説明

橋梁点検装置

【課題】 橋梁下面の外観検査を、作業員が容易かつ効率的に行うことができ、なおかつ一定以上の検査精度を確保することができる橋梁点検装置を提供する。
【解決手段】 橋梁100上に配置される支持体2と、支持体2に支持される形で橋梁100上からその側方に向けて延出し、橋梁100の側方外側を回り込む形で、延出先端部のカメラ4を橋梁100の下面よりも下側に位置させる屈曲変形可能なアーム部材3を備え、カメラ4によりによって橋梁100の下面を少なくとも正対方向Qとは異なる斜め方向Pから撮影された場合であっても、その橋梁下面画像を補正して、正対方向Qから見た正対画像とすることができ、これを表示出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の外観を点検するために使用される橋梁点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁下面を点検する場合、まずは一次検査として外観の検査がなされ、その結果から二次検査の必要性が検討される。この一次検査は、従来、足場を組んだりハシゴをかけて検査者による目視の検査が行われたり、あるいは橋梁下に棒状の部材をのばしてその先端に取り付けられたカメラで近接撮影し、その撮影画像から検査を行うなどの手法により、橋梁下面の外観が検査されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2003−119722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、足場やはしごを設置する場合には、多大の時間と労力、コストを要するという課題がある。他方、棒状部材を用いて撮影を行う場合、橋梁の下から直接的にのばしてカメラ撮影ができればよいが、橋梁下方に道路や河川が存在する場合、近接撮影は不可能となる。
【0005】
これに対し特許文献1には、橋梁上に構造物の長さ方向に移動可能な手動式台車を載置し、その台車に、構造物の側部外方にオーバーハングさせて支持台を設け、さらに、その支持台に保持される垂直支柱と、該垂直支柱の下端に装着されて橋梁下方をのびる水平アームとを設けて、その水平アーム上に、その元部から先部まで移動可能とした撮影ユニットを搭載し、その移動可能な撮影ユニットに上向きの撮影をさせることにより、橋梁下面を近接撮影する技術が開示されている。他にも、これに類する点検装置が存在するが、こうした点検装置においては、共通して以下のような課題がある。
【0006】
まず第一の課題として、装置の重量の問題があげられる。橋梁上に設置される装置本体は、橋梁下面まで回り込むアームを支持するために一定以上の重量が必要となるため、欄干等に簡易に取り付ける手法を採用することは難しく、安定的な検査を行うためには橋梁上に重量のある支持体を配置することが必要となる。ところが、橋梁下面のより遠いところを近接撮影しようとする場合には、必然的にアームが長くなりアーム自体の重量も増加することから、これらを支持する支持体の重量を増す必要に迫られる。このようにして、点検装置においてその総重量が増すことは、点検装置の搬送・組み立て・検査・撤去といった各種の人的作業をより一層困難とする要因となり、作業員の負担を大きくする。特に、外観検査は、橋梁の長さ方向にわたって所定間隔おきに繰り返しなされるものであるから点検装置の手動移動が必須となり、重量が重いほどその移動が困難となる。この問題を解決するため、作業員の人数をそれなりに確保するとなると、今度は人件費等のコスト面が問題となる。また重量増に伴い支持体が大型化すると、橋梁上での歩道ないし車道への占有面積が増してしまう。この場合、交通状況に応じて検査を中断するなど検査効率が悪くなる恐れがあるし、かといって検査効率を優先して交通規制などを行った場合には、それらに別途コストがかかる。
【0007】
第二の課題としては、検査精度の問題があげられる。カメラ撮影によって橋梁下面の外観検査を行う場合、これを精度よく行うためには、撮影位置が撮影対象に対して正対していることが必要となる。しかしながら、橋梁下面を延びるアーム、さらにはその上を撮影ユニットが走行するアームを、その全長にわたって水平に保持するには強度上の限界があり、橋梁幅全てを検査できない可能性がある。仮にアーム強度を増して長さを延長したとしても、今度は上記した重量の問題に直面するというジレンマに陥ってしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、橋梁下面の外観検査を、作業員が容易かつ効率的に行うことができ、なおかつ一定以上の検査精度を確保することができる橋梁点検装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の橋梁点検装置は、
橋梁上に配置される支持体と、
前記支持体に支持される形で橋梁上から橋梁側方に向けて延出し、その先端側から橋梁の側方外側を下方に延出して、その下方に延出する延出先端部が橋梁下面よりも下側に位置するとともに、その延出先端部が橋梁側方外側から橋梁下面の下側に回り込むように変形可能とされたアーム部材と、
前記延出先端部に取り付けられ、前記橋梁下面よりも下側位置にて該橋梁下面を少なくとも正対方向とは異なる斜め方向から撮影可能とされた撮影手段と、
前記斜め方向から撮影された橋梁下面画像を、少なくとも前記正対方向から見た正対画像となるよう補正変換可能な補正手段と、
前記補正手段による補正変換後の画像を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
上記本発明の構成によれば、斜め方向に撮影した画像を正対方向の画像に補正することができる。カメラが取り付けられたアームの橋梁幅方向の長さが不足していたとしても、斜めに撮影すればその分の長さを補うことができるし、その斜め方向の撮影画像を正対方向の画像に補正することで検査精度も確保できる。また、斜め方向に撮影することができるために、アームの橋梁幅方向の長さが短くて良いため、重量の問題も解決できる。加えて、アーム部材が橋梁下面の下側に回り込む方向に自在に変形することができるので、撮影手段の撮影方向を自在に変更することができる。最適な角度で撮影された画像が正対方向の画像に補正されれば、より見やすい画像を得ることができ、検査精度の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の橋梁点検装置の一実施形態を示す外観図。
【図2】図1の橋梁点検装置における支持体の平面、正面、側面を簡略的に示した図。
