説明

機能性ゲル状組成物用液剤及びキット

【課題】装飾性や機能性について選択自由度の高い機能性ゲル状組成物用液剤を提供する。
【解決手段】機能性成分を含む第1の液剤と装飾性成分とを含む第2の液剤とを混合することで機能性ゲル状組成物を形成可能な機能性ゲル状組成物用の液剤とし、前記機能性成分及び前記装飾性成分のいずれかと、ゲル材料及び該ゲル材料のゲル化剤のいずれかと、
を含有するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香、消臭、抗菌及び防虫等の機能を有する機能性ゲル状組成物用の液剤及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消臭・芳香のための組成物としては、消臭成分や芳香成分を含んだ液状又はゲル状の組成物がある。例えば、着色剤などの不溶性の装飾性成分や消臭性成分を含有するゲル化組成物がある(特許文献1)。また、透明性に優れるゲル状の芳香・消臭剤組成物がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−73926号公報
【特許文献2】特開2003−290331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうしたゲル状組成物では、予め決められた組成でゲルの状態で提供されている。すなわち、通常、所定の芳香剤成分のほか、装飾性を考慮して適当な着色性成分等を含んだ組成となっていることが多い。しかしながら、製造工程を簡略化等する観点から、芳香性成分と装飾性成分との組み合わせを多種類化するのが困難であり、一つの芳香性成分に二種類以上の色等が割り当てられることはない。一方、ゲル状組成物の組成をオーダーメイド化すれば、個人の嗜好に合わせて色などの装飾性や芳香性を選択可能とすることができるが、工業的な生産レベルでは実質的に不可能である。さらに、一般に、こうしたゲル状組成物は、室内に配置されて使用されるが、その場合に、個人の必要に応じて複数の機能を一つの組成物で実現するようなゲル状組成物も現状においてはない。
【0004】
そこで、本発明は、装飾性や機能性について選択自由度の高い機能性ゲル状組成物のための液剤及びそのためのキットを提供することを一つの目的とする。また、本発明は、2種類以上の機能性成分を個別に選択可能なゲル状組成物、そのための機能性ゲル化剤キット及び該キット用の液剤を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、液剤であって、前記液剤は、機能性成分を含む第1の液剤と装飾性成分とを含む第2の液剤とを混合することで機能性ゲル状組成物を形成可能な機能性ゲル状組成物用の液剤であり、前記機能性成分及び前記装飾性成分のいずれかと、ゲル材料及び該ゲル材料のゲル化剤のいずれかと、を含有する、液剤が提供される。
【0006】
本発明の液剤は、前記機能性成分を含有することができ、また、前記ゲル化剤を含有することができる。
【0007】
また、本発明の液剤は、前記装飾性成分を含有することができ、前記ゲル材料を含有することができる。
【0008】
前記機能性成分は、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、殺虫剤、防虫剤、防カビ剤及び抗菌剤から選択される1種又は2種以上とすることができる。また、前記装飾性成分は、色剤及び光輝性粒子から選択される1種又は2種以上とすることができる。前記第1液が前記ゲル化剤を含有し、前記第2液がゲル材料を含有することができる。
【0009】
また、前記ゲル材料はポリビニルアルコールであり、前記ゲル化剤は、ホウ酸ナトリウム又はホウ砂でとすることができる。前記第1の液剤と前記第2の液剤とを混合したとき、透明又は不透明のゲル状体を形成するようにすることもできる。さらに、前記機能性ゲル状組成物は、ゲル材料を2.0質量%以上4.0質量%以下含有し、前記ゲル化剤を0.25質量%以上0.35質量%以下含有することができる。さらにまた、等量の前記第1の液剤と前記第2の液剤とを混合したとき、前記機能性ゲル状組成物を形成可能とすることもできる。
【0010】
本発明によれば、機能性ゲル状組成物キットであって、機能性成分を含む第1の液剤と、
装飾性成分を含む第2の液剤と、を備え、前記第1の液剤と前記第2の液剤とを混合することにより前記機能性ゲル状組成物を形成可能である、機能性ゲル状組成物キットが提供される。
【0011】
本発明のキットにおいては、前記第1の液剤がゲル化剤を含有し、前記第2の液剤がゲル材料を含有することができる。また、ほぼ等量の前記第1の液剤と前記第2の液剤とを含むキットとすることもできる。さらに、2種類以上の前記第1の液剤及び/又は2種類以上の前記第2の液剤を含むこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、機能性成分を含む第1の液剤と装飾性成分とを含む第2の液剤とを混合することで機能性ゲル状組成物を形成可能な機能性ゲル状組成物用の液剤であり、前記機能性成分及び前記装飾性成分のいずれかと、ゲル材料及び該ゲル材料のゲル化剤のいずれかと、
