説明

機器分析用データ処理システム

【課題】HTML電子メールが読める環境下であれば、場所を問わず詳細な分析結果を確認できるようにする。
【解決手段】データ処理装置12において、LC11より収集されたデータに基づいてクロマトグラムが作成されると画像ファイル作成部13がPNGファイルを作成し、画像ファイル登録処理部15はそのファイルをWEBサーバ2の画像ファイル保存部21に格納する。HTMLファイル作成部14は分析結果のレポートを上記画像が埋め込まれたHTML文書で作成し、電子メール送信処理部16がそのHTML文書を電子メールで所定アドレスに送信する。この電子メールを受信したクライアント端末6で電子メールが開かれると、WEBサーバ2から画像がダウンロードされて該画像が貼り付けられた分析結果レポートが表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ分析装置、質量分析装置、分光光度計などの各種分析機器で収集されたデータを処理して分析結果を取得する機器分析用データ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ、質量分析装置などの各種の分析機器の制御やデータ処理には汎用のパーソナルコンピュータ(PC)が利用されることが多い。即ち、汎用のPCに専用の制御/処理ソフトウエアをインストールしてこれをPC上で実行することにより、目的とする分析機器の制御やデータ処理が達成されるようになっている。例えば液体クロマトグラフでは、分析によりクロマトグラムデータが得られるから、データ処理装置ではこのデータに基づいてクロマトグラムを作成し、クロマトグラムに対するデータ処理を行うことで定性分析や定量分析を行う。こうしたデータ処理により得られる分析結果は、そのデータ処理が実行されたPC上で確認することができるほか、クライアントサーバ型の構成の場合には、他のPC(クライアント端末)上でも同じ分析結果を閲覧することができる。こうした閲覧を可能とするためには、基本的に、専用の制御/処理ソフトウエアがそのPCにインストールされていることが前提である。
【0003】
液体クロマトグラフの自動分析などでは、分析の開始から終了までに長い時間が掛かることも多く、例えば夜間などに殆ど無人状態で分析動作を実行させる場合もある。そのため、分析実行中に分析担当者が分析装置の傍を離れたり外出したりすることも多い。そうした場合に、上述のようなクライアントサーバ構成に含まれない外部のPCで分析結果を確認したいという要望も多いものの、通常、そうしたPCには専用の制御/処理ソフトウエアがインストールされておらず、さらに、外部のPCからネットワークを介してデータ処理装置に接続して分析結果にアクセスすることはセキュリティの点で問題がある。そのため、従来、通常のPCさえ在れば、どこでも上記のような分析結果を確認できるという環境は整えられていない。
【0004】
一方、従来、電子メールの機能を利用して分析に関わる各種情報を予め決められたクライアントに知らせることは行われている。例えば特許文献1、2、3などに記載の装置では、分析装置に電子メールの送信機能を組み込み、分析終了時点や何らかのトラブルが発生した時点などに自動的にそうした状況を知らせる電子メールを作成し、予め設定されている電子メールアドレスに送信するようになっている。このような電子メールの機能を利用することにより、分析結果の情報も送信可能であって、電子メールの受信が可能である環境でありさえすれば分析結果の確認が行える。
【0005】
しかしながら、こうした従来の装置では、例えば特許文献1の図3及び段落[0016]-[0017]に開示されているように簡単な分析結果の通知は行えるものの、データ処理装置で確認することができるような、クロマトグラム画像などを含む詳細な分析結果を得ることはできなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平10−215494号公報
【特許文献2】特開平10−308737号公報
【特許文献3】特開平11−122276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、分析機器やそのデータ処理装置から離れた場所において、特別なアプリケーションソフトウエアを搭載しないパーソナルコンピュータを用いて詳細な分析結果を簡便に確認することができる機器分析用データ処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明は、相互に通信可能なネットワークに接続され、各種の分析機器により収集されたデータを処理して分析結果を得る機器分析用データ処理システムであって、
a)分析結果のレポートをHTML文書として作成するレポート作成手段と、
b)前記HTML文書に埋め込まれている画像データを登録しておくとともに前記ネットワークを介したアクセスに応じて前記画像データを送出する画像データ保存手段と、
