説明

機器の支持ユニットおよびベアリングユニット

【課題】積層構造の本体外周部において目的機器に簡単に取付ができ、加えて駆動機構などから受ける振動を遮断する機能を付加できる機器の支持ユニットおよび独立した積層板構造のベアリングユニットをを提供する。
【解決手段】薄板材を軸線方向に複数枚積層して中空弾性体にてなる締結部材により一体的に結合された本体2で機器を保持する構造である機器の支持ユニット1において、前記本体2は、その周面の要所に、積層構造の内部で積層方向に交叉して埋設された雌ねじ部片10のネジ穴10aに通じる取付孔9Aが、前記薄板材(積層板部片3)の積層に直交して設けられ、前記取付孔9Aを通じて前記雌ねじ部片10のネジ穴10aに締結ボルト33を螺合させることで所要機体に取付けられる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として駆動源を備える機器を支持する取付ユニットとして、あるいは回転軸を支承するベアリンクを組み込んだハウジングとして使用され、フレームなどに対する取付を合理的に行えうるようにした積層板構造にてなる機器の支持ユニットおよびベアリングユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば動力伝達系において回転軸を支持するには、通常機器のフレームなどに直接形成されたハウジング部分に嵌め込まれたベアリングにて軸を支承するようにされている。また、機器のフレームに対して着脱可能に取付けられるピローブロックのような軸受ユニットによって軸を支持するような方式が多く採用されていることは周知の通りである。
【0003】
ところで、主に直線運動する機器の軸体を摺動自在に支持する軸受手段としては、例えば本出願人の先発明に係るスライド軸受(スライドブロック)が、特許文献1あるいは特許文献2などによって開示されている。このスライド軸受は、薄金属板材を積層してハウジングが形成され、そのハウジング内の要部に、回転輪(ローラ)が組み込まれる空間部を形成できるように要所を切抜いた複数種の板部材を組合わせ、これら板部材を積層して締結部材により一体的に結合構成されたものである。そして、このスライド軸受は、前記要部の空間部内に軸の挿通孔を形成し、この軸の挿通孔に向かって求心状に形成された複数の切欠き凹部にそれぞれローラを支持軸で回転自在に支持させて配設し、それらローラによって軸の挿通孔に外部から挿通される軸体が受支されて直線方向に摺動自在なように構成するスライド軸受とされている。
【0004】
前記特許文献1などによって知られる積層構造の軸受は、いずれも前述のように、軸を直線移動自在に支持する構成のものであり、この軸受を所要の機器に対してはハウジングを構成する中空の締結部材の内部空間を利用してボルト締結する構造となっている。
【0005】
また、例えば機器における動力伝達用の回転軸(ラインシャフト)を複数個所で支持する場合には、その軸線を回転軸心に合致させるようにするために、軸受部において自動調心できる構成とすることが要求される。このようなラインシャフトを自動調心して回転を円滑に行わせるようにするためには、軸受部に自動調心型のベアリングを使用することが一般的であり、この種の軸受として軸受箱内で玉軸受全体が、その球面状に形成された外周面に沿い僅かに傾動して自動調心できるように組み込まれてなるベアリングユニットが採用されている。このようなベアリングユニットについては、例えば特許文献3あるいは特許文献4などによって知られている。
【0006】
しかしながら、前記先行技術にあって、例えば特許文献1によって知られるものでは、積層板構造のハウジングにその積層方向に軸体挿通孔が形成され、そのハウジング内の軸体挿通孔に対して周囲から十字状に形成した切込みを求心状に複数設け、その各切込みによって形成される空間部に回転ローラが支持軸ピンによって保持されるようにされ、軸体挿通孔を貫通する軸を前記各回転ローラで支持するものである。したがって、このスライド軸受は、これを機器などに取付けるには積層板を結合するために用いられている中空鋲の内部を使用して積層方向にボルト締結しなければならず、取付条件が限定されるという問題点がある。そのために、このスライド軸受では、ハウジングの周面方向に取付ける必要がある場合に、前記特許文献1における図8に示されるように、積層板の最外側板に取付座を形成したものを使用することになり、どうしても広い取付スペースが要求されるので、取付スペースに余裕がないと不都合であるという欠点があった。
【0007】
また、特許文献1あるいは特許文献2にあっては、軸体とこの軸体に対する軸受とが相互にスライドする機素として積層板構造のハウジング内部に回転ローラを配置することを前提に構成されているので、回転軸に対する軸受としての考慮がなされていないものである。また、この軸受構造では、積層構造の内部に回転ローラを設けているので、何らかの影響を受けてその回転ローラの回転が不具合になると、全体を分解しないと対応ができなくなり使用に支障を来たすという問題点がある。
【0008】
一方、前記特許文献3あるいは特許文献4にて知られるベアリングユニットにあっては、主にその軸受箱(ハウジング)が鋳造品で形成されているので、全体の剛性は確保できるが、製造工程で多くのエネルギーを消費し、加工に際しては切削によって要部を形成する際に切削くず(金属微粉)の発生が激しく、作業環境を汚染するため、作業環境の改善が求められる昨今では従前のように開放的な環境での加工ができず、環境改善のために加工現場の衛生管理に多くの設備費や運転費がかかり製品コストが高くなるという問題点がある。また、用途によって、例えば耐食性を必要とする軸受装置などに使用する場合など材質的に一般鋳鉄では好ましくないものでは、鋳造品としてさらにコストアップするので用途に限界がある。
【0009】
【特許文献1】特開昭56−127817号公報
【特許文献2】特許第2630611号公報
【特許文献3】実開平7−18025号公報
【特許文献4】特開2000−35035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、積層構造の本体外周部において目的機器に対して簡単に取付けができる構成で、これに加えて駆動機構などから受ける振動を遮断する機能を付加できる機器の支持ユニット、および合理的な構成によって製作並びに用途対応が容易である独立した積層板構造のベアリングユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、第1発明による機器の支持ユニットは、
薄板材で所要形状の切抜き部を形成してなる積層板部片を軸線方向に複数枚積層して中空弾性体にてなる締結部材で一体的に結合された本体の側面または周面に機器の一部を取付けて、機器を保持する構造である機器の支持ユニットにおいて、
