説明

欠陥検査方法及び欠陥検査装置

【課題】
ダイ比較方式を用いた光学式半導体欠陥検査方法及び検査装置に関して、より微細な欠陥や回路パターンにおけるショート欠陥を、より高い感度で検出する検査方法及び検査装置を提供する必要があった。
【解決手段】
基板表面を検査する検査装置であって、前記基板表面に対して斜め方向から直線偏光した光を線状に照射する照明光学系と、前記照射された光による前記基板表面からの散乱光による像を撮像する検出光学系と、前記検出光学系により撮像された前記基板の複数の表面画像の中から選択された検査画像と前記検査画像とは異なる前記複数の表面画像の中から選択された参照画像とを比較して欠陥を検出する欠陥検出手段と、を有し、前記照明光学系は、前記基板の走査方向又は走査方向に直交する方向に合わせて前記光の偏光方向を制御する偏光制御手段を有することを特徴とする検査装置を提供する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて得られた被検査対象物の画像と参照画像とを比較し、その差異から微細パターン欠陥や異物などを検出する検査方法及び装置に係り、特に半導体デバイス、ホトマスク、液晶等の欠陥を工学的に検査する方法、及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造では、半導体デバイスが形成される基板(ウェハ)を数百に上る製造工程で処理して製品となる。各工程では基板(ウェハ)上に異物が付着したり、パターン形成の工程ばらつき等によってパターン欠陥が生じるが、これらは半導体デバイスが不良品となる原因である。また、半導体デバイスの欠陥検査システムでは、パターンの微細化の進展に伴って、より微細な欠陥や異物を検出するだけではなく、興味のある対象(DOI [Defect Of Interest])の検出が求められると同時に、多種のDOIと検出したくない欠陥を分類するニーズが高まっている。このようなニーズに応えるために、近年複数の検出光学系及び画像処理系(検出ヘッド)を備え、各検出光学系での検出信号を用いることにより検出可能な欠陥種増加及び欠陥検出性能向上を図った欠陥検査装置が開発・製造販売されるようになってきており、半導体製造ラインに適用されつつある。
【0003】
半導体デバイスの欠陥検査装置は、例えばリソグラフィ工程、成膜工程、エッチング工程等の工程において発生したパターン欠陥や異物を、その工程が完了した後の基板表面を検査することによって検出し、その工程の装置のクリーニング実施指令を出したり、既に致命的な欠陥が生じた状態の基板を次工程以降に流すことによる不良品の発生を、早期に検出するのに使用する。
【0004】
前の工程で所定の処理が施された半導体デバイスを形成途中の基板は、検査装置にロードされる。半導体デバイスを形成途中の基板(ウェハ)の表面の画像が撮像取得され、その画像をもとに、特許文献1(特開2003−83907号公報)、特許文献2(特開2003−98113号公報)、特許文献3(特開2003−271927号公報)等に記載されているような欠陥信号判定しきい値欠陥判定処理を行うことによって欠陥判定が行われ、基板上の欠陥個数等が出力される。
【0005】
予め設定した欠陥個数しきい値Ncに対し、実際に検出した欠陥個数Ntが小さい場合には、基板はそのまま次工程へ送付される。一方、欠陥個数Ntの方が欠陥個数しきい値Ncよりも大きい場合には、前工程装置のクリーニング実施指令を出した後、基板の再生可否を判断する。基板が再生可能と判断された場合には、洗浄工程にて基板を洗浄した後、再度本検査工程を通して次工程へ送付する。
【0006】
ところで、被検査対象である半導体基板は、図4に示すように同一パターンを持つ部分401及び401’(以下ダイと呼ぶ)が規則的に並んでいる。欠陥判定は、この隣接するダイのダイ内座標の同一位置における画像を比較することで行われる。この際、従来の暗視野光学系を用いた欠陥検査照明光学系では、照明光の偏光はS偏光、P偏光、円偏光が用いられていた。これは、Si基板上の異物のみを検査対象とすると、S偏光照明とP偏光照明で必要な検出性能が得られるためである。また、酸化膜のような透明膜上にある異物に対しては、円偏光照明を用いることで、膜厚変動による散乱光量変動の影響を減らすことが可能であるためである。すなわち、基板上もしくは膜上異物の検出性能を向上させるためには、S偏光照明、P偏光照明、円偏光照明で十分であった。一方、パターン付のウェハであっても、パターンピッチが光の波長と同程度の場合には、問題なくパターン間の欠陥などを検出することが可能であった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−83907号公報
【特許文献2】特開2003−98113号公報
【特許文献3】特開2003−271927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、パターン付ウェハの場合、パターンピッチが光の波長よりも細かい場合には、半導体パターン自体が偏光特性を持つようになるため、パターンからの回折光の偏光特性も変化し、その結果欠陥検出性能も低下する問題があった。特に、高いパターンを有するウェハの場合、パターンの底にあるショート欠陥を高感度で検出するのは困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであって、検出したい欠陥の散乱光特性に応じて照明の偏光を制御することにより、高感度の欠陥検出を実現する欠陥検査方法及び欠陥検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば次のとおりである。
(1)基板表面を検査する検査装置であって、前記基板表面に対して斜め方向から直線偏光した光を線状に照射する照明光学系と、前記照射された光による前記基板表面からの散乱光による像を撮像する検出光学系と、前記検出光学系により撮像された前記基板の複数の表面画像の中から選択された検査画像と前記検査画像とは異なる前記複数の表面画像の中から選択された参照画像とを比較して欠陥を検出する欠陥検出手段と、を有し、前記照明光学系は、前記基板の走査方向又は走査方向に直交する方向に合わせて前記光の偏光方向を制御する偏光制御手段を有することを特徴とする検査装置である。
(2)(1)記載の検査装置であって、前記照明光学系は、前記基板の走査方向に対して15°から75°傾いた方位角から前記光が照射されるように構成されていることを特徴とする検査装置である。
(3)基板表面を検査する検査装置であって、前記基板表面に対して第一の斜め方向から直線偏光した光を線状に照射する第一の照明光学系と、前記基板表面に対して第二の斜め方向から直線偏光した光を線状に照射する第二の照明光学系と、前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系より照射された光による前記基板表面からの散乱光による像を撮像する検出光学系と、前記検出光学系により撮像された前記基板の複数の表面画像の中から選択された検査画像と前記検査画像とは異なる前記複数の表面画像の中から選択された参照画像とを比較して欠陥を検出する欠陥検出手段と、を有し、前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系各々は、前記基板の走査方向又は走査方向に直交する方向に合わせて前記光の偏光方向を制御する偏光制御手段を有することを特徴とする検査装置である。
