説明

機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム

無機酸化物の蒸着されたポリエチレンテレフタレートを含む外層と、エステル系ポリウレタンを含む第1接着と、エチレンビニルアルコール共重合体を含む第1中問層と、エステル系ポリウレタンを含む第2接着層と、ポリアミド重合体を含む第2中問層と、エステル系ポリウレタンを含む第3接着層と、ポリプロピレン系重合体を含む内層と、が順次に積層されてなる、機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルムを提供する。この多層フィルムは、透明性、耐熱性、密封性、耐久性及び価格競争力に優れている他、酸素遮断性に優れており且つピンホール発生が少ないため、輸液や血液などの医療用溶液を収容するポーチ(pouch)の外側バッグに適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐熱性、密封性、耐久性及び価格競争力が高い他、酸素遮断性に優れており且つピンホール発生が少ないため、輸液や血液などの医療用溶液をポーチ(pouch)形態で包装して投与するための輸液容器の外側バッグに適用可能な、機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液を包装するための輸液容器(または、プラスチックバッグ)には、柔軟性、透明性、気体遮断性、薬剤適合性、滅菌耐熱性、熱密封性、落下耐衝撃性などの特性が要求される。
【0003】
この輸液容器には、多数(2個以上)のチャンバーを有するバッグ形態の柔軟性(Flexible)プラスチック容器が使用されている。このような輸液容器は、事前配合した状態で長期保管すると相互反応する恐れのある機能性輸液成分を、バッグの多数のチャンバーによくシールされた状態でそれぞれ別に保管しておき、必要時に各チャンバーを手で押して各チャンバーの隔膜を簡易に開放させた後、このバッグをよく振って各成分を混合させて使用する。このように混合して得られた機能性輸液混合物は、スパイクポート(Spike Port)から注射器(輸液セット(Set))で採り、患者に衛生的で安全に投入することができる。
【0004】
それぞれの輸液成分が充填されている複数のバッグまたは瓶を連結して輸液を注入する場合には、看護婦が失敗するなどの危険性があるが、上記のような多数のチャンバーを有する輸液容器を使用すると上記のような危険性が低減し、さらには保管及び取り扱いも容易になる。
【0005】
輸液容器は様々な形態のものにすることができ、その代表に、機能性輸液を収容する内側バッグ(Inner Bag)、及びこの内側バッグを取り囲んで保護しながら酸素などの気体を遮断する役割を担う外側バッグ(Outer Bag)で構成される構造とすることができる。
【0006】
このような輸液容器は、約10年前からヨーロッパを中心に研究されてきており、多数のチャンバーを有するバッグの他に、単一チャンバーのバッグに対して酸素遮断性及び落下耐衝撃性などの物性をを補完するための研究が加速化しつつある。
【0007】
一般に、内側バッグには、酸素及び水分遮断性、滅菌耐熱性、透明性、落下耐衝撃性、柔軟性などが要求され、外側バッグには、落下耐衝撃性や柔軟性よりは、酸素及び水分遮断性、滅菌耐熱性、透明性が要求される。
【0008】
輸液容器の中でも機能性輸液容器用バッグは、既存の一般輸液用バッグに比べて、優れた気体遮断性、落下耐衝撃性及び透明性などが要求されている。特に、外側バッグでは、機能性輸液中の異物混入などが確認可能な高透明性フィルムが要求され、特性の上、121℃の高い温度での滅菌処理後に透明性確保が可能なフィルム製造技術が必要である。なお、酸素と反応する種々の栄養輸液などが内側バッグに充填されるので、高い酸素遮断性を要する。
【0009】
外側バッグにおいて最高の品質とされているドイツのPactiv社の製品は、外層(PP)/接着層(ポリオレフィン系接着剤)/酸素遮断性中問層(EVOH)/接着層(ポリオレフィン系接着剤)/熱シール内層(PP)の多層(5層)断面構造を有する共押出フィルムである。このPactiv社の製品は、滅菌後(121℃、30分)の曇度が50%以上となり、肉眼でも相当不鮮明に感じられ、バッグ内部の異物、内容物を観察及び確認することが困難であり、透明性を改善する必要がある。
【0010】
このような透明性を改善した製品として、食品及び医療用に用いるための、無機酸化物の蒸着されたPET、ナイロン、ポリオレフィンで構成された多層フィルムが提案された。
【0011】
日本公開特許第2000−263722号は、酸素及び水蒸気の遮断のためにPP基材フィルム上にPETフィルムを形成し、このPETフィルムの表面をシリカやアルミナなどの金属酸化物で蒸着することで酸素及び水蒸気の遮断性を向上させた多層フィルムを提案している。
【0012】
