説明

樹脂組成物のろ過方法

【課題】粒子等を含有する高粘度の樹脂組成物を効率良くろ過することができ、なおかつフィルター目詰まりが発生し難い、樹脂組成物のろ過方法を提供することを目的とする。
【解決方法】粒子等を含有する高粘度の樹脂組成物を吸引してフィルターを通過させることを特徴とするろ過方法により上記課題を解決するものであり、上記吸引をスネイクポンプで行うことが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物のろ過方法に関し、特に粒子を含有する高粘度樹脂組成物を効率良くろ過することが可能なろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や光学材料等の様々な用途に用いられている樹脂組成物には、用途にそぐわない大きさの樹脂やフィラー等の粒子の凝集物などが不純物として含まれていることがあり、これをそのまま用いた場合には、本来の用途に対して様々な不具合を引き起こす恐れがある。例えば、ソルダーレジストに不純物となる樹脂や粒子の凝集物が含まれていると、これを用いて形成されたレジスト膜表面にピンホール等の不具合が発生し易くなり、電子部品等の歩留まりを低下させてしまう。したがって、樹脂組成物に含まれる不純物は事前にできるだけ除去することが望ましい。
【0003】
樹脂組成物に含まれる不純物を除去する方法としては、フィルターを用いたろ過により行うことが一般的であり、例えば、特許文献1〜3には、レジスト液中の微粒子を効率的にろ過して除去する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−62667号公報
【特許文献2】特開2002−99098号公報
【特許文献3】特開2004−195427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような従来の樹脂組成物のろ過は、通常、図1に示すように、耐圧タンクにろ過対象となる樹脂組成物を充填し、これを不活性ガス等により加圧して、フィルターを通過させることによって行うため、樹脂組成物を耐圧タンクに移し替えたり、定期的に樹脂組成物を耐圧タンクに補充したりする必要があり、ろ過効率やコストの観点から望ましい方法であるとはいえない。また、市販されている耐圧タンクは、約0.5MPa、20L仕様のものが最大であり、これ以上の仕様のものを製作するにはタンク壁の肉厚を大きくするなどの必要が生じ、さらには、その設置場所の確保や洗浄時の作業負担等の問題も生じ、その結果、処理コストも高くなってしまう。
【0005】
また、樹脂組成物を真空ポンプ、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ等を用いて吸引し、ろ過工程に送液する方法もあるが、真空ポンプ吸引では溶剤の揮発が発生する、ギアポンプ吸引では金属製歯車の噛み合わせにより送液を行う為、金属コンタミが懸念され、ダイヤフラムポンプ吸引(ゴムなどの隔膜を往復動させることにより送液を行う)では粘度の高い樹脂組成物をろ過工程まで送液する能力が不十分である、などの理由から、樹脂送液手段として望ましいとはいえない。
【0006】
また、比較的高粘度である樹脂組成物を従来のろ過方法によりろ過した場合、フィルターの目詰まりが発生し易く、フィルターの交換を頻繁に行う必要があった。
【0007】
上記を鑑みて、本発明は、粒子等を含有する高粘度の樹脂組成物を効率良くろ過することができ、なおかつフィルター目詰まりが発生し難いろ過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、鋭意検討の結果、ろ過対象となる樹脂組成物を上記のような加圧や吸引によりろ過工程に送液するのではなく、スネイクポンプで吸引し、送液することで、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を為すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(9)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0010】
(1)樹脂組成物をスネイクポンプにより吸引してフィルターを通過させることを特徴とする樹脂組成物のろ過方法。
【0011】
(2)開口径が異なる2種以上のフィルターを通過させることを特徴とする上記(1)に記載のろ過方法。
【0012】
(3)前記樹脂組成物を、第一のフィルターを備える第一のろ過工程と、該第一のフィルターより小さい開口径を有する第二のフィルターを備える第二のろ過工程と、を順次通過させることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のろ過方法。
【0013】
(4)前記第一のフィルターの開口径が前記第二のフィルターの開口径の2〜8倍であることを特徴とする上記(3)に記載のろ過方法。
【0014】
(5)前記フィルターにかかる圧力をモニタリングしながら前記樹脂組成物の吸引量を調整することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のろ過方法。
【0015】
(6)前記第二のフィルターにかかる圧力が0.4MPa以下となるように前記樹脂組成物の吸引量を調整することを特徴とする上記(3)〜(5)のいずれかに記載のろ過方法。
【0016】
(7)前記樹脂組成物の粘度が20〜100Pa・sであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のろ過方法。
【0017】
(8)前記樹脂組成物は全体量に対して5重量%〜15重量%の粒子を含有するものであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のろ過方法。
【0018】
