説明

機械的強度が高められた光ファイバ

高められた機械的強度を有する光ファイバが提供される。光ファイバは少なくとも100MPaの圧縮応力を有するオーバークラッド層を有する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2010年2月26日に出願された、名称を「機械的強度が高められた光ファイバ(Optical Fiber with Increased Mechanical Strength)」とする米国仮特許出願第61/308583号の優先権の恩典を主張する。本明細書は上記出願の明細書に依存し、上記明細書の内容はその全体が本明細書に参照として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は全般的には光ファイバに関し、さらに詳しくは、向上した機械的強度を有する光ファイバに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバの機械的特性は、ファイバがケーブルに編み込まれる仕方に影響し、ケーブル自体の特性にも影響するから、非常に重要である。特に重要な機械的特性は機械的強度である。
【0004】
光ファイバの作製に一般に用いられる実質的に純粋であるかまたは若干ドープされたシリカを含む、ガラス材料の機械的強度は、少なくともある程度は、ガラスの作製に用いられる組成または成分の関数である。さらに、ガラス材料の機械的強度はガラスの作製に用いられるプロセス条件によって影響を受け得る。例えば、平板ガラス製品において、ガラスの外表面を圧縮応力状態になるように処理すれば、ガラスの強度をかなり高めることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、コア、コアを囲んでいる内クラッド層及び内クラッド層を囲んでいるオーバークラッド層を有する光ファイバに関する。オーバークラッド層は少なくとも100MPaの圧縮応力を有する。
【0006】
本開示の別の実施形態はコア及びコアを囲んでいるオーバークラッド層を有する光ファイバに関する。オーバークラッド層は少なくとも100MPaの圧縮応力を有する。
【0007】
本開示の別の実施形態は光ファイバの作製方法に関する。本方法は、光ファイバプリフォームから光ファイバを線引きする工程を含み、光ファイバは、コア、コアを囲んでいる内クラッド層及び内クラッド層を囲んでいるオーバークラッド層を有する。完成光ファイバにおいてオーバークラッド層は少なくとも100MPaの圧縮応力を有する。
【0008】
さらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかであろうし、あるいは、記述及び添付される特許請求の範囲に、また添付図面にも、説明されるように実施形態を実施することによって認められるであろう。
【0009】
上述の全般的説明及び以下の詳細な説明がいずれも例示に過ぎず、特許請求項の本質及び特質を理解するための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。
【0010】
添付図面はさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす。図面は1つ以上の実施形態を示し、記述とともに、様々な実施形態の原理及び動作の説明に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は光導波路ファイバの一実施形態を簡略に示す。
【図2】図2は光導波路ファイバの別の実施形態を簡略に示す。
【図3】図3は、図2に示される実施形態に対応する光ファイバについて、応力を径方向位置の関数としてプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
高められた機械的強度を有する光ファイバ及びその作製方法が本明細書に開示される。光ファイバは少なくとも100MPaの圧縮応力を有するオーバークラッド層を有する。オーバークラッド層が少なくとも100MPaの圧縮応力を有すると言明することにより、発明者等はオーバークラッド層が圧縮状態にあり、圧縮応力の大きさすなわち絶対値が少なくとも100MPaであることを表明している。圧縮応力値は、ウィシュチェク(Wissuchek)等,「光ファイバの残留応力解析(Analysis of Residual Stress in Optical Fiber)」,光ファイバの信頼性及び試験に関するSPIE会議分科会(Part of the SPIE Conference on Optical Fiber Reliability and Testing),米国マサチューセッツ州ボストン,1999年9月,SPIE,第3848巻,p.34〜43,に報告されているファイバ応力測定手法を用いて決定することができる。この文献の全開示は本明細書に参照として含まれる。ガラス層またはガラス領域の軟化点は、その温度または領域にあるガラスの粘度が約107.6ポアズ(すなわち、3.981×10ポアズ(=3.981×10Pa・秒))に等しい温度と定義される。ガラスの軟化点及び軟化点近くの温度におけるガラスの粘度は、ASTM C339-93(2008)「ガラスの軟化点に対する標準試験法」を用いて決定することができる。
【0013】
図1は本明細書に開示されるような光ファイバの一実施形態例を簡略に示す。光ファイバ10は、コア領域12,コア領域12を囲んでいる内クラッド層14及び内クラッド層14を囲んでいるオーバークラッド層16を有し、オーバークラッド層16は、少なくとも150MPaのように、さらには少なくとも200MPaのように、少なくとも100MPaの圧縮応力を有する。本光ファイバは、ポリマー材料を含む被覆のような、1つ以上の被覆層(図示せず)によって被覆されることもできる。
【0014】
図2は本明細書に示されるような光ファイバの別の実施形態例を簡略に示す。光ファイバ10' はコア領域12' 及びコア領域12' を囲んでいるオーバークラッド層16' を有し、オーバークラッド層16' は、少なくとも150MPaのように、さらには少なくとも200MPaのように、少なくとも100MPaの圧縮応力を有する。本光ファイバは、ポリマー材料を含む被覆のような、1つ以上の被覆層(図示せず)によって被覆されることもできる。
【0015】
圧縮応力が少なくとも100MPaのオーバークラッド層を有する光ファイバは本明細書に開示される方法を用いて作製することができ、その方法においては、オーバークラッド層の粘度及び径方向厚さが指定された範囲内にあるように制御される。さらに、オーバークラッド層内の圧縮応力は、その下でファイバが線引きされている張力によっても影響され得る。そのようなファイバは、屈折率プロファイルへの応力光学効果の結果としての悪影響を実質的に受けずに、高められた機械的強度特性を有することができる。
【0016】
応力光学効果は、ファイバの屈折率を組成だけから予期されるであろう値から変える、ファイバ内の応力の結果として生じる効果である。例えば、線引きにおいて誘起される応力の結果、ガラス内の原子間距離が、また原子の電子殻も、影響を受け得る。これらは、円柱座標系において、
【数1】

