説明

樹脂押出用口金装置及び樹脂シートの製造方法

【課題】吐出口から吐出される樹脂材料のシート厚を正確に制御すること。
【解決手段】互いにリップ面11を対向させた状態で接続した一対のリップ10と、リップ面11の相互間距離を調整する調整手段20とを具備し、リップ面11の相互間に構成されるスリット状の吐出口12から樹脂材料を吐出する樹脂押出用口金装置において、吐出口12の外部においてリップ面11に平行となる態様でリップ10に設けた測定面13と、測定面13に対向する態様でリップ10に保持され、予め設定した計測基準から測定面13までの距離を計測する変位センサ30とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップ面を互いに対向させた状態で配置される一対のリップを備え、これらリップのリップ面相互間に構成されるスリット状の吐出口から樹脂材料を吐出する樹脂押出用口金装置及びこれを適用した樹脂シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リップ面の相互間に構成されるスリット状の吐出口から樹脂材料を吐出することによって樹脂シートを成形する装置においては、リップ面の相互間距離を正確に制御することがシート厚の寸法精度を向上する上できわめて重要となる。特に、比較的粘性の大きい樹脂材料の場合には、シート厚のばらつきを改善するためにリップ面の相互間距離が小さく設定されるため、リップ面の相互間距離を制御する場合に要求される寸法精度もきわめて大きなものとなる。
【0003】
このため、この種の樹脂押出用口金装置には、リップ面の相互間距離を正確に計測するようにしたものが種々提供されている。例えば、特許文献1においては、吐出口を構成するリップの先端面にそれぞれ吐出口の端縁部に平行となるように段部を形成し、これらの段部及び吐出口の端縁部を2次元変位センサによって同時に計測することにより、リップ面の相互間距離を算出するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−183158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂押出用口金装置のリップ面は、樹脂材料を吐出している際にその圧力や温度の影響を受ける。つまり、樹脂材料を吐出する以前にリップ面の相互間距離を計測してこれを正確な値に設定したとしても、実際に樹脂材料を吐出している際には、圧力や温度の影響によって変化している場合がある。従って、リップ面の相互間距離に関しては、実際に樹脂材料を吐出している際にこれを所望の値に設定することが好ましい。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のものにあっては、樹脂材料を吐出している際にリップ面の相互間距離を計測することは困難であり、上述の要求に応えることもできない。
【0007】
本発明の目的は、上記実情に鑑みて、吐出口から吐出される樹脂材料のシート厚を正確に制御することのできる樹脂押出用口金装置及び樹脂シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る樹脂押出用口金装置は、互いにリップ面を対向させた状態で接続した一対のリップと、前記各リップ面の相互間距離を調整する調整手段とを具備し、前記各リップ面の相互間に構成されるスリット状の吐出口から樹脂材料を吐出する樹脂押出用口金装置において、前記吐出口の外部において前記リップ面に平行となる態様で前記一対のリップそれぞれに設けた測定面と、前記測定面に対向する態様で前記一対のリップそれぞれに設けた測定面に対向するよう保持され、予め設定した計測基準から前記測定面までの距離を計測する前記一対のリップそれぞれに対応する計測手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る樹脂押出用口金装置は、上述した請求項1において、前記測定面に平行となる態様で前記一対のリップそれぞれにレール部材を配設し、該レール部材を介して前記一対のリップそれぞれに対応する計測手段をそれぞれのリップに保持させたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る樹脂押出用口金装置は、上述した請求項2において、前記レール部材の延在方向に沿って前記計測手段を移動可能に配設したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る樹脂押出用口金装置は、上述した請求項2または請求項3において、少なくとも一方のリップに対応する前記計測手段に関して、前記計測基準に対する前記計測手段の位置のずれを検出し、検出した前記ずれ量に基づいて前記計測手段の計測した距離を補正する補正処理手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る樹脂押出用口金装置は、上述した請求項4において、少なくとも一方のリップに対応する前記計測手段に関して、前記計測手段は、前記レール部材との間に姿勢を変更するための姿勢変更手段を具備したものであり、前記補正処理手段は、前記計測手段の姿勢を検出し、かつ前記計測手段の姿勢が予め設定した計測姿勢に対してずれていることを検出した場合に前記姿勢変更手段を通じて前記計測手段の姿勢を修正するものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る樹脂シートの製造方法は、上述した請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載の樹脂押出用口金装置を適用して樹脂製のシートを製造する方法であって、吐出口から樹脂材料を吐出しながら計測手段による計測を実施し、該計測手段の計測結果に基づいて算出されるリップ面の相互間距離が予め設定した値となるように前記調整手段を駆動することを特徴とする。