c)前記HTML文書を電子メールとして予め決められた電子メールアドレスに宛てて送信する電子メール送信手段と、
を備え、前記ネットワークを介して前記電子メールを受信したクライアント端末において該電子メールを閲覧する際に前記画像データ保存手段からの画像データのダウンロードにより画像データの埋め込まれた分析結果のレポートを閲覧可能としたことを特徴としている。
【0009】
本発明に係る機器分析用データ処理システムにおいて、レポート作成手段、画像データ保存手段、及び電子メール送信手段は、同一の装置(例えばコンピュータ)に備えられる構成とすることもできるが、例えば画像データ保存手段は、レポート作成手段及び電子メール送信手段を備える装置とは別のコンピュータにより具現化されるWEBサーバにより構成され、ネットワークを介した相互通信により画像データの送受が行われるようにしてもよい。
【0010】
本発明の一実施態様として、前記分析機器はクロマトグラフ分析装置であって、前記画像データはクロマトグラムである構成とすることができる。
【0011】
本発明に係る機器分析用データ処理システムでは、例えばクロマトグラフ分析装置により得られたデータに基づいてクロマトグラムが作成され、そのクロマトグラムを処理することで定性分析や定量分析が実行される。そうした分析結果が得られるとレポート作成手段は分析結果のレポートをHTML文書として作成する。HTML文書では画像データはそのファイルの格納先のリンク情報として埋め込まれるから、画像データ保存手段での登録先のアドレス(WEBサーバであればURL)が埋め込まれたものとなる。そして、電子メール送信手段はこのHTML文書を電子メールとして予め決められた電子メールアドレスに宛てて送信する。したがって、いわゆるHTMLメールが送信される。
【0012】
上記電子メールはメールサーバを経由して、ネットワークに接続されている所定のクライアント端末により受信される。このクライアント端末にはHTMLメール対応の電子メールソフト(メーラ)が搭載されており、この電子メールソフトで上記電子メールを閲覧しようとすると、HTML記述に従って画像データが格納されている画像データ保存手段に画像データの送信を要求し、画像データ保存手段はこの要求に応えて画像データを送信する。これにより画像データがクライアント端末にダウンロードされ、指定した位置に画像が貼り付けられたレポートがクライアント端末の画面上に表示されることになる。
【0013】
上記ネットワークはイントラネット又はインターネットのいずれでもよい。
【0014】
また画像データのファイル形式は特に問わないが、最も一般的なHTMLメール対応電子メールソフトで閲覧可能であることを前提とすると、PNG(Portable Network Graphics)形式、或いはGIF(Graphic Interchange Format)形式などが適当である。また、閲覧側で画像の拡大表示などのより拡張性のある表示を行うには、SVG(Scalable Vector Graphics)形式などのベクトル画像ファイルが適当である。この場合には、こうした画像ファイルを開くことができるソフトウエアをクライアント端末に搭載しておく必要がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る機器分析用データ処理システムによれば、HTML形式の電子メールを閲覧できる環境でありさえすれば、特別なアプリケーションソフトウエアがインストールされたコンピュータが手元になくても、分析担当者はどこに居てもクロマトグラム等の画像を含む詳細な分析結果を確認することができる。また、電子メールの送信宛先を複数にしておくことで、互いに離れている複数のクライアント端末で同時に所望の分析結果を見ることもできる。なお、送信した電子メールが閲覧される際には画像データ保存手段に対してアクセスがなされるため、画像データ保存手段側でアクセスの監視を行うことにより電子メールとして送信したレポートが閲覧されたか否かを確認することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る機器分析用データ処理システムの一実施例である液体クロマトグラフ(LC)分析システムについて図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本実施例によるLC分析システムの全体構成図である。このLC分析システムにおいて、分析部1、WEBサーバ2、送信用メールサーバ3は例えば同一会社内の閉じたイントラネット4に接続され、このイントラネット4は図示しないファイアウォールなどを介して外部のインターネット5に接続され、インターネット5にはクライアント端末6が接続されている。
【0018】
