説明

機能性シートおよび吸収性物品

【課題】 低刺激で着用感の良好な機能性シートを提供する。
【解決手段】 薬剤と熱可塑性水溶性ポリマーとを含む機能性組成物と、シート状基材とを備え、前記機能性組成物が非連続的にシート状基材に付着している、機能性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性シートおよびそれを用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品等に用いられる繊維シートには、抗菌性、消臭性、スキンケアなどの機能を付与するために、機能に応じた薬剤が塗布されることがあり、その均一塗布が常に課題となっている。
たとえば、親水性繊維を含む繊維シートを湿潤状態としておき、その状態で水溶性の薬剤を含む塗布液を塗布することにより、薬剤を均一に塗布する技術が知られている(特許文献1)。
さらに、界面活性剤などの繊維処理剤と1,3−ブチレングリコールと薬剤とを含む混合液を繊維表面に付着させ、乾燥させて得られるスキンケア剤含有繊維が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−244754号公報
【特許文献2】特開2002−146674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術においては、シート全面に均一に塗布された薬剤が、塗布後の乾燥工程で互いに凝集し、塊となって繊維表面や繊維交絡点に付着した状態となりやすいとの問題があった。このように薬剤が凝集してしまうと、薬剤の効果が充分に得られなくなる。さらに、薬剤の塊により硬さが生じて着用感が低下し、かつ、薬剤の種類によっては肌刺激を誘起する恐れがある。
【0004】
そこで本発明は、所定の薬剤効果を発揮する機能性シートであって、肌刺激が低減され且つ着用感の良好な機能性シートと、それを用いた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の本発明は、 薬剤と熱可塑性水溶性ポリマーとを含む機能性組成物と、シート状基材とを備え、前記機能性組成物が非連続的にシート状基材に付着している、機能性シートに関する。
第2の本発明は、上記本発明に係る機能性シートを含む吸収性物品に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る機能性シートでは、薬剤と熱可塑性水溶性ポリマーとを含む機能性組成物が、シート状基材の全面に連続的に付着されるのではなく、非連続的に付着している。この不連続部分の存在により、薬剤同士が塊状に凝集することを抑制でき、かつ、従来に比べてその付着量を低減できる。その結果、本発明によれば、少量の薬剤を用いてより効果的に薬理作用を発揮させることができ、肌刺激が低減し、着用感に優れた機能性シートおよび吸収性物品を、コスト面でも有利に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
機能性シートは、シート状基材に機能性組成物が付着したシートである。
ここで、「シート」は、その幅、長さ、厚みにおいて何ら制限されず、たとえばフィルム、テープなどを含む概念である。
基材の種類も特に限定されず、シート状基材としては、合成樹脂製シート、織布、不織布、紙などを任意に使用することができる。合成樹脂や繊維の種類も、何ら限定はされず、吸収性物品等に通常使用される各種の基材を使用することができる。基材は、単層構造、多層構造のいずれであってもよい。さらに基材は、親水性材料から構成されるほか、疎水性材料の表面に界面活性剤処理を施すことにより親水性を付与した材料から構成されていてもよい。また、パーフォレーション加工、延伸加工、テンタリング加工、パンチング加工などにより孔を形成させた開孔フィルムを基材として用いることもできる。このような開口フィルムの開口率は10〜60%であることが好ましく、開口径は平均で0.1〜2mm程度であることが好ましい。
【0008】
代表的には、たとえばポリプロピレン(PP)スパンボンド(例:1.9dtex、目付量20g/m)、ポリエチレンテレフタレート(PET)/レーヨン/PETスパンレース(例:1.7dtex、目付量25g/m)、パルプやレーヨンを含むティッシュ(例:目付量15g/m)などが挙げられる。スルーエアー法やポイントボンド法により得られた不織布、SMS(S:スパンボンド不織布、M:メルトブローン不織布あるいは高バリア性素材)三層構造の不織布を用いてもよい。さらに、PE(ポリエチレン)/PPやPE/PET等の芯鞘構造あるいはサイドバイサイド構造の繊維を使用した基材であってもよい。
