説明

止水ゴム栓、および、端子付き被覆電線

【課題】被覆電線末端の被覆層が除去されて露出した芯線露出部と該芯線露出部付近の被覆層とを覆う金属製中間キャップと、前記被覆層と、の間に配置されて前記芯線露出部を水密に保つ円筒状の止水ゴム栓において、外径が異なる被覆電線に対応できる止水ゴム栓を提供する。
【解決手段】小内径部と、該小内径部よりも内径が大きい大内径部とが設けられ、かつ、前記小内径部の内側面に、前記止水ゴム栓に挿入される被覆電線の被覆層に接触し該被覆層と該止水ゴム栓との間を水密に保つ小内径部リップ部が、そして、前記大内径部の内側面に、前記止水ゴム栓に挿入される被覆電線の被覆層に接触したときに該被覆層と該止水ゴム栓との間を水密に保つ大内径部リップ部が、それぞれ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水された状態で端子金具が接続された端子付き被覆電線、及び、そのための止水ゴム栓に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムからなる芯線を有する被覆電線の場合、銅合金からなる端子金具と接続した場合、これらの接続部に水が付着した場合、電食が生じて電気接続性が低下する不都合が生じる。
【0003】
このような問題を解消するために、例えば端子金具とおなじ材質からなる中間キャップと止水ゴム栓とを用い、中間キャップと芯線との接続部を防水された空間に配置させるとともに、中間キャップを介して芯線と端子金具とを接続させることにより、上記電食により生じる問題を未然に防ぐ技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
このような技術について、図5を具体的に用いて具体的に説明する。
【0005】
図5(a)はこのような接続部付近のモデル斜視図であり、図5(b)は図5(a)のCCにおけるモデル断面図である。
【0006】
被覆電線12の先端は被覆層12bが除去されて芯線12aが露出されており、露出した芯線12a周囲は金属製中間キャップ13で保護されている。金属製中間キャップ13の開口部側には拡径部13bが設けられており、露出した芯線12aの付近の被覆層12bに達している。そして被覆層12bと拡径部13bとの間には円筒状の止水ゴム栓が配置され、その外側面に円周方向に2条設けられた畝状の外リップ部11aによって、露出した芯線12a周囲付近は水密に保護されている。一方、金属製中間キャップ13の先端部13a付近はこの例では金属製中間キャップ13と同じ銅合金から構成されている金属端子14のかしめ部(かしめ片14a)によりかしめ(圧着)されており、その結果、芯線12aは金属製中間キャップ13を介して金属端子14に電気的に接続されている。
【0007】
しかしながら、このような被覆電線と金属端子との接続構造において、十分な防水性を得るためには、用いる被覆電線の外径に応じて、内径の異なる止水ゴム栓を用い分ける必要があり、そのために複数の止水ゴム栓を保有し、かつ、その管理を行う必要があってコスト上昇の原因となっており、さらに、誤った止水ゴム栓を用いた場合には、十分な防水性能が得られないなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−311369公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、外径が異なる被覆電線に対応でき、部品点数の削減が可能な止水ゴム栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の止水ゴム栓は、上記課題を解決するために請求項1に記載の通り、被覆電線末端の被覆層が除去されて露出した芯線露出部と該芯線露出部付近の被覆層とを覆う金属製中間キャップと、前記被覆層と、の間に配置されて前記芯線露出部を水密に保つ円筒状の止水ゴム栓において、前記円筒に、小内径部と、該小内径部よりも内径が大きい大内径部とが設けられ、かつ、前記小内径部の内側面に、前記止水ゴム栓に挿入される被覆電線の被覆層に接触し該被覆層と該止水ゴム栓との間を水密に保つ小内径部リップ部が、そして、前記大内径部の内側面に、前記止水ゴム栓に挿入される被覆電線の被覆層に接触したときに該被覆層と該止水ゴム栓との間を水密に保つ大内径部リップ部が、それぞれ設けられていることを特徴とする止水ゴム栓である。
【0011】
また、本発明の止水ゴム栓は請求項2に記載の通り、請求項1に記載の止水ゴム栓において、外側面に前記金属製中間キャップと前記止水ゴム栓との間を水密に保つ外リップ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の止水ゴム栓。
【0012】