を含有する、液剤に関し、また、本発明は、こうした液剤を含む機能性ゲル状組成物キットに関する。
【0013】
本発明の液剤、すなわち、前記機能性成分を含有する液剤(以下、単に第1の液剤という。)と前記装飾性成分を含有する液剤(以下、単に第2の液剤という。)とは、互いに混合することで、機能性成分と装飾性成分とを含有する機能性ゲル状組成物を得ることができる。したがって、第1の液剤及び第2の液剤として、所望の機能性成分及び所望の装飾性成分を含有するものを選択することで、機能性や装飾性に関して選択自由度の高い、嗜好に合致した機能性ゲル状組成物を提供することができる。すなわち、こうした液剤によれば、多様な装飾性を有する機能性ゲル状組成物を、機能性と装飾性との組み合わせについて個別の組成を準備し個別に製造することなく簡易に提供することができる。
【0014】
また、本発明の機能性ゲル状組成物用キットは、前記第1の液剤と前記第2の液剤とを含んでおり、これらの液剤を組み合わせてキット化することにより、機能性成分と装飾性成分とについての多様な組み合わせの機能性ゲル状組成物を簡易に提供することができるようになる。以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の第1の液剤及び第2の液剤は、それぞれ機能性成分及び装飾性成分を含有し、第1の液剤と第2の液剤とを混合することで機能性ゲル状組成物を形成できるようになっている。第1の液剤及び第2の液剤は、それぞれ液体(液体として取り扱うこと(混合、撹拌等の操作)ができる程度の流動性を有する)であり、これら2剤を混合することで、ゲル状ないし固形状となるように構成されている。
【0016】
(第1の液剤)
第1の液剤に含まれる機能性成分は、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、防虫剤、殺虫剤、防カビ剤及び抗菌剤などが挙げられ、これらの1種又は2種以上含むことができる。また、個々の機能性成分の範囲内においても1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
芳香剤としては、揮散性を有し、芳香性を有する物質であれば特に限定されないで、公知の芳香剤から適宜選択して用いることができる。具体的には、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ラバンジン油、ベルガモット油、パチュリ油、シダーウッド油等の天然精油;α−ピネン、β−ピネン、リモネン、p−サイメン、ターピノレン、α−ターピネン、γ−ターピネン、α−フェランドレン、ミルセン、カンフェン、オシメン等の炭化水素テルペン;ヘプタナール、オクタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、サリシリックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シトロネラール、ハイドロキシシトロネラール、ハイドロトロピックアルデヒド、リグストラール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、リラール、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン等のアルデヒド類;エチルフォーメート、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルイソブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、イソブチルアセテート、イソブチルイソブチレート、イソブチルブチレート、イソブチルイソバレレート、イソアミルアセテート、イソアミルプロピオネート、アミルプロピオネート、アミルイソブチレート、アミルブチレート、アミルイソバレレート、アリルヘキサノエート、エチルアセトアセテート、エチルヘプチレート、ヘプチルアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、エチルオクチレート、スチラリルアセテート、ベンジルアセテート、ノニルアセテート、ボルニルアセテート、リナリルアセテート、安息香酸リナリル、エチルシンナメート、ヘキシルサリシレート、メンチルアセテート、ターピニルアセテート、アニシルアセテート、フェニルエチルイソブチレート、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、エチレンブラシレート、γ−ウンデカラクトン、γ−ノニルラクトン、シクロペンタデカノライド、クマリン等のエステル・ラクトン酸;アニソール、p−クレジルメチルエーテル、ジメチルハイドロキメン、メチルオイゲノール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、アネトール、ジフェニルオキサイド、ローズオキサイド、ガラクソリド、アンブロックス等のエーテル類;イソプロピルアルコール、cis−3−ヘキセノール、ヘプタノール、2−オクタノール、ジメトール、ジヒドロミルセノール、リナロール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ターピネオール、テトラハイドロゲラニオール、l−メントール、セドロール、サンタロール、チモール、アニスアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;ジアセチル、メントン、アセトフェノン、α−又はβ−ダマスコン、α−又はβ−ダマセノン、α−、β−又はγ−ヨノン、α−、β−又はγ−メチルヨノン、メチル−β−ナフチルケトン、ベンゾフェノン、テンタローム、アセチルセドレン、α−又はβ−イソメチルヨノン、α−、β−又はγ−イロン、マルトール、エチルマルトール、cis−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、l−カルボン、ジヒドロカルボン等のケトン類等を例示することができる。
【0018】
消臭剤としては、揮散性を有する物質であって消臭性を有するものならば特に限定はされない。具体的には、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロリネート、シトロネリルセネシオネート、テルペンアルデヒド類又はポリフェノールを主成分とする植物抽出物型消臭剤;ベタイン化合物、二価鉄イオン又は安定化二酸化炭素を主成分とする反応型消臭剤等が挙げられる。
【0019】
脱臭剤としては、臭気について吸着性を有する物質ならば特に限定はされないが、活性炭、備長炭等の炭;ゼオライト、セピオライト、銀担持ゼオライト等のアルミノケイ酸塩;酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;シリカゲル、活性アルミナ、活性白土等の吸着剤が挙げられる。
【0020】
防虫剤又は殺虫剤としては、揮散性を有し防虫性又は殺虫性を有する物質であれば特に限定されないが、具体的には、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳、アレスリン、プラレトリン、フタルスリン、レスメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、フェンバレレート、シペルメトリン、シフェノトリン、エンペントリン、テラレスリン、イミプロスリン、トランスフルスリン、フェンプロパトリン、フェンフルスリン、2−3−5−6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル(1R)−トランス−3−(2−クロロ−2−フルオロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート等が挙げられる。
【0021】
防カビ剤としては、揮散性を有し防カビ性を有する物質であれば特に限定されないが、具体的には、チモール、α−ブロムシンナミックアルデヒド、パラクロロメタキシレノール、オルトフェニルフェノール、3−ヨード−2−プロピルブチルカーバメート、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−フェニルスルファミド等が挙げられる。
【0022】
抗菌剤としては、揮散性を有し、抗菌性を有する物質であれば特に限定されない。具体的には、シンナミックアルデヒド、フェニルプロピオニックアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヘキサナール、シトラール、シトロネラールなどのアルデヒド類、リナロール、シトロネロールなどのアルコール類等が挙げられる。
【0023】
こうした機能性成分は、マイクロカプセル化などされていてもよいし、顆粒状に形成さされていてもよい。こうした形態を有する機能性成分は、後述する装飾性成分の外形を採っていてもよい。
【0024】
こうした機能性成分としては、ゲル状組成物全体に対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。また、第1液においては、0.05質量%以上40質量%以下の範囲とすることが好ましい。
【0025】
第1の液剤としては、機能性成分のほか、機能性成分を第1の液剤において、ひいては第1の液剤及び第2の液剤との混合物において溶解又は分散して保持するための他の成分を含有している。こうした他の成分としては、溶媒、界面活性剤などが挙げられる。溶媒としては、それ自身臭気が少ないことが好ましいが、例えば、水及びエタノールなどのアルコール類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、イソパラフィン系炭化水素、ノルマルパラフィン系炭化水素等の炭化水素類が挙げられる。
【0026】