【図3】図1の橋梁点検装置におけるワイヤの配置を説明する図。
【図4】図1の橋梁点検装置における関節機能付きアーム部の拡大図。
【図5】図1の橋梁点検装置における垂下アーム部の伸縮状態を説明する図。
【図6】図1の橋梁点検装置における垂下アーム部の屈曲変形を説明する図。
【図7】図1の橋梁点検装置の操作手順のうちの一部を説明する図。
【図8】撮影時における表示画面の一例を示す図。
【図9】視点変換時における表示画面の一例を示す図。
【図10】図1の橋梁点検装置の電気的構成を示すブロック図。
【図11】図1の橋梁点検装置の配管構成を示す配管図。
【図12】図1とは異なる本発明の実施形態の橋梁点検装置における電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、橋梁検査の一次検査として実施される外観損傷調査等の外観調査を行うための橋梁点検装置であり、具体的には、ひび割れ等の外観異常を見つけ出し、その位置や大きさの特定を行う検査に用いられるものである。
【0013】
以下、本発明の橋梁点検装置の一例をなす実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態である橋梁点検装置の全体を示す概観図である。図1の実施形態における橋梁点検装置1は、橋梁100上に配置される支持体2と、支持体2に支持される形で橋梁100上から橋梁100の側方に向けて延出し、橋梁100の側方外側を回り込む形で、延出先端部3Aを橋梁100の下面よりも下側に位置させるアーム部材3と、延出先端部3Aに取り付けられ、橋梁100の下面よりも下側に位置にて該橋梁100の下面を少なくとも正対方向Qとは異なる斜め方向(撮影方向)Pから撮影可能(図7(d)参照)とされたカメラ4と、画面60内に撮影段の撮影範囲内を映し出す表示装置6と、を備えて構成される。
【0015】
支持体2は、図2に示すように、下端にロック機能付きのキャスター(回転阻止機能付きの車輪)2Cが固定された移動可能な台車である。主天板20が上下の高さ調整が可能なように構成されており、その上には、制御装置5、表示装置6、電磁切替弁操作部72が設けられる操作盤26、電磁切替弁22L,22M,22Nを集約配置したエアーバルブボード27が搭載されている。また、主天板20の下側には台座部28が設けられ、エアーコンプレッサ21C、エアーポンプ21P、発電機23が搭載されている。さらに、主天板20上には、主天板20とは別に高さを微調整可能な天板付きリフト29が取り付けられており、天板付きリフト29上には、後述する挟圧保持部24や巻き揚げ機325が固定設置されている。
【0016】
なお、支持体2の横幅は、少なくとも歩道幅(1.5m)よりも短くなるよう設けられる。支持体2の横幅は、より望ましくは支持体2を橋梁100の歩道上に載置した際にその脇を人が通れるよう1m未満であるとよく、さらに言えば、その脇を人がすれ違えるように80cm未満であるとよい。本実施形態においては64.2cm(後述する重量体の設置時には78.0cm)とされている。
【0017】
アーム部材3は、支持体2に支持される形で橋梁100上から橋梁100の側方に向けて延出し、その先端側から橋梁100の側方外側を下方に延出して、その下方に延出する延出先端部3Aが橋梁100の下面よりも下側に位置するとともに、その延出先端部3Aが橋梁100の側方外側から橋梁100の下面の下側に回り込むように変形可能に構成される。本実施形態においては、下方に延出するアーム部材3の延出先端部3Aが、最下位置から上方に向けて屈曲変形可能に構成されている。具体的に言えば、図1に示すように、支持体2から橋梁100の側方外側に向けて延出する支持側アーム部33と、該支持側アーム部33に連結して橋梁100の側方外側から橋梁100下方に垂下延出する垂下アーム部32と、該垂下アーム部32の下端部に連結する関節機能付きアーム部31を有して構成される。
【0018】
支持側アーム部33は、図5に示すように、支持体2に対する固定位置2cと、垂下アーム部32との連結位置3cとの間の延出方向(橋梁100の幅方向)の長さを可変可能に構成される。本実施形態における支持側アーム部33は、支持体2側に固定設置されたアーム挟持部24によって、橋梁100の側方外向きに延出する形で外周側から挟圧保持される。この挟圧保持部24は、筒状支持部24Cの内部を支持側アーム部33が挿通する形で姿勢が保持されるとともに、挟圧力調整操作部をなす回転把持部(回転レバー)24Bを順方向又は逆方向に操作することにより、支持側アーム部33を中央にしてこれを外側から挟み込む形で把持するアーム把持部24Aの幅を狭く又は広くすることができ、これにより挟圧力調整手段として機能する。即ち、幅を広げて挟圧力を弱めることで、挟圧保持部24内に挿通される支持側アーム部33はその延出方向(軸線方向33z)にスライド移動可能となり、支持体2に対する固定位置2cと、垂下アーム部32との連結位置3cとの間の長さを自在に調整できる。また、幅を狭めて挟圧力を強めることで、その位置で挟圧保持(位置固定)される。
【0019】
また、挟圧保持部24内に挿通される支持側アーム部33は、自身を把持する挟圧力が弱まることで自身の軸線33zまわりに回転可能となる。支持側アーム部33の橋梁100の側方側とは逆側に、支持側アーム部33を当該軸線33zまわりに回転させるための回転把持部(ここではT型ハンドル)25が設けられており、例えば支持側アーム部33の延出先端側(橋梁100の側方側)に連結される垂下アーム部32の延出方向を、水平方向と垂下方向(支持側アーム部33に対し垂直真下方向)との間で変更することが可能となる。これにより、アーム部材3を橋梁100の下側に位置させる検査前の準備作業が容易となる。
【0020】
垂下アーム部32は、支持側アーム部33の連結位置3cと関節機能付きアーム部31との連結位置3bとの間の垂下方向長さを可変可能に構成される。本実施形態における垂下アーム部32は、支持側アーム部33に対し連結位置3c側で固定される上下伸縮部材321を有し、その下端に関節機能付きアーム部31をなすアーム311が連結固定されている。
【0021】