PCT出願公開WO 2007/026554では、容器本体の内側表面及び外側表面のうち少なくとも一方に、有機系ケイ素化合物ガス及び酸素ガスを原料とし、プラズマCVD法によってケイ素酸化物の蒸着されたバリア性膜を少なくとも1層形成する方法を開示している。
【0013】
しかしながら、上記多層フィルムは、原料そのものが柔軟性に欠けている他、遮断性には優れているが、滅菌前後またはバッグの取り扱い過程で反復して折曲が生じると、蒸着された無機酸化物層が割れ、むしろ酸素遮断性が大幅に低下する問題につながる。
【0014】
特に、輸液容器に充填されるアミノ酸液やブドウ糖液、電解質液などの薬液は、酸素によって変質しやすいため、高い酸素遮断性が要求される。しかし、内側バッグに主に使われるポリオレフィン系高分子で製造された輸液容器は、低い酸素遮断性を示し、別の外装材で該輸液容器を包装したり、輸液容器の酸素遮断性を高めうるような新しい組成を導入したりするなどの工夫がされてきた。
【0015】
PCT国際公開WO 2002/85111は、一つ以上の生成物接触層/酸素及び水分バリア層/外部層の多層膜からなる容器を提案しており、ここでは、酸素及び水分バリア層にエチレンビニルアルコール(EVOH)を使用している。
【0016】
PCT国際公開WO 2005/014283は、低密度ポリエチレンフィルム層と、ポリアミド、EVOH、PET、これらのブレンド及びアルミニウムホイルよりなる群から選択された機能性バリア層と、無機粒子状充填剤及びポリオレフィンを含む加熱密封性層と、を含むことで、酸素バリア特性を向上させる方法が開示されている。
【0017】
しかし、上記EVOHは、滅菌後に不良のヘイズを示し、高温及び高湿の条件下で物性低下が発生し、これを単独で使用する場合は酸素遮断性が大きく低下してしまう。
【0018】
そこで、高温処理に対しても透明性が維持される他、酸素遮断性に優れたフィルムについて鋭意研究した結果、満足すべきレベルの透明性及び酸素遮断性を有する本発明の多層フィルムを完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は、透明性、耐熱性、密封性、耐久性に富み、優れた酸素遮断性からピンホールの発生が少ない、機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、
無機酸化物の蒸着されたポリエチレンテレフタレートを含む外層と、
エステル系ポリウレタンを含む第1接着層と、
エチレンビニルアルコール共重合体を含む第1中問層と、
エステル系ポリウレタンを含む第2接着層と、
ポリアミド重合体を含む第2中問層と、
エステル系ポリウレタンを含む第3接着層と、
ポリプロピレン系重合体を含む内層と、
が順次に積層されてなる、機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルムを提供する。
【0021】
上記多層フィルムは、外層と第1接着層との間に保護層をさらに含む。
【発明の效果】
【0022】
本発明による多層フィルムは、ピンホールの発生が少ない他、透明性、耐熱性、密封性、耐久性及び価格競争力に優れているため、輸液、血液などの医療用溶液を収容するポーチ(pouch)形態のバッグを包む外側バッグに好適に用いることができ、医療産業において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例による多層フィルムを示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施例による多層フィルムを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例による機能性輸液容器の斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例による機能性輸液容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0025】
各図面において要素の形状などは、より明確な説明のために誇張して図示されることが理解できる。図面中、同一の要素には同一の符号を付する。なお、ある層が他の層の“上”にあるという記載は、ある層が他の層に直接接触して存在する場合を指すこともでき、それらの間に第3の層が介在される場合を指すこともできる。例えば、この多層フィルムは、接着層、水蒸気バリア層、ガスバリア層のような任意の層をさらに含むことができる。
【0026】
図1は、本発明の一実施例による多層フィルムを示す断面図である。
【0027】
図1を参照すると、多層フィルム10は、下部から、外層11、第1中問層13、第2中問層15及び内層17が順に積層され、これらの層間に第1接着層12、第2接着層14及び第3接着層16が介在された構造を有する。
【0028】