機能性シートは、必要に応じて、接着層、粘着層、撥水層など、シート状基材以外の構成(層)を備えていてもよい。
【0009】
機能性組成物は、薬剤と熱可塑性水溶性ポリマー(以下、単に「ポリマー」ともいう。)とを含む。ポリマーは薬剤のキャリア、あるいは不織布などに対するバインダーであり、薬剤は、ポリマー中に均一に混合・分散されていることが好ましい。
【0010】
熱可塑性水溶性ポリマーとしては、特に限定はされないが、具体的にはポリエチレングリコール(以下、「PEG」と記す。)およびその誘導体、ポリプロピレングリコール(以下、「PPG」と記す。)およびその誘導体、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と記す。)およびその誘導体などを好ましく用いることができる。これらのポリマーは、分子量や化学構造の異なる複数種のものを組み合わせて使用することもできる。
ポリマーの水溶性は、37℃での水への溶解度から判断する。37℃に設定した定温ウォーターバスにより100ccの水を入れたビーカーを加熱し、このビーカーに、スターラーで回転速度700rpmで攪拌しながら、試料ポリマー1gを入れる。このポリマーが5分後に完全に溶解するものを、ここでは水溶性ポリマーと称する。
【0011】
ポリマーが水溶性であると、体液と接することにより溶解しやすく、その結果、ポリマー中の薬剤を放出することができる。すなわち、体液に接することにより体液中にポリマーが溶出し、その結果、組成物中の薬剤が放出(リリース)されて、その作用を発揮できるようになる。一方、後述するようにポリマーが常温において固体であって、体液の存在しない状態ではポリマー中の薬剤がリリースされないようになっていると、薬剤が使用者の肌に刺激を与えることが防止されるとともに、体液の吸収前に薬剤の効果が失われることも防止される。
体液とは、血液、リンパ液、組織液など、動物の体内で細胞外にある液体の総称であり、体外に放出される汗、尿、経血等を含む概念である。
【0012】
このポリマーは、80℃における粘度(JIS K−2283 石油製品動粘度測定法に準じて、キャノン・フェンスケ粘度計により測定;以下同じ)が40000mm/s以下であることが好ましい。ポリマーの粘度が80℃で40000mm/s以下であると、適温に加温した機能性組成物を、溶剤を添加せずに無溶剤のままシート状基材に適用することができる。
すなわち、機能性組成物は、実質的に無溶剤であることが好ましい。ここで、「実質的に無溶剤である」とは、機能性組成物塗布後の乾燥工程を必要とするような溶剤を含んでいないことをいう。機能性組成物が無溶剤であると、付着させた後に溶剤を乾燥させる工程が不要となるため、製造工程および製造設備の簡略化ができ好ましい。さらに、発明者らの知見によると、乾燥工程での溶剤の蒸発に伴い薬剤同士が凝集し塊状となる傾向があるのに対し、無溶剤であるとそのような凝集を回避することができるため、この側面からも好ましい。さらに、ポリマー(すなわちこれを含む機能性組成物)の粘度が高いと粒子状になりやすく、またポリマーの粘度を下げるために温度を上げすぎると、機能性組成物中に配合する薬剤の種類によっては熱分解等してしまう恐れがあるため、好ましくない。
上記ポリマー粘度(80℃)は、得られるシート状基材の柔軟性や、より低温での塗工可能性に鑑み、25000mm/s以下であることがより好ましく、10000mm/s以下であることがさらに好ましく、5000mm/s以下であることが一層好ましく、1000mm/s以下であることが最も好ましい。
【0013】
このポリマーは、常温において固体であること、つまり体液と接する以前の、体液の存在しない状態では、固体(常温)であることが好ましい。
常温とは、機能性シートや吸収性物品を通常使用する温度であり、たとえば室温(25℃)である。つまり、常温で固体のポリマーとして、凝固点が25℃以上のポリマーを好ましく用いることができる。
このポリマーが、常温において液体であると、体液が存在しなくても薬剤がリリースされて肌に移行してしまい、肌に余分な刺激を与える可能性があるため好ましくない。さらに、このポリマーが常温で液体であると、べたつき感を与えて着用感が低下するとともに、製品の製造加工時や使用前に、薬剤が製造装置、包装材、手指などに付着してシートから脱落してしまい、薬理効果が失われる恐れがあるため好ましくない。