上下伸縮部材321は筒状をなしており、内部にはワイヤ323が挿通している。ワイヤ323は、図3に示すように、支持体2側から支持側アーム部33に沿って水平に延出するとともに、支持側アーム部33の延出先端側に固定設置された方向転換部(プーリー)324において、その延出方向が上下伸縮部材321の長さ方向(上記垂下方向)へと向きを変える形で配設される。支持体2側の巻き揚げ機325でワイヤ323が巻き取られると、アーム311が上方向に引き上げられ(吊り上げられ)、これに伴い上下伸縮部材321の長さが短くなる。他方、巻き取り力が解除されるとアーム311がその自重により下方に降り、これに伴い上下伸縮部材321の長さが長くなる。つまり、本実施形態においては、上下伸縮部材321、アーム311、ワイヤ323、方向転換部(プーリー)324、巻き揚げ機(ウインチ)325とを有する形で、支持側アーム部33の連結位置3cと関節機能付きアーム部31との連結位置3bとの間の垂下方向長さを可変可能とする垂下方向長さ可変手段が構成されている。これにより、橋梁100上でカメラ4の上下方向位置を調整できる。
【0022】
上下伸縮部材321は、下方ほど内周面が縮径する複数の筒状部材321A,321B,321Cが内外に重なったスライドポールとして構成されている。回転把持部(ウインチハンドル)325Bを順方向に回転させると、外側の筒状部材321Aに対し、内側に位置する筒状部材321B,321Cを下方(ポール縮径方向)に移動させることができる。内外にて隣接する筒状部材のうち内側の筒状部材を下方に移動していくと、互いの径差に基づいてその内側の筒状部材が外側の筒状部材の内周面に対し接触するため、その接触位置まで下方への移動が可能となっている。
【0023】
ワイヤ323は、図3に示すように、一端が巻き揚げ機(ウインチ)325におけるワイヤ巻き付け用の回転体(ウインチドラム)325A側に一体回転可能な形で固定され、その逆側が方向転換部324に向けて延出する一方、方向転換部324から先では、筒状の上下伸縮部材321の内部を通る形で下方に向けて延出し、他端がアーム311に固定される。具体的に言えば、ワイヤ323の上記他端は、アーム311と上下伸縮部材321の筒状部材321Cとを締結固定するボルト325Bに固定されている。
【0024】
巻き揚げ機325は、ワイヤ323を巻き取る、あるいは巻き出す巻き取り/巻き出し部として構成され、ワイヤ323の巻き取り又は巻き出しを、回転把持部(ウインチハンドル)325Bの順方向又は逆方向への操作により行うことが可能である。また、巻き揚げ機325は、ワイヤ323の巻き取り又は巻き出し(回転)を阻止するロック手段(図示なし:長さ保持手段)を備え、これによりワイヤ323の送り量が固定保持される。なお、方向転換部324から巻き揚げ機325への間には、ワイヤ323の方向を滑らかに転換するための1箇所以上の方向転換部(プーリー)326が設けられ、ワイヤ323のスムーズな巻き取り/巻き出しを可能にしている。
【0025】
本実施形態においては、巻き揚げ機325によりワイヤ323を巻き出すと、これに伴いアーム311が下方向に移動する。アーム311は、最も内側に位置する筒状部材321Cに対し固定されているため、アーム311が下方向に移動するとその筒状部材321Cも下方に移動する。このとき、筒状部材321Cと共に筒状部材321Bも下方に移動する。そして、筒状部材321Aの内周面に筒状部材321Bの外周面が接触すると、筒状部材321Bの下方への移動は止まり、筒状部材321Cのみが下方に移動する状態となる。その後は、筒状部材321Bの内周面に筒状部材321Cの外周面が接触する位置まで、筒状部材321Cを下方に移動できる(図5の破線状態)。他方、巻き揚げ機325によりワイヤ323を巻き上げられると、これに伴いアーム311が上方向に移動し、筒状部材321Cも上方に移動する。筒状部材321Cの上方移動に伴い、その外側の筒状部材321Bも順次回収されて上方に移動し、最終的には筒状部材321A内に筒状部材321B,321Cが収納された状態となるまで、アーム311は上方に移動できる(図5の実線状態)。
【0026】
関節機能付きアーム部31は、図4に示すように、複数のアーム311〜314が直列に連結する形で構成され、それら各アーム311〜314間の連結部31L,31M,31Nが屈曲可能な関節部として機能する。本実施形態の各アーム311〜314は、隣接するアームの端部同士がヒンジピンを介して回転可能(屈曲可能)に連結されている。関節機能付きアーム部31の先端部は、カメラ4が取り付けられるアーム部材3の延出先端部3Aであり、これら連結部(関節部)31L,31M,31Nの屈曲により、カメラ4は橋梁100の下面の下側に回り込むことが可能である。下側に回り込ませることができるので、関節機能付きアーム部31の基端側(垂下アーム部32側)であれば橋梁100の下面を正対方向から撮影することが可能になる。また、図6に示すように、連結部(関節部)31L,31M,31Nの屈曲により、カメラ4の位置を関節機能付きアーム部31の基端側からより遠い位置に持っていくこともできるので、正対撮影可能区間はより長くなる。そこから先は、後述する斜め方向の撮影を行い、正対方向への視点変換処理を行うことで、検査可能となる。
【0027】
連結部(関節部)31L,31M,31Nは、連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314を屈曲可能に連結する屈曲連結部31L1,31M1,31N1と、その屈曲角度θL,θM,θNを任意の角度に可変可能な屈曲角可変部31L2,31M2,31N2とを有して構成される。これにより、関節機能付きアーム部31の各連結部(関節部)31L,31M,31Nは、屈曲角可変部31L2,31M2,31N2によって任意の角度に屈曲保持され、延出先端部3Aの位置を任意に決定できる。
【0028】
本実施形態の屈曲連結部31L1,31M1,31N1では、各アーム311〜314のうち隣接するアームの端部同士が、回転軸をなすピン31Pを介して互いに回動自在に固定される(ナックルジョイント)。また、屈曲角可変部31L2,31M2,31N2においても、各アーム311〜314のうち隣接するアームの中間部311a,312a,313a,314aに対し、回転軸をなすピンを介して互いに回動自在に固定される(ナックルジョイント)。そして、本実施形態においては、これら全てのピンの回転軸線は全て平行をなして配置されており、関節機能付きアーム部31の延出先端部3Aは、当該回転軸線に垂直な一定の二次元平面上のみを水平移動するようになっている。
【0029】
