説明

止水シート並びにそれを用いた管体の接続構造、接続方法及び管継手

【課題】管体と管継手の間に、高吸水性樹脂を含む止水シートを介在させ、高吸水性樹脂が水を吸収して膨張することで止水性能を発揮する管体の接続構造において、高吸水性樹脂が膨張した後に高い水圧がかかっても膨張した高吸水性樹脂が崩れて流れ出ないようにする。
【解決手段】化学繊維又は無機繊維よりなる基布に、高吸水性樹脂及び水硬化性樹脂を含浸又は付着させた止水シート4を用いる。この止水シート4を、管継手1の内周面と当該管継手に挿入された管体2、3の外周面との間に介在させる。水硬化性樹脂が空気中の水分によって固まり、止水シート4が管継手1と管体2、3の間に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設電線管や暗渠排水管などの管体の接続に用いる止水シートと、それを用いた管体の接続構造、接続方法及び管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中埋設電線管や暗渠排水管などの管体の接続に用いる管継手として、管体が挿入される区間の内周面に、不織布に高吸水性樹脂を含浸させた止水シートを取り付けた管継手が公知である(特許文献1参照)。この管継手に管体の端部を挿入して管体を接続すると、前記高吸水性樹脂が管継手の端部から浸入してくる雨水や地下水を吸収して膨張し、管継手と管体の間の隙間を埋めるので、管継手や管体の内部に水が浸入するのを防止できる。
【0003】
【特許文献1】特許第3482431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような管継手を用いて管体を接続した場合、水を吸収して膨張した高吸水性樹脂は非常にもろく、軟らかいため、高い水圧がかかると崩れて流れ出てしまうという問題のあることが判明した。
【0005】
また、高吸水性樹脂自体には接着機能がないため、鋼管や塩化ビニル樹脂管などの平滑管を接続するためには、別途、止水シートを固定する手段を管継手に設けなければならないという問題もあった。
【0006】
本発明の目的は、高吸水性樹脂が水を吸収して膨張した後に、水圧がかかっても、膨張した高吸水性樹脂が崩れにくい止水シートと、それを用いた管体の接続構造、接続方法及び管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る止水シートは、化学繊維又は無機繊維よりなる基布に、高吸水性樹脂及び水硬化性樹脂を含浸又は付着させたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る管体の接続構造は、管継手の内周面と当該管継手に挿入された管体の外周面との間に上記の止水シートを介在させたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係る管体の接続方法は、管体の端部に上記の止水シートを巻き付けた後、当該止水シートを巻き付けた管体の端部を管継手に挿入することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る管体の接続方法は、管体が挿入される区間の内周面に上記の止水シートを取り付けた管継手に、管体の端部を挿入することを特徴とするものであってもよい。
【0011】
また、本発明に係る管継手は、管体が挿入される区間の内周面に上記の止水シートを取り付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る止水シートには、高吸水性樹脂の他に水硬化性樹脂を含浸又は付着させてあるため、この止水シートを管継手と管体の間に介在させると、水硬化性樹脂が空気中の水分によって硬化し、止水シートが管継手と管体の間に固定される。このため、高吸水性樹脂が水を吸収して膨張した後に、水圧がかかっても、膨張した高吸水性樹脂が流れ出るのを抑制することができ、止水性能を確保することができる。
【0013】
また、平滑管を接続する場合でも、管継手に止水シートを固定する手段を設けずに済むので、管継手の構造を簡素化することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、管継手1によって、鋼管(平滑管)2とプラスチック波付き管3を接続する場合であるが、接続する管体の種類はこれに限られるものではない。管継手1の一端側には鋼管2が挿入され、他端側には波付き管3が挿入されている。鋼管2の端部外周面と管継手1の内周面との間、及び波付き管3の端部外周面と管継手1の内周面との間には、止水シート4を介在させてある。
【0015】
この止水シート4は、たとえばガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の化学繊維又は無機繊維よりなる基布に、高吸水性樹脂を粉末または繊維状にして、基布中に分散させて付着させるか、または水硬化性樹脂を基布中に含浸させて付着させたものである。基布としては、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の化学繊維で構成された不織布又は織布、ガラス繊維等の無機繊維で構成された織布を使用することができる。
【0016】
高吸水性樹脂は水等の液体を飽和吸水能として常温常圧下で自重の1〜1000倍程度の飽和吸水能を有する高分子である。これらの液体を吸収するためには、これらの液体と親和性の高い官能基を高分子鎖に有する必要がある。これらの官能基は(部分)中和カルボン酸、カルボン酸、(部分)中和スルホン酸、スルホン酸、ヒドロキシが用いられる。この中で、部分中和カルボン酸が好ましい。このような高分子鎖中に部分中和カルボン酸を与えるモノマーとしては不飽和カルボン酸が好ましく、特に不飽和カルボン酸としてはアクリル酸が好ましく、アクリル酸ナトリウム樹脂などを使用することができる。