【0014】
さらに、このポリマーは、機能性シートの加工時の熱等により硬化せずに柔軟な塗膜を形成できることなどから、熱可塑性ポリマー、すなわち熱可塑性水溶性ポリマーが選択される。
【0015】
なかでも、水への溶解性が高いことから、PEGおよびその誘導体を用いることが好ましい。PEG誘導体には、PEGの末端がエステル化されたPEG脂肪酸エステル、または末端がエーテル化されたポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが含まれる。PEG脂肪酸エステルとしては、たとえば、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ステアリン酸ジエチレングリコール、パルミチン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
そのようなPEGとして具体的には、分子量(GPC法、標準ポリエチレン換算の重量平均分子量をいう。以下同じ。)が100〜50000のものを好ましく用いることができ、600〜30000程度であることがより好ましい。これらは、粘度(80℃)が40000mm/s以下であって、常温(25℃)において固体である。
【0016】
分子量の異なる複数種のPEGまたはその誘導体を用いることも好ましい。たとえば、分子量の小さいPEGを用いることで機能性組成物の基材への付着性が良好となり、シートが着用圧や摩擦を受けても抗菌剤の脱落を防止することができ、かつ、硬さを防止し柔軟性を与えることができる。一方、分子量の大きなPEGを用いることにより、べたつき感を防止し、肌への不快感や刺激を防止することができる。
このように、分子量の異なる複数種のPEGまたはその誘導体を使用することにより、体液への溶解性、柔軟性、および基材への付着性(定着性)をバランスよく実現することができるため好ましい。
【0017】
分子量の小さなPEG(PEG−S)としては、分子量が100以上2000未満のものを使用することが好ましく、分子量の大きなPEG(PEG−L)としては、分子量が2000以上50000以下のものを使用することが好ましい。PEG−S、PEG−Lとして、異なる分子量の複数種のPEGをそれぞれに使用することもできる。
両者の混合比は、それぞれのPEGの分子量にも依存するため特に限定されないが、たとえばPEG−S:PEG−Lが重量比で1:9〜9:1であることが好ましく、1:9〜7:3であることがより好ましく、1:9〜5:5であることがさらに好ましく、2:8〜4:6であることが一層好ましい。
【0018】
PPGとしては、重量平均分子量400〜2000のものを使用することが好ましい。PPG誘導体としては、上記PEG誘導体と同様のものを使用できる。
PVAとしては、重合度が500以下のものを使用することが好ましい。PVA誘導体としても、水酸基がエステル化あるいはエーテル化されたものなどを使用できる。
【0019】
薬剤としては、たとえば吸収性物品において求められる特定の薬理効果を奏するものであれば、特に限定はされない。たとえば、抗菌剤、消臭剤、保湿剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤などが挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なかでも、体液と接することで効果的にその機能を発揮することができるため、水に可溶な薬剤を用いることが好ましい。
【0020】
抗菌剤としては、大腸菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、アンモニア産生菌などの細菌の増殖を抑制できるものであれば、任意の抗菌剤を使用することができ、2種以上を組み合わせて使用することができる。ここで「抗菌」は、殺菌、滅菌、静菌を含む概念である。
【0021】
具体的には、以下のものが例示できる。
N,N’,N’’−トリス(ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、4,4−ジメチルオキサゾリジン、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、4−(2−ニトロブチル)モルホリン、1,3−ジモルホリノ−2−ニトロ−2−エチルプロパン等のホルムアルデヒド放出剤;
1,3−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニロリル等のハロゲン化合物;
