説明

機能水維持循環装置

【課題】物質が溶解した溶液では水電解装置で機能水生成が困難。また、小型水電解装置では大規模な機能水利用設備の起動が不可能。
【解決手段】ろ過処理装置と酸素水素供給装置を配した滅菌処理装置による液体の滅菌処理手段と、前記液体の還元処理をする水素供給装置を配した還元処理装置による還元処理手段と、前記液体を機能水利用設備へ配給する循環配給装置による循環配給手段と、前記機能水利用設備より大気拡散した水素を回収精製する水素回収装置および水素精製装置を含む水素回収手段と、で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能水製造利用装置に係り、特に溶液を機能水化して循環利用することが可能な機能水維持循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化還元電位(ORP)の効能は、日本国の厚生省も人体に対する効果を認めて、水電解装置によるイオン水の利用などが一般化している。医療・健康分野において、水電解装置で生成される酸素溶存水は、酸化電位が高くオゾン水として特に殺菌効果を有し、また、水素溶存水は、還元電位が低く還元水として、特に生命細胞の活性化に効果を有している。
一方、工業界では、還元電位による機能水がフロンに変わる新たな洗浄手段として、半導体や精密部品の洗浄工程に利用されている。
【0003】
水電解装置に関する文献例としては、
【特許文献1】特開2004−250736
【特許文献2】特開2004−211190等があり、これら水素製造用として提供されている。
【0004】
また、工業用の機能水に関する文献例としては、
【特許文献3】特開2004−273961
【特許文献4】特開2004−95625等があり、洗浄用として提供されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような水電解装置では、物質が溶解している溶液を還元する場合には、直接に電極に触れると電極の劣化が激しいため適応しない。
【0006】
また、機能水利用設備の運転時の水素供給は、大気拡散に時間をかけて放散するため、一定時間には少量の水素補充であるが、機能水利用設備の起動時に全溶液を還元するためには、短時間で大量の水素を供給する必要がある。このため水電解装置も大型のものとなり、高コストに繋がる。
【0007】
本発明は、従来技術の課題であるどのような物質が溶解した溶液でも還元水として提供することにある。また、本発明の他の目的は、小型水電解装置でも大規模な機能水利用設備の運転を可能にする装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ろ過処理装置と酸素水素供給装置を配した滅菌処理装置による液体の滅菌処理手段と、前記液体の還元処理をする水素供給装置を配した還元処理装置による還元処理手段と、前記液体を機能水利用設備へ配給する循環配給装置による循環配給手段と、前記機能水利用設備より大気拡散した水素を回収精製する水素回収装置および水素精製装置を含む水素回収手段と、で構成したことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
溶液の滅菌処理手段では、補給される源水と循環する溶液の不純物などをろ過処理装置のフィルターで取り除かれた溶液は、低温処理が必要であれば、酸素水素供給装置で生成された酸素を滅菌処理装置の酸素透過膜などにより酸素を溶液に溶解させ、溶液の酸化電位を高めて滅菌することができる。また、高温処理が必要な場合は、これに変えて溶液を加熱処理して滅菌することができる。
【0010】
溶液の還元処理手段では、酸素水素供給装置が水電解で生成した水素および機能水利用設備で大気拡散して放散した水素が回収され、水素吸蔵合金を装着した水素貯蔵タンク内に貯蔵されているので、短時間でも大量な水素の供給ができる。この還元処理装置は、水素透過膜で溶液に水素を溶解することで、短時間に還元電位をマイナス600mVにして還元水をつくることができる。
【0011】
また、装置の運転中は、水素の大気拡散は時間をかけて放散するため一定時間あたりに補充する水素量も少量であるため酸素水素供給装置が大規模な必要がない。
【0012】
また、還元水は、精密機器、半導体、食品等の洗浄では微粒子の除去や滅菌に有効である。温泉施設、一般宿泊施設、公衆施設、個人住宅等の浴場やプールでは、滅菌は不可欠で、アルカリ性にして用いると肌細胞の活性によい。これは、生命細胞に共通であり、飲料用、病院等の医療・衛生用、農林水産物等の生産用としても有効である。