本発明の被覆電線は請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の止水ゴム栓と、前記金属製中間キャップと、で防水された前記芯線露出部が、該金属製中間キャップを介して端子のかしめ部に圧着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の止水ゴム栓によれば、外径の異なる被覆電線であっても挿入方向を変更するだけで併用する金属製中間キャップを変更することなしに対応できるために、複数種類の止水ゴム栓を準備する必要がなくなり、部品点数の削減による在庫管理コストや製造コスト、さらには、複数の製造用金型の製作に係るコストが不要となり、さらに、止水ゴム栓の選択ミスによる防水効果の喪失の恐れも未然に防止される。
【0014】
請求項3に記載の止水ゴム栓によれば、対応できる被覆電線の外径範囲が広くなり、さらに、金属製中間キャップと止水ゴム栓との間の防水性能を損なうことなく、金属製中間キャップを容易にかぶせることができる。
【0015】
本発明の端子付き被覆電線は、止水ゴム栓に係るコストが低いので低コストである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明に係る止水ゴム栓を示すモデル図である。図1(a)側面図である。図1(b)図1(a)のAA’におけるモデル断面図である。
【図2】図2は本発明の止水ゴム栓に被覆電線が挿入された状態を示すモデル断面図である。図2(a)本発明の止水ゴム栓1に比較的細い径の被覆電線2が挿入された状態を示すモデル断面図である。図2(b)本発明の止水ゴム栓1に比較的太い径の被覆電線2’が挿入された状態を示すモデル断面図である。
【図3】金属製中間キャップがかぶせられた状態を示すモデル図である。図3(a)比較的細い被覆電線2を用いた場合を示す図である。図3(b)比較的太い被覆電線2’を用いた場合を示す図である。図3(c)形の異なる金属製中間キャップを用いた場合を示す図である。
【図4】図4(a)本発明に係る端子付き被覆電線の末端付近を示すモデル斜視図である。図4(b)図4(a)のBBにおけるモデル断面図である。
【図5】図5(a)従来技術に係る端子付き被覆電線の末端付近を示すモデル斜視図である。図5(b)図5(a)のCCにおけるモデル断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明について、以下図面を用いて説明する。
【0018】
図1に本発明に係る止水ゴム栓の一例1を示すモデル的に示す。図1(a)は側面図、図1(b)は図1(a)のAA’におけるモデル断面図である。
【0019】
本発明に係る止水ゴム栓1は、円筒状形状で、内部に被覆電線を挿入する電線挿入孔1dが形成されている。電線挿入孔1dは小内径部1a、小内径部1aよりも内径が大きい大内径部1b、及び、これら小内径部1aと大内径部1bとを接続し小内径部1aから大内径部1bに向かって内径が拡径している内径拡大部1cとから構成されている。
【0020】
ここで、止水ゴム栓1は後述のように、様々な太さの被覆電線に対応するために、比較的軟質な材質から構成されていることが好ましく、そのような材質としては、シリコーンゴム、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられ、このうち、特に耐熱性の良いシリコーンゴムから構成されていることが好ましい。
【0021】
小内径部1aの内側面に、止水ゴム栓1に挿入される図示しない被覆電線の被覆層に接触しその被覆層と止水ゴム栓1との間を水密に保つ、内側面円周方向に連続する畝状凸部として形成された小内径部リップ部1a1がこの例では2条設けられ、また、大内径部1bの内側面には、止水ゴム栓1に挿入される、図示しない被覆電線の被覆層に接触したときにその被覆層と止水ゴム栓1との間を水密に保つ、内側面円周方向に連続する畝状凸部として大内径部リップ部1b1がこの例では2条設けられている。
【0022】
後述するように、小内径部1aは比較的小径の被覆電線のために防水性を確保する部分であり、大内径部1bは比較的大径の被覆電線のために防水性を確保する部分である。
【0023】
止水ゴム栓1の外側面には、金属製中間キャップと止水ゴム栓1との間を水密に保つ、内側面円周方向に連続する畝状凸部として形成された、外リップ部1a2が設けられている。
【0024】
上記の止水ゴム栓1の電線挿入孔1dに被覆電線を挿入した状態を図2(a)及び図2(b)に示す。図2(a)には比較的細い被覆電線2を、図2(b)には比較的太い被覆電線2’を、それぞれ挿入した状態をモデル的に示した。
【0025】
本発明において、止水ゴム栓1に対しての被覆電線の挿入方向は、用いる被覆電線の太さにより変更する。
【0026】
