説明

樹脂鋳型

【課題】 表面水濡れ性が優れ、型剥離性に優れたキャスト重合製品を製造するのに適した樹脂鋳型、特に、キャスト重合により成型される医療機器のための樹脂鋳型を提供する。
【解決手段】 ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート共重合樹脂、及びこれらを主成分とするポリマーブレンド樹脂から選ばれた1種以上である樹脂から形成された鋳型及び当該鋳型を用いる医療用機器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の表面水濡れ性が優れ、型剥離性に優れたキャスト重合製品を製造するのに適した樹脂鋳型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療機器、例えば眼内レンズ、コンタクトレンズは表面の親水性、特に水濡れ性が要求されるためポリプロピレン樹脂鋳型内で成型して製造した後に製品の表面を親水化処理して製造されている。例えば、特表平11−502949号公報にはポリプロピレン樹脂鋳型内でキャスト重合した後、表面をプラズマ重合処理して表面特性を改良した眼のレンズに関する記載がある。これら表面処理をしないで表面の水濡れ性に優れたコンタクトレンズを製造する方法として、WO出願 JP00/08912号にはモノマーに不溶で、少なくとも1つの面が接触角65〜80度である樹脂、例えばポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体から選ばれた樹脂鋳型で製造する記載がある。また、特開平9−183132号公報にはポリオレフィン樹脂にワックス状添加剤、帯電防止剤等の付着力低減剤、濡れ改良剤を添加した鋳型が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、レンズを鋳型成型した後に表面処理する方法は、レンズの表裏を均一に処理する必要があり、大掛りな設備と厳密な生産工程管理を行う必要があり、製造コストが高くなるという問題点があり、さらに、これら表面処理したレンズは表面の水濡れ性が経時変化しやすいという問題がある。一方ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアルコール共重合体から選ばれた樹脂鋳型で製造する場合には、鋳型と製品の密着性が高いため型剥離に特別な方法が必要であったり、樹脂の射出成型性が不安定で工業的に生産するには不十分となる問題があった。また、鋳型への付着を防止し、レンズの濡れ性を改良するためにポリオレフィン樹脂にワックス状添加剤、低分子量の帯電防止剤等の添加剤を添加する方法では、これら添加剤がレンズに残留する可能性があり、一方、これらの添加剤がレンズから溶出するとその性能が低下する問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明者らは表面の水濡れ性が要求される医療機器、特に眼内レンズ、コンタクトレンズのキャスト重合用の鋳型の材料を検討し鋭意研究を重ねた結果、特定の材料を使用することで、その目的を達成できることを見いだし、本発明を完成する事ができた。すなわち、本発明はポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート共重合樹脂、及びこれらを主成分とするポリマーブレンド樹脂から選ばれた1種以上である樹脂から形成された鋳型及び当該鋳型を用いる医療用機器の製造方法に関するものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0005】
本発明の樹脂鋳型は、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート共重合樹脂、及びこれらを主成分とするポリマーブレンド樹脂から選ばれた1種以上である樹脂から形成されたものである。
【0006】
ポリトリメチレンテレフタレート及びその共重合体(以下PTTと略す)はトリメチレングリコールとテレフタル酸を主成分とするポリエステルであり、例えば特開平5−262862号公報、特開平8−311177号公報、特開2000−159875号公報などに記載されている。また、PTTの重合度を高め、成形性を改良したり、熱安定性を高める方法、低分子量の副生物の生成を抑制する方法などが開発され、高重合度で良好な熱安定性を有するPTTの製造方法が特表2002−543227号公報に記載され、再溶融しても低分子量副生物が少ない組成物とその製造方法が特開2003−119266号公報、および特開2003−155335号公報に記載され、安定した溶融成型が出来るポリマーチップが特開2003−73462号公報に記載され、熱安定性が高く、低分子量の副生物の生成が少ない組成物が特開2003−160648号公報、および特開2003−342356号公報に記載され、重合度が高く、色調に優れ溶融成型性に優れた製造方法が特開2004−269571号公報および特開2005−60528号公報に記載され、低分子量の副生物の生成を抑制する方法が特表2005−520896号公報および特表2005−520897号公報に記載されている。