説明

樹脂系舗装材組成物

【課題】 本発明は、耐候性・耐紫外線特性に優れ、強固な付着性を有し、長期にわたって美観と保護機能を維持しうる樹脂系舗装材を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、主鎖が実質的にビニル系共重合体からなり、末端あるいは側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有する加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体を含有する液状組成物と骨材を含有することを特徴とする樹脂系舗装材組成物である。骨材は無機質骨材や廃材粉砕物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車道や歩道、公園路等の舗装において、優れた耐久性を付与する樹脂系舗装材組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や歩道、公園路等の舗装にはコンクリートやアスファルトが広く用いられてきたが、近年、美観と保護や路面の水捌けを良くする等の目的で骨材を樹脂で固めた樹脂系舗装を敷設したものが提案されている。この様な樹脂系舗装材組成物として、例えば、骨材をエポキシ系やウレタン系の樹脂接着剤で連結した樹脂系舗装材組成物をアスファルト系透水舗装もしくはセメント系透水舗装上に舗装することが開示されており(特許文献1)、また、破砕したプラスチック類をウレタン樹脂又はエポキシ樹脂接着剤で固めたボード状の舗装材が開示されている(特許文献2)。これらの他にも、レンガ等の骨材とエポキシ樹脂接着剤とを混合することにより得られる舗装材組成物等も開示されている(特許文献3)。しかし、エポキシ系樹脂やウレタン系樹脂をバインダーとして用いた舗装体は、耐候性・耐紫外線特性が低く、変色したり、舗装体が欠けたりして比較的短期間に美観と保護機能を失う欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−29502号公報
【特許文献2】特開平11−114540号公報
【特許文献3】特開平2001−234503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐候性・耐紫外線特性に優れ、強固な付着性を有し、長期にわたって美観と保護機能を維持しうる樹脂系舗装材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これらの課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体を含有する液状組成物と骨材とを混合し、硬化させると耐候性・耐紫外線特性に優れ、強固な付着性を有し、長期にわたり美観と保護機能を維持し得る樹脂系舗装材を得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1).
末端あるいは側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有する加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体を含有する液状組成物と骨材を含有することを特徴とする樹脂系舗装材組成物、
(2).
前記骨材が、無機質骨材および/又は廃材粉砕物である(1)に記載の樹脂系舗装材組成物、
(3).
加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体が、水酸基を有することを特徴とする(1)から(2)のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物、
(4).
液状組成物が、ポリイソシアナート化合物を含有することを特徴とする(1)から(3)のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物、
(5).
骨材が、天然玉砂利、陶磁器粉砕物、ガラス粉砕物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物、
(6).
樹脂系舗装材組成物によって舗装される被舗装物が、車道、歩道、公園路、駐車場、建築物内の通路からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする(1)から(5)のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物、
(7).
(1)から(6)のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物を硬化して得られる樹脂系舗装、
(8).
(1)から(6)のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物をボード状の基材に塗布乾燥させ得られたボード状の舗装材、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂系舗装材組成物より得られる舗装は、耐候性・耐紫外線特性に優れ、強固な付着性を有し、長期にわたって美観と保護機能を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の樹脂系舗装材組成物は、バインダーとして主鎖が実質的にビニル系重合体からなり、末端あるいは側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有する加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体を含有する液状組成物と、無機質骨材および/又は廃材粉砕物のような骨材から構成されている。
【0010】
バインダーとしての液状組成物に含まれるビニル系共重合体は、湿分の存在下、室温で硬化性を有するベース樹脂として加水分解性基と結合したシリル基を有するビニル系共重合体が含有される。ビニル系共重合体は、その主鎖が実質的にビニル系単量体及び必要に応じて他の単量体を共重合させた主鎖からなる。ここで、主鎖がビニル系共重合体からなるとは、ビニル基、ビニリデン基のように、重合性炭素炭素二重結合を有する化合物あるいは重合性二重結合を有する化合物との共重合体がビニル系共重合体の主鎖を構成していることを意味する。
【0011】
ビニル系共重合体中のビニル系単量体の量は特に限定されないが、単量体の総量100重量部に対してビニル系単量体が50重量部以上含有されることが、舗装材の耐候性などの耐久性の点で好ましい。さらに好ましくは、70重量部以上である。
【0012】
上記加水分解性シリル基は、1分子中に少なくとも1個存在すれば良いが、十分な硬化性を与え、また、内部応力を緩和するという観点から2〜10個存在することが好ましい。前記ビニル系共重合体は、たとえば重合性二重結合および炭素原子に結合した加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体(a)とビニル系単量体(b)を共重合することによって製造することができる。
【0013】
