説明

機械的特性が異なる複数の領域を有する植込み型拡張式医療装置およびその製造方法

マルテンサイト相として装置(10)の選択した領域とオーステナイト相として選択した領域とを有する植込み型拡張式医療装置(10)。マルテンサイト領域は生体内で擬塑性挙動をする部分であり、生体内の身体条件下にて回復することのない変形をすることが可能である。これに対して、オーステナイト領域は生体内で超弾性挙動をする部分であり、変形時、または受けた歪みを解放された時点で、事前にプログラムされた構成を回復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、植込み型拡張式医療装置に関し、より詳細には、哺乳動物の身体内における解剖学的経路の開通性を修復および維持するために用いられる植込み型内腔内ステント、カバードステント、ステントグラフト、およびグラフトに関する。多様な内腔内植込み型医療装置によりこれまで享受してきた劇的な成功は主に、その装置を、患者の外傷を大幅に削減し、侵襲性を最低限に抑える技術で送達できるようになったことによるものである。内腔内に送達される植込み型医療装置には数多くの種類があるが、本発明は特に、侵襲性を最小限に抑えた送達に適する第1の小さい方の直径から解剖学的経路の開通性の修復および維持に適した第2の拡大直径まで拡張可能な略管状装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植込み型拡張式内腔内装置で最もよく使用されている種類がステントである。ステントは通常、閉塞性および動脈瘤疾患または外傷の治療に使用され、典型的に、通常は周方向部材と長手方向部材とが格子状に配列されてなる略管状構造の骨組みをしている。その周方向部材により通常、ステントは第1の直径から第2の直径へと径方向に拡張し、その長手方向部材により、円筒強度および長手方向の可撓性を得られるようになっている。当技術分野ではステントグラフトまたはカバードステントと呼ばれる、こうしたステントの変形型は、グラフトでカバーされたステントまたは他構造の骨組みからなる。ステントグラフトは、腹部大動脈瘤を取り除く場合など、もっぱら導管を形成するためだけを目的として通常使用される装置であり、カバードステントは、冠動脈疾患で冠動脈の開通性を修復するなど、閉塞状態の治療に通常使用される装置である。従来のステントグラフトおよびカバードステントは、ポリエステルや延伸ポリテトラフルオロエチレンなどのポリマー製カバーを使用しており、このカバーは、棘や縫合によりステントに固定されているか、ステントまたは反対側のグラフト表面に接着されてステント上に保持されている。
【0003】
近年、径方向に拡張可能である金属製グラフトが開示されている(例えば、特許文献1および2参照。)。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれており、孔の幾何変形によりグラフトが径方向に拡大できる一定パターンの微細孔を有するニチノール製薄膜グラフトを開示している。
【0004】
心血管装置は、特に、脈管の開通性を維持し、その脈管系の再閉塞を防止できるものでなければならない。脈管の開通性を修復および維持するように設計された植込み型心血管装置には主に2種類がある。第1の種類は、装置を径方向に膨らませるために外部から力を印加する必要のあるバルーン拡張式装置である。第2の種類は、その装置固有に備わっている機械的または材料上の特性に基づいて、径方向に膨らむ自己拡張式装置である。この場合、束縛力を除去しなければならないが、径方向の膨らみのために外力を印加する必要はない。自己拡張式装置には主に2つの亜類型がある。これに対する第1の亜類型は、小さい方の送達用直径に装置を維持するために印加された束縛力から弾性的に回復する、316Lステンレス鋼などの以前より使用されている弾塑性材料で製作された装置からなる。こうした以前より使用されている弾塑性材料に典型的に伴う正規化された歪みは、通常1%未満である。第2の亜類型は、一定の熱加工条件を受けるとその形状を回復する形状記憶材料または超弾性材料で製作された装置からなる。この材料の場合、歪みが1%を大幅に上回っても回復可能である。
【0005】
既存の自己拡張式ステントおよびその設計における主な課題が、それに固有のバネ性能にあることは皮肉である。現在の自己拡張式ステントは、実際には、その長手方向軸方向に弾性的に変形可能である。このため、この装置は、所期の生体内部位に配置するために必要な、蛇行した内腔内経路を長手方向に曲がりながら縦走することができるのである。また、この装置が弾性に富むことから、固有のバネ付勢がかかり、装置の普段の構造、すなわち線形軸方向構造では歪みゼロの状態となる。したがって、従来の自己拡張式ステントが長手方向に屈曲すると、正の歪みを呈し、曲がっていない、すなわち歪みゼロの形態に回復しようとする。この種の装置が、血管の幾何形状に追従させようとして真直ぐではない血管内に植え込まれると、植え込まれた装置は、長手方向に歪んだ形態となり、脈管壁に対して常に不均衡な応力をかけることになる。脈管壁に常に応力がかかると、最終的には脈管が損傷して臨床アウトカムが脅かされるおそれがある。
【0006】