本実施形態の屈曲角可変部31L2,31M2,31N2は、連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314の中間部同士311a−312a,312a−313a,313a−314aに固定される伸縮チューブ体であり、該伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2は、該伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2内の内圧の増減に伴う長さ方向の伸縮に応じて連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314間の屈曲角度θL,θM,θNを増減可能である。つまり、橋梁100上の作業員による内圧(エア)のコントロール操作のみで屈曲を制御できる構成であるため、例えば屈曲駆動源にモータを駆動源とし機械的な屈曲機構を設ける場合に比べて、その重量が非常に軽くてすむ。
【0030】
具体的に言えば、屈曲角可変部31L2,31M2,31N2は、連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314の中間部同士311a−312a,312a−313a,313a−314aに端部が固定された伸縮チューブ体であり、該伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2内の圧力(内圧)が増大する場合には長さ方向に収縮して該伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2の全長が短くなり、短くなることで連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314間の屈曲角度θL,θM,θNを減少させる。一方、該伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2内の圧力が減少する場合には上記収縮が解除されて該伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2の全長が長くなり、長くなることで連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314間の屈曲角度θL,θM,θNを増加させることができる。
【0031】
これにより、本実施形態の関節機能付きアーム部31は、各アーム311〜314が橋梁100の側方に向けて直線状に延出する直線形態(図6において垂下アーム部32と関節機能付きアーム部31とが一直線状となった状態)と、延出先端部3Aが橋梁100下方に回り込むよう全体が略C字型をなして屈曲したC字型形態(図5参照)との間で変形可能に設けられる。これにより、延出先端部3Aに搭載されたカメラ4の撮影方向Pの選択肢が広がる。C字型形態に屈曲変形するためには、少なくとも3箇所以上の連結部(関節部)31L,31M,31Nがあることが望ましい。
【0032】
なお、本実施形態において、屈曲角可変部31L2,31M2,31N2をなす各伸縮チューブ体は、密閉性の高いラバーチューブを、例えば菱形に編みこまれた強化繊維で覆う形で構成される、いわゆるラバーアクチュエータである。ラバーチューブ内に圧力をかけると幅方向(径方向)に膨らんで全長が短くなり、最大長(初期長さ)に対し所定の割合(例えば75%)まで全長を短くすることができる。
【0033】
連結部(関節部)31L,31M,31Nの屈曲のために伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2内の内圧を可変する内圧可変手段は、エアーコンプレッサ21C及びエアーポンプ21Pを備えて構成され、エアーコンプレッサ21Cにより圧縮された圧縮空気がエアーポンプ21Pに蓄えられ、エアーポンプ21Pから管材(チューブ)21L,21M,21Nを介して、各伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2内へと圧縮空気が供給される。また、当該内圧を調整する内圧調整手段は、伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2内への圧縮空気を供給する、あるいは伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2内を外部に開放する形で、内圧調整を行う電磁切替弁(ここではソレノイドバルブ)22L,22M,22Nであり、それぞれ橋梁100上の支持体2側に設けられている。エアーコンプレッサ21Cについては、比較的重量があるため、支持体2の橋梁100の上面に近接する下側位置に取り付けられており、また、電磁切替弁22L,22M,22Nやエアーコンプレッサ21C、制御装置5、表示装置6を駆動するための電源供給手段(電源)となる発電機23も比較的重量があるため、支持体2の下側台座部28に取り付けられている。これにより、支持体2の重心位置がより橋梁100に近い下側位置となり、安定した支持が可能となる。
【0034】
なお、重量に関していえば、支持体2と後述する支持側アーム部33の総重量は、垂下アーム部32以下(関節機能付きアーム部31やカメラ4を含む)の総重量の10倍以上とすることで、安定した点検作業が可能となる。本実施形態においては、支持体2と後述する支持側アーム部33の総重量は約100kg(103kg)、垂下アーム部32以下(関節機能付きアーム部31やカメラ4を含む)の総重量は9kgである。
【0035】
また、支持体2を載置する面が傾斜しているような特殊状況下においては、支持体の重量をさらに増して安定させるために、支持体2に対し、橋梁100の欄干とは逆側にて、転倒防止用の重量体を取り付けることも可能である。例えば重量体として、液体を満たしたポリタンク等を橋梁100の上面に載置しつつ、その重量体をロープによって支持体2に固定して使用する(例えば天板付きリフト29に吊るす形で固定して使用する)ことも可能である。
【0036】
また、本実施形態においては、3つの連結部(関節部)31L,31M,31Nに設けられる各屈曲角可変部31L2,31M2,31N2が、それぞれ独立に屈曲角度θL,θM,θNを可変可能である。具体的に言えば、図11に示すように、各伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2ごとにそれらに連通する管材(チューブ)21L,21M,21Nが設けられ、さらに、各伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2ごとに電磁切替弁(ここではソレノイドバルブ)22L,22M,22Nが設けられているので、各電磁切替弁を個別に調整することで、屈曲角度θL,θM,θNを独立に可変できる。これにより、延出先端部3Aに搭載されたカメラ4の撮影位置をより細かく調整できる。