分析部1は、試料に対してLC分析を実行してデータを収集するLC11と、このLC11により得られたデータを受けて所定のデータ処理を実行するためのデータ処理装置12とを含む。このデータ処理装置12の実体はパーソナルコンピュータ(PC)であり、該PCに搭載されている専用のアプリケーションソフトウエアを実行することにより通常のデータ処理機能のほかに、画像ファイル作成部13、HTMLファイル作成部14、画像ファイル登録処理部15、電子メール送信処理部16などの各部の機能が実現される。
【0019】
WEBサーバ2は専用のアプリケーションソフトウエアが搭載されたコンピュータであり、画像ファイル保存部21と、ファイル読み書き処理部22と、アクセス処理部23と、を備える。またクライアント端末6は標準的なパーソナルコンピュータであり、HTML形式で記述された電子メールを解読して表示可能なHTMLメール対応電子メールソフト61を備える。こうした電子メールソフト61としては、例えばマイクロソフト社が提供するアウトルック・エクスプレスなどが挙げられる。
【0020】
次に、本実施例のLC分析システムの動作を図2のフローチャートを参照して説明する。図2はデータ処理装置12を中心とする処理動作を示すフローチャートである。
【0021】
まず分析部1のLC11は所定の分析条件に従って分析を実行する(ステップS10)。データ処理装置12は分析により得られたデータを収集して、例えばクロマトグラムを作成し、そのクロマトグラムに基づいて定性分析、定量分析等のデータ処理を実行する(ステップS11、S12)。具体的には、クロマトグラムに対し波形処理を実行してピークを見い出し、各ピークの保持時間を求めてデータベースを参照して成分を定性する。さらにピークの高さや面積に基づいて成分濃度を定量する。こうしたデータ処理により、クロマトグラムやそのほかの画像が得られると、画像ファイル作成部13は、そうした画像を標準的なWEBブラウザで表示可能なファイル形式(例えばPNG(Portable Network Graphics)形式など)に変換した画像ファイルを作成する(ステップS13)。
【0022】
画像ファイルが作成されると、画像ファイル登録処理部15はその画像ファイルをWEBサーバ2に登録する(ステップS14)。具体的には所定の規則に則って画像ファイルにファイル名(例えば[chromatogram1.png])を付与し、ファイル読み書き処理部22を介してWEBサーバ2の画像ファイル保存部21の規定のフォルダ(例えばimgフォルダ)に格納する。またHTMLファイル作成部14は、上記画像ファイルを含む(つまり文書中に埋め込んだ)HTML形式のレポートを、LC分析結果として作成する(ステップS15)。このHTML文書において、画像ファイルはWEBサーバ2の画像ファイル保存部21への保存先つまりはリンク先アドレス情報として埋め込まれている。
【0023】
電子メール送信処理部16は作成されたHTML形式のレポートを内容とする電子メール(HTMLメール)を作成し、予め設定されている電子メールアドレスに宛ててその電子メールを送信する(ステップS16)。この電子メールはイントラネット4を介して一旦送信用メールサーバ3に保持され、そこで電子メールの送信先を特定して外部のインターネット5に含まれる送信先のメールサーバにその電子メールを送る。電子メールは送信先のメールサーバに一旦保持される。これで、データ処理装置12としての動作は終了する。
【0024】
ユーザーが手元のクライアント端末6でHTMLメール対応電子メールソフト61を用いて上記メールサーバに蓄積されている電子メールをダウンロードして開くと、HTMLの記述を解読し、画像のリンク先の記述に対応してWEBサーバ2に画像データのダウンロードを要求する。すると、要求を受けたWEBサーバ2のアクセス処理部23は、画像ファイル保存部21から該当する画像ファイルを読み出して要求元のクライアント端末6に送信する。
【0025】
上記画像ファイルを受信したクライアント端末6において、電子メールソフト61は、画像ファイルから画像を再現して、開いた電子メールの文書中の指定個所に貼り付ける。なお、電子メールソフト61において自動的な画像のダウンロードがブロック(遮断)される設定になっている場合には、そのブロックを一時的に解除する操作をユーザーが行うことで、画像ファイルのダウンロードが実行されて表示画面上に画像が貼り付けられる。このようにしてクライアント端末6の表示画面上には例えば図3に示すような画面が表示される。
【0026】
即ち、図3の例では、電子メールソフト61を起動させることで表示される表示画面30内に電子メールを格納するフォルダの一覧を表示するフォルダ一覧表示ウインドウ31、例えば受信フォルダ内の格納されている電子メールの一覧を表示する電子メール一覧表示ウインドウ32、電子メール一覧表示ウインドウ32内で指定されている電子メールの内容を表示するプレビューウインドウ33が配置されている。電子メール一覧表示ウインドウ32内で、上述のように受信した電子メールが指定された状態では、プレビューウインドウ33内にクロマトグラム等の画像34が貼り付けられた電子メールの内容が表示されている。これにより、ユーザーは手元のクライアント端末6で詳細な分析結果、つまりレポートを確認することができる。