界面活性剤としては、機能性成分や溶媒組成におうじて機能性成分を溶解又は分散保持可能とし、所望の透明性又は不透明性を付与できるものであることが好ましい。界面活性剤としては、公知の陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン界面活性剤から適宜選択して用いることができる。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、α−オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドなどの非イオン界面活性剤などを用いることができる。界面活性剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル(エマルゲン420;花王株式会社製)、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル(7E.O.)(ペグノールST−7)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(ペグノール14−O)(以上、東邦化学工業株式会社製)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(レオドールTW−L120)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(レオドールTW−0106V)(以上、花王株式会社製)及びジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム塩(リパール870P:ライオン株式会社製)が挙げられる。
【0027】
そのほか、第1の液剤は、防腐剤、抗菌剤(第1の液剤自身の)、紫外線吸収剤などを適宜含むことができる。
【0028】
(第2の液剤)
第2の液剤に用いる装飾性成分としては、液体であっても固体であってもよく、公知の顔料、染料などの色剤、少なくとも表面に金属、セラミックス、ガラス、プラスチックなどを有する光輝性粒子、その他の種々の外観(色、形状、性状)を有する粒子から適宜選択して用いることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
第2の液剤は、装飾性成分を溶解又は分散して保持可能に他の成分を含むことができる。こうした他の成分としては、溶媒、界面活性剤や高分子材料などの分散剤が挙げられる。溶媒としては、装飾性成分の種類等に応じて適宜選択することができ、それ自身臭気が少ないことが好ましいが、例えば、水やアルコール類、グリコール類などの有機溶媒が挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
また、分散剤としては、特に限定しないが、例えば、第1の液剤において記載した公知の各種界面活性剤から適宜選択して用いることができるほか、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリル酸などの高分子分散剤を用いてもよい。分散剤としては、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
そのほか、第2の液剤は、第1の液剤と同様、防腐剤、抗菌剤(第2の液剤自身の)、紫外線吸収剤、界面活性剤などを適宜含むことができる。
【0032】
こうした第1の液剤及び第2の液剤は、いずれか一方にゲル材料を含有し、他方にゲル化剤を含有している。ゲル材料及びゲル化剤の組み合わせは、第1の液剤及び第2の液剤の組成(水性か有機溶媒性か)等によっても異なるが、例えば、水性のゲル状組成物を得るには、以下のゲル材料及びゲル化剤を用いることができる。
【0033】
ゲル材料としては、公知のゲル材料や増粘剤を用いることができ、例えば、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、寒天、ファーセルラン等の海藻多糖類;グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム等の種子多糖類;アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム等の樹脂多糖類;ペクチン等の果皮多糖類;キサンタンガム、カードラン、プルラン等の発酵多糖類;グルコマンナン等の植物多糖類;ゼラチン、カゼインナトリウム等の蛋白質;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、発酵セルロース、それらのアルカリ金属塩等のセルロース類若しくはそれらの誘導体;デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン誘導体;ポリビニルアルコール(例えば、日本合成化学株式会社製のゴーセノール)、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の加水分解物等の合成ポリマーを例示することができる。特に限定しないで、ポリビニルアルコールをゲル材料として用いることが好ましい。なかでも、ポリビニルアルコールの部分ケン化型を用いることが好ましく、より好ましくは、ケン化率が86.5%以上89.0%以下であることが好ましい。この範囲であると、第1の液剤と第2の液剤とを混合したとき好ましい強度のゲル状体を形成しやすいからである。さらに、好ましくは、粘度が20mPa・S以上25mPa・S以下である。混合前のゲル材料を含有する液剤の状態で液体であって、他方の液剤と混合したときにゲル化するようにゲル材料を含有する液剤を調製しやすいからである。