加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体(a)は、下記一般式(1)で示される有機ケイ素化合物で、アルコキシ基を有し、反応性二重結合を有する化合物である。
【0014】
12(3-a)Si(OR3a (1)
(式中、R1は重合性二重結合を有する1価有機基、R2は炭素数1〜4のアルキル基、R3は炭素数1〜4のアルキル基、aは1〜3)
【0015】
上記加水分解性シリル基を含有するビニル系単量体(a)の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(n−プロポキシ)シラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランなどを挙げることができ、これらの中では、特にアルコキシシリル基含有単量体、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランが安定性の点で好ましい。上記(メタ)アクリロキシとは、本明細書中ではメタアクリロキシおよび/またはアクリロキシを表すこととする。
【0016】
これらの単量体(a)は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。前記単量体(a)は、前記のように、得られるビニル系共重合体中に加水分解性シリル基を含有する単量体(a)が1〜90重量%、さらには3〜70重量%、特には3〜50重量%含有されるように使用するのが、十分な硬化性を与え、また、内部応力を緩和するという観点から好ましい。
【0017】
また、前記ビニル単量体(b)は、炭素炭素二重結合を有していれば特に限定がなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の炭素数4〜20のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の炭素数3〜20のアラルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、オキシシクロヘキシニル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα、β−エチレン性不飽和カルボン酸あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);無水マレイン酸などの酸無水物またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステルあるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホン酸、2−(メタ)アクリロキシエチルホスフェートなどの重合可能な炭素−炭素二重結合を有する酸、あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有ビニル単量体、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩酸塩などの4級アミノ基を有するビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド、あるいは、それらの塩(塩酸塩、酢酸塩など);N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールなどの含窒素ビニル単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシスチレンなど水酸基含有ビニル系単量体;PlaccelFA−1、PlaccelFA−4、PlaccelFM−1、PlaccelFM−4(以上ダイセル化学(株)製)などの重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリラクトンまたはポリエステル;ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ(以上日油(株)製)、MA−30、MA−50、MA−100、MA−150、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114、MPG130−MA(以上、日本乳化剤(株)製)などの重合可能な炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレン;α、β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルのリン酸エステル;ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどのビニル化合物;東亜合成化学(株)製のマクロモノマーであるAS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−5などの化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、4−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;ビニルメチルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエンなどのその他のビニル系単量体などを挙げることができ、これらの群から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することができる。
【0018】
架橋剤としてポリイソシアナート化合物を本願組成物に配合する場合、水酸基含有ビニル系単量体を含有するのが好ましく、それらの具体例としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートがポリイソシアナート化合物との反応性に優れ、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性、付着性が良好な塗膜が得られる点から好ましい。
【0019】
また、液状組成物に用いる溶媒を脂肪族系化合物を含む溶剤とする場合は、溶解性の観点から炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸及び/またはその誘導体成分が好ましく、特に、ラウリルメチル(メタ)アクリレート、パルミトイル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブレンマーSLMA((メタ)アクリル酸のC12〜C18アルキルエステルの混合物;日油(株)製)がさらに好ましい。
【0020】
加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体を含有する液状組成物の固形分濃度としては、特に限定されないが、組成物の硬化性や塗膜の耐久性などの点から5%以上、90%以下が好ましく、11%以上70%以下がさらに好ましい。
【0021】
加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体を含有する液状組成物に用いる溶媒としては特に限定はなく、公知の芳香族系、脂肪族炭化水素系、エーテル系、ケトン系、エステル系、アルコール系、水等の溶媒を用いることができる。トルエン、キシレン、酢酸ブチル、脂肪族炭化水素含有溶剤を用いるのがビニル系共重合体の溶解性の点から好ましい。