(4)(3)記載の検査装置であって、前記第一の照明光学系による前記基板表面上での光の偏光方向は、前記第二の照明光学系による前記基板表面上での光の偏光方向とはほぼ同一となるように調整されており、前記検出光学系では、前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系による照明領域に対応するように配置した複数の光センサにより、ほぼ同一の偏光状態の散乱光を一括検出することを特徴とする検査装置である。
(5)(3)記載の検査装置であって、前記第一の照明光学系による前記基板表面上での光の偏光方向は、前記第二の照明光学系による前記基板表面上での光の偏光方向とほぼ直交するように調整されており、前記検出光学系では、前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系による照明領域に対応するように配置した複数の光センサにより、異なる偏光状態の散乱光を一括検出することを特徴とする検査装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より高いパターンの底にあるショート欠陥をも高感度で検出可能な欠陥検査方法及び欠陥検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明に係る検査装置の第一の実施形態について、図1に示す検査装置のブロック図を用いて説明する。検査装置1は、光源11から射出された光を適宜整形して基板(ウェハ)100表面に照射する照明光学系10と、基板100からの散乱光を検出・撮像する検出光学系20と、基板100を搬送する基板搬送系30と、自動焦点合わせをするための焦点測定系50と、検出光学系20により検出された散乱光信号・画像を処理する画像処理系60と、全体を制御する制御・処理系、並びにインターフェース系90とを適宜有して構成される。
【0014】
照明光学系10は、レーザ光源11と、レーザ光源11から射出された光を所定の方向へ導く反射ミラー16・17と、光の偏光状態を制御する偏光制御ユニット13と、所定のビーム形状に整形する集光レンズ15と、を適宜用いて構成される。
レーザ光源11としては、ウェハ表面近傍の微小な欠陥を検出するには、短波長の紫外または真空紫外のレーザビームを発振し、かつ出力1W以上の高出力のものが用いられる。ウェハ内部の欠陥を検出するには、可視あるいは赤外のレーザビームを発振するものが用いられる。
【0015】
また、集光レンズ15として、シリンドリカルレンズを用いることで、レーザ光の照射されるウェハ表面上の領域が、ある方向に長く、それに垂直な方向には短い形状となる。あるいは、複数のプリズムから構成されるアナモフィック光学系を用い、光軸に垂直な平面内における一方向のみに関してビーム径を変化させた後、円形レンズを使ってウェハ上にてある方向に長く、それに垂直な方向には短い形状の領域の照明を行うことも可能である。アナモフィック光学系は、光軸調整が容易になる点で有効である。
【0016】
本実施形態では、光源11から出射された光は、偏光制御ユニット13によって、直線偏光でかつ基板上で偏光がx方向もしくはy方向になるように偏光方向を整えられる。さらに、偏光制御された光は、レンズ15としてシリンドリカルレンズを用いることで、シート状ビームに変形されて基板100表面に照射される。なお、偏光制御ユニット13による照明光の偏光状態の調整方法は、図3に示すように、偏光照明となる照明軸からの回転角が照明方位角と照明仰角から求めた回転角となるように調整すればよい。
【0017】
ここで、図2に示す通り、ウェハの走査方向がx軸方向の場合には、ウェハ上でシート状に照明される領域19は、ウェハの走査方向と直交する方向、すなわち、ほぼy軸方向に長くなるようにする。このとき、照明光のウェハ上照射領域19と、図1に示す光センサ25との位置関係は、検出光学系20を通して共役になっている。シート状領域を光センサ25によって一括して検出することにより、ウェハ100の表面画像を高速に取得することが可能となる。また、後述するように、本実施形態では照明光の方位角φ及び仰角αは数段階で切り替えて使用する構成とし、照明光の方位角は図2(b)に示すφ≒0°とするよりも、図2(a)に示すようにφ=15°〜75°程度、望ましくはφ≒45°として用いる。
【0018】
検出光学系20は、対物レンズ21と、空間フィルタ22と、結像レンズ23と、光センサ25と、アナログ/デジタル(以下A/Dと略す)変換ユニット26とを適宜有して構成される。ここで、光センサ25としては、ラインセンサやTDIセンサを適宜用いればよい。この場合、ステージの送り速度とTDIセンサのラインレートとライン間隔と光学系倍率の積が一致する、いわゆるTDI動作が必要であり、そのためにはステージの制御系とTDIセンサの同期を取るための機構(図示せず)が必要である。
また、結像レンズ23と光センサ25の間に偏光フィルタ又はアッテネータを設置してもよい。偏光フィルタを挿入した場合には、偏光フィルタの向きを調整するにより、検出されるサンプル表面からの散乱光の偏光成分を、任意に選ぶことが可能である。また、アッテネータを挿入した場合には、照明光の光量を変えずに、光センサ25に入射する光量を低減できるため、光センサ25の出力電流が飽和することを防ぐことが可能である。
これらの結像系により、図2に示す照射領域19の像が光センサ25上に結像される。光センサ25からの出力は、A/D変換ユニット26によってデジタル変換された後、画像処理系60に入力される。
【0019】
基板搬送系30は、Xステージ31と、Yステージ32と、Zステージ33と、θステージ34と、基板が搭載される基板チャック35とを適宜有して構成される。
【0020】
焦点測定系50は、焦点測定用の照明光学系51と、焦点測定用の検出光学系52と、光センサ53と、焦点ずれ算出処理ユニット54と、を適宜有して構成される。焦点測定系50では、照明光学系51よりウェハに照射された光による散乱光を検出光学系52及び光センサ53で検出し、検出された信号に基づいて、焦点ずれ算出処理ユニット54にて隣接ダイ間画像位置ずれ情報を算出する周期を超えない範囲で、雑音成分を低減できる程度十分に長い時間にわたる焦点ずれ値の測定量の平均を算出する。この焦点ずれ値を利用することで、測定視野内の座標とウェハ上座標との位置関係のずれを補正することができる。
【0021】