本発明において、「予め設定した計測基準」とは、測定面の位置を規定するための座標系をいう。レール部材や測定面の変形によらない基準であれば、任意の基準を設定することができる。例えば、樹脂材料吐出前でレール部材が直線である場合のレール部材の中心軸またはそれに平行な直線を計測基準としても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、計測基準から吐出口の外部に設けた測定面までの距離を、測定面に対向して配置した計測手段によって計測するようにしているため、吐出口から樹脂材料を吐出している間においてもリップ面の相互間距離を算出することができる。従って、実際に樹脂材料を吐出している際のリップ面の相互間距離を直接調整することが可能となり、シート厚を正確に制御して寸法精度の高い樹脂シートを押し出し成形することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る樹脂押出用口金装置及び樹脂シートの製造方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である樹脂押出用口金装置を示したものである。ここで例示する樹脂押出用口金装置は、PET(polyethylene terephthalate)、PP(polypropylene)、オレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー等の樹脂材料を吐出することによって所望のシート厚を有した樹脂シートSを押し出し成形するためのものである。本発明は特に、PETよりも粘性の大きなPP、オレフィン系ポリマーやアクリル系ポリマーを用いた場合により効果が高いがPETであってももちろん良い。この樹脂押出用口金装置は、接続ボルト1によって互いに接続した一対のリップ10を備えている。
【0017】
リップ10は、それぞれがブロック状を成すもので、個々の先端部に形成したリップ面11の相互間に吐出口12を構成している。吐出口12は、図示せぬ押出機からリップ10に供給された樹脂材料が吐出される部分であり、リップ10の幅方向(図2において上下方向)に対してリップ面11の相互間距離が十分に小さいスリット状を成している。図1からも明らかなように、リップ面11は、少なくとも吐出口12を構成する先端部分においては平面状に構成してある。
【0018】
また、それぞれのリップ10には、測定面13が設けてある。測定面13は、リップ10において吐出口12の外部となる部位に形成した平面であり、個々のリップ面11に対して平行となるように設けてある。本実施の形態では特に、リップ面11と表裏の関係となるようにそれぞれのリップ10の先端部に測定面13を設けるようにしている。
【0019】
これら一対のリップ10には、調整手段20が設けてある。調整手段20は、リップ面11の相互間距離を設定・変更するためのものである。本実施の形態では、一方のリップ10に設けた調整ボルト21と、調整ボルト21を駆動するための調整用アクチュエータ22とを備え、調整用アクチュエータ22によって調整ボルト21を螺合させた場合にリップ面11の相互間距離を変更することのできる調整手段20を適用している。また、図には明示していないが、本実施の形態では、吐出口12の延在方向に沿って調整ボルト21を複数配設してあり、これらの調整ボルト21を個別に駆動することによってリップ面11の相互間距離を部分的に変更することができるように構成してある。
【0020】
一方、上記樹脂押出用口金装置は、変位センサ(計測手段)30及び補正情報検出センサ40を備えている。変位センサ30は、接触状態、もしくは非接触状態で測定対象までの距離を計測するものであるが、接触状態で距離を測定する変位センサはセンサ自身の温度による熱膨張等の影響を受けるため、非接触状態で距離を測定するセンサが望ましい。この種の変位センサ30としては、例えば測定対象に対してレーザー光を照射する投光部と、測定対象からの反射光を受光する受光部とを具備し、受光部での受光位置に基づいて測定対象までの距離(変位)を計測する光学式のものを適用することができる。その他、光学式のセンサ以外でも、超音波の伝搬時間を計測することによる変位センサや、渦電流による変位センサを利用することも可能である。ここで、本来変位センサとは、ある基準からの変位しか測定できないものであるが、樹脂材料吐出前に変位センサで測定面13を測定しておき、その測定した位置までの距離をレーザー式など任意の絶対的な距離を測定できる距離センサで測定することで、変位センサを絶対的な距離を測定するセンサとして用いることができる。もちろん変位センサの替わりに絶対的な距離を測定できる距離センサを使っても良い。図2からも明らかなように、本実施の形態では、リップ10の測定面13を測定対象とする変位センサ30が測定面13に対向する態様でレール部材31を介してリップ10に保持させてある。