4−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、3−ヨードプロパギルブチルカルバメート等のヨードプロパギル誘導体;
2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等のチオシアナト化合物;
2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾロン−3、N−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾロン−3等のイロチアゾリノン誘導体;
N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミド等のトリハロメチルチオ化合物;
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化ベンゼトニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、デシルイソノニルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド(塩化セチルピリジニウム)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)等の第4アンモニウム塩;
塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド、グルコン酸クロロヘキシジン、クロロヘキシジン塩酸塩等のビグアニド化合物;
ホルムアルデヒド、1,5−ペンタンジアール(グルタルアルデヒド)、α−ブロモシンナムアルデヒド等のアルデヒド類;
3−メチル−4−クロロフェノール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル)等のフェノール類;
2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル等のベンズイミダゾール誘導体;
ピリジン−2−チオール−1−オキシドナトリウム、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛等のピリジンオキシド;
3,4,4’−トリクロロカルバニリド、4,4’−ジクロロ−3−(トリフルオロメチル)カルバニリド等のカルバニリド;
2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル;
ソルビン酸、プロピオン酸、10−ウンデシレン酸、安息香酸等のカルボン酸;
10,10’−オキシビスフェノキシアルシン等の有機金属化合物。
【0022】
さらに、インチンコウ、ウイキョウ、メンオウギ、オウレン、オウバク、オウゴン、ガイヨウ、カンゾウ、キョウニン、ケイヒ、コウボク、シソ葉、シャクヤク、センキュウ、ダイオウ、チョウジ、トウニン、ボタンピなどの抗菌作用を示す漢方用薬;エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ホオノキ抽出物、レンギョウ抽出物、ペクチン分解物、プロタミン、ポリリジン、α−ポリリジン、ε−ポリリジン、柑橘種子抽出物、ショウガ抽出物、茶抽出物、生大豆抽出物、紅麩分解物、ホッコシ抽出物、孟宗竹抽出物、モミガラ抽出物、リゾチーム、ペッパー抽出物、プロポリスなどの食品に添加される天然抗菌剤;カラシ抽出物、キトサンおよびその誘導体などのその他の天然抗菌剤を使用することもできる。
【0023】
特に好ましい抗菌剤としては、汗疹の原因とされる表皮ブドウ球菌を吸着し細菌の細胞膜を破壊するカチオン系界面活性剤、たとえば塩化セチルピリジニウム(CPC)等が挙げられる。
【0024】
消臭剤、保湿剤、抗炎症剤としては、一般的に使用されているものを使用することができ、特に限定されることはない。抗ヒスタミン剤としては、金属イオンを含む無機化合物を好ましく使用できる。具体的には、亜鉛、第一スズ、第二スズ、マグネシウム、カルシウム、マンガン、チタン、鉄、銅、ニッケル、およびこれらの混合物を含む無機化合物を使用することができる。また、ポリフェノール化合物としては、タンニン類、カテキン類、没食子酸などが挙げられる。
【0025】
機能性組成物中の薬剤の配合量は、使用する薬剤の活性や抗菌シートの用途等に応じて適宜設定すればよく、特に限定はされない。シート状基材への薬剤の付着量としては、0.001〜0.1g/m程度となることが好ましく、0.005〜0.05g/m程度となることがより好ましい。