外層11は、輸液容器の最外側に位置する層で、酸素及びガスを遮断する役割を担う。この外層11は、無機酸化物の蒸着されたポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。
【0029】
外層11の材質とされるPETは、柔軟性、遮断性、高い機械的強度及び寸法安全性、耐水性、耐化学性、透明性、剛性、広い使用温度範囲という特性から、包装材に広く用いられている。このようなPETは、2軸延伸したフィルムとする場合、上記の特性がさらに増加し、厚さは5〜20μmとすることが好ましい。
【0030】
上記無機酸化物は、酸素及びガス遮断性を高める役割を担うもので、好ましくは、酸化ケイ素を使用する。酸化ケイ素(SiOx)は、茶色の固体である一酸化ケイ素(SiO)と無色の固体である二酸化ケイ素(SiO、シリカ)からなり、公知の蒸着法によってPETフィルム上に蒸着される。この酸化ケイ素の酸素及びガスの遮断能は、酸化ケイ素中の酸素含量による。すなわち、酸素(O)の量が高いと酸素及びガスの遮断能が低下するので、蒸着工程時に、SiO蒸気中の酸素(O)を1.5〜1.8範囲で適宜調整する。この遮断性は、SiO1.5がSiO1.8に比べて非常に優れた性能を示すが、SiO1.5未満と蒸着されたフィルムは、一酸化ケイ素の影響から茶色を帯びることになる。
【0031】
外層11は、酸素透過度(JIS K 7126、25℃、80%RH)が1 cc/m・d・atm以下であり、水蒸気透過度(JIS K 7129、40℃、90%RH)が1g/m・d以下であり、ヘイズ(JIS K 7136)が5%以下であり、引張強度(JISK 7127)が200〜250MPaであり、引張伸び率(JIS K 7127)が100〜120%である。
【0032】
外層11における無機酸化物の蒸着層は、40〜200nm厚に蒸着することが好ましい。もし、この厚さが40nm以下であれば、均一な蒸着が困難になり、ガス遮断性が十分に得られず、一方、200nm以上と厚すぎる場合は、クラックができるなど、フィルム全体の耐久性が低下する。
【0033】
上記蒸着法に特別な限定はなく、当該分野における公知の乾式蒸着法を用いればいい。具体的に、乾式蒸着法には、化学気相蒸着法(CVD)、低圧化学気相蒸着(Low Pressure CVD、LPCVD)、プラズマエンハンスド化学気相蒸着(Plasma Enhanced CVD、PECVD)、大気圧化学気相蒸着(Atmospheric Pressure CVD、APCVD)、物理気相蒸着法(PVD)、蒸発(evaporation)蒸着法、スパッタ法、または原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)から選ばれる1種の方法が可能であり、好ましくは、化学気相蒸着法を用いる。
【0034】
外層11を単独で輸液容器に使用する場合は、滅菌前後または輸液容器の取り扱い過程での反復した折曲により、蒸着されている無機酸化物蒸着層が割れることがあり、結果として物性が低下する。そこで、本発明の多層フィルムは、その中問層として、酸素及びガス遮断性を維持させる層と、強度を補強する層を形成する。
【0035】
この中問層の一つである第1中問層13は、エチレンビニルアルコール重合体(EVOH)を含む。
【0036】
EVOHは、エチレン及び酢酸ビニルの共重合体であり、透明性、耐薬品性、保香性、耐候性に優れており、特に、酸素及びガス遮断性に優れている。そのため、輸液容器に適用すると、取り扱い上でクラックなどの損傷が生じた場合にも酸素及びガスの遮断性を維持することができる。
【0037】
中問層を構成する他の層である第2中問層15は、ポリアミドを含み、多層フィルムの強度を補強し、耐熱性を向上させる。このポリアミドは酸アミド結合(−CONH−)によって構成される高分子で、‘ナイロン’と知られており、強度及び弾性に富む。第2中問層15に使用されるポリアミドは、当該分野における公知のいずれも使用可能であり、代表的に、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミドMXD6(メタキシレンジアミンとアジピン酸の重合体)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種を含む。
【0038】
特に、第2中問層15は、単層フィルムまたは多層フィルムのいずれの形態も可能であり、特に、ポリアミド6/ポリアミドMXD6/ポリアミド6が積層された多層フィルムとすることが好ましい。この多層フィルム形態のものは、ポリアミド樹脂の共押出により製造され、さらに共延伸工程を経る。
【0039】
第1中問層13及び第2中問層15は、上述した效果を極大化するために、第1中問層13は10〜25μm、第2中問層は10〜40μmとし、より好ましくは、第2中問層15は二軸延伸して層を形成する。ここで、第2中問層15を多層にする場合、厚さは10〜40μm範囲とし、単層にする場合は、厚さ10〜25μmとすることが好ましい。
【0040】