【0017】
この高分子の分子構造は直鎖状でも差し支えないが、所望の液体を吸収し膨潤した後も形状を維持する必要がある。そのために、通常高分子鎖が溶解しないように高分子鎖同士の架橋構造を有する重合物架橋体が好ましい。この架橋は共有結合或いはイオン結合等の化学架橋ないしは高分子鎖の絡み合いによる物理架橋が用いられる。化学的安定性の面から、化学架橋が好ましく、中でも共有結合がより好ましい。
【0018】
従って、高吸水性樹脂の好ましい態様としては不飽和カルボン酸重合物架橋体であり、より好ましくはアクリル酸重合物架橋体である。このアクリル酸重合物架橋体は、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩であることが望ましい。
【0019】
水硬化性樹脂は、水や湿気に反応することで硬化する特性を有する樹脂で、本発明に適用する水硬化性樹脂には、末端イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂プレポリマーを主成分とする水硬化性樹脂組成物が最も望ましい。この水硬化性樹脂組成物は、ポリオールとポリイソシアネートの反応により得られるものであり、これに水や湿気を与えるとさらに反応が起こり、ウレタン結合を生じ、ポリウレタンとなって硬化することからポリウレタン系樹脂を用いることができる。
【0020】
ここで、適用可能なポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリグリセリン等の低分子量ポリオール類があり、その他にも、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリテトラメチレングリコール類、端末にヒドロキシル基を有するポリエンポリオール等が挙げられる。
【0021】
適用可能なポリイソシアネートには、有機ポリイソシアネートである、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリスチオホスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビジクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、3−イソシアネートメチル3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート等がある。
【0022】
なお、本発明で使用する水硬化性樹脂は、上記以外の水硬化性樹脂であってもよい。また、使用する水硬化性樹脂には、保管時の安定性、硬化時間、硬化時の脱泡促進等を考慮し、安定剤、触媒、酸化防止剤、揺変性付与剤等を適宜混合してもよい。
【0023】
止水シート4を、鋼管2の外周面と管継手1の内周面との間、及び波付き管3の外周面と管継手1の内周面との間に介在させるには、鋼管2及び波付き管3の端部にそれぞれ止水シート4を巻き付けた後、鋼管2及び波付き管3の端部を止水シート4と共に管継手1に挿入すればよい。また、管体が挿入される区間の内周面に予め止水シート4を取り付けた管継手1を用い、この管継手1に、鋼管2及び波付き管3を挿入することによっても、鋼管2の外周面と管継手1の内周面との間、及び波付き管3の外周面と管継手1の内周面との間に止水シート4を介在させることができる。止水シート4の厚さは、管継手1の内径と鋼管2の外径との差、管継手1の内径と波付き管3の外径との差を考慮して定めればよい。
【0024】
上記のようにして、管継手1と鋼管2の間及び管継手1と波付き管3の間に止水シート4を介在させると、止水シート4に保持されている水硬化性樹脂が空気中の水分によって30分ほどで硬化し、止水シート4が管継手1と鋼管2の間、管継手1と波付き管3の間に固定される。このため、止水シート4に保持されている高吸水性樹脂が水を吸収して膨張した後に、水圧がかかっても、膨張した高吸水性樹脂が水圧によって流れ出るのを抑制することができ、止水性能を確保することができる。
【0025】
また、平滑管を接続する場合でも、管継手1に止水シート4を固定する手段を設けずに済むので、管継手の構造を簡素化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る止水シートを用いた管体の接続構造の一実施形態を示す半分切開側面図。
【符号の説明】
【0027】
1:管継手
2:鋼管
3:プラスチック波付き管
4:止水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学繊維又は無機繊維よりなる基布に、高吸水性樹脂及び水硬化性樹脂を含浸又は付着させたことを特徴とする止水シート。
【請求項2】
管継手の内周面と当該管継手に挿入された管体の外周面との間に請求項1記載の止水シートを介在させたことを特徴とする管体の接続構造。
【請求項3】
管体の端部に請求項1記載の止水シートを巻き付けた後、当該止水シートを巻き付けた管体の端部を管継手に挿入することを特徴とする管体の接続方法。
【請求項4】
管体が挿入される区間の内周面に請求項1記載の止水シートを取り付けた管継手に、管体の端部を挿入することを特徴とする管体の接続方法。
【請求項5】
管体が挿入される区間の内周面に請求項1記載の止水シートを取り付けたことを特徴とする管継手。

【図1】
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【公開番号】特開2007−295729(P2007−295729A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121028(P2006−121028)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】