説明

樹脂製フェンダーの位置決め構造

【課題】その内側まで均一に塗装を行うことができる樹脂製フェンダーの位置決め構造を提供する。
【解決手段】車両1の車輪40a,40bの上方における車幅方向外側に設けられ、樹脂により形成されるフェンダー11,21と、フェンダー11,21の上方に設けられ、車両後方に向けて上方に傾斜するフロントピラー36a,36bとを備え、フェンダー11,21ーの上部に、フェンダー11,21とフロントピラー36a,36bとにより形成される角部に沿うように立設するフランジ部13,23を設け、当該フランジ部13,23の端面に、車幅方向内側に向けて突出してその先端がフロントピラー36a,36bの外面に当接する突起部14,24を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前両側部及び後両側部において車体の外壁をなす樹脂製フェンダーの位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、前両側部及び後両側部において車体の外壁をなすフェンダーが設けられている。フェンダーは、道路から跳ね上がる水、泥、砂、石等から車体を保護するための部品であり、従来から車体を構成する他の車体部材と同様に、鋼板から板金加工等によって形成されている。また、近年のフェンダーにおいては、軽量化等を目的として樹脂製のものも製造されている(特許文献1)。
【0003】
このような樹脂製フェンダーを車体に取り付ける場合には、鋼板製フェンダーと同様に、車体部材に固定し、その上部においては車体部材と係合するように位置決めを行っている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−96169号公報
【特許文献2】特開2005−96502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した樹脂製フェンダーの上部における位置決め構造では、樹脂製フェンダーと車体部材との接触面積が大きくなり、樹脂製フェンダーを車体に組み付けて塗装を行う場合には、電着塗装等の塗料が塗布されない部分が多くなってしまう。このように、塗装されない部分が増えると、錆びが発生し易くなり、車両の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
また、このような問題を解決しようとして、車体と樹脂製フェンダーとを分けて別々に塗装を行うことも考えられるが、塗装時間の増大に繋がるだけでなく、均一の塗装品質を得ることができないおそれがある。
【0007】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、その内側まで均一に塗装を行うことができる樹脂製フェンダーの位置決め構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1の発明に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造は、
車両の車輪上方における車幅方向外側に設けられ、樹脂により形成されるフェンダーと、
前記フェンダーの上方に設けられ、車両後方に向けて上方または下方に傾斜するピラーとを備え、
前記フェンダーの上部に、前記フェンダーと前記ピラーとにより形成される角部に沿うように車幅方向内側に向けて立設するフランジ部を設け、
前記フランジ部の端面に、車幅方向内側に向けて突出し、その先端が前記ピラーの外面に当接するピラー当接部を形成する
ことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第2の発明に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造は、
第1の発明に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造において、
前記角部にサイドミラーを備え、
前記フランジ部に、当該フランジ部の立設方向と直交する方向に突出して前記サイドミラーの内面に当接するミラー当接部を形成する
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第3の発明に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造は、
第1の発明に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造において、
前記角部に窓ガラスを備え、
前記フランジ部に、当該フランジ部の立設方向と直交する方向に突出して前記窓ガラスの内面に当接するガラス当接部を形成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造によれば、フェンダーの上部に、フェンダーとピラーとにより形成される角部に沿うように車幅方向内側に向けて立設するフランジ部を設け、そのフランジ部の端面に、車幅方向内側に向けて突出し、その先端がピラーの外面に当接するピラー当接部を形成することにより、フェンダーとピラーとの接触面積が低減されると共に、フェンダーのフランジ部とピラーとの間に隙間が形成されるので、車体塗装時における塗料がフェンダーの内側まで十分に行き渡り、均一に塗装を行うことができる。
【0012】
また、ピラー当接部及びミラー当接部またはガラス当接部を形成することにより、フェンダーの車幅方向の移動を規制することができるので、フェンダーの車幅方向におけるピラーからの位置決めが一定となり、更に車両の組み付け品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造を備えた車両の左側面図、図2は本発明の一実施例に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造を備えた車両の右側面図、図3は車両左側における車体構造の分解斜視図、図4は車両左側における樹脂製フェンダーの位置決め構造を外側後方から見た斜視図、図5は車両左側における樹脂製フェンダーの位置決め構造を内側前方から見た斜視図、図6は図4のA−A矢視断面図、図7は車両右側における樹脂製フェンダーの位置決め構造を外側後方から見た斜視図、図8は車両右側における樹脂製フェンダーの位置決め構造を内側前方から見た斜視図、図9は図7のB−B矢視断面図である。