また、ポリトリメチレンテレフタレートの共重合体は特表2002−543227号公報カラム0036及び0039、特開2003−73462号公報カラム0014、特開2003−119266号公報カラム0012、特開2003−155335号公報カラム0010から0011、特開2003−160648号公報カラム0012から0013、特開2003−342356号公報カラム0017、特開2004−189977号公報カラム0009から0011、特開2005−60528号公報カラム0013等に記載されている。
【0007】
例えば、ポリトリメチレンテレフタレートの共重合モノマーとしては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩などの塩、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸類およびそれらのエステル誘導体類、並びにエチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
更に、本発明の樹脂鋳型は、これらPTTにその性質を大きく変えない範囲、例えば5〜30重量%の範囲内で他の熱可塑性樹脂たとえばポリエチレンテレフタレート、イオノマーなどを溶融混練したポリマーブレンド体も使用可能である。PTTは商業的にはサンデルタ株式会社製、商品名:サンビスロン、シェルケミカルズ社製、商品名:コルテラが知られている。これらのうち、サンビスロン A0120が射出成型性に優れ好ましい。
【0009】
本発明の樹脂鋳型を用いて製造した医療機器、例えばコンタクトレンズの表面の水濡れ性及び鋳型からの剥離性に優れる理由は、明確には判明していないが、鋳型表面の化学組成、分子構造、結晶構造などと医療機器用のモノマーとの相互作用により、得られる医療機器の表面の化学構造を水濡れ性、型剥離性に良い構造にしているものと推察される。
【0010】
本発明の樹脂鋳型に使用する樹脂には、その目的により熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、顔料、フィラー、補強剤等を適宜添加することが出来る。
【0011】
本発明の樹脂鋳型は、その目的に応じてさまざまな形態の鋳型に使用が可能であり、例えば特開昭52−117647号公報、特開昭62−297120号公報、特開平9−183132号公報に例示されているコンタクトレンズのキャスト重合用の鋳型、あるいは特開昭63−3910号公報、特表平8−505095号公報に例示されている片面ないしは両面切削加工によりコンタクトレンズを製造する材料を重合する重合型、特表2005−528176号公報に例示されている眼内レンズを重合する鋳型などに使用が可能である。
【0012】
本発明の樹脂鋳型を使用して製造される医療機器は、製品の表面が水と親和性であることが要求されるもので、人工心臓、人工心臓弁、埋込型ペースメーカー、血液回路、眼内レンズ、コンタクトレンズ、カテーテルガイドなどがあり、特にコンタクトレンズではその表面の親水性及び水濡れ性が、汚れ付着防止、視機能維持、感染症防止、装用感向上等において重要である。
【0013】
本発明の樹脂鋳型を使用して製造されるコンタクトレンズには、ヒドロキシメタクリレート、n−ビニルピロリドンなどを主成分とする含水ソフトコンタクトレンズ、シリコン含有モノマーを共重合したシリコン系含水ソフトコンタクトレンズなどが含まれる。シリコン系含水ソフトコンタクトレンズとしては、例えばポリシロキサンマクロマーと親水性モノマーを主成分とするポリマーからなり、ポリシロキサンマクロマーが70〜30重量%、親水性モノマーの合計が30〜70重量%であるポリマーからなるレンズがある。さらに具体的には、ポリシロキサンマクロマーとしては分子末端に重合性の不飽和基を有するシリコン系マクロマー、そのパーフロロ変性マクロマー、またはポリアルキレングリコール変性マクロマーなどのシリコン系マクロマーなどが使用できる。その具体例は特開平3−240021号公報、特開平3−257420号公報、特開平4−50814号公報、特願平3−202106号、特願平3−33026号、WO出願 JP00/08912号などに記載されている。
【0014】
これらのうち、特に下記式(1)で表される親水性ポリシロキサンマクロマーがレンズの表面水濡れ性、酸素透過性、機械的強度並びに弾性率などの特性バランスに優れるため好ましい。
【0015】
【化1】

