置に座ぐり部が設けられている。
また、上記課題を解決するために、請求項10記載の発明は、請求項1から9のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ後に第2配置ステップを行う。
また、上記課題を解決するために、請求項11記載の発明は、請求項1記載の樹脂成形物の製造方法であって、樹脂成形物は、マトリクス状に配列された複数の樹脂製のレンズ部を含むウエハレンズを成形するためのウエハレンズ用成形型である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、面を有する型及び該型に対向させる基板の少なくとも一方に対して、樹脂材料を、当該面の中心に重なるように、かつ、当該面の対角線上に重なるように、複数個所配置する。これにより、樹脂材料を介在して型と基板とを相対的に押圧しても樹脂材料が型からはみ出たり、気泡を生じたりする可能性を低くすることができる。従って、所期の形状を有する樹脂成形物を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る製造方法により製造されるウエハレンズの一例を示す図である。
【図2】実施形態に係るマスター型を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る中間型を示す側面図である。
【図4】実施形態に係る中間型の製造の様子を模式的に示す図である。
【図5】実施形態に係る転写型を示す側面図である。
【図6】実施形態に係るマスター型から中間型を成形する工程を示すフローチャートである。
【図7A】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図7B】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図7C】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図7D】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図7E】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図8】実施形態に係る中間型から転写型を成形する工程を示すフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図10】実施形態に係る転写型からウエハレンズを成形する工程を示すフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図12】本実施形態に係る樹脂材料の配置工程を示すフローチャートである。
【図13A】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図13B】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図13C】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図13D】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図13E】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図14】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図15】変形例1における樹脂材料の配置方法の一例を示す図である。
【図16A】変形例2における樹脂材料の配置方法の一例を示す図である。
【図16B】変形例2における樹脂材料の配置方法の一例を示す図である。
【図17】変形例3における基板及び型の一例を示す図である。
【図18】変形例3における基板及び型の一例を示す図である。
【図19】変形例3における基板及び型の一例を示す図である。
【図20A】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図20B】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図20C】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図20D】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図21A】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図21B】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図21C】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図21D】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
図1から図14を用いて、本発明の樹脂成形物の製造方法の一実施形態としての、本実施形態に係るウエハレンズ用型の製造方法について説明する。ウエハレンズ用型は「樹脂成形物」の一例である。
【0017】
<ウエハレンズ1の構成>
はじめに、図1を用いて、本実施形態に係る製造方法により製造されたウエハレンズ用型を用いて作成されるウエハレンズ1の構成について説明する。
【0018】
ウエハレンズ1は、円形状の透光性の基板2と複数のレンズ部3とを有している。複数のレンズ部3は、基板2の表面及び裏面にそれぞれ光軸が表面側と裏面側とで一致するようにマトリクス状に配置されている。基板2をレンズ部3毎にダイシングすることにより、個片化された複数のウエハレンズを得ることができる。
【0019】
基板2の材質としては透光性のものであればよく、ガラスが好適に用いられる。また基板2は円形状に限らず方形状であってもよい。
【0020】
レンズ部3は、樹脂3Aで形成されている。この樹脂3Aとしては、硬化性樹脂を用いることが可能である。硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられる。これらの硬化性樹脂は、一般的に、重合性単量体などの重合性組成物と重合開始剤とを含み、かつ、未硬化の状態で流動性を有する樹脂材料を、光照射や加熱により重合させて硬化させることにより得られる。
【0021】
レンズ部3の光学面の表面には、回折溝や段差等の微細構造が設けられていてもよい。レンズ部3は、基板2の一方の面のみに形成されてもよい。
【0022】
<ウエハレンズ用型の構成>
図2から図5を用いて、本実施形態において用いるウエハレンズ成形用型の構成について説明する。
【0023】
ウエハレンズ1の製造にあたって、本実施形態では、ウエハレンズ成形用の型としてマスター型10、サブマスター型20(以下、「中間型20」という場合がある)、サブサブマスター型30(以下、「転写型30」という場合がある)を用いる。また以上のマスター型10、中間型20、転写型30を総称して「型(ウエハレンズ成形用型)」という場合がある。
【0024】
<マスター型10の構成>
図2に示す通り、本実施形態におけるマスター型10は、直方体状のベース部11を有している。ベース部11は、正方形の面12を有している。面12には複数の凹部13がマトリクス状に形成されている。凹部13は中間型20の凸部23(後述)に対応する部位であり、面12から略半球形状に凹んでいる。凹部13は最終的に得られるレンズ形状に相当する形状を有しており、公知の加工装置を用いて精密に加工される。
【0025】
面12は矩形であればよく、正方形に限られない。また凹部13が配置される面12が矩形であればよく、ベース部11は円柱状であってもよい。またマスター型10(ベース部11)の材質としては金属、セラミック、ガラス、及び樹脂等が用いられる。特に、加工性と精度の観点から金属製のマスター型を用いることが好ましい。
【0026】
<中間型20の構成>
図3に示す通り、本実施形態における中間型20は、成形部21と基板24を有している。成形部21の表面22には、複数の凸部23が形成されている。図4に示すように、中間型20は、マスター型10を用いて基板24上に繰り返し成形を行うことによって作製され、多数の凸部23はマトリクス状に並んで配列されている。凸部23は、転写型30の凹部33(後述)に対応する部位であり、面22から略半球状に突出している。成形部21は、樹脂21Aで形成されている。樹脂21Aとしては光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が用いられる。基板24は、一定の厚みを有する平板であり、成形部21の強度を補っている。
【0027】
基板24は図4に示したような円形状のものでもよいし、矩形のものでもよい。基板24の材質としては金属、セラミック、ガラス、及び樹脂等が用いられる。正確な厚みを得やすく、薄くても強度に優れたガラス基板を用いることが好ましい。ガラスなど透光性の材質を基板として用いると、転写型30を作製する際に使用する樹脂材料が光硬化性のものである場合、基板側から光を照射して硬化を進行させることができる。
【0028】
<転写型30の構成>
図5に示す通り、本実施形態における転写型30は、成形部31と基板34を有している。成形部31は、中間型20を用いて成形されたものであり、その表面32には、複数の凹部33がマトリクス状に形成されている。凹部33は、レンズ部3に対応する部位であり、面32から略半球状に凹んでいる。成形部31は、樹脂31Aで形成されている。樹脂31Aとしては光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が用いられる。基板34は、一定の厚みを有する平板であり、成形部31の強度を補っている。
【0029】
基板34の形状や材質は、上述した基板24と同様である。
【0030】
これらマスター型10、中間型20、及び転写型30を用いることにより、レンズ部3として凸レンズをウエハレンズ1の基板上に成形する。
【0031】
レンズ部3としては、凸レンズに代えて凹レンズを成形することも可能である。この場合、マスター型10の面12上には凸部が設けられる。また中間型20の面22には凹部が設けられる。更に転写型30の面32には凸部が設けられる。その他の構成については上述の「マスター型10の構成」、「中間型20の構成」、及び「転写型30の構成」と同じである。
【0032】
<ウエハレンズの製造工程>
次に図6〜図11を用いて、ウエハレンズ1の製造工程について説明を行う。本実施形態においてウエハレンズ1の製造工程は、「中間型製造工程」、「転写型製造工程」、「ウエハレンズ製造工程」の3つに分けることができる。以下、それぞれの工程について述べる。なお、ウエハレンズ1、中間型20及び転写型30は凹凸が反対になるだけで製法はほぼ同じである。