画像処理系60は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット61と、ダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行うデータ処理ユニット62とを適宜有して構成される。
【0022】
制御・処理系は、レーザ光源11を制御する照明光源制御ユニット81と、偏光制御ユニット13を制御するユニットコントローラ82と、空間フィルタ22を制御する空間フィルタ制御ユニット83と、光センサ25を制御するセンサ制御ユニット84と、画像処理系60から出力される欠陥情報のマージ処理や分類処理を実施する欠陥情報処理ユニット85と、基板搬送系30を制御する搬送系制御ユニット86と、これら全体をつかさどる制御ユニット89とを適宜有して構成される。
【0023】
インターフェース系90は、制御・処理系にて処理・出力された欠陥情報を蓄積するデータ蓄積部91と、検査条件設定や制御処理情報入力を実施する入力部92と、欠陥情報や制御処理情報を表示する表示部93とを適宜有して構成される。
【0024】
次に、照明方位角とパターン回折光のフーリエ変換面上での分布の関係について、図5を用いて説明する。
一般に、ウェハ上のパターンは、x軸方向に長くy軸方向に並んでいるパターンとy軸方向に長くx軸方向に並んでいるパターンが多くを占める。このため、暗視野照明をした場合のパターンからの回折光のフーリエ変換面上での分布2173は、この領域に照射される照明光2171に対して正反射光の位置にあたる直接反射方向2172を中心としたx軸方向及びy軸方向へ長く、十字の形に強度が大きい部分が分布する。
【0025】
ここで、例えば照明方位がφ≒0°もしくはφ≒90°である場合には、それぞれ図5(b)、図5(c)に示すように、いずれも検出光学系20の対物レンズ21の開口221にパターンからの回折光が入ってくる。一般にパターンからの回折光に比べて欠陥からの散乱光は微量のため、これらの照明方位の場合には、欠陥の検出が困難となる。この場合、フーリエ変換面上に空間フィルタ等を設置することにより、パターンからの回折光を抑制することができるが、これと同時に散乱光をも遮光してしまうため、感度低下の問題が生じる。
【0026】
一方、照明方位がφ≒45°の場合は、検出開口221のサイズを適切に選ぶことで、図5(a)に示すように、上記パターンからの回折光のうち強度の大きい部分を自動的に検出せずに済ませることができる。このため、特定のパターン回折光に限って空間フィルタを用いて遮光することにより、欠陥の検出感度を向上させることができる。なお、落射照明の場合のパターン回折光の分布は、図5(d)に示す通り、対物レンズ21の開口221の大部分にパターンからの回折光が広がってしまうため、パターンを検出せずに欠陥だけを見ることはより困難である。
【0027】
図6は、照射する光の波長より細かいピッチの金属による線状の繰り返しパターンを照明光にとって透明な材料の基板(例えばガラス等)上に形成したものに対し、パターンの並び方向と同一の偏光成分の光を落射方向(a)並びに斜め方向(c)から照射した場合、パターンの長さ方向と同一の偏光成分の光を落射方向(b)並びに斜め方向(d)から照射した場合、の照射光の透過率の概略を示したものである。図6に示す通り、パターンの並び方向と同一の偏光成分の光[(a)(c)]の透過率は、パターンの長さ方向と同一の偏光成分の光[(b)(d)]の透過率よりも約10〜100倍程度大きい。この特徴は、フィルタに垂直に照明された場合だけでなく、斜方から照明した場合にも成り立つ。
【0028】
ここで、図6(a)乃至(d)と同じ条件のもと、パターンの底にあるショート欠陥701からの散乱光について、図7(a)乃至(d)にて検討する。ショート欠陥701に照明光を到達させようとした場合、落射照明の方が効率がよい。しかしながら、図5にて前述の通り、パターン回折光による欠陥検出感度低下を踏まえ、パターン回折光を検出しないようにすることを考慮すると、斜方照明でかつ照明方位角が0°や90°からある程度離れた方位角(例えば、φ=15°〜75°、望ましくはφ≒45°)からの照明が、欠陥検出に適している。
以上を踏まえると、ウェハ表面近傍でパターン並び方向に偏光した光を、斜方照明でかつウェハの走査方向に対してφ≒45°の方位角から照明した場合[(c)]が、最も欠陥701の検出感度が高くなる。このため、本実施例では、φ=45°を例として説明している。
【0029】
次に、本実施形態に係る検査装置の検査フローについて、図8及び図9を用いて説明する。
図8に示す通り、まず、検査装置1に基板100をロードし(ステップ801)、基板搬送系30の基板チャック35に固定する。検査装置1はアライメント動作することにより、基板の傾きをなくすように調整すると共に、基板の原点座標を求める。これと並行し、又はこれと前後して、照明の偏光状態が基板上でx方向すなわちx方向ステージ31の走査方向とほぼ一致するように、ユニットコントローラ82により偏光制御ユニット13を調整する(ステップ802)。
続いて、固定された基板100をx方向ステージ31によって走査し、これに同期した検出光学系20によって基板100の表面画像が取得される(ステップ803)。取得された表面画像は隣接ダイの同じ位置での表面画像と比較することによって、欠陥の有無を判定する(ステップ804)。y方向へステップ移動しながらx方向の走査を繰り返し、基板100全体の表面画像取得が完了次第、基板100は検査装置1からアンロードされる(ステップ805)。
【0030】
ここで、検査フローのうち検出光学系20及び画像処理系60の動作フローの詳細について説明する。
検出光学系20では、基板100表面にて生じる回折光及び散乱光を、光センサ25及びA/D変換ユニット26にて光電変換及びA/D変換することにより、表面画像を得て、この表面画像データを隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット61に送信する。隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット61では、隣接ダイ間の位置ずれ情報を1/10画素単位で算出し、データ処理ユニット62に送信する。データ処理ユニット62では、表面画像と位置ずれ情報をもとにダイ間の差画像を算出し、この差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行う。生じた欠陥座標や特徴量、欠陥画像をまとめて欠陥情報として制御・処理系に伝送される。
【0031】
さらに、検査フローのうち欠陥判定処理フローの詳細について、図9を用いて説明する。
まず、検査画像A、参照画像となる隣接ダイ画像A’、及び両者間の位置ずれ情報を用いて差画像A’’を算出し、これをxステージ1回走査分(以下1列分と呼ぶ)だけ繰り返す(ステップ901)。次に、1列分の複数ダイの同一部分に相当する場所の差画像の明るさばらつきσを画素ごとに算出する(ステップ902)。次に、ユーザインタフェースを用いて予め設定しておいた係数kを上記明るさばらつきσに掛け合わせることによって、注目している画素の欠陥判定しきい値Tを決定する(ステップ903)。この決定した欠陥判定しきい値と差画像の明るさの絶対値を画素ごとに比較し、欠陥判定しきい値Tを差画像A’’の明るさの絶対値Lが上回った場合、その画素位置に相当する基板100上の座標に欠陥が存在すると判定する(ステップ904)。
