説明

樹脂膜形成方法およびパターン形成方法

【課題】樹脂膜を形成する際、一定の厚さの樹脂膜が安定的に形成される方法、さらに、この樹脂膜を用いて精度の高いパターンを形成する方法を提供する。
【解決手段】基板に樹脂膜を形成するとき、まず、無機組成物を主成分とする基板と、前記基板に形成しようとする樹脂膜との間を化学結合させる中間層を前記基板に形成する。この後、基板に対して、前記基板の縁部に形成された前記中間層の縁領域の除去処理を行う。この後、除去処理の行われた基板に樹脂膜をスピンコートし、樹脂膜を基板と化学結合させて硬化させる。最後に、硬化した前記樹脂膜に振動を与えることにより、基板の縁部に形成された樹脂膜を除去する。この樹脂膜を用いて精度の高いパターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に樹脂膜を形成する樹脂膜形成方法およびこの薄膜形成方法により形成された樹脂膜にパターンを形成するパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、フォトリソグラフィあるいはナノインプリントリソグラフィの分野では、基板上に薄膜を形成する場合、薄膜の成分を含む溶液を基板上に滴下して所定の回転速度で回転することにより、薄膜を形成するスピンコート法が一般的に用いられる。これにより、略均一な薄膜を形成することができる。
しかし、滴下される溶液の表面張力により、基板の縁部に幅数mmに亘って樹脂の厚さが厚くなる。すなわち、基板上に形成される薄膜が基板の縁部で盛り上がるエッジビードが発生する。
【0003】
このエッジビードを有する樹脂膜をフォトリソグラフィやナノインプリントリソグラフィに用いると、図6(a),(b)に示すように、基板に対して大きなサイズのフォトマスクやモールドとの接触が十分に行われず、精度の高いパターニングが行われない場合がある。このため、エッジビードのない薄膜を形成する方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、以下に示す基板へのフォトレジスト塗布方法が知られている(特許文献1)。
当該方法では、基板にフォトレジストを滴下するとともに基板を回転させてフォトレジストをスピンコートする工程と、基板を回転させながら基板の周縁に溶剤を供給し、基板の周縁からフォトレジストを除去する工程と、基板を回転させながらフォトレジストの表面を乾燥させる工程とを有し、基板の周縁からフォトレジストを除去する工程とフォトレジストの表面を乾燥させる工程とを複数回繰り返して、基板周縁のフォトレジストの残渣を除去するとともに、フォトレジストの外周部の盛り上がりを低減する。
【0005】
また、半導体基板の表面にポリイミド前駆体組成物をスピン塗布する際に、該基板の表面端部のポリイミド前駆体組成物を掻取り具で除去し、さらに半導体基板を回転させるこ半導体装置の製造方法が知られている(特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開2006−80298号公報
【特許文献2】特開平6−163389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述のフォトレジスト塗布方法では、フォトレジストの表面を乾燥させる前に、溶剤を供給して基板の周縁からフォトレジストを除去するため、基板の周縁以外のフォトレジストの一部分も除去される。このため、一定の厚さを有するフォトレジストが安定して形成されない場合がある。
一方、上述の半導体装置の製造方法では、ポリイミド前駆体組成物を掻取り具で物理的に除去するので、物理的に除去された縁の近傍では厚さが不安定となり、一定の厚さのポリイミド前駆体組成物が形成されない場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記方法とは異なる方法を用いて、一定の厚さの樹脂膜を安定的に形成することができる樹脂膜形成方法およびこの方法により得られる樹脂膜を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、基板に樹脂膜を形成する樹脂膜形成方法であって、
無機組成物を主成分とする基板と前記基板に形成しようとする樹脂膜との間を化学結合させるための中間層を前記基板に形成し、
前記基板に対して、前記基板の縁部に形成された前記中間層の縁領域の除去処理を行い、