前記本体は、その周面の要所に、積層構造の内部にて形成された凹所で積層方向に交叉して埋設された雌ねじ部片のネジ穴に通じる取付孔が、前記積層板部片の積層方向に直交して設けられ、前記取付孔を通じて前記雌ねじ部片のネジ穴に締結ボルトを螺合させることで所要機体に取付けられる構成であることを特徴とするものである。
【0012】
前記発明において、前記本体の内部には、その軸線方向に各積層板部片に切抜かれた孔を合わせることにより所要直径のベアリングの嵌合キャビティが形成される構成であるのがよい(第2発明)。
【0013】
そして、前記第1発明または第2発明において、前記本体は、外形が方形に形成され、その上辺側二個所および左右両側に前記雌ねじ部片がそれぞれ積層方向と交叉して埋設され、周面に連通する取付孔が前記雌ねじ部片のネジ穴に連通するように設けられているのがよい(第3発明)。
【0014】
また、前記第1発明〜第3発明において、前記本体の軸線方向の一側面には、弾性材にてなる防振ブロックが付設され、この防振ブロックを介在させて取付支持金具が結合されているのがよい(第4発明)。
【0015】
また、第5発明に係るベアリングユニットは、
薄板材で所要形状の切抜き部を形成してなる積層板部片を軸線方向に複数枚積層して中空弾性体にてなる締結部材で一体的に結合された本体と、この本体を支持して構造体に定着する取付座を備えた取付部材とで構成されるベアリングユニットであって、
前記本体は、各積層板部片に形成された切抜き孔の組合わせにより内部にベアリングの嵌合キャビティが形成され、前記嵌合キャビティと周面との間に中心から放射状に複数個所で雌ねじ部片の埋設凹所と、この埋設凹所から周面に開口する締結ボルト挿入孔形成部とが設けられ、
前記取付部材は、前記本体の外周面を取囲む保持部と取付座部とを一体で備えて、前記保持部には前記本体の締結ボルト挿入孔に対応する結合孔が設けられ、この結合孔から本体の締結ボルト挿入孔を通じて前記本体の埋設凹所に配置される雌ねじ部片とを締結ボルトで結合して本体と一体化構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
前記第5発明において、前記本体は、その内部に形成されるベアリングの嵌合キャビティが内周面を凹球面状に形成され、前記嵌合キャビティには球面状の外周面をもつベアリングが嵌合されている構成であるのがよい(第6発明)。また、前記ベアリングは、外周面が球面に形成された内輪と、内周が凹球面に形成された外輪とが滑合状態に嵌め合わされてなり、このベアリングの外輪が前記本体を形成する積層板部片によって前後を挟まれて前記嵌合キャビティに組み込まれている構成とされるのがよい(第7発明)。
【0017】
前記第5発明〜第7発明において、前記本体は、軸線方向の積層最外側に位置する板部片が、他の内側積層板部片の外周面寸法よりも大きい外形寸法に形成され、この本体の周囲を取囲む取付部材の保持部が、前記本体の最外側板部片の内側に収まってその本体に埋設される雌ねじ部片と前記締結ボルトとにより結合されるように構成されているのがよい(第8発明)。
【0018】
前記第5発明〜第8発明において、前記本体の軸線方向の少なくとも一側面には、弾性材にてなる防振ブロックが付設されている構成であるのがよい(第9発明)。
【発明の効果】
【0019】
前記第1発明によれば、薄板材でなる積層板部片を軸線方向に複数枚積層して構成される本体の内部に、その積層板部片に所要形状に切抜いてなる切抜き部を組合わせることで形成された空間部に雌ねじ部片を埋設し、本体周面から前記雌ねじ部片のネジ穴に通じる取付孔を開口させ、本体周面で構造体(機体)側とボルト締結できる構成としたことにより、機器を側面部などに支持する本体をその周側面においてフレーム(機体)などに軸線方向に交叉する向きで締着することができる。したがって、取付部が狭いスペースでフレームなどに取付けて機器を支持してコンパクトにまとめることができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明によれば、機器を支持する本体が積層板構造になっているので、支持する機器などで発生する振動がその積層板構造の内部で吸収する機能を発揮でき、振動の伝播を低減する効果が期待できる。
【0021】
また、第1発明および第5発明によれば、積層する板部片をすべて打ち抜き加工によって形成でき、この板部片を軸線方向に組合わせて弾性中空体にてなる締結部材を特定の統一された抜き孔に嵌入してカシメることにより、その締結部材によって積層板部片を簡単に一体化して本体(保持体)を構成することができるので、各積層板部片に形成した抜き孔部の組合わせで切削加工を伴わず加工が容易に行えるから、作業環境が衛生的に保たれ、しかも製作費が低減できて安価に提供できるという経済的効果が得られるのである。
【0022】
また、第5発明に係るベアリングユニットによれば、軸受箱を構成する本体が薄板による積層板部片を複数枚組合わせて形成されるので、その積層板部片の材質を金属板やプラスチック板材などを選択して使用することで、用途に応じて対応できるという利点がある。もちろん、積層板部片を異なる材質のものを組合わせて形成することも可能であり、従来にない機能性を発揮することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、第1発明による機器の支持ユニットの具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1には第1発明による機器の支持ユニットの一実施形態の正面図(a)と縦断面図(b)とA−A視断面図(c)と中央縦断面図(d)および要部拡大断面図(e)が示されている。図2(a)〜(d)は図1に示した支持ユニットを構成する積層板部片を分解して表わす図である。図3は第1実施形態における支持ユニットの一使用態様を表わす一部切欠き側面図(a)とそのB−B視図(b)である。
【0025】
この実施形態の支持ユニット1は、複数枚の積層板部片3を軸線方向に重ね合わせて積層構造にされた本体2と、この本体2の内部に組み込まれて周面方向で目的機体(フレーム)などに定着するための締結部材10(以下、雌ねじ部片10という)とで構成されている。
【0026】
前記本体2は、外形が一定寸法の方形に整えられた薄金属板(例えばアルミニウム板)複数枚を軸線方向に重ね合わせ、その四隅の位置に設けられた締結丸孔4(以下、締結孔4という)に挿通された中空鋲5(弾性板材を筒状にして端部で鍔が形成される)によって一体に締結されて形成されている。ここで使用される積層板部片3(各板部片を総称して符号3で表わす)は、図2(a)〜(d)に示されるように、数種類の切抜き孔および切欠きを形成されたものである。
【0027】