従来のステント設計では、ステントの構造部品の幾何学パターンを変更することにより、その固有の長手方向のバネ付勢を制御しようとしてきた。しかし、当技術分野では、植込み型装置の製作に使用する材料の選択領域の機械的特性を変更することには、これまでほとんど焦点が当てられてこなかった。装置材料の機械的特性を選択的に変更することにより、その装置に、塑性または擬塑性変形を意図する領域と弾性または擬弾性変形を意図する領域とを設けることができる。そこで、本発明によれば、単一の自己拡張式装置内に、所期機能性にしたがって機械的特性に違いのある複数領域が得られる。
【0007】
本明細書でいう用語「弾性変形」とは、荷重を加えられて生じ、その荷重が除去されると完全に回復可能な、以前より使用されている金属材料の変形である。以前より使用されている金属の弾性限界は通常、1%未満の歪みである。
【0008】
本明細書でいう用語「弾性変形」とは、荷重を加えられて生じ、その荷重が除去されても、結合が破断されているために完全に回復できない、以前より使用されている金属材料の変形である。
【0009】
本明細書でいう用語「弾塑性」とは、弾性変形も塑性変形もできる材料を意味するものとして意図されている。
【0010】
本明細書でいう用語「擬弾性変形」とは、荷重を加えられて生じ、その荷重が除去されると完全に回復可能な変形であって、その限界が以前より使用されている金属の弾性限界より大幅に大きいことを特徴とする変形である(ニチノールの場合、8%の歪み)。この現象は、除荷によって元に戻ることのできる、荷重または応力に誘起される固体の相変態により起こるものである。
【0011】
本明細書でいう用語「擬塑性変形」とは、荷重を加えられて生じ、変形から完全に回復するために、加熱など、除荷以外に何らかの作用を必要とする変形である。擬塑性変形において、結合は破断されていないが、マルテンサイト状態のニチノールの場合、その再配向または非双晶化が発生している。
【0012】
本明細書でいう用語「擬似金属」および「擬似金属材料」とは、生体適合性金属材料と実質的に同じ生物学的反応および材料特性を呈する生体適合性材料である。擬似金属材料の例として、例えば、複合材料、セラミックス、クォーツ、およびホウケイ酸塩が挙げられる。複合材料は、セラミックス、金属類またはポリマー類から製作されたさまざまな繊維のいずれかで強化されたマトリックス材料で構成されている。その強化繊維が、その材料の一次的荷重坦体であり、このマトリックス要素が荷重を繊維から繊維へと伝達する。マトリックス材料の強化は、さまざまな方法で実施可能である。繊維は、長繊維でも短繊維でもよい。この強化を粒子の形態で行ってもよい。複合材料の例として、炭素繊維、ボロン繊維、炭化ホウ素繊維、炭素および黒鉛繊維、炭化けい素繊維、鋼繊維、タングステン繊維、黒鉛/銅繊維、チタン、炭化けい素/チタン繊維で製造されたものを挙げられる。
【0013】
fを超える温度にて故障(オーステナイト変態終了)まで試料を絶えず採り続けて得られる、オーステナイト状態のニチノールに対する応力歪み曲線は、次の領域に分けられる。すなわち、オーステナイトの弾性変形、オーステナイトから応力誘起マルテンサイトへの擬弾性変形、応力誘起マルテンサイトの弾性変形、応力誘起マルテンサイトの塑性変形、および破砕である。応力誘起マルテンサイトの塑性変形開始前であればいずれの時点で除荷しても、この変形は完全に回復する。
【0014】
ニチノールは、Mfを下回る温度に引き下げられ(マルテンサイト変態終了)、それに引き続いてAsを下回る温度に保持されると(オーステナイト変態開始)、熱誘起マルテンサイト状態となる。この材料が、熱誘起マルテンサイト状態にありながら引き続きASを上回る温度に拘束されつつ、十分に変形しても(0.5%を超える歪み)、この材料は熱誘起マルテンサイト状態にはあるが、応力誘起マルテンサイト状態ではないと考えられる。Asを下回る温度にて故障まで試料を絶えず採り続けて得られる、マルテンサイト状態のニチノールに対する応力歪み曲線は、次の領域に分けられる。熱誘起マルテンサイトの弾性変形、非双晶化による熱誘起マルテンサイトの擬塑性変形、非双晶化による熱誘起マルテンサイトの弾性変形、非双晶化による熱誘起マルテンサイトの塑性変形、および破砕である。非双晶化による熱誘起マルテンサイトの塑性変形開始前であればいずれの時点で除荷しても、Afより高温に加熱すれば、この変形は完全に回復する。
【0015】
【特許文献1】2002年4月29日出願の、同時係属中であり、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/135,316号明細書
【特許文献2】2002年4月29日出願の、同時係属中であり、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/135,626号明細書
【特許文献3】2002年8月2日に出願の、同時係属中であり、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/211,489号明細書
【特許文献4】2001年7月24日に発行された米国特許第6,264,687号明細書