【0033】
<中間型製造工程>
図6及び図7A〜図7Eは、マスター型10から中間型20を成形する方法を示している。なお、図7A〜図7Eに示すマスター型10は、図2のC−C方向の断面図である。
【0034】
まずは所望のマスター型10を選択する(S10、図7A参照)。本実施形態においてマスター型10(ベース部11)は金属で形成されているものとする。ベース部11の面12上には、中間型20の凸部23に対応する凹部13が複数個所、マトリクス状に設けられている。なお面12の各凹部13の周辺部には、平坦部15が形成されている。
【0035】
次に、S10で選択されたマスター型10の上方にディスペンス装置の吐出口40を配置する。そして吐出口40から、マスター型10の面12上に流動性を有する未硬化の樹脂材料21A´を吐出する(S11、図7B参照)。樹脂材料21A´は、硬化した後に中間型20の成形部21を成す。本実施形態において、樹脂材料21A´としては光硬化性樹脂材料が用いられる。この吐出の詳細については後述する。
【0036】
次に製造装置(図示なし)は、S11で樹脂材料21A´が配置された状態のマスター型10を基板24に向けて上昇させ、樹脂材料21A´を基板24に押圧する(S12、図7C参照)。基板24は、真空チャック装置(図示なし)等によってマスター型10の上方に吸引・固定されている。本実施形態において基板24は光を透過可能な材質(例えばガラス)で形成されている。基板24の押圧は製造装置により、基板24の全体に均一の圧力がかかるようになされることが望ましい。
【0037】
次にS12で基板24とマスター型10が押圧された状態において、光源41が基板24側から樹脂材料21A´対して光を照射する(S13、図7D参照)。上述のように、樹脂材料21A´は光硬化性樹脂材料であり、基板24は光を透過可能な材質で形成されている。よって光源41からの光は基板24を透過して樹脂材料21A´に到達し、その光により重合反応が生じることで樹脂材料21A´は硬化して樹脂21Aとなる。
【0038】
S13で樹脂材料21A´が硬化された後、製造装置は、基板24と結合された状態の樹脂21Aをマスター型10から剥離させる(S14、図7E参照)。そして、基板24の別の位置(先に凸部23が形成された位置と異なる位置)でS11からS14までの処理を行う。このようにS11からS14までの処理を基板24上で凸部23を成形できる空きスペースが無くなるまで繰り返す(S15でYの場合)。基板24上で凸部23を成形できるスペースが無くなると全ての成形が完了し(S15でNの場合)、基板24上に複数の凸部23を有する樹脂からなる成形部21が形成された中間型20が完成する(S14、図7E参照)。
【0039】
また平坦部15には予め離型剤を塗布し、S11で吐出された樹脂材料21A´とマスター型10との離型性を上げることが望ましい。このように、離型剤の塗布等によって離型層がマスター型に設けられていると、樹脂材料の粘度が小さい場合でも吐出された樹脂材料が滴状になりやすくなるため、後述する樹脂配置方法を適用する意義がより高いといえる。離型剤を用いる場合、平坦部15に対してUVオゾン洗浄や酸素プラズマアッシング等の表面改質処理を行うことにより、OH基(水酸基)を立たせる。そして平坦部15に対して、末端に加水分解可能な官能基が結合した材料(例えばシランカップリング構造を有する材料)を塗布する。するとその官能基と平坦部15表面に存在するOH基との間で脱水縮合又は水素結合等が起こり、離型剤が平坦部15表面に固着されることとなる。
【0040】
<転写型製造工程>
図8及び図9は、S14で得られた中間型20から転写型30を成形する方法を示している。
【0041】
まず、S14で得られた中間型20の下方に中間型の成形部22に面するように基板34を配置する(S20)。基板34上には、予め流動性を有する未硬化の樹脂材料31A´が塗布されているものとする。硬化した後の樹脂31Aは、転写型30の成形部31を成す。本実施形態において樹脂材料31A´としては光硬化性樹脂材料が用いられる。中間型20の面22上には、転写型30の凹部33に対応する凸部23が複数個所、マトリクス状に設けられている。なお面22の各凸部23の周辺部には、平坦部25が形成されている。
【0042】
次に製造装置(図示なし)は、S20で樹脂材料31A´が塗布された状態の面22(中間型20)に対して、基板34を押圧する(S21)。本実施形態において基板34は光を透過可能な材質(例えばガラス)で形成されている。基板34の押圧は製造装置により、基板34の全体に均一の圧力がかかるようになされることが望ましい。また中間型20は、基板34の上方に真空チャック装置(図示なし)等によって吸引・固定されている。
【0043】
次にS21で基板34と中間型20が押圧された状態において、光源41が基板34側から光を照射する(S22、図9参照)。上述のように、樹脂材料31A´は光硬化性樹脂材料であり、基板34は光を透過可能な材質で形成されている。よって光源41からの光は基板34を透過して樹脂材料31A´に到達し、その光により重合反応が生じることで樹脂材料31A´は硬化し、樹脂31Aとなる。
【0044】
S22で樹脂材料31A´が硬化された後、製造装置は、基板34と結合された状態の樹脂31Aを中間型20から剥離する。その結果、転写型30が完成する(S23)。
【0045】
また平坦部25に予め離型剤を塗布するなどして、樹脂31Aと中間型20との離型性を上げることが望ましい。離型剤を塗布する場合には、更に平坦部25の表面改質処理を行うことが望ましい。
【0046】
<ウエハレンズ製造工程>
図10及び図11は、転写型30からウエハレンズ1を成形する方法を示している。
【0047】
まず、S23で得られた転写型30の上方に基板2を配置する。転写型30の面32には、予め流動性を有する未硬化の樹脂材料3A´が塗布されているものとする(S30)。樹脂材料3A´は、硬化した後にレンズ部3を成す。本実施形態において樹脂材料3A´としては光硬化性樹脂材料が用いられる。転写型30の面32上には、レンズ部3に対応する凹部33が複数個所、マトリクス状に設けられている。なお面32の各凹部33の周辺部には、平坦部35が形成されている。
【0048】
次に製造装置(図示なし)は、S30で樹脂材料3A´が塗布された状態の転写型30を基板2に対して上昇させ、樹脂材料3A´を基板2に押圧する(S31)。本実施形態において基板2は光を透過可能な材質(例えばガラス)で形成されている。基板2の押圧は製造装置により、基板2の全体に均一の圧力がかかるようになされることが望ましい。また基板2は、転写型30の上方に真空チャック装置(図示なし)等によって吸引・固定されている。
【0049】
次にS31で基板2と転写型30が押圧された状態において、光源41が基板2側から光を照射する(S32、図11参照)。上述のように、樹脂材料3A´は光硬化性樹脂材料であり、基板2は光を透過可能な材質で形成されている。よって光源41からの光は基板2を透過して樹脂材料3A´に到達し、その光により重合反応が生じることで樹脂材料3A´は硬化し樹脂3Aとなる。
【0050】
S32で樹脂材料3A´が硬化された後、製造装置は、基板2と結合された状態の樹脂3Aを転写型30から剥離させる。その結果、レンズ部3が完成する(S33、図11参照)。こうして、基板2上に複数のレンズ部3が形成されたウエハレンズ1が完成する(S34)。
【0051】
なお平坦部35に予め離型剤を塗布するなどして、樹脂3Aと転写型30との離型性を上げることが望ましい。離型剤を塗布する場合には、更に平坦部35の表面改質処理を行うことが望ましい。
【0052】
<樹脂材料の配置方法>
次に図12及び図13を用いて、本実施形態に係る樹脂材料の配置方法について説明する。ここではマスター型10に対して樹脂材料21A´を配置する場合について述べる。
【0053】
図13A〜図13Eは、マスター型10において凹部13が設けられている面12を示した図である。本実施形態では面12上に樹脂材料21A´を5箇所配置する場合について説明を行う。また本実施形態では面12上に凹部13が4×4個配置(4行4列のマトリクス状に配置)されている構成を用いて説明を行う。
【0054】
本実施形態において、「樹脂配置ピッチ(p)」とは、配置された各樹脂材料21A´のそれぞれの中心間の距離をいう(図13B参照)。また「成形樹脂厚」とは押圧ステップ後におけるマスター型10の面12から基板24までの距離(図7Dに示すR)をいう。また「総量」とは、マスター型10上に配置される全ての樹脂材料21A´の総量をいう。また「型と基板との隙間の体積」とは、マスター型10(面12)の各辺と、その各辺に対向する位置にある基板24の各辺とが成す面に囲まれた空間(型と基板の隙間)の体積をいう。具体的には、基板24の表面が平坦である場合には、面12の面積×成形樹脂厚で算出される値である。また面12の頂点を結ぶ対角線をL1、L2とする(図13A参照)。
【0055】
ここで、図12を用いて本実施形態における樹脂材料の配置工程を説明する。図12は、図6のS11の工程を詳しく述べるものである。なお本実施形態において、ディスペンス装置の駆動は所定のプログラムに基づいて実行される。或いは操作者が手動で操作してもよい。
【0056】
まずS10で選択されたマスター型10に対して、ディスペンス装置の吐出口40から、面12の中心P1に樹脂材料21A ´を所定量吐出する(S110、第1配置ステップ。図13A参照)。吐出された樹脂材料21A´はある程度の粘性を有すること、及び、マスター型10上に形成した離型層の存在のため吐出された位置(中心P1)近傍に滴状に留まった状態となる。
【0057】
次にディスペンス装置の吐出口40から、面12の対角線L1、L2上の複数箇所(P2〜P5)に樹脂材料21A´を所定量吐出する(S111、第2配置ステップ。図13B参照)。こうして、図13Bに示すように、マスター型10の面12の中心に重なる位置(符号P1で示す)と、面12の対角線上の複数の箇所に重なる位置(符号P2〜P5で示す)とに滴状の樹脂材料がそれぞれ間隔をあけて配置される。換言すれば、面12の中心部及び中心からと四隅に向かう各途中位置には樹脂材料が配置されているが、それ以外の位置、例えば、面12の中心から四辺に向かう垂線と重なる位置には樹脂材料は配置されない。ここで、中央部P1の滴状樹脂材料の中心は面12の中心とほぼ一致しており、周辺部P2〜P5の滴状樹脂材料の中心はそれぞれほぼ面12の対角線上にある。また、滴状樹脂材料P1とP2〜P5との樹脂配置ピッチが実質的に等しくなるように配置されている。なお、S110の次にS111を実行すると、何らかの原因で押圧前に各樹脂が接触したとしても、比較的気泡を生じにくいという利点があるが、S110とS111は逆の順番であってもよく、また、S111の途中でS110を実行してもよい。
【0058】