【0032】
このフローを、予め指定した検査領域の画像、もしくは取得された基板100上の全ての検査画像について、繰返し処理することによって、基板100上の欠陥判定及び欠陥座標を算出する。
なお、この欠陥判定処理フローによれば、隣接ダイ間画像の差画像A’’を求めた後、明るさばらつきσを求め、明るさばらつきσからしきい値Tを算出し、このしきい値Tをもとに欠陥の判定を実施しているが、欠陥の判定方法は、隣接する2つの画像の画像明るさを合わせこんだ後、上記処理と同様に差画像を算出して欠陥判定を実施する方法や、検査対象画像と参照画像の明るさやコントラストなどの特徴を軸に持つ多次元空間に投票したデータをもとに欠陥判定を実施する方法であってもよく、ダイ間の明るさの差情報を用いて欠陥判定するものであれば適宜用いることができる。また、必ずしも算出する差画像は隣接ダイ間である必要はなく、離れた位置関係にあるダイ間にて差画像を算出してもよい。
【0033】
また、本実施形態に係る検査装置の他の検査フローについて、図13を用いて説明する。検査装置1に基板100をロードし(ステップ1301)、基板搬送系30のウェハチャック34に固定する。これと並行し、又はこれに前後して、照明の偏光状態が基板上でx方向すなわちx方向ステージ31の走査方向とほぼ一致するように、ユニットコントローラ82により偏光制御ユニット13を調整する(ステップ1302)。続いて固定された基板100はx方向ステージ31によって走査されるが、これに同期して検出光学系20によって基板100の表面画像が取得される(ステップ1303)。取得された表面画像は隣接ダイの同じ位置での表面画像と比較することによって、欠陥の有無を判定する(ステップ1304)。
【0034】
次に、基板100表面全体を走査して表面画像の取得が完了すると(ステップ1305)、照明偏光が基板上でy方向すなわちy方向ステージ32の走査方向とほぼ一致するように、ユニットコントローラ82により偏光制御ユニット13を調整する(ステップ1306)。続いて固定された基板100はx方向ステージ31によって走査されるが、これに同期して検出光学系20によって基板100の表面画像が取得される(ステップ1307)。取得された表面画像は隣接ダイの同じ位置での表面画像と比較することによって、欠陥の有無を判定する(ステップ1308)。
基板100表面全体を走査して表面画像の取得が完了した後(ステップ1309)、基板100をアンロードする(ステップ1310)。
検査対象となる基板はx方向に並行なパターンとy方向に並行なパターンとが混在しているものがあるところ、本検査フローによれば、偏光状態を変えて基板100からの散乱光を取得することにより、基板全面に亘ってパターンの底にあるショート欠陥を高感度で検出することができる。なお、上記フローでは、基板表面全体を2回走査する例を示したが、基板100上のパターンの配置に応じて偏光状態を適宜切り替えて、同一箇所を2回走査することなく検査するフローを用いてもよい。
【0035】
以上、本発明に係る検査装置の第一の実施形態によれば、パターンの底にあるショート欠陥をも高感度で検出することができる。
【0036】
次に、本発明に係る検査装置の第一の実施形態の変形例について説明する。
第一の実施形態における検出光学系20の第一の変形例について、図10を用いて説明する。照明光ビーム18の基板100表面の照射領域19からの散乱光は、対物レンズ21、空間フィルタ22、結像レンズ23、偏光ビームスプリッタ1001を経て、第一の光センサ25並びに第二の光センサ1002上に基板表面画像として結像される。ここで偏光ビームスプリッタ1001を挿入することにより、異なる偏光成分の光が第一の光センサ25並びに第二の光センサ1002に分離して結像される。第一の光センサ25並びに第二の光センサ1002の出力は、A/D変換機26・1003によってそれぞれデジタル変換された後、画像処理系60にて欠陥検出が行われ、インターフェース系90にて欠陥検出の結果が画面表示もしくは蓄積される。
【0037】
検出光学系20の第二の変形例について、図11を用いて説明する。照明光ビーム18の基板100表面の照射領域19からの散乱光は、対物レンズ21、空間フィルタ22、結像レンズ23を経て、互いに間隔をあけて配置した第一の光センサ25並びに第二の光センサ1101上に表面画像として結像される。ここで、第一の光センサ25と第二の光センサ1101とで検出される基板100表面から散乱光は、散乱された基板表面の位置が異なることとなる。
【0038】
ここで、第一の光センサ25と第二の光センサ1101の間隔をdとし、検出光学系20の光学倍率をAとし、基板表面撮像部分の動作フローについて図14を用いて説明する。
図14(a)は、第一の動作フローを示すものである。まず、あるタイミングで第一の光センサ25と第二の光センサ1101にて同時に基板表面を撮像する(ステップ1401)。次に、ステージ系により基板が2×d/Aだけ移動した後、再び第一の光センサ25と第二の光センサ1101にて同時にサンプル表面を撮像する(ステップ1402)。この際、画像処理系では逐次位置合わせ・欠陥検出処理がなされる(ステップ1403)。これを基板端まで繰り返すことで(ステップ1404)、基板表面全体を撮像する。検出光学系20の第二の変形例を用い、この第一の動作フローで処理することにより、光センサを1つだけの使用した場合に比べて、2倍高速に表面画像を取得することが可能となる。
【0039】
図14(b)は、第二の動作フローを示すものである。まず、あるタイミングで第一の光センサ25と第二の光センサ1101にて同時にサンプル表面を撮像する(ステップ1405)。次に、ステージ系によりサンプルがd/Aだけ移動した後、再び第一の光センサ25と第二の光センサ1101にて同時にサンプル表面を撮像する(ステップ1406)。この動作により、ある同一の表面位置を第一の光センサ25と第二の光センサ1101のそれぞれにて1回ずつ、合計2回撮像される。画像処理系では、この2つの像を例えば加算・平均化等することにより、電気的雑音の少ない基板表面画像を取得して欠陥検出処理がなされる(ステップ1407)。これを基板端まで繰り返すことで(ステップ1408)、基板表面全体を撮像する。検出光学系20の第二の変形例を用い、この第二の動作フローで処理することにより、電気的雑音の少ない基板表面画像を取得することが可能となり、高感度の欠陥検出が実現できる。
【0040】