前記除去処理の行われた前記基板に樹脂膜をスピンコートにより形成し、
前記樹脂膜を前記基板と化学結合させて硬化させ、
硬化した前記樹脂膜に振動を与えることにより、前記基板の縁部に形成された前記樹脂膜の縁領域を除去する、ことを特徴とする樹脂膜形成方法である。
【0010】
さらに、本発明の他の一態様は、上記樹脂膜形成方法で形成された前記樹脂膜を、金型に押し当て金型のパターンを転写することにより、前記樹脂膜にパターンを形成する、あるいは、露光マスクを前記樹脂膜に密着させて前記樹脂膜を露光することにより、前記樹脂膜にパターンを形成する、ことを特徴とするパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
上述の樹脂膜形成方法では、一定の厚さの樹脂膜を安定的に形成することができる。したがって、パターン形成方法では、精度の高いパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本実施形態の樹脂膜形成方法を用いて形成された樹脂膜付基板の断面図であり、(b)は形成された樹脂膜付基板の上面図である。
【図2】(a)〜(d)は、樹脂膜形成方法の一部を説明する図である。
【図3】(a)〜(d)は、樹脂膜形成方法の一部を説明する図である。
【図4】本実施形態の樹脂膜形成方法のフローチャートである。
【図5】(a)は、実施形態の樹脂膜形成方法により形成された樹脂膜の表面の凹凸を計測した結果のグラフ図であり、(b)は、従来のように、基板に樹脂膜を形成したときの樹脂膜の表面の凹凸を計測した結果のグラフ図である。
【図6】(a),(b)は、本実施形態の樹脂膜形成方法および従来の方法を用いて形成された樹脂膜をレジストに適用したときに形成されるパターンの解像度の差異を示す図である。
【図7】従来の樹脂膜形成方法で形成された樹脂膜のエッジビードの問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の樹脂膜形成方法およびパターン形成方法について詳細に説明する。
図1(a),(b)は、本実施形態の樹脂膜形成方法を用いて形成された樹脂膜付基板10を示している。図1(a)は樹脂膜付基板10の断面図であり、図1(b)は上面図である。
【0014】
(樹脂膜付基板)
樹脂膜付基板10は、基板12と、樹脂膜14と、密着助剤層16と、マスク材堆積層18と、を備える。
基板12は、石英、ガラス、セラミック、金属等の無機組成物を主成分とする基板である。厚さは、例えば0.5〜6.5mmである。基板12は矩形形状を成しているが、矩形形状に限定されない。基板12は円形状や多角形形状を成してもよい。
基板12の上層には、密着助剤層16を介して樹脂膜14が形成されている。樹脂膜14は、例えば、フェノールノボラック樹脂、感光剤、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、2−へプタノン、1,4−ジオキサンを成分として含有する樹脂材や、フェノールノボラック樹脂、感光剤、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、酢酸ブチル、乳酸エチルを成分として含有する樹脂材が用いられる。感光剤は、例えば、感光基としてナフトキノンジアジド化合物を含む。
【0015】
密着助剤層16は、基板12に形成しようとする樹脂膜14との間を化学結合させる中間層として機能する。密着助剤層16は、例えば、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が用いられる。シランカップリング剤は、1つの分子中に、樹脂膜14と結合する反応基と、基板12と結合する反応基を備える。樹脂膜14と結合する反応基は、例えば、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等を含む。一方、基板12と結合する反応基は、メトキシ基、エトキシ基等を含む。
密着助剤層16の厚さは、極めて薄く、例えば10nmより薄い。密着助剤層16の厚さは、好ましくは、1分子層程度の厚さである。このように密着助剤層16の厚さを薄くするのは、基板12と樹脂膜14とを化学結合させるためである。
【0016】
マスク材堆積層18は、樹脂膜14の組成物と化学結合しないように設けられた層であり、後述する樹脂膜14の一部にアッシング処理を行うときのマスクの成分が堆積した層である。マスク材堆積層18は、基板12の縁部に形成された樹脂膜14と化学結合しないので、縁部に形成された樹脂膜14に物理的な外力、例えば超音波振動を与えることにより、容易に上記縁部に形成された樹脂膜14を除去することができる。
