説明

樹脂組成物

【課題】 簡便な方法を用いて耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性を向上させることのできる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の樹脂組成物は、3官能以上のアクリル系モノマー、オリゴマー、ポリマーとアルコキシシリル基を有するアクリル系モノマーとを混合して重合反応させることにより得られるアルコキシシリル基を有する3官能以上のアクリレートと、表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子,または金属アルコキシドとを縮合反応させることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子が配合されたアクリル系の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと記す)等のアクリル樹脂の機械的物性、耐熱性等を向上させる目的で、樹脂中に無機微粒子を配合させた樹脂組成物が知られている。このような樹脂組成物には、アルコキシシリル基を有するアクリル系ポリマーと金属アルコレートをゾル−ゲル反応させることにより、機械的物性を向上させる樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。このような樹脂組成物は、フィルムやレンズ等の光学部材として成型することにより、機械的物性に優れた光学部材として使用することができる。
【特許文献1】特開2004−277512公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような樹脂組成物は、上述したように成型してフィルムやレンズ等の光学部材に使用することができるとともに、既存の光学部材(レンズや車両の窓等)に塗布することによって、ハードコートとしての機能を持たせることも期待できる。一般にハードコートは耐擦傷性や表面硬度等の機械的物性を向上させることができるが、耐擦傷性と表面硬度の両方の機械的物性をともに向上させることが困難であり、両特性を好適に向上させることのできる樹脂組成物が望まれている。
上記従来技術の問題点に鑑み、簡便な方法を用いて耐擦傷性及び表面硬度等の機械的な物性を向上させることのできる樹脂組成物を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、アクリルモノマーとして3官能以上のアクリレートを用いて得られるアルコキシシリル基を有するアクリレート(以下、単にアルコキシシリル基を有する3官能以上のアクリレート、と記す)と表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子、または金属アルコキシドとを反応させて得られる樹脂組成物は、簡便な方法で合成できるとともに、高い透明性を確保しつつ、表面硬度及び耐擦傷性の機械的物性が向上することを見出した。また、アルコキシシリル基を有するアクリレートと表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子とを反応させて得られる樹脂組成物は、熱によって硬化させる場合には、アルコキシシリル基を有する1官能や2官能のアクリレートを用いても機械的物性が向上するが、ハードコート用樹脂組成物として用いる場合、プラスチック等の熱に弱い材料に対してコーティングを行うに場合が多く、UV(紫外線)硬化にてコーティング液を硬化させる必要がある。しかしながら、1官能や2官能のアルコキシシリル基を有するアクリレートと表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子とを反応させて得られる樹脂組成物では、UV硬化では完全に硬化され難く、3官能以上のアクリレートと表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子とを反応させて得られる樹脂組成物が、UV硬化にて十分に重合硬化することができ、ハードコート用の樹脂組成物として特に好適に使用できることを見出した。
【0005】
本発明において、使用されるアルコキシシリル基を有する3官能以上のアクリレートは、3官能以上の(メタ)アクリル系モノマー、もしくはオリゴマー、ポリマーと、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとを共重合させることによって、容易に得ることができる。具体的には以下に挙げるものを使用することができる。なお、表記上「・・・(メタ)アクリレート」とあるのは「・・・アクリレート」または「メタクリレート」を表す。
【0006】
まず、3官能以上の(メタ)アクリル系モノマー(オリゴマー、ポリマーを含む)としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート等の分岐鎖状、環状の(メタ)アクリレート類、又はウレタンアクリレート類等を挙げることができ、ここに挙げるものに限るものではない。またこれらを1種類または複数組み合せて使用することができる。
【0007】
また、アルコキシシリル基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等アルコキシシリル基と(メタ)アクリル基を同一分子内に併せ持つ構造のものであればよい。
【0008】