【0013】
溶液の循環配給手段では、機能水利用設備の仕様や条件によって、流量、温度など制御されて、機能水利用設備へポンプ送圧によって送液することができる。
【0014】
水素回収手段では、機能水利用設備より大気拡散した水素を水素回収装置で集めて、水素精製装置の水素透過膜または水素吸蔵合金によって低純度水素を高純度水素に精製することができる。
【実施例1】
【0015】
図1の実施例を説明すると、溶液は、ろ過処理装置9⇒酸素水素供給装置2を配した滅菌処理装置10⇒水素供給装置3を配した還元処理装置5⇒循環配給装置6⇒機能水利用設備7を経て循環ができるように配管されている。一方、水素は、酸素水素供給装置2および水素精製装置4を配した水素供給装置3⇒還元処理装置5⇒循環配給装置6⇒機能水利用設備7⇒水素回収装置8を経て循環ができるように配管されている。
【0016】
ろ過処理装置9は、補給する源水20および循環する溶液が取り入れ口より流入し、目的に合わせたフィルター材質の機能によって不純物や異物が取り除かれて通過し、流出口より流出されている。
【0017】
酸素水素供給装置3は、補給する水15が取り入れ口より、内部が陽極と負極の電極がセパレータによって分離された複数のスタックに流入し、適宜電極へ直流電源が通電されることで水15が電気分解して、陽極側では酸素が、他方の負極側では水素が生成されている。生成された酸素は滅菌処理装置10へ、他方の水素は水素供給装置3へそれぞれ配管により送られる。
【0018】
滅菌処理装置10は、循環する機能水が取り入れ口より流入し、酸素透過膜を介して酸素を機能水中に溶解させることで酸化電位を高めて溶液中の細菌等が殺菌され、流出口より流出されている。殺菌方法はこの他にも紫外線や高周波など周知されている方法でもよく、限定するものではない。
【0019】
水素供給装置3は、2枚の波型プレートが接合されたカセットに、その両面の波溝内に水素吸蔵合金が装着されたものが複数枚積層されて内部が波型のうねりの交差により水素吸蔵合金室と熱媒室ができるように水素貯蔵タンクが構成されている。酸素水素供給装置3および水素精製装置4からの水素は、熱媒室に冷却水を通過させることによって水素吸蔵合金に吸蔵させる。水素供給装置3へ水素の供給時は、熱媒室に加熱水を通過させることで水素を瞬時に放出できるようにされている。この水素貯蔵タンクは他にもパイプ式など周知されている構造でよく、限定するものではない。
【0020】
還元処理装置5は、循環する溶液が取り入れ口より流入し、水素吸蔵合金の水素放出圧により水素が水素透過膜を透過して水素を液体に溶解させて、還元電位を低めて、流出口より流出されている。水素透過膜を用いる水素溶解は、非常に速やかにマイナス600mVの還元電位が得られ、溶存時間も3時間以上となる。
【0021】
循環配給装置6は、溶液を取り入れ口から流入させ、機能水利用設備の仕様や条件によって、流量、温度など制御されて、機能水利用設備へポンプ送圧によって流出口から送液されている。
【0022】
機能水利用設備において、精密機器、半導体、食品等の洗浄では浄化槽として各製造部署に分かれて設置されている。飲料用、病院等の医療・衛生用から、温泉施設、一般宿泊施設、公衆施設、個人住宅等の浴場やプールでは、大規模槽で単体のものから小規模槽で複数に分かれて設けられている。農林水産物等の生産用施設も同様に様々である。
【0023】
水素回収装置8は、屋内の天井部に設けられ、袋状に閉ざされた最上部内に水素が溜まるようにされ、溜まった水素は取り出し用の配管から水素精製装置4内へ導かれている。水素精製装置4内は、水素冷却器、水素圧縮機、水素透過膜で構成されている。水素の回収は、水素精製装置4内へ導かれた水素が、水素冷却器で冷却されることで水分が取り除かれ、次いで水素圧縮機で加圧され、その圧力で、水素透過膜を水素が選択通過して低純度水素が高純度化され、水素供給装置3へ送られている。この他にも水素貯蔵タンクを用いて水素吸蔵合金の水素選択吸蔵機能を用いて水素精製することも可能である。
【実施例2】
【0024】
図2および図3の実施例を説明すると、図2は水素濃度と酸化還元電位(ORP)の計測データであり、図3は、pHと酸化還元電位(ORP)の計測データである。
【0025】