【0027】
上記実施例では、クロマトグラム等の画像データをPNG形式の画像ファイルとして登録していたが、その以外のファイル形式でもよい。例えばPNG、GIF、JPEG等のいわゆるビットマップ(ラスター)方式ではなく、ベクトル方式の画像データとしてもよい。具体的には、XML言語で記述されたSVG(Scalable Vector Graphics)ファイル形式などを用いることができる。この場合、一般的なHTMLメール対応電子メールソフト61では画像を再現することができないが、例えばアドビ社が提供するSVGビューワー等のプラグインソフトをクライアント端末6に導入することにより、電子メールを開いた際にSVGファイルの画像を表示させることができる。なお、このSVGを利用すれば、表示されたクロマトグラムの画像の拡大・縮小などが容易に行えるため利便性が高い。
【0028】
また、上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿った範囲で適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【0029】
例えば、上記実施例の構成では、データ処理装置12、WEBサーバ2、送信用メールサーバ3がそれぞれ別のコンピュータにより具現化され、イントラネット4に接続されるようになっているが、例えばデータ処理装置12とWEBサーバ2とを同一のコンピュータで実現する等、その構成は適宜に変更できる。また、必要に応じて分析結果レポートの電子メールに分析結果等の画像データを添付して送信してもよい。また、インターネット5とは切り離して、例えば同一事業者内のイントラネット4に接続されたクライアント端末でのみ分析結果レポートの電子メールを受け取って閲覧できるようにしてもよい。また上記実施例では分析機器はLCであるが、ガスクロマトグラフ等の他の分析機器を用いたシステムに適用できることも当然である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例であるLC分析システムの全体構成図。
【図2】図1のシステムにおけるデータ処理装置を中心とする動作を示すフローチャート。
【図3】クライアント端末で受信した電子メールを閲覧する際の表示画面の概略の一例を示す図。
【符号の説明】
【0031】
1…分析部
11…液体クロマトグラフ(LC)
12…データ処理装置
13…画像ファイル作成部
14…HTMLファイル作成部
15…画像ファイル登録処理部
16…電子メール送信処理部
2…WEBサーバ
21…画像ファイル保存部
22…ファイル読み書き処理部
23…アクセス処理部
3…送信用メールサーバ
4…イントラネット
5…インターネット
6…クライアント端末
61…HTMLメール対応電子メールソフト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に通信可能なネットワークに接続され、各種の分析機器により収集されたデータを処理して分析結果を得る機器分析用データ処理システムであって、
a)分析結果のレポートをHTML文書として作成するレポート作成手段と、
b)前記HTML文書に埋め込まれている画像データを登録しておくとともに前記ネットワークを介したアクセスに応じて前記画像データを送出する画像データ保存手段と、
c)前記HTML文書を電子メールとして予め決められた電子メールアドレスに宛てて送信する電子メール送信手段と、
を備え、前記ネットワークを介して前記電子メールを受信したクライアント端末において該電子メールを閲覧する際に前記画像データ保存手段からの画像データのダウンロードにより画像データの埋め込まれた分析結果のレポートを閲覧可能としたことを特徴とする機器分析用データ処理システム。
【請求項2】
前記分析機器はクロマトグラフ分析装置であって、前記画像データはクロマトグラムであることを特徴とする請求項1に記載の機器分析用データ処理システム。
【請求項3】
前記画像データはベクトル画像データファイルであることを特徴とする請求項1に記載の機器分析用データ処理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−5072(P2008−5072A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170812(P2006−170812)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】