【0022】
骨材に対する上述の加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体の液状組成物の配合量は、骨材100重量部に対して、5〜50重量部が好ましく、10〜30重量部が特に好ましい。シリル基含有ビニル系重合体の液状組成物が5重量部未満の場合は、形成される舗装体が脆くなり、耐衝撃性になどに劣ることになる。また、50重量部より多い場合は液状組成物が垂れる等して外観が損なわれたり、舗装体内部での硬化が遅くなり、初期の耐衝撃性などに劣ることになる。
【0023】
前記ビニル系共重合体の製造方法としては、前記単量体より共重合体液状組成物を得る方法であれば特に限定されない。重合方法としては、例えば溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等が挙げられ、溶液重合法が合成の容易さなどの点で好ましい。
【0024】
前記重合に用いる開始剤としては、公知のものを挙げることができ、例えば、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物系、アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのアゾ化合物系、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物系、過酸化物と還元剤を組み合わせるレドックス系などの開始剤を挙げることができる。
【0025】
本発明の骨材としては特に限定されないが、無機質骨材、廃材粉砕物、樹脂ビーズ、溶融スラグ、汚泥焼却灰等を挙げることができ、無機質骨材、廃材粉砕物が汎用性の点で好ましい。
【0026】
前記無機質骨材としては、通常舗装材に配合する無機質骨材であれば特に限定されないが、例えば、珪砂、川砂、山砂、大理石粉砕物、花崗岩粉砕物、黒曜石粉砕物、石灰岩粉砕物、陶磁器粉砕物、ガラスビーズ、ガラス粉砕物等やこれらの表面に着色コートティングを施したもの等が挙げられる。これらの中で天然玉砂利、陶磁器粉砕物、ガラス粉砕物が、経済性、意匠性の点で好ましい。
【0027】
また、前記廃材粉砕物における「廃材」としては、例えば、廃プラスチック(ポリエステル、ポリオレフィン、スチレン系樹脂、メタクリル樹脂等の熱可塑樹脂;ポリウレタン等の熱硬化性樹脂)、廃ゴム、及びその他の廃材(木材、紙、貝殻、木炭、おがくず)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を適宣組み合わせて使用できる。
【0028】
また、前記加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体がアルコール性水酸基を有するものであれば、架橋剤としてポリイソシアナート化合物を本発明の樹脂系舗装材組成物に配合することもできる。上記ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を挙げることができ、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族、芳香族および脂環族系のジイソシアネート化合物;イソシアヌレート変性HDIなどのジイソシアネート化合物のイソシアヌレート結合またはビユレット結合変性品;ポリメリックMDIなどの特殊ポリイソシアネートがあげられる。
【0029】
更に、本発明の樹脂系舗装材組成物にシリル基の加水分解縮合反応を促進さる目的で硬化触媒を配合することもできる。上記硬化触媒の具体例としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズラウレート、ジオクチルスズジマレエート、オクチル酸スズ、ジブチルスズビス(メルカプト酸エステル)等の有機スズ化合物;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等の有機アルミ化合物;有機チタネート化合物;有機亜鉛化合物等の有機金属化合物が挙げられる。これらの中で、有機スズ化合物が硬化性、付着性の点で好ましい。これらは単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。硬化触媒の具体例として更に、酸触媒が挙げられる。酸触媒としては、リン酸エステル系、スルホン酸触媒、リン酸に有機アミン配合した系、スルホン酸と有機アミンを配合した系、有機カルボン酸に有機アミンを配合した系がある。これらは、加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体成分に対して0.1〜10重量部配合することができる。配合量としては0.2〜8重量部が好ましく、0.5〜5重量部が特に好ましい。
【0030】
本発明の樹脂系舗装材組成物は、シリル基含有ビニル系重合体の液状組成物と骨材を混合したものであり、上述のシリル基含有ビニル系重合体に必要に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては可塑剤、溶剤、分散剤、脱水剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等があげられる。
【0031】
本発明の舗装材組成物の作製方法は特に限定されず、前記ビニル系共重合体を含有する液状組成物に骨材を加え攪拌し、均一に混合することによって作製することができる。攪拌方法は、一般的な攪拌装置を用いればよく特に限定されない。
【0032】
本発明の舗装材組成物を硬化させ樹脂系舗装を作製する方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、舗装材組成物を被塗布物上に塗布し、表面を好ましい形状に整えた後、室温もしくは加熱条件下で乾燥させることによって、硬化した樹脂系舗装材を作製することができる。乾燥させる条件としては、加熱しても構わないが、室温でも十分に硬化させることができるため室温が好ましい。乾燥時間としては、室温の場合には4時間以上が好ましく、80℃で加熱乾燥させる場合には30分〜1時間程度が好ましい。
【0033】
本発明の舗装材組成物は、例えば車道、歩道、公園路、駐車場、建築物内の通路等の舗装に用いることができる。また、舗装材組成物をボード等の基材に塗布乾燥させ、ボード状の舗装材を製造することもできる。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0035】
(加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体の合成:合成例1〜2)
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた容器に表1に示す成分を(イ)成分を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した後、表1の(ア)成分の混合物を滴下ロートから5時間かけて等速滴下した。次に(ウ)成分の混合液を1時間かけて等速滴下した。その後、引き続き110℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却した。最後に表1の(エ)成分を加えて攪拌した。
【0036】
【表1】