第1中問層13は、酸素透過度(ISO 14663−2、25℃、85%RH)が10cc/m・d・atm以下であり、水蒸気透過度(JIS Z 0208、40℃、90%RH)が150g/m・d以下であり、ヘイズ(JIS K 7105)が3%以下であり、引張強度(ISO1184)が60〜120MPaであり、引張伸び率(ISO 1184)が100〜200%である。
【0041】
第2中問層15は、ヘイズ(ASTM 1003、23℃、50%RH)が3%以下であり、引張強度(ASTM D882)が15〜20kg/mmであり、引張伸び率(ASTM D882)が120〜160%である。また、第2中問層15が3層の多層ポリアミドである場合、酸素透過度(ISO 14663−2、25℃、85%RH)は10cc/m・d・atm以下である。
【0042】
また、必要に応じて、第1中問層13、第2中問層15のぞれぞれの一側面または両面をコロナ放電処理して接着層との接着力を高めることもできる。
【0043】
本発明による多層フィルムの内層17は、ポリプロピレン系重合体を含む。
【0044】
内層17は、多層フィルムに熱密封性を与えるもので、好ましくは、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種を含むことができる。
【0045】
ここで、ポリプロピレン共重合体は、エチレン、アルファオレフィンまたはこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種のコモノマーとプロピレンとの共重合体であり、アルファオレフィンは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種とすることができる。
【0046】
このような内層17は、優れた熱密封性を有するために、厚さを40〜120μmとすることが好ましい。もし、40μm未満であれば、ラミネートされた全体フィルムの厚さが薄すぎ、適切な強度が得られず、120μmを超えると、フィルムの柔軟性が低下する。
【0047】
また、内層17は、無延伸フィルムとする方が、物性維持の面で好ましい。
【0048】
このような内層17は、ヘイズ(ASTM 1003)が25%以下であり、引張強度(ASTMD882)が2〜8kg/mmであり、引張伸び率(ASTM D882)が550〜650%である。
【0049】
上述したように、外層11、第1中問層13、第2中問層15及び内層17の相互接着のために、本発明による多層フィルム10は、各層間に第1接着層12、第2接着層14及び第3接着層16を有する。第1、第2及び第3接着層12,14,16は、エステル系ポリウレタンを含む。
【0050】
このエステル系ポリウレタンは、エステル系ポリオールとイソシアネート化合物の反応によって製造され、高い接着能の他に、優れた引張強度、耐薬品性及び耐磨耗性を有する。このようなエステル系ポリウレタンは、1液型または2液型が可能であり、好ましくは、ラミネーション法に適用可能な2液型が好ましい。このラミネーションを用いて接着層を形成する場合、塗布量1〜10g/m(乾燥時)で十分な接着力を維持することができる。このエステル系ポリウレタンは、当該分野における通常の知識を有する者なら、多層フィルム10の製造工程に応じて適宜のものを選択することができる。
【0051】
このような第1、第2及び第3接着層12,14,16は、1〜10μm厚とすることが好ましい。
【0052】
図2は、本発明の他の実施例による多層フィルムを示す断面図である。
【0053】
同図の多層フィルム10は、外層11、保護層18、第1接着層12、第1中問層13、第2接着層14、第2中問層15、第3接着層16、及び内層17からなる。
【0054】
外層11、第1接着層12、第1中問層13、第2接着層14、第2中問層15、第3接着層16、及び内層17は、上記の一実施例と同様にすればいい。
【0055】
特に、本実施例で提示する保護層18は、外層11と第1接着層12との間に形成され、酸素またはガスを效果的に遮断する障壁の役割を果たす。すなわち、多層フィルムの取り扱い過程での反復した折曲、または滅菌のような高温処理により、外層11の表面に形成された無機酸化物蒸着層が割れて生じるクラックまたはピンホールを埋め込むことで、酸素遮断性の低下を防止する。この保護層18の存在によって、外層11の損傷時にも酸素及びガス遮断性を保持できる他、外層11と第1接着層12間の層間密着性をさらに高めることができる。
【0056】
保護層18の厚さは、本発明では特に限定されず、好ましくは、0.01〜10μmとする。
【0057】
保護層18は、金属アルコキシドまたはその加水分解物を含むことができる。
【0058】