【特許文献5】2002年7月30日に発行された米国特許第6,425,855号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ニッケル−チタン合金類の温度依存型機械的特性を制御するために当技術分野で用いる標準工程は、析出硬化型加熱処理である。ニッケル−チタン装置を形成して300〜500℃の温度にさらす加熱処理にかけると、ニッケルを多く含有する析出物が溶体から得られる。すなわち、結晶粒から粒間境界内へと析出する。その結果、結晶粒に含有されるチタン量の純増加が得られ、それに伴って装置の遷移温度が上昇する。所期機能性に基づいて、装置の複数領域の機械的特性を選択的に変更する析出硬化型加熱処理は、これまでのところ用いられたことがない。また、装置の所期機能性に基づいて、前駆物質のブランク内および形成した装置内の局部的バルク化学量を制御するために真空蒸着を用いることもこれまでのところ、医療装置製作の当技術分野においては知られていない。
【0017】
従来の植込み型内腔内装置では主に、その機械的特性および所期の機能性に影響を与えるには、装置構造部の幾何形状が変更される。この手法とは全く逆に、本発明では、内腔内送達中、および送達された生体内部位に配置された時点における装置の動作を変更するために、装置内の機能性領域の応力歪み特性を含む機械的特性を選択的に変更することにより、その解析パラダイムを変更する。植込み型装置の製作に使用する材料の複数領域の機械的特性を選択的に制御することにより、生体内で弾性、擬弾性、塑性、および/または擬塑性挙動をする装置を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本植込み型装置は、塑性変形可能である、または十分にマルテンサイト状態であることにより生体内で擬塑性的に挙動をする領域と、弾性変形可能である、または十分にオーステナイト状態であることにより生体内で擬弾性的または超弾性的に挙動をする領域とを有することを特徴とする。したがって、本装置は、略塑性である機能性領域と、略弾性である機能性領域とを有する。当業者であれば、本発明が、何らかの幾何学的コンプライアンスを必要とするさまざまな種類の植込み型医療装置に対して広く適用可能であることが明らかであろうが、理解しやすくするために、以下では本発明を心血管装置、すなわちステント、ステントグラフト、およびグラフトに関して説明する。
【0019】
例えば、ステント、ステントグラフト、カバードステント、またはグラフトの場合、いずれも、生体内にて周方向に拡張でき、かつ内腔内送達用に長手方向に可撓性である性能を有していなければならない。周方向に拡張する構造部材を、弾性、擬弾性または超弾性材料で形成し、周方向に拡張する構造部材の弾性、擬弾性または超弾性膨張ができるように、この構造部材にヒンジまたは関着領域などの領域を設けることができる。別法として、同じ周方向に拡張する構造部材に、Af値が体温(すなわち37℃)を下回る、または体温に極めて近いために生体内で弾性的または擬弾性的に挙動する領域を設けてもよい。この周方向に拡張する構造部材の隣接対を相互接続する一連の長手方向部材を設けることにより、長手方向に可撓性を持たせる。
【0020】
本発明によれば、この植込み型医療装置を、弾塑性、形状記憶または擬弾性の特性を有する金属材料または擬似金属材料で製作すると望ましい。本発明の好適な一態様において、この植込み型装置は形状記憶合金で製作された内腔内ステントであり、複数の相互接続された構造要素を含む。この構造要素のそれぞれは、形状記憶材料で製作され、複数のオーステナイト領域およびマルテンサイト領域を有する。マルテンサイト領域は、十分にマルテンサイト状態であるため、生体内にてマルテンサイトによる機械的特性で動作し、オーステナイト領域は、十分にオーステナイト状態であるため、生体内にてオーステナイトによる機械的特性で動作する。このマルテンサイト領域は、変態への条件が揃えばオーステナイト相へと相変態できるが、生体内の条件下ではマルテンサイト状態での挙動を呈するように形成されている。このマルテンサイト領域は十分にマルテンサイト状態であり、このため、生体内条件下で変形事象から回復することはない。マルテンサイト領域の条件を、その生体内動作条件にて十分にマルテンサイト状態を保って生体内で擬塑性的に挙動するように、選択的にアニール処理を施す、または選択的に形状記憶合金の局部的バルク化学組成をコントロールすることにより、整えることができる。オーステナイト領域は、体温にて十分にオーステナイト状態であるため、あらゆる変形から実質的に回復する。
【0021】
具体的に植込み型内腔内ステントを挙げると、ステントは通常、径方向に膨張できると同時にある程度長手方向に可撓性を有する幾何学パターンに配置された構造部材を有する。径方向に膨張させるため、現在の多くのステント設計では、隣接する線形部材を相互接続しているヒンジ部分を中心にその線形部材の配向を変えることにより径方向に拡大する周方向構造が用いられている。当技術分野ではこの周方向構造の幾何学的配列として無数にさまざまなものがあるが、その例として、ジグザグ形状、正弦波形状、波形状、および穴あき形状が挙げられる。ただしこれに限定するわけではない。長手方向可撓性は通常、隣接する周方向構造体を間隔をあけて配置し、その隣接対の間に相互接続部材を設けることにより得られる。この場合も同様に、当技術分野ではこの相互接続部材として無数にさまざまな幾何学的配列が知られているが、その例として、直線、正弦波形状、曲線形状、ジグザグ形状、波形状が挙げられる。ただしこれに限定するわけではない。
【0022】