【数2】

【数3】

【0017】
で与えられる、ガラスの屈折率変化を生じさせる。ここで、nは無応力ガラスの屈折率、n,nθ及びnはそれぞれ、径方向、方位角及び軸方向における実効屈折率、B及びBは応力光学係数である。対応して、オーバークラッド層材料及びオーバークラッド層厚さは、また線引き張力も、応力光学効果の結果としてのコアの屈折率の変化がコアの導波能力に影響を与えるに十分に大きくはないように、選ばれる。
【0018】
オーバークラッド層の、オーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域に対する、粘度を改変することにより、ファイバが張力の下で線引きされるときにファイバの別々の層が別々の負荷を支持し、ファイバが線引きされている間の冷却中にオーバークラッド層に圧縮応力を与える。オーバークラッド層の粘度は、例えば、1つ以上のドーパントをオーバークラッド層にドープすることによって改変することができる。そのようなドーパントは、外付け(OVD)プロセス中のような堆積段階中または固結段階中にオーバークラッド層に添加することができる。好ましくは堆積段階中に添加できるドーパントの例には、二酸化ゲルマニウム、ホウ素、リン、二酸化チタン、アルミナ及び、ナトリウム及びカリウムのような、アルカリ金属がある。好ましくは固結段階中に添加できるドーパントの例にはフッ素及び塩素がある。
【0019】
好ましくは、オーバークラッド層内の1つないし複数のドーパントの量はオーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域の粘度に対してあらかじめ定められた範囲内にオーバークラッド層の粘度を改変するに十分であるべきであり、オーバークラッド層の粘度は、少なくともあらかじめ定められた温度範囲にわたり、オーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域の粘度よりも低い。温度範囲は、[オーバークラッド層によって囲まれている層または領域の軟化点]±100℃であるような、あるいは[オーバークラッド層によって囲まれている層または領域の軟化点]±200℃であるような、あるいはさらに[オーバークラッド層によって囲まれている層または領域の軟化点]±400℃であるような、光ファイバプリフォームから線引きされている間に光ファイバが通過する温度範囲であろうことが好ましい。好ましい温度範囲の例は、約1400℃から約1800℃のように、約1200℃から約2000℃である。光ファイバの、あらかじめ定められた温度範囲内のいかなる温度においても、オーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域の粘度に対するオーバークラッド層の粘度の比は、約0.1から約0.9であることが好ましく、約0.1から約0.2であるように、あるいは約0.2から約0.5であるように、約0.1から約0.5であることがさらに好ましい。
【0020】
例えば、図1に示される実施形態において、[内クラッド層の軟化点]±200℃の範囲内の光ファイバのいかなる温度においても、内クラッド層の粘度に対するオーバークラッド層の粘度の比は、約0.1から約0.9であることが好ましく、約0.1から約0.2であるように、あるいは約0.2から約0.5であるように、約0.1から約0.5であることがさらに好ましい。特に好ましい実施形態において、約1400℃から約1800℃の範囲内の光ファイバのいかなる温度においても内クラッド層の粘度に対するオーバークラッド層の粘度の比は約0.1から約0.9であり、さらに好ましくは、約0.1から約0.2であるように、あるいは約0.2から約0.5であるように、約0.1から約0.5である。
【0021】
例えば、図1に示される実施形態において、オーバークラッド層の軟化点と内クラッド層の軟化点の差は、60℃より大きいように、あるいは80℃より大きいように、さらには100℃より大きいように、なお一層には120℃より大きいように、40℃より大きいことが好ましい。例えば、好ましい実施形態において、オーバークラッド層の軟化点と内クラッド層の軟化点の差は、60℃と150℃の間であるように、あるいは80℃と150℃の間であるように、さらには100℃と150℃の間であるように、40℃と150℃の間であり、オーバークラッド層の軟化点は内クラッド層の軟化点より低い。