【0037】
また、各伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2に対応する電磁切替弁22L,22M,22Nにはそれぞれ、対応するチューブ内へのエア入力(加圧)とエア出力(減圧)とをそれぞれ独立して実行できるように構成されており、各電磁切替弁22L,22M,22Nにおけるエア入力(加圧)の操作とエア出力(減圧)の操作とが個別に可能とされた電磁切替弁操作部72(エアーバルブスイッチ:ここではスイッチ72La,72Ma,72Na,72Lb,72Mb,72Nb)が、支持体2の主天板20上に設置されている。このため、図5及び図6のように、カメラ4を様々な撮影位置及び撮影角度(撮影方向)に変更することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態においては、屈曲角可変部31L2,31M2,31N2の屈曲角度θL,θM,θNが所定角度以上となることを規制する屈曲角規制手段31Qを備える。この規制は、関節機能付きアーム部31を構成するアーム311〜314のいずれもが自らの自重により屈曲することが無いようにするために設けられたものである。つまり、内圧コントロールによる屈曲角度の制御ができない状態を回避するためである。本実施形態においては、屈曲角度θL,θM,θNが所定の規制角度に達すると、連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314間で接触が生じるような角度規制用当接部31Qがそれぞれ設けられており、これらが屈曲角規制手段として機能している。
【0039】
本実施形態においては、図4に示すように、連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314のうち一方のアームの端面中央部に板状突起部31bが設けられ、他方のアームの端面に溝部31aが設けられており、溝部31aに板状突起部31bを挿通し、その状態で双方を貫通するピン31Pを取り付け、双方のアームを屈曲可能(回動可能)に連結している。角度規制用当接部31Qは、溝部31aの奥側内部に埋め込まれており、屈曲角度θL,θM,θNが所定の規制角度に達すると、板状突起部31bを有する側のアームと当接して、それ以上の屈曲角度θL,θM,θNの拡大が物理的に不可能となる。
【0040】
なお、屈曲角規制手段31Qは、上記とは別の形で設けられていてもよく、例えば、屈曲角可変部31L2,31M2,31Nをなす各伸縮チューブ体を、それらの最大長よりも短い筒状部材に挿通させた形で、連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314の中間部同士311a−312a,312a−313a,313a−314aに端部を固定し、それら筒状部材を屈曲角規制手段31Qとして機能させてもよい。この場合、屈曲角度θL,θM,θNが所定の規制角度に達すると、連結対象となる2つのアーム311−312,312−313,313−314の中間部同士311a−312a,312a−313a,313a−314aに対し、屈曲角規制手段31Qをなす筒状部材の両端が当接し、その位置を越える屈曲角度θL,θM,θNの縮小を物理的に妨げる状態となる。なお、この筒状部材は、内圧の増減により膨張/収縮する伸縮チューブ体の中央部を保護する役割も果たすことができる。
【0041】
カメラ4は、本実施形態においては周知のネットワークカメラを用いている。カメラ4は、アーム部材3の延出先端部3Aに固定された台座部4A上に設けられ、台座部4A上のカメラ本体40は、透明な略半球状のカバー部材49によって覆われる形で保護されている。また、カメラ4は、その撮影方向Pを変更するための駆動部(撮影方向変更手段)41を備える。本実施形態においては、駆動部41は、台座部4Aの台座面4aに垂直な軸線4zまわりにてカメラ4の撮影方向が回転するようカメラ本体40を回転駆動するモータである。つまり、本実施形態のカメラ4の撮影方向は、関節機能付きアーム部31の延出先端部3Aが移動可能な二次元平面と平行な方向となっており、これにより、後述する視点変換処理を簡易にしている。ここでは、図6に示すように、最先端となるアーム314の軸線方向に対し片側175度、両側で350度の回転が可能となっている。
【0042】
表示装置6の画面60内には、カメラ4の撮影範囲が映し出されており、予め定められた撮影操作部74を操作することにより、操作時に表示されていた映像の静止画像が撮影される。カメラ本体40が映し出す映像データは、カメラ4からアーム部材3に沿って延出する信号線46を介して制御装置5に入力される。撮影操作部74に操作がなされるに伴い出力される撮影指令信号は、制御装置5からアーム部材3に沿って延出する信号線47を介してカメラ本体40に入力される。また、カメラ4の撮影方向を変更するためにカメラ駆動操作部76への操作に伴い出力される駆動部(撮影方向変更手段)41への駆動信号は、制御装置5からアーム部材3に沿って延出する信号線48を介してカメラ4の各駆動部41に入力される。
【0043】
なお、上記の信号線46〜48や、エアーコンプレッサ21C側から延出する各伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2内へと連通する管材(チューブ)21L,21M,21Nは、支持側アーム部33,垂下アーム部32,関節機能付きアーム部31に沿って延出する筒状保護部材80内を通って、カメラ4や、各伸縮チューブ体31L2,31M2,31N2のところまで延出し、それら接続対象の直前で筒状保護部材80から外に出て、それらに接続される。
【0044】
制御装置5は、周知のパーソナルコンピュータ(以下、PCと略する)8として構成されるものであり、図10に示すように、表示装置6と共に操作部7と接続する形で構成される。表示装置6は、PC8に付属する、例えば周知の液晶ディスプレイ等であり、CPU、ROM、RAM等を備えて構成される制御装置5により表示制御される。PC8は、橋梁100上に設置される支持体2の主天板20上に配置され、橋梁100上にて画像視認及び必要操作が可能となっている。
【0045】