【0017】
このような樹脂膜付基板10は、基板12の縁部に形成される樹脂膜14は除去されるので、エッジビードの部分を除去することができる。したがって、一定の厚さの樹脂膜が安定的に形成される。
【0018】
(樹脂膜形成方法)
以下、本実施形態の樹脂膜形成方法を説明する。図2(a)〜(d)および図3(a)〜(d)は、樹脂膜形成方法を説明する図である。図4は、本実施形態の樹脂膜形成方法のフローチャートである。
【0019】
まず、無機組成物、例えば石英を材質とする基板12を用意し、スピンコート法を用いて密着助剤層16を形成する(ステップS10)。基板12の厚さは、例えば0.5〜6.35mmの範囲である。例えば、スピンコータに載せた基板12に対して、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を密着助剤として含む溶液を、例えば0.1〜1cc滴下して、スピンコータにより例えば3000rpmの回転数で60秒スピンコートを行う。これにより、図2(a)に示すような、厚さ数nmの密着助剤層16が形成される。
【0020】
次に、密着助剤層16の縁領域をアッシング処理する(ステップS20)。具体的には、基板12の上層として形成された密着助剤層16に、基板12の縁部に形成された密着助剤層16の縁領域を除く内側領域に、図2(b)に示すように、マスク20を設け、プラズマアッシングを行う。
マスク20は、例えば、フッ素ゴムあるいはシリコーンゴムが用いられる。マスク20は、基板12の縁部から例えば0.1〜10mmあけて密着助剤層16に接触するように設けられる。マスク20の厚さは、例えば1〜5mmである。
【0021】
プラズマアッシングには、平行平板電極型プラズマ生成装置が用いられる。具体的には、プラズマアッシングでは、アルゴンガスと酸素ガスを例えば1:5の分圧比で混合し、例えば45Paの圧力状態で、例えば0.3kWの電力を印加してプラズマを生成する。このプラズマによって生成される酸素ラジカルを利用し(アルゴンガスのみでも同様の効果が得られるため、樹脂への作用は酸素ラジカルに必ずしも限定されない。)、密着助剤層16の縁領域を酸化処理する。処理時間は、例えば0.5〜1分である。
このプラズマアッシングにおいて、プラズマによってマスク20の一部がスパッタリングされ、密着助剤層16の縁領域に堆積する。これにより、図2(c)に示すように、マスク材堆積層18が形成される。マスク材堆積層18は、縁領域にある密着助剤層16が完全にアッシングされて除去される前に、残渣の密着助剤層16の上にマスク材堆積層18が形成されてもよい。
【0022】
次に、マスク20が取り除かれて、密着助剤層16の上に樹脂膜14を形成する(ステップS30)。具体的には、図2(d)に示すように、スピンコータ22に基板12が載せられて、樹脂を基板12上に滴下してスピンコート法で樹脂膜14が形成される。
例えば、樹脂膜14として、フェノールノボラック樹脂、感光剤、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、2−へプタノン、1,4−ジオキサンを成分として含有する樹脂材を用いる場合、例えば、5〜45質量%のフェノールノボラック樹脂を含む溶液を0.3〜6cc密着助剤層16に適下して、2000〜5000rpmで20秒スピンコートする。これにより、厚さ1.5〜2.5μmの樹脂膜14が形成される。
また、樹脂膜14として、例えば、フェノールノボラック樹脂、感光剤、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、2−へプタノン、1,4−ジオキサンを成分として含有する樹脂材を用いる場合、例えば、5〜40質量%のフェノールノボラック樹脂を含む溶液を0.3〜6cc密着助剤層16に適下して、2000〜5000rpmで20秒スピンコートする。これにより、厚さ1.5〜2.5μmの樹脂膜14が形成される。
こうして、図3(a)に示すような樹脂膜14が形成される。
【0023】
次に、樹脂膜14の硬化が行われる(ステップS40)。具体的には、図3(b)に示すように、ヒータの基台24に、樹脂膜14が形成された基板12が載せられて、例えば、90℃の温度で、例えば1.5分加熱された後、室温に冷却される。これにより、樹脂膜14は溶材が取り除かれて固化する。この時、縁領域を除く、密着助剤層16と接触する樹脂膜14は密着助剤層16の反応基を介して、基板12と化学結合する。