前記積層板部片3は、まず、最外側に位置する外板3aは、図2(a)で表わされるように、中央に軸孔6が設けられ、四隅に締結孔4が形成されて表面側で同芯にて座ぐり4′を設けてある。次に、第1の中間板部片3bは、図2(b)で示すように、中央に軸孔6が設けられ、四隅の締結孔4が形成され、かつその各締結孔4同士の中間位置で長方形の小孔8が設けられている。さらに、第2の中間板部片3cは、図2(c)で示されるように、中央に前記軸孔6よりも外径の大きい軸受嵌入孔7(本発明におけるベアリング嵌合キャビティに相当)が設けられ、四隅の締結孔4同士の中間位置で長方形の小孔8が設けられている。そして、積層時の中央部に位置する中央板部片3dは、図2(d)で示すように、中央に軸受嵌入孔7が設けられ、四隅の締結孔4同士の中間位置に前記中間板部片3b,3cにおける長方形の小孔8と合わせた小孔の一辺を切開いて、外側に開口するちょうどT字型の切抜き部9がそれぞれ形成されている。
【0028】
前記積層板部片3(各部片3a〜3dを総称)における四隅の締結孔4は、すべて共通した寸法で統一して同一位置に設けられている。また、第1中間板部片の軸孔径は、外板3aのものと同一であり、第1中間板部片3bと第2中間板部片3cとの長方形の小孔8は同一位置に同じ寸法で形成されている。また、第2中間板部片3cと中央板部片3dとの軸受嵌入孔7は同一径であり、この軸受嵌入孔7は所要のベアリング15の外径に対応した寸法とされている。なお、前記各積層板部片3の長方形の小孔8は、その内側に雌ねじ部片10が収まる寸法に形成されている。そして、これら各積層板部片3は、外形寸法と各部孔の寸法を合致するように、プレス(またはレーザ)加工によって切抜き形成されている。
【0029】
このような各積層板部片3は、図1にて示されるように、複数枚の中央板部片3dを基準にして、かつその前後に第2中間板部片3cを配し、それら中央の軸受嵌入孔7(複数枚の対応積層板部片によって、本発明におけるベアリング嵌合キャビティが形成される。)に所要の転がりベアリング15を嵌め込み、各長方形の小孔8によって形成される空間部8Aにそれぞれ雌ねじ部片10(例えば六角ナット)をネジ穴10aがT字型の切抜き部9の開口9aに向くようにして嵌挿しておく。次いで、第2中間板部片3cの外側にはそれぞれ第1中間板部片3bを重ね、最後に外板3aで前後両面を覆うようにして重ね合わせ、四隅の締結孔4に中空鋲5を挿入し、この中空鋲5の端部をカシメることにより、積層板部片3をその中空鋲5で一体に結合させる。この中空鋲5は、弾性薄板材を筒状に巻成して一端部に鍔5aを備えている形状であるから、締結時その他端をカシメて鍔を作ることにより、巻成した筒部が拡張して締結孔4に張り付く拡張力が作用し、全積層板部片3a〜3dが強固に積層固定される。なお、前記長方形の小孔8によって積層形成される空間部8Aは立方形に形成されるので、ここに嵌め込まれる雌ねじ部片10として六角ナット(四角ナットでもよい)が収容される空間に収まって回動不能な形状のものを用いることにより、本体2側に締結用のネジ穴を加工形成することなく目的を達成できる。
【0030】
こうして構成された支持ユニット1は、その本体2の外周面のほぼ中央部に、それぞれ前述の中央板部片3dにおけるT字型切抜き部9によって開口9aの合成による角穴が形成され、この角穴が積層板部片3における長方形部分での空間部8Aに嵌め込まれている雌ねじ部片10のネジ穴10aに連通して取付孔9Aが形成される。
【0031】
そこで、この支持ユニット1は、軸受嵌入孔7に嵌設される転がりベアリング15に回転軸16を挿入支持させて駆動機構の取付フレーム30を構成する断面アングル型の部材の内面に本体2の周面の二辺を当接させ、図3に示されるように、前記本体2の周面に設けてある取付孔9Aに対応するように予め形成されている取付フレーム30側の取付孔32を合わせ、この取付孔32に対して取付ボルト33(具体的には皿頭ボルト)を挿入し、本体2内部に配設される雌ねじ部片10のネジ穴10aと螺合させることにより、取付フレーム30の内面に対して支持ユニット1を直交状態で取付けることができる。この実施形態では、支持ユニット1が二辺で取付ボルト33、33にて締結固定されるので、取付スペースを少なくして取付姿勢を強固に維持できる。したがって、支持ユニット1が狭いスペースに取付ける必要がある場合に有効である。
【0032】
また、この支持ユニット1によって例えばモータなどの機器を支持する場合には、図示省略するが、支持ユニット1の本体2側面に前記締結部の中空鋲5の内部を利用してボルト締結することにより、機器を装着支持することができる。この際、支持ユニット1の締結部の中空鋲5の孔が直接対応していないときには、機器の取付孔に合わせたブラケットを介在させて取付けるようにすればよい。
【0033】
(第2実施形態)
図4には本発明の第2実施形態における支持ユニットの正面図(a)とその中央縦断面図(b)と左側面図(c)および中央横断面図(d)が示されている。図5(a)〜(d)は図4に示した支持ユニットを構成する積層板部片を分解して表わす図である。図6(a)(b)は第2実施形態の支持ユニットの一使用態様を表わす図である。
【0034】
この実施形態の支持ユニット1Aは、本体2Aが前記第1の実施形態のものと同様に積層板構造のユニットであり、その本体2Aにベアリング15,15による軸支持部が上下二段に設けられた構成のものである。したがって、前記実施形態のものと同一もしくは同様の部分には、前記第1実施形態のものと同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
前記本体2Aは、外形が一定寸法の縦長方形に整えられた薄金属板(例えばアルミニウム板)にてなる積層板部片3Aを軸線方向に複数枚重ね合わせ、その四隅の位置に設けられた丸孔(締結孔4)に弾性板材を筒状にして端部で鍔が形成される中空鋲5を挿通して一体に締結されて形成されている。ここで使用される積層板部片3Aは、図5(a)〜(d)に示されるように、数種類の切抜き孔および切欠きを形成されている。
【0036】
前記積層板部片3Aは、最外側に位置する外板3a′が、図5(a)で表わされるように、中央部で上下所要の間隔で軸受嵌入孔7が二個設けられ、四隅に締結孔4が形成されて表面側で同芯にて座ぐり4′を設けてある。次に、第1の中間板部片3b′は、図5(b)で示すように、中央部で上下に前記外板3a′と同間隔で軸受嵌入孔7、7が設けられ、四隅の締結孔4が形成されている。さらに、第2の中間板部片3c′は、図5(c)で示されるように、中央部で上下に前記軸受嵌入孔7,7の間隔に合わせてその軸受嵌入孔7よりも小径の軸孔6が設けられ、四隅の締結孔4同士の間に図示のように短辺側では一個所、長辺側では二個所に長方形の小孔8がそれぞれ設けられている。そして、積層時の中央部に位置する中央板部片3d′は、図5(d)で示すように、中央部に上下二段の軸孔6,6が設けられ、四隅の締結孔4同士の間に前記中間板部片3c′における長方形の小孔8と合わせてその一辺を切開いて外側に開口するちょうどT字型の切抜き部9がそれぞれ形成されている。
【0037】
前記積層板部片3A(各板部片3a′〜3d′を総称)における四隅の締結孔4は、すべて共通した寸法で同一位置に設けられている。また、外板3a′と第1中間板部片3b′の軸受嵌入孔7径は同一であり、第2中間板部片3c′と中央板部片3d′との長方形の小孔8およびT字型の切抜き部9は、同一位置に同じ寸法で形成されている。なお、前記各積層板部片3Aの長方形の小孔8およびT字型の切抜き部9は、その内側に雌ねじ部片10が収まる寸法に形成されている。これら各板部片3a′〜3d′は、外形寸法と各部孔の寸法を合致するようにプレス(またはレーザ)加工によって切抜き形成されている。
【0038】
このような各積層板部片3Aは、図4で示されるように、複数枚の中央板部片3d′を基準にして、その前後に第2中間板部片3c′と第1中間板部片3b′をそれぞれ複数枚ずつ配し、最外部に外板3a′を配して四隅の締結孔4に中空鋲5を挿入し、この中空鋲5の一端をカシメることにより、積層板部片3Aがその中空鋲5により一体に結合されるのである。なお、積層時に各長方形の小孔8とT字型の切抜き部9の積層によって形成される空間部(取付孔9A)には、それぞれ雌ねじ部片10(例えば六角ナット)がネジ穴10aをT字型の切抜き部9の開口に向くようにして嵌挿してある。そして、その各雌ねじ部片10のネジ穴10aに連通する取付孔9Aが積層された本体2Aの周面に開口して形成されている。
【0039】
また、この支持ユニット1Aにおける本体2Aには、外板3a′と複数枚の第1中間板部片3b′とによって上下二段に転がりベアリング15を受け入れる軸受嵌入孔7,7が前後両面でそれぞれ形成されているので、この軸受嵌入孔7,7にそれぞれ所定のベアリング15を嵌合させ、図6に示されるように、本体2Aの周面を機器のフレーム30A内面に沿わせて前記取付孔9Aに合わせ設けられたフレーム30A側の取付孔32と合致させ、締結ボルト33を取付孔9Aを通じて雌ねじ部片10のネジ穴10aに螺合して締結することにより、フレーム内面に対して支持ユニット1Aが直交状態で取付けられる。したがって、この支持ユニット1Aに取付けられた転がりベアリング15、15によって回転軸16,16’を上下二段に支持することができる。この実施形態の支持ユニット1Aも前記支持ユニット1と同様に取付スペースを最小限にしてフレームなどに確実に固着できる。
【0040】
(第3実施形態)
図7には第3実施形態の支持ユニットの正面図(a)と中央縦断面図(b)が示されている。
この実施形態の支持ユニット1Bは、基本構成が前記第1実施形態のものと同じであり、本体2Bの外形が円形に形成されている。したがって、その構成についての詳細な説明は省略している。なお、構成する各部には前記第1実施形態にて記載のものと同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
(第4実施形態)
図8には第4実施形態の支持ユニットの一実施形態を表わす縦断面図(a)と左側面図(b)が示されている。なお、前記実施形態のものと同一もしくは同様の部分には、前記第2実施形態のものと同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
この実施形態の支持ユニット1Cは、前述の第2実施形態で説明した支持ユニット1Aと同様の本体2Aの一側面に弾性体にてなる防振ブロック35を介在させて駆動機構の歯車による動力伝達部40を支持するものである。この本体2Aの構成については前述の通りである。この本体2Aの一側面に取付ける防振ブロック35は、例えば防振ゴム36にてなる所要厚寸法で外形が本体2Aの外形(長方形)とほぼ同じ寸法に形成され、その防振ゴム36の軸線方向両面に金属板にてなる支持板37,37が接着されている。そして、その両支持板37,37には、四隅に前記本体2Aに設けられている締結部材である中空鋲5の締結孔4と合致する位置で接続用のねじ孔38が設けてある。なお、前記支持板37と防振ゴム36とは、軸孔貫通部36′の孔縁で支持板37に折り返し突縁37′を形成して接合面で軸線に対し交叉する方向に係止力が作用するようにし、支持板37と防振ゴム36との接合面でずれが生じないようにされている。また、本体2の中央部に軸の挿通孔が設けられない場合は、支持板37にのみ折り返し突縁37′を形成して防振ゴム36に食い込ませてずれないように接合させる。防振ブロック35における前記本体2Aとの接合反対面には、下部を外向きに屈曲させて取付座部を形成された取付金具39が防振ブロック35の他方の支持板37とボルトにて締結され、この取付金具39によって支持ユニット1Cを機体などに対して定着できるようにされている。
【0043】
この支持ユニット1Cによって例えばモータなどの機器を支持する場合は、図示省略するが、支持ユニット1Cの本体2A側面に前記防振ブロック35を当接し、前記締結部の中空鋲5の内部を利用して防振ブロック35の接続用ねじ孔にボルトを挿通してモータなどの機器の取付座とで締結することにより、機器を装着支持することができる。この際、支持ユニット1Cの締結部の孔(接続孔)が機器側の取付孔と直接対応していないときには、機器の取付孔に合わせたブラケットを介在させて取付けるようにすればよい。
【0044】
このように、支持ユニット1Cに防振ブロック35を付帯させて機器の支持に使用すれば、機器(モータ)側で生じる振動が防振ブロック35によって遮断され、また、支持ユニット1Cが薄板を積層して構成され、かつ軸方向に対し交叉する方向で機体など(フレーム)に締結されるので、振動発生源からの振動の伝播が防振ブロック35での吸収と本体2Aにおける積層構造部での制振機能とで大きく減衰し、振動の伝播が防止される効果が得られるのである。なお、前記防振ブロック35は、本体2Aと別体のものを取付ける説明であるが、この防振ブロック35の防振ゴム36の一端面を本体2Aの端面に一体に接着する構成とすれば、接続手間が省かれ、かつ防振機能をより向上させることができる。
【0045】
また、前記第3実施形態のように、本体が円形の支持ユニット1B(図7参照)の場合でも、その本体2Bの一側面に、前記要領で防振ブロック35を付設して使用することができる。この構成とした場合、その作用効果についても前述の通りである。
【0046】
(第5実施形態)
図9には防振ブロックを備える支持ユニットの他の実施形態の縦断面図が示されている。なお、前記実施形態のものと同一もしくは同様の部分には、前記第1実施形態のものと同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
この実施形態の支持ユニット1Dは、前述の積層板構造の本体2に防振ブロック35を付設したものにおいて、その防振ブロック35の他端側に取付座板を備えるL字型の取付金具39が付設されて一体的に形成されたものである。
【0047】
この支持ユニット1Dにおいては、本体2の外形について角形あるいは円形いずれにおいても前述の構成と同様であり、防振ブロック35についても前述の通りで外形を本体の外形に合わせて形成するのが好ましい。このように形成された支持ユニット1Dは、その本体2内にベアリング15を嵌合配置させ、回転軸16をベアリング15にて支持するようにする。また、本体2の側面に他の機器を直接取付けようにしてもよい。さらに、図8にて示されるように、本体2の周面に沿わせて支持部材あるいはカバーを本体2内部に嵌設の雌ねじ部片10を使用してボルト締着することができる。