[ここで、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数1〜12の炭化水素基またはトリメチルシロキシ基から選ばれた基であり;Xは式(2)で表される重合性置換基であり;
【0016】
【化2】

(Rは水素またはメチル基、Zは−NHCOO−、−NHCONH−、
−OCONH−R−NHCOO−、−NHCONH−R−NHCONH−
および−OCONH−R−NHCONH−から選ばれた基(R、R、Rは炭素数2〜13の炭化水素基)であり、mは0〜10、nは3〜10、
pはmが0のとき0であり、mが1以上のとき1である。qは0〜20の整数である。)
【0017】
構造Yは下記式で表される構造単位[I]および[II]が結合してなり、
構造単位[I]と[II]の結合数の比率は[I]/[II]=0.1〜200
であり、[I]と[II]の合計数は10〜1000である。
【0018】
【化3】

(ここで、R及びR10はそれぞれ炭素数1〜12の炭化水素基、炭素数1〜12のフッ素置換炭化水素基およびトリメチルシロキシ基から選択された基であって、同一でも異なっていてもよい。R11およびR12はそれぞれ炭素数1〜12の炭化水素基、トリメチルシロキシ基または親水性置換基からなる基であって、R11またはR12の少なくとも一方は親水性置換基である。ここでいう親水性置換基とは水酸基またはオキシアルキレン基から選ばれた置換基が少なくとも1個結合してなる鎖状または環状の炭化水素基である。)]
【0019】
ここで親水性ポリシロキサンマクロマーの構造単位[I]は、R及びR10が炭化水素基のみのもの[Ia]、少なくとも一つがトリメチルシロキシ基であるもの[Ib]、少なくとも一つがフッ素置換炭化水素基であるもの[Ic]からなるもの、あるいはこれらから選ばれた2以上を含む構造であってもよく、構造単位[I]および[II]の結合形式はブロック的に結合しているもの、ランダム的に結合しているもの、それらが混合しているものを含んでいても良い。該ポリシロキサンマクロマーの構造単位[II]における親水性置換基は水酸基、オキシアルキレン基から選ばれた置換基が少なくとも1個結合してなる鎖状または環状の炭化水素基であるが、式(3)または式(4)で表される基であるものが好ましい。
【0020】
【化4】

(ここでR13は炭素数3〜12の炭化水素基であって、炭素炭素間に−O−、−CO−、−COO−からなる基を挟んでいてもよく、OH基は同一炭素原子上には1個のみ置換され、aは1よりも大きい数である)
【0021】
【化5】