【0034】
また、有機溶媒性のゲル状組成物を得るには、パルミチン酸ナトリウム、オクチル酸アルミニウムなどの高級脂肪酸アルミニウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸等を用いることができる。
【0035】
また、ゲル化剤としては、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アルミニウム等の金属イオン;コハク酸、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フタル酸、アスパラギン酸等の有機酸若しくはそれらの塩;塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等の無機酸若しくはそれらの塩等を用いることができる。具体的には、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、乳酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等を例示することができる。
【0036】
ゲル材料とゲル化剤との組み合わせは種々可能であるが、このましくは、ポリビニルアルコールとホウ酸ナトリウム(ホウ砂)である。これらの組み合わせであるとゲル材料及びゲル化剤がともに透明で液状のものを容易に得ることができるとともに、混合時における外観の変化がわかりやく楽しめるからである。
【0037】
これらのゲル材料やゲル化剤の種類やその含有量は、第1の液剤と第2の液剤とを混合して得られるゲル状組成物が備える所望のゲル強度に応じて適宜選択することができ、使用するゲル化剤の種類によっても異なる。通常、ゲル材料は、ゲル状組成物全体に対して0.01質量%以上10質量%以下の範囲で含むことができ、好ましくは、1質量%以上5重量%以下である。また、ゲル化剤は、ゲル状組成物全体において、0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲で含むことができ、好ましくは、0.01質量%以上0.5質量%以下である。特に、ゲル材料として、ポリビニルアルコール、部分ケン化型、ケン化度86.5〜89.0%、粘度20.5〜24.5mPa・s(cp)(4%溶液、20℃)を用い、ゲル化剤としてホウ砂を用いる場合、ポリビニルアルコール(固形分)は、ゲル状組成物に対して2.0質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。この範囲であると、第1の液剤と第2の液剤とを混合したときにスムーズにゲル化するからである。また、ホウ砂は、0.25質量%以上0.35質量%以下とすることが好ましい。この範囲であると、第1の液剤と第2の液剤とを混合したときにスムーズにゲル化するからである。もっとも好ましくは、0.3質量%である。
【0038】
また、第1の液剤及び第2の液剤におけるゲル材料又はゲル化剤の濃度は、ゲル材料及びゲル化剤のゲル状組成物における濃度がこうした範囲となるように設定される。例えば、第1の液剤と第2の液剤とを等量混合して機能性組成物を得るには、上記範囲の倍量をそれぞれの液剤が含有することになる。
【0039】
第1の液剤は、ゲル材料及びゲル化剤のいずれかを含むことができるが、好ましくは、ゲル化剤を含有する。第1の液剤には機能性成分を含有しており、機能性成分を溶解又は分散保持するためには高分子材料や脂肪酸誘導体であるゲル材料を含まないほうが溶解又は分散が容易であるからである。また、第2の液剤は、ゲル材料及びゲル化剤のいずれかを含むことができるが、ゲル材料を含むことが好ましい。
【0040】
以上説明した、第1の液剤及び第2の液剤は、所望の機能性と装飾性とを兼ね備える機能性組成物を得るための個別の液剤として利用することができる。この結果、消費者等は、必要な機能性と必要な装飾性を得るために任意の第1の液剤と任意の第2の液剤を選択することができる。これにより、消費者が所望の機能性組成物を得るために簡易にキット化することができる。また、こうした液剤を提供することにより、特に室内や車両内など視認可能な箇所に配置して使用する配置型機能性組成物とするとき、周囲や機能性に合致した装飾性の機能性組成物を得ることができる。
【0041】
第1の液剤及び第2の液剤の組み合わせとしては、各種の態様が挙げられる。例えば、特定の芳香剤など機能性成分を含有する1種類の第1の液剤に対して、所望の色剤を含む1種類の第2の液剤を組み合わせることができる。また、第1の液剤として、芳香剤などの機能性成分を含有する1種類の第1の液剤と抗菌剤を含有する1種類の第1の液剤とを用い、第2の液剤として所望の色剤等を含む1種類の第2の液剤を組み合わせることもできる。この場合、第2の液剤は2種類の第1の液剤の総量に対して所定の混合比となるように使用する。また、第1の液剤として芳香剤を含有する1種類の第1の液剤を用い、第2の液剤として所望の色剤等を含む第2の液剤と所望の光輝性粒子を含む第2の液剤とを組み合わせることができる。この場合には、第2の液剤の総量と所定の混合比となるように第1の液剤を使用する。また、2種類以上の第1の液剤と2種類以上の第2の液剤とを組み合わせて所望の機能性と装飾性とを備える機能性組成物を得ることもできる。
