説明

樹脂組成物の製造方法

【課題】ポリイミド系樹脂を含む樹脂組成物の粘度を低く保ちながら厚膜形成が可能な樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも(a)水分率2.0重量%以下のポリイミド系樹脂を溶剤に溶解する工程および(b)溶剤もしくはポリイミド系樹脂の溶液または混合液に水を添加する工程を含む樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法に関する。より詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに適した樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの耐熱性樹脂は、優れた耐熱性、電気絶縁性を有することから、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)などの半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などに用いられている。現在、半導体素子の微細化に伴い、粘度範囲および膜厚範囲に求められる要求が厳しくなっている。一方で、これら耐熱性樹脂を半導体素子の表面保護膜や絶縁膜として用いる際には、膜厚が厚いほど強度および絶縁性能を高くすることができるため、厚膜形成を目的として製品粘度の高い樹脂組成物が求められる。しかしながら、樹脂組成物の粘度が高くなれば、塗布する際の取り扱いが難しくなる課題があった。
【0003】
これまでに、ポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの耐熱性樹脂やその前駆体を含む樹脂組成物の製造方法として、ポリマーを90℃以下の温度で乾燥してポリマーの水分率を2重量%以下に調節する工程と、該ポリマーと光酸発生剤を溶媒に溶解する工程を有する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、樹脂溶液調製工程と、樹脂溶液に水を混合する水添加樹脂混合溶液調製工程と、フィラー混合工程を有する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの方法により得られる樹脂組成物を用いても、取り扱い性に優れる粘度範囲において厚膜を形成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−271897号公報
【特許文献2】特開2007−138142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる問題を解決し、ポリイミド系樹脂を含む樹脂組成物の粘度を低く保ちながら厚膜形成が可能な樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(a)水分率2.0重量%以下のポリイミド系樹脂を溶剤に溶解する工程および(b)溶剤もしくはポリイミド系樹脂の溶液または混合液に水を添加する工程を含む樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂組成物の粘度を低く保ちながら厚膜形成が可能な樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、少なくとも(a)水分率2.0重量%以下のポリイミド系樹脂を溶剤に溶解する工程および(b)溶剤もしくはポリイミド系樹脂の溶液または混合液に水を添加する工程を含む。すなわち、本発明における樹脂組成物は、少なくともポリイミド系樹脂、溶剤および水を含有する。
【0009】
本発明において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、またはそれらの前駆体を指す。その中でも、下記一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂が好ましい。下記一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環、オキサゾール環などの環状構造を有する樹脂となる。環状構造を形成することで、耐熱性、耐溶剤性が向上する。中でも、ポリイミド前駆体のポリアミド酸またはポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドが好ましい。ここで、主成分とは、一般式(1)で表される構造のうちのn個の構造単位を、樹脂の全構造単位の50モル%以上有することを意味する。70モル%以上含有することが好ましく、90モル%以上含有することがより好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
上記一般式(1)中、RおよびRは炭素数2以上の2価〜8価の有機基、RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。nは10〜100,000の範囲、mおよびfは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。ただしp+q>0である。
【0012】
上記一般式(1)中、Rは炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示し、酸の構造成分を表している。Rは、耐熱性の点から芳香族環を有することが好ましい。Rが2価となる酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。Rが3価となる酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸などを挙げることができる。Rが4価となる酸としてはピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸などの芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸、これらのカルボキシル基2個の水素原子をメチル基やエチル基にしたジエステル化合物などを挙げることができる。また、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシトリメリット酸などの水酸基を有する酸も挙げることができる。これら酸成分を2種以上用いてもかまわないが、テトラカルボン酸の残基を1〜40モル%含むことが好ましい。また、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の点から、水酸基を有する酸の残基を50モル%以上含むことが好ましい。