(ここで、R14は炭素数3〜12の炭化水素基であって、炭素炭素間に−O−、−CO−、−COO−からなる基を挟んでいてもよい。R15は炭素数2〜4の炭化水素であって、bが2以上の場合、異なる炭素数であっても良い。bは1〜200であり、Zは水素原子、炭素数1〜12の炭化水素または−OCOR16(R16は炭素数1〜12の炭化水素基)から選ばれた基を示す)
【0022】
さらに好ましくは親水性基が、−COH、−C16OH、−COCOH、−COCHCH(OH)CH、−CCOOCOH、−CCOOCHCH(OH)Cなどの1価アルコール置換基、−COCHCH(OH)CHOH、−CCOOCHCH(OH)CHOH、−COCHC(CHOH)などの多価アルコール置換基、−C(OCOH、−C(OC0OH、−C(OC10OCH、−C(OC10−(OC10OCなどのポリオキシアルキレン基から選ばれたものがある。これらの中で特に、−COH、−COCHCH(OH)CHOH、−COCOHなどのアルコール置換基、−C(OCOH−C(OCOCH(c、dは2〜40でる)などのポリオキシエチレン基であるものが親水性、酸素透過性のバランスがとれている点で優れている。
【0023】
またはR10としてのフッ素置換炭化水素基は材料に耐汚染性を付与するが、フッ素原子が多すぎると親水性を低下させるため、炭化水素の水素原子の40〜85%がフッ素原子に置換した炭素数1〜12の置換基が好ましく、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロオクチル基、1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロデシル基等があり、なかでも3,3,3−トリフルオロプロピル基が親水性、酸素透過性のバランスが優れる点で好ましい。また親水性置換基およびフッ素置換炭化水素基のほかにRまたはR10としてSi原子に結合してもよい置換基或いはR11またはR12としてSi原子に結合する置換基としては炭素数1〜12の炭化水素基またはトリメチルシロキシ基であり、それらは互いに同一でも異なっていても良く、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基で、柔軟性に富み、酸素透過性も良好であることからメチル基が特に好ましい。
【0024】
シロキサン構造単位[I]、親水性置換基が結合したシロキサン構造単位[II]の比率は[I]/[II]で0.1〜200であり、シロキサン構造単位[I]の割合が少ないとシロキサン鎖の柔軟性と酸素透過性が低下する一方、親水性置換基が少なすぎると、親水性が低下し表面濡れ性が悪化する。さらにシロキサン構造単位[I]と[II]の合計数は10〜1000が良いが、より好ましくは20〜500である。ポリシロキサン鎖が短いと重合体の柔軟性、酸素透過性が低下する。又、シロキサン鎖が長すぎると単量体自体でも粘度が著しく大きくなり、モノマーの製造や取扱いが困難となるとともに、重合性が低下し好ましくない。
【0025】
重合可能な不飽和部分を含む重合性置換基(X)はシロキサン鎖の末端に結合しており、該不飽和部分の構造としてはアクリレート基あるいはメタクリレート基が重合性の観点から好ましい。該不飽和部分は炭素数0〜10の炭化水素架橋を介してSi原子との連結部分基に結合してよい。Si原子との連結部分基としてはウレタン結合またはウレア結合を含む炭化水素基が好ましく、該ウレタン結合またはウレア結合(Z1)は、更にオキシエチレン基を介して炭化水素に結合し、そこに含まれていても良い。ウレタン結合およびウレア結合は極性が高く、重合体の親水性を増加させるとともに、強度を大きくする。上記ウレタン結合またはウレア結合は、Si原子との連結部分基で2個存在することも可能である。例えば、−OCONH−R−NHCOO−、−NHCONH−R−NHCONH−および−OCONH−R−NHCONH−(R、R、Rは炭素数2〜13の炭化水素基)を例示できる。これらの構造はジイソシアナート化合物との反応により導入され、両イソシアナートは炭素数2〜13の炭化水素基により相互に結合され得、該炭化水素基は鎖状、環状あるいは芳香族化炭化水素基であってもよい。より好ましくは耐光性の良好な脂肪族炭化水素基がよい。使用できるジイソシアナート化合物の例としては、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアナートなどがある。
【0026】
Si原子との連結部分基中、オキシエチレン基を介してウレタン結合またはウレア結合が結合してもよい炭化水素基、つまりウレタン結合またはウレア結合を含む炭化水素基における炭化水素には3〜10個の炭素原子が含まれ得る。
【0027】
本発明で開示した親水性ポリシロキサンマクロマーの合成方法は種々考えられるが、例えばヒドロシラン(Si−H)を有する環状シロキサン、炭化水素基を有する環状シロキサンおよび両末端にヒドロキシアルキル基を有するジシロキサン、場合によりフッ素置換炭化水素基を有する環状シロキサンを加えた混合物を硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酸性白土などの酸性触媒を用いて開環重合し、両末端に水酸基を有し、ヒドロシリル基含有ポリシロキサン化合物を得る。その際、それぞれの環状シロキサンとジシロキサン化合物の仕込み比率を変えることで重合度およびフッ素置換基、ヒドロシリル基の導入割合が異なったシロキサン化合物が得られる。次にイソシアネート基含有アクリレート、あるいはイソシアネート基含有メタクリレートをシロキサン末端の水酸基と反応させ両末端に重合性置換基を有するヒドロシラン含有含フッ素シロキサン化合物を得る。ここで、イソシアネート基含有メタクリレート化合物としては、例えばメタクリロキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネートなどがあり、さらにヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートなどの水酸基含有アクリレートあるいは水酸基含有メタクリレートと種々のジイソシアネート化合物と反応させて得られるアクリレート基あるいはメタクリレート基含有イソシアナート化合物も利用できる。次に、不飽和炭化水素基を有する親水性化合物を塩化白金酸など遷移金属触媒を用いヒドロシランに付加反応させる、いわゆるヒドロシリル化反応を利用することで親水性ポリシロキサンマクロマーを得ることができる。ここでヒドロシリル化反応の際に、水酸基、カルボン酸などの活性水素化合物が存在すると副反応として脱水素反応を起こすことが知られていて、あらかじめ活性水素を保護したり、バッファー剤を添加し、副反応を抑える方法が、例えば、米国特許第3907851号、特開昭62−195389号公報に記載されている。また別の合成ルートとしては両末端に水酸基を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン化合物の合成後、先にヒドロシリル化による親水性化合物の導入を行い、その後にイソシアネート基含有メタクリレートなどを反応させ、シロキサン末端に重合性置換基を導入する方法もある。この場合にも親水性化合物中にイソシアネートと反応しうる活性水素が存在する場合には保護基を導入し、イソシアネートとの反応を防止する方法が知られている。また出発原料に環状シロキサンに代わって、ジメトキシシラン化合物やジエトキシシラン化合物などの珪酸エステル誘導体を用いることもできる。こうして得られる親水性ポリシロキサンマクロマーの2種以上を混合して使用する事もできる。
【0028】
これら親水性ポリシロキサンマクロマーの具体例としては下記のものがある。
【0029】
【化6】

ここで、Y:
【0030】
【化7】

若しくは、式(5)において、Y:
【0031】
【化8】

または、
【0032】
【化9】

ここで、Y:
【0033】
【化10】

または、
【0034】
【化11】

ここで、Y:
【0035】
【化12】

または、
【0036】
【化13】

ここで、Y:
【0037】
【化14】

若しくは、式(9)において、Y:
【0038】
【化15】

または、
【0039】
【化16】

ここで、Y:
【0040】
【化17】

【0041】
医療機器、特にコンタクトレンズは、上記のポリシロキサンマクロマーから選ばれた少なくとも1種が70〜30重量%、親水性モノマーが30〜70重量%のものが使用され、ポリシロキサンマクロマーが65〜40重量%、親水性モノマーの合計が35〜60重量%のものが上記諸特性のバランスが取れている事から好ましい。
【0042】
ポリシロキサンマクロマーが30重量%未満であると必要とする酸素透過性が得られず好ましくない。親水性モノマーが30重量%未満では必要とされる水濡れ性が低下する為好ましくなく、また、70重量%を超えると酸素透過性が低下する為好ましくない。
【0043】
本発明で使用できる親水性モノマーは、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ヒドロキシブチルメタアクリレート、グリセリルメタアクリレートなどのヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレート、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−フォルムアミド、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−ビニルピリジン、N−メチルイタコンイミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルイミダゾール、N−オクタデシルアクリルアミド、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルスクシンイミドなどのN原子含有モノマーなどがあり、ポリシロキサンマクロマーとの溶解性、得られるポリマーの物性のバランスなどから好ましくは2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ヒドロキシブチルメタアクリレート、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−フォルムアミド、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドから選ばれた1種以上が使用さる。
【0044】
上記のコンタクトレンズは、その実用性能を維持する目的でさらに共重合可能なモノマーを使用する事が可能である。その構成物に制限は無いが、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリル酸などのアクリル系モノマー、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレートなどのメタアクリル系モノマー、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレート、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピルメタアクリレート、ペンタメチルジシロキサンプロピルメタアクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルオキシエチルメタアクリレート、トリス(ポリジメチルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレートなどのシリコン系モノマー、シロキサニル基とメタアクリレート基の間にウレタン結合、グリセリル基、ポリアルキレングリコール基など親水性基を有するもの、あるいはシロキサニル基の一部を末端ヒドロキシ基あるいはポリアルキレングリコール基で置換した親水性シロキサニルメタアクリレート、トリス(ジメチルトリフロロプロピルシロキシ)シリルプロピルメタアクリレートなどのフルオロシリコン系モノマー、2、2、2−トリフロロエチルメタアクリレート、2、2、3、3、3−ペンタフロロプロピルメタアクリレート、ヘキサフロロイソプロピルメタアクリレートなどのパーフロロアルキル系モノマー、1、1、2、2−テトラフロロエトキシ−2−ヒドロキシプロピルメタアクリレートなどの水酸基を有するフロロアルキル系及びフロロアルキルエーテル系モノマー、エチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、テトラメチルジシロキサンビス(プロピルメタアクリレート)などの架橋性モノマーなど共重合可能な化合物との共重合物がある。
【0045】
上記のコンタクトレンズは、上記モノマー及びマクロマーから選ばれた混合物に、熱、UV、電子線あるいは放射線などにより重合を開始する重合開始剤を添加して重合したポリマーから製造される。その目的に応じて染料、顔料、UV吸収剤などの添加物を加える事も可能である。
【0046】
上記のコンタクトレンズは、そのポリマーのミクロ構造、マクロ構造を本発明の目的に
合うようにコントロールする為に、上記モノマーおよびマクロマーから選ばれた混合物にさらにモノマー混合物に可溶で、低級アルコールあるいは水に可溶の有機溶媒を0.2〜50重量%の範囲で添加する事ができる。これら有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、エトキシエタノール、グリセリン、ジメチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、テトラヒドロフラン、りん酸アルキルエステル、ピロリドンなどが使用できる。
【0047】
上記のコンタクトレンズは、本発明の鋳型を用いることを除いて、従来のレンズ製造方法で製造でき、例えば、レンズの形状に相当する重合鋳型の中にモノマー混合物を注入して重合するキャスト法で製造できる。なお、キャスト重合で製造した後にレンズ表面をオゾン処理、プラズマ照射処理する事により表面特性特に水濡れ性などをさらに改良する事も可能である。例えば、具体的な例の1つとして、上記ポリシキサンマクロマーおよび親水性モノマーを含む混合物に重合開始剤を加え、本発明の鋳型に注入して加熱重合し、製造することができる。
【0048】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されることはないことは言うまでもない。
【0049】
また、特に断りのない限り、個々に用いられている数値は、全て有効数字で表現されている。
【0050】
(実施例)
実施例における鋳型の評価方法は以下のとおりである。
【0051】
1.水接触角
厚み1mm、40X60mm角の板状のキャスト重合用鋳型を成型する金型を使用して、各樹脂の技術資料に基づき適正な射出成型条件で射出成型した鋳型材料について、協和界面科学株式会社製 Contact Angle Meter CA−A を用いて23℃で測定した。試料片は測定の前に防湿性フィルムによる包装状態で23℃の恒温室内に24時間静置して測定時に包装から取り出して、シリンジにて直径約1.8mmの純水を試料片上に接触させ、その液滴と試料片が形成する角度を読み取り、計算により求めた。
【0052】
実施例におけるキャスト重合した試料の評価方法は以下の通りである。
【0053】
2−1.含水率
試料片を精製水に入れ37℃で72時間静置した後、試料片を取り出し表面の付着水を手早く拭き取ってその重量を精秤した後、真空乾燥機で恒量になるまで乾燥して、その重量変化から求めた。
含水率=(重量変化量/乾燥前重量)×100 (%)
【0054】
2−2.水濡れ性
試料片を保存液から引き上げた時のレンズ表面の水層の維持状況を観察して水濡れ性を評価した。
【0055】
【表1】