【0037】
ペガソーAN45:エクソンモービル化学株式会社製(芳香族含有量50%以下の脂肪族炭化水素含有溶剤)
S−100:エクソンモービル化学株式会社製(芳香族含有量99%)
V−59:和光純薬工業株式会社製、(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))
【0038】
(液状組成物の作製:製造例1〜2)
合成した加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体(A−1、A−2)を表2に示す配合に従い固形分濃度55%の組成物を得た。
【0039】
【表2】

【0040】
(舗装材組成物の作製:実施例1〜2および比較例1)
表3に示す配合に従い、液状組成物に骨材成分として粒径が1〜8mm程度の市販の天然砂利を混合・攪拌し、骨材表面に満遍なく液状組成物がコーティングされたところで調整終了とし、舗装材組成物を得た。
【0041】
比較例として、市販の一液型ポリイソシアネート樹脂(三井化学ポリウレタン株式会社製、M−402、固形分50%)を使用した。
【0042】
【表3】

【0043】
(耐候性評価)
JIS A5430に準じた50mm×50mm×3mmのスレート板に、舗装材組成物を厚さ1cmで塗布し、その後室温で1週間放置し試験体を作製した。耐候性評価試験としては、ダイプラ・ウィンテス(株)社製のメタルウェザー促進耐候性試験機(KU−R4CI−A)にて下記の耐候性試験条件で300時間試験を行い、舗装体表面を目視にて観察し、変化のないものを○、黄変等の外観変化が生じたものを×とした。
・耐候性試験条件
照射(L)/結露(D)=6時間/2時間(1サイクル8時間)とし、シャワリングをDの前後に30秒とした。照射時の照射強度80mW/cm2、波長領域295〜780nm、ブラックパネル温度63℃、相対湿度0%RHとし、結露時のブラックパネル温度40℃、相対湿度98%RHの条件にて試験を行った。
【0044】
【表4】

【0045】
表4に示されるように、本発明に相当する実施例1及び2の舗装材を用いた場合には、ウレタン系樹脂を用いた比較例1を用いた場合と比較して耐候性が著しく優れていた。
【0046】
(付着性評価)
70mm×70mm×20mmのモルタルに舗装材組成物を40mm×40mm×10mmで塗布し、その後室温で1週間放置し試験体を作製した。試験方法はJIS A 6906に準じ、垂直方向に3mm/minの引張速度で引っ張り試験を行った。
【0047】
【表5】

【0048】
表5に示されるように、実施例1は実施例2よりも付着強度が強く、アルコール性水酸基を有する加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体とポリイソシアナート化合物を配合した組成物の方がより強固な付着性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端あるいは側鎖に加水分解性基と結合した珪素原子を1分子中に少なくとも1個有する加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体を含有する液状組成物と骨材を含有することを特徴とする樹脂系舗装材組成物。
【請求項2】
前記骨材が、無機質骨材および/又は廃材粉砕物である請求項1記載の樹脂系舗装材組成物。
【請求項3】
加水分解性シリル基含有ビニル系共重合体が、水酸基を有することを特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物。
【請求項4】
液状組成物が、ポリイソシアナート化合物を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物。
【請求項5】
骨材が、天然玉砂利、陶磁器粉砕物、ガラス粉砕物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物。
【請求項6】
樹脂系舗装材組成物によって舗装される被舗装物が、車道、歩道、公園路、駐車場、建築物内の通路からなる群より選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物を硬化して得られる樹脂系舗装。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の樹脂系舗装材組成物をボード状の基材に塗布乾燥させ得られたボード状の舗装材。



【公開番号】特開2010−1733(P2010−1733A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123392(P2009−123392)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】