【0014】
図1,2に示すように、車両1の前方には、図示しないエンジンルームを覆うようにフードパネル31が設けられている。フードパネル31の下方にはヘッドランプ32a,32bが一体的に形成されるランプモジュール32が設けられており、更に、このランプモジュール32の下方にはバンパ33が設けられている。そして、フードパネル31、ランプモジュール32、及びバンパ33の両側部下方には車輪40a,40bが回転可能に支持されており、この車輪40a,40bの上方にはフェンダー11,21が設けられている。これらフェンダー11,21は樹脂により形成されており、図示しない車体骨格部材等に支持されている。
【0015】
フェンダー11,21の後方にはフロントドア34a,34bが車体に対し回動可能に支持されており、このフロントドア34a,34bにはドアミラー35a,35bが設けられている。また、フェンダー11,21の上方には車両後方に向けて上方に傾斜するフロントピラー36a,36bが設けられており、このフロントピラー36a,36b間にはフロントガラス37が設けられている。そして、フェンダー11,21、フロントドア34a,34b、及びフロントピラー36a,36bに囲まれる三角部(後述するデルタ開口部51a,51b,61a,62a)には、三角形状のデルタガラス(窓ガラス)38a,38bが設けられており、デルタガラス38aの前端にはサイドミラー39が回動可能に設けられている。
【0016】
次に、図3乃至図6を用いて車両1の左側に設けられる本発明の一実施例に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造について説明すると共に、図7乃至図9を用いて車両1の右側に設けられる本発明の一実施例に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造について説明する。
【0017】
先ず、車両1の左側に設けられる樹脂製フェンダーの位置決め構造においては、図3乃至図6に示すように、フロントピラー36aの下端部は、サイドアウタパネル51と、このサイドアウタパネル51よりも車幅方向内側に配置されるフロントピラーインナ52との接合により構成されている。
【0018】
サイドアウタパネル51及びフロントピラーインナ52には三角形状に開口するデルタ開口部51a,52aが形成されており、このデルタ開口部51a,52aに対向するようにデルタガラス38aが車幅方向外側から設けられている。デルタガラス38aの外縁にはモール53が嵌合されており、このモール53を接着材54を介してフロントピラーインナ52のデルタ開口部52aの外周部に接着することにより、デルタガラス38aはフロントピラー36aに取り付けられている。
【0019】
また、サイドミラー39の基端部は、カバー39aと、このカバー39aを固定する基板39bとから構成されている。基板39bはフロントピラーインナ52に支持されており、その内面において当該サイドミラー39を回動可能にする軸部39cの基端を支持している。
【0020】
フェンダー11の上部には、後ろ斜め上方に向けて突出する突出部12と、この突出部12の後方においてデルタガラス38a及びサイドミラー39の外縁を臨むように車幅方向内側に立設するフランジ部13とが形成されている。突出部12はフロントピラー36a(サイドアウタパネル51)の下端部を巻き込むように覆っており、突出部12の外面はフロントピラー36aの上端部における外面と面一となっている。そして、フランジ部13は突出部12の後面から連続的に形成されている。
【0021】
フランジ部13の端面には、車幅方向内側に突出する複数の突起部(ピラー当接部)14が所定間隔で形成されている。突起部14は略三角形状をなしており、その先端がサイドアウタパネル51に当接している。即ち、突起部14が形成されていないフランジ部13の端面とサイドアウタパネル51との間には、突起部14の突出量の分だけ隙間が形成されている。
【0022】
また、フランジ部13におけるフロントピラー36a(サイドアウタパネル51)の下端部後面と対向する縦壁部13aには後方に立設する引っ掛け部(ミラー当接部)15が形成されている。引っ掛け部15は、縦壁部13aの端面における最上位に形成される突起部14の下方に形成されており、サイドミラー39の基板39bの内面に当接している。
【0023】
一方、車両1の右側に設けられる樹脂製フェンダーの位置決め構造においては、図7乃至図9に示すように、フロントピラー36bの下端部は、サイドアウタパネル61と、このサイドアウタパネル61よりも車幅方向内側に配置されるフロントピラーインナ62と、サイドアウタパネル61とフロントピラーインナ62との間に配置されるフロントピラーリンフォース63との接合により構成されている。
【0024】
サイドアウタパネル61及びフロントピラーインナ62にはデルタ状に開口するデルタ開口部61a,62aが形成されており、このデルタ開口部61a,62aに対向するようにデルタガラス38bが車幅方向外側から設けられている。デルタガラス38bの外縁にはモール64が嵌合されており、このモール64を接着材65を介してサイドアウタパネル61のデルタ開口部61aの外周部に接着することにより、デルタガラス38bはフロントピラー36bに取り付けられている。
【0025】
フェンダー11の上部には、後ろ斜め上方に向けて突出する突出部22と、この突出部22の後方においてデルタガラス38bの外縁を臨むように車幅方向内側に立設するフランジ部23とが形成されている。突出部22はフロントピラー36b(サイドアウタパネル61)の下端部を巻き込むように覆っており、突出部22の外面はフロントピラー36bの上端部における外面と面一となっている。そして、フランジ部23は突出部22の後面から連続的に形成されている。
【0026】
フランジ部23の端面には、車幅方向内側に突出する複数の突起部(ピラー当接部)24が所定間隔で形成されている。突起部24は略三角形状をなしており、その先端がサイドアウタパネル61に当接している。即ち、突起部24が形成されていないフランジ部23の端面とサイドアウタパネル61との間には、突起部24の突出量の分だけ隙間が形成されている。