【0013】
一般式(1)中、Rは炭素数2個以上の2価〜8価の有機基を示し、ジアミンの構造成分を表している。Rは、耐熱性の点から芳香族環を有することが好ましい。ジアミンの具体的な例としては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、アミノフェノキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(トリフルオロメチル)ベンチジン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノベンズアミド−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(アミノ−ヒドロキシ−フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジアミノジヒドロキシピリミジン、ジアミノジヒドロキシピリジン、ヒドロキシ−ジアミノ−ピリミジン、ジアミノフェノール、ジヒドロキシベンチジン、ジアミノ安息香酸、ジアミノテレフタル酸、これらの芳香族環の水素をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを挙げることができる。これらジアミン成分を2種以上用いてもかまわないが、アルカリ現像液に対する溶解性の点から、水酸基を有するジアミンの残基を60モル%以上含むことが好ましい。
【0014】
また、一般式(1)のmおよびfはカルボキシル基またはエステル基の数を示し、0〜2の整数を示す。好ましくは1または2である。一般式(1)のpおよびqは0〜4の整数を示し、p+q>0である。一般式(1)のnはポリマーの構造単位の繰り返し数を示しており、10〜100,000の範囲である。ポリマーのアルカリ現像液への溶解性の面から、nは1,000以下が好ましく、100以下がより好ましい。また、伸度向上の面から、nは20以上が好ましい。
【0015】
また、一般式(1)で表される構造を主成分とするポリマーの末端に末端封止剤を反応させることができる。ポリマーの末端を水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれた官能基を有するモノアミンにより封止することで、樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に調整することができる。また、ポリマーの末端を酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸で封止することで、アルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に調整することができる。
【0016】
一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、次の方法により合成される。ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの場合、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物、末端封止に用いるモノアミノ化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン化合物、モノアミノ化合物と縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン化合物、モノアミノ化合物と反応させる方法などがある。ポリヒドロキシアミドの場合、例えば、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸、モノアミノ化合物を縮合反応させる方法がある。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物、モノアミノ化合物を加える方法やピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物、モノアミノ化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下する方法などがある。
【0017】
一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、上記の方法で重合させた後、多量の水やメタノール/水の混合液などに投入し、沈殿させて濾別乾燥し、単離することが望ましい。この沈殿操作によって未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性が向上する。
【0018】
本発明における樹脂組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。本発明においては、これらを2種以上含有してもよい。
【0019】
本発明における樹脂組成物は、水を含有し、純水が好ましい。水分量は、後述のとおり、樹脂組成物中1.0重量%以上8.0重量%以下である。
【0020】
本発明における樹脂組成物は、目的にあわせて適宜その他の成分を含有することができる。例えば、ポジ型感光性樹脂組成物として用いる際は、(c)キノンジアジド化合物を含有することが好ましい。キノンジアジド化合物は、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくてもよいが、露光部と未露光部のコントラストの観点から、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
ポリヒドロキシ化合物は、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、TrisP−SA、TrisOCR−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PCHP、DML−PC、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP,DML−POP、ジメチロール−BisOC−P、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MTrisPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A、46DMOC、46DMOEP、TM−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP−AP(商品名、本州化学工業(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の樹脂組成物の製造方法は、少なくとも(a)水分率2.0重量%以下のポリイミド系樹脂を溶剤に溶解する工程および(b)溶剤もしくはポリイミド系樹脂の溶液または混合液に水を添加する工程を含み、(a)と(b)の工程の順序は問わない。例えば、(a)の後に(b)を行う場合には、(b)の工程では、ポリイミド系樹脂の溶液または混合液に水を添加する。一方、(a)の前に(b)を行う場合には、(b)の工程では、溶剤に水を添加する。また、(a)と(b)を同時に行ってもよい。以下、各工程について説明する。