溶液25℃内に水素透過膜を介して水素圧0.2kg/cm2で水素を溶解させながら、水素濃度と酸化還元電位(ORP)を計測した。水素溶解開始約2分後に水素濃度0.4ppmで酸化還元電位(ORP)マイナス100mVを計測した。その後水素濃度0.5ppmで酸化還元電位(ORP)だけがマイナス400mVまで急激に降下した。水素溶解開始約8分以後は水素濃度1.2ppm付近で停止し、酸化還元電位(ORP)がマイナス600mVで停止した。
【0026】
同時に、溶液25℃内に水素透過膜を介して水素圧0.2kg/cm2で水素を溶解させながら、pHを計測した。水素溶解開始約5分後にpH7を計測した。この時の酸化還元電位(ORP)マイナス600mVを計測した。その後pHは7.7で停止した。
【0027】
また、図示はないが水素溶解した溶液を常温下で放置して、水素濃度と酸化還元電位(ORP)を計測した。計測開始の値まで水素濃度と酸化還元電位(ORP)が戻るまでに要した時間は、凡そ3時間以上を計測した。装置の稼動時は付加要素が加わるので水素が大気拡散する時間が早くなる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、装置が構成されると、どのような物質が溶解した溶液でも水素や酸素の溶解した機能水生成を可能にする。特に起動時に短時間で大量の水素を供給できるという利点がある。機能水は環境負荷低減の観点からも有害排出物がないという利点もあり地球環境保全によく、民生から産業までの広域分野で功を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例のフロー図であって、全体概要を示している。
【図2】本発明の一実施例の計測データであって、水素濃度と酸化還元電位(ORP)の計測データを示している。
【図3】本発明の一実施例の計測データであって、pHと酸化還元電位(ORP)の計測データを示している。
【符号の説明】
【0030】
1 機能水維持循環装置
2 酸素水素供給装置
3 水素供給装置
4 水素精製装置
5 還元処理装置
6 循環配給装置
7 機能水利用設備
8 水素回収装置
9 ろ過処理装置
10 滅菌処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過処理装置と酸素水素供給装置を配した滅菌処理装置による液体の滅菌処理手段と、
前記液体の還元処理をする水素供給装置を配した還元処理装置による還元処理手段と、
前記液体を機能水利用設備へ配給する循環配給装置による循環配給手段と、
前記機能水利用設備より大気拡散した水素を回収精製する水素回収装置および水素精製装置を含む水素回収手段と、
で構成したことを特徴とする機能水維持循環装置。
【請求項2】
水素吸蔵合金に水素を貯蔵して適宜水素を放出させて水素供給をすることを特徴とする請求項1記載の水素供給装置。
【請求項3】
酸素水素供給装置は水電解によって生成した酸素を滅菌処理装置へ水素を水素供給装置へそれぞれ供給することを特徴とする請求項1記載の酸素水素供給装置。
【請求項4】
水素透過膜または水素吸蔵合金によって低純度水素を高純度水素に精製することを特徴とする請求項1記載の水素精製装置。
【請求項5】
水素吸蔵合金の水素放出圧により水素が水素透過膜を透過して水素を液体に溶解させ還元処理をすることを特徴とする請求項1記載の還元処理装置。
【請求項6】
機能水利用設備は、次の1〜6のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の機能水維持循環装置。
1. 精密機器、半導体、食品等の製造工場の洗浄用設備であること。
2. 温泉施設、一般宿泊施設、公衆施設、個人住宅等のプールを含む浴場用設備であること。
3. 病院等の医療・衛生用設備であること。
4. 畜産物、農産物、水産物等の生産用設備であること。
5. 研究所等の研究用設備であること。
6. 飲料用設備であること。
【請求項7】
液体は、純水または物質が溶解した溶液であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6記載の機能水維持循環装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−167528(P2006−167528A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360831(P2004−360831)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(000126137)株式会社テクノバンク (5)
【Fターム(参考)】