【0056】
2−3.酸素透過係数(Dk値)
コンタクトレンズ協会標準Dk値測定法に準じて理化精機工業(株)社製K316 IPI型フィルム酸素透過測定器を使用して電極法により測定した。
Dk値の表示は×1011(cm/sec)・(mlO/ml×mmHg)で示した。
【0057】
2−4.引っ張り弾性率
試料片から約3mm幅のサンプルを切り出し、万能試験機(島津製作所製 AGS−50B型)で100mm/minの速度で引っ張り試験を行い、初期の傾きから求めた。値はdyne/cmで示した。
【0058】
2−5.タンパク質付着性
下記組成のモデル汚れ水溶液を調合した。
【0059】
【表2】

【0060】
この液2mlに約0.2mm厚み、約15mm直径の試料片1枚を入れ、温度37℃で24時間浸せきし、精製水中に試料片を入れて30分間振とうして洗浄する。試料片を取り出し表面水を軽くふき取る。
【0061】
その試料片をSDS/炭酸ナトリウム溶液に60℃で15時間浸漬し、その浸漬液をプロテイン分析試薬(BCA液)液中に添加し60℃で1時間反応後、UV562nmにて分光光度計(日本分光(株)社製 V−550型)で測定した。
【0062】
別途求めた検量線から、試料片1cm平方当りの付着タンパク質量を求めた。
【0063】
2−6.脂質付着性
オリーブオイル0.1%のリン酸緩衝液を撹拌混合して、約0.2mm厚み、約15mm直径の試料片を入れ40℃の恒温槽中で20時間浸せきした。5mlの精製水を入れた容器内に試料片を入れ30秒間振り洗いをして、これを5回繰り返して洗浄した。
【0064】
この試料片を真空乾燥した後クロロフォルム/メタノール 2/1混合溶媒で抽出し、トリグリセライドG試験液で発色してその吸光度を分光光度計(日本分光(株)社製 V−550型)で測定した。別に求めた検量線から試料片1cm平方当りの脂質付着量を求めた。
【実施例1】
【0065】
PTT樹脂(サンデルタ株式会社製 サンビスロンTM A0120)を使用して射出成型機で板状のキャスト重合用鋳型を作成し、室内(25℃、65%RH)で保管したものを使用した。使用する前に測定したこの鋳型の水接触角は61度であった。
【実施例2】
【0066】
平均分子量約6000の両末端メタクリロキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサンマクロマー50重量部、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート40重量部、N−ブチルアクリレート10重量部、メタクリル酸5重量部、エチレングリコールジメタアクリレート5重量部のモノマー混合物に重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部を加え実施例1で得たPTT樹脂鋳型に注入し、80℃で1時間加熱して重合した。重合直後の鋳型は、70℃の水中に1時間入れることで容易に剥離可能で、ポリマーシートも鋳型から容易に剥離できた。物性を評価した結果、含水率は3%、Dk値は226で、水濡れ性はランク3、タンパク質及び脂質の付着性はそれぞれ5μg/cm平方、50μg/cm平方で汚れ付着が少なく優れていた。また、引っ張り弾性率は1.2×10dyne/cmであった。
【実施例3】
【0067】
分子側鎖に重合度10のメチル基末端のポリエチレングリコール基、トリフロロプロピル基を有する平均分子量約6000の両末端ヒドロキシエトキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン(シロキサン骨格において、ポリエチレングリコール基置換シロキサン単位、トリフロロプロピル基置換シロキサン単位の含有比率がそれぞれ約3.9モル%、6.4モル%)と、2−イソシアナトエチルメタアクリレートとの反応により親水性シロキサニルマクロマーを合成した。
【0068】