こうして形成される樹脂膜14は、図3(b)に示すように基板12の縁部に沿ってエッジビードが形成されている。
【0024】
次に、基板12上に形成された樹脂膜14に振動を与えて樹脂膜14の縁領域が除去される(ステップS50)。振動は、例えば樹脂膜に28〜100kHzの超音波振動を与えることが好ましい。より好ましくは、複数の周波数の振動を繰り返し与えることが好ましい。
具体的には、図3(c)に示すように、基板12ごと、水等の液体26中に浸し、超音波を樹脂膜14に加えることにより、化学結合されていない樹脂膜14の縁領域を物理的に除去する。
例えば、超音波洗浄機の液体中の基板12に浸し、所定の周波数の超音波を与える。所定の周波数は、例えば複数の周波数を含み、超音波を与えるとき、所定時間毎に周波数を順次変えながら、繰り返す。例えば、28kHz、45kHz、100kHzの3つの周波数の超音波が10秒ずつ樹脂膜14に順次繰り返しながら与えられ、合計10分間超音波が印加される。すなわち、0〜10秒では28kHzの超音波が与えられ、10〜20秒では45kHzの超音波が与えられ、20〜30秒では100kHzの超音波が与えられ、30〜40秒では28kHzの超音波が与えられ、40〜50秒では45kHzの超音波が与えられ、これを繰り返す。このように複数の周波数の超音波を順次繰り返し与えることで、縁領域の樹脂膜14を確実に除去することができる。
樹脂膜14の縁領域を除去後、液体26から取り出して乾燥させる。
こうして、図3(d)に示すような基板12に、エッジビードがない樹脂膜14が形成され得る。
【0025】
このように、樹脂膜14の形成方法では、マスク材堆積層18を形成することにより、基板12の縁部には、樹脂膜14が物理的に堆積する領域が形成される。一方、縁部以外の部分には、密着助剤層16を形成することにより、樹脂膜14が基板12と化学的に結合する領域が形成される。これにより、基板12の縁部に堆積した樹脂膜14は振動が与えられることにより、比較的容易に取り除かれる。
なお、マスク20には、樹脂膜14と化学結合しない材質が好適に用いられる。上記実施形態では、その一例として、フッ素ゴムあるいはシリコーンゴムが材質として用いられる。密着助剤としてHMDSを用いる場合、樹脂膜14と化学結合しない点で、フッ素ゴムがより好ましい。(フッ素ゴムがシリコーンゴムより適している理由は明確ではない。なお、シリコーンゴムの場合も樹脂膜と化学結合はしないと考えられる。)
以上の方法により、図1に示す樹脂膜付基板10が形成される。
【0026】
(実施例)
上記樹脂膜形成方法の効果について調べるために、樹脂膜付基板10を作製した。
基板12として厚さ6.35mm、サイズ14.5mm×14.5mm(縦×横)の石英板を用いた。
密着助剤層16として、HMDSの溶液を、0.3cc滴下して、スピンコータにより3000rpmの回転数で60秒スピンコードを行った。これにより、厚さ数nmの密着助剤層16が形成された。
この後、フッ素ゴムからなるマスクを、基板12の縁部を1.2mm空けて密着助剤層16に載せてプラズマアッシャ(平行平板電極型プラズマ生成装置)を用いてアッシング処理をした。このとき、アルゴンガスと酸素ガスを1:5の分圧比で混合し、45Paの圧力状態で、0.3kWの電力を印加してプラズマを生成した。処理時間は、0.5分とした。このとき、基板12の縁部には、マスク材堆積層18が形成された。
この後、マスク20を取り除き、スピンコータ22に基板12を載せて、樹脂を基板上12上に滴下してスピンコート法で樹脂膜14を形成した。樹脂は、フェノールノボラック樹脂、感光剤、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、2−へプタノン、1,4−ジオキサンを成分として含有する樹脂材を用い、38質量%のフェノールノボラック樹脂を含む溶液を0.3cc基板12上に適下した。4000rpmで20秒スピンコートし、これにより、厚さ略2μmの樹脂膜14を形成した。
次に、樹脂膜14の形成された基板12をヒータの基台24に載せて、90℃の温度で1.5分加熱した後、室温に冷却した。これにより、縁領域を除く、密着助剤層16と接触する樹脂膜14は密着助剤層16の反応基を介して、基板12と化学結合した。