このように樹脂材料21A´が5箇所配置された状態において、マスター型10(面12)を基板24に向けて上昇させ、樹脂材料21A´を基板24に押圧する(S12)。すると面12上では図13C〜図13Dのように樹脂材料21A´が広がっていく。そして図13Eに示すように面12上で樹脂材料21A´がはみ出すことなく、且つ気泡が生じない状態となる。
【0059】
このように、樹脂材料21A´を面12の中心に重なる位置P1と面12の対角線L1、L2上の複数箇所P2〜P5とに配置することにより、樹脂材料のはみ出しや気泡の発生が抑えられる詳しい理由は不明であるが、中央部に樹脂が存在することにより、周辺部の樹脂材料によって空間が残存することが防止されること、中央部から最も距離の遠い四隅に向かう位置に樹脂が存在することにより確実に四隅を含めた端部まで樹脂材料を行き渡らせることができること、面12の中央部から周辺部へと押し広げられるように樹脂材料が広がっていくこと、樹脂材料は面12の縁部に到達した後に樹脂材料の体積が少ないために面12のエッジ部に沿って広がろうとすること、等が関係しているものと推測される。
【0060】
なお本実施形態の一例としては、1辺が13.2mm角の面12に対して、樹脂材料21A´の総量は34.3mg(1点あたり、6.86mg)、成形される樹脂厚は160μm、樹脂配置ピッチは6.2mmとなる。
【0061】
また図14に示すように、面12上に樹脂材料21A´を9箇所配置すること、すなわち、面12の対角線上において、中央部と隅との間に2以上の滴状樹脂材料を配置するによっても図13Eに示すような樹脂材料21Aの状態を形成することが可能である。この場合、樹脂の総量が大きく変わらないようにするために、個々の滴状の樹脂材料のサイズが小さくなるようにする。このように樹脂量を少なくして配置する数を増やすと、樹脂材料を配置する回数は増加するが、押圧時の樹脂材料の広がり方をより制御しやすくなる。従って、レンズ部に対応する凹部や凸部の寸法が小さい場合や数が多い場合にも気泡が生じにくい。
【0062】
この場合、例えば1辺が17.4mm角の面12に対して、樹脂材料21A´の総量は37.2mg(1点あたり、4.13mg)、成形される樹脂厚は100μm、樹脂配置ピッチは3.39mmとなる。
【0063】
本実施形態においてディスペンス装置は、樹脂配置ピッチpが樹脂間(P1に対するP2〜P5の距離)で実質的に一定となる位置に樹脂材料21A´の吐出を行うよう駆動する。
【0064】
また本実施形態において、ディスペンス装置は、S110での樹脂材料21A´の吐出量と、S111で1箇所に配置される樹脂材料21A´の吐出量とが一定となるように駆動される。なお、1点の樹脂量は0.1mg以上50mg以下が望ましい。1点の樹脂量が0.1mgを下回ると樹脂の吐出回数が増加して非効率的になるのと、吐出位置を正確に制御することが難しくなり、マスター型上に吐出できなかったり、気泡を発生しないような位置に樹脂を配置できなくなったりする恐れがある。また、1点の樹脂量が50mgを超えると、吐出後の樹脂の形状が不安定になったり、型の端部に樹脂材料を吐出する際に型からはみ出しやすくなったり、意図した量の吐出が難しくなったりする傾向がある。
【0065】
このように実質的に一定の樹脂配置ピッチを保つ、或いは第1配置ステップと第2配置ステップにおける吐出量を一定とすることにより、面12上で樹脂材料21A´がどのように広がるかを予測し易くなる。またディスペンス装置の吐出位置設定が容易となる。従ってウエハレンズ1等を製造する際の作業性向上を図ることが可能となる。
【0066】
また本実施形態においては、S110(第1配置ステップ)とS111(第2配置ステップ)で吐出される樹脂材料21A´の総量を、押圧ステップにおいて形成されるマスター型10と基板24との隙間の体積に実質的に等しくすることが望ましい。
【0067】
この場合、例えばシミュレーション等により、予め樹脂材料21A´の総量を求めておく。そして当該値に基づき、ディスペンス装置が樹脂材料の吐出量を調整したり、製造装置が押圧する際の圧力を調整したりすることにより実現可能となる。
【0068】
このように樹脂材料の総量を型と基板の隙間の体積と実質的に等しくすることにより、押圧する際に樹脂材料が基板からはみ出しを押さえつつ(或いは樹脂材料が基板の隅々まで行き渡らないということなく)ウエハレンズやウエハレンズ用型を製造することが可能となる。
【0069】
なお本実施形態においては、マスター型10上に樹脂材料21A´を吐出する例について説明したがこれに限られない。例えば、基板24上の、マスター型10に対向する位置に樹脂材料を配置してもよいし、マスター型10と基板24の両方に配置してもよい。また、中間型を用いることなく、型から直接にウエハレンズを作製する場合、レンズ部を構成する樹脂材料を上述した手順で型及び基板の少なくとも一方に配置することで、所期の形状を有するウエハレンズを作製することができる。さらに、本実施形態では、面に凹部を有する型に樹脂材料を配置する場合について説明を行ったがこれに限られない。例えば面に凸部を有する型であっても同様の工程を適用することが可能である。
【0070】
なお、マスター型10と基板とを向き合わせて押圧する前に、基板24上に樹脂材料を配置する場合やマスター型10の面12及び基板24の両方に樹脂材料を配置する場合は、押圧ステップにおける基板24上の押圧位置に面12を対向させた場合に、基板24に対して垂直な方向からみたときの、面12の中心に重なる位置にある樹脂材料と、それ以外の複数の樹脂材料とのそれぞれの距離(樹脂配置ピッチ)が実質的に等しくなるようにすればよい。
【0071】
<変形例1>
本実施形態では、第1配置ステップと第2配置ステップとで樹脂材料の吐出量を一定とする構成について説明を行ったが、これに限られない。
【0072】
例えば、第1配置ステップによる樹脂材料の吐出量を、第2配置ステップで各箇所に吐出される樹脂材料の吐出量よりも多く設定することが可能である(図15参照)。吐出量の変更は所定のプログラム(或いは操作者の操作入力)に基づいてディスペンス装置により行われる。このように樹脂材料の吐出量を変えることにより、樹脂の広がり方をある程度変化させることができ、樹脂のはみ出しや不足が生じそうな場合に微調整しやすくなる。また、樹脂の吐出回数を減らして作業効率の改善に繋げることもできる。
【0073】
なお、第1配置ステップで吐出される樹脂材料の吐出量は、第2配置ステップで各箇所に吐出される樹脂材料の吐出量の0.8倍〜6倍、より好ましくは1倍〜3倍であることが望ましい。前者が後者の6倍を超えると、最適ピッチの設定が難しくなってはみ出しが起きやすくなり、また、前者が後者の0.8倍未満であると、中央部に空間ができやすく気泡が生じやすくなる。
【0074】
<変形例2>
滴状の樹脂材料を配置する面12上の位置は、マスター型10の面12に含まれる複数の凹部の位置によって制限を受けるものではないが、押圧ステップによる圧力が弱い場合や、凹部のアスペクト比(凹部13の径r(面12に対する横方向)に対する高さh(面12に対する縦方向)の比。図16A参照)が高い場合、樹脂材料21A´が凹部13に充填され難くなる傾向があるため、凹部の位置をも考慮して樹脂材料を配置するようにしてもよい。
【0075】
図16A及び図16Bはマスター型10上で樹脂材料21A´同士が交わる状態を示した図である。図16A及び図16Bは、図2のマスター型10のC−C断面である(図16A及び図16Bでは波線により左右の一部を省略している)。図16Aのように配置された樹脂材料21A´は、押圧されることにより、図16Bのように他の樹脂材料21A´と接することとなる。ここでは、樹脂材料21A´同士が最初に接する点をQとする。また凹部13の最下点をSとする。
【0076】
ここで、点Qが凹部13の最下点Sの軸上に位置すると、上述したように押圧力が小さい場合や凹部のアスペクト比が大きい場合には、樹脂材料21A´が凹部13に充填され難くなると考えられる。
【0077】
そこで、図16Bに示すように、隣り合う2つの樹脂材料21A´同士が押圧によって最初に交わる点Qが、マスター型10の凹部13の最下点Sを通りマスター型10の表面22に対して垂直な軸上と異なる位置にあるようにしておくことが好ましい。このためには、ディスペンス装置により樹脂材料21A´を吐出するピッチや樹脂量を調整することが望ましい。例えば、樹脂数を増やしてピッチを狭くする。あるいは、滴下される樹脂数を減らして樹脂配置ピッチを広くし、隣り合う滴状の樹脂材料が押圧により最初に交わる点の位置を変化させる。あるいは、樹脂数はそのままで僅かに樹脂量を増加・減少させ、樹脂配置ピッチを変更する。このような方法を用いることにより、S110で吐出された樹脂材料21A´とS111で吐出された樹脂材料21A´(或いはS111で吐出された樹脂材料21A´同士)が押圧ステップにより基板24に対して押圧されていく際、それら樹脂材料21A´同士が最初に交わる点Qが、凹部23の最下点Sを通り面12に対して垂直な軸上と異なる位置となるように調整できる。
【0078】
従って、押圧ステップの圧力や凹部のアスペクト比に関わらず、気泡の発生を抑えてウエハレンズやウエハレンズ用型を製造することが可能となる。
【0079】
<変形例3>
また実施形態では、基板は平坦なものとして説明をおこなったがこれに限られない。例えば型から樹脂を剥離する際の作業をし易くしたり、樹脂部分の厚みを薄くしたりするなどの目的のために、段差が設けられた型、及び座ぐり部が設けられた基板を用いることも可能である。本変形例では、中間型20の製造工程を例に説明を行う。なお、本変形例のマスター型10は、その面12に凹部13の代わりに凸部(図示なし)が形成されているものとして説明を行う。
【0080】
図17に示すように、マスター型10の面12は、段差10aにより凸部が成形される部分(面12a)と、それ以外の部分(面12b)とに分けられている。また基板24におけるマスター型10の凸部に対応する位置には座ぐり部24cが設けられている。本変形例では、基板24の上面を24aとし、座ぐり部24cの底面を24bとする。
【0081】
このような段差10aを設けることにより、面12aを底面24bに向けて押圧した場合に、基板24の上面24aと面12aとを近づけることが容易となる。また、座ぐり部24cと段差10aとの対向部分をバッファ空間として用い、基板24の上面24aとマスター型の面12aとの間への確実な樹脂充填に寄与することができる。
【0082】
しかしながら、このように基板24に座ぐり部24cを設ける構成においては、座ぐり部24cと段差10aとの対向部分の空間の体積が小さいため、図18に示すような樹脂材料のはみ出しDや、図19に示すような樹脂材料の不足Eが起こりやすく、後の中間型や転写型の作製時に不都合を生じる恐れがある。また、基板や型の成形が複雑なため気泡を生じやすい。従って、実施形態に記載の樹脂材料の配置方法を利用することにより、このような基板への座ぐりやマスター型への段差を設ける場合であっても、樹脂材料のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能となる。