【0022】
図2に示される実施形態において、[コアの軟化点]±200℃の範囲内の光ファイバのいかなる温度においても、コアの粘度に対するオーバークラッド層の粘度の比は、約0.1から約0.9であることが好ましく、約0.1から約0.2であるように、あるいは約0.2から約0.5であるように、約0.1から約0.5であることがさらに好ましい。特に好ましい実施形態において、約1400℃から約1800℃の範囲内の光ファイバのいかなる温度においてもコアの粘度に対するオーバークラッド層の粘度の比は約0.1から約0.9であり、さらに好ましくは、約0.1から約0.2であるように、あるいは約0.2から約0.5であるように、約0.1から約0.5である。
【0023】
図2に示される実施形態において、オーバークラッド層の軟化点とコア層の軟化点の差は、60℃より大きいように、または80℃より大きいように、あるいは100℃より大きいように、さらには120℃より大きいように、40℃より大きいことが好ましい。例えば、好ましい実施形態において、オーバークラッド層の軟化点とコアの軟化点の差は、60℃と150℃の間であるように、あるいは80℃と150℃の間であるように、さらには100℃と150℃の間であるように、40℃と150℃の間であり、オーバークラッド層の軟化点はコアの軟化点より低い。
【0024】
好ましい実施形態において、オーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域の粘度に対するオーバークラッド層の粘度を改変するだけでなく、オーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域に対するオーバークラッド層の屈折率も改変する、量または比でドーパントを添加することができる。一群の好ましい実施形態において、オーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域に対するオーバークラッド層の屈折率を低めるために1つ以上のドーパントを添加することができる。そのようなドーパントの例にはホウ素及びフッ素がある。別の一群の好ましい実施形態において、オーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域に対するオーバークラッド層の屈折率を高めるために1つ以上のドーパントを添加することができる。そのようなドーパントの一例は二酸化ゲルマニウムである。また別の一群の好ましい実施形態において、オーバークラッド層が直接に接して囲む層または領域の屈折率とオーバークラッド層の屈折率がほぼ同じになるように、1つ以上のドーパントを添加することができる。例えば、オーバークラッドによって直接に囲まれている層または領域が純シリカまたは実質的に純シリカであれば、オーバークラッド層が純シリカまたは実質的純シリカとほぼ同じ屈折率を有することを可能にする比で、オーバークラッド層に二酸化ゲルマニウム(屈折率上げドーパント)とフッ素(屈折率下げドーパント)を共ドープすることができる。
【0025】
オーバークラッド層の粘度に加えて、オーバークラッド層の径方向厚さもあらかじめ定められた範囲内にあるように制御することができる。粘度及び径方向厚さの効果を調べるため、様々なオーバークラッド層径方向厚さ及び[オーバークラッド層粘度]/[内クラッド層粘度]比を有する一連の単一モードファイバのモデル例を作製した。モデルファイバのそれぞれの直径は125μm径とし、コア半径は4.4μmとした。モデルでは、コアが(純シリカに対して約0.35%の最大屈折率に対応する)約7重量%の二酸化ゲルマニウムがドープされて、実質的純シリカの内クラッド層で囲まれ、続いて内クラッド層がオーバークラッド層で囲まれ、オーバークラッド層の粘度及び径方向厚さがファイバ例毎に様々に変えられている。表1に報告されるそれぞれの例について、内クラッド層に対するオーバークラッド層の粘度比は、ほぼ内クラッド層の軟化点である、約1650℃の温度で決定した。この温度におけるそれぞれのファイバ例の内クラッド層の粘度は約3.981×10ポアズ(3.981×10Pa・秒)である。これらのファイバ例を表1に示す。
【表1】