次に、樹脂膜14と化学結合した基板12を水中に浸し、超音波振動を与えて樹脂膜14の縁領域を除去した。28kHz、45kHz、100kHzの3つの周波数の超音波を10秒ずつ、合計20分間、樹脂膜14に順次繰り返しながら与えた。
この後、基板12を水から取り出して乾燥した。
【0027】
図5(a)は、上記樹脂膜形成方法により形成された樹脂膜14の表面の凹凸を計測した結果のグラフ図である。図5(b)は、エッジビードを除去しない従来の方法で、基板に樹脂膜を形成したときの樹脂膜の表面の凹凸を計測した結果のグラフ図である。計測は、いずれの場合も、KLA−TENCOR社製P22オートメーテッド・サーフェイス・プロファイラを用いた。
図5(a)および図5(b)の計測結果を比較すれば明らかなように、上記樹脂膜形成方法で形成された樹脂膜は、基板12の縁部では樹脂膜がきれいに取り除かれ、エッジビードが全く無い。しかも、樹脂膜の厚さは略一定であることがわかる。これに対して、図5(b)では、基板の縁部(エッジ)では、高さ5μm程のエッジビードが形成されていることがわかる。
【0028】
このように形成された樹脂膜14は、例えば、パターンの形成に用いられる。具体的には、樹脂膜14が、金型に押し当てられて金型のパターンが樹脂膜14に転写されることにより、樹脂膜14にパターンが形成される。あるいは、露光マスクを樹脂膜14に密着させて樹脂膜14を露光することにより、樹脂膜14にパターンが形成される。
エッジビードを除去しない従来の方法では、図7(a),(b)に示すように、エッジビードが存在するため、金型や露光マスクが樹脂膜と十分に接触しない。このため、樹脂膜14は、精度高く、パターンが転写されない。あるいは、樹脂膜14は、精度高く露光されない。
【0029】
図6(a),(b)は、図5(a),(b)に示す樹脂膜をフォトリソグラフィにおけるレジストとして用いた場合に形成されるパターンの解像度の差異を示した図である。
図6(a)は、上記樹脂膜形成方法で形成された樹脂膜をレジストとして用いて形成されたパターンを示し、図6(b)は、エッジビードを除去しない従来の方法で形成された樹脂膜をレジストとして用いて形成されたパターンを示す。
図6(a),(b)を比較すればわかるように、図6(b)における領域Aにおいて、十分なパターンの解像度、すなわち精度が得られなかった。これは、上述したエッジビードの影響により、露光マスクが樹脂膜に密着せず、一部分において樹脂膜と露光マスクとの間に距離ができ、樹脂膜の表面に形成される露光パターンの解像度が低下したためである。
【0030】
以上、本実施形態の樹脂膜形成方法では、樹脂膜のエッジビードの領域に振動を与えて除去するので、均一な厚さの樹脂膜を形成することができる。また、樹脂膜14の硬化後、エッジビードの形成されている縁領域を除去するので、均一な厚さを安定的に形成することができる。
また、樹脂膜をフォトリソグラフィにおけるレジストとして用いた場合、露光マスクに良好に密着するので、解像度の高い、すなわち精度の高いパターンを形成することができる。樹脂膜をナノインプリントリソグラフィにおける転写される基材として用いた場合、金型と良好に当接するので、精度の高いパターンを形成することができる。
また、マスク20を用いて縁領域の密着助剤層16を除去するので、基板12の外形形状は、円形状、矩形形状等に限定されず、任意の形状の基板12を用いることができる。
【0031】
以上の実施形態に関し、以下の付記を開示する。
(付記1)
基板に樹脂膜を形成する樹脂膜形成方法であって、
無機組成物を主成分とする基板と前記基板に形成しようとする樹脂膜との間を化学結合させるための中間層を前記基板に形成し、
前記基板に対して、前記基板の縁部に形成された前記中間層の縁領域の除去処理を行い、
前記除去処理の行われた前記基板に樹脂膜をスピンコートにより形成し、
前記樹脂膜を前記基板と化学結合させて硬化させ、
硬化した前記樹脂膜に振動を与えることにより、前記基板の縁部に形成された前記樹脂膜の縁領域を除去する、ことを特徴とする樹脂膜形成方法。
【0032】
(付記2)
前記中間層の前記縁領域の除去処理を行うとき、前記縁領域を除く領域をマスクで覆い、前記縁領域に対してアッシング処理を行う、付記1に記載の樹脂膜形成方法。
【0033】
(付記3)
前記アッシング処理を行うとき、前記アッシング処理に用いた前記マスクの材料成分の堆積層が、前記縁領域に形成される、付記2に記載の樹脂膜形成方法。
【0034】
(付記4)