【0026】
機能性組成物は、上記ポリマーと薬剤以外にも、1種以上の任意の添加剤等を含むことができる。そのような追加の成分としては、たとえば、着色剤、香料、酸化防止剤、帯電防止剤、pH調整剤、平滑剤、分散剤、紫外線防止剤などが挙げられる。
【0027】
機能性組成物の粘度(80℃)は、40000mm/s以下であることが好ましい。それにより、機能性組成物を無用剤で、非連続的に付着させることが容易となり、たとえば後述するエアースプレーを用いて塗布した際には、機能性組成物を微粒子化して付着させることができる。機能性組成物の粘度(80℃)はさらに、25000mm/s以下であることがより好ましく、10000mm/s以下であることがさらに好ましく、5000mm/s以下であることが一層好ましく、1000mm/s以下であることが最も好ましい。
【0028】
機能性組成物が「非連続的に付着している」とは、連続的すなわち一続きではなく、途中で途切れた部分が存在することを意味する。具体的態様としては、たとえば、一様に連続した膜状ではなく非膜状であり、線状、筋状、格子状、網目状、島状などが挙げられる。
なかでも、「非連続的」の好ましい一形態は、島状である。ここで「島状」とは、離散的に機能性組成物が存在する状態をいい、点あるいはドット状、まだら状、さらには粒子状などを含む概念である。個々の島の形状は何ら限定されない。島と島とは、互いに離間していることが好ましいが、相互につながった状態の島を含んでいてもよい。このように本願発明では、薬剤が凝集して塊状になることを防止しうる、機能性組成物の不連続部分が存在する。
【0029】
シート状基材が織布、不織布、紙等の繊維状基材である場合は、構成繊維に対し非連続的に機能性組成物が付着しており、好ましくは島状に付着している。このように機能性組成物が、構成繊維をできるだけ橋渡ししないように付着すると、繊維の自由度を拘束することがないため、基材の柔軟性を保持することができる。一方、同様の効果を得るために、シート状基材が開孔フィルムの場合は、フィルムの表面および孔部内壁に、島状に機能性組成物が付着していることが好ましい。
【0030】
さらに、島と島との平均ピッチ(平均島間距離)は、10〜1000μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、15〜150μmであることがさらに好ましく、20〜100μmであることが一層好ましく、30〜50μmであることが最も好ましい。ここで、平均島間距離は、電子顕微鏡により200倍に拡大して、隣接する島間の距離を30箇所測定した平均値をいう。なお、島が粒子状である場合は、この平均島間距離は平均粒子間距離に相当する。
たとえば、体液が汗である場合、汗孔(汗腺)の数は体の部位によっても異なるが平均して100〜250個/cmであり、そのピッチは計算上は650〜1000μmとなる。したがって、このピッチよりも機能性組成物の島間のピッチが短いことにより、体液との接触頻度がより高まるために好ましい。
【0031】
体液との接触性および体液への溶解性を高めるために、機能性組成物の島は面積の狭い小さな島であることが好ましい。
島が粒子状である場合は、微粒子であることが好ましい。たとえば、粒子の平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、20μm以下であることが一層好ましく、15μm以下であることが最も好ましい。一方、平均粒径の下限値は、特に限定されないが、1μm程度であることが好ましい。ここで、平均粒径は、電子顕微鏡により200倍に拡大して30個の粒子の直径を測定した平均値をいう。
【0032】
機能性組成物は、基材の表面(少なくとも片面)または内部の少なくとも一部に付着していればよい。さらに、基材が多層構造である場合は、含まれるいずれかの層の少なくとも片面に付着していればよい。また、機能性組成物は、シート状基材を構成する層の表面のみならず、その層内部にも存在することができる。この場合、機能性組成物の付着量は、層の内部に向かって徐々に減少していることが好ましい。たとえば機能性組成物の量は、シート状基材を構成する層の厚み方向の真中(中央)と基材の表面とを比較すると、表面のほうが多く存在していることが好ましい。
【0033】