【0026】
表1に示されるような、内クラッド層の粘度に比較して低いオーバークラッド層の粘度は、例えば、ドーパントを下の表1Aに示すような量でオーバークラッド層に添加することによって達成することができる。
【表1A】

【0027】
さらに、オーバークラッド層には、例えば表1Bに示すように、オーバークラッド層が純シリカまたは実質的純シリカとほぼ同じ屈折率を有することを可能にする比で、二酸化ゲルマニウム及びフッ素を共ドープすることができる。
【表1B】

【0028】
図1に示される実施形態の内の好ましい実施形態において、オーバークラッド層のドーパントとしてフッ素が用いられる場合、フッ素はオーバークラッド層内に、0.1〜0.5重量%のように、さらには0.2〜1.0重量%のように、0.05〜2.5重量%の範囲の量で、単独でまたは1つ以上の他のドーパントとの組合せで存在することができる。オーバークラッド層のドーパントとして二酸化ゲルマニウムが用いられる場合、二酸化ゲルマニウムはオーバークラッド層内に、0.5〜25重量%のように、さらには1〜10重量%のように、0.25〜35重量%の範囲の量で、単独でまたは1つ以上の他のドーパントとの組合せで存在することができる。オーバークラッド層のドーパントとして二酸化チタンが用いられる場合、二酸化チタンはオーバークラッド層内に、0.5〜10重量%のように、さらには1〜5重量%のように、0.25〜20重量%の範囲の量で、単独でまたは1つ以上の他のドーパントとの組合せで存在することができる。二酸化ゲルマニウムとフッ素がオーバークラッド層の共ドーパントとして組み合わされる場合、二酸化ゲルマニウム及びフッ素は、例えば、0.6〜6重量%の二酸化ゲルマニウムの0.1〜1重量%のフッ素との組合せのように、さらには1〜3重量%の二酸化ゲルマニウムの0.15〜0.5重量%のフッ素との組合せのように、0.3〜10重量%の二酸化ゲルマニウムの0.05〜1.5重量%のフッ素との組合せの範囲の量で存在することができる。
【0029】
表1から分かるように、コアの実効屈折率は、特に内クラッド層に対するオーバークラッド層の粘度比が小さくなると、オーバークラッド層の径方向厚さによって影響を受けるように見える。そのような効果は上述した応力光学効果の結果であると考えられる。
【0030】
したがって、オーバークラッド層の径方向厚さは、コア領域の応力をファイバのコアの実効屈折率に実質的な影響を与えるほど大きくすることなく、十分高い圧縮応力を有するに十分大きいことが好ましい。オーバークラッド層の径方向厚さは、光ファイバの径方向厚さの約3%から約30%であることが好ましく、光ファイバの径方向厚さの約5%から約20%であることがさらに一層好ましい。例えば光ファイバの直径が125μmである場合、オーバークラッド層は、例えば、約7.5μmと12.5μmの間のように、約2.5μmと約17μmの間の径方向厚さを有することができる。光ファイバの直径が250μmの場合、オーバークラッド層は、例えば、約15μmと25μmの間のように、約5μmと約35μmの間の径方向厚さを有することができる。
【0031】
オーバークラッド層の圧縮応力の大きさは、その下で光ファイバが線引きされる張力によっても影響を受ける。光ファイバは、約200gと300gの間の線引き張力のように、約100gと400gの間の線引き張力で線引きされる。
【0032】
表2はさらに、コア半径が4.4μmであり、コアに約7重量%の二酸化ゲルマニウムがドープされている、直径が125μmの単一モード光ファイバモデルの例を挙げている。コアは実質的純シリカの内クラッド層で囲まれ、内クラッド層は続いてオーバークラッド層で囲まれ、オーバークラッド層の粘度及び径方向厚さが、またその下でファイバが線引きされる張力も、ファイバ例毎に様々に変えられている。表2に報告される例のそれぞれについて、内クラッド層に対するオーバークラッド層の粘度比は、ほぼ内クラッド層の軟化点である、約1650℃の温度で決定した。この温度におけるそれぞれのファイバ例の内クラッド層の粘度は約3.981×10ポアズ(3.981×10Pa・秒)である。表2に報告されるような内クラッド層とオーバークラッド層の軟化点の間の差は、その大きさ(℃)だけオーバークラッド層の軟化点が約1650℃より低くなっているとも理解することができる。
【表2】