(9)前記樹脂組成物がソルダーレジストであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のろ過方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、粒子等を含有する高粘度の樹脂組成物を効率良くろ過することができ、なおかつフィルター目詰まりが発生し難いろ過方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明のろ過方法は、ろ過対象となる樹脂組成物をスネイクポンプにより吸引してフィルターを通過させることをその特徴とするものである。
【0021】
本発明においてろ過対象となる樹脂組成物としては、不純物となる樹脂や粒子の凝集物などを含み、当該不純物を除去することが必要とされる樹脂組成物であれば特に限定されないが、本発明のろ過方法では、20〜100Pa・sの範囲の粘度を有する、比較的高粘度の樹脂組成物のろ過に最適である。また、樹脂組成物中に含まれる粒子が液全体に対して5〜15重量%の範囲である樹脂組成物をろ過する場合にも好適である。具体的には、ソルダーレジストのろ過に最適である。
【0022】
本発明における樹脂組成物の送液は、樹脂組成物等の液状体を直接吸引し、他方から連続的に吐出することが可能なスネイクポンプを用いて行う。このスネイクポンプとは、例えば、図2に示すように、ローター3とステーター4を主たる構造として有するポンプであり、ローター3とステーター4の間にはらせん状の空間が存在し、ローター3が回転すると、該ローター3がステーター4内を回転しながら往復運動し、その結果、空間に充満された樹脂組成物が、吸込側から吐出側に向って移送されるものである。また、このスネイクポンプは、最大吐出圧が高い(1MPa以上)ため、樹脂組成物の粘度が高い場合であっても効率的にその送液を行うことが可能である。スネイクポンプとしては、例えば、モーノポンプ(兵神装備株式会社製、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0023】
また、上記スネイクポンプには、図3や図4に示すように、スネイクポンプ5の樹脂吸引口52周囲に、当該吸引口52と樹脂組成物6の液面が常に接するようにタンク10を密封することが可能なプレート51が配設されていることが好ましい。この場合において、スネイクポンプ5とプレート51は、吸引により低下する樹脂組成物6の液面に合わせて、共に自重で下がっていくため、樹脂組成物吸引中、スネイクポンプ5の吸引口52と樹脂組成物6の液面は常に接することになり、樹脂組成物を連続的に吸引することが可能となる。
【0024】
上記プレートの形状や大きさは、タンクを密封することができる形状、大きさであればよく、特に限定されない。また、プレートの材質は、特に限定されないが、例えば、ステンレス等の、吸引する樹脂組成物に対して耐久、耐食性を有するものであること好ましい。また、少なくともプレートの終端部(タンク内壁面と隣接する箇所、図4の53)を弾性体とすることが好ましく、これによれば、プレートの降下と共にタンク内壁面に付着している樹脂組成物を掻きとることが可能となり、また、タンク内壁を傷つけることもない。
【0025】
また、本発明のろ過方法で用いるフィルターとしては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂等が挙げられる。また、フィルター形状としては、ディスクタイプやカードリッジタイプ等の一般的に用いられているものを用いることができる。
【0026】
また、フィルターの開口径は、除去したい不純物の大きさやろ過効率等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、好ましくは、開口径が異なる2種以上のフィルターを用い、開口径の大きいフィルターから順に樹脂組成物を通過させてろ過を行う。より具体的には、図3に示すように、スネイクポンプにより吸引した樹脂組成物を、少なくとも、第一のフィルターを備える第一のろ過工程7と、該第一のフィルターより小さい開口径を有する第二のフィルターを備える第二のろ過工程8を順次通過させてろ過を行うことが好ましく、上記第一のフィルターの開口径が、第二のフィルターの開口径の2〜8倍であることがより好ましい。また、従来のろ過方法では、プレフィルターやファイナルフィルタなどのフィルターを備える1つのろ過工程によりろ過を行うこととしているが、このような2枚以上のフィルターを備える1つのろ過工程により樹脂組成物のろ過を行うと目詰まりが生じ易い傾向にある。したがって、上記のようにろ過工程を2以上にしてろ過を行う場合には、各ろ過工程に配置するフィルタの枚数を1枚とすることが好ましい。以上のように、従来、複数枚のフィルターを備える1つのろ過工程により行なわれている樹脂組成物のろ過を、2つ以上のろ過工程に分け、なおかつ1つのろ過工程に配置するフィルタの枚数を1枚にすることで、ろ過時の目詰まりが発生し難くなり、ろ過効率を大幅に向上させることができる。
【0027】
また、2つ以上のろ過工程によりろ過を行う場合には、少なくとも1つのろ過工程のフィルター下部に空隙を設けることが好ましい。この空隙は、例えば、上記2工程のろ過の場合には、気孔率が大きいメッシュ状シートを上記第一のフィルター及び第二のフィルターの少なくともいずれかの下に配置することで設けることができる。用いるメッシュ状シートとしては、特に限定されないが、平均孔径が0.6〜0.8mm、気孔率が60〜80%、厚みが0.2〜0.5mmのものであることが好ましい。このような空隙を設けることで、フィルターの有効ろ過面積を向上させることが可能となり、その結果、ろ過寿命をも向上させることが可能となる。
【0028】
また、ろ過時においては、フィルターにかかる圧力をモニタリングしながら樹脂組成物の吸引量を調整することが好ましく、特に、ろ過工程が複数ある場合には、最終的なろ過工程(上記でいうところの第二のろ過工程)におけるフィルターにかかる圧力が0.4MPa以下となるように樹脂組成物の吸引量を調整することが好ましい。なお、圧力のモニタリングと樹脂組成物の吸引量調整は、手動で行ってもよいが、これらを自動で行うことが可能な自動調節機構を適用することが好ましい。このように樹脂組成物の吸引量を適宜調整し、フィルターにかかる圧力を調整することにより、用途にそぐわない樹脂や粒子の凝集物などの不純物がフィルターを通過してしまうことを効果的に防ぐことが可能となる。