すなわち、後述する金属製中間キャップをセットしたときであっても大内径部1bの大内径部リップ部1b1に被覆層が接しないような細い被覆電線2の場合には、図2(a)に示すように大内径部1b側から電線挿入孔1dへ挿入する。一方、金属製中間キャップをセットしたときに大内径部1bの大内径部リップ部1b1に被覆層が水密に接する太い被覆電線2’の場合には図2(b)に示すように小内径部1a側から電線挿入孔1dへ挿入する。
【0027】
なお、この例では小内径部1aと大内径部1bとの間にこれらを接続し小内径部1aから大内径部1bに向かって内径が拡径している内径拡大部1cが設けられているために、大内径部1bから小内径部1aへ向かって挿入される電線先端が小内径部1aに誘導されるために、挿入作業がスムーズに行われる。
【0028】
被覆電線の挿入作業終了後、被覆電線の先端の被覆層を除去し、芯線の先端を露出させ、次いで、先端に金属製中間キャップ3をセットする。図3(a)には比較的細い被覆電線2を用いた場合の例を、図3(b)には比較的太い被覆電線2’を餅田例を、それぞれ示す。これらいずれの場合であって、止水ゴム栓3の外側面に設けられた外リップ部1a2が金属製中間キャップ3の開口側の拡径部3bの内側面に接して、金属製中間キャップ3の先端部3a側内部空間、すなわち、芯線露出部2a付近を水密に保つ。このことにより、芯線と金属製中間キャップ3との材質が異なる場合であってもこれらの間の電食の発生はあらかじめ防止される。
【0029】
なお、比較的太い被覆電線2’を用いた場合では、電線挿入孔1dにこのような太い被覆電線2’が挿入されており、かつ、大内径部1b側に比べて肉厚であるために小内径部1a側の外径が大きくなり、図3(b)に示すように金属製中間キャップ3の拡径部3bよりも太くなる場合がある。このときに他の電線や治工具等に接触し、止水ゴムが位置ずれするなどの不都合が生じる場合がある。このような問題の発生を未然に防ぐために、図3(c)に示すように拡径部3b’よりもさらに拡径され、止水ゴム栓1の大内径部1b側までの全体を保護する止水ゴム保護部3c’を有する金属製中間キャップ3’を用いることができる。
【0030】
上記のように金属製中間キャップをセットした後、金属製中間キャップの先端に端子を接続する。図4(a)には端子4のかしめ部4aをかしめることにより金属製中間キャップ3の先端部3aに端子4を接続した、端子付き電線を示すモデル斜視図を、図4(b)には図4(a)のBBにおけるモデル断面図を、それぞれ示した。
【0031】
金属製中間キャップ3の先端部3a内部の被覆電線2の芯線露出部2aは外部から水密に保護されているとともに、金属製中間キャップ3の先端部3aを介して端子4に圧着されて電気的に接続されている。ここで、金属製中間キャップ3と構成する材質と端子4を構成する材質とを同じにする等により電食が生じないように選択することで、被覆電線2の芯線の材質を問わず、図示された電気接続部における電食を防止することができ、電気接続性低下などの問題を未然に防止できる。
【符号の説明】
【0032】
1 止水ゴム栓
1a 小内径部
1a1 小内径部リップ部
1a2 外リップ部
1b 大内径部
1b1 大内径部リップ部
2 被覆電線
2a 芯線露出部
3 金属製中間キャップ
3a 先端部
3b 拡径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線末端の被覆層が除去されて露出した芯線露出部と該芯線露出部付近の被覆層とを覆う金属製中間キャップと、前記被覆層と、の間に配置されて前記芯線露出部を水密に保つ円筒状の止水ゴム栓において、
前記円筒に、小内径部と、該小内径部よりも内径が大きい大内径部とが設けられ、かつ、
前記小内径部の内側面に、前記止水ゴム栓に挿入される被覆電線の被覆層に接触し該被覆層と該止水ゴム栓との間を水密に保つ小内径部リップ部が、そして、
前記大内径部の内側面に、前記止水ゴム栓に挿入される被覆電線の被覆層に接触したときに該被覆層と該止水ゴム栓との間を水密に保つ大内径部リップ部が、
それぞれ設けられていることを特徴とする止水ゴム栓。
【請求項2】
外側面に前記金属製中間キャップと前記止水ゴム栓との間を水密に保つ外リップ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の止水ゴム栓。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の止水ゴム栓と前記金属製中間キャップとで防水された前記芯線露出部が、該金属製中間キャップを介して端子のかしめ部に接続されていることを特徴とする端子付き被覆電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51054(P2013−51054A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187097(P2011−187097)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】