また、使用する金属酸化物微粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、ITO(スズドープ酸化インジウム)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(Sb23、Sb25等)、及びこれらの複合微粒子等を挙げることができる。なお、このような金属酸化物微粒子は表面に水酸基を有する。また、金属酸化物微粒子の含有量は、前述したアルコキシル基を有するアクリル系ポリマーと表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子との混合量に対して、好ましくは1.0重量%〜70重量%、さらに好ましくは10重量%〜50重量%である。金属酸化物微粒子が1.0重量%を下回ると、その効果が現れにくい。また、70重量%を超えると、得られた樹脂組成物が脆くなりやすい。尚、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなどの反応性の高い金属アルコキシドを金属酸化物微粒子と共に添加したり、金属酸化物微粒子の代わりに添加したりすることも可能である。
【0009】
また、3官能以上のアクリレートと、アルコキシシリル基を有するアクリル系モノマーとを共重合させる際に用いる有機溶媒は、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n-プロピルセロソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられこれらを混合して使用することも可能である。
【0010】
また、アクリル系モノマーを高分子化させるための重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル(BPO)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-2-メチルシクロヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤や2,2'−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル等のアゾ系開始剤等の一般的な重合開始剤を使用することができる。この添加量は、アクリル樹脂全量に対して0.1〜10重量%で、好ましくは0.5〜5重量%で使用する。
【0011】
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について、図面を参考にしつつ説明する。図1は本発明の樹脂組成物の製造方法の流れを示したフローチャートである。
始めにアルコキシシリル基を有する3官能以上のアクリレート(アクリル系ポリマー)を得るために、3官能以上のアクリル系モノマーもしくはオリゴマー、ポリマー(以下3官能以上のアクリル樹脂とする)とアルコキシシリル基を有するアクリル系モノマーとを所定量混ぜて混合物を作成する。
【0012】
3官能以上のアクリル樹脂とアルコキシシリル基を有するアクリル系モノマーとの配合モル比は、好ましくは55:45乃至99:1、さらに好ましくは70:30乃至90:10程度である。アルコキシシリル基を有するアクリル系モノマーの比が45モル%を超えると硬化し難くなり硬度が得られなくなる。また1モル%未満の場合は、この後行う3官能以上のアクリレートと無機物との結合により得られる無機物の効果が得られ難くなる。得られた混合物に重合開始剤と有機溶媒を添加し、80℃で1〜5時間還流した。これによりアルコキシシリル基を有する3官能以上のアクリレートが得られる。
【0013】
得られたアルコキシシリル基を有する3官能以上のアクリレートに有機溶媒中に分散した表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子を所定量添加した。アルコキシシリル基と金属参加微粒子との縮合反応を進行させるため、水に希釈した酸又はアルカリを添加し所定時間攪拌した。アクリル系ポリマーと金属酸化物微粒子とが共有結合した目的の樹脂組成物が得られることとなる。なお、この反応を促進させるために加温させてもよい。なお、金属酸化物微粒子に代えて金属アルコキシドを用いる場合であっても、上記と同様の手順にて目的の樹脂組成物を得ることができる。
【0014】
また、本実施形態の樹脂組成物を液状(液体)にて所定期間保存する場合には、前述した重合開始剤による重合反応を途中で止めておけばよい。液状で保存した樹脂組成物は、ハードコート用としても使用できる。なお、本実施形態の樹脂組成物を液状にて取り扱う場合には、その後、重合,硬化させるために光重合開始剤を添加しておく。このような光重合開始剤は、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキサイド、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられ、これらは2種類以上を併用して用いてもよい。添加量はアクリル樹脂に対して5重量%以下で、好ましくは1〜3重量%で使用する。
【0015】