【0023】
(a)水分率2.0重量%以下のポリイミド系樹脂を溶剤に溶解する。水分率2.0重量%以下のポリイミド系樹脂は、前記方法により合成した後、例えば、特開2007−271897号公報に記載の方法により水分率を調節することによって得ることができる。また、溶剤に溶解する際の溶剤の温度は30〜50℃が好ましく、溶解方法としては撹拌が挙げられる。(a)の工程において、ポリイミド系樹脂の水分率は2.0重量%以下であることが重要である。2.0重量%を超えると、粒径や水分率の均一なポリイミド系樹脂粉末を得ることが困難であり、低粘度の樹脂組成物により厚膜を形成することが困難となる。ここで、本発明におけるポリイミド系樹脂の水分率は、乾燥樹脂約3gをハロゲン水分計(HB−43:メトラー・トレド株式会社製)で、120℃で30分間加熱したときの重量減少率を測定することにより求められる。
【0024】
(b)溶剤もしくはポリイミド樹脂系の溶液または混合液に水を添加する。添加方法としては、溶剤もしくはポリイミド樹脂系の溶液または混合液を撹拌しながら水を滴下する方法や、溶剤もしくはポリイミド樹脂系の溶液または混合液に水を添加した後に撹拌する方法が挙げられる。本発明においては、水を添加することが重要である。ポリイミド系樹脂の良溶媒を添加することによっても、取り扱い性に優れた低粘度の樹脂組成物を得ることはできるものの、膜厚も小さくなるため、厚膜の形成が困難である。本発明においては、水を添加することにより、樹脂組成物の粘度を低く保ちながら厚膜形成が可能となる。
【0025】
(b)の工程において、水分率を樹脂組成物中1.0重量%以上8.0重量%以下に調整することが好ましい。水分率を1.0重量%以上とすることにより、均一な組成の樹脂組成物を容易に得ることができる。また、8.0重量%以下とすることにより、樹脂組成物の粘度を適切な範囲に容易に調整でき、樹脂組成物を塗布する際の操作性が良好となる。5.0重量%以下がより好ましく、厚膜をより容易に形成するために3.0重量%以下がより好ましい。
【0026】
本発明において、樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物を塗布する際のサックバックの操作性の観点から500mPa・s以上が好ましく、800mPa・s以上がより好ましい。また、樹脂組成物を塗布する際の加圧量を低減する観点から、1200mPa・s以下が好ましい。ここで、樹脂組成物の粘度は、E型粘度計を用いて樹脂組成物1mgを25℃の条件下で測定したときの値を表す。
【0027】
本発明の方法により得られる樹脂組成物を塗布することにより、樹脂膜を得ることができる。塗布方法としては、例えば、8インチウェハ上に、東京エレクトロン製ACT−8を用いて樹脂組成物を1000rpmでスピンコートする方法が挙げられる。続いて、110〜130℃で3〜5分間加熱することが好ましく、プリベーク膜を得ることができる。さらに、好ましくは300〜350℃で30〜60分間加熱することにより、キュア膜を得ることができる。
【0028】
プリベーク膜の膜厚は、8μm以上15μm以下が好ましい。ここで、プリベーク膜の膜厚は、大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースVM−1200を使用し、屈折率1.629で測定した値を表す。
【実施例】
【0029】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中のポリイミド系樹脂、樹脂組成物およびプリベーク膜の評価は以下の方法で行った。
【0030】
(1)ポリイミド系樹脂の水分率測定
樹脂約3gをハロゲン水分計(HB−43:メトラー・トレド株式会社製)で、120℃で30分間加熱して、その時の重量減少率を測定し、これをポリイミド系樹脂の水分率とした。
【0031】
(2)プリベーク膜の作製
8インチウェハ上に、東京エレクトロン製ACT−8を用いて樹脂組成物またはワニスを1000rpmでスピンコート塗布し、その後120℃で4分間ベークした。
【0032】
(3)プリベーク膜の膜厚測定
前記(1)記載の方法で得られたプリベーク膜の膜厚を、大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースVM−1200を使用し、屈折率1.629で測定した。
【0033】
(4)樹脂組成物の粘度測定
樹脂組成物またはワニス1mgを試料として、東機産業 TVE−22H E型粘度計を用いて25℃の条件下で測定した。
【0034】
合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.3g(0.05モル)をアセトン100ml、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mlに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた固体をテトラヒドロフランとエタノールの溶液で再結晶した。再結晶して集めた固体をエタノール100mlとテトラヒドロフラン300mlに溶解させて、5%パラジウム−炭素を2g加えて激しく撹拌した。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約4時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、ヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
【0035】
合成例2 ポリイミド樹脂前駆体Aの合成