制御装置5には、カメラ4による撮影を行うための撮影ソフトウェア54を所定の記憶領域内に格納しており、主制御部がこれを実行することにより、カメラ4による撮影が可能となる。撮影ソフトウェア54が実行され、制御装置5とカメラ4とがネットワーク接続状態となると、制御装置5にはカメラ本体40から上記映像データが入力される。入力された映像データは、A/D変換部51を介して映像記憶部(画像メモリ)52内に記憶され、表示装置6での画面表示に供される。必要に応じて、拡大縮小操作部73への拡大縮小操作を行って撮影範囲を可変し、表示装置6に表示される画像を拡大/縮小することも可能である。その上で、撮影操作部74への撮影操作がなされると、制御装置5は、そのとき画面表示されていた映像を静止画像(撮影画像)として取り込み、その画像データを撮影結果記憶部53に記憶する。同時に、表示装置5の画面表示を、当該画像データに基づく静止画像(撮影画像)の表示に切り替える。つまり、制御装置5は、カメラ4の撮影範囲内の映像を映し出す撮影範囲表示モードを、カメラ4の撮影操作がなされるに伴い、撮影された静止画像(撮影画像)を表示する撮影画像表示モードに切り替える。ただし、撮影画像表示モードにおいて表示装置(出力手段)6の画面60に表示される静止画像(撮影画像)は、撮影結果記憶部53に記憶された画像データに対し視点変換処理(補正変換)がなされた後の画像データに基づいて表示される。
【0046】
視点変換処理は、制御装置5の所定の記憶領域内に格納されている視点変換ソフトウェア55を制御装置5の主制御部が実行することによりなされる。視点変換処理は、カメラ4の撮影画像を、撮影方向Pとは異なる角度から見た画像へと補正変更を可能とする処理であり、対象とする撮影画像が選択されると、視点選択操作部75への操作に基づいて操作者が視点位置(視線角度)を選択可能となり、当該撮影画像は、操作者によって選択された視点位置から見た画像へと変換される(視点選択手段)。なお、上記視点変換ソフトウェア55は、例えば撮影操作部74への撮影操作がなされるに伴い実行するようにしてもよく、実行直後には、デフォルトの視点位置(視線角度変更なし:撮影画像そのまま)が選択された形での表示を行うように構成される。
【0047】
なお、本実施形態において選択可能な視点位置は、カメラ4(アーム部材3の延出先端部3A)が移動可能な二次元水平面内に限られており、表示装置6に画面表示された1つのスライドバーを一次元方向に往復動作する形で視線位置を一次元方向に可変できる。つまり、本実施形態においては、アーム部材3の屈曲角度変更及びカメラ4の撮影角度変更が予め定められた二次元平面内にてなされるため、カメラ4による撮影画像を橋梁下面に対し正対させた画像に変換するためのパラメータは1つでよく、このため、当該パラメータである視線角度を操作者が視点選択操作部75を操作して調整し、その結果に基づいて遠近感を減少ないし増大させる座標変換処理を実施することでなされる。このため、操作者の操作により、橋梁下面の正対画像を見つけ出すことが可能となっている。
【0048】
図8は、カメラ4による撮影時の表示画面61であり、PC8の操作部(マウス等のポインティングデバイスやキーボード)7を操作することにより、画面内の各種操作画像に対する入力操作が可能となっている。表示画面61には、操作画像として、カメラ4をPC8に接続して撮影可能状態とするための操作画像61aと、カメラ4をPC8から切断して撮影不可状態とするための操作画像61bと、撮影を実行して撮影画像を保存する操作画像61cと、撮影を終了する操作画像61dと、駆動部41を駆動してカメラ角度を変更するための操作画像61e,61fと、撮影領域に対し拡大縮小を行うための操作画像61g,61hとが存在する。また、画面中央部には、カメラ4の撮影範囲を映し出す表示領域61Aが存在する。
【0049】
図9は、カメラ4による撮影が終了した後、視点変換を実施する時の表示画面62であり、PC8の操作部(マウス等のポインティングデバイスやキーボード)7を操作することにより、画面内の各種操作画像に対する入力操作が可能となっている。表示画面62には、操作画像として、操作画像を選択するための操作画像62aと、選択した撮影画像に対し視点変換を開始するための操作画像62cと、そのときに使用されるパラメータ(視点位置(視線角度))を変更するための操作画像(スライドバー)62eと、視点変換された画像を保存するための操作画像62bと、視点変換を終了する操作画像62dと、が存在する。また、画面左側中央部には、視点変換の対象となる撮影画像を表示する表示領域62Aが存在し、画面右中央部には、視点変換後の画像を表示する表示領域62Bが存在する。なお、操作画像を選択する操作は、操作画像62aへの操作による画像ファイル指定に限られず、表示領域62A内への画像ファイルのドラッグ操作でもよい。
【0050】
なお、PC8の操作部7は、上記のような操作画像に対する操作を行うことが可能であり、既に述べた拡大縮小操作部73、撮影操作部74、視点選択操作部75、カメラ駆動操作部76として機能する。
【0051】
また、撮影結果記憶部53には、カメラ4による撮影がなされた際に、撮影されて取り込まれた画像データに対応付ける形で、撮影時の時刻や日付等の補助情報を合わせて記憶される。これにより、撮影された画像データの管理が容易となるし、有意義な検査付加情報を容易に収集できる。
【0052】
ここで、上記実施形態の橋梁点検装置1の使用方法(点検方法)について、その流れを順を追って簡単に説明する。
【0053】
(1)橋梁100上で装置1を適宜組み立てる(アーム部材3の組み立て、支持体2へのアーム部材の固定など)。
(2)垂下アーム部(スライドポール)32の長さを調整する(ワイヤ323の長さも調整する)。
(3)検査位置に支持体2を移動し、移動不可となるようロックし、必要に応じて上述の転倒防止用の重量体(例えばポリタンク等)を設置する。
(4)アーム部材3を初期形態にする(図7(a)参照:第一検査準備ステップ)。
・電磁切替弁操作部72によりエア供給を行って関節機能付きアーム部31の各連結部(関節部)31L,31M,31Nの屈曲角度θL,θM,θNを最大(C字型形態)にして上側に屈曲した所定の屈曲形態とする(つまり、カメラ4が垂下アーム部32よりも上にある状態:ここでいう「上」とは垂下アーム部32の長さ方向における支持側アーム部31側)。
・T型ハンドル25により垂下アーム部32が水平方向に延出した状態とする(支持側アーム部33と垂下アーム部32と関節機能付きアーム部31との各アーム部の延出方向が全て、同一の水平面上に位置するよう保持した状態にする)。
・支持側アーム部33の長さを調整する(橋梁100の欄干を越えるように)。
(5)垂下アーム部32と関節機能付きアーム部31とを橋梁100の側方外側に位置させる(第二検査準備ステップ)。