なお、本発明の樹脂組成物は、製造プロセスも簡単であり、安価に製造することが可能である。この樹脂組成物を光学部材の表面にスピンコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、フローコート、キャップコート、ナイフコート、ダイコート、ロールコート、グラビアコート法等を用いて所定の厚みだけ塗布した後硬化させることにより、表面硬度や耐擦傷性を向上させる効果を有するコーティングを行えることとなる。上記塗工方法にて基材に塗布、溶剤乾燥、UV照射し成膜することとなるが、このときの膜厚は1〜50μm、好ましくは1〜20μmとなるようにする。UV照射は、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、LEDランプ、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線を照射し硬化させて成膜する。また射出成型機や押出成型機等を用いることにより、機械的物性が優れたフィルム状、シート状の樹脂組成物(樹脂成型物)を得ることができる。特にこのような組成物は光学用途に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂組成物によれば、耐擦傷性及び表面硬度の両方の機械的な物性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に関する実施例及び比較例を挙げ、説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
4つ口フラスコに温度計、還流管、攪拌羽を取り付け、フラスコ内を窒素置換した後、メチルエチルケトン(MEK)(モノマーの2倍容量添加)と重合開始剤である過酸化ベンゾイル(BPO)をアクリル樹脂全量に対して5重量%加えた。次に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PE3A:共栄社化学製)とビニルトリエトキシシラン(VTS:東芝シリコン製TSL8311)をモル比3:1で17g添加し、130rpmの速度で攪拌し均一な溶液を得た。この後攪拌させながら80℃の油浴中で1時間反応させた。反応終了後、動粘度測定を行うと3.7mm2/sであり、溶液は白黄色に濁っていた。
上記にて合成したPE3A−VTS共重合体溶液51gに、MEKに分散したコロイダルシリカ(日産化学工業製MEK−ST固形分SiO2(平均粒径10〜15nm)30% MEK70%)20gと0.01Nの塩酸を0.3g加え、室温で6時間攪拌した。
【0018】
得られたPE3A−VTS共重合体−シリカ樹脂組成物に光重合開始剤イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製)をアクリル樹脂に対して3重量%添加してから市販のアクリル板(アクリライトL(三菱レイヨン製))に1000rpmで20秒間スピンコートした。この後65℃で1分間乾燥させてから、高圧水銀灯にて光源下10cmの位置で1000mJ/cm2の紫外線を照射して成膜した。この塗膜の測定は、以下に示す方法で透過率測定、膜厚測定、機械的物性測定(鉛筆高度、耐擦傷性試験)、密着試験、外観確認を行った。
(1)透過率・膜厚測定:分光光度計((株)日立製作所製、HITACHI200-10型)を用いて、得られたフィルム状の樹脂組成物の所定領域(380nm〜780nm)の透過率・膜厚を求めた。
(2)機械的物性測定:得られた樹脂組成物のフィルム表面上の鉛筆硬度(表面硬度)を、井本製作所製の鉛筆硬度試験機を用いてJISK−5400に準じて測定した。またスチールウールによる耐擦傷性は1.5kg荷重で10往復擦ったときのキズの本数で評価した。
(3)密着性試験:塗膜の密着性試験に関しては、JISK−5400に準じて試験を行った。
(4)外観:目視にて観察を行った。
(5)動粘度測定:振動式粘度計((株)マルコム製、OVC−1)を用い、25℃での動粘度測定を行った。その結果を表1に示す。
【0019】
(実施例2)
添加するアクリル樹脂をPE3Aとメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS:信越化学製KBM503)に代え、モル比3:1で17g加えた以外は、実施例1と同様の操作を行いPE3A−MPS共重合体−シリカ樹脂組成物を得た。ここに光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表1に示す。
【0020】
(実施例3)
実施例1と同様な条件にて、PE3A−VTS共重合体を得た。ここにMEKに分散したコロイダルシリカを7gと0.01Nの塩酸を0.3g加え室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表1に示す。
【0021】
(実施例4)
実施例1と同様な条件にて、PE3A−VTS共重合体を得た。ここにMEKに分散したコロイダルシリカを55gと0.01Nの塩酸を0.3g加え室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表1に示す。
【0022】
(実施例5)
実施例1と同様にして、添加するアクリル樹脂をペンタエリスリトールテトラアクリレート(PE4A:共栄社化学製)とMPSに代え、モル比3:1で17g加え、添加する溶媒MEKの量を3倍容量にして80℃で1.5時間還流した。この後実施例1と同様の操作を行いPE4A−MPS共重合体−シリカ樹脂組成物を得た。光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表1に示す。
【0023】
(実施例6)
実施例1と同様にして、添加するアクリル樹脂をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPE6A:共栄社化学製)とMPSに代えモル比3:1で17g加えた。また使用する溶媒MEKの量をモノマーの5倍容量に代えて80℃で5時間還流した。この後実施例1と同様の操作を行いDPE6A−MPS共重合体−シリカ樹脂組成物を得た。光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表1に示す。