【0083】
<変形例4>
実施形態で説明した樹脂材料の配置方法は、樹脂材料を型に配置する場合について説明を行ったがこれに限られない。樹脂材料の配置を型ではなく基板に行う際にも、上記配置方法を用いることにより、樹脂材料のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能となる。
【0084】
すなわち、第1配置ステップとして凹部又は凸部がマトリクス状に配置された面を有する型が押圧される基板に対して、当該型が押圧される範囲の中心に重なるように樹脂材料を吐出する。次に第2配置ステップとして面の頂点を結ぶ対角線上に重なるような基板上の位置に樹脂材料を複数個所吐出する。そして樹脂が配置された基板に対して型を押圧させる押圧ステップ、及び硬化ステップ、離型ステップの各工程を行うことにより、樹脂材料のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能となる。
【0085】
<変形例5>
上述の実施形態においては、マスター型10の面12が正方形であるものとしたが、これに限らず、長方形であっても構わない。但し、面12の長辺の長さと短辺の長さと差が大きくなりすぎると、押圧ステップにおける樹脂材料のはみ出しやすくなるため、少なくとも短辺の長さが長辺の長さの50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上とすることが望ましい。短辺の長さが長辺の長さの50%〜70%である場合は、対角線上に配置する樹脂材料の位置を調整することで、具体的には、面12の中心に近づけることで、短辺からの樹脂のはみ出しを防止することができる。
【0086】
<その他の変形例>
本発明における製造方法は実施形態で説明したものに限られない。例えば転写型製造工程を挟まない場合や、中間型製造工程、転写型工程の両方を挟まない場合であっても適用可能である。いずれの場合であっても実施形態で説明した樹脂材料の配置方法を用いることにより、樹脂材料のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1 ウエハレンズ
2、24、34 基板
3 レンズ部
3A、21A、31A 樹脂
10 マスター型
11、21、31 成形部
12、22、32 面
13、33 凹部
14 ベース部
15、25、35 平坦部
20 中間型
23 凸部
30 転写型
40 ディスペンス装置の吐出口
41 光源
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にマトリクス状に配列された複数の凹部又は凸部を含む樹脂層が形成された樹脂成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学レンズの製造分野においては、ガラス基板に対して硬化性樹脂(熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等)からなるレンズ部を形成することにより、耐熱性の高い光学レンズを得ることができる技術が存在する。
【0003】
この技術を適用した光学レンズの製造方法としては、ガラス基板に対して樹脂製のレンズ部を複数設けた、あるいは、複数のレンズ部を有し樹脂で一体的に成形された、所謂「ウエハレンズ」を作製した後、レンズ部毎にガラス基板をカットして複数の光学レンズを得る方法がある。
【0004】
ウエハレンズを製造する方法としては、例えば以下の方法がある。
【0005】
まず金属等からなるマスター型と基板との間に樹脂材料を介在させて樹脂を硬化させることにより、基板上に樹脂製のレプリカを形成し、この工程を繰り返すことにより、複数のレプリカが形成された樹脂製の中間型を作製する。次にその中間型に対して樹脂材料を塗布・硬化させることにより、樹脂製の転写型を作製する。そしてその転写型に樹脂材料を充填し、ガラス基板を押圧した後、樹脂材料を硬化させることにより、ガラス基板上に複数の樹脂製レンズ部を形成する。更にそのレンズ部とガラス基板とを転写型から離型することにより、ガラス基板上に複数のレンズ部が形成された1枚のウエハレンズが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−102312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、型に樹脂材料を塗布する手法としては、型に対して樹脂材料を定量的に吐出するディスペンス装置を用いるものがある。
【0008】
しかし、ディスペンス装置を用いる場合、樹脂材料の吐出位置や吐出量、更には型の形状等によって、型と基板とを押圧するときに樹脂材料が所望の形に広がらない場合がある。
【0009】
例えば図20Aに示すように、正方形の面fを有する型Fに対して、樹脂材料Aを型Fの中心に1点だけ配置した場合、そこに基板(図示なし)を押圧すると図20B〜図20Cのような広がり方となる(図20Bの矢印は樹脂材料Aの広がり方向を示す)。従って、樹脂材料Aを硬化させて得られる成形物A´は図20Dのように型Fからはみ出たものとなるおそれがある。
【0010】
また図21Aに示すように、正方形の面fを有する型Fに対して、樹脂材料Aを型Fの中心に1箇所、そして型Fの中心と各辺とを結ぶ垂線(図21Aの点線)上に複数個所配置した場合、図21B〜図21Cのような広がり方となる(図21Bの矢印は樹脂材料Aの広がり方向を示す)。従って樹脂材料Aを硬化させて得られる成形物A´は図21Dのように型Fからはみ出たり(図21DのA´´)、気泡(図21DのA´´´)が生じたものとなるおそれがある。
【0011】
マスター型として、上記特許文献1では一つのレンズ部のみを有するものを用いているが、短時間でより多くのレンズ部を形成するために、複数のレンズ部がマトリクス状に並んで形成されたマスター型を用いて繰り返し成形を行うことにより、中間型を作製することも考えられる。このような複数のレンズ部がマトリクス状に形成されたマスター型を用いる場合、マスター型上に配するべき樹脂材料の量も多くなり、上述したような樹脂材料のはみ出しや気泡発生の問題がより顕著になる。このように樹脂材料が型からはみ出たり、気泡を生じた状態では、所望の樹脂成形物を得ることができないという問題があった。
【0012】
従って本発明は、上記課題を解決するために、樹脂材料のはみ出しや気泡の発生の防止を図ることが可能な樹脂成形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、基板上にマトリクス状に配列された複数の凹部又は凸部を含む樹脂層が形成された樹脂成形物の製造方法である。第1配置ステップは、樹脂成形物の凹部又は凸部に対応してマトリクス状に配置された複数の凸部又は凹部を含む矩形の面を有する型の面の中心に重なるように、面及びこれに対向させる基板のうち少なくとも一方に、流動性を有する樹脂材料を滴状に配置する。第2配置ステップは、面の対角線上の複数個所に重なるように面及びこれに対向させる基板のうち少なくとも一方に、樹脂材料を滴状に配置する。押圧ステップは、第1及び第2配置ステップで少なくとも一方に樹脂材料が配置された型及び基板を、樹脂材料を介在させて相対的に押圧する。硬化ステップは、型と基板とが相対的に押圧された状態で、樹脂材料を硬化させ硬化樹脂とする。離型ステップは、硬化樹脂を型から離型する。
また、上記課題を解決するために、請求項2記載の発明は、請求項1記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び第2配置ステップで配置される滴状の樹脂材料間のピッチは実質的に一定である。
また、上記課題を解決するために、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び第2配置ステップで1箇所に配置される滴状の樹脂材料の量は実質的に一定である。
また、上記課題を解決するために、請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップで配置される滴状の樹脂材料の量と第2配置ステップで各箇所に配置される滴状の樹脂材料の量とは異なる。
また、上記課題を解決するために、請求項5記載の発明は、請求項4記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップで配置される滴状の樹脂材料の量は、第2配置ステップで各箇所に配置される滴状の樹脂材料の量の1〜6倍である。
また、上記課題を解決するために、請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び第2配置ステップで配置される樹脂材料の総量は、押圧ステップにおいて形成される型と基板との隙間の体積に実質的に等しい。
また、上記課題を解決するために、請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び前記第2配置ステップにおいて、面及び基板の少なくとも一方に配置される複数の滴状の樹脂材料は、押圧ステップにおける基板上の押圧位置に面を対向させた場合に、基板に対して垂直な方向からみたときの、面の中心に重なる位置にある滴状の樹脂材料と、それ以外の複数の滴状の樹脂材料とのそれぞれの距離が実質的に等しい。
また、上記課題を解決するために、請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ及び/又は第2配置ステップで配置された滴状の樹脂材料のうち少なくとも一組の隣り合う2つの樹脂同士が、押圧ステップによる押圧により最初に交わる点は、凹部又は凸部の頂点を通り面に対して垂直な軸上と異なる位置にある。
また、上記課題を解決するために、請求項9記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、基板には、面の凹部又は凸部を囲む位置に座ぐり部が設けられている。
また、上記課題を解決するために、請求項10記載の発明は、請求項1から9のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法であって、第1配置ステップ後に第2配置ステップを行う。
また、上記課題を解決するために、請求項11記載の発明は、請求項1記載の樹脂成形物の製造方法であって、樹脂成形物は、マトリクス状に配列された複数の樹脂製のレンズ部を含むウエハレンズを成形するためのウエハレンズ用成形型である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、面を有する型及び該型に対向させる基板の少なくとも一方に対して、樹脂材料を、当該面の中心に重なるように、かつ、当該面の対角線上に重なるように、複数個所配置する。これにより、樹脂材料を介在して型と基板とを相対的に押圧しても樹脂材料が型からはみ出たり、気泡を生じたりする可能性を低くすることができる。従って、所期の形状を有する樹脂成形物を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る製造方法により製造されるウエハレンズの一例を示す図である。