本発明の一態様により、複数のヒンジストラット部材を有するステントが得られる。このストラット部材は、互いに端部と端部とを突き合わせて配置されて、頂部および谷部を設けたジグザグ形状、正弦波形状または波形状構造の複数の周方向リングを形成したものである。この周方向リングの隣接している複数対を、複数の相互接続部材が相互接続している。このリング様周方向支持体は、略U字形または略V字形拡張用ヒンジ部材によりストラット部材の対向端部に相互接続された、個々の線形ストラット部材で構成されている。この個々の相互接続部材に、好ましくは、その対向端部の間に位置するヒンジ部材を設ける。本ステントは、特定のヒンジ領域がマルテンサイト領域であり、残りのヒンジ領域がオーステナイト領域となるように構成されたものである。この構成は概して、特定のヒンジ領域またはストラットの一部分同士が接続される移行地点が超弾性の特徴を有し、他のヒンジ領域が擬塑性変形可能な特徴を有するようにステントを設計することで実現される。
【0023】
本発明の一方法によれば、本植込み型装置を好ましくは、装置のヒンジ領域の機械的特性に影響を与えるように、そのヒンジ領域を選択的に加熱処理することにより形成する。本装置を、従来の鍛造材料により製作することができる。または、ナノ製造技術を用いて製作してもよい。文献にさらに詳しく記載されているように、金属や擬似金属などの装置形成材料を基板上に真空蒸着して、薄膜材料を形成することができ、この薄膜材料は、パターンマスクを介して蒸着させるなどして蒸着時にパターン化する、またはフォトリソグラフィやエッチングにより、蒸着後にパターン化することができる(例えば、特許文献3参照。)。この特許は参照により本明細書に組み込まれている。マルテンサイト領域は、装置の複数領域を選択的に析出アニール処理することにより、または真空蒸着処理時に局部的にその領域の化学工学量論的組成(chemical stoichiometry)を制御することにより形成することができる。
【0024】
複数の拡張用ヒンジ、複数の長手方向屈曲用ヒンジ、および複数の中間ヒンジをすべて、互いにまたはストラット部材と異なる材料および/または機械的特性にすることができる。例えば、本発明の一実施形態によれば、相互接続部材用ヒンジを、十分にマルテンサイト状態に製造し、これにより、これが擬塑性変形すると、装置が回復不能に長手方向に屈曲して、不要な脈管の損傷を最小限に抑えるようにすることができる。また、拡張式ヒンジについては、これを十分にオーステナイト状態とし、これにより装置を自己拡張式とする。
【0025】
したがって、本発明による植込み型医療装置は、その機能性領域によって異なる材料上の特性および/または機械的特性を有する。1例として、マルテンサイト領域により擬塑性変形が可能となり、オーステナイト領域により、生体内での自己拡張を目的とする形状記憶による変形または超弾性変形が可能となる。したがって、ステント、ステントグラフトまたはグラフトなどの植込み型装置の具体的な幾何学的配列および機能性により、生体内にて装置のどの領域がマルテンサイト状態で動作をし、生体内にてどの領域がオーステナイト状態で動作をするかが決まる。
【0026】
異なる機械的特性を有する複数領域を備えた植込み型内腔内装置を提供しようとした1例として、超弾性関着部分を有するバルーン拡張式多積層型ステントが記載されている(例えば、特許文献4および5参照。)。このステントは、塑性変形可能な周方向ステント部分と、その周方向ステント部分の隣接対の間に設けられた超弾性相互接続部分とを有するバルーン拡張式ステントである。このステント構造は、その相互接続部分において、超弾性材料の外側層およびステンレス鋼の内側層を含む多積層型であり、内側のステンレス鋼層が取り除かれると超弾性材料の単層のみが暴露される。超弾性相互接続部分は、装置が脈管系の蛇行内を縦走するにしたがって弾性的に追従するため、腔内の送達が容易となる。しかし、この装置は自己拡張式ではない上、超弾性構成部分は単に、塑性変形可能であったはずの装置に弾性構成部分を追加することで長手方向の可撓性を高めるために用いられている。この超弾性相互接続部材からは、これが蛇行している部位に植え込まれた後も、血管壁に対する有害な弾性反跳が起こることに変わりはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は概して、自己拡張式内腔内装置およびその製造方法に関し、より詳細には、複数の構造支持部材で形成された略管状構造を有し、その構造支持部材が幾何学的に変形することにより幾何学的に拡張する、内腔内ステントなどの植込み型自己拡張式医療装置に関する。
【0028】
この内腔内装置は、生体適合性金属材料または生体適合性擬似金属で製造される。好ましくは、この内腔内装置を、周方向に自己拡張し、その長手方向軸方向に塑性または擬塑性可撓性を呈し、長手方向軸方向に屈曲した際に生じる長手方向弾性反跳が無視できるほど、すなわち20%未満となるように製作する。本発明での使用に適した生体適合性材料の例として、例えば、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、ケイ素、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、およびジルコニウム−チタン−タンタル合金、ニチノール、およびステンレス鋼を含むこれらの合金が挙げられる。本発明に対して目下考えられる最良の形態によれば、本植込み型医療装置は、ニッケル−チタン合金類すなわちニチノールなどの形状記憶材料で製作される。