【0042】
本発明の第1の液剤及び第2の液剤は、ほぼ等量を混合することで所定の機能性組成物が得られるように構成されていることが好ましい。具体的には、ほぼ等しい容量が適用な容器に充てんされた状態でキットが構成されていることが好ましい。こうすることで、混合する操作や撹拌操作を単純化することができる。また、第1の液剤及び第2の液剤を全量使用しない場合でも、それぞれ等量を混合することで容易に所定の機能性組成物を得ることができる。また、第1又は第2の液剤について複数種類用いる場合であっても、容易に混合比を把握し混合することができる。
【0043】
(機能性ゲル状組成物キット)
本発明の機能性組成物キットは、第1の液剤と、第2の液剤とを含むことができる。本発明のキットは、異なる機能性成分を含む複数の第1の液剤と、異なる装飾性成分を含む複数の第2の液剤とを含んでいてもよい。こうすることで、個々の機能成分に対して複数の装飾性成分から任意の装飾性成分を含有する第2の液剤を組み合わせて所望の装飾性の機能性組成物を得ることができる。
【0044】
このように、機能性成分を含有する第1の液剤と装飾性成分を含有する第2の液剤とをキットとすることで、機能性と装飾性とについて高い選択自由度の機能性ゲル状組成物を提供できる。また、こうしたキットとすることで、特に室内や車両内に配置して使用する配置型機能性組成物とするとき、周囲や機能性に合致した装飾性の機能性組成物を得ることができる。
【0045】
本発明の機能性組成物キットにおいては、第1の液剤及び第2の液剤は、ほぼ等量を混合することで所定の機能性組成物が得られるように構成されていることが好ましい。具体的には、ほぼ等しい容量が適用な容器に充てんされた状態でキットが構成されていることが好ましい。こうすることで、混合する操作や撹拌操作を単純化することができる。また、第1の液剤及び第2の液剤を全量使用しない場合でも、それぞれ等量を混合することで容易に所定の機能性組成物を得ることができる。
【0046】
(本発明の液剤の製造方法)
本発明の第1の液剤及び第2の液剤は、それぞれ所定の成分を混合することで得ることができる。機能性成分とゲル化剤とを含有する第1の液剤は、例えば、機能性成分を溶解又は分散するための溶媒や界面活性剤等を混合して機能性成分のための媒体を調製し、この媒体と機能性成分とを混合し、次いで、別途、ゲル化剤やその他の水溶性の成分を水あるいは水を主体とする媒体に添加し混合しておき、これを機能性成分を含んだ媒体と混合することが好ましい。また、装飾性成分とゲル材料とを含有する第2の液剤は、ゲル材料と水などの溶媒を混合しゲル材料を溶解又は分散させ、これに色剤などの装飾性成分を混合することにより調製することが好ましい。機能性成分は、当該機能性成分を溶解又は分散するための媒体を調製し、この媒体に混合して溶解又は分散させた後、他の成分と混合することが好ましく、また、ゲル材料も、ゲル材料を溶解又は分散する媒体に溶解又は分散した後、他の成分と混合することが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【0048】
(実施例1)
芳香性ゲル状組成物のための2種類の液剤(2液タイプ芳香剤)を表1に示す組成に基づいてそれぞれ調製した。なお、1液の調製にあたっては、エタノール、プロピレングリコール及びポリオキシエチレン(13)オレイルエーテルを混合した混合液に香料を添加し混合して分散又は溶解させた液と、その他の成分を混合し溶解させた液とを混合した。また、2液の調製にあたっては、イオン交換水とゲル材料とを加温下で混合し、ゲル材料を溶解した液に、染料そのほかの成分を添加し混合して完全に溶解させた。なお、ポリビニルアルコール1部分ケン化型は、ケン化度86.5〜89.0%、粘度が48〜56mPa・s(cp)(4%溶液、20℃)、ポリビニルアルコール部分ケン化型2は、ケン化度86.5〜89.0%、粘度が20.5〜24.5mPa・s(cp)(4%溶液、20℃)、ポリビニルアルコール部分ケン化型3は、ケン化度86.5〜89.0%、粘度が3.0〜3.7mPa・s(cp)(4%溶液、20℃)のものを用いた。
【0049】
次いで、得られた1液と2液とを表1に基づいてそれぞれ等量を混合し、混ざり方、混ぜた直後の固まり方、数日経過後の状態、ゲル状体の減り具合及び耐熱性について以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0050】
1.混ざり方
1液と2液とがスムーズに混ざりゲルとなるときを○とし、すぐにはゲルにならないが、しばらく混ぜればゲルとなるものを△とする。
2.混ぜた直後の固まり方
B型粘度計にて測定(20℃)としたとき、30,000以上100,000 (mPa・s) 以下であるものを○とし、同測定により30,000未満と100,000超となるものを△とした。