金属アルコキシドは、M(OR)nで表されるものとする。ここで、Mは、Si、Ti、Al、ZrまたはSnを表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表し、nは、Mの原子価を表す。好ましくは、金属アルコキシドには、テトラエトキシシラン、トリイソプロピルアルミニウム、またはテトラブトキシジルコニウムを使用可能であり、これらは、水性媒質で安定した加水分解物を形成する。
【0059】
さらに、保護層18はイソシアネート化合物を含むことができる。
【0060】
このイソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート及びこれらの混合物よりなる群から選ばれると良い。
【0061】
本発明による保護層18は、上記の組成に加えて、塩化スズをさらに含むことができ、この塩化スズは、塩化第1スズ、塩化第2スズ及びこれらの混合物よりなる群から選ばれる1種とすれば良い。
【0062】
上記の保護層18は、各組成の一部または全体を含み、単層または多層に形成可能であり、具体的な事項は、当該分野における通常の知識を有する物には明らかである。この保護層18は、湿式コーティングによって形成しても良く、後述される共押出またはラミネーションによって形成しても良い。
【0063】
上記多層フィルムの製造方法は本発明で特に限定されず、当該分野における公知の方法を用いると良い。
【0064】
代表的に、上記多層フィルムは、共押出法(Co−extrusion)、及びフィルムとフィルムとを接合させるラミネーション法(Lamination)を用いて製造可能である。
【0065】
共押出法は、2つ以上の異なる原料を別々の押出機で溶融し、溶融された樹脂をダイ内部に送って多層に積層し、多層化した原料を種々の方法で冷却する方法である。この共押出法は、效率よく一定の厚さの樹脂押出物を形成することができ、且つ、押出の間に樹脂の品質低下が少ないから、各層がそれぞれの特性を維持し、高い透明性と柔軟性を有する生成物が得られるという利点がある。共押出法には、円形(circular)ダイを用いるインフレーション法及び平面形(flat)ダイを用いるT−ダイ法があり、フィルムの清浄度管理の面ではインフレーション法が、厚さ均一性の確保面ではT−ダイ法が有用である。
【0066】
共押出法による多層フィルムの製造は、170〜250℃、好ましくは、200〜230℃でなされる。この時、それぞれの層を形成する樹脂は、厚さ及び押出性を均一にさせるために、それら樹脂間のメルトフローレート(MFR)差を小さくすることが好ましい。
【0067】
ラミネーション法は、各層が一定厚さを維持することができ、かつ、高い透明性を確保できる方法である。このラミネーション法には、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、無溶剤ラミネート法、ワックスラミネート法、サーマルラミネート法、押出コーティングラミネート法などがあり、本発明では特に限定されない。
【0068】
特に、本発明では、多層フィルムを輸液容器に適用するために、ドライラミネート法または無溶剤ラミネート法を用いることが好ましい。
【0069】
このように製造された多層フィルムは、輸液容器に用いるためには、上述した物性の他にも、適切なヘイズ特性、引張強度、引張弾性率及び酸素透過度を有する必要がある。好ましくは、上記多層フィルムは、滅菌処理後のヘイズ(ASTM D1003)が10%以下であり、引張強度(ASTM882)は700kgf/cm以上であり、酸素透過度は5.0cc・m・day・atm以下であることが好ましい。
【0070】
本発明による多層フィルムは、機能性輸液製品のための、特に二重バッグ形態の輸液容器、例えば、アミノ酸モノバッグ容器及び多チャンバーバック容器などの高い酸素遮断性を要求する輸液容器の外側バッグに適用することで、透明性、耐熱性、密封性、耐久性を向上させ、かつ、優れた酸素及びガスの遮断性及び価格競争力を得ることができる。
【0071】
図3は、本発明の一実施例による輸液容器(モノバッグ)を示す斜視図である。
【0072】
図3を参照すると、輸液容器100は、単一のチャンバーを有する内側バッグ110と、薬液を排出させるための排出口120、及び輸液容器100をつるすためのハンガー130とからなる。
【0073】
この輸液容器100は、例えば、栄養輸液を供給するのに使われ、このような栄養輸液モノバッグの外側バッグに、本発明で提示した多層フィルムが適用される。
【0074】
図4は、本発明の他の実施例による輸液容器(3チャンバーバッグ)の斜視図である。
【0075】
図4を参照すると、輸液容器200は、隔膜212で仕切られたチャンバーを有する内側バッグ210、薬液を排出させるための排出口220、及び輸液容器200をつるすためのハンガー230からなる。
【0076】
内側バッグ210は、隔膜212によって仕切られてそれぞれ輸液を収容するチャンバーを有し、例えば、3個のチャンバーA、B、Cを有する。ここで、チャンバーは、必要に応じて適切の個数にすればよい。このような3チャンバーバッグの外側バッグに、本発明による多層フィルムが適用される。