【0027】
また、フランジ部23におけるフロントピラー36b(サイドアウタパネル61)の下端部後面と対向する縦壁部23aには後方に立設する引っ掛け部(ガラス当接部)25が形成されている。引っ掛け部25は縦壁部23aの端面における最上位に形成される突起部24の上方に形成されており、デルタガラス38bのモール64の内面に当接している。
【0028】
なお、本実施形態においては、車両の前両側部に設けられる樹脂製フェンダーの位置決め構造について説明したが、車両の後両側部に設けられる樹脂製フェンダーに、本構造を適用することも可能である。
【0029】
従って、本発明に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造によれば、フェンダー11,21の上部に、デルタガラス38a,38bの外縁を臨むように車幅方向内側に向けて立設するフランジ部13,23を設け、当該フランジ部13,23の端面に、車幅方向内側に向けて突出して、フロントピラー36a,36bの外面に点接触する三角形状の突起部14,24を形成することにより、フェンダー11,21のフランジ部13,23における端面とフロントピラー36a,36bの外面との接触面積が低減されると共に、フランジ部13,23の端面とフロントピラー36a,36bの外面との間に隙間が形成される。この結果、車体塗装時における塗料がフェンダー11,21の内側まで十分に行き渡り、均一に塗装を行うことができる。
【0030】
また、車両1の左側におけるフランジ部13に、当該フランジ部13の立設方向と直交する方向に突出してサイドミラー39の基板39aの内面に当接する引っ掛け部15を形成する一方、車両1の右側におけるフランジ部23に、当該フランジ部23の立設方向と直交する方向に突出してデルタガラス39bの内面に当接する引っ掛け部25を形成することにより、突起部14,24及び引っ掛け部15,24がフェンダー11,21の車幅方向の移動を規制することができるので、フェンダー11,21の車幅方向におけるフロントピラー36a,36bからの位置決めが一定となり、更に車両1の組み付け品質を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
フェンダーを容易に取り外し可能にする樹脂製フェンダーの位置決め構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造を備えた車両の左側面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る樹脂製フェンダーの位置決め構造を備えた車両の右側面図である。
【図3】車両左側における車体構造の分解斜視図である。
【図4】車両左側における樹脂製フェンダーの位置決め構造を外側後方から見た斜視図である。
【図5】車両左側における樹脂製フェンダーの位置決め構造を内側前方から見た斜視図である。
【図6】図4のA−A矢視断面図である。
【図7】車両右側における樹脂製フェンダーの位置決め構造を外側後方から見た斜視図である。
【図8】車両右側における樹脂製フェンダーの位置決め構造を内側前方から見た斜視図である。
【図9】図7のB−B矢視断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
11,21 フェンダー
12,22 突出部
13,23 フランジ部
13a,23a 縦壁部
14,24 突起部
15,25 引っ掛け部
31 フードパネル
32 ランプモジュール
32a,32b ヘッドランプ
33 バンパ
34a,34b フロントドア
35a,35b ドアミラー
36a,36b フロントピラー
37 フロントガラス
38a,38b デルタガラス
39 サイドミラー
39a カバー
39b 基板
39c 軸部
40a,40b 車輪
51,61 サイドアウタパネル
52,62 フロントピラーインナ
51a,52a,61a,62a デルタ開口部
53,64 モール
54,65 接着材
63 フロントピラーリンフォース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪上方における車幅方向外側に設けられ、樹脂により形成されるフェンダーと、
前記フェンダーの上方に設けられ、車両後方に向けて上方または下方に傾斜するピラーとを備え、
前記フェンダーの上部に、前記フェンダーと前記ピラーとにより形成される角部に沿うように車幅方向内側に向けて立設するフランジ部を設け、
前記フランジ部の端面に、車幅方向内側に向けて突出し、その先端が前記ピラーの外面に当接するピラー当接部を形成する
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの位置決め構造。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製フェンダーの位置決め構造において、
前記角部にサイドミラーを備え、
前記フランジ部に、当該フランジ部の立設方向と直交する方向に突出して前記サイドミラーの内面に当接するミラー当接部を形成する
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの位置決め構造。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂製フェンダーの位置決め構造において、
前記角部に窓ガラスを備え、
前記フランジ部に、当該フランジ部の立設方向と直交する方向に突出して前記窓ガラスの内面に当接するガラス当接部を形成する
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの位置決め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−162412(P2008−162412A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354229(P2006−354229)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】