【0021】
レール部材31は、それぞれのリップ10に保持させた一対のブラケット50の間に架設したもので、リップ10の測定面13に平行となるように配設してある。一対のブラケット50は、互いに対向する内表面がリップ10の測定面13に対して直交するように設けたものである。それぞれのリップ10の測定面13から各レール部材31までの距離は互いに同一で、レール部材31の延在方向に沿って一定である。
【0022】
レール部材31と変位センサ30との間には、図1に示すように、スライド機構部32及び姿勢変更機構部(姿勢変更手段)33が介在させてある。スライド機構部32は、変位センサ30をレール部材31の延在方向に沿って移動可能に支持させるとともに、レール部材31に対して変位センサ30を任意の位置に移動するためのスライド用アクチュエータを含むものである。姿勢変更機構部33は、レール部材31に対して変位センサ30を所定の回転軸心C回りに回転可能に支持するとともに、レール部材31に対して変位センサ30を回転軸心C回りに回転させるための姿勢変更用アクチュエータを含むものである。本実施の形態では、回転軸心Cがレール部材31の延在方向に対して直交し、かつリップ10の測定面13に対して平行となるように姿勢変更機構部33が設けてある。
【0023】
補正情報検出センサ40は、変位センサ30の補正情報を検出するためのものである。補正情報とは、現在の変位センサ30の姿勢が予め設定した計測姿勢にあるか否か、並びに予め設定した計測基準に対する変位センサ30の位置ずれ量を示す情報である。計測姿勢とは、本実施の形態の場合、変位センサ30の投光部から照射されるレーザー光がブラケット50の内表面に平行となる状態である。補正情報検出センサ40としては、リップ10に保持させた一対のブラケット50において互いに対向する部位にライン状の投光部41及び受光部42を配設したものを適用している。投光部41及び受光部42を配設する位置は、互いの間に変位センサ30が介在する位置である。
【0024】
この補正情報検出センサ40では、投光部41から照射したライン状のレーザー光が変位センサ30によって遮られることになり、受光部42に到達するレーザー光の位置に基づいて変位センサ30の全長及びブラケット50に対する変位センサ30の位置を検出することができる。補正情報検出センサ40によって変位センサ30の全長及び位置を検出することができれば、これらの値に基づいて変位センサ30が計測姿勢にあるか否か、並びに計測基準に対する変位センサ30の位置ずれ量を演算することができるようになる。
【0025】
すなわち、図3に示すように、計測した変位センサ30の全長a′が実際の変位センサ30の全長aと一致すれば、変位センサ30が計測姿勢に一致していると判断することができ、計測した変位センサ30の全長a′が実際の変位センサ30の全長aに一致しない場合、変位センサ30が傾斜した状態にあると判断することができる。また、ブラケット50に対する変位センサ30の位置が検出できれば、そのまま計測基準からの位置ずれ量を算出することができる。
【0026】
図4は、上述した樹脂押出用口金装置の制御系を示すブロック図である。図4に示す主制御部100は、変位センサ30及び補正情報検出センサ40から検出信号が与えられた場合に、予めメモリ101に格納したプログラムやデータに従ってスライド機構部32、姿勢変更機構部33及び調整手段20の調整用アクチュエータ22の駆動を制御するもので、補正処理部(補正処理手段)110、演算部120、シート厚管理部130を有している。
【0027】
補正処理部110は、補正情報検出センサ40から補正情報が与えられた場合に変位センサ30が計測姿勢にあるか否かを判断し、計測姿勢にないと判断した場合、変位センサ30を計測姿勢に修正すべく姿勢変更機構部33に対して修正駆動信号を出力するものである。また、補正処理部110は、変位センサ30が計測姿勢であると判断した場合、補正情報検出センサ40からの補正情報に基づいて計測基準に対する変位センサ30の位置ずれ量を算出し、さらに算出した位置ずれ量に従って変位センサ30の計測結果を補正し、補正結果を計測情報として演算部120に出力するものである。
【0028】
演算部120は、リップ10を挟んで配置された一対の変位センサ30からの計測情報が与えられた場合にリップ面11の相互間距離を演算するものである。すなわち、一方の測定面13に対する計測基準と他方の測定面13に対する計測基準との相互間距離が既知であり、さらにそれぞれのリップ10においてリップ面11と測定面13との距離が既知であるため、補正処理部110から計測情報が与えられれば、(計測基準の相互間距離)−(それぞれのリップ面11と測定面13との距離)−(対向する2つの変位センサ30からの計測情報)を演算することにより、リップ面11の相互間距離を算出することができる。但し、リップ10を挟んで配置された一対の変位センサ30は、照射するレーザー光の光軸が合致する位置で測定面13までの距離を計測するものとする。