【0029】
図1〜図3を参照すると、本発明による内腔内ステント10が例示されている。内腔内ステント10は、複数のストラット部材12を有しており、この部材はそれぞれ、第1のヒンジ部材14により隣接ストラット部材12と相互接続されている。この複数のストラット部材12は、第1のヒンジ部材14により互いに端部と端部とを突き合わせて相互接続されて、ジグザグ形状、正弦波形状または波形状の配列をなしており、第1のヒンジ部材が連続的にその配列の頂部および谷部となっている。第1のヒンジ部材14により相互接続されたストラット部材12の配列全体が、周方向リング部材11を形成している。
【0030】
複数の周方向リング部材11は、周方向リング部材11の隣接対同士を相互接続する相互接続部材16により相互接続されている。接続点18が、相互接続部材16を周方向リング部材11の第1のヒンジ部材14に相互接続している。この相互接続部材を、略線形幾何形状にしても、曲線形状にしても、V字またはU字形状にしても、正弦波形状にしてもよい。相互接続部材16の少なくとも幾つか、好ましくは相互接続部材16のすべてまたは実質的にすべてに、さらに、その長手方向に沿った位置に少なくとも1つの第2のヒンジ部材20を設ける。
【0031】
本発明の好適な一実施形態によれば、内腔内ステント10はニッケル−チタン合金で製作され、第1のヒンジ部材14は、歪みゼロかつ体温の条件にて十分にオーステナイト状態であるため、生体内で擬弾性的に挙動する。したがって、第1のヒンジ部材14は生体内にて、周方向に自己拡張式に動作して、周方向リング部材11を直径方向に、図1および図2に示す送達用小直径から図3に示す拡大直径へと拡張させる。第2のヒンジ部材20を好ましくは、十分にマルテンサイト状態として、生体内条件下にて擬塑性的に挙動させ、体温を上回るAs遷移温度を持たせる。第2のヒンジ部材20が生体内にて擬塑性的に変形することにより、装置が長手方向に可撓性となる上、周方向リング部材の隣接対の間で応力が移行させずに上手く絶たれ、第2のヒンジ部材20は曲げ荷重が解放された後も長手方向に変形可能な状態を保つことになる。
【0032】
本発明の好適な一実施形態によれば、第1のヒンジ部材14は、生体内条件下にて十分にオーステナイト状態であるため、装置の非拘束構造の少なくとも約90%、好ましくは、少なくとも約95%を回復させることができる。さらに、第2のヒンジ部材20は、生体内条件下にて十分にマルテンサイト状態であるため、変形荷重を印加されると1%未満の実質的に回復不能な変形を呈する。第2のヒンジ部材20を備えた相互接続部材16それぞれに好ましくは、マルテンサイト−オーステナイト相変化を持たせて、第2のヒンジ部材20をほぼマルテンサイト状態とし、それ以外の相互接続部材16のヒンジでない領域をほぼオーステナイト状態とする。第2のヒンジ部材20を相互接続部材16の1領域と見なすことができるため、相互接続部材16の長手方向に沿って、異なる機械的特性および材料特性があることが理解されよう。
【0033】
別法として、第2のヒンジ部材20を、十分にオーステナイト状態として生体内にて擬弾性的に挙動するように構成することができる。第2のヒンジ部材20が擬弾性的に挙動すると、その形状記憶式自己拡張も可能となるため、例えばステント10が周方向に拡張して生じるあらゆる短縮分を補償するために、第2のヒンジ部材20を使用することができる。
【0034】
添付した図には内腔内ステントを示しているが、この具体的装置およびその具体的幾何形状は例示のみを目的としており、植え込まれた時点で幾何学的変形が必要な、ステントグラフト類、カバードステント類、グラフト類、塞栓用フィルタ類、弁類、オクルダ類など、他の種類の植込み型自己拡張式医療装置も本発明により具体的に考えられることを理解されたい。事実上、あらゆる種類の内腔内自己拡張式植込み型医療装置に本発明を活かすことができる。内腔内自己拡張式装置が周方向拡張に依存しており、送達および移植用に長手方向に可撓性である構成部分を有している限り、塑性または擬塑性、および弾性または擬弾性として異なる特性の機能領域を設けられていることは、装置の送達性、内腔外傷の削減、装置の生体内作業を改善する一助となる。また、当業者であれば、具体的装置に対する指定に応じて、その装置の代わりとなる幾何学的配列は、装置に対するその具体的指定、機能および特性により決まることを理解されたい。
【0035】
図4は、一定温度における典型的応力歪み曲線であり、同一応力歪み条件下における、装置のマルテンサイト領域およびオーステナイト領域の応力歪み挙動をそれぞれ曲線Mおよび曲線Aに示したものである。所与の印加応力下において、マルテンサイト領域およびオーステナイト領域を挙動させると、大きく異なる歪みが材料内に生じることが容易に理解されよう。例えば、オーステナイト相の応力歪み曲線、曲線Aは、600MPaのプラトーを経て8%歪みまで負荷が加えられても、除荷すれば、300MPaでプラトーとなった後、0%歪みまで完全に回復可能である。これに対して、マルテンサイト相の応力歪み曲線は、負荷を加えると、約200MPaでプラトーとなり、約400〜600MPaで負荷ピークとなった後、歪みが8%となり、この材料を除荷しても、約7%の残留歪みが材料に残る。したがって、応力−歪みおよび温度を同一の条件にしても、マルテンサイト領域は擬塑性的に挙動し、オーステナイト領域は超弾性的に挙動する。