【0048】
(第6実施形態)
図10には支持ユニットの他の実施形態の正面図(a)と中央横断面図(b)が示されている。この実施形態の支持ユニット1Eは、基本的に前述のものと同様の構成にてなる積層板構造の本体2Eとその内部に嵌設される雌ねじ部片10とを備えている。
【0049】
この実施形態の支持ユニット1Eは、本体2Eの外形が横長の長方形であって前述のものと異なる点は、上辺側に二個所で雌ねじ部片10の嵌設個所が設けてあり、左右の側辺にはそれぞれ一個所に雌ねじ部片10が嵌設されたものである。本体2Eについては、前述の支持ユニット1の構成が外形並びに締結孔4および雌ねじ部片10の埋設空間部形成の長方形の小孔8やT字型切抜き部9の位置を変更することで簡単に形成することができる。なお、前記実施形態のものと同一もしくは同様の部分には、前記第1実施形態のものと同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
この支持ユニット1Eによれば、例えば図11に示されるように、支持ユニット本体2Eの外形に合わせた内法を備えてこの軸線方向に伸びる外装部材45,45′を、幅方向に左右二つに分割して形成したものとし、この左右二分割されてなる外装部材45,45′を図示のごとく本体2Eと接する上面と側面とで埋設される雌ねじ部片10に締結ボルト33を外面からねじ込んで締結することにより、支持ユニット1Eを基準にして外装部材45,45′を取付支持させることができる。そして、図示省略するが、支持ユニット1Eに前述の防振ブロック35を介在させて取付金具39(図9参照)を外側面に付設したものとすれば、その取付金具39によって支持ユニット1Eと、この支持ユニット1Eに支持される例えばスクリュー駆動機を前記左右二分割されて取付く外装部材45,45′によって覆われた状態で所要の機器または構造物に付設できる。こうしておけば、前記外装部材45,45′の一方を取外せば囲われる内部の機器のメンテナンスを行う操作が便利である。なお、この図11に例示するのは、ドア開閉装置に用いたものである。ただし、これに限定されない。
【0051】
(第7実施形態)
図12には第5発明に係るベアリングユニットの一実施形態の一部を切欠き断面で表わす正面図(a)と中央縦断面図(b)および積層構造の別例要部を表わす断面図(c)が示されている。
【0052】
この実施形態のベアリングユニット20は、前記第1発明に係る支持ユニット1(1B)における積層構造と同様の構成にてなるベアリング保持体21(本発明の本体に対応する)と、このベアリング保持体21を目的個所に取付て使用するのを容易にする取付座を備えた取付支持体25とで構成されている。なお、この実施形態のものは、ベアリング保持体21が円形をした形状のもので示されている。
【0053】
前記ベアリング保持体21は、外形が所要直径の薄金属板で中央に所要寸法の転がりベアリングを一方から受け入れられる直径のベアリング嵌入孔22(本発明のベアリング嵌合キャビティに相当する。)を形成された積層板部片(図2における積層板部片3cと同様)と、このベアリング嵌入孔22と同軸で他方の側面に向けてやや小径の軸孔23が形成された積層板部片(図2における積層板部片3bと同様)とが、それぞれ複数枚軸線方向に積層されて外周寄りに統一する位置で設けられた複数個の締結孔4を、その内部に中空鋲5を嵌入して端部でカシメられ、一体化された積層構造のものである。そして、このベアリング保持体21の周面には、角穴(取付孔9A)がほぼ円周を当分した位置で複数個所(具体的には4個所)に設けられ、これら角穴の内部にそれぞれ雌ねじ部片10が埋設されている。なお、この雌ねじ部片10の埋設個所は、前述の実施形態のようにT字状の切抜き部9が形成された積層板部片と長方形の小孔8を切抜かれた積層板部片との組合わせて形成されている(この積層構成されたベアリング保持体21は、前述の図2で示される外形が方形の板部片3b〜3dと同様に、4種類の切抜かれた円形の積層板部片を組合わせて形成されている)。
【0054】
前記取付支持体25は、幅寸法が少なくとも前記ベアリング保持体21の軸線方向の厚さ寸法に相応する幅で所要の板厚の帯状部材で、前記ベアリング保持体21の外周を半円状に取り囲む彎曲部25aから半径よりやや長い寸法を直線にして、両端部をそれぞれ外向きに屈曲延長させ、その屈曲延長部が取付座部25b,25bとなるように形成されている。そして、前記彎曲部25aには前記ベアリング保持体21の周面に設けられた取付孔9Aに対応する位置で締結用の孔26が複数(具体的に3個所)設けられ、この締結用の孔26を通じて締結ボルト33(例えば皿ボルト)でもってベアリング保持体21内部の雌ねじ部片10のネジ穴10aに螺合して一体化されている。また、前記両取付座部25b,25bは、軸心から同一高さ寸法となるように形成され、上下方向に取付孔がそれぞれ設けてある。
【0055】
さらに、取付支持体25と一体化したベアリング保持体21の外周下部には、補助支持板27が中間部をベアリング保持体21の周面に密接するようにして真下位置でベアリング保持体21内部の雌ねじ部片10と締結ボルト33で締結され、その両側を前記取付支持体25の取付座部25b下面に重ね合わせて取付けられるようになっている。また、ベアリング保持体21のベアリング嵌入孔22開口側にはベアリング押えとなる蓋体28を配し、この蓋体28は、締結中空鋲5の内部孔を利用してベアリング保持体21の背面側でナット29′にて取付ボルト29と螺合締結することにより固定される。なお、ベアリング保持体21における外板部片3a′,3a”が、その外形を図12(c)で示すように、他の積層板部片より大きい径にして組合わせると、この両外板部片3a′,3a”間に取付支持体25が挟まれるように組み付けられて、強固に一体化し,同時に体裁よく形成できる。
【0056】
このように構成されるベアリングユニット20は、ベアリング嵌入孔22に所要寸法の転がりベアリング24を嵌め込んで軸受として使用する。前記ベアリング24としては、例えば自動調心型のベアリングを使用することで、従来のピローブロックとほぼ同様に使用することができる。そして、ベアリング保持体21が薄板を切抜いてなる板部片を組合わせた積層構造であるから、部品点数が多くなるが、鋳造品やブロック状素材から切削形成するものに比べて、切削加工を伴わないで製作できるので加工現場での粉塵発生が抑制されて作業環境の改善が図られる。そして、それに伴い加工費が著しく低減され、安価に提供することができるという効果を奏する。
【0057】
また、薄板材を積層してベアリング24の保持部を形成するから、そのベアリング24を半径方向に支持する部分が各板材の端面の集合で、その各板材の端面によって負荷を支持するので、ベアリング側で生じる微細な振動の伝播が構成板部片にて吸収され、吸振効果が得られる。