【図2】実施形態に係るマスター型を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る中間型を示す側面図である。
【図4】実施形態に係る中間型の製造の様子を模式的に示す図である。
【図5】実施形態に係る転写型を示す側面図である。
【図6】実施形態に係るマスター型から中間型を成形する工程を示すフローチャートである。
【図7A】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図7B】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図7C】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図7D】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図7E】図6のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図8】実施形態に係る中間型から転写型を成形する工程を示すフローチャートである。
【図9】図8のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図10】実施形態に係る転写型からウエハレンズを成形する工程を示すフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図12】本実施形態に係る樹脂材料の配置工程を示すフローチャートである。
【図13A】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図13B】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図13C】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図13D】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図13E】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図14】図12のフローチャートの説明を補足する図面である。
【図15】変形例1における樹脂材料の配置方法の一例を示す図である。
【図16A】変形例2における樹脂材料の配置方法の一例を示す図である。
【図16B】変形例2における樹脂材料の配置方法の一例を示す図である。
【図17】変形例3における基板及び型の一例を示す図である。
【図18】変形例3における基板及び型の一例を示す図である。
【図19】変形例3における基板及び型の一例を示す図である。
【図20A】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図20B】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図20C】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図20D】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図21A】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図21B】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図21C】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【図21D】従来の樹脂成形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
図1から図14を用いて、本発明の樹脂成形物の製造方法の一実施形態としての、本実施形態に係るウエハレンズ用型の製造方法について説明する。ウエハレンズ用型は「樹脂成形物」の一例である。
【0017】
<ウエハレンズ1の構成>
はじめに、図1を用いて、本実施形態に係る製造方法により製造されたウエハレンズ用型を用いて作成されるウエハレンズ1の構成について説明する。
【0018】
ウエハレンズ1は、円形状の透光性の基板2と複数のレンズ部3とを有している。複数のレンズ部3は、基板2の表面及び裏面にそれぞれ光軸が表面側と裏面側とで一致するようにマトリクス状に配置されている。基板2をレンズ部3毎にダイシングすることにより、個片化された複数のウエハレンズを得ることができる。
【0019】
基板2の材質としては透光性のものであればよく、ガラスが好適に用いられる。また基板2は円形状に限らず方形状であってもよい。
【0020】
レンズ部3は、樹脂3Aで形成されている。この樹脂3Aとしては、硬化性樹脂を用いることが可能である。硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられる。これらの硬化性樹脂は、一般的に、重合性単量体などの重合性組成物と重合開始剤とを含み、かつ、未硬化の状態で流動性を有する樹脂材料を、光照射や加熱により重合させて硬化させることにより得られる。
【0021】
レンズ部3の光学面の表面には、回折溝や段差等の微細構造が設けられていてもよい。レンズ部3は、基板2の一方の面のみに形成されてもよい。
【0022】
<ウエハレンズ用型の構成>
図2から図5を用いて、本実施形態において用いるウエハレンズ成形用型の構成について説明する。
【0023】
ウエハレンズ1の製造にあたって、本実施形態では、ウエハレンズ成形用の型としてマスター型10、サブマスター型20(以下、「中間型20」という場合がある)、サブサブマスター型30(以下、「転写型30」という場合がある)を用いる。また以上のマスター型10、中間型20、転写型30を総称して「型(ウエハレンズ成形用型)」という場合がある。
【0024】
<マスター型10の構成>
図2に示す通り、本実施形態におけるマスター型10は、直方体状のベース部11を有している。ベース部11は、正方形の面12を有している。面12には複数の凹部13がマトリクス状に形成されている。凹部13は中間型20の凸部23(後述)に対応する部位であり、面12から略半球形状に凹んでいる。凹部13は最終的に得られるレンズ形状に相当する形状を有しており、公知の加工装置を用いて精密に加工される。
【0025】
面12は矩形であればよく、正方形に限られない。また凹部13が配置される面12が矩形であればよく、ベース部11は円柱状であってもよい。またマスター型10(ベース部11)の材質としては金属、セラミック、ガラス、及び樹脂等が用いられる。特に、加工性と精度の観点から金属製のマスター型を用いることが好ましい。
【0026】
<中間型20の構成>
図3に示す通り、本実施形態における中間型20は、成形部21と基板24を有している。成形部21の表面22には、複数の凸部23が形成されている。図4に示すように、中間型20は、マスター型10を用いて基板24上に繰り返し成形を行うことによって作製され、多数の凸部23はマトリクス状に並んで配列されている。凸部23は、転写型30の凹部33(後述)に対応する部位であり、面22から略半球状に突出している。成形部21は、樹脂21Aで形成されている。樹脂21Aとしては光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が用いられる。基板24は、一定の厚みを有する平板であり、成形部21の強度を補っている。
【0027】
基板24は図4に示したような円形状のものでもよいし、矩形のものでもよい。基板24の材質としては金属、セラミック、ガラス、及び樹脂等が用いられる。正確な厚みを得やすく、薄くても強度に優れたガラス基板を用いることが好ましい。ガラスなど透光性の材質を基板として用いると、転写型30を作製する際に使用する樹脂材料が光硬化性のものである場合、基板側から光を照射して硬化を進行させることができる。
【0028】
<転写型30の構成>
図5に示す通り、本実施形態における転写型30は、成形部31と基板34を有している。成形部31は、中間型20を用いて成形されたものであり、その表面32には、複数の凹部33がマトリクス状に形成されている。凹部33は、レンズ部3に対応する部位であり、面32から略半球状に凹んでいる。成形部31は、樹脂31Aで形成されている。樹脂31Aとしては光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が用いられる。基板34は、一定の厚みを有する平板であり、成形部31の強度を補っている。
【0029】
基板34の形状や材質は、上述した基板24と同様である。
【0030】
これらマスター型10、中間型20、及び転写型30を用いることにより、レンズ部3として凸レンズをウエハレンズ1の基板上に成形する。
【0031】
レンズ部3としては、凸レンズに代えて凹レンズを成形することも可能である。この場合、マスター型10の面12上には凸部が設けられる。また中間型20の面22には凹部が設けられる。更に転写型30の面32には凸部が設けられる。その他の構成については上述の「マスター型10の構成」、「中間型20の構成」、及び「転写型30の構成」と同じである。
【0032】
<ウエハレンズの製造工程>
次に図6〜図11を用いて、ウエハレンズ1の製造工程について説明を行う。本実施形態においてウエハレンズ1の製造工程は、「中間型製造工程」、「転写型製造工程」、「ウエハレンズ製造工程」の3つに分けることができる。以下、それぞれの工程について述べる。なお、ウエハレンズ1、中間型20及び転写型30は凹凸が反対になるだけで製法はほぼ同じである。
【0033】
<中間型製造工程>
図6及び図7A〜図7Eは、マスター型10から中間型20を成形する方法を示している。なお、図7A〜図7Eに示すマスター型10は、図2のC−C方向の断面図である。
【0034】
まずは所望のマスター型10を選択する(S10、図7A参照)。本実施形態においてマスター型10(ベース部11)は金属で形成されているものとする。ベース部11の面12上には、中間型20の凸部23に対応する凹部13が複数個所、マトリクス状に設けられている。なお面12の各凹部13の周辺部には、平坦部15が形成されている。
【0035】