【0036】
本発明による方法50を図5に示す。本発明を実施するための最良の形態によれば、形状記憶材料を真空蒸着して植込み型医療装置を製作する一般的な方法が、文献に記載されている(例えば、特許文献3参照。)。この特許内容を本明細書内に引用したものとする。本方法によれば、ステップ52において、ニチノールなどの形状記憶材料を基板上に真空蒸着する。この真空蒸着を好ましくは、ニッケル−チタン合金ターゲットまたはニッケルおよびチタン成分を含むターゲットから基板上へのスパッタリングとする。この基板は、平面、円筒状、または植込み型医療装置への所望に応じて他の幾何学形状のいずれでもよい。ステップ54において、基板上の膜にパターンを施す。このパターンは、パターンマスクを介して選択的に蒸着することで形成されるものであっても、エッチングなどにより、蒸着膜から不要な領域を選択的に除去することで形成されるものであってもよい。パターンを形成後、マルテンサイト領域を、ステップ56にて加熱処理によってそのパターン内に形成する、あるいは、ステップ58にてある領域の化学工学量論的組成を変更することによって形成することができる。ステップ56では、半田ごてなどの点源を介して当てる抵抗加熱法やレーザによる焦点的加熱処理などにより、焦点的加熱を所望領域に当てることにより、局部加熱処理を行ってもよい。加熱処理により、結晶粒からニッケルが析出する。最大析出率を得るには、425℃にて約5から10分の加熱処理が有用であることがわかっている。逆に、これより高い温度で装置領域を加熱処理して、ニッケルを結晶粒構造の溶体内に析出させ、これにより、その化学工学量論的組成を変更し、加熱処理した領域の遷移温度を変更することができる。約500℃を超える加熱処理を約5から10分施すと、ニッケルがニッケル−チタン合金の溶体内に析出し、加熱処理した領域の遷移温度を低下できることがわかっている。
【0037】
別法として、ある領域の遷移温度を上昇させて、装置の操作温度においてマルテンサイト相を優先させるために、その領域の化学工学量論的組成を、パターンの被選択領域に含有されるチタン量を増加させる、またはニッケル量を低下させることにより、変更することができる。この変更は、被選択領域に対応してマスクを介在させ、そのマスクを介して基板上にチタンを多く含有するターゲットから真空蒸着を行うことにより、実現可能である。
【0038】
蒸着時、チャンバ圧力、蒸着圧力および処理ガスの分圧を制御して、基板上への所望種の蒸着を最適化する。超小型電子機器製造、ナノ製造および真空コーティングの技術分野において知られているように、反応性ガスおよび非反応性ガスをどちらも制御し、蒸着チャンバ内に導入される不活性または非反応性気相種を通常、アルゴンおよび窒素とする。基板は、その基板上への蒸着または蒸着した材料のパターン化ができるように、静止している状態もしくは移動自在のいずれでもよく、または、これをその長手方向軸を中心に回転させる、もしくは反応器内でX−Y平面を移動させてもよい。その材料は、基板上に均一な固体膜として蒸着させても、(a)所望のパターンの正もしくは負の像を形成するために基板表面にエッチングやフォトリソグラフィ技術を施すことなどにより、基板に正もしくは負のパターンを設けて、または(b)基板に対して、静止しているか、移動自在であるかの1枚もしくは複数枚のマスクを用いることにより、基板に適用するパターンを画定してパターン化してもよい。パターンの空間的配向と、ステントを径方向に拡張した時点でステント端部が広がるのを防ぐため、ステントの近位端および遠位端にてその部分を厚くするように、ステント長さ全体にわたる材料の壁厚さを変更することなどにより、蒸着膜のさまざまな領域における材料厚さとの双方を考慮し、パターン化を用いることにより、複雑な幾何形状に仕上がるステントを得られるようにすることができる。
【0039】
種々の方法のいずれかを用いてステントを形成した後、そのステントを基板から取り出すことができる。例えば、基板を、エッチングや溶解などの化学的手段、アブレーション、機械加工、超音波エネルギーにより取り出しても良い。別法として、炭素やアルミニウムなどの材料による犠牲層を基板とステントとの間に配置して、融解、化学的手段、アブレーション、機械加工または他の適した手段によりその犠牲層を取り除いて、ステントを基板から外してもよい。
【0040】
次に、取り出したステントにアニール処理などの蒸着後処理を施して、その結晶構造を改質する、またはエッチングなどにより表面トポグラフィを改質して、ステントの血流用表面の不均一性に影響を与え、これを制御することができる。しかし、開示したステントを蒸着技術で製作すれば、機械的、電気的、熱的もしくは化学的機械加工または研磨によりステントの表面を改質するなどの、パターン化した内腔内ステントに対する蒸着後処理の必要は最小限となる、または完全になくなる。
【0041】