次に、検出光学系20の第三の変形例について、図12を用いて説明する。本第三の変形例は第二の変形例に対して、アッテネータ1201が一方の光センサ25の前に挿入したものである。本第三の変形例を用い、図14(b)の動作フローを行った場合、同様に、ある同一の表面位置を第一の光センサ25と第二の光センサ1101にて1回ずつ、合計2回撮像されるが、検出される光量がそれぞれ異なるため、この2つの像を適宜処理することにより、通常100程度である光センサのダイナミックレンジを拡大することが可能となる。なお、第二の変形例において第一の光センサ25及び第二の光センサ1101をそれぞれ異なる感度にすることでも、ダイナミックレンジの拡大が可能となる。
【実施例2】
【0041】
本発明に係る検査装置の第二の実施形態について、図15に示す検査装置のブロック図を用いて説明する。なお、ここでは第一の実施形態と同一の構成については省略し、相違点を主として説明する。検査装置1は、第1の照明光学系10と、第2の照明光学系1510と、検出光学系20と、基板搬送系30と、焦点測定系50(図示しない)と、画像処理系60と、制御・処理系と、インターフェース系90とを適宜有して構成される。
【0042】
第一の照明光学系10は、レーザ光源11と、レーザ光源11から射出された光を所定の方向へ導く反射ミラー16・17と、偏光制御ユニット13と、集光レンズ15のほか、反射ミラー17と偏向制御ユニット13との間に光分割素子1501を適宜有して構成される。
また、第二の照明光学系70は、光分割素子1501により分割されたレーザ光源11からの光を所定の方向へ導く反射ミラー1516・1517と、ユニットコントローラ1582により制御される偏向制御ユニット1513と、集光レンズ1515とを適宜有して構成される。ここでは、一のレーザ光源11を用いてレーザ光を分割した例を示すが、第一の照明光学系と第二の照明光学系とで異なるレーザ光源を適宜用いても構わない。
光源11から出射された光は、反射ミラー17で反射された後、光分割素子1501にて2つの光ビームに分割され、一方の光は第一の照明光学系10、もう一方の光は第二の照明光学系1510の入射光となる。
【0043】
まず、第一の照明光学系を通過する光ビームについて説明する。偏光制御ユニット13によって、直線偏光でかつ基板100上で偏光がx方向もしくはy方向になるように偏光方向を整えられ、シリンドリカルレンズ等の集光レンズ15にてシート状ビーム18に変形されて基板100表面(照明領域19、図示しない)を照射する。
【0044】
次に、第二の照明光学系1510を通過する光ビームについて説明する。第一の照明光学系の場合と同様、偏光制御ユニット1513によって、直線偏光でかつ基板上で偏光がx方向もしくはy方向になるように偏光方向を整えられ、シリンドリカルレンズ等の集光レンズ1515にてシート状ビーム1518に変形されて基板100表面(照明領域1519、図示しない)を照射する。
ここで、基板の走査方向がx軸方向の場合には、基板上でシート状に照明される領域は、基板の走査方向と直交する方向、すなわちほぼy軸方向に長く照明する。ここでは、照明領域19と照明領域1519とがほぼ一致し、基板表面での偏光方向19α・βと偏光方向1519α・βとがほぼ一致するように、偏光制御ユニット13及び1513を調整する。
照明光の基板上照射領域19及び1519にて散乱された光のうち対物レンズ21に入射した光は、空間フィルタ22、結像レンズ23を通って光センサ25上に結像される。光センサ25は、センサドライバ84によって、光センサ25の出力に同期してA/D変換器26によってデジタル変換するように、同期動作するように駆動されている。デジタル変換結果は、隣接ダイ間画像位置ずれ情報算出ユニット61により位置合わせが行われ、データ処理ユニット62によって、位置合わせ後のダイ間差画像を用いて欠陥判定・検出処理を行う。検出された欠陥情報は、欠陥情報処理ユニット85にてマージ処理や分類処理が行われる。その結果は、制御ユニット89に集約され、インターフェース系90にてデータ保存・画面表示等がなされる。
【0045】
ここで、2つの照明光学系10・1510を有する本実施形態による基板100近傍の照明光の条件について、図16を用いて説明する。図16(a)に示す通り、第一の照明光学系10からのシート状ビーム18は、照明方位角1601、照明仰角1602という条件で基板100表面の照明領域19を、第二の照明光学系1510からのシート状ビーム1518は、照明方位角1611、照明仰角1612という条件で、基板100表面の照明領域19と重なる照明領域1519を照射する。基板の走査方向がx軸方向の場合には、基板上でシート状に照明される領域は、基板の走査方向と直交する方向、すなわちほぼy軸方向に長く照明する。またここでは、照明領域19と照明領域1519がほぼ一致し、基板表面でのシート状ビーム18の偏光方向19αとシート状ビーム1518の偏光方向1519αがほぼ一致するように(図16(b))、又は、シート状ビーム18の偏光方向19βとシート状ビーム1518の偏光方向1519βがほぼ一致するように(図16(c))、偏光制御ユニット13及び1513、並びに反射ミラー16及び1516を調整する。偏光制御ユニット13及び1513の調整の方法としては、S偏光照明となる照明軸1603からの回転角が、それぞれ照明方位角1601と照明仰角1602、照明方位角1611と照明仰角1612から求めた回転角1604及び1614となるように、調整する。このように調整することで、照明領域19及び1519での2つの光の偏光方向19α・β及び1519α・βとをほぼ一致にすることができる。
【0046】
本実施形態によれば、1スポットを2方向より照明することで、一方向からでは影となっていたパターンの側面や底にある欠陥まで検出することができ、より高感度な検査が可能となる。なお、本実施形態の動作フローについては、第一の実施形態で示したものを適宜用いればよい。
【0047】
次に、本実施形態の検査装置を用い、2方向より異なる2スポットを照明する例について、図17を用いて説明する。図17(a)に示す通り、第一の照明光学系10からのシート状ビーム18は、照明方位角1601、照明仰角1602という条件で基板100表面の照明領域19を、第二の照明光学系からのシート状ビーム1518は、照明方位角1611、照明仰角1612という条件で基板100表面の照明領域19とは異なる領域の照明領域1519を、それぞれ照射する。基板の走査方向がx軸方向の場合には、基板上でシート状に照明される領域は、基板の走査方向と直交する方向、すなわちほぼy軸方向に長く照明する。またここでは、図17(b)に示すように、基板表面での偏光方向19αと偏光方向1519βとがほぼ直交するように、偏光制御ユニット13及び1513、及び反射ミラー16及び1516を調整する。偏光制御ユニット13及び1513の調整の方法は、S偏光照明となる照明軸1603からの回転角が、それぞれ照明方位角1601と照明仰角1602、照明方位角1611と照明仰角1612から求めた回転角1604及び1614となるように調整する。このように調整することで、照明領域19及び1519での2つの光の偏光方向19α及び1519βとがほぼ直交させることができる。
【0048】