次に、S10で選択されたマスター型10の上方にディスペンス装置の吐出口40を配置する。そして吐出口40から、マスター型10の面12上に流動性を有する未硬化の樹脂材料21A´を吐出する(S11、図7B参照)。樹脂材料21A´は、硬化した後に中間型20の成形部21を成す。本実施形態において、樹脂材料21A´としては光硬化性樹脂材料が用いられる。この吐出の詳細については後述する。
【0036】
次に製造装置(図示なし)は、S11で樹脂材料21A´が配置された状態のマスター型10を基板24に向けて上昇させ、樹脂材料21A´を基板24に押圧する(S12、図7C参照)。基板24は、真空チャック装置(図示なし)等によってマスター型10の上方に吸引・固定されている。本実施形態において基板24は光を透過可能な材質(例えばガラス)で形成されている。基板24の押圧は製造装置により、基板24の全体に均一の圧力がかかるようになされることが望ましい。
【0037】
次にS12で基板24とマスター型10が押圧された状態において、光源41が基板24側から樹脂材料21A´対して光を照射する(S13、図7D参照)。上述のように、樹脂材料21A´は光硬化性樹脂材料であり、基板24は光を透過可能な材質で形成されている。よって光源41からの光は基板24を透過して樹脂材料21A´に到達し、その光により重合反応が生じることで樹脂材料21A´は硬化して樹脂21Aとなる。
【0038】
S13で樹脂材料21A´が硬化された後、製造装置は、基板24と結合された状態の樹脂21Aをマスター型10から剥離させる(S14、図7E参照)。そして、基板24の別の位置(先に凸部23が形成された位置と異なる位置)でS11からS14までの処理を行う。このようにS11からS14までの処理を基板24上で凸部23を成形できる空きスペースが無くなるまで繰り返す(S15でYの場合)。基板24上で凸部23を成形できるスペースが無くなると全ての成形が完了し(S15でNの場合)、基板24上に複数の凸部23を有する樹脂からなる成形部21が形成された中間型20が完成する(S14、図7E参照)。
【0039】
また平坦部15には予め離型剤を塗布し、S11で吐出された樹脂材料21A´とマスター型10との離型性を上げることが望ましい。このように、離型剤の塗布等によって離型層がマスター型に設けられていると、樹脂材料の粘度が小さい場合でも吐出された樹脂材料が滴状になりやすくなるため、後述する樹脂配置方法を適用する意義がより高いといえる。離型剤を用いる場合、平坦部15に対してUVオゾン洗浄や酸素プラズマアッシング等の表面改質処理を行うことにより、OH基(水酸基)を立たせる。そして平坦部15に対して、末端に加水分解可能な官能基が結合した材料(例えばシランカップリング構造を有する材料)を塗布する。するとその官能基と平坦部15表面に存在するOH基との間で脱水縮合又は水素結合等が起こり、離型剤が平坦部15表面に固着されることとなる。
【0040】
<転写型製造工程>
図8及び図9は、S14で得られた中間型20から転写型30を成形する方法を示している。
【0041】
まず、S14で得られた中間型20の下方に中間型の成形部22に面するように基板34を配置する(S20)。基板34上には、予め流動性を有する未硬化の樹脂材料31A´が塗布されているものとする。硬化した後の樹脂31Aは、転写型30の成形部31を成す。本実施形態において樹脂材料31A´としては光硬化性樹脂材料が用いられる。中間型20の面22上には、転写型30の凹部33に対応する凸部23が複数個所、マトリクス状に設けられている。なお面22の各凸部23の周辺部には、平坦部25が形成されている。
【0042】
次に製造装置(図示なし)は、S20で樹脂材料31A´が塗布された状態の面22(中間型20)に対して、基板34を押圧する(S21)。本実施形態において基板34は光を透過可能な材質(例えばガラス)で形成されている。基板34の押圧は製造装置により、基板34の全体に均一の圧力がかかるようになされることが望ましい。また中間型20は、基板34の上方に真空チャック装置(図示なし)等によって吸引・固定されている。
【0043】
次にS21で基板34と中間型20が押圧された状態において、光源41が基板34側から光を照射する(S22、図9参照)。上述のように、樹脂材料31A´は光硬化性樹脂材料であり、基板34は光を透過可能な材質で形成されている。よって光源41からの光は基板34を透過して樹脂材料31A´に到達し、その光により重合反応が生じることで樹脂材料31A´は硬化し、樹脂31Aとなる。
【0044】
S22で樹脂材料31A´が硬化された後、製造装置は、基板34と結合された状態の樹脂31Aを中間型20から剥離する。その結果、転写型30が完成する(S23)。
【0045】
また平坦部25に予め離型剤を塗布するなどして、樹脂31Aと中間型20との離型性を上げることが望ましい。離型剤を塗布する場合には、更に平坦部25の表面改質処理を行うことが望ましい。
【0046】
<ウエハレンズ製造工程>
図10及び図11は、転写型30からウエハレンズ1を成形する方法を示している。
【0047】
まず、S23で得られた転写型30の上方に基板2を配置する。転写型30の面32には、予め流動性を有する未硬化の樹脂材料3A´が塗布されているものとする(S30)。樹脂材料3A´は、硬化した後にレンズ部3を成す。本実施形態において樹脂材料3A´としては光硬化性樹脂材料が用いられる。転写型30の面32上には、レンズ部3に対応する凹部33が複数個所、マトリクス状に設けられている。なお面32の各凹部33の周辺部には、平坦部35が形成されている。
【0048】
次に製造装置(図示なし)は、S30で樹脂材料3A´が塗布された状態の転写型30を基板2に対して上昇させ、樹脂材料3A´を基板2に押圧する(S31)。本実施形態において基板2は光を透過可能な材質(例えばガラス)で形成されている。基板2の押圧は製造装置により、基板2の全体に均一の圧力がかかるようになされることが望ましい。また基板2は、転写型30の上方に真空チャック装置(図示なし)等によって吸引・固定されている。
【0049】
次にS31で基板2と転写型30が押圧された状態において、光源41が基板2側から光を照射する(S32、図11参照)。上述のように、樹脂材料3A´は光硬化性樹脂材料であり、基板2は光を透過可能な材質で形成されている。よって光源41からの光は基板2を透過して樹脂材料3A´に到達し、その光により重合反応が生じることで樹脂材料3A´は硬化し樹脂3Aとなる。
【0050】
S32で樹脂材料3A´が硬化された後、製造装置は、基板2と結合された状態の樹脂3Aを転写型30から剥離させる。その結果、レンズ部3が完成する(S33、図11参照)。こうして、基板2上に複数のレンズ部3が形成されたウエハレンズ1が完成する(S34)。
【0051】
なお平坦部35に予め離型剤を塗布するなどして、樹脂3Aと転写型30との離型性を上げることが望ましい。離型剤を塗布する場合には、更に平坦部35の表面改質処理を行うことが望ましい。
【0052】
<樹脂材料の配置方法>
次に図12及び図13を用いて、本実施形態に係る樹脂材料の配置方法について説明する。ここではマスター型10に対して樹脂材料21A´を配置する場合について述べる。
【0053】
図13A〜図13Eは、マスター型10において凹部13が設けられている面12を示した図である。本実施形態では面12上に樹脂材料21A´を5箇所配置する場合について説明を行う。また本実施形態では面12上に凹部13が4×4個配置(4行4列のマトリクス状に配置)されている構成を用いて説明を行う。
【0054】
本実施形態において、「樹脂配置ピッチ(p)」とは、配置された各樹脂材料21A´のそれぞれの中心間の距離をいう(図13B参照)。また「成形樹脂厚」とは押圧ステップ後におけるマスター型10の面12から基板24までの距離(図7Dに示すR)をいう。また「総量」とは、マスター型10上に配置される全ての樹脂材料21A´の総量をいう。また「型と基板との隙間の体積」とは、マスター型10(面12)の各辺と、その各辺に対向する位置にある基板24の各辺とが成す面に囲まれた空間(型と基板の隙間)の体積をいう。具体的には、基板24の表面が平坦である場合には、面12の面積×成形樹脂厚で算出される値である。また面12の頂点を結ぶ対角線をL1、L2とする(図13A参照)。
【0055】
ここで、図12を用いて本実施形態における樹脂材料の配置工程を説明する。図12は、図6のS11の工程を詳しく述べるものである。なお本実施形態において、ディスペンス装置の駆動は所定のプログラムに基づいて実行される。或いは操作者が手動で操作してもよい。
【0056】
まずS10で選択されたマスター型10に対して、ディスペンス装置の吐出口40から、面12の中心P1に樹脂材料21A ´を所定量吐出する(S110、第1配置ステップ。図13A参照)。吐出された樹脂材料21A´はある程度の粘性を有すること、及び、マスター型10上に形成した離型層の存在のため吐出された位置(中心P1)近傍に滴状に留まった状態となる。
【0057】
次にディスペンス装置の吐出口40から、面12の対角線L1、L2上の複数箇所(P2〜P5)に樹脂材料21A´を所定量吐出する(S111、第2配置ステップ。図13B参照)。こうして、図13Bに示すように、マスター型10の面12の中心に重なる位置(符号P1で示す)と、面12の対角線上の複数の箇所に重なる位置(符号P2〜P5で示す)とに滴状の樹脂材料がそれぞれ間隔をあけて配置される。換言すれば、面12の中心部及び中心からと四隅に向かう各途中位置には樹脂材料が配置されているが、それ以外の位置、例えば、面12の中心から四辺に向かう垂線と重なる位置には樹脂材料は配置されない。ここで、中央部P1の滴状樹脂材料の中心は面12の中心とほぼ一致しており、周辺部P2〜P5の滴状樹脂材料の中心はそれぞれほぼ面12の対角線上にある。また、滴状樹脂材料P1とP2〜P5との樹脂配置ピッチが実質的に等しくなるように配置されている。なお、S110の次にS111を実行すると、何らかの原因で押圧前に各樹脂が接触したとしても、比較的気泡を生じにくいという利点があるが、S110とS111は逆の順番であってもよく、また、S111の途中でS110を実行してもよい。
【0058】
このように樹脂材料21A´が5箇所配置された状態において、マスター型10(面12)を基板24に向けて上昇させ、樹脂材料21A´を基板24に押圧する(S12)。すると面12上では図13C〜図13Dのように樹脂材料21A´が広がっていく。そして図13Eに示すように面12上で樹脂材料21A´がはみ出すことなく、且つ気泡が生じない状態となる。
【0059】
このように、樹脂材料21A´を面12の中心に重なる位置P1と面12の対角線L1、L2上の複数箇所P2〜P5とに配置することにより、樹脂材料のはみ出しや気泡の発生が抑えられる詳しい理由は不明であるが、中央部に樹脂が存在することにより、周辺部の樹脂材料によって空間が残存することが防止されること、中央部から最も距離の遠い四隅に向かう位置に樹脂が存在することにより確実に四隅を含めた端部まで樹脂材料を行き渡らせることができること、面12の中央部から周辺部へと押し広げられるように樹脂材料が広がっていくこと、樹脂材料は面12の縁部に到達した後に樹脂材料の体積が少ないために面12のエッジ部に沿って広がろうとすること、等が関係しているものと推測される。