乾燥窒素気流下、1lの4つ口フラスコに合成例1で合成したヒドロキシル基含有ジアミン化合物4.2g(0.04モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gに溶解させ、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物12.4g(0.04モル)を加えて40℃で3時間撹拌した。さらにN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール11.7g(0.08モル)を加え、40℃で2時間撹拌し、室温に降温した。その後、酢酸24g(0.4モル)を投入し、室温で1時間撹拌した。これを水5Lに投入して沈殿物を濾別し、70℃で120時間乾燥してポリイミド樹脂前駆体Aを得た。ポリイミド樹脂前駆体Aに含まれる水分率は1.8重量%であった。
【0036】
合成例3 ポリイミド樹脂前躯体Bの合成
乾燥窒素気流下、ジアミン化合物4,4’−ジアミノフェニルエーテル(DAE)4.40g(0.022モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA)1.24g(0.005モル)をNMP50gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物12.4g(0.04モル)をNMP14gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで40℃で2時間反応させた。その後、末端封止剤として、4−アミノフェノール0.65g(0.006モル)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥してポリイミド前駆体Bを得た。ポリイミド前駆体Bに含まれる水分率は1.7重量%であった。
【0037】
合成例4 ワニスAの調製
合成例2記載の方法で得られたポリイミド樹脂前駆体Aをγ−ブチロラクトン(GBL)に溶解してワニスAを得た。ワニスAの粘度は1270mPa・sであり、ポリイミド樹脂前駆体Aの濃度は33.1重量%であった。ワニスAを用いて前記(2)記載の方法でプリベーク膜を作製したところ、プリベーク膜の膜厚は11.7μmであった。
【0038】
合成例5 ワニスBの調製
合成例3記載の方法で得られたポリイミド樹脂前駆体BをGBLに溶解してワニスBを得た。ワニスBの粘度は1280mPa・sであり、ポリイミド樹脂前駆体Bの濃度は33.1重量%であった。ワニスBを用いて前記(2)記載の方法でプリベーク膜を作製したところ、プリベーク膜の膜厚は11.9μmであった。
【0039】
合成例5 ワニスCの調製
合成例2記載の方法で得られたポリイミド樹脂前駆体Aと合成例3記載の方法で得られたポリイミド樹脂前駆体Bを5:5の重量比で混合したものをGBLに溶解してワニスCを得た。ワニスCの粘度は1450mPa・sであり、ポリイミド樹脂前駆体Aとポリイミド樹脂前駆体Bの合計の濃度は34.1重量%であった。ワニスCを用いて前記(2)記載の方法でプリベーク膜を作製したところ、プリベーク膜の膜厚は12.5μmであった。
【0040】
実施例1
ワニスAに樹脂組成物中0.5重量%に相当する量の純水を添加し、撹拌して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前記(3)〜(4)記載の方法により、プリベーク膜の膜厚と粘度を測定した。
【0041】
実施例2
ワニスAに樹脂組成物中1.5重量%に相当する量の純水を添加し、撹拌して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、実施例1と同様に評価した。
【0042】
実施例3
ワニスAに樹脂組成物中6.0重量%に相当する量の純水を添加し、撹拌して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、実施例1と同様に評価した。
【0043】
実施例4
ワニスBに樹脂組成物中1.5重量%に相当する量の純水を添加し、撹拌して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、実施例1と同様に評価した。
【0044】
実施例5
ワニスCに樹脂組成物中8.5重量%に相当する量の純水を添加し、撹拌して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、実施例1と同様に評価した。
【0045】
比較例1
ワニスAに樹脂組成物中0.5重量%に相当する量のGBLを添加し、撹拌して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、実施例1と同様に評価した。
【0046】
比較例2
ワニスAに樹脂組成物中1.5重量%に相当する量のGBLを添加し、撹拌して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、実施例1と同様に評価した。
【0047】
実施例1〜5および比較例1〜2の評価結果を表1に示す。樹脂組成物の粘度は、800mPa・s以上1200mPa・s未満であれば○、500mPa・s以上800mPa・s未満であれば△、500mPa・s未満もしくは1200mPa・s以上であれば×と評価した。また、プリベーク膜の膜厚は、ワニスのプリベーク膜厚に対する変化量(樹脂組成物から得られるプリベーク膜厚−ワニスから得られるプリベーク膜厚)が−1.0μm未満(変化量の絶対値が1.0未満)であれば○、−1.0μm〜−1.5μm以内(変化量の絶対値が1.0以上1.5以下)であれば△、−1.5μmを超える(変化量の絶対値が1.5を超える)場合は×と評価した。
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(a)水分率2.0重量%以下のポリイミド系樹脂を溶剤に溶解する工程および(b)溶剤もしくはポリイミド系樹脂の溶液または混合液に水を添加する工程を含む樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(b)の工程において、水分量を樹脂組成物中1.0重量%以上8.0重量%以下に調整する請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−180262(P2010−180262A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22252(P2009−22252)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】