本形態によれば、各々偏光状態が異なる2スポットで基板を走査するため、1回の走査でx方向パターン及びy方向パターン各々の底にある欠陥を検出することが可能となる。なお、ここではシート状ビーム18の偏光方向19αとシート状ビーム1518の偏光方向1519βの組合せを示したが、シート状ビーム18の偏光方向19βとシート状ビーム1518の偏光方向1519αの組合せであっても構わない。また、動作フローについては、第一の実施形態で示したものを適宜用いればよい。
【0049】
次に、本発明に係る検査装置の第二の実施形態の変形例について説明する。
第二の実施形態における検出光学系20の第一の変形例について、図18を用いて説明する。第一の照明光学系10からのシート状ビーム18は基板100表面の照明領域19を、第二の照明光学系1510からのシート状ビーム1518は基板100表面の照明領域1519を、それぞれ照射する。基板表面の領域19は、対物レンズ21、空間フィルタ22、結像レンズ23を介して光センサ25の表面と共役になるように、また、基板表面の領域1519は光センサ1801の表面と共役になるように、検出光学系20が構成されている。本第二の実施形態における検出光学系20の第一の変形例によれば、照明条件(偏光方向等)の異なる2つの領域19・1519を光センサ25・1801によりそれぞれ撮像することでき、これらを適宜処理することで最適な欠陥検出が可能となる。なお、2つの領域19と領域1519とは必ずしも隣接している必要はなく、所定の距離1802離れていても構わない。
【0050】
第二の実施形態における検出光学系20の第二の変形例について、図19を用いて説明する。照明光ビーム18の基板100表面照射領域19からの散乱光は、結像光学系20すなわち対物レンズ21、空間フィルタ22、結像レンズ23、偏光ビームスプリッタ1901を経て、光センサ1801及び位置1904上に基板表面画像として結像される。ここで偏光ビームスプリッタ1901により、異なる偏光成分の光が光センサ1801及び位置1904に分離して結像される。ここで、偏光ビームスプリッタ1901にて分離された偏光成分のみが光センサ1801によって検出される。アナログ・デジタル変換機1902によってそれぞれデジタル変換された後、画像処理系60にて欠陥検出が行われ、インターフェース系90にて欠陥検出の結果が画面表示もしくは蓄積される。一方で、照明光ビーム1518の基板100表面照射領域1519からの散乱光についても同様に、結像光学系20を経て光センサ25及び位置1903上に基板100表面画像として結像される。ここで偏光ビームスプリッタ1901によって、異なる偏光成分の光が光センサ45及び位置47に分離して結像される。ここで、偏光ビームスプリッタ1901にて分離された偏光成分のみが光センサ25によって検出される。アナログ・デジタル変換機26によってそれぞれデジタル変換された後、画像処理系60にて欠陥検出が行われ、インターフェース系90にて欠陥検出の結果が画面表示もしくは蓄積される。本形態によれば、2つの領域19と領域1519と間の距離1905が離れておらず、例えほぼ重なっていたとしても、偏光ビームスプリッタ1901を用いるため所望の偏光成分をのみを抽出することができる。
【0051】
第二の実施形態における検出光学系20の第三の変形例について、図20を用いて説明する。照明光ビーム18の基板100表面照射領域19からの散乱光は、結像光学系20すなわち対物レンズ21、空間フィルタ22、結像レンズ23を介して、光センサ25上に基板表面画像として結像される。光センサ25上には偏光フィルム2001が貼り付けられている。これにより、偏光フィルム2001を透過可能な偏光成分の散乱光からなる基板表面の結像画像を光センサ25にて検出できる。また、照明光ビーム1518の基板100表面照射領域1519からの散乱光についても同様に、検出光学系20を経て光センサ1801表面上に結像された結果を検出可能である。ここでも、光学センサ1801上に偏光フィルム2002を貼り付けることにより、これを透過可能な偏光成分の散乱光からなる基板表面の結像画像のみを光センサにて検出できる。
【0052】
次に、第二の実施形態における検出光学系20の第四の変形例について、図21を用いて説明する。照明光ビーム18の基板100表面照射領域19からの散乱光は、結像光学系20すなわち対物レンズ21、空間フィルタ22、結像レンズ23、並びにウォラストン・プリズム2101を経て、基板表面画像として光センサ上に結像される。また、照明光ビーム78による散乱光も同様にして光センサ上に結像される。ここで、本形態では、ウォラストン・プリズム2101を用いることにより、偏光成分の異なる散乱光を分離される。分離された光は、光センサ表面と同じ高さに、わずかにずれた位置で、かつ光センサ表面と同じ高さに結像される。本形態では、これら両方の散乱光を検出できるように光センサを2本のラインセンサで構成して、各散乱光交成分を別々のセンサで検出するものである。
【0053】
第二の実施形態における検出光学系20の第五の変形例について、図22を用いて説明する。前述の第四の変形例とほぼ同様の構成であるが、光センサ25・1801がそれぞれ1本のラインセンサで構成されており、かつベース2201上に固定されている点で相違する。ベース2201は、ウォラストン・プリズム2101にて横方向にシフトされた2つの像の間の距離と同じだけの距離2202、照明ビームの照射領域の並び方向へ並行移動が可能である。これにより、ウォラストン・プリズム2101にて分離・結像された偏光成分の異なる成分を、別々に検出することが可能になる。ウォラストン・プリズム2101による横方向シフト量は、照明光ビーム1518の基板表面照射領域1518からの散乱光についても同様なので、ベース2201に光センサ25・1801が固定されていても、ウォラストン・プリズム2101にて分離・結像された偏光成分の異なる成分を、別々に検出することが可能である。
【0054】
第二の実施形態における検出光学系20の第六の変形例について、図23を用いて説明する。図18に示す第二の実施形態における検出光学系20の第一の変形例とほぼ同様の構成であるが、結像レンズ23と光センサ25・1801各々との間に検光子2301・2302を配置した点で相違する。本形態によれば、配置した検光子2301・2302を任意の偏光方向に回転させることで、所望の偏光成分の散乱光からなる基板100表面の結像画像を光センサ25・1801にて検出することができる。
【0055】
第二の実施形態における検出光学系20の第七の変形例について、図24を用いて説明する。本形態では、前述の第六の変形例と同様に、検光子2301・2302を配置し、この検光子を任意の偏光方向に回転させることで、所望の偏光成分の散乱光からなる基板表面の結像画像を光センサにて検出することができる。さらに、本形態においては光センサ25・1801をそれぞれ2本の近接したラインセンサで構成している。2本のラインセンサは共に、領域19・1519が検出光学系20にて結像される領域内に入るよう配置される。さらに、2本のラインセンサのうち1本のセンサ表面に光アッテネーションフィルム2401を貼り付け、光センサ全体で大きなダイナミックレンジを確保できるように構成されている。