【0060】
なお本実施形態の一例としては、1辺が13.2mm角の面12に対して、樹脂材料21A´の総量は34.3mg(1点あたり、6.86mg)、成形される樹脂厚は160μm、樹脂配置ピッチは6.2mmとなる。
【0061】
また図14に示すように、面12上に樹脂材料21A´を9箇所配置すること、すなわち、面12の対角線上において、中央部と隅との間に2以上の滴状樹脂材料を配置するによっても図13Eに示すような樹脂材料21Aの状態を形成することが可能である。この場合、樹脂の総量が大きく変わらないようにするために、個々の滴状の樹脂材料のサイズが小さくなるようにする。このように樹脂量を少なくして配置する数を増やすと、樹脂材料を配置する回数は増加するが、押圧時の樹脂材料の広がり方をより制御しやすくなる。従って、レンズ部に対応する凹部や凸部の寸法が小さい場合や数が多い場合にも気泡が生じにくい。
【0062】
この場合、例えば1辺が17.4mm角の面12に対して、樹脂材料21A´の総量は37.2mg(1点あたり、4.13mg)、成形される樹脂厚は100μm、樹脂配置ピッチは3.39mmとなる。
【0063】
本実施形態においてディスペンス装置は、樹脂配置ピッチpが樹脂間(P1に対するP2〜P5の距離)で実質的に一定となる位置に樹脂材料21A´の吐出を行うよう駆動する。
【0064】
また本実施形態において、ディスペンス装置は、S110での樹脂材料21A´の吐出量と、S111で1箇所に配置される樹脂材料21A´の吐出量とが一定となるように駆動される。なお、1点の樹脂量は0.1mg以上50mg以下が望ましい。1点の樹脂量が0.1mgを下回ると樹脂の吐出回数が増加して非効率的になるのと、吐出位置を正確に制御することが難しくなり、マスター型上に吐出できなかったり、気泡を発生しないような位置に樹脂を配置できなくなったりする恐れがある。また、1点の樹脂量が50mgを超えると、吐出後の樹脂の形状が不安定になったり、型の端部に樹脂材料を吐出する際に型からはみ出しやすくなったり、意図した量の吐出が難しくなったりする傾向がある。
【0065】
このように実質的に一定の樹脂配置ピッチを保つ、或いは第1配置ステップと第2配置ステップにおける吐出量を一定とすることにより、面12上で樹脂材料21A´がどのように広がるかを予測し易くなる。またディスペンス装置の吐出位置設定が容易となる。従ってウエハレンズ1等を製造する際の作業性向上を図ることが可能となる。
【0066】
また本実施形態においては、S110(第1配置ステップ)とS111(第2配置ステップ)で吐出される樹脂材料21A´の総量を、押圧ステップにおいて形成されるマスター型10と基板24との隙間の体積に実質的に等しくすることが望ましい。
【0067】
この場合、例えばシミュレーション等により、予め樹脂材料21A´の総量を求めておく。そして当該値に基づき、ディスペンス装置が樹脂材料の吐出量を調整したり、製造装置が押圧する際の圧力を調整したりすることにより実現可能となる。
【0068】
このように樹脂材料の総量を型と基板の隙間の体積と実質的に等しくすることにより、押圧する際に樹脂材料が基板からはみ出しを押さえつつ(或いは樹脂材料が基板の隅々まで行き渡らないということなく)ウエハレンズやウエハレンズ用型を製造することが可能となる。
【0069】
なお本実施形態においては、マスター型10上に樹脂材料21A´を吐出する例について説明したがこれに限られない。例えば、基板24上の、マスター型10に対向する位置に樹脂材料を配置してもよいし、マスター型10と基板24の両方に配置してもよい。また、中間型を用いることなく、型から直接にウエハレンズを作製する場合、レンズ部を構成する樹脂材料を上述した手順で型及び基板の少なくとも一方に配置することで、所期の形状を有するウエハレンズを作製することができる。さらに、本実施形態では、面に凹部を有する型に樹脂材料を配置する場合について説明を行ったがこれに限られない。例えば面に凸部を有する型であっても同様の工程を適用することが可能である。
【0070】
なお、マスター型10と基板とを向き合わせて押圧する前に、基板24上に樹脂材料を配置する場合やマスター型10の面12及び基板24の両方に樹脂材料を配置する場合は、押圧ステップにおける基板24上の押圧位置に面12を対向させた場合に、基板24に対して垂直な方向からみたときの、面12の中心に重なる位置にある樹脂材料と、それ以外の複数の樹脂材料とのそれぞれの距離(樹脂配置ピッチ)が実質的に等しくなるようにすればよい。
【0071】
<変形例1>
本実施形態では、第1配置ステップと第2配置ステップとで樹脂材料の吐出量を一定とする構成について説明を行ったが、これに限られない。
【0072】
例えば、第1配置ステップによる樹脂材料の吐出量を、第2配置ステップで各箇所に吐出される樹脂材料の吐出量よりも多く設定することが可能である(図15参照)。吐出量の変更は所定のプログラム(或いは操作者の操作入力)に基づいてディスペンス装置により行われる。このように樹脂材料の吐出量を変えることにより、樹脂の広がり方をある程度変化させることができ、樹脂のはみ出しや不足が生じそうな場合に微調整しやすくなる。また、樹脂の吐出回数を減らして作業効率の改善に繋げることもできる。
【0073】
なお、第1配置ステップで吐出される樹脂材料の吐出量は、第2配置ステップで各箇所に吐出される樹脂材料の吐出量の0.8倍〜6倍、より好ましくは1倍〜3倍であることが望ましい。前者が後者の6倍を超えると、最適ピッチの設定が難しくなってはみ出しが起きやすくなり、また、前者が後者の0.8倍未満であると、中央部に空間ができやすく気泡が生じやすくなる。
【0074】
<変形例2>
滴状の樹脂材料を配置する面12上の位置は、マスター型10の面12に含まれる複数の凹部の位置によって制限を受けるものではないが、押圧ステップによる圧力が弱い場合や、凹部のアスペクト比(凹部13の径r(面12に対する横方向)に対する高さh(面12に対する縦方向)の比。図16A参照)が高い場合、樹脂材料21A´が凹部13に充填され難くなる傾向があるため、凹部の位置をも考慮して樹脂材料を配置するようにしてもよい。
【0075】
図16A及び図16Bはマスター型10上で樹脂材料21A´同士が交わる状態を示した図である。図16A及び図16Bは、図2のマスター型10のC−C断面である(図16A及び図16Bでは波線により左右の一部を省略している)。図16Aのように配置された樹脂材料21A´は、押圧されることにより、図16Bのように他の樹脂材料21A´と接することとなる。ここでは、樹脂材料21A´同士が最初に接する点をQとする。また凹部13の最下点をSとする。
【0076】
ここで、点Qが凹部13の最下点Sの軸上に位置すると、上述したように押圧力が小さい場合や凹部のアスペクト比が大きい場合には、樹脂材料21A´が凹部13に充填され難くなると考えられる。
【0077】
そこで、図16Bに示すように、隣り合う2つの樹脂材料21A´同士が押圧によって最初に交わる点Qが、マスター型10の凹部13の最下点Sを通りマスター型10の表面22に対して垂直な軸上と異なる位置にあるようにしておくことが好ましい。このためには、ディスペンス装置により樹脂材料21A´を吐出するピッチや樹脂量を調整することが望ましい。例えば、樹脂数を増やしてピッチを狭くする。あるいは、滴下される樹脂数を減らして樹脂配置ピッチを広くし、隣り合う滴状の樹脂材料が押圧により最初に交わる点の位置を変化させる。あるいは、樹脂数はそのままで僅かに樹脂量を増加・減少させ、樹脂配置ピッチを変更する。このような方法を用いることにより、S110で吐出された樹脂材料21A´とS111で吐出された樹脂材料21A´(或いはS111で吐出された樹脂材料21A´同士)が押圧ステップにより基板24に対して押圧されていく際、それら樹脂材料21A´同士が最初に交わる点Qが、凹部23の最下点Sを通り面12に対して垂直な軸上と異なる位置となるように調整できる。
【0078】
従って、押圧ステップの圧力や凹部のアスペクト比に関わらず、気泡の発生を抑えてウエハレンズやウエハレンズ用型を製造することが可能となる。
【0079】
<変形例3>
また実施形態では、基板は平坦なものとして説明をおこなったがこれに限られない。例えば型から樹脂を剥離する際の作業をし易くしたり、樹脂部分の厚みを薄くしたりするなどの目的のために、段差が設けられた型、及び座ぐり部が設けられた基板を用いることも可能である。本変形例では、中間型20の製造工程を例に説明を行う。なお、本変形例のマスター型10は、その面12に凹部13の代わりに凸部(図示なし)が形成されているものとして説明を行う。
【0080】
図17に示すように、マスター型10の面12は、段差10aにより凸部が成形される部分(面12a)と、それ以外の部分(面12b)とに分けられている。また基板24におけるマスター型10の凸部に対応する位置には座ぐり部24cが設けられている。本変形例では、基板24の上面を24aとし、座ぐり部24cの底面を24bとする。
【0081】
このような段差10aを設けることにより、面12aを底面24bに向けて押圧した場合に、基板24の上面24aと面12aとを近づけることが容易となる。また、座ぐり部24cと段差10aとの対向部分をバッファ空間として用い、基板24の上面24aとマスター型の面12aとの間への確実な樹脂充填に寄与することができる。
【0082】
しかしながら、このように基板24に座ぐり部24cを設ける構成においては、座ぐり部24cと段差10aとの対向部分の空間の体積が小さいため、図18に示すような樹脂材料のはみ出しDや、図19に示すような樹脂材料の不足Eが起こりやすく、後の中間型や転写型の作製時に不都合を生じる恐れがある。また、基板や型の成形が複雑なため気泡を生じやすい。従って、実施形態に記載の樹脂材料の配置方法を利用することにより、このような基板への座ぐりやマスター型への段差を設ける場合であっても、樹脂材料のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能となる。
【0083】
<変形例4>
実施形態で説明した樹脂材料の配置方法は、樹脂材料を型に配置する場合について説明を行ったがこれに限られない。樹脂材料の配置を型ではなく基板に行う際にも、上記配置方法を用いることにより、樹脂材料のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能となる。
【0084】