機能性組成物の付着量は、その機能を充分に発揮させる観点から、0.05g/m以上であることが好ましく、0.5g/m以上であることがより好ましく、1g/m以上であることが一層好ましい。一方、着用者の肌への無用な刺激を防止し、シート状基材の柔軟性を保持する観点から、さらには製造コストを抑える観点からは、5g/m以下であることが好ましく、3g/m以下であることがより好ましい。
【0034】
機能性組成物のシート状基材への付着方法は、特に限定はされない。たとえば、好ましい例として、噴霧(スプレー塗装)によりシート状基材へ付着させる方法が挙げられる。
噴霧条件や使用する装置等は、特に限定はされないが、ノズルのサイドにエアー吐出口を備えたスプレーノズルを用いて、機能性組成物からなる吐出物をエアーにより分断・霧化して噴霧することが好ましい。このエアー霧化方式で噴霧することにより、機能性組成物をより細かい粒子として基材へ付着させることができる。
【0035】
エアー吐出口は、ノズルの両サイドに2個設けられていることがより好ましい。
エアーの吐出角度は、特に限定はされないが、吐出物を、その吐出方向に対し直交方向からエアーで切断するように、傾きが大きく設計されていることが好ましい。
【0036】
エアーの温度およびエアーの圧力は、特に限定されない。なお、この空気圧が高いほど、霧化粒子の粒径を小さく、微粒子化することができるが、あまり高すぎると、エアーにより飛散するなどして被塗物への塗着効率が低下するため好ましくない。
【0037】
ノズルの形状は、特に限定されず、円形のほか、四角形やその他の多角形、あるいは異形であってもよい。ノズルの直径(あるいは、ノズル断面を構成する図形に含まれる二点間の距離の最大値)は、特に限定はされないが、0.1〜0.8mm程度であることが好ましく、0.2〜0.6mmであることがより好ましい。
ノズルの被塗物からの距離(高さ)についても、特に限定はされないが、一般に1〜100mmであることが好ましく、5〜50mmがより好ましい。
【0038】
吐出温度は、機能性組成物が溶融する温度であれば特に限定はされず、ポリマーの溶融温度および粘度に応じて適宜調整すればよい。通常は、タンク、ホースおよびノズルの温度を50〜150℃程度に設定することが好ましく、70〜100℃がより好ましい。
【0039】
機能性組成物の供給は、吐出量を高精度で制御するために、ポンプとしてギアポンプを用いて行うことが好ましい。圧送ポンプとギアポンプとを併用することも好ましい。
このギアポンプは、安定した搬送を可能とするため、ギアの隙間の狭いタイプのものが好ましい。
【0040】
機能性シートは、さまざまな用途に使用することができる。たとえば、薬剤として抗菌剤を用いた場合、得られる抗菌性シートを、食品等の包装用材料、キッチンペーパー、拭き取りシート、傷当てパッドなどの医療用シート、使い捨ての下着、トイレ用マット、各種吸収性物品が挙げられる。
特に、この抗菌性シートは、体液吸収のための吸収性物品に用いられることが好ましい、吸収性物品としては、使い捨ておむつ;ショーツの内面に取り付けて使用する生理用ナプキン、パンティライナー、おりものシート、失禁パッド;おむつカバーの内面に取り付けて使用する吸収性パッド;等が挙げられる。
【0041】
吸収性物品は、一般に、肌に接する表面シート(トップシート)と、着衣面に接する裏面シート(バックシート)と、これら両シート間に位置する吸収体(吸収性コア)とを備えている。吸収性物品の構成材料には、公知の各種素材が使用され、特に限定されることはない。
具体的には、表面シートは、液体透過性を有し、レーヨン繊維、パルプ繊維、合成繊維等の親水性繊維からなる不織布や、多孔性プラスチックシートなどを好ましく用いることができる。裏面シートは、液体不透過性を有し、ポリエチレン、ポリビニルアルコールなどの各種プラスチックシートを用いることができる。裏面シートは、通気性であっても、非通気性であってもよい。この表面シート、裏面シートは、それぞれ、多層構造を有していてもよい。たとえば、裏面シートは、プラスチックシートに不織布がラミネートされた構造でもよい。吸収体は、パルプの積層体やパルプと高吸収性ポリマーとの積層体などで形成される。
【0042】
以下に、抗菌性シートとその利用について、さらに詳しく説明すると、このような吸収性物品において、抗菌性シートは、その表面あるいは吸収体内部に使用することができる。表面シートとして使用する場合は、表面シートの一部として使用してもよい。ここで、表面シートまたはその一部として使用することには、表面シートに抗菌性シートを貼付する場合を含む。表面シートの一部として使用する場合、たとえば使い捨ておむつでは、吸汗シートとして、汗疹防止のためにその背中部に配置されることが好ましい。