【0058】
(第8実施形態)
図13に示されるのはベアリングユニットの他の実施形態の正面図である。
この実施形態のベアリングユニット20Aは、ベアリング保持体21Aが四角形に形成されたもので、基本的構成は前記第7実施形態のベアリングユニット20と同様である。したがって、同一または同様の構造については同一の符号を付して表わし、重複する部分の説明は省略する。
【0059】
この形状のベアリング保持体21Aに対する取付支持体25Aは、ベアリング保持体21Aの外周辺に合わせて屈曲形成され、両端の取付座部25bが外向きに屈曲されている。なお、この実施形態では、ベアリング保持体21Aの下辺と取付支持体25Aの取付座部25b,25bの下面とを、同じレベルに揃えて取付面に沿わせる形態を示している。ただし、必要に応じてベアリング保持体25Aの下面が取付座面より上に位置して取付面との間隙が形成されるようにしてもよい。
【0060】
(第9実施形態)
図14にはベアリングユニットのさらに他の実施形態の縦断面図(a)と左側面図(b)が示されている。この実施形態のベアリングユニット20Bは、前述の構造と同一のベアリング保持体21の軸線方向一側面に防振ゴム36による防振ブロック35が一体的に取付けられ、その防振ブロック35のベアリング保持体取付面と反対の面に側面視L字型に屈曲形成された金属板にてなる支持金具39Bを一体に付設された防振ベアリングユニットである。前記ベアリング保持体21および防振ブロック35については、前記実施形態のものと同じ構成であるので、詳細な説明は省略している。
【0061】
また、図15には防振ブロックを備えたベアリングユニットの縦断面図(a)および左側面図(b)が示されている。この実施形態のベアリングユニット20Cは、ベアリング保持体21Cの外形が方形のものについて表わしており、構成については、ベアリング保持体21Cの外形に合わせて防振ブロック35および支持金具39Cの外形対応するようにしたものである。
【0062】
これらの防振ブロックを併設したベアリングユニットとすれば、前述のベアリングユニットの機能に防振機能が付加されたベアリングユニットとなり、動力伝達に伴う振動の発生を低減することが可能になるという効果を奏するのである。
【0063】
(第10実施形態)
次に、この実施形態のベアリングユニットは、ベアリング保持体(軸受箱)内に嵌設のベアリングが自動調心型のものを保持した態様のものである。図16にはこの実施形態のベアリングユニットの縦断面図(a)とその左側面図(b)および図(b)のC−C視断面図(c)が、図17(a)〜(d)及び(a′)〜(c′)には図16に示したベアリングユニットを構成する積層板部片を分解して表わす図が,図18には調心型ベアリングの組み込み態様説明図が、それぞれ示されている。
【0064】
このベアリングユニット20Dは、ベアリング保持体21D(本発明における本体に相当する。)が所要外形寸法の方形に形成された複数枚の積層板部片3D(各板部片を総称して符号3Dで表わす)を軸線方向に重ね合わせて複数個所で中空鋲5にてなる締結部材により締結されて積層構成され、この積層構造の中央部に貫通して形成されたベアリング嵌入孔22D(本発明のベアリング嵌合キャビティに相当する)に、外周を球面状に形成された調心型ベアリング50が嵌合されたものである。図中符号51はベアリングの外輪、52はベアリング固定カラー、53はベアリングの取付用止めねじである。
【0065】
前記ベアリング保持体21Dは、前述の第1実施形態における本体2を構成する積層板部片3と同様、図17(a)〜(d)及び(a′)〜(c′)で示されるように、外形が一定寸法の方形に整えられた薄金属板(例えばアルミニウム板)を複数枚軸線方向に重ね合わせ、その四隅の統一された位置に設けられた締結孔4に挿通された中空鋲5(弾性板材を筒状にして端部で鍔が形成される)によって一体に締結されて形成されている。なお、ここで使用される積層板部片3Dは、図17(a)〜(d)及び(a′)〜(c′)に示されるように、数種類の切抜き孔および切欠きを形成されたものである。
【0066】
前記積層板部片3Dは、まず、一方の外側に位置する外板3a”は、図17(a)で表わされるように、中央にベアリング嵌入孔22Da(本発明におけるベアリング嵌合キャビティに相当)が設けられ、四隅に締結孔4が形成されて表面側で同芯にて座ぐり4′を設けてある。次に、第1の中間板部片3b”は、図17(b)で示すように、中央にベアリング嵌入孔22Daが設けられ、四隅には締結孔4が、そして、その各締結孔4同士の中間位置に長方形の小孔8が、それぞれ設けてある。さらに、第2の中間板部片3c”は、図17(c)で示されるように、中央に前記軸受嵌入孔6よりも外径のやや大きいベアリング嵌入孔22Dが設けられ、四隅の締結孔4同士の中間位置に前記中間板部片3b”における長方形の小孔8と合わせた小孔の一辺を切開いて、外側に開口9aするちょうどT字型の切抜き部9がそれぞれ形成されている。また、第3の中間板部片3d”は、図17(d)で示されるように、中央に前記ベアリング嵌入孔22Dで軸心を通る対角線上対角位置で所要寸法の切欠き部22a′,22a′が形成され、四隅の締結孔4同士の中間位置に前記T字型の切抜き部9がそれぞれ形成されている。
【0067】
一方、後面外側に位置する外板3g”は、図17(a′)で示されるように、中央に前記第3の中間板部片3d”におけるベアリング嵌入孔22Dと同様に対角位置で所要寸法の切欠き部22a′,22a′が形成され、四隅に締結孔4が形成されて表面側で同芯にて座ぐり4′を設けてある。第5の中間板部片3f”は、図17(b′)で示されるように、中央に対角位置で所要寸法の切欠き部22a′,22a′が形成されたベアリング嵌入孔22Dが設けられ、四隅の締結孔4と、その締結孔4同士の中間部に長方形の小孔8がそれぞれ形成されている。さらに、第4の中間板部片3e”は、図17(c′)で示されるように、前記第3の中間板部片3d”とほぼ同じ形状に、ベアリング嵌入孔22Dと締結孔4およびT字型の切抜き部9が形成されている。そして、これら各積層板部片3Dは、外形寸法と各部孔の寸法を合致するように、プレス(またはレーザ)加工によって切抜き形成されている。
【0068】
このように形成された各積層板部片3Dは、図16にて示されるように、複数枚の中央板部片(第3及び第4中間板部片3d”,3e”)を基準にして、その前側に第2中間板部片3c”と第1中間板部片3b”を、後側に第5中間板部片3f”を配し、さらにその両外側に前には外板3a”を、後側には後側外板3g”を、それぞれ締結孔4を合致させるとともに、中央のベアリング嵌入孔22Dを後半部の板部片では切欠き部22a′,22a′を揃えて重ね合わせ、締結孔4部分において中空鋲5にて一体に締結する。なお、この積層組立に際して、長方形の小孔8とT字型の切抜き部9とによって形成される各空間部には、それぞれ雌ねじ部片10である六角ナット(または四角ナット)を、ネジ穴10aがT字型切抜き部9によって形成される開口9aに向かって位置するように埋設しておく。こうして組み立てられたベアリング保持体21Dは、四隅を中空鋲5のカシメによって締結されるので、前述のように各板部片が強固に締結されて一体化した状態となる。したがって、このベアリング保持体21Dの中央部に形成されるベアリング嵌入孔22Dの内周面を少し研削して凹球面状に仕上げておく。なお、この凹球面の開口縁と中央部における凹みの寸法差は、例えばベアリング嵌入孔22Dの直径Dが16.96mmで約0.52mmの膨らみに形成されている(ただし、この寸法に限定されるものではない。)。