本内腔内植込み型装置を物理蒸着により製作することで、数多くの利点が得られる。その例として、複雑な幾何学的配列を有するステントを製作可能であること、寸法公差がオングストロームの程度の超微細なものとなること、疲れ寿命、耐食性、腐食疲労、粒間および粒内析出およびその耐食性および腐食疲労に対する効果、バルク材料組成、バルクおよび表面の材料特性、X線不透過性を制御できること、さらに、ステントの長手方向の可撓性、フープ強度、径方向の拡張挙動およびプロファイルに影響を与えるように、ステント構成要素の横方向プロファイル、Z軸方向の厚さ、およびX−Y軸方向表面積を変更できることが挙げられる。バルク材料組成を、従来通りに形成された金属類を使用する場合には実現不可能な成分画分を合金組成内に用いて調節することができる。これにより、所望の材料または機械的特性を得るために合金組成を最適にするように合金組成物を適合させられる。例えば、形状記憶および/または超弾性特性を呈するニッケル−チタン製チューブを、51.5原子パーセントを超えるニッケルを用いて製造した。これは、ニッケルが呈するプラトー応力が高いため、従来の作業技術では実現不可能である。具体的には、本願発明者らは、本発明による方法を用いて、51.5から55原子パーセントのニッケルを含むニッケル−チタン合金製チューブを製作した。
【0042】
本発明の好適な一実施形態において、本植込み型医療装置のマルテンサイト領域のAs温度を好ましくは、体温を超える温度とし、これにより、マルテンサイト領域に加わる歪みで擬塑性変形を引き起こすようにする。オーステナイト領域のAf温度は好ましくは、体温を下回る温度とし、これにより、生体内でもオーステナイト状態を保ち、身体内にて擬弾性特性を保持できるようにする。
【0043】
本植込み型装置を送達させるために送達用カテーテルを用いて装着する際、この装置をMfを下回る温度にしてから、Asを下回る温度にてカテーテル内に装着することが望ましい。こうすることにより、生体内ではオーステナイト状態となる領域も、生体内に送達されるまでは熱誘起マルテンサイト相を保つ。
【0044】
したがって、本発明は、装置の被選択領域が塑性変形可能な状態または十分にマルテンサイト状態であることにより生体内で擬塑性的に挙動し、他の領域が弾性変形可能な状態または十分にオーステナイト状態であることにより生体内で擬弾性的に挙動する植込み型拡張式医療装置を提供するものである。装置のうち周方向の拡張に関与する領域を弾性または擬弾性変形可能な状態として、生体内にて周方向の自己拡張を実現させ、同じ装置のうち長手方向の可撓性に関与する領域を塑性または擬塑性変形可能な状態として、上記解剖学的幾何形状に対して弾性反跳を起こすことなく、送達時も送達後もその解剖学的幾何形状に追従できるようにすることが好ましい。
【0045】
以上、本発明を好適な実施形態について記載してきたが、当業者であれば、本発明を、第1の小さい方の幾何形状から第2の大きい方の幾何形状へと拡張する必要のある広範囲の拡張式植込み型医療装置、および装置材料のさまざまな領域に異なる機械的特性を持たせることで利点を得られる可能性のある同医療装置に適用可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】拡張前の直径をしている、本発明による植込み型ステントを示す斜視図である。
【図2】拡張前の状態である植込み型ステントの長手方向部分を示す平面図である。
【図3】拡張後の状態である植込み型ステントの長手方向部分を示す平面図である。
【図4】装置のマルテンサイト領域に関する曲線Mと、装置のオーステナイト領域に関する曲線Aとを含む、本発明による装置の応力歪み挙動を例示する応力歪み曲線である。
【図5】本植込み型医療装置の製作方法を示す処理工程流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて相互接続された複数の構造部材と、略管状部材の壁表面を貫通する複数の隙間開口部とを有する略管状部材を含み、前記相互接続された複数の構造部材の少なくとも幾つかが、ヒンジ領域を画定する関着方式で相互接続されているため、前記略管状部材が周方向に拡張可能であると同時に長手方向に可撓性である植込み型医療装置であって、前記ヒンジ領域の少なくとも幾つかが、生体内にて弾性周方向拡張または擬弾性周方向拡張の少なくとも一方ができるように動作する第1のヒンジ領域と、生体内にて前記装置の長手方向軸に沿って塑性変形または擬塑性変形の少なくとも一方ができるように動作する第2のヒンジ領域とを含むことを特徴とする植込み型医療装置。
【請求項2】
前記略管状部材はさらに、ニッケル−チタン合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の植込み型医療装置。
【請求項3】
前記第1のヒンジ領域はさらに、生体内条件下にて十分にオーステナイト状態であることにより前記装置の非拘束構造の少なくとも約90%を回復できる領域を含むことを特徴とする請求項2に記載の植込み型医療装置。
【請求項4】
前記第2のヒンジ領域はさらに、前記略管状部材の他の部分より高い遷移温度を有することを特徴とする請求項2に記載の植込み型医療装置。
【請求項5】
a)複数の周方向自己拡張式部材と、
b)周方向自己拡張式部材の隣接対を相互接続する複数の相互接続部材と、
c)前記複数の周方向自己拡張式部材のそれぞれに備えられており、それぞれが、生体内において弾性変形または擬弾性変形の少なくとも一方により、前記装置を周方向に拡張させることのできる複数の第1のヒンジ領域と、