表面シートとして使用される抗菌性シートの抗菌性組成物付着面は、肌側である最表面であっても、肌に触れない側である吸収体側であってもよい。抗菌性組成物付着面が吸収体側となる場合は、体液がシート状基材内部に拡散して抗菌性組成物に達し、ポリマーを溶解させることにより、抗菌剤の機能が発揮される。
【0043】
さらに、発汗した汗や排泄された尿を肌側から引き離すために、たとえば、肌側表面は疎水性であって内部に親水性が付与された抗菌性シートであることが好ましい。具体的には、表面側にポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンを主体とした疎水性繊維を主成分とする層を、内部にレーヨン、パルプ等の親水性繊維を主成分とする層を、それぞれ設けた多層構造の不織布からなる抗菌性シートであることが好ましい。
【0044】
以下に、抗菌性シートを、吸汗シートとして使い捨ておむつに適用した場合の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、使い捨ておむつを示す斜視図である。この使い捨ておむつは、軸中心線を介して左右両側が対象に形成されたパンツ型おむつ10である。
このパンツ型おむつ10は、前胴周り域1、後胴周り域2、および股下域3とから構成されており、前胴周り域1および後胴周り域2の左右両側縁部5が接合されている。これによって、上側に配置された胴側開口部6と、下側に配置された左右一対の脚開口部7とが形成されている。
【0045】
図2は、図1のパンツ型おむつの左右両側縁部を切り離して展開し、おむつ内面側からみた平面図である。図2に示すように、パンツ型おむつ10は、肌に接する表面シート11と、着衣面に接する裏面シート12と、これら両シート間に位置する吸収体13とを備えている。表面シート11の背側には、ウエスト端およびサイド端から離間して、抗菌性シート20が貼着されている。
【0046】
この抗菌性シートは、たとえば、親水性繊維層と疎水性繊維層からなるシート状基材と、シート状基材に非連続的に付着した抗菌性組成物を含む。抗菌性組成物は、シート状基材の親水性繊維層上(およびその内部)に付着し、その抗菌性組成物の付着面側が、接着剤層を介して、表面シートに貼着される。
以上、機能性シートとして抗菌性シートの利用例を説明したが、その他の機能性シートの場合も、同様にして、各種吸収性物品に使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜2>
薬剤として抗菌剤を使用し、以下のようにして抗菌性組成物および抗菌性シートを作製した。
水溶性ポリマーとして、日本油脂(株)製のPEG#600およびPEG#4000(各番手は、それぞれ近似の平均分子量を表す。)を、重量比3:7で用い、ここに抗菌剤として塩化セチルピリジニウム(CPC、和光純薬工業(株)製)1重量%を加えて、抗菌性組成物(PEG:CPC=99:1)を得た。PEG#600の粘度(80℃)は17mm/s、PEG#4000の粘度(80℃)は120mm/sであった。
シート状基材としては、ポリプロピレンスパンボンド(PPSB、1.9dtex、目付量:20g/m)(実施例1)、および、ポリエチレンテレフタレート/レーヨン/ポリエチレンテレフタレートのスパンレース(1.7dtex、目付量:25g/m)(実施例2)を使用した。
【0048】
ITWダイナテック(株)製エアースプレー(ヘッド名称:ダイナファイバーUFD、ノズル径:0.3mm角、エアー角度:15度、ノズル高さ:40mm、エアー温度:100℃、エアー圧力:0.2kg/cm)とゼニス社製ギアポンプ(容量:0.168cc)を用い、タンク、ホースおよびノズル温度を80℃に設定し、100m/分のスピードで、上記抗菌性組成物の塗工を行った。抗菌性組成物の目付量は、1.0g/mとした。
【0049】
実施例1において得られた抗菌性シートの顕微鏡写真を、図3に示す。図3(a)〜(e)は、順に50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍の拡大写真であり、図3(f)に未処理のシート状基材(30倍)を示す。
実施例2において得られた抗菌性シートの顕微鏡写真を、図4に示す。図4(a)〜(e)は、順に50倍、100倍、190倍、300倍、550倍の拡大写真である。
【0050】
図3および図4にみるように、各実施例により、抗菌性組成物が粒子状に繊維に付着した抗菌性シートを得ることができた。