【0069】
こうして形成されたベアリング保持体21Dは、図16(a)に示されるように、そのベアリング嵌入孔22Dの内周面が軸中心を基点とする所要半径で描く凹球面状に形成されているので、このベアリング嵌入孔22Dに対して外周を前記所要半径で描く球面に形成された調心型ベアリング50を嵌め込んで軸芯が自動調心できるベアリングユニット20Dを形成することができる。なお、前記調心型ベアリング50には、公知のものを使用することができる。そして、この調心型ベアリング50を前記ベアリング嵌入孔22Dに嵌め込むには、図18(a)で表わされるように、ベアリング保持体21Dの後面に開口しているベアリング嵌入孔22Dの対角で形成されている切欠き部22a′,22a′に対し前記調心型ベアリング50を直交させてあてがうと、この両切欠き部22a′,22a′間の寸法がベアリング嵌入孔22Dの凹球面における最大径よりやや大きい径に設定されているので、調心型ベアリング50が簡単に内部に受入れられる。そこで、その調心型ベアリング50を図18(b),(c)で示されるように、そのままの姿勢でほぼ45°回転させると外径の頂点部分(最大径部分)がベアリング嵌入孔22Dの凹球面に沿って受入れられる。したがって、調心型ベアリング50は自己の軸線をベアリング保持体21Dの軸線に沿うように回転させれば、外輪51の周面全体がベアリング嵌入孔22Dの内周面に沿って受入れられ、図16(a)で示されるような正常姿勢に収容されて、抜け出すことなく保持される。
【0070】
このように構成されるベアリングユニット20Dは、前記第8実施形態に示されるように、ベアリング保持体21Dの周面に開口9aする取付孔9Aを使用して雌ねじ部片10に取付支持体(図示せず)を取付ボルトにて結合して使用することができる。特に、この実施形態ではベアリング嵌入孔22Dに組み込まれているベアリングが、調心型ベアリング50であるので、ベアリング保持体21Dの内部で全体的に支持する軸の回転軸心に対応して自動調心することが容易であるから、無理なく支持することができる。また、前記調心型ベアリング50は、使用によって機能が低下した場合、ベアリング嵌入孔22Dにおいて使用状態から向きを90°立て起し、前述の嵌め込み操作と逆の手順でベアリング保持体21Dの後面側に開口するベアリング嵌入孔22Dの切欠き部22a′,22a′にそのベアリング外輪51の幅を合わせるように変位させれば、抜き取ることができるので、新しいものと交換することができる。
【0071】
また、この実施形態のベアリングユニット20Dは、前述のようにその周面に設けられた取付孔9Aを通じて取付支持体を一体的に組付けて使用するほかに、例えばベアリング保持体21Dの四隅に設けられた中空鋲5による締結部の孔を利用して軸線方向に目的の取付位置にボルト締結して使用することができる。あるいは、一方の外板に沿わせてそのベアリング保持体21Dの外形よりも大きい寸法の取付板を一体的に付設して、この取付板で機体などの目的位置に取付けて使用する、いわゆるフランジ型のベアリングユニットとすることもできる。
【0072】
(第11実施形態)
次に、図19にはベアリングユニットの他の実施形態の縦断面図(a)と側面図(b)が、図20にはこのベアリングユニットを構成する積層板部片の分解したものと組み込まれるベアリングとを表わす図が、それぞれ示されている。
【0073】
この実施形態のベアリングユニット20Eは、図19(a)に示されるように、積層板構造のベアリング保持体21Eと、このベアリング保持体21Eの中央部に形成されたベアリング嵌入孔22Eに挿入されるソリッド構造の調心型ベアリング55とで構成される自動調心型のベアリングユニットである。
【0074】
このベアリング保持体21Eは、前記第1実施形態における積層板構造とほぼ同様の積層板部片3Eの組み合わせによるもので、前後の外板3hと第1の中間板部片3iとにおける中央の軸孔22eが第2中間板部片3jにおけるベアリング嵌入孔22Eに比べて小さい直径に形成されている点が異なるものである。そして、第2中間板部片3jと中央部の中間板部片3kとは、前記第1実施形態のものと同様に長方形の小孔8およびT字型の切込み部9が形成されている。なお、各部の構造については、前記実施形態のものと同様であるから、それぞれに符号を付して詳細な説明は省略している。なお、ベアリング保持体21Eの前後外板3h,3hは、調心型ベアリング55をベアリング嵌入孔22Eに嵌め込んだ後に、積層した中間板部片3i〜3kの外側にそれぞれ重ね合わせて四隅の締結孔4に中空鋲5を嵌め合わせてカシメ、一体的に組み立てられる(図19(a)参照)。なお、ベアリング保持体21Eのベアリング嵌入孔22E内に組み込まれた調心型ベアリング55は、その球面内輪57の軸方向両端が外板3h,3hによって囲われているので,使用中に抜け出すことはない。
【0075】
前記調心型ベアリング55は、内面を凹球面に形成された外輪56に対して外周面を球面状に形成された球面内輪57を組合わせて形成されている。そして、その球面内輪57は例えば焼結合金など潤滑性を備えた材料で形成され、外輪56は例えばアルミニウムもしくはアルミニウム合金(または、銅合金)で形成されていて、外輪56の内に球面内輪57を嵌め合わせた後に開口側(球面内輪を嵌め込む側)を絞縮して外輪56内で球面内輪57が調心自在に滑動できるようにされている。
【0076】
このように形成されたベアリングユニット20Eは、調心型ベアリング55として滑り軸受構造のものを用いるようにされているので、比較的軽負荷の回転軸の軸受として使用することができる。そして機体などに対する取付部の構造については、前述の転がりベアリングを用いたものと同様にできる。
【0077】
上述した機器支持ユニットおよびベアリングユニットにおける積層構造の本体あるいはベアリング保持体として構成する板部片については、金属板のほかに、プラスチックの板材を用いて切抜き形成することも可能である。また、ベアリングユニットにおいてベアリングには、転がりベアリングのほかに図示省略するが、自己潤滑性の軸受(例えば、焼結金属製のブッシュ,プラスチック製軸受など)やセラミックブッシュなどを使用することができる。特にプラスチック製軸受やセラミックブッシュとプラスチック板材による積層構造体を組合わせれば、水中軸受(あるいは化学溶液中での軸受)として使用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1発明による機器の支持ユニットの一実施形態の正面図(a)と縦断面図(b)とA−A視断面図(c)と中央縦断面図(d)および要部拡大断面図(e)