(6)支持側アーム部33をその軸線33zまわりに回転させることにより、垂下アーム部32を垂下させて、関節機能付きアーム部31を橋梁100の下面の下側に位置させる(第三検査準備ステップ)。具体的には、T型ハンドル25を90度回転させて、垂下アーム部32を下方向に延出(垂下)させる(図7(b)参照)。
(7)垂下アーム部32をその軸線32zまわりに回転させることにより、関節機能付きアーム部31の延出先端部3Aを橋梁100の下面に対し下側から対向するよう回り込ませる(第四検査準備ステップ)。具体的には、L型ハンドル35を90度回転させて、関節機能付きアーム部31の延出先端部3Aのカメラ4が橋梁100の下面側に回り込ませる(図7(c)参照)。
(8)カメラ4を駆動する(カメラ4とPC8とのネットワーク接続)。
(9)所定の屈曲形態をなす関節機能付きアーム部31の屈曲を徐々に緩和していく形で、延出先端部3Aに取り付けられたカメラ4による撮影位置及び撮影方向を決定し、撮影する(撮影ステップ)。具体的には、電磁切替弁操作部72(エアーバルブスイッチ72La,72Ma,72Na,72Lb,72Mb,72Nb)及びカメラ駆動操作部76を橋梁100上の作業員が操作して、カメラ4の撮影位置及び撮影方向を決定し、撮影する(図7(d)参照)。この撮影において、カメラ4は、橋梁100の下面よりも下側の位置で、該橋梁100の下面を少なくとも正対方向とは異なる斜め方向からの撮影を行う。ただし、正対方向で撮影することも可能ではある。
(10)撮影画像に対し視点変換処理を施して正対画像を取得する。即ち、斜め方向から撮影された橋梁下面画像を、少なくとも正対方向から見た正対画像とすることが可能となる視点変換処理を実行する。
(11)点検に必要な画像(撮影画像や正対画像)及び補助情報を記憶する。
(12)カメラの駆動を停止する(PC8とのネットワーク切断)。
(13))関節機能付きアーム部31を、上記の所定の屈曲形態とする(第一回収ステップ)。即ち、アーム部材3の屈曲角度θL,θM,θNを最大(C字型形態)にする(図7の(c)参照)。
(14)垂下アーム部32をその軸線32zまわりに回転させることにより、関節機能付きアーム部31の屈曲平面(上記所定の屈曲状態となった各アーム311〜314が位置する同一平面)を橋梁100の幅方向に垂直となるようする(第二回収ステップ)。つまり、L型ハンドル35を90度回転させて((7)とは逆回転)、関節機能付きアーム部31の延出先端部3Aのカメラ4Bが橋梁100の下面側に位置しないようにする(図7(b)参照)。
(15)支持側アーム部33をその軸線33zまわりに回転させることにより、垂下アーム部32を水平に保持することにより、関節機能付きアーム部31の屈曲平面も、垂下アーム部32と同一の水平面上に位置させる(第三回収ステップ)。つまり、T型ハンドル25を90度回転させて((5)とは逆回転)、垂下アーム部32を水平方向に延出させることにより、関節機能付きアーム部31をその水平面上で屈曲した状態とする(図7(a)参照)。
(16)垂下アーム部32と関節機能付きアーム部31とを橋梁100の上面上に位置させる(第四回収ステップ)。
(17)ワイヤ323を巻き取って垂下アーム部(スライドポール)32の長さを減ずる。
(18)橋梁100上で装置1を適宜解体する。
【0054】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。以下、上記実施形態とは異なる実施形態について説明する。
【0055】
例えば、カメラ4の撮影方向情報として撮影角度情報を取得する撮影方向情報検出部(撮影方向情報取得手段)42と、アーム部材3の各連結部(各関節部:)31L,31M,31Nにおける屈曲角度情報をそれぞれ取得する屈曲角度検出部(屈曲角度取得手段)56L,56M,56Nと、を備えて構成し、その上で、制御装置5の視点変換処理により、取得された撮影角度情報及び屈曲角度情報に基づいてカメラ4の撮影方向を算出し、さらに、算出された撮影方向と橋梁100の下面への正対方向との角度差を算出して、その角度差に基づいて、カメラ4により撮影された橋梁100の下面画像を、橋梁100の下面に対する正対方向Qから撮影された画像に変換(視点変換)するように構成してもよい。
【0056】
また、カメラ4の撮影方向Pに位置する撮影対象(障害物)までの撮影対象間距離を検出する撮影対象間距離検出部(周知の距離センサを利用する:例えば赤外線センサ等)43を搭載し、さらに、支持側アーム部33の長さ(支持体2に対する固定位置2cと、垂下アーム部32との連結位置3cとの間の直線距離)を検出する支持側アーム長さ検出部303と、垂下アーム部32の長さ(支持側アーム部33の連結位置3cと関節機能付きアーム部31との連結位置3bとの間の直線距離)を検出する垂下アーム長さ検出部302とを備えて構成し、これらにより取得される撮影対象間距離情報と支持側アーム部33の長さ情報と垂下アーム部32の長さ情報と、さらに上記の撮影方向情報及び屈曲角度情報とに基づいて、撮影対象の位置(橋梁点検装置1の所定位置(例えば制御装置8の位置)を基準にして特定される位置情報)を算出し、これを制御装置5が上記補助情報の1つとして撮影結果記憶部53に記憶するようにしてもよい。
【0057】
また、撮影画像や正対画像と共に取得される補助情報には、現在位置情報を含めてもよい。例えば、橋梁点検装置1の現在位置情報を取得する位置検出器301として、制御装置5側に、衛星からの電波に基づいて現在位置情報を取得するGPS受信機を設け、これが受信するGPS信号から、装置1の絶対位置情報(緯度・経度)を取得し、これを補助情報として記憶するようにしてもよい。また、上記の装置1に対する撮影対象の位置情報と装置1の絶対位置情報に基づいて、撮影対象の絶対位置(緯度・経度)を算出し、これを補助情報として記憶するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 橋梁点検装置
100 橋梁
2 支持体
20 主天板
21 エアーコンプレッサ
22L,22M,22N 電磁切替弁
23 発電機
3 アーム部材
3A 延出先端部
33 支持側アーム部
32 垂下アーム部
321 筒状部材
311 芯部材
323 ワイヤ
324 方向転換部
325 巻き揚げ機
3c 垂下アーム部の支持側アーム部との連結位置
3b 垂下アーム部の関節機能付きアーム部との連結位置
31 関節機能付きアーム部
311〜314 アーム
31L,31M,31N 連結部(関節部)
31L1,31M1,31N1 屈曲連結部
31L2,31M2,31N2 屈曲角可変部(伸縮チューブ体)