【0024】
(実施例7)
実施例2と同様にして、PE3AとMPSのモル比を7:3としてPE3A−MPS共重合体を得た。ここにMEKに分散したコロイダルシリカを40gと0.01Nの塩酸を0.3g加え室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。結果を表1に示す。
【0025】
(実施例8)
実施例2と同様にして、PE3AとMPSのモル比を9:1としてPE3A−MPS共重合体を得た。ここにMEKに分散したコロイダルシリカを20gと0.01Nの塩酸を0.3g加え室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
(比較例1)
ハードコート無の基材の状態での評価をアクリライトL(三菱レイヨン製)にて行った。その結果を表2に示す。
(比較例2)
PE3A17gをMEK34gに溶解させ、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例3)
PE3AとMPSをモル比3:1で17g混合しモノマーの2倍容量のMEKで希釈した後、共重合させずにMEKに分散したコロイダルシリカを20gと0.01Nの塩酸を0.3g加え室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例4)
実施例1と同様にして、PE3A−VTS共重合体を得た。ここにMEKに分散したコロイダルシリカを140gと0.01Nの塩酸を0.3g加え室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後、評価を行ったが、クラックが発生し外観不良となった。その結果を表2に示す。
(比較例5)
実施例1と同様にして、PE3AとVTSをモル比3:1で17gをMEK中で共重合させた。光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例6)
実施例1と同様にして、PE3AとMPSをモル比1:1で17gをMEK中で共重合させた。ここにMEKに分散したコロイダルシリカを20gと0.01Nの塩酸を0.3g加え室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜した後評価を行った。その結果を表2に示す。
(比較例7)
実施例1と同様にして、メチルメタクリレート(ライトエステルM:共栄社化学製)とVTSをモル比3:1で17gをMEK中で共重合させた。ここにMEKに分散したコロイダルシリカを20gと0.01Nの塩酸を0.3g加え、室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜したが、十分に硬化させることができなかった。その結果を表2に示す。
(比較例8)
実施例1と同様にして、グリセリンジメタクリレート(G101P:共栄社化学製)とVTSをモル比3:1で17gをMEK中で共重合させた。ここにMEKに分散したコロイダルシリカを20gと0.01Nの塩酸を0.3g加え、室温で6時間攪拌し、光重合開始剤イルガキュア184をアクリル樹脂に対して3重量%添加してコーティング液とした。これを実施例1と同様にしてアクリル板に塗布し成膜したが、十分に硬化させることができなかった。その結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
(結果)
表1、表2に示すように、実施例1〜8の樹脂組成物は、比較例1〜8の樹脂組成物を用いて得られるアクリル系の樹脂組成物に比べ、高い透明性を確保しつつ、耐擦傷性や表面硬度がともに向上していることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂組成物の製造方法の流れを示したフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシリル基を有する3官能以上のアクリレートと、表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子,または金属アルコキシドとを縮合反応させてなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1の樹脂組成物において、前記金属酸化物微粒子または金属アルコキシドの含有量は、前記アルコキシシリル基を有する3官能以上のアクリレートと表面に水酸基を有する金属酸化物微粒子,または金属アルコキシドとの混合量に対して、1.0重量%〜70重量%含有していることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2の樹脂組成物において、前記3官能以上のアクリレートは3官能以上のアクリル系モノマー、オリゴマー、ポリマーとアルコキシシリル基を有するアクリル系モノマーとを混合して重合反応させることにより得られることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3の樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することを特徴とするハードコート用の樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−115207(P2008−115207A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296960(P2006−296960)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】