【0029】
シート厚管理部130は、演算部120によってリップ面11の相互間距離が演算された場合、この演算結果が予め設定した規定値に一致するか否かを判断するものである。演算結果が規定値に一致していない場合、シート厚管理部130は、リップ面11の相互間距離を規定値に一致させるべく該当する変位センサ30の計測位置に対応した調整用アクチュエータ22に調整用駆動信号を出力するものである。
【0030】
図5は、主制御部100が所定のサイクルタイム毎に繰り返し実行する吐出口調整処理の内容を示したフローチャートである。以下、このフローチャートに従って主制御部100の動作を説明し、併せて樹脂押出用口金装置の特徴部分について詳述する。
【0031】
図示せぬ押出機から供給された樹脂材料を吐出している間において主制御部100は、補正情報検出センサ40から補正情報を取得し(ステップS101)、補正情報に含まれる変位センサ30の全長と、予めメモリ101に格納した変位センサ30の実際の全長とを比較することにより、補正処理部110を通じて変位センサ30が計測姿勢にあるか否かを判断する(ステップS102)。
【0032】
変位センサ30が計測姿勢でないと判断した場合(ステップS102:No)、主制御部100は、補正処理部110を通じて姿勢変更機構部33に修正駆動信号を出力し(ステップS103)、手順をステップS101にリターンさせる。これにより、例えば図6に示すように、変位センサ30が計測姿勢にない場合であってもこれが修正されることになり、最終的には図7に示すように、変位センサ30が計測姿勢に修正された状態となる。
【0033】
従って、高温状態の樹脂材料を吐出する樹脂押出用口金装置において、熱の影響によって仮にレール部材31が変形した場合であっても、上述のステップS101〜ステップS103の処理を実施することにより、レール部材31の変形状態に関わらず変位センサ30を計測姿勢とすることが可能になる。
【0034】
次に、主制御部100は、図5のステップS104に示すように、補正情報に含まれる変位センサ30の位置に基づいて計測基準に対する変位センサ30の位置ずれ量を算出する処理を行う。さらに、算出した位置ずれ量に応じて変位センサ30の計測結果を補正し(ステップS105)、補正した計測結果に基づいてリップ面11の相互間距離xを算出する(ステップS106)。具体的に計測結果の補正は、位置ズレ量の正負を測定面13に近づく方向を正とした場合、変位センサ30で計測した測定面13までの距離から、変位センサ30の位置ズレ量を差し引くことで実現できる。
【0035】
リップ面11の相互間距離xを算出した主制御部100は、これが予め設定した規定値に一致するか否かを判断する(ステップS107)。算出したリップ面11の相互間距離xが既定値に一致する場合(ステップS107:Yes)、主制御部100は、今回の処理を終了し、手順をリターンさせる。
【0036】
これに対して算出したリップ面11の相互間距離xが既定値に一致しない場合(ステップS107:No)、主制御部100は、シート厚管理部130を通じて調整用アクチュエータ22に調整用駆動信号を出力する(ステップS108)。これにより、調整手段20が適宜駆動し、リップ面11の相互間距離が予め設定した規定値に一致するようになる。
【0037】
ここで、ステップS106において算出されるリップ面11の相互間距離xは、実際に高温高圧の樹脂材料を吐出している際に変位センサ30から出力された計測結果に基づくものである。従って、吐出する樹脂材料の圧力や温度によってリップ面11の相互間距離が変化した場合にも、直接これが計測されることになり、圧力や温度の影響によって計測結果に誤差が生じる虞れがない。さらに、変位センサ30の計測結果に関しては、レール部材31が変形した場合の姿勢の変化、並びに計測基準からの位置ずれ量をそれぞれ補正し、これらの影響を除去したものである。これらの結果、吐出口12を構成するリップ面11の相互間距離を正確に制御することができ、吐出口12から吐出される樹脂シートSの寸法精度を著しく向上させることが可能になる。
【0038】
以下、変位センサ30をレール部材31の延在方向に沿って移動させ、都度、上述した処理を実行することにより、吐出口12の複数箇所においてリップ面11の相互間距離xを正確に算出することが可能になる。
【0039】
尚、上述した実施の形態では、リップ10に直接測定面13を形成するようにしているが、リップ10に直接測定面13を形成する必要はなく、例えば測定面を有した平板をリップに保持させるようにしても良い。この場合、リップ面に対して測定面が平行となるようにリップに平板を保持させる必要があるのはいうまでもない。
【0040】