【0056】
第二の実施形態における検出光学系20の第八の変形例について、図25を用いて説明する。基板100表面領域19・1519からの散乱光は、対物レンズ21、空間フィルタ22、結像レンズ23、検光子2301、2302、2303、2304を経て、光センサ25・1801上に基板表面画像として、それぞれ結像される。ここで、光センサ25・1801は2本の近接したラインセンサで構成している。2本のラインセンサはそれぞれ、領域19が検出光学系20にて結像される領域内、領域1519が検出光学系20にて結像される領域内に入るように設置される。また、各ラインセンサに偏光フィルムを貼り付け、光センサ25全体及び光センサ1801全体で各偏光成分の散乱光を検出できるように、それぞれ構成されている。なお、ここでは偏光フィルムを光センサ表面に貼り付ける構成としたが、光センサと結像レンズの間に検光子を設置する構成としてもよい。また、第二の実施形態における検出光学系20の第九の変形例として、図26に示すように、中央の2本のセンサにて検出される偏光成分を一致させることで、貼り付けるべき偏光フィルムの枚数を減らすように構成してもよい。
【0057】
上記説明した各検出光学系20は所望の条件に合わせて適宜選択すればよく、各検出光学系を用いた場合の動作フローは実施例1記載のものと同様である。
【0058】
以上のように、本発明に係る検査装置及び検査方法は、隣接するダイのダイ内座標が同一である位置の画像を比較して、両者の差をもとに欠陥検出判定するものであるところ、、1度のx方向ステージ走査にて、2つ以上の同一位置のダイ画像を一度に取得することにより、走査に起因する両画像の差が小さくなるように工夫され、より高いパターンの底にあるショート欠陥をも高感度で検出可能である。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更・組合せすることは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る検査装置の第一の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る検査装置による線状照明の説明図である。
【図3】照明光学系により偏光方向を調整する方法の説明図である。
【図4】被検査対象基板のチップレイアウトと走査方向を示す図である。
【図5】検査光学系のフーリエ変換面における直接反射光、パターン回折光、及び検出光学系開口の位置関係の概略を示す図である。
【図6】ガラス基板上に作成された金属の繰返しパターン部に対して光を照射した場合の、光の透過率の概略を示す図である。
【図7】金属の繰返しパターン部のパターン間の底に形成されたショート欠陥に対し、照明光が欠陥に到達する率の概略を示す図である。
【図8】本発明に係る検査装置の第一の動作フローを示す図である。
【図9】本発明に係る検査装置による欠陥判定処理フローを示す図である。
【図10】本発明に係る検査装置の第一の実施形態における検出光学系の第一変形例を示す図である。
【図11】本発明に係る検査装置の第一の実施形態における検出光学系の第二変形例を示す図である。
【図12】本発明に係る検査装置の第一の実施形態における検出光学系の第三変形例を示す図である。
【図13】本発明に係る検査装置の第二の動作フローを示す図である。
【図14】本発明に係る検査装置のステージ動作に着目した動作フローを示す図である。
【図15】本発明に係る検査装置の第二の実施形態を示す図である。
【図16】本発明に係る検査装置の第二の実施形態による同一領域・2スポット照明の基板照明領域の詳細を示した図である。
【図17】本発明に係る検査装置の第二の実施形態による隣接領域・2スポット照明の基板照明領域の詳細を示した図である。
【図18】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第一変形例を示す図である。
【図19】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第二変形例を示す図である。
【図20】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第三変形例を示す図である。
【図21】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第四変形例を示す図である。
【図22】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第五変形例を示す図である。
【図23】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第六変形例を示す図である。
【図24】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第七変形例を示す図である。
【図25】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第八変形例を示す図である。
【図26】本発明に係る検査装置の第二の実施形態における検出光学系の第九変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 検査装置、10 照明光学系、11 レーザ光源、13 偏光制御手段、18 照明ビーム、19 照明領域、20 検出光学系、21 対物レンズ、22 空間フィルタ、23 結像レンズ、25 光センサ30 基板搬送系、50 焦点測定系、60 画像処理系、90 インターフェース系、100 基板、1510 第二の照明光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面を検査する検査装置であって、
前記基板表面に対して斜め方向から直線偏光した光を線状に照射する照明光学系と、
前記照射された光による前記基板表面からの散乱光による像を撮像する検出光学系と、
前記検出光学系により撮像された前記基板の複数の表面画像の中から選択された検査画像と前記検査画像とは異なる前記複数の表面画像の中から選択された参照画像とを比較して欠陥を検出する欠陥検出手段と、
を有し、
前記照明光学系は、前記基板の走査方向又は走査方向に直交する方向に合わせて前記光の偏光方向を制御する偏光制御手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の検査装置であって、
前記欠陥検出手段では、前記検査画像と前記参照画像との間の位置ずれ量を算出し、前記算出された位置ずれ量の情報を用いて位置ずれ量を補正した前記検査画像並びに前記参照画像を比較して欠陥を検出することを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の検査装置であって、