【0033】
表3は、直径が250μmでコアが約190μmの直径を有するように作製された、多モード光ファイバの例を挙げている。実質的に純粋なシリカからなるコアが、ホウ素及びフッ素が共ドープされた、オーバークラッド層に囲まれている。
【表3】

【0034】
表3の光ケーブルに対する径方向位置の関数としての応力が図3に示される(図3において負の値は圧縮応力を示す。言い換えれば、圧縮応力の大きさは図3に示される負値の絶対値である)。図3から分かるように、約30μmの径方向厚さを有するオーバークラッド層は、例31におけるように、線引き張力が300gより大きい場合、150MPaより大きな圧縮応力を有する。対照的に、(本質的に対照例である)例32〜35について図3に示されるように、線引き張力が小さくなると圧縮応力は100MPaより小さい。
【0035】
好ましい実施形態において、表3に示される実施形態に対応する光ファイバのオーバークラッド層は、約5重量%と約1重量%の間のホウ素及び2重量%と1重量%の間のフッ素のように、さらには約3重量%と1重量%の間のホウ素及び1.5重量%と1重量%の間のフッ素のように、約12重量%と1重量%の間のホウ素及び2.5重量%と1重量%の間のフッ素をドープすることができる。
【0036】
少なくとも100MPaの圧縮応力を有するオーバークラッド層を有することにより、本明細書に開示される光ファイバは向上した機械的特性、特に向上した機械的強度を有することができる。例えば、そのような光ファイバは高い引張強さを有すると予測され得る。比較のため、そのようなオーバークラッド層を有していない通常の光ファイバは、25MPa未満のような、かなり小さい外側圧縮応力しか有しておらず、かなり低い引張強さを有するであろう。
【0037】
別途に明示されない限り、本明細書に述べられるいかなる方法もその工程が特定の順序で実施されることが必要であると解されることは全く想定されていない。したがって、方法に関する特許請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に挙げていないか、あるいは、そうではなくとも、工程が特定の順序に限定されるべきであると特許請求項または説明に特に言明されていない場合には、いかなる特定の順序も暗示することは全く考えられていない。
【0038】
本発明の精神または範囲を逸脱することなく様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。開示された、本発明の精神及び本質を組み込んでいる実施形態の、改変、組合せ、部分組合せ及び変形が当業者には浮かぶであろうから、本発明は添付される特許請求項及びそれらの等価形態の範囲内の全てを含むと解されるべきである。
【符号の説明】
【0039】
10,10' 光ファイバ
12,12' コア領域
14 内クラッド層
16,16' オーバークラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、前記コアを囲んでいる内クラッド層及び前記内クラッド層を囲んでいるオーバークラッド層を有する光ファイバにおいて、前記オーバークラッド層が少なくとも100MPaの圧縮応力を有することを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記オーバークラッド層の軟化点と前記内クラッド層の軟化点の差が40℃より大きいことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記オーバークラッド層の径方向厚さが、前記光ファイバの径方向厚さの約3%から約30%であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
コア及び前記コアを囲んでいるオーバークラッド層を有する光ファイバにおいて、前記オーバークラッド層が少なくとも100MPaの圧縮応力を有することを特徴とする光ファイバ。
【請求項5】
光ファイバの作製方法において、前記方法が、
光ファイバを光ファイバプリフォームから線引きする工程、
を含み、
前記光ファイバが、コア、前記コアを囲んでいる内クラッド層及び前記内クラッド層を囲んでいるオーバークラッド層を有し、
前記オーバークラッド層が少なくとも100MPaの圧縮応力を有する、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521516(P2013−521516A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555166(P2012−555166)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2011/026154
【国際公開番号】WO2011/106585
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】