また、上述した実施の形態では、変位センサ30を挟む態様で配設した一対のブラケット50に投光部41及び受光部42を設け、投光部41から照射したレーザー光の受光部42での受光結果に従って、変位センサ30が計測姿勢であるか否か、並びに計測基準に対する変位センサ30の位置ずれ量を演算するようにしているが、必ずしもこれに限らない。例えば図8に示す変形例のように、変位センサ130に補正用投光部131及び補正用受光部132を配設する一方、ブラケット50の内表面にミラー150を配設し、変位センサ30が計測姿勢にある場合にのみ補正用投光部131から照射したレーザー光がミラー150に反射して補正用受光部132に入射するように構成しても良い。
【0041】
さらに、上述した実施の形態では、変位センサ30として測定対象にレーザー光を照射するものを例示しているが、必ずしも光学的に距離を計測するものに限らず、非接触状態で距離を計測できるものであれば、その他のものを適用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態である樹脂押出用口金装置の要部を概念的に示す断面側面図である。
【図2】図1に示した樹脂押出用口金装置を吐出口から見た底面図である。
【図3】図1に示した樹脂押出用口金装置において変位センサを計測姿勢に修正する過程を示す底面図である。
【図4】図1に示した樹脂押出用口金装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】図4に示した主制御部が実行する吐出口調整処理の内容を示したフローチャートである。
【図6】図1に示した樹脂押出用口金装置において変位センサの姿勢及び位置がずれている状態を示す底面図である。
【図7】図6に示した状態から変位センサの姿勢を修正した状態を示す樹脂押出用口金装置の底面図である。
【図8】図1に示した樹脂押出用口金装置において変位センサを計測姿勢に修正する過程を示す底面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 リップ
11 リップ面
12 吐出口
13 測定面
20 調整手段
21 調整ボルト
22 調整用アクチュエータ
30 変位センサ
31 レール部材
32 スライド機構部
33 姿勢変更機構部
40 補正情報検出センサ
50 ブラケット
100 主制御部
110 補正処理部
120 演算部
130 シート厚管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにリップ面を対向させた状態で接続した一対のリップと、前記各リップ面の相互間距離を調整する調整手段とを具備し、前記各リップ面の相互間に構成されるスリット状の吐出口から樹脂材料を吐出する樹脂押出用口金装置において、
前記吐出口の外部において前記リップ面に平行となる態様で前記一対のリップそれぞれに設けた測定面と、
前記測定面に対向する態様で前記一対のリップそれぞれに設けた測定面に対向するよう保持され、予め設定した計測基準から前記測定面までの距離を計測する前記一対のリップそれぞれに対応する計測手段と
を備えたことを特徴とする樹脂押出用口金装置。
【請求項2】
前記測定面に平行となる態様で前記一対のリップそれぞれにレール部材を配設し、該レール部材を介して前記一対のリップそれぞれに対応する計測手段をそれぞれのリップに保持させたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂押出用口金装置。
【請求項3】
前記レール部材の延在方向に沿って前記計測手段を移動可能に配設したことを特徴とする請求項2に記載の樹脂押出用口金装置。
【請求項4】
少なくとも一方のリップに対応する前記計測手段に関して、前記計測基準に対する前記計測手段の位置のずれを検出し、検出した前記ずれ量に基づいて前記計測手段の計測した距離を補正する補正処理手段を設けたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の樹脂押出用口金装置。
【請求項5】
少なくとも一方のリップに対応する前記計測手段に関して、前記計測手段は、前記レール部材との間に姿勢を変更するための姿勢変更手段を具備したものであり、
前記補正処理手段は、前記計測手段の姿勢を検出し、かつ前記計測手段の姿勢が予め設定した計測姿勢に対してずれていることを検出した場合に前記姿勢変更手段を通じて前記計測手段の姿勢を修正するものである
ことを特徴とする請求項4に記載の樹脂押出用口金装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載の樹脂押出用口金装置を適用して樹脂製のシートを製造する方法であって、吐出口から樹脂材料を吐出しながら計測手段による計測を実施し、該計測手段の計測結果に基づいて算出されるリップ面の相互間距離が予め設定した値となるように前記調整手段を駆動することを特徴とする樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−233963(P2009−233963A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81657(P2008−81657)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】