前記照明光学系は、前記基板の走査方向に対して15°から75°傾いた方位角から前記光が照射されるように構成されていることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の検査装置であって、
前記検出光学系は、前記散乱光のうち所定の偏光成分を選択する手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の検査装置であって、
前記所定の偏光成分を選択する手段は偏光ビームスプリッタであることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の検査装置であって、
前記検出光学系は、対物レンズと、空間レンズと、結像レンズとを有し、
さらに、前記結像レンズにより前記散乱光が結像される面上に配置された第一の光センサと、前記第一の光センサと間隔をあけて前記散乱光の結像される面上に配置された配置された第二の光センサとを有することを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項6記載の検査装置であって、
前記第一の光センサと前記第二の光センサのうち、一方の光センサと前記結像レンズとの間にはアッテネータが配置されていることを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項6記載の検査装置であって、
前記第一の光センサは、前記第二の光センサとは異なる感度に設定されていることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
基板表面を検査する検査装置であって、
前記基板表面に対して第一の斜め方向から直線偏光した光を線状に照射する第一の照明光学系と、
前記基板表面に対して第二の斜め方向から直線偏光した光を線状に照射する第二の照明光学系と、
前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系より照射された光による前記基板表面からの散乱光による像を撮像する検出光学系と、
前記検出光学系により撮像された前記基板の複数の表面画像の中から選択された検査画像と前記検査画像とは異なる前記複数の表面画像の中から選択された参照画像とを比較して欠陥を検出する欠陥検出手段と、
を有し、
前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系各々は、前記基板の走査方向又は走査方向に直交する方向に合わせて前記光の偏光方向を制御する偏光制御手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項10】
請求項9記載の検査装置であって、
前記欠陥検出手段では、前記検査画像と前記参照画像との間の位置ずれ量を算出し、前記算出された位置ずれ量の情報を用いて位置ずれ量を補正した前記検査画像並びに前記参照画像を比較して欠陥を検出することを特徴とする検査装置。
【請求項11】
請求項9又は10記載の検査装置であって、
前記第一の照明光学系による前記基板表面上での光の偏光方向は、前記第二の照明光学系による前記基板表面上での光の偏光方向とはほぼ同一となるように調整されていることを特徴とする検査装置。
【請求項12】
請求項11記載の検査装置であって、
前記検出光学系では、前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系による照明領域に対応するように配置した複数の光センサにより、ほぼ同一の偏光状態の散乱光を一括検出することを特徴とする検査装置。
【請求項13】
請求項9又は10記載の検査装置であって、
前記第一の照明光学系による前記基板表面上での光の偏光方向は、前記第二の照明光学系による前記基板表面上での光の偏光方向とほぼ直交するように調整されていることを特徴とする検査装置。
【請求項14】
請求項13記載の検査装置であって、
前記検出光学系では、前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系による照明領域に対応するように配置した複数の光センサにより、異なる偏光状態の散乱光を一括検出することを特徴とする検査装置。
【請求項15】
請求項9乃至14のいずれかに記載の検査装置であって、
前記第一の照明光学系による光と前記第二の照明光学系による光は同時に前記基板表面のほぼ同一箇所を照射することを特徴とする検査装置。
【請求項16】
請求項15記載の検査装置であって、
前記検出光学系は、前記散乱光のうち所定の偏光成分を選択する手段を有することを特徴とする検査装置。
【請求項17】
請求項16記載の検査装置であって、
前記所定の偏光成分を選択する手段は偏光ビームスプリッタであることを特徴とする検査装置。
【請求項18】
請求項9乃至14のいずれかに記載の検査装置であって、
前記第一の照明光学系による光と前記第二の照明光学系による光は前記基板表面上のほぼ隣接する位置を照射することを特徴とする検査装置。
【請求項19】
請求項18記載の検査装置であって、
前記検出光学系は、対物レンズと、空間レンズと、結像レンズとを有し、
さらに、前記第一の照明光学系の光による前記基板表面からの第一の散乱光の像を撮像する第一の光センサと、前記第二の照明光学系の光による前記基板表面からの第二の散乱光の像を撮像する第二の光センサとを有することを特徴とする検査装置。
【請求項20】
請求項19記載の検査装置であって、
前記第一の光センサ及び前記第二の光センサと前記結像レンズとの間にはそれぞれ偏光フィルムを有することを特徴とする検査装置。
【請求項21】
請求項19記載の検査装置であって、
前記第一の光センサ及び前記第二の光センサと前記結像レンズとの間にはそれぞれウォラストン・プリズムを有することを特徴とする検査装置。
【請求項22】
請求項21記載の検査装置であって、
さらに、前記第一の光センサと前記第二の光センサとを固定するベース部材を有し、
前記ベース部材は横方向に移動可能であることを特徴とする検査装置。
【請求項23】
請求項19記載の検査装置であって、
前記第一の光センサ及び前記第二の光センサと前記結像レンズとの間にはそれぞれ検光子を有することを特徴とする検査装置。
【請求項24】
請求項9乃至23のいずれかに記載の検査装置であって、
前記第一の照明光学系及び前記第二の照明光学系は、前記基板の走査方向に対して15°から75°傾いた方位角から光が照射されるように構成されていることを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−25713(P2010−25713A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186651(P2008−186651)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】