3.数日後の状態
ゲル調製後3〜5日間にわたり、分離や変色などがなく、ゲルの硬さが初期と変化ないものを○とし、ゲルの硬さが変化するものを△とする。硬さは、手にてゲルを押した感触で判断した。
4.ゲルの減り具合
減り具合:表面から徐々に減少し、塊が出来にくいものを○とし、全体に減少したり、表面に塊が出来るものを△とする。
5.耐熱性
90℃で3時間液体にならないものを○とし、90℃で1〜3時間以内に液体になるものを△とする。
【表1】

【0051】
試験例1〜5においては、1液と2液とを混合して透明のゲル状組成物を得ることができたが、試験例6〜9ではゲル状組成物を得られなかった。また、試験例1〜5のなかでも、試験例2〜4の組成、さらには試験例3及び4の組成が複数の観点から好ましいことがわかった。
【0052】
(実施例2)
芳香性ゲル状組成物のための2種類の液剤(2液タイプ芳香剤)を表2に示す組成に基づいてそれぞれ調製した。なお、1液の調製にあたっては、エタノール、ジアルキルスルホコハアク酸エステルナトリウム塩を混合した混合液に香料を添加し混合して分散又は溶解させた液と、その他の成分を混合し溶解させた液とを混合した。2液の調製にあたっては、実施例1と同様に行った。また、得られた1液と2液とを表2に基づいてそれぞれ等量を混合し、実施例1と同様に各項目について評価した。結果を表2に示す。
【表2】

【0053】
試験例1〜5においては、1液と2液とを混合して不透明のゲル状組成物を得ることができたが、試験例6〜9ではゲル状組成物を得られなかった。また、試験例1〜5のなかでも、試験例2〜4の組成、さらには試験例3及び4の組成が複数の観点から好ましいことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤であって、
前記液剤は、機能性成分を含む第1の液剤と装飾性成分とを含む第2の液剤とを混合することで機能性ゲル状組成物を形成可能な機能性ゲル状組成物用の液剤であり、
前記機能性成分及び前記装飾性成分のいずれかと、
ゲル材料及び該ゲル材料のゲル化剤のいずれかと、
を含有する、液剤。
【請求項2】
前記機能性成分を含有する、請求項1に記載の液剤。
【請求項3】
前記ゲル化剤を含有する、請求項2に記載の液剤。
【請求項4】
前記装飾性成分を含有する、請求項1に記載の液剤。
【請求項5】
前記ゲル材料を含有する、請求項4に記載の液剤。
【請求項6】
前記機能性成分は、芳香剤、消臭剤、脱臭剤、殺虫剤、防虫剤、防カビ剤及び抗菌剤から選択される1種又は2種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の液剤。
【請求項7】
前記装飾性成分は、色剤及び光輝性粒子から選択される1種又は2種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の液剤。
【請求項8】
前記第1液が前記ゲル化剤を含有し、前記第2液がゲル材料を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の液剤。
【請求項9】
前記ゲル材料はポリビニルアルコールであり、前記ゲル化剤は、ホウ酸ナトリウム又はホウ砂である、請求項1〜8のいずれかに記載の液剤。
【請求項10】
前記第1の液剤と前記第2の液剤とを混合したとき、透明又は不透明のゲル状体を形成する、請求項1〜9のいずれかに記載の液剤。
【請求項11】
前記機能性ゲル状組成物は、ゲル材料を2.0質量%以上4.0質量%以下含有し、前記ゲル化剤を0.25質量%以上0.35質量%以下含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の液剤。
【請求項12】
等量の前記第1の液剤と前記第2の液剤とを混合したとき、前記機能性ゲル状組成物を形成可能である、請求項1〜11のいずれかに記載の液剤。
【請求項13】
機能性ゲル状組成物キットであって、
機能性成分を含む第1の液剤と、
装飾性成分を含む第2の液剤と、
を備え、
前記第1の液剤と前記第2の液剤とを混合することにより前記機能性ゲル状組成物を形成可能である、機能性ゲル状組成物キット。
【請求項14】
前記第1の液剤がゲル化剤を含有し、前記第2の液剤がゲル材料を含有する、請求項13に記載の機能性ゲル状組成物キット。
【請求項15】
ほぼ等量の前記第1の液剤と前記第2の液剤とを含む、請求項13又は14に記載のキット。
【請求項16】
2種類以上の前記第1の液剤及び/又は2種類以上の前記第2の液剤を含む、請求項13〜15のいずれかに記載のキット。

【公開番号】特開2008−19386(P2008−19386A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194208(P2006−194208)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(300003743)槌屋ケミカル株式会社 (5)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】