d)前記相互接続部材内に形成されており、それぞれが、曲げ荷重の影響を受けると、生体内にて塑性または擬塑性変形の少なくとも一方により、前記装置の長手方向軸方向に変形できる複数の第2のヒンジ領域と、
を含むことを特徴とする植込み型幾何学的拡張式略管状ニッケル−チタン製医療装置。
【請求項6】
前記複数の周方向自己拡張式部材はそれぞれさらに、前記複数の第1のヒンジ領域の1つにより両端部にて相互接続された複数の略線形構造部材を有するリング部材を含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の略線形構造部材のそれぞれおよび前記複数の第1のヒンジ領域はそれぞれさらに、生体内にて擬弾性的に挙動するように十分にオーステナイト相であるニッケル−チタン合金を含むことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の相互接続部材のそれぞれは、生体内にて弾性的動作または擬弾性的動作の少なくとも一方をするように十分にオーステナイト相である領域を有することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の周方向自己拡張式部材はそれぞれさらに、生体内にて弾性的にまたは擬弾性的に挙動できる生体適合性金属、生体適合性合金、および生体適合性擬似金属からなる群から選択される材料を含むことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の相互接続部材はそれぞれさらに、生体内にて塑性的にまたは擬塑性的に挙動できる生体適合性金属、生体適合性合金、および生体適合性擬似金属からなる群から選択される材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
a)複数の第1のヒンジ部材により相互接続されて略正弦波形状配列を形成している複数の略線形部材をそれぞれ有する複数の周方向支持部材と、
b)周方向リングの隣接対を相互接続する少なくとも1つの第2のヒンジ部材をそれぞれ有する複数の相互接続部材と
を有し、
c)生体内に導入されると、前記複数の第1のヒンジ部材が実質的にオーステナイト相となり、前記複数の第2のヒンジ部材が実質的にマルテンサイト相となることを特徴とする植込み型幾何学的拡張式内腔内ニッケル−チタン製ステント。
【請求項12】
前記複数の相互接続部材はそれぞれさらに、マルテンサイト−オーステナイト相変化部分を有する材料を含むことを特徴とする請求項11に記載の内腔内ステント。
【請求項13】
前記複数の周方向支持部材はそれぞれさらに、弾性的にまたは擬弾性的に変形可能な生体適合性金属、生体適合性合金、および生体適合性擬似金属からなる群から選択される材料を含むことを特徴とする請求項11に記載の内腔内ステント。
【請求項14】
前記複数の相互接続部材はそれぞれさらに、生体内にて擬弾性的に挙動するように十分にオーステナイト相であることを特徴とする請求項11に記載の内腔内ステント。
【請求項15】
前記複数の相互接続部材はそれぞれさらに、生体内にて擬塑性的に挙動するように十分にマルテンサイト相である形状記憶合金を含むことを特徴とする請求項11に記載の内腔内ステント。
【請求項16】
前記複数の相互接続部材はそれぞれさらに、塑性的または擬塑性的に変形可能な生体適合性金属、生体適合性合金、および生体適合性擬似金属からなる群から選択される材料を含むことを特徴とする請求項11に記載の内腔内ステント。
【請求項17】
関着部領域を有する幾何学的に拡張可能な植込み型医療装置の製造方法であって、前記関着部領域の機械的特性を選択的に変更するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記関着部領域の機械的特性を選択的に変更するステップはさらに、前記関着部領域を選択的に加熱処理するステップを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記関着部領域を選択的に加熱処理するステップはさらに、前記関着部領域に焦点的熱エネルギーを印加するステップを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記関着部領域の機械的特性を選択的に変更するステップはさらに、前記関着部領域のバルク化学組成を選択的に変更するステップを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記バルク化学組成を変更するステップはさらに、真空蒸着のステップを含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−507092(P2006−507092A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555512(P2004−555512)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/037145
【国際公開番号】WO2004/047613
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(504006054)アドヴァンスド バイオ プロスセティック サーフェシーズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】