上記親水性シロキサニルマクロマー55重量部、N−ビニルピロリドン15重量部、N−ビニル−N−メチルアセトアミド20重量部、トリフロロエチルメタアクリレート9重量部、エチレングリコールジメタアクリレート1重量部のモノマー混合物に重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部を添加し、実施例1で作成したPTT樹脂製のキャスト重合用鋳型に注入し、80℃で1時間加熱して重合した。重合直後の鋳型は、70℃の水中に浸漬することで容易に剥離可能で、ポリマーシートも鋳型から容易に剥離できた。試料片を燐酸バッファーのコンタクトレンズ保存液で膨潤して含水ポリマーシートを得た。物性を評価した結果、含水率は39%、Dk値は125で、タンパク質及び脂質の付着性はそれぞれ33μg/cm平方、9μg/cm平方と少なかった。水濡れ性はランク3で優れていた。また、引っ張り弾性率は1.1×10dyne/cmであった。
【実施例4】
【0069】
分子側鎖に重合度7のメチル基末端のポリエチレングリコール基、トリフロロプロピル基を有する平均分子量約10000の両末端ヒドロキシエトキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン(シロキサン骨格において、ポリエチレングリコール基置換シロキサン単位、トリフロロプロピル基置換シロキサン単位の含有比率がそれぞれ約3.9モル%、6.4モル%)と、2−イソシアナトエチルメタアクリレートとの反応により親水性シロキサニルマクロマーを合成した。
【0070】
上記親水性シロキサニルマクロマー49重量部、N−ビニルピロリドン22重量部、N−ビニル−フォルムアミド11重量部、ヒドロキシブチルメタアクリレート11重量部、イソボルニルメタアクリレート6.7重量部、トリアリルイソシアヌレート0.7重量部のモノマー混合物にエトキシエタノール30重量部を加え、これに重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部を添加し、実施例1で作成したPTT樹脂製のキャスト重合用鋳型に注入し、80℃で1時間加熱して重合した。重合直後の鋳型は、剥離可能で、ポリマーシートも鋳型から容易に剥離できた。試料片を燐酸バッファーのコンタクトレンズ保存液で膨潤して含水ポリマーシートを得た。得られた含水ポリマーシートの物性を評価した結果、含水率は41%、水濡れ性はランク3で優れていた。また、含水ポリマーシートを、121℃で60分間オートクレーブ滅菌処理した後の水濡れ性も処理前と同じであった。
【実施例5】
【0071】
分子側鎖に重合度7のメチル基末端のポリエチレングリコール基、トリフロロプロピル基を有する平均分子量約9000の両末端ヒドロキシエトキシプロピル基を有するポリジメチルシロキサン(シロキサン骨格において、ポリエチレングリコール基置換シロキサン単位、トリフロロプロピル基置換シロキサン単位の含有比率がそれぞれ約3.9モル%、6.4モル%)と、2−イソシアナトエチルメタアクリレートとの反応により親水性シロキサニルマクロマーを合成した。
【0072】
上記親水性シロキサニルマクロマー48重量部、N−ビニルピロリドン23重量部、N−ビニル−フォルムアミド11重量部、ヒドロキシブチルメタアクリレート11重量部、イソボルニルメタアクリレート6.8重量部、トリアリルイソシアヌレート0.7重量部のモノマー混合物に重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1重量部を添加し、実施例1で作成したPTT樹脂(サンデルタ株式会社製 サンビスロンTM A0120)製のキャスト重合用鋳型に注入し、80℃で1時間加熱して重合した。重合直後の鋳型は、剥離可能で、ポリマーシートも鋳型から容易に剥離できた。試料片を燐酸バッファーのコンタクトレンズ保存液で膨潤して含水ポリマーシートを得た。得られた含水ポリマーシートの物性を評価した結果、含水率は48%、水濡れ性はランク3で優れていた。
【0073】
(比較例1)
実施例2において、樹脂鋳型としてエチレンビニルアルコール共重合物(日本合成化学製、商品名:ソアライトM)製のキャスト重合用鋳型を使用して、80℃で1時間加熱して重合した。重合後鋳型は容易に剥離が出来ず、90℃熱水中に浸漬したのち、ようやく鋳型および試料片を剥離した。試料片を燐酸バッファーのコンタクトレンズ保存液で膨潤して含水ポリマーシートを得た。物性を評価した結果、含水率は3%、Dk値は225で、水濡れ性はランク3であった。また、引っ張り弾性率は1.3×10dyne/cmであった。