【0077】
具体的に、輸液容器200は、内側バッグ210とつながるように形成され、チャンバーA、B、C内の輸液を排出させるための排出口220を備える。
【0078】
この場合、隔膜212は、ソフトシーリング(soft-sealing)され、外部物理力によって容易に開放される易剥離性を有する。
【0079】
輸液容器200の内側バッグ210の各チャンバーA、B、Cを押すと、各隔膜212のシールが解除され、チャンバーA、B、Cが開放される。この場合、チャンバーA、B、Cが開放されて連通しても、これらは最外側のアウトライン領域によって密閉された構造を維持する。
【0080】
続いて、このチャンバーA、B、Cが一体化した内側バッグ210をよく振って各チャンバーA、B、C中の組成を互いに混合する。このように混合した混合物は、排出口220から注射器(輸液用セット、図示せず)を通じて患者に投与される。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の好ましい実施例及び実験例を提示する。ただし、これは、本発明の好ましい一例であり、本発明を限定するためのものではない。
【0082】
実施例1〜4及び比較例1〜3
下記表1の組成を用いて無溶剤ラミネート法で多層フィルムを製造した。この場合、接着層は、2液型ポリウレタン(UR7782/6083、Henkel社製)を用いて3μm厚に形成した。
【0083】
【表1】

【0084】
実験例1
上記実施例及び比較例で製造された多層フィルムの物性を測定し、その結果を下記の表2に表した。
【0085】
(1)滅菌後ヘイズ:120℃で滅菌処理後、ASTMD1003に基づいて日本東陽精機社製のヘーズメーター(HAZEMETER)を用いて測定した。
【0086】
(2)酸素透過度:ASTM D3985に基づいて酸素透過測定装置を用いて22℃、0%RH環境で測定した。この時、折曲前と折曲後に分けて測定し、優秀:0〜1、良好:1〜5、不良:5以上を基準にして評価した。折曲後の測定は、横、縦の長さがそれぞれ約50cmであるフィルムを両手で取って10回捻り、しわくちゃになった部分の酸素透過度を測定した。
【0087】
(3)水蒸気透過度(WTR):ASTM F 1249に基づいて水蒸気透過測定装置を用いて38℃、100%RH環境で測定し、優秀:0〜1、良好:1〜3、不良:3以上の基準として評価した。
【0088】
(4)ピンホール試験:多層フィルムを熱接合によりバッグ形態に製造した後、ここに蒸溜水を充填してシールした。このバッグを段ボール箱に2行*5段に積載し、JIS規格Z0200に基づく輸送試験(振動加速度:±0.75G)を通じて振動試験をした後、段ボール箱3個分(30個)のバッグのピンホール数をカウントした。この時、ピンホール数は、優秀:0、良好:1〜2、不良:3以上を基準にして評価した。
【0089】
【表2】

【0090】
上記表2を参照すると、実施例1乃至6で製造された多層フィルムの引張強度及び弾性率は、比較例1の多層フィルムに比べて優れていることがわかる。また、実施例1乃至6の多層フィルムは、滅菌後ヘイズ特性も6.3%以下であって、高温処理後にも透明度を維持できることが確認された。
【0091】
酸素透過度の結果では、折曲前後とも、実施例1乃至6の多層フィルムが、比較例1のそれに比べて酸素透過度が低いことがわかり、この結果から、酸素遮断性が向上したことがわかる。
【0092】
また、ピンホール発生の結果からは、本発明による多層フィルムで製造されたバッグが、比較例1による多層フィルムで製造されたバッグに比べて、ピンホールの低減效果に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明による多層フィルムは、機能性輸液製品のための外側バッグに使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物の蒸着されたポリエチレンテレフタレートを含む外層と、
エステル系ポリウレタンを含む第1接着層と、
エチレンビニルアルコール共重合体を含む第1中問層と、
エステル系ポリウレタンを含む第2接着層と、
ポリアミド重合体を含む第2中問層と、
エステル系ポリウレタンを含む第3接着層と、
ポリプロピレン系重合体を含む内層と、
が順次に積層されてなる、
機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項2】
前記無機酸化物は、酸化ケイ素であることを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項3】
前記無機酸化物は、SiO1.5〜SiO1.8であることを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項4】