前記マスクの材料成分の堆積層は、前記樹脂膜と化学結合しない成分を含む、付記3に記載の樹脂膜形成方法。
【0035】
(付記5)
前記中間層は、シランカップリング剤であり、前記マスクの材料は、フッ素ゴムあるいはシリコーンゴムである、付記2〜4のいずれか1項に記載の樹脂膜形成方法。
【0036】
(付記6)
前記樹脂膜の縁領域を除去するとき、前記樹脂膜に28〜100kHzの超音波振動を与える、付記1〜5のいずれか1項に記載の樹脂膜形成方法。
【0037】
無機組成物を主成分とする基板と、前記基板に形成しようとする樹脂膜との間を化学結合させるための中間層を前記基板に形成し、
前記基板に対して、前記基板の縁部に形成された前記中間層の縁領域の除去処理を行い、
前記除去処理の行われた前記基板に樹脂膜をスピンコートし、
前記樹脂膜を前記基板と化学結合させて硬化させ、
硬化した前記樹脂膜に振動を与えることにより、前記基板の縁部に形成された前記樹脂膜の縁領域を除去し、
前記縁領域を除去した前記樹脂膜を金型に押し当て金型のパターンを転写することにより、前記樹脂膜にパターンを形成する、あるいは、露光マスクを前記樹脂膜に密着させて前記樹脂膜を露光することにより、前記樹脂膜にパターンを形成する、ことを特徴とするパターン形成方法。
【0038】
以上、本発明の樹脂膜形成方法およびパターン形成方法について詳細に説明したが、本発明の樹脂膜形成方法およびパターン形成方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
10 樹脂膜付基板
12 基板
14 樹脂膜
16 密着助剤層
18 マスク材堆積層
20 マスク
22 スピンコータ
24 基台
26 液体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に樹脂膜を形成する樹脂膜形成方法であって、
無機組成物を主成分とする基板と前記基板に形成しようとする樹脂膜との間を化学結合させるための中間層を前記基板に形成し、
前記基板に対して、前記基板の縁部に形成された前記中間層の縁領域の除去処理を行い、
前記除去処理の行われた前記基板に樹脂膜をスピンコートにより形成し、
前記樹脂膜を前記基板と化学結合させて硬化させ、
硬化した前記樹脂膜に振動を与えることにより、前記基板の縁部に形成された前記樹脂膜の縁領域を除去する、ことを特徴とする樹脂膜形成方法。
【請求項2】
前記中間層の前記縁領域の除去処理を行うとき、前記縁領域を除く領域をマスクで覆い、前記縁領域に対してアッシング処理を行う、請求項1に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項3】
前記アッシング処理を行うとき、前記アッシング処理に用いた前記マスクの材料成分の堆積層が、前記縁領域に形成される、請求項2に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項4】
前記マスクの材料成分の堆積層は、前記樹脂膜と化学結合しない成分を含む、請求項3に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項5】
前記中間層は、シランカップリング剤であり、前記マスクの材料は、フッ素ゴムあるいはシリコーンゴムである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項6】
前記樹脂膜の縁領域を除去するとき、前記樹脂膜に28〜100kHzの超音波振動を与える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂膜形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂膜形成方法で形成された前記樹脂膜を、金型に押し当て金型のパターンを転写することにより、前記樹脂膜にパターンを形成する、あるいは、露光マスクを前記樹脂膜に密着させて前記樹脂膜を露光することにより、前記樹脂膜にパターンを形成する、ことを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−4235(P2012−4235A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136386(P2010−136386)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】