【0074】
(比較例2)
実施例2において、樹脂鋳型としてエチレンビニルアルコール共重合物(日本合成化学製、商品名:ソアライトS)製のキャスト重合用鋳型を使用して、80℃で1時間加熱して重合した。重合後鋳型は容易に剥離が出来ず、90℃熱水中に浸漬したのち、ようやく鋳型および試料片を剥離してポリマーシートを得た。物性を評価した結果、含水率は2%、Dk値は226で、水濡れ性はランク3、タンパク質及び脂質の付着性はそれぞれ5μg/cm平方、55μg/cm平方であった。また、引っ張り弾性率は1.3×10dyne/cmであった。
【0075】
(比較例3)
実施例2において、樹脂鋳型としてポリエチレンテレフタレート(三菱レイヨン製、ダイヤナイト)製のキャスト重合用鋳型を使用して、80℃で1時間加熱して重合した。重合後鋳型は手で剥離が可能で鋳型および試料片を剥離してポリマーシートを得た。物性を評価した結果、含水率は2%、Dk値は225で、水濡れ性はランク2で若干劣るものであった。タンパク質及び脂質の付着性はそれぞれ5μg/cm平方、60μg/cm平方であった。また、引っ張り弾性率は1.3×10dyne/cmであった。しかしながら、鋳型として、P−3.0、S14.0mm、Tc0.07mmのコンタクトレンズを得るための鋳型を射出成型した際には、樹脂の熱安定性が経時的に変化するためレンズ周辺部の勘合部が安定したものが得られなかった。
【0076】
(比較例4)
実施例2のモノマー混合物をポリプロピレン(株式会社チッソ製、ホモポリマー)製のレンズ形状(P−3.0、S14.0、Tc0.12)にしたキャスト重合用鋳型に注入し、80℃で1時間加熱して重合した。重合後鋳型は手で剥離が可能で鋳型および試料片を剥離してソフトコンタクトレンズを得た。物性を評価した結果、含水率は3%、Dk値は226で、タンパク質及び脂質の付着性はそれぞれ18μg/cm平方、103μg/cm平方と多かった。水濡れ性は保存液浸漬レンズではランク1であり、レンズ表面の水を拭き取ってから試験するとランク0で乾燥により表面の水濡れ性が大幅に低下した。また、引っ張り弾性率は1.2×10dyne/cmであった。
【0077】
(発明の効果)
本発明は、製品の表面親水性が優れ、鋳型剥離性が簡便な鋳型を提供し、表面の親水性が要求される医療機器、たとえば眼内レンズ、コンタクトレンズのキャスト重合用鋳型として有用な樹脂鋳型および該鋳型を用いる医療機器の製造方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート共重合樹脂、及びこれらを主成分とするポリマーブレンド樹脂から成る群から選ばれた1種以上である樹脂から形成された鋳型。
【請求項2】
鋳型が医療機器製造用のキャスト重合鋳型である請求項1に記載の鋳型。
【請求項3】
キャスト重合鋳型が眼内レンズあるいはコンタクトレンズ製造用である請求項2に記載の鋳型。
【請求項4】
キャスト重合により成型される医療機器の製造方法であって、該方法は、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート共重合樹脂、及びこれらを主成分とするポリマーブレンド樹脂から選ばれた1種以上である樹脂から形成された鋳型中で前記重合を行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項5】
前記医療用機器が、眼内レンズあるいはコンタクトレンズである、請求項4に記載の方法。

【公開番号】特開2007−144948(P2007−144948A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345946(P2005−345946)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(390031015)旭化成アイミー株式会社 (8)
【出願人】(505443780)サンデルタ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】