31Q 屈曲角規制手段
θL,θM,θN 屈曲角度
4 カメラ
41 駆動部(撮影方向変更手段)
5 制御装置
51 A/D変換部
52 映像記憶部(画像メモリ)
53 撮影結果記憶部
54 視点変換ソフト(補正手段)
6 表示装置(表示手段:出力手段)
60 画面
7 操作部
73 拡大縮小操作部
74 撮影操作部
75 視点選択操作部
76 カメラ駆動操作部
72 電磁切替弁操作部
8 パーソナルコンピュータ(PC)
Q 正対方向
P 撮影方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁上に配置される支持体と、
前記支持体に支持される形で橋梁上から橋梁側方に向けて延出し、その先端側から橋梁の側方外側を下方に延出して、その下方に延出する延出先端部が橋梁下面よりも下側に位置するとともに、その延出先端部が橋梁側方外側から橋梁下面の下側に回り込むように変形可能とされたアーム部材と、
前記延出先端部に取り付けられ、前記橋梁下面よりも下側に位置にて該橋梁下面を少なくとも正対方向とは異なる斜め方向から撮影可能とされた撮影手段と、
前記斜め方向から撮影された橋梁下面画像を、少なくとも前記正対方向から見た正対画像となるよう補正変換可能な補正手段と、
前記補正手段による補正変換後の画像を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする橋梁点検装置。
【請求項2】
前記アーム部材は、複数のアームを直列に連結し、それら各アーム間の連結部が屈曲可能な関節部として機能して、前記延出先端部を橋梁下面の下側に回り込ませることが可能な関節機能付きアーム部を有している請求項1記載の橋梁点検装置。
【請求項3】
前記連結部は、連結対象となる2つのアームを屈曲可能に連結する屈曲連結部と、その屈曲角度を任意の角度に可変可能な屈曲角可変部とを有して構成される請求項2記載の橋梁点検装置。
【請求項4】
前記屈曲角可変部は、連結対象となる2つのアームの中間部同士に端部が固定されるチューブ体であり、該チューブ体は、該チューブ体内の圧力が増大する場合には収縮して該チューブ体の全長が短くなり、短くなることで連結対象となる2つのアーム間の屈曲角度を減少させる一方、該チューブ体内の圧力が減少する場合には膨張して該チューブ体の全長が長くなり、長くなることで連結対象となる2つのアーム間の屈曲角度を増加させるものであり、
前記チューブ体内の内圧を可変する内圧可変手段と、当該内圧を調整する内圧調整手段とを備える請求項3記載の橋梁点検装置。
【請求項5】
前記アーム部材は、前記支持体から橋梁側方外側に向けて延出する支持側アーム部と、該支持側アーム部と連結して橋梁側方外側から橋梁下方に垂下延出する垂下アーム部と、を有して構成され、前記垂下アーム部の下端部に、前記関節機能付きアーム部が連結しており、
前記垂下アーム部における前記支持側アーム部の連結位置と前記関節機能付きアーム部との連結位置との間の垂下方向長さを可変する垂下方向長さ可変手段を備える請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の橋梁点検装置。
【請求項6】
前記撮影手段は、撮影方向を変更するための撮影方向変更手段を備える請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の橋梁点検装置。
【請求項7】
画面内に前記撮影段の撮影範囲内を映し出す表示手段を有し、
前記撮影手段は、予め定められた撮影操作部を操作することにより画面内に表示されている映像の静止画像を取得する一方で、
前記出力手段は、前記表示手段に兼用されており、前記撮影手段が取得した静止画像に対し前記補正手段による補正変換された画像を、前記画面内に表示可能である請求項6記載の橋梁点検装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記撮影手段の撮影画像を、撮影方向とは異なる角度から見た画像へと補正変更可能であり、当該角度を、予め定められた視点選択操作部への操作により設定変更可能である請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の橋梁点検装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の橋梁点検装置を用いた橋梁下面の外観点検方法であって、
前記アーム部材の前記延出先端部に取り付けられた撮影手段により、前記橋梁下面よりも下側に位置にて該橋梁下面を少なくとも正対方向とは異なる斜め方向から撮影する撮影ステップと、
前記斜め方向から撮影された橋梁下面画像を、前記補正手段によって前記正対方向から見た正対画像に視点変換する補正ステップと、
前記補正ステップによる補正変換後の画像を前記出力手段により出力する出力ステップと、
を備えることを特徴とする橋梁下面の外観点検方法。
【請求項10】
請求項5記載の要件を備え、前記撮影ステップの前に、
前記アーム部材をなす前記支持側アーム部と前記垂下アーム部と前記関節機能付きアーム部との各アーム部の延出方向が全て、同一の水平面上に位置するよう保持するとともに、前記関節機能付きアーム部を、当該水平面上にて屈曲させた所定の屈曲形態とする第一検査準備ステップと、
前記第一検査準備ステップ後に、前記垂下アーム部と前記関節機能付きアーム部とを橋梁側方外側に位置させる第二検査準備ステップと、
前記第二検査準備ステップ後に、前記支持側アーム部をその軸線まわりに回転させることにより、前記垂下アーム部を垂下させて、前記関節機能付きアーム部を橋梁下面の下側に位置させる第三検査準備ステップと、
前記第三検査準備ステップ後に、前記垂下アーム部をその軸線まわりに回転させることにより、前記関節機能付きアーム部の延出先端部を橋梁下面の下側に対向するよう回り込ませる第四検査準備ステップと、
を有した検査準備ステップが実施される請求項9記載の橋梁下面の外観点検方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−246908(P2011−246908A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119186(P2010−119186)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(507323134)竹田設計工業株式会社 (2)
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】