【図2】(a)〜(d)は図1に示した支持ユニットを構成する積層板部片を分解して表わす図
【図3】第1実施形態における支持ユニットの一使用態様を表わす一部切欠き側面図(a)とそのB−B視図(b)
【図4】本発明の第2実施形態における支持ユニットの正面図(a)とその中央縦断面図(b)と左側面図(c)および中央横断面図(d)
【図5】(a)〜(d)は図4に示した支持ユニットを構成する積層板部片を分解して表わす図
【図6】(a)(b)は第2実施形態の支持ユニットの一使用態様を表わす図
【図7】第3実施形態の支持ユニットの正面図(a)と中央縦断面図(b)
【図8】第4実施形態の支持ユニットの一実施形態を表わす縦断面図(a)と左側面図(b)
【図9】防振ブロックを備える支持ユニットの他の実施形態の縦断面図
【図10】支持ユニットの他の実施形態の正面図(a)と中央横断面図(b)
【図11】支持ユニットの使用の形態を表わす縦断面図
【図12】第5発明に係るベアリングユニットの一実施形態の一部を切欠き断面で表わす正面図(a)と中央縦断面図(b)および積層構造の別例要部を表わす断面図(c)
【図13】ベアリングユニットの他の実施形態の正面図
【図14】ベアリングユニットのさらに他の実施形態の縦断面図(a)と左側面図(b)
【図15】防振ブロックを備えたベアリングユニットの縦断面図(a)と左側面図(b)
【図16】他の実施形態のベアリングユニットの縦断面図(a)とその左側面図(b)および図(b)のC−C視断面図(c)
【図17】(a)〜(d)及び(a′)〜(c′)には図16に示したベアリングユニットを構成する積層板部片を分解して表わす図
【図18】調心型ベアリングの組み込み態様説明図
【図19】ベアリングユニットの他の実施形態の縦断面図(a)と側面図(b)
【図20】ベアリングユニットを構成する積層板部片の分解したものと組み込まれるベアリングとを表わす図
【符号の説明】
【0079】
1,1A,1B,1C,1D,1E 支持ユニット
2,2A,2B,2E 本体
3,3A,3D,3E 積層板部片
4 締結孔
5 中空鋲
8A 空間部
9A 取付孔
10 雌ねじ部片
10a ネジ穴
15,24 ベアリング
16 回転軸
20,20A,20B,20C、20D,20E ベアリングユニット
21,21A,21C,21D,21E ベアリング保持体
22、22D,22E ベアリング嵌入孔
25,25A 取付支持体
25b 取付座部
26 締結用の孔
27 補助支持板
30 取付フレーム
32 締結ボルト
35 防振ブロック
36 防振ゴム
37 支持板
37′ 突縁
38 接続用のねじ孔
39,39A,39C 支持金具
45,45′ 外装部材
50,55 調心型ベアリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板材で所要形状の切抜き部を形成してなる積層板部片を軸線方向に複数枚積層して中空弾性体にてなる締結部材で一体的に結合された本体の側面または周面に機器の一部を取付けて、機器を保持する構造である機器の支持ユニットにおいて、
前記本体は、その周面の要所に、積層構造の内部にて形成された凹所で積層方向に交叉して埋設された雌ねじ部片のネジ穴に通じる取付孔が、前記積層板部片の積層方向に直交して設けられ、前記取付孔を通じて前記雌ねじ部片のネジ穴に締結ボルトを螺合させることで所要機体に取付けられる構成であることを特徴とする機器の支持ユニット。
【請求項2】
前記本体の内部には、その軸線方向に各積層板部片に切抜かれた孔を合わせることにより所要直径のベアリングの嵌合キャビティが形成される構成である請求項1に記載の機器の支持ユニット。
【請求項3】
前記本体は、外形が方形に形成され、その上辺側二個所および左右両側に前記雌ねじ部片がそれぞれ積層方向と交叉して埋設され、周面に連通する取付孔が前記雌ねじ部片のネジ穴に連通するように設けられている請求項1または2に記載の機器の支持ユニット。
【請求項4】
前記本体の軸線方向の一側面には、弾性材にてなる防振ブロックが付設され、この防振ブロックを介在させて取付支持金具が結合されている請求項1〜3のいずれかに記載の機器の支持ユニット。
【請求項5】
薄板材で所要形状の切抜き部を形成してなる積層板部片を軸線方向に複数枚積層して中空弾性体にてなる締結部材で一体的に結合された本体と、この本体を支持して構造体に定着する取付座を備えた取付部材とで構成されるベアリングユニットであって、
前記本体は、各積層板部片に形成された切抜き孔の組合わせにより内部にベアリングの嵌合キャビティが形成され、前記嵌合キャビティと周面との間に中心から放射状に複数個所で雌ねじ部片の埋設凹所と、この埋設凹所から周面に開口する締結ボルト挿入孔形成部とが設けられ、
前記取付部材は、前記本体の外周面を取囲む保持部と取付座部とを一体で備えて、前記保持部には前記本体の締結ボルト挿入孔に対応する結合孔が設けられ、この結合孔から本体の締結ボルト挿入孔を通じて前記本体の埋設凹所に配置される雌ねじ部片とを締結ボルトで結合して本体と一体化構成されていることを特徴とするベアリングユニット。
【請求項6】
前記本体は、その内部に形成されるベアリングの嵌合キャビティが内周面を凹球面状に形成され、前記嵌合キャビティには球面状の外周面をもつベアリングが嵌合されている構成である請求項5に記載のベアリングユニット。
【請求項7】
前記ベアリングは、外周面が球面に形成された内輪と、内周が凹球面に形成された外輪とが滑合状態に嵌め合わされてなり、このベアリングの外輪が前記本体を形成する積層板部片によって前後を挟まれて前記嵌合キャビティに組み込まれている構成とされる請求項5に記載のベアリングユニット。
【請求項8】
前記本体は、軸線方向の積層最外側に位置する板部片が、他の内側積層板部片の外周面寸法よりも大きい外形寸法に形成され、この本体の周囲を取囲む取付部材の保持部が、前記本体の最外側板部片の内側に収まってその本体に埋設される雌ねじ部片と前記締結ボルトとにより結合されるように構成されている請求項5〜7のいずれかに記載のベアリングユニット。
【請求項9】
前記本体の軸線方向の少なくとも一側面には、弾性材にてなる防振ブロックが付設されている請求項5〜8のいずれかに記載のベアリングユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−257563(P2009−257563A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185504(P2008−185504)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000215534)
【Fターム(参考)】