すなわち、第1配置ステップとして凹部又は凸部がマトリクス状に配置された面を有する型が押圧される基板に対して、当該型が押圧される範囲の中心に重なるように樹脂材料を吐出する。次に第2配置ステップとして面の頂点を結ぶ対角線上に重なるような基板上の位置に樹脂材料を複数個所吐出する。そして樹脂が配置された基板に対して型を押圧させる押圧ステップ、及び硬化ステップ、離型ステップの各工程を行うことにより、樹脂材料のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能となる。
【0085】
<変形例5>
上述の実施形態においては、マスター型10の面12が正方形であるものとしたが、これに限らず、長方形であっても構わない。但し、面12の長辺の長さと短辺の長さと差が大きくなりすぎると、押圧ステップにおける樹脂材料のはみ出しやすくなるため、少なくとも短辺の長さが長辺の長さの50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上とすることが望ましい。短辺の長さが長辺の長さの50%〜70%である場合は、対角線上に配置する樹脂材料の位置を調整することで、具体的には、面12の中心に近づけることで、短辺からの樹脂のはみ出しを防止することができる。
【0086】
<その他の変形例>
本発明における製造方法は実施形態で説明したものに限られない。例えば転写型製造工程を挟まない場合や、中間型製造工程、転写型工程の両方を挟まない場合であっても適用可能である。いずれの場合であっても実施形態で説明した樹脂材料の配置方法を用いることにより、樹脂材料のはみ出しや、気泡の発生の防止を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1 ウエハレンズ
2、24、34 基板
3 レンズ部
3A、21A、31A 樹脂
10 マスター型
11、21、31 成形部
12、22、32 面
13、33 凹部
14 ベース部
15、25、35 平坦部
20 中間型
23 凸部
30 転写型
40 ディスペンス装置の吐出口
41 光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にマトリクス状に配列された複数の凹部又は凸部を含む樹脂層が形成された樹脂成形物の製造方法であって、
前記樹脂成形物の凹部又は凸部に対応してマトリクス状に配置された複数の凸部又は凹部を含む矩形の面を有する型の前記面の中心に重なるように、前記面及びこれに対向させる前記基板のうち少なくとも一方に、流動性を有する樹脂材料を滴状に配置する第1配置ステップと、
前記面の対角線上の複数個所に重なるように前記面及びこれに対向させる前記基板のうち少なくとも一方に、前記樹脂材料を滴状に配置する第2配置ステップと、
前記第1及び前記第2配置ステップで少なくとも一方に前記樹脂材料が配置された前記型及び前記基板を、前記樹脂材料を介在させて相対的に押圧する押圧ステップと、
前記型と前記基板とが相対的に押圧された状態で、前記樹脂材料を硬化させ硬化樹脂とする硬化ステップと、
前記硬化樹脂を前記型から離型する離型ステップと、
を有することを特徴とする樹脂成形物の製造方法。
【請求項2】
前記第1配置ステップ及び前記第2配置ステップで配置される滴状の前記樹脂材料間のピッチは実質的に一定であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項3】
前記第1配置ステップ及び前記第2配置ステップで1箇所に配置される滴状の前記樹脂材料の量は実質的に一定であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項4】
前記第1配置ステップで配置される滴状の前記樹脂材料の量と前記第2配置ステップで各箇所に配置される滴状の前記樹脂材料の量とは異なることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項5】
前記第1配置ステップで配置される滴状の前記樹脂材料の量は、前記第2配置ステップで各箇所に配置される滴状の前記樹脂材料の量の1〜6倍であることを特徴とする請求項4記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項6】
前記第1配置ステップ及び前記第2配置ステップで配置される前記樹脂材料の総量は、前記押圧ステップにおいて形成される前記型と前記基板との隙間の体積に実質的に等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項7】
前記第1配置ステップ及び前記第2配置ステップにおいて、前記面及び前記基板の少なくとも一方に配置される複数の滴状の前記樹脂材料は、前記押圧ステップにおける前記基板上の押圧位置に前記面を対向させた場合に、前記基板に対して垂直な方向からみたときの、前記面の中心に重なる位置にある滴状の前記樹脂材料と、それ以外の複数の滴状の前記樹脂材料とのそれぞれの距離が実質的に等しいことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項8】
前記第1配置ステップ及び/又は前記第2配置ステップで配置された滴状の前記樹脂材料のうち少なくとも一組の隣り合う2つの樹脂同士が、前記押圧ステップによる押圧により最初に交わる点は、前記凹部又は前記凸部の頂点を通り前記面に対して垂直な軸上と異なる位置にあることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項9】
前記基板には、前記面の前記凹部又は前記凸部を囲む位置に座ぐり部が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項10】
前記第1配置ステップ後に前記第2配置ステップを行うことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂成形物は、マトリクス状に配列された複数の樹脂製のレンズ部を含むウエハレンズを成形するためのウエハレンズ用成形型である請求項1に記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項1】
基板上にマトリクス状に配列された複数の凹部又は凸部を含む樹脂層が形成された樹脂成形物の製造方法であって、
前記樹脂成形物の凹部又は凸部に対応してマトリクス状に配置された複数の凸部又は凹部を含む矩形の面を有する型の前記面の中心に重なるように、前記面及びこれに対向させる前記基板のうち少なくとも一方に、流動性を有する樹脂材料を滴状に配置する第1配置ステップと、
前記面の対角線上の複数個所に重なるように前記面及びこれに対向させる前記基板のうち少なくとも一方に、前記樹脂材料を滴状に配置する第2配置ステップと、
前記第1及び前記第2配置ステップで少なくとも一方に前記樹脂材料が配置された前記型及び前記基板を、前記樹脂材料を介在させて相対的に押圧する押圧ステップと、
前記型と前記基板とが相対的に押圧された状態で、前記樹脂材料を硬化させ硬化樹脂とする硬化ステップと、
前記硬化樹脂を前記型から離型する離型ステップと、
を有することを特徴とする樹脂成形物の製造方法。
【請求項2】
前記第1配置ステップ及び前記第2配置ステップで配置される滴状の前記樹脂材料間のピッチは実質的に一定であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項3】
前記第1配置ステップ及び前記第2配置ステップで1箇所に配置される滴状の前記樹脂材料の量は実質的に一定であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項4】
前記第1配置ステップで配置される滴状の前記樹脂材料の量と前記第2配置ステップで各箇所に配置される滴状の前記樹脂材料の量とは異なることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項5】
前記第1配置ステップで配置される滴状の前記樹脂材料の量は、前記第2配置ステップで各箇所に配置される滴状の前記樹脂材料の量の1〜6倍であることを特徴とする請求項4記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項6】
前記第1配置ステップ及び前記第2配置ステップで配置される前記樹脂材料の総量は、前記押圧ステップにおいて形成される前記型と前記基板との隙間の体積に実質的に等しいことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項7】
前記第1配置ステップ及び前記第2配置ステップにおいて、前記面及び前記基板の少なくとも一方に配置される複数の滴状の前記樹脂材料は、前記押圧ステップにおける前記基板上の押圧位置に前記面を対向させた場合に、前記基板に対して垂直な方向からみたときの、前記面の中心に重なる位置にある滴状の前記樹脂材料と、それ以外の複数の滴状の前記樹脂材料とのそれぞれの距離が実質的に等しいことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項8】
前記第1配置ステップ及び/又は前記第2配置ステップで配置された滴状の前記樹脂材料のうち少なくとも一組の隣り合う2つの樹脂同士が、前記押圧ステップによる押圧により最初に交わる点は、前記凹部又は前記凸部の頂点を通り前記面に対して垂直な軸上と異なる位置にあることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項9】
前記基板には、前記面の前記凹部又は前記凸部を囲む位置に座ぐり部が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項10】
前記第1配置ステップ後に前記第2配置ステップを行うことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の樹脂成形物の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂成形物は、マトリクス状に配列された複数の樹脂製のレンズ部を含むウエハレンズを成形するためのウエハレンズ用成形型である請求項1に記載の樹脂成形物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図17】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図17】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図21D】
【公開番号】特開2012−153098(P2012−153098A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16429(P2011−16429)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]