前記無機酸化物は、40〜200nmの厚さとすることを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項5】
前記無機酸化物の蒸着は、化学気相蒸着法(CVD)、低圧化学気相蒸着(Low Pressure CVD、LPCVD)、プラズマエンハンスド化学気相蒸着(Plasma Enhanced CVD、PECVD)、大気圧化学気相蒸着(Atmospheric Pressure CVD、APCVD)、物理気相蒸着法(PVD)、蒸発(evaporation)蒸着法、スパッタ法、または原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition、ALD)の中から選ばれる1種の方法で行うことを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項6】
前記第2中問層のポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項7】
前記第2中問層は、単層フィルムまたは多層フィルムであることを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項8】
前記多層フィルムは、ポリアミド6/ポリアミドMXD6/ポリアミド6の積層層であることを特徴とする、
請求項7に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項9】
前記第1中問層及び第2中問層は、さらに、一面または両面がコロナ放電処理されることを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項10】
前記ポリプロピレン重合体は、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項11】
前記ポリプロピレン共重合体は、エチレン、アルファオレフィンまたはこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種のコモノマーとプロピレンとの共重合体であることを特徴とする、
請求項10に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項12】
前記アルファオレフィンは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種であることを特徴とする、
請求項11に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項13】
前記第1、第2及び第3接着層のエステル系ポリウレタンは、ポリウレタンと、イソシアネート及びヒドロキシ官能基を有する化合物と、を含む2液型接着剤であることを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項14】
前記多層フィルムは、外層の厚さが5〜20μm、第1中問層の厚さが10〜25μm、第2中問層の厚さが10〜40μm、内層の厚さが40〜120μm、第1、第2及び第3接着層の厚さが1〜10μmであることを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項15】
前記外層と第1接着層との間に保護層をさらに含むことを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項16】
前記保護層は、M(OR)nの金属アルコキシド(ここで、Mは、Si、Ti、Al、ZrまたはSnを表し、Rは、C1〜C6のアルキル基を表し、nは、Mの原子価を表す。)、またはその加水分解物を含むことを特徴とする、
請求項1に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。
【請求項17】
前記保護層は、イソシアネート化合物、塩化スズ及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種をさらに含むことを特徴とする、
請求項16に記載の機能性輸液製品のための高遮断性多層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−510689(P2011−510689A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539305(P2010−539305)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007541
【国際公開番号】WO2009/082133
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(509281151)チョンウェ コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】