実施例1の抗菌性シートにおいて、抗菌性組成物の平均粒径は11.2μm、平均粒子ピッチは44.1μmであった。
実施例2の抗菌性シートにおいて、抗菌性組成物の平均粒径は45μm、平均粒子ピッチは98μmであった。
【0051】
さらに、実施例2の抗菌性シート(サイズ55mm×285mm、塗工量1g/m)をパンツ型おむつ(ユニ・チャーム(株)製ムーニーマン)の背部に、抗菌性組成物の付着面が表面シート側になるよう接着剤を塗布して貼着し(図1および図2参照)、抗菌性シート付きパンツ型おむつを作成した。
これを用いて、以下のようにして、おむつの使用試験を行った(実施例群)。抗菌性シートが貼着されていない通常のおむつを使用した群を、比較例群とした。
【0052】
被験者として、各群それぞれ、月齢24か月前後(Lサイズおむつ使用者)であって本年すでに汗疹を発症した幼児50名(男女半々)を選び、テスト期間は2006年8月1日〜7日までの最も汗疹が発生しやすい時期とした。期間中は、通常通りにおむつを使用させ、抗菌性シートを貼着した近傍の背部の汗疹の発症を、母親に目視で観察してもらった。特に、薬を塗布するなどのケアが必要であった汗疹は「気になる汗疹」とした。期間中のおむつの平均使用枚数は25枚であった。
【0053】
使用試験の結果、実施例群における汗疹発症率は18%、気になる汗疹発症率は11%であった。これに対し、比較例群における汗疹発症率は56%、気になる汗疹発症率は42%であって、両者間に有意な差がみられた。
また、実施例群において、かぶれ、湿疹などの肌刺激の発症は見られず、着用感も良好であったことが確認された。
【0054】
<実施例3>
水溶性ポリマーとして、日本油脂(株)製のPEG#20000(80℃における粘度:23000mm/s)を使用した以外は、上記実施例1と同様に実施し、抗菌性組成物が粒子状に繊維に付着した抗菌性シートを得た。ただし、抗菌性組成物の塗工温度は130℃に設定して行った。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】使い捨ておむつの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のおむつを展開した平面図である。
【図3】実施例1で得られた抗菌性シートの拡大図(顕微鏡写真)である。
【図4】実施例2で得られた抗菌性シートの拡大図(顕微鏡写真)である。
【符号の説明】
【0056】
10 パンツ型おむつ
11 表面シート
12 裏面シート
13 吸収体
20 抗菌性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤と熱可塑性水溶性ポリマーとを含む機能性組成物と、シート状基材とを備え、前記機能性組成物が非連続的にシート状基材に付着している、機能性シート。
【請求項2】
島状に付着した機能性組成物を含む、請求項1記載の機能性シート
【請求項3】
機能性組成物からなる前記島の平均島間距離が10〜200μmである、請求項2記載の機能性シート。
【請求項4】
機能性組成物がシート状基材の表面および内部に付着している、請求項1〜3のいずれか1項記載の機能性シート。
【請求項5】
機能性組成物の付着量が0.05〜5g/mである、請求項1〜4のいずれか1項記載の機能性シート。
【請求項6】
機能性組成物が実質的に無溶剤である、請求項1〜5のいずれか1項記載の機能性シート。
【請求項7】
熱可塑性水溶性ポリマーの粘度(80℃)が40000mm/s以下である、請求項1〜6のいずれか1項記載の機能性シート。
【請求項8】
熱可塑性水溶性ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリビニルアルコール、ならびにそれらの誘導体からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の機能性シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の機能性シートを含む、吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−144328(P2008−144328A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335940(P2006−335940)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】