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
粒子を含む樹脂組成物SN−9000S−7A(日立化成工業株式会社製ソルダーレジスト商品名、粒子含有量9重量%、粘度30Pa・s)を、第一のフィルタ(東洋スクリーン株式会社製、工業用金網500メッシュステンレス鋼、平均開口径30μm、ろ過面積706.5cm)を備える第一のろ過工程、および第二のフィルタ(東洋スクリーン株式会社製、工業用金網2000メッシュステンレス鋼、平均開口径6μm、ろ過面積706.5cm)を備える第二のろ過工程、の2工程により、連続的にろ過した。なお、各工程において用いたろ過機はKS−293−UH(アドバンテック東洋株式会社製ディスク型ろ過機)である。また、各工程への樹脂組成物の送液はスネイクポンプ(兵神装備株式会社製、商品名モーノポンプ、型式2NTL20PLDC、最大吐出量1.2MPa)による吸引により行ない、第二のフィルタへの加圧が0.4MPa以下となるようにスネイクポンプの吸引量を調整した。
【0031】
(実施例2)
第一のフィルタとして平均開口径が25μmであるフィルタ(アドバンテック東洋株式会社製、工業化学用ステンレスメッシュカードリッジフィルタ、ろ過面積1500cm)を用いた以外は、実施例1と同様にろ過を行った。
【0032】
(実施例3)
第一のフィルタとして平均開口径が10μmであるフィルタ(アドバンテック東洋株式会社製、工業化学用ステンレスメッシュカードリッジフィルタ、ろ過面積1500cm)を用いた以外は、実施例1と同様にろ過を行った。
【0033】
(実施例4)
第二のフィルタを備える第二のろ過工程のみでろ過を行った以外は、実施例1と同様にろ過を行った。
【0034】
(比較例1)
スネイクポンプの代わりに、ダイヤフラムポンプ(アイメックス社製、形式:MP−100SD型、最大吐出圧0.4MPa(水))を使用した以外は、実施例4と同様にろ過を行ったが、樹脂組成物をフィルタへ送液するだけの能力が足りず、ろ過することができなかった。
【0035】
(比較例2)
実施例1と同様の樹脂組成物を耐圧タンク内に充填した後、エアーコンプレッサーで耐圧タンク内に0.4MPaの空気圧を加えることで、当該樹脂組成物を実施例1と同様の第一のろ過工程および第二のろ過工程へ送液し、ろ過を行った。
【0036】
以上のようにしてろ過を行った結果を表1に示す。なお、ろ過効率を示すろ過流量比は、実施例4における樹脂組成物のろ過流量を1とした場合の比であり、ろ過流量とは、樹脂組成物が目詰まりするまでに各フィルタを通過した平均流量である。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来の樹脂組成物のろ過工程を示す概略図。
【図2】本発明に用いるスネイクポンプの一実施形態を示す断面図。
【図3】本発明の樹脂組成物のろ過工程の一実施形態を示す概略図。
【図4】図3の点線囲い箇所の拡大断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 加圧タンク
2 ろ過工程
3 ローター
4 ステーター
5 スネイクポンプ
51 プレート
52 樹脂吸引口
53 プレート終端部(弾性体)
54 通気調節部
6 樹脂組成物
7 第一のろ過工程
8 第二のろ過工程
9 圧力計
10 タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物をスネイクポンプにより吸引してフィルターを通過させることを特徴とする樹脂組成物のろ過方法。
【請求項2】
開口径が異なる2種以上のフィルターを通過させることを特徴とする請求項1に記載のろ過方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物を、第一のフィルターを備える第一のろ過工程と、該第一のフィルターより小さい開口径を有する第二のフィルターを備える第二のろ過工程と、を順次通過させることを特徴とする請求項1または2に記載のろ過方法。
【請求項4】
前記第一のフィルターの開口径が前記第二のフィルターの開口径の2〜8倍であることを特徴とする請求項3に記載のろ過方法。
【請求項5】
前記フィルターにかかる圧力をモニタリングしながら前記樹脂組成物の吸引量を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のろ過方法。
【請求項6】
前記第二のフィルターにかかる圧力が0.4MPa以下となるように前記樹脂組成物の吸引量を調整することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のろ過方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物の粘度が20〜100Pa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のろ過方法。
【請求項8】
前記樹脂組成物は全体量に対して5重量%〜15重量%の粒子を含有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のろ過方法。
【請求項9】
前記樹脂組成物がソルダーレジストであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のろ過方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−253126(P